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特許7500951造形物製造用のインク、三次元造形物の製造方法、及び三次元造形装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】造形物製造用のインク、三次元造形物の製造方法、及び三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/314 20170101AFI20240611BHJP
   B29C 64/112 20170101ALI20240611BHJP
   B33Y 70/10 20200101ALI20240611BHJP
【FI】
B29C64/314
B29C64/112
B33Y70/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019197481
(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公開番号】P2021070206
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 保夫
(72)【発明者】
【氏名】関 三枝子
(72)【発明者】
【氏名】菊地 崇
(72)【発明者】
【氏名】小柳 崇
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-187917(JP,A)
【文献】特開2016-124891(JP,A)
【文献】国際公開第2018/143293(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/142485(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/199611(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/098636(WO,A1)
【文献】特開2016-097578(JP,A)
【文献】特開2015-223734(JP,A)
【文献】特開2017-164958(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0187714(US,A1)
【文献】国際公開第2017/130685(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0037960(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単官能モノマーと多官能オリゴマーとを併用する光重合性化合物を含み、且つ、インクの全体積に対して5体積%以上95体積%以下の気泡を有し、
前記光重合性化合物が、単官能モノマーA、単官能モノマーB、及び2官能オリゴマーCを含有し、前記単官能モノマーAの含有量をW (質量部)とし、前記単官能モノマーBの含有量をW (質量部)とし、及び前記2官能オリゴマーCの含有量をW (質量部)としたとき、以下の条件1及び条件2を満たし、且つ、前記単官能モノマーAの単独重合体のガラス転移温度をTg (℃)とし、前記単官能モノマーBの単独重合体のガラス転移温度をTg (℃)としたとき、以下の条件3及び条件4を満たし、
前記単官能モノマーAが、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記単官能モノマーBが、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記2官能オリゴマーCが、2官能のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーである、造形物製造用のインク。
条件1:インクの全質量に対する(W +W +W )の割合が80質量%以上である
条件2:W /(W +W +W )×100が1質量%以上10質量%以下である
条件3:Tg -Tg が100℃以上である
条件4:(Tg ×W )/(W +W )+(Tg ×W )/(W +W )が40℃以上60℃以下である
【請求項2】
前記気泡の個数平均径が0.01μm以上200μm以下である、請求項1に記載の造形物製造用のインク。
【請求項3】
前記気泡の個数平均径が1μm以上200μm以下である、請求項2に記載の造形物製造用のインク。
【請求項4】
25℃における粘度が1mPa・s以上10,000mPa・s以下である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の造形物製造用のインク。
【請求項5】
25℃における粘度が10mPa・s以上1,000mPa・s以下である、請求項4に記載の造形物製造用のインク。
【請求項6】
前記気泡が不活性ガスを含む、請求項1~請求項5のいずれか1項の造形物製造用のインク。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の造形物製造用のインクを吐出する吐出工程と、
前記吐出工程で吐出されたインクに、当該インクを硬化させる光を照射する光照射工程と、
を有する三次元造形物の製造方法。
【請求項8】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の造形物製造用のインクを収容し、前記インクを吐出する吐出部と、
前記吐出部から吐出されたインクに、当該インクを硬化させる光を照射する光照射部と、
を備えた三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形物製造用のインク、造形物、三次元造形物の製造方法、及び三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元造形装置は、3Dプリンターとも呼ばれる。三次元造形装置としては、例えば、三次元形状の断面形状データに従って、インクジェット法等を用いて造形物製造用のインクを配置し、紫外線等による硬化を繰り返して三次元造形物(以下、単に「造形物」ともいう)を製造する装置が知られている。
【0003】
一方で、気泡を含む樹脂構造体は種々の用途への応用が期待されている。また、気泡を含む樹脂構造体には、用途に応じた形状に対し精度よく成形されることが望まれる。
【0004】
気泡を含む樹脂成形体を得るための組成物として、例えば、特許文献1には、(A)光重合型ウレタンアクリレートオリゴマー、(B)光重合型モノマー、(C)光重合開始剤、(D)アゾ化合物、スロニウム塩と無機カルボネートとの組合せ、及びこれらの混合物から選択された光分解発泡剤、及び(E)光分解触媒を含む、紫外線(UV)硬化型発泡性樹脂組成物が開示されている。
【0005】
特許文献2には、視認性向上シートを製造する方法の一部として、略矩形断面を有する溝に、透明な電離放射線硬化性樹脂組成物と着色微粒子とを含んでなるインキ組成物を充填し、充填されたインキ組成物中に微細な気泡がランダムに分散している状態でインキ組成物を硬化させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2005-533874号公報
【文献】特開2012-014163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、光重合性化合物と発泡剤とを含むインクと比較して、製造しうる気泡含有造形物の形状自由度が高く、且つ、目的とする形状の気泡含有造形物を簡易に高精度で製造しうる、造形物製造用のインクを提供することにある。
なお、「気泡含有造形物」を、以下単に「造形物」ともいう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための具体的手段には、下記の態様が含まれる。
<1> 光重合性化合物を含み、且つ、インクの全体積に対して5体積%以上95体積%以下の気泡を有する、造形物製造用のインク。
<2> 前記気泡の個数平均径が0.01μm以上200μm以下である、<1>に記載の造形物製造用のインク。
<3> 前記気泡の個数平均径が1μm以上200μm以下である、<2>に記載の造形物製造用のインク。
<4> 25℃における粘度が1mPa・s以上10,000mPa・s以下である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の造形物製造用のインク。
<5> 25℃における粘度が10mPa・s以上1,000mPa・s以下である、<4>に記載の造形物製造用のインク。
<6> 前記気泡が不活性ガスを含む、<1>~<5>のいずれか1つの造形物製造用のインク。
【0009】
<7> <1>~<6>のいずれか1つに記載の造形物製造用のインクを吐出する吐出工程と、
前記吐出工程で吐出されたインクに、当該インクを硬化させる光を照射する光照射工程と、
を有する三次元造形物の製造方法。
【0010】
<8> <1>~<6>のいずれか1つに記載の造形物製造用のインクを収容し、前記インクを吐出する吐出部と、
前記吐出部から吐出されたインクに、当該インクを硬化させる光を照射する光照射部と、
を備えた三次元造形装置。
【0011】
<9> 樹脂を含み、且つ、造形物の全体積に対して5体積%以上95体積%以下の気泡を有し、当該気泡の径及び密度の少なくとも一方が、表面から深さ方向に沿って増大又は減少している領域を有する、造形物。
<10> 前記領域における前記気泡の個数平均径が0.01μm以上200μm以下である、<9>に記載の造形物。
<11> 前記領域における前記気泡がクローズドセル構造又はオープンセル構造を有する、<9>又は<10>に記載の造形物。
<12> 衝撃吸収率が70%以上95%以下である、<9>~<11>のいずれか1つに記載の造形物。
<13> アスカーC硬度が10度以上100度以下である、<9>~<12>のいずれか1つに記載の造形物。
【発明の効果】
【0012】
<1>~<3>によれば、光重合性化合物と発泡剤とを含むインクと比較して、製造しうる気泡含有造形物の形状自由度が高く、且つ、目的とする形状の気泡含有造形物を簡易に高精度で製造しうる、造形物製造用のインクが提供される。
【0013】
<4>又は<5>によれば、25℃における粘度が10,000mPa・sを超える場合と比べ、インク内の気泡の保持性、及び、三次元造形装置への適用性に優れる、造形物製造用のインクが提供される。
<6>によれば、気泡が酸素又は空気を含む場合に比べ、経時による形状安定性に優れる造形物を製造しうる、造形物製造用のインクが提供される。
【0014】
<7>又は<8>によれば、光重合性化合物と発泡剤とを含むインクを用い造形物を製造する場合と比較して、製造しうる気泡含有造形物の形状自由度が高く、且つ、目的とする形状の気泡含有造形物を簡易に高精度で製造しうる、三次元造形物の製造方法、又は三次元造形装置が提供される。
【0015】
<9>~<11>によれば、樹脂を含み、且つ、造形物の全体積に対して5体積%以上95体積%以下の気泡を有し、当該気泡の径及び密度の少なくとも一方が、表面から深さ方向に沿って増大又は減少している領域を有する、新規な造形物が提供される。
【0016】
<11>によれば、クローズドセル構造であれば衝撃吸収性に優れ、オープンセル構造であれば吸音性、光の透過性、及び吸熱性に優れる造形物が提供される。
<12>によれば、衝撃吸収率が70%未満である場合に比べ、衝撃吸収性に優れる造形物が提供される。
<13>によれば、アスカーC硬度が10度未満である場合に比べ、変形し難い造形物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る三次元造形装置の一例を示す概略構成図である。
図2】本実施形態に係る三次元造形物の製造方法の一例を示す工程図である。
図3】本実施形態に係る三次元造形物の製造方法の一例を示す工程図である。
図4】本実施形態に係る三次元造形物の製造方法の一例を示す工程図である。
図5】本実施形態に係るにおける気泡の存在の一例を説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。
なお、実質的に同一の機能を有する部材には、全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明は適宜省略する場合がある。
また、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念で用いられる語であり、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの両方を包含する概念として用いられる語である。
また、本明細書において、「オリゴマー」とは、単量体に由来する構成単位を含む重合体であって、分子内に重合性基を有するものであって、重量平均分子量が500以上50000以下(望ましくは、500以上40000以下)のものを指す。
【0019】
<造形物製造用のインク>
本実施形態に係る造形物製造用のインク(以下、単にインクともいう)は、光重合性化合物を含み、且つ、インクの全体積に対して5体積%以上95体積%以下の気泡を有する。
通常、光重合性化合物を含むインクには、製造上、インクの全体積に対して5%未満の気泡が不可避的に含まれる場合があるが、本実施形態に係るインクはインクの全体積に対して5%以上の気泡を有しており、不可避的に気泡が混入したインクには該当しない。
【0020】
従来、気泡を含む樹脂成形体を得る際には、例えば、熱により発泡する発泡剤、化学反応により発泡する発泡剤等を用い、樹脂成形体中にて気泡を生じさせる方法が用いられている。
この方法の場合、発泡剤の発泡のため樹脂成形体が膨張してしまい、目的とする形状の樹脂成形体を得られにくいといった課題がある。また、上記の方法の場合、樹脂成形体中にて気泡を生じさせた後にカッティング加工を行い、目的とする形状へと成形すればよいが、形状の自由度は高いとはいえないし、形状が複雑になると精度も高いとはいえない。
そこで、本発明者らは、製造しうる気泡含有造形物の形状自由度が高く、且つ、目的とする形状の気泡含有造形物を簡易に高精度で製造しうる造形物製造用のインクについて検討を行い、本実施形態に係るインクを導き出した。
【0021】
本実施形態に係るインクは、光重合性化合物を含んでおり、光による重合反応にて硬化するインクである。
このインク中に、上記したインクの全体積に対して5体積%以上95体積%以下の気泡を含ませることで、この気泡がインクの硬化により生じた樹脂成形体中に混入した状態が維持される。
つまり、本実施形態に係るインクは、目的とする形状に応じて硬化させることで、気泡が含有した状態の気泡含有造形物が形成される。その結果、製造しうる形状自由度が高く、且つ、目的とする形状の気泡含有造形物を簡易に高精度で製造しうると考えられる。
【0022】
以下、本実施形態に係るインクの詳細について説明する。
【0023】
〔気泡〕
本実施形態に係るインクは、インクの全体積に対して5体積%以上95体積%以下の気泡を有する。
上記の気泡の割合を、以下、気泡率ともいう。
本実施形態に係るインクにおける気泡率は、目的とする気泡含有造形物に応じて、決定されればよい。
例えば、衝撃吸収率が70%以上95%以下の気泡含有造形物を得る際には、気泡率としては、5%以上95%以下が好ましく、10%以上95%以下がより好ましく、15%以上95%以下が更に好ましい。
同様に、例えば、アスカーC硬度が10度以上100度以下の気泡含有造形物を得る際には、気泡率としては、5%以上95%以下が好ましく、5%以上90%以下がより好ましく、10%以上90%以下が更に好ましい。
【0024】
また、インクにおける気泡率は、得られる気泡含有造形物中の気泡の状態を制御することもできる。
例えば、気泡含有造形物中の気泡がクローズドセル構造を取るようにする場合には、インクにおける気泡率は、5%以上50%以下が好ましく、5%以上45%以下がより好ましく、5%以上40%以下が更に好ましい。
一方、気泡含有造形物中の気泡がオープンドセル構造を取るようにする場合には、インクにおける気泡率は、60%以上95%以下が好ましく、65%以上95%以下がより好ましく、70%以上95%以下が更に好ましい。
なお、ここで、クローズドセル構造とは、全てが壁面(即ち、造形物の固相部)に囲まれている独立気泡を多く含む構造であって、独立気泡率が80%以上であるものいう。一方で、オープンセル構造とは、隣接する気泡が連通しており、連通した気泡の一部が表面に露出している開放気泡(連続気泡ともいう)を含む構造をいい、独立気泡率が20%未満であるものいう。
【0025】
本実施形態に係るインクにおける気泡の径は、目的とする気泡含有造形物に応じて、決定されればよい。
例えば、本実施形態に係るインクにおける気泡の個数平均径は、径の制御がしやすい観点から、0.01μm以上200μm以下であることが好ましい。
また、衝撃吸収率が70%以上95%以下の気泡含有造形物を得る観点、及び、アスカーC硬度が10度以上100度以下の気泡含有造形物を得る観点から、気泡の個数平均径は、1μm以上200μm以下であることが好ましく、10μm以上150μm以下が更に好ましい。
【0026】
また、インクにおける気泡の径は、得られる気泡含有造形物中の気泡の状態を制御することもできる。
例えば、気泡含有造形物中の気泡がクローズドセル構造を取るようにする場合には、インクにおける気泡の個数平均径は、0.01μm以上50μm以下が好ましく、0.01μm以上40μm以下がより好ましく、0.01μm以上30μm以下が更に好ましい。
一方、気泡含有造形物中の気泡がオープンドセル構造を取るようにする場合には、インクにおける気泡の個数平均径は、50μm以上200μm以下が好ましく、80μm以上200μm以下がより好ましく、100μm以上200μm以下が更に好ましい。
【0027】
本実施形態に係るインクにおける気泡率及び気泡の個数平均径は、以下のようにして測定する。
即ち、本実施形態に係るインク7gを、シリコーン樹脂からなる枠材で囲んだ容器に流し込み、出力1500Wの高圧水銀ランプで5分間UV照射し、15mm×15mm×5mm(厚さ)のシート状の測定サンプルを得る。
得られた測定サンプルを厚さ方向に切断し、反射型電子顕微鏡(SEM:SU3800、(株)日立ハイテクノロジーズ)で、断面画像を画像解析し、気泡のサイズ及び面積を解析する。なお、画像解析には、粒度分布測定ソフトウエア:Mac-View((株)マウンテック)を使用した。
気泡率は、解析した断面画像中の気泡の全面積/解析した断面画像の全面積×100にて求められる。
気泡の個数平均径は、解析した断面画像中の気泡10個の円相当径から求められる。
本開示においては、上記のように測定サンプルの断面から算出した値を、本実施形態に係るインクにおける気泡率及び気泡の個数平均径とする。
【0028】
本実施形態に係るインクにおいて、上記の気泡率を得る方法としては、光重合性化合物を含む液状物に対して気泡発生装置にて気泡を混入させる方法が挙げられる。気泡発生装置を用いることで、気泡率及び気泡の径の制御がしやすくなる。
また、本実施形態に係るインクにおいて、気泡を含ませる手段としては、気泡含有微粒子(気泡含有カプセル粒子)を使用してもよい。
【0029】
気泡発生装置としては、特に制限はなく、目的とする大きさの気泡を発生しうる気泡発生装置を用いればよい。
気泡発生装置の条件、光重合性化合物を含む液状物に対する気泡の混入条件、光重合性化合物を含む液状物の組成等を、適宜、変えることで、インクにおける気泡率及び気泡の径が調整される。
気泡発生装置としては、例えば、リビングエナジー社のナノバブル・マイクロバブル発生装置、SPGテクノ(株)のSPG膜によるSPG膜乳化(直接膜乳化法ともいう)を利用した、高速ミニキット、バブリングキット等、(株)イーピーテックのマイクロチャネル乳化装置などが用いられる。
【0030】
本実施形態に係るインクにおける気泡に含まれる気体には、特に制限はない。例えば、気泡に含まれる基体としては、空気、酸素、二酸化炭素等であってもよいし、不活性ガスであってもよい。
酸素及び二酸化炭素は、光重合性化合物による重合物(即ち、造形物)に取り込まれたり、重合物を酸化させてしまうことがある。酸素及び二酸化炭素が、光重合性化合物による重合物(造形物)に取り込まれてしまうと、経時により造形物の形状が変化してしまうことがある。更に、酸素及び酸素が含まれる空気は、本実施形態に係るインクの反応性(即ち、硬化性)を低下させてしまうことがある。これらのことから、本実施形態に係るインクにおける気泡に含まれる基体としては、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスが好ましい。
【0031】
〔光重合性化合物〕
本実施形態に係るインクは、光重合性化合物を含む。
光重合性化合物とは、光重合性基を有する化合物を指す。光重合性基としては、特に制限はないが、その分子内にラジカル重合性基を2つ有するオリゴマーであって、ラジカル重合性基であることが好ましく、特に、エチレン性不飽和基であることが好ましい。
エチレン性不飽和基としては、特に、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0032】
光重合性化合物としては、具体的には、光重合性基を有する、モノマー、オリゴマー、ポリマー等が挙げられる。
中でも、例えば、軟質の造形物を得る観点からは、光重合性化合物として、モノマーとオリゴマーとを併用することが好ましく、単官能モノマーと多官能オリゴマーとを併用することが好ましく、2種の官能モノマーと多官能オリゴマーとを併用することが特に好ましい。
【0033】
光重合性化合物の含有量としては、インクの全質量に対して、80質量%以上99質量%以下であることが好ましく、85質量%以上99質量%以下であることがより好ましく、90質量%以上98質量%以下であることが更に好ましい。
【0034】
[好ましい態様]
以下、本実施形態に係るインクの中でも、軟質の造形物を得るために好適な態様のインク(以下、特定インクともいう)について、説明する。
特定インクでは、光重合性化合物として、単官能モノマーA、単官能モノマーB、及び2官能オリゴマーCを含有し、前記単官能モノマーAの含有量をW(質量部)とし、前記単官能モノマーBの含有量をW(質量部)とし、及び前記2官能オリゴマーCの含有量をW(質量部)としたとき、以下の条件1及び条件2を満たし、且つ、前記単官能モノマーAの単独重合体のガラス転移温度をTg(℃)とし、前記単官能モノマーBの単独重合体のガラス転移温度をTg(℃)としたとき、以下の条件3及び条件4を満たす、ことが好ましい。
条件1:インクの全質量に対する(W+W+W)の割合が80質量%以上である
条件2:W/(W+W+W)×100が1質量%以上10質量%以下である
条件3:Tg-Tgが100℃以上である
条件4:(Tg×W)/(W+W)+(Tg×W)/(W+W)が40℃以上60℃以下である
【0035】
(単官能モノマーA及び単官能モノマーB)
特定インクでは、単官能モノマーA及び単官能モノマーBを含有することが好ましい。
単官能モノマーA及び単官能モノマーBとしては、いずれも、その分子内に光重合性基を1つ含むモノマーであれば、特に制限なく用いることができる。
特定インクでは、単官能モノマーAと単官能モノマーBとの組み合わせとして、前述の条件3を満たすガラス転移温度を有する、2種のモノマーを選択することが好ましい。
【0036】
ここで、単官能モノマーの単独重合体(即ち、ホモポリマー)のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(即ち、DSC)にて求められる。
まず、単独重合体(ホモポリマー)は、以下のように作製することができる。
熱重合開始剤としてアゾジイソブチロニトリル(AIBNともいう)、溶媒としてトルエンを用い、モノマー/AIBN/トルエン=1/0.01/10(質量比)で混合し、窒素雰囲気下、65℃で8時間重合反応を行う。反応終了後、冷却し、エタノール等の貧溶媒を用いて再沈殿精製を行った後、60℃で8時間減圧乾燥を行い、単独重合体を得る。
得られた単独重合体について、示差走査熱量測定(即ち、DSC)を行い、得られたDSC曲線からガラス転移温度を求める。より具体的には、得られたDSC曲線から、JIS K-2120:1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」として求められる。
なお、単官能モノマーとして市販品を用いる場合には、市販品が記載されているカタログ等に記載されているガラス転移温度(Tg)の値を採用してもよい。
【0037】
単官能モノマーA及び単官能モノマーBが有する光重合性基としては、既述のように、特に、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
即ち、単官能モノマーA及び単官能モノマーBとしては、いずれも、(メタ)アクリロイル基を分子内に1つ有する(メタ)アクリレート化合物(以降、「単官能(メタ)アクリレート化合物」ともいう)であることが特に好ましい。
【0038】
-単官能(メタ)アクリレート化合物-
単官能(メタ)アクリレート化合物としては、その構造に制限はないが、入手容易性、及び調達コストの観点から、例えば、鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。なお、アルキル(メタ)アクリレートが有するアルキル基は、無置換であってもよいし、置換基を有していてもよい。
また、アルキル(メタ)アクリレートが有するアルキル基に導入しうる置換基としては、特に制限はがないが、酸素原子を含む置換基が好ましく、具体的には、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、フェノキシ基、カルバモイルオキシ基、エステル基(-C(=O)O-R)、酸素原子を含む複素環基(例えば、ジオキサン環から水素原子を1つ抜いて得られる基、ジオキソラン環から水素原子を1つ抜いて得られる基、テトラヒドロフラン環から水素原子を1つ抜いて得られる基など)等が挙げられる。
これらの置換基は更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、アルキル基、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基等が挙げられる。
【0039】
無置換のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-t-シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0040】
置換アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、m-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2-(N-ブチルカルバモイルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(2-エトキシエトキシ)エチル、2-エチルヘキシルEO(エチレンオキシド)変性(メタ)アクリレート、2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、エトキシエトキシエタノールのアクリル酸多量体エステル、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアルコール アクリル酸多量体エステル、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
これらの中でも、前述の条件3を満たすことが容易であり、衝撃吸収性に優れ且つ変形し難い造形物が得られやすい観点から、単官能モノマーAとしては、単独重合体のガラス転移温度Tgが、90℃以上であるものが好ましく、100℃以上のものがより好ましい。ガラス転移温度Tgの上限は、条件4を満たすように設定されればよく、例えば、150℃以下である。
単官能モノマーAとしては、具体的には、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0042】
また、前述の条件3を満たすことが容易であり、衝撃吸収性に優れ且つ変形し難い造形物が得られやすい観点から、単官能モノマーBとしては、単独重合体のガラス転移温度Tgが-10℃以下であるものが好ましい。ガラス転移温度Tgの下限は、条件4を満たすように設定されればよく、例えば、-75℃以上である。
単官能モノマーBとしては、具体的には、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアルコール アクリル酸多量体エステル、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
特に、単官能モノマーBとしては、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0043】
特定インクにおいて、インクに含まれる単官能モノマーA及び単官能モノマーBの含有量(即ち、単官能モノマーAの含有量W及び単官能モノマーBの含有量W)は、それぞれのガラス転移温度(即ち、Tg及びTg)に基づき、前述の条件4を満たすように設定すればよい。
条件4における「(Tg×W)/(W+W)+(Tg×W)/(W+W)」は、42℃以上58℃以下であることが好ましい。
【0044】
また、単官能モノマーの含有量W及び単官能モノマーの含有量Wは、以下の条件5及び条件6の少なくとも一方を満たすことが好ましく、両方を満たすことがより好ましい。
条件5:W/(W+W+W)×100が36質量%以上60質量%以下である
条件6:W/(W+W+W)×100が36質量%以上60質量%以下である
条件5における「W/(W+W+W)×100」は、40質量%以上55質量%以下がより好ましく、40質量%以上50質量%以下が更に好ましい。
条件6における「W/(W+W+W)×100」は、40質量%以上55質量%以下がより好ましく、40質量%以上50質量%以下が更に好ましい。
【0045】
また、単官能モノマーの含有量W及び単官能モノマーの含有量Wは、以下の条件7を満たすことが好ましい。
条件7:W:Wが40:60乃至60:40である
条件7における「W:W」は、45:55乃至55:45がより好ましい。
【0046】
単官能モノマーAの含有量W及び単官能モノマーBの含有量Wの総和(即ち、W+W)は、単官能モノマーAの含有量W、単官能モノマーBの含有量W、及び2官能オリゴマーの総和(即ち、W+W+W)に対して、90質量%以上99質量%以下であり、90質量%以上95質量%以下がより好ましく、90質量%以上93質量%以下が更に好ましい。
【0047】
(2官能オリゴマーC)
特定インクは、2官能オリゴマーCを含むことが好ましい。
2官能オリゴマーCは、その分子内に光重合性基を2つ有するオリゴマーであって、光重合性基としては、既述の通り、特に、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
即ち、2官能オリゴマーCとしては、(メタ)アクリロイル基を分子内に2つ有する(メタ)アクリレートオリゴマーであることが特に好ましい。
【0048】
2官能オリゴマーCとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリブタジエン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。
これらの中でも、2官能オリゴマーCとしては、他の成分との相溶性及び反応性の観点から、2官能のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
【0049】
-2官能のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー-
2官能のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、その分子内にウレタン結合を有し且つ(メタ)アクリロイル基を分子内に2つ有する。
より具体的に言えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、ウレタン結合である「-NHC(=O)O-」又は「-OC(=O)NH-」を含む構成単位を有し、且つ、(メタ)アクリロイル基を分子内に2つ有する単量体である。
【0050】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、硬度の調整がし易い、また、機械強度、耐熱性、耐摩耗性、耐化学薬品性等にも優れる観点から、ポリエーテルウレタンアクリレートオリゴマー又はポリエステルウレタンアクリレートオリゴマーであることが好ましい。
【0051】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートと、を用いた反応生成物が挙げられる。
具体的には、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ポリイソシアネート化合物及びポリオール化合物を反応させたプレポリマーであって、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーと、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートと、の反応生成物が挙げられる。
以下、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを得るための成分について説明する。
【0052】
・ポリイソシアネート化合物
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、鎖状飽和炭化水素イソシアネート、環状飽和炭化水素イソシアネート、芳香族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0053】
鎖状飽和炭化水素イソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
環状飽和炭化水素イソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、水添トルエンジイソシアネート等が挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアネート、6-イソプロピル-1,3-フェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0054】
・ポリオール化合物
ポリオール化合物としては、例えば、ジオール等の多価アルコールが挙げられる。
ジオールとしては、例えば、アルキレングリコール(例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,3,5-トリメチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、1,2-ジメチロールシクロヘキサン、1,3-ジメチロールシクロヘキサン、1,4-ジメチロールシクロヘキサン等)等が挙げられる。
【0055】
ジオール以外の多価アルコールとしては、例えば、ヒドロキシル基を3個以上含有するアルキレン多価アルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、エリスリトール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、マンニトール等)が挙げられる。
【0056】
ポリオール化合物としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等も挙げられる。
【0057】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、多価アルコールの多量体、多価アルコールとアルキレンオキサイドとの付加物、アルキレンオキサイドの開環重合体等が挙げられる。
ここで、多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,8-デカンジオール、オクタデカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキサントリオール等が挙げられる。
アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロロヒドリン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0058】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価アルコールと二塩基酸との反応生成物、環状エステル化合物の開環重合体等が挙げられる。
ここで、多価アルコールとしては、例えば、ポリエーテルポリオールの説明で例示した多価アルコールが挙げられる。
二塩基酸としては、例えば、カルボン酸(例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等)、カルボン酸の無水物等が挙げられる。
環状エステル化合物としては、例えば、ε-カプロラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトン等が挙げられる。
【0059】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、グリコールとアルキレンカーボネートとの反応生成物、グリコールとジアリールカーボネートとの反応生成物、グリコールとジアルキルカーボネートとの反応生成物等が挙げられる。
ここで、アルキレンカーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、1,2-プロピレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート等が挙げられる。
ジアリールカーボネートとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、4-メチルジフェニルカーボネート、4-エチルジフェニルカーボネート、4-プロピルジフェニルカーボネート、4,4’-ジメチルジフェニルカーボネート、2-トリル-4-トリルカーボネート、4,4’-ジエチルジフェニルカーボネート、4,4’-ジプロピルジフェニルカーボネート、フェニルトルイルカーボネート、ビスクロロフェニルカーボネート、フェニルクロロフェニルカーボネート、フェニルナフチルカーボネート、ジナフチルカーボネート等が挙げられる。
ジアルキルカーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジ-n-ブチルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、ジ-t-ブチルカーボネート、ジ-n-アミルカーボネート、ジイソアミルカーボネート等が挙げられる。
【0060】
・ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート
ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリシジル基含有化合物(例えばアルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等)と(メタ)アクリル酸との付加物も挙げられる。
【0061】
-ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量-
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量としては、500以上50,000以下が好ましく、望ましくは1,000以上40,000以下、上限としては、更に35,000以下がより好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質としたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
【0062】
2官能オリゴマーCは、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
特定インクにおける2官能オリゴマーCの含有量Wは、前述の条件2を満たす。
即ち、2官能オリゴマーCの含有量Wは、単官能モノマーAの含有量W、単官能モノマーBの含有量W、及び2官能オリゴマーCの含有量Wの総和に対して、1質量%以上10質量%以下であり、5質量%以上10質量%以下が好ましく、7質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0063】
(その他の成分)
特定インクは、その他の成分として、前述した、単官能モノマーA、単官能モノマーB、及び2官能オリゴマーC以外の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、他の重合性化合物、光重合開始剤、酸素捕捉剤、重合禁止剤、界面活性剤、粒状物、その他の添加剤等が挙げられる。
特定インクにおいて、その他の成分の総和は、インクの全質量に対して、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0064】
-他の重合性化合物-
特定インクは、衝撃吸収性に優れ且つ変形し難い造形物が得るといった効果を損なわない範囲において、前述した、単官能モノマーA、単官能モノマーB、及び2官能オリゴマーC以外の重合性化合物(他の重合性化合物ともいう)を更に含んでいてもよい。
重合性化合物としては、単官能モノマーA及び単官能モノマーB以外のモノマー(単官能モノマー、多官能モノマーを含む)、単官能オリゴマー、3官能以上のオリゴマー、重合性基を有するポリマー等が挙げられる。
【0065】
他の重合性化合物としては、光重合性環動高分子を用いることもできる。
環動高分子とは、複数の環状分子と複数の環状分子を串刺し状にする直鎖状分子とを有する複合体であり、具体例としてはポリロタキサンが挙げられる。光重合性環動高分子は、側鎖に光重合性基(好ましくは(メタ)アクリロイル基)を有する上記複合体(例えば、ポリロタキサン)である。
光重合性環動高分子を用いることで、得られた造形物中の架橋構造の一部に固定化されていない状態が生じる。その結果として、得られた気泡含有造形物が受けた外部からの応力(例えば、衝撃)に対し、気泡含有造形物中の高分子化合物(即ち、重合物)が動きやすくなるため、気泡含有造形物の硬度を大幅に上昇させることなく、衝撃吸収性を向上させることが可能となると考えられる。
【0066】
-光重合開始剤-
光重合開始剤としては、前述のオリゴマー及びモノマーの硬化反応に寄与するものであれば制限はなく、光ラジカル重合開始剤が好ましい。
光ラジカル重合開始剤としては、特に制限がなく、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3-アルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類等が挙げられる。
上記の中でも、インクの硬化性の観点から、ホスフィンオキシド類が好ましい。
【0067】
アセトフェノン類としては、例えば、2,2-エトキシアセトフェノン、p-メチルアセトフェノン、1-ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-4-メチルチオ-2-モルフォリノプロピオフェノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン等が挙げられる。
ベンゾイン類としては、例えば、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等が挙げられる。
ベンゾフェノン類としては、例えば、ベンゾフェノン、2,4-クロロベンゾフェノン、4,4-ジクロロベンゾフェノン、p-クロロベンゾフェノン等が挙げられる。
ホスフィンオキシド類としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(市販品としては、IGM Resins社、Omnirad TPO)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(「BAPO」ともいう。市販品としては、IGM Resins社、Omnirad 819)等が挙げられる。
【0068】
なお、光重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
光重合開始剤の含有量は、インクの全質量に対して、1質量%以上10質量%以下が好ましく、1質量%以上8質量%以下がより好ましく、2質量%以上6質量%以下が更に好ましい。
【0069】
(酸素捕捉剤)
酸素捕捉剤としては、例えば、アミン系酸素捕捉剤、有機リン系酸素捕捉剤等が挙げられる。
アミン系酸素捕捉剤とは、アミノ基を有する酸素捕捉剤であり、例えば、4-(ジメチルアミノ)安息香酸エチル等が挙げられる。
有機リン系酸素捕捉剤とは、リン原子を有する酸素捕捉剤であり、例えば、トリフェニルフォスフィン(TPP)、トリエチルフォスファイト(TEP)等が挙げられる。
中でも、安全性の観点から、アミン系酸素捕捉剤が好ましく、特に、4-(ジメチルアミノ)安息香酸エチルが好ましい。
【0070】
酸素捕捉剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
酸素捕捉剤の含有量は、インクの全質量に対して、0.1質量%以上0.5質量%以下が好ましく、0.1質量%以上0.4質量%以下がより好ましい。
【0071】
(重合禁止剤)
重合禁止剤としては、例えば、フェノール系重合禁止剤(例えば、p-メトキシフェノール、クレゾール、t-ブチルカテコール、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-エチル-6-ブチルフェノール)、4,4'-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)等)、ヒンダードアミン、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)、ヒドロキノン等の周知の重合禁止剤が挙げられる。
【0072】
重合禁止剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
重合禁止剤の含有量は、インクの全質量に対して、0.1質量%以上1質量%以下が好ましく、0.2質量%以上0.6質量%以下がより好ましい。
【0073】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、例えば、シリコーン系界面活性剤、アクリル系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等の周知の界面活性剤が挙げられる。
特に、界面活性剤の中でも、ラジカル重合性基を有する界面活性剤が好ましく、ラジカル重合性基を有するシリコーン系界面活性剤(例えば、エボニック社のTEGO(登録商標) RAD 2010、TEGO(登録商標) RAD 2011など)が特に好ましい。
【0074】
界面活性剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
インクにおける界面活性剤の含有量は、インクの全質量に対して、0.1質量%以上0.5質量%以下が好ましく、0.1質量%以上0.4質量%以下がより好ましい。
【0075】
(粒状物)
特定インクは、造形物の強度を高める観点から、粒状物を含んでいてもよい。
粒状物としては、インクの強度補強が図れれば特に制限はなく、無機粒状物、有機粒状物のいずれであってもよい。
例えば、粒状物としては、造形物に透明性を付与しつつ強度補強が可能となる、二酸化ケイ素粒子;造形物に色味を付与しつつ強度補強が可能となる、カーボンブラック等の黒色粒状物;酸化チタン粒子及び酸化アルミニウム粒子等の白色粒状物;が挙げられる。
なお、造形物に色味を付与しつつ強度補強が可能となる粒状物として、その他、例えば、黄色の顔料、マゼンタ色の顔料、シアン色の顔料等が挙げられる。
【0076】
(その他の添加剤)
その他の添加剤としては、例えば、着色剤、溶剤、増感剤、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、増粘剤、分散剤、重合促進剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)等の周知の添加剤が挙げられる。
【0077】
[インクの特性]
・粘度
インクの25℃における粘度は、インク内の気泡の保持性の観点、三次元造形装置への適用性の観点等から、1mPa・s以上10,000mPa・s以下であることが好ましく、10mPa・s以上1,000mPa・s以下であることが好ましく、10mPa・s以上500mPa・s以下であることが更に好ましい。
ここで、粘度は、東機産業(株)のTVE-25Lを測定装置として用い、測定温度は25℃、せん断速度は200(1/s)の条件で測定する。
【0078】
・表面張力
インクの表面張力は、例えば、20mN/m以上35mN/m以下の範囲が好ましく挙げられ、24mN/m以上30mN/m以下の範囲がより好ましい。
ここで、表面張力は、ウイルヘルミー型表面張力計(協和界面科学(株))を用い、23℃、55%RHの環境において測定した値である。
【0079】
<三次元造形物の製造方法及び三次元造形装置>
本実施形態に係る三次元造形物の製造方法は、インクを吐出する吐出工程と、前記吐出工程で吐出されたインクに、当該インクを硬化させる光を照射する光照射工程と、を有する。そして、吐出工程で用いるインクには、既述の本実施形態に係るインクが適用される。
本実施形態に係る三次元造形物の製造方法は、以下の、本実施形態に係る三次元造形装置にて実施され、三次元造形物が製造される。
即ち、本実施形態に係る三次元造形装置は、本実施形態に係るインクを収容し、前記インクを吐出する吐出部と、前記吐出部から吐出されたインクに、当該インクを硬化させる光を照射する光照射部と、を備えた三次元造形装置である。
上記三次元造形装置には、インクを収容し、三次元造形装置に着脱されるようカートリッジ化されたインクカートリッジを備えていてもよい。
【0080】
なお、三次元造形装置は、インクを収容しインクを吐出する第1吐出部と、サポート材(支持材ともいう)を収容しサポート材を吐出する第2吐出部と、吐出したインク及びサポート材を硬化する光を照射する光照射部と、を備えてもよい。
第1吐出部、第2吐出部、及び光照射部を備えた三次元造形装置では、インクカートリッジに加え、サポート材を収容し三次元造形装置に着脱されるようカートリッジ化されたサポート材カートリッジ(即ち、支持材カートリッジ)を備えてもよい。
また、第1吐出部、第2吐出部、及び光照射部を備えた三次元造形装置では、例えば、インクを吐出し光照射により硬化して造形物を形成し、サポート材を吐出し光照射により硬化して造形物の少なくとも一部を支持するサポート部(支持部)を形成する。そして、造形物の形成後、サポート部を除去して、目的とする三次元造形物を製造する。
【0081】
以下、本実施形態に係る三次元造形装置の一例として、第1吐出部、第2吐出部、及び光照射部を備えた三次元造形装置について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る三次元造形装置のうち、第1吐出部、第2吐出部、及び光照射部を備えた三次元造形装置の一例を示す概略構成図である。
【0082】
本実施形態に係る三次元造形装置101は、インクジェット方式の三次元造形装置である。図1に示すように、三次元造形装置101は、例えば、造形ユニット10と、造形台20と、を備えている。また、三次元造形装置101は、装置に脱着されるように、インクを収容するインクカートリッジ30と、サポート材を収容するサポート材カートリッジ32と、を備えている。なお、図1中、MDは造形物を示し、Bは造形物内の気泡を示し、SPはサポート部を示す。
【0083】
造形ユニット10は、例えば、インクの液滴を吐出するインク吐出ヘッド12(第1吐出部の一例)と、サポート材の液滴を吐出するサポート材吐出ヘッド14(第2吐出部の一例)と、光を照射する光照射装置16とを備えている。その他、造形ユニット10は、図示しないが、例えば、造形台20上に吐出したインク及びサポート材のうち、余分なインク及びサポート材を除去し、平坦化する回転ローラを備えていてもよい。
【0084】
造形ユニット10は、例えば、不図示の駆動装置により、造形台20の造形領域上を、主走査方向と、これと交差(例えば直交)する副走査方向に移動する方式(所謂、キャリッジ方式)となっている。
【0085】
インク吐出ヘッド12及びサポート材吐出ヘッド14は、各々、各材の液滴を圧力により吐出するピエゾ方式(圧電方式)の吐出ヘッドが適用されている。各吐出ヘッドは、これに限られず、造形台20上にインクを吐出又は押し出すことが可能であれば、特に制限はなく、例えば、ポンプによる圧力により、各材を吐出する方式の吐出ヘッドであってもよい。
また、各吐出ヘッドは、製造する造形物の大きさ、インクの粘度等に応じて、適宜、決定されればよく、インクジェット方式、インジェクター方式、及び印刷方式のいずれであってもよい。
【0086】
インク吐出ヘッド12は、例えば、インクカートリッジ30と不図示の供給管を通じて連結されている。そして、インクカートリッジ30により、インク吐出ヘッド12へインクが供給される。
サポート材吐出ヘッド14は、例えば、サポート材カートリッジ32と不図示の供給管を通じて連結されている。そして、サポート材カートリッジ32により、サポート材吐出ヘッド14へインクが供給される。
【0087】
インク吐出ヘッド12及びサポート材吐出ヘッド14は、各々、有効な吐出領域(インク及びサポート材を吐出するノズルの配置領域)が、造形台20の造形領域よりも小さい短尺状の吐出ヘッドとなっている。
なお、インク吐出ヘッド12及びサポート材吐出ヘッド14は、各々、例えば、有効な吐出領域(インク及びサポート材を吐出するノズルの配置領域)が、造形台20上の造形領域幅(造形ユニット10の移動方向(主走査方向)と交差(例えば直交)する方向の長さ)以上とした長尺状のヘッドとしてもよい。この場合、造形ユニット10は、主走査方向のみに移動する方式とする。
【0088】
光照射装置16は、第1及び第2インクが硬化する波長の光を照射する装置であればよく、例えば、紫外光を照射する紫外線照射装置が用いられる。
紫外線照射装置としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、デイープ紫外線ランプ、マイクロ波を用い外部から無電極で水銀灯を励起するランプ、紫外線レーザ、キセノンランプ、UV-LED(紫外線発光ダイオード)等の光源を有する装置が適用される。紫外線照射装置は、三次元造形物の製造時における温度上昇を抑制する観点から、これらの中でも、紫外線レーザ、UV-LED(紫外線発光ダイオード)が好ましい。
【0089】
造形台20は、インク及びサポート材が吐出されて造形物が形成される造形領域を有する面を有している。そして、造形台20は、不図示の駆動装置により、昇降する。
【0090】
次に、本実施形態に係る三次元造形装置101の動作(即ち、三次元造形物の製造方法)について説明する。
【0091】
まず、不図示のコンピュータ等により、例えば、インクにより造形する三次元造形物の三次元CAD(Computer Aided Design)データから、三次元造形用のデータとして、例えば、造形物を形成するための二次元形状データ(スライスデータ)を生成する。このとき、サポート材によりサポート部を形成するための二次元形状データ(スライスデータ)も生成する。サポート部を形成するための二次元形状データは、下方位置の造形物の幅より、上方位置の造形物の幅が大きく、所謂オーバーハングしている部分がある場合、このオーバーハング部分を下方より支持するようにサポート部が形成されるようになっている。
【0092】
次に、造形物を形成するための二次元形状データに基づいて、造形ユニット10を移動させながら、インク吐出ヘッド12から、インクを吐出し、造形台20上に、インクの層を形成する。そして、光照射装置16により、インクの層へ光を照射し、インクを硬化し、造形物の一部となる層を形成する。
【0093】
必要に応じて、サポート部を形成するための二次元データに基づいて、造形ユニット10を移動させながら、サポート材吐出ヘッド14から、サポート材を吐出し、造形台20上に、インクの層と隣接して、サポート材の層を形成する。そして、光照射装置16により、サポート材の層へ光を照射し、サポート材を硬化し、サポート部の一部となる層を形成する。
このようにして、造形物の一部となる層と、必要に応じて、サポート部の一部となる層とからなる第1層LAY1を形成する(図2参照)。ここで、図2中、MD1は、第1層LAY1における造形物の一部となる層を示し、SP1は、第1層LAY1におけるサポート部の一部となる層を示す。
【0094】
次に、造形台20を下降する。この造形台20の下降は、次に形成する第2層(造形物の一部となる層と、必要に応じて、サポート部の一部となる層とからなる第2層)の厚み分とする。
【0095】
次に、第1層LAY1と同様に、造形物の一部となる層と、必要に応じて、サポート部の一部となる層とからなる第2層LAY2を形成する(図3参照)。ここで、図3中、MD2は、第2層LAY2における造形物の一部となる層を示し、SP2は、第2層LAY2におけるサポート部の一部となる層を示す。
【0096】
そして、この第1層LAY1及び第2層LAY2を形成する動作を繰り返し実施し、第n層LAYnまで形成する。これにより、少なくとも一部がサポート部でサポートされた造形物が形成される(図4参照)。ここで、図4中、MDnは、第n層LAYnにおける造形物の一部となる層を示す。
図4にて、MDは造形物を示し、Bは造形物内の気泡を示し、SPはサポート部を示す。
【0097】
その後、造形物からサポート部を除去すると、目的とする三次元造形物が得られる。
ここで、サポート部の除去は、例えば、手で取り外す方式(ブレークアウェイ方式)、気体を噴射して取り外す方式の他、サポート部を有する状態の三次元造形物を温水中に浸漬してサポート部を溶解させて除去する方法(浸漬法)、サポート部を有する状態の三次元造形物に温水を噴射しサポート部を溶解させつつ水圧で除去する方法(噴射法)等が採用される。簡易な除去方法という観点で、浸漬法による除去がより好ましい。浸漬法では、超音波の照射も好適に併用される。
なお、得られた三次元造形物は、研磨処理等の後処理を施してもよい。
【0098】
なお、上記の第1層、第2層、第n層等の各層を形成するために吐出されるインクは、複数種であってもよい。複数種のインクを用いる場合、各々のインクから得られる造形物の界面の密着性を高める観点から、隣接する領域に吐出されるインクは、表面張力差が小さい方が好ましく、具体的には、表面張力差が30N/m以下(より好ましくは15N/m以下)であることが好ましい。
【0099】
また、上記した三次元造形物の製造方法では、インク吐出ヘッド12から吐出されたインクにて、1つのインクの層が形成された後、そのインクの層へ光を照射し、インクを硬化しているが、この方法に限定されるものではない。
例えば、三次元造形物の製造方法は、複数種のインクを用い、インク吐出ヘッド12から異なるインクをそれぞれ吐出して複数のインクの層を形成した後に、一括して光を照射して、インクを硬化させてもよい。この方法の場合も、複数種のインクを用いている。そのため、各々のインクから得られる造形物の界面の密着性を高める観点から、隣接するインクの層を形成するために用いられるインクは、表面張力差が小さい方が好ましく、具体的には、表面張力差が30N/m以下(より好ましくは15N/m以下)であることが好ましい。
【0100】
三次元造形装置は、上記本実施形態に係るインクが適用される装置であればよく、インクを吐出する吐出部を有するものにも限定されない。
例えば、本実施形態に係る別の三次元造形装置は、インクを収容する収容部と、収容部内のインクを硬化する光を照射する光照射部と、を備える三次元造形装置であってもよい。そして、インクには、上記本実施形態に係るインクが適用される。
このような三次元造形装置は、収容部に収容されたインクに対し、出力対象の断面を露光する手法を採用した装置である。
【0101】
<造形物>
本実施形態に係る造形物は、樹脂を含み、且つ、造形物の全体積に対して5体積%以上95体積%以下の気泡を有し、当該気泡の径及び密度の少なくとも一方が、表面から深さ方向に沿って増大又は減少している領域を有する、造形物である。
上記の造形物中の気泡の割合についても、以下、気泡率ともいう。
気泡の径及び密度の増大又は減少は、段階的であってもよいし、連続的であってもよい。
【0102】
本実施形態に係る造形物は、既述の、本実施形態に係るインクにより好適に製造しうる。
本実施形態に係るインクは、既述のように、全体積に対して5体積%以上95体積%以下の気泡を有する。気泡を有するインクを用いることで、上記のように、気泡の径及び密度の少なくとも一方が、表面から深さ方向に沿って増大又は減少する領域を形成しうる。
【0103】
本実施形態に係る造形物における気泡の存在状態について、図面を用いて説明する。
ここで、図5は、本実施形態に係る造形物における気泡の存在の一例を説明する概略断面図である。
図5に示す通り、造形物MDは気泡Bを含む領域(図5中では点線で囲んだ領域X)を有し、気泡Bの径は、表面Sから深さ方向(即ち、図5における矢印Y方向)に沿って減少している。
つまり、造形物MDの領域Xにおいて、表面Sに近い領域の気泡Bは、表面Sから離れた領域の気泡Bよりも径が大きい。
【0104】
図5に示す造形物MDを得るためには、本実施形態に係るインクであって、気泡の径が異なる複数種のインク(例えば、気泡の径が異なる3種のインク)を用い、既述の、本実施形態に係る三次元造形装置及び三次元造形物の製造方法を用いればよい。
なお、気泡Bの密度が、表面から深さ方向に沿って増大又は減少する領域を形成するためには、本実施形態に係るインクであって、気泡率が異なる複数種のインクを用い、既述の、本実施形態に係る三次元造形装置及び三次元造形物の製造方法を用いればよい。
【0105】
本実施形態に係る造形物における気泡率は、造形物の用途に応じて、決定されればよい。
例えば、本実施形態に係る造形物は、衝撃吸収率を70%以上95%以下とする場合には、気泡率としては、5%以上95%以下が好ましく、10%以上95%以下がより好ましく、15%以上95%以下が更に好ましい。
同様に、例えば、アスカーC硬度を10度以上100度以下とする場合には、気泡率としては、5%以上95%以下が好ましく、5%以上90%以下がより好ましく、10%以上90%以下が更に好ましい。
【0106】
本実施形態に係る造形物における気泡の径は、造形物の用途に応じて、決定されればよい。
例えば、本実施形態に係る造形物は、衝撃吸収率を70%以上95%以下とする、及び、アスカーC硬度を10度以上100度以下とする場合には、気泡の個数平均径は、0.01μm以上200μm以下であることが好ましく、1μm以上200μm以下であることがより好ましく、10μm以上150μm以下が更に好ましい。
【0107】
本実施形態に係る造形物における気泡は、クローズドセル構造を有していてもよいし、オープンセル構造を有していてもよい。
【0108】
気泡がクローズドセル構造を有している場合、衝撃吸収性に優れる造形物をなりえる。特に、気泡がクローズドセル構造を有しており、気泡の径及び密度の少なくとも一方が、表面から深さ方向に沿って減少する領域を有する場合、この領域を有する造形物は、より優れた衝撃吸収性が得られる。
また、気泡がオープンセル構造を有している場合、吸音性、光の透過性、吸熱性等に優れる造形物となりえる。特に、気泡がオープンセル構造を有しており、気泡の径及び密度の少なくとも一方が、表面から深さ方向に沿って減少する領域を有する場合、この領域を有する造形物は、より優れた吸音性、光の透過性、吸熱性等が得られる。
【0109】
なお、本実施形態に係る造形物において、気泡の径及び密度の少なくとも一方が、表面から深さ方向に沿って増大する領域を有する場合、この領域を有する造形物は、表面の汚染、劣化、変形、傷を防止しつつ、耐衝撃性を備える部材、例えば、パッキン、摺動部材、床材、保温材などに好適である。
【0110】
本実施形態に係る造形物における気泡率、気泡の個数平均径、独立気泡率は、以下のようにして測定する。
即ち、造形物を厚さ方向に切断し、反射型電子顕微鏡(SEM:SU3800、(株)日立ハイテクノロジーズ)で、断面画像を画像解析し、気泡のサイズ及び面積を解析する。なお、画像解析には、粒度分布測定ソフトウエア:Mac-View((株)マウンテック)を使用した。
気泡率は、解析した断面画像中の気泡の全面積/解析した断面画像の全面積×100にて求められる。
気泡の個数平均径は、解析した断面画像中の気泡10個の円相当径から求められる。
独立気泡率は、解析した断面画像中の独立気泡の全面積/解析した断面画像中の気泡の全面積×100で求められる。
独立気泡は、断面画像中、全てが壁面(即ち、造形物の固相部)に囲まれている気泡を指す。
なお、気泡がオープンセル構造を有する場合、気泡の径は、以下のようにして測定する。
即ち、連結気泡をその形状等をもとに疑似的に分離して独立気泡とし、この独立気泡の個数平均径を求める。すなわち、連結気泡が2個の気泡が連結した形状であれば、疑似的に分離し、2個の独立気泡として個数平均径として計算する。
【0111】
[好ましい物性]
本実施形態に係る造形物は、衝撃吸収率及びアスカーC硬度において好ましい範囲がある。
衝撃吸収率及びアスカーC硬度が後述の範囲であることで、衝撃吸収性に優れ且つ変形し難い造形物であることとなり、例えば、インソール、足又は膝への衝撃を吸収するプロテクター、サポーター等のように、人体に密着させて利用される用途に好適である。
また、ハンドグリップ等のスポーツ用品、医療機器の部材、ヘルスケア機器の部材の用途にも適用しうる。
【0112】
(衝撃吸収率)
本実施形態に係る造形物は、衝撃吸収率が70%以上95%以下であることが好ましく、70%以上93%以下であることがより好ましい。
造形物における衝撃吸収率は、以下のようにして測定する。
まず、造形物を50mm×50mm×5mm(厚さ)の大きさに切り出し、タックによる影響を排除するために表裏にラップを貼りつけたものをシート状サンプルとする。
シリコンゴムシート(厚み13mm)を下地として用い、この上に、シート状サンプルを載せ、落球法にて衝撃吸収率の測定を行う。
衝撃吸収率は、内径55mmの菅内で、外径17mmの金属球を高さ50cm(h1)から落下させ、シート状サンプルから鉄球が跳ね返る高さ(h2)を動画撮影により観察し、求める。
h1及びh2から、下記式(1)にて衝撃吸収率η(%)を算出した。
式(1) η(%)=(h1-h2)/h1×100
【0113】
(アスカーC硬度)
本実施形態に係る造形物は、アスカーC硬度が10度以上100度以下であることが好ましく、40度以上80度以下であることが好ましく、50度以上75度以下であることが更に好ましい。
造形物におけるアスカーC硬度は、以下のようにして測定する。
造形物を25mm×40mm×3mm(厚さ)の大きさに切り出し、これを測定サンプルとする。
続いて、この測定サンプルの表面に、アスカーゴム硬度計C型(高分子計器(株))の測定針を押圧して、アスカーC硬度の測定を行う。
【実施例
【0114】
以下、実施例により本実施形態を詳細に説明するが、本実施形態は、これら実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0115】
<実施例1~7及び参考例1~2:インク1~9の調製>
下記表1に記載の各成分を混合し、得られた液状物に対し、リビングエナジー社の気泡発生装置(LE3FS型)を用いて、気泡を混入させて、インク1~7を調製した。
なお、気泡率及び気泡の径については、気泡発生装置の気体の吐出圧力及び吐出量、並びに、処理時間(気泡を混入させる時間)にて、適宜、調整した。
また、参考例1のインク8及び参考例2のインク9については、気泡発生装置を用いず、下記表1に記載の各成分を混合して調製した。
表1中、「-」の記載は、該当する化合物を含有していないこと、又は、該当する数値がないことを示している。
【0116】
得られたインクにおける気泡率及び気泡の径、並びに、インクの粘度及び表面張力を既述の方法で測定した。
結果を表1に示す。
【0117】
下記表1、比較例1、及び実施例9で使用した各成分の詳細は以下の通りである。
(オリゴマー)
・UA-3573AB:2官能のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(「UA-3573AB」新中村化学工業(株)、分子量2700)
・UV-7000B:2~3官能のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(「UV-7000B」三菱ケミカル(株)、分子量3500)
【0118】
(モノマー)
・DCPA:ジシクロペンタニルアクリレート(東京化成工業(株)、ガラス転移温度Tg:120℃)
・IBXA:イソボニルアクリレート(「IBXA」大阪有機化学工業(株)、ガラス転移温度Tg:97℃)
・P2H-A:フェノキシジエチレングリコールアクリレート(「ライトアクリレートP2H-A」共栄社化学(株)、ガラス転移温度Tg:-21℃)
・PO-A:フェノキシエチルアクリレート(「ライトアクリレートPO-A」共栄社化学(株)、ガラス転移温度Tg:-22℃)
・THFA:テトラヒドロフルフリルアクリレート(「ビスコート#150,THFA」大阪有機化学工業(株)、ガラス転移温度Tg:-12℃)
【0119】
(その他の成分)
・Genorad 21:重合禁止剤(「Genorad 21」Rahn AG社(スイス))
・BAPO:光重合開始剤(「Omnirad 819」IGM Resins社)
・EDB:酸素捕捉剤(「Omnirad EDB(4-(ジメチルアミノ)安息香酸エチル)」IGM Resins社)
・TEGO Rad 2011:界面活性剤(「TEGO(登録商標) Rad 2011」エボニック社)
【0120】
[造形物の作製]
得られた各インク1~9を用いて、以下のようにして、三次元造形物を得た。
まず、シリコーン樹脂からなる枠材で囲んだ容器にインクを流し込み、出力1500Wの高圧水銀ランプで5分間UV照射し、50mm×50mm×5mm(厚さ)のシート状の造形物を形成し、シート状の評価サンプルを得た。
【0121】
[測定及び評価]
(衝撃吸収率及びアスカーC硬度の測定)
得られたシート状の評価サンプルについて、既述の方法で、衝撃吸収率及びアスカーC硬度を測定した。結果を表1に示す。
【0122】
(気泡状態の確認)
得られたシート状の評価サンプルについて、既述の方法で、気泡がクローズドセル構造又はオープンセル構造を有しているかについて確認した。結果を表1に示す。
【0123】
(造形物の製造性)
上述のようにシート状の評価サンプル(造形物)を得る上で、目的とする形状(50mm×50mm×5mmのシート形状)を得るために、切削加工(即ち、カッティング加工)を不要とするものを「A」とし、カッティング加工を要するものを「B」とした。結果を表1に示す。
【0124】
(経時での形状安定性)
得られたシート状の評価サンプルについて、50℃90%の環境下に20日間保管し、保管後の形状を目視にて観察した。結果を表1に示す。
保管前と保管後とで形状に変化があるかを判断し、以下の指標にて評価した。
・A:保管前と保管後とで形状に変化が見られない
・B:保管前と保管後とで形状の一部に変化が見られた
【0125】
【表1】
【0126】
<比較例1:組成物C1の調製>
下記成分を混合し、組成物C1を調製した。
・UA-3573AB : 3.7質量部
・DCPA : 40質量部
・P2H-A : 50質量部
・発泡剤 : アドバンセルEML101(膨張開始温度115℃-130℃、積水化学工業(株)):1質量部
・Genorad : 0.4質量部
・BAPO : 3質量部
・TEGO RAD2011 : 1.8質量部
・EDB : 0.1質量部
組成物C1の25℃における粘度は、25mPa・sであり、表面張力は23mN/mであった。
【0127】
[造形物の作製]
なお、組成物C1を用いて、以下のようにして、三次元造形物を得た。
シリコーン樹脂からなる枠材(内径が50mm×50mmである正方形の枠材)で囲んだ容器にインクを流し込み、出力1500Wの高圧水銀ランプで10分間UV照射し、造形物を作製した。UV照射後に冷却された造形物は、発泡剤により膨れ上がり、5mm厚の厚みに調整するには、切削(即ちカッティング)が必要であった。
以上のことから、比較例1は、既述した造形物の製造性が「B」と評価される。
【0128】
<実施例8>
インク3~5及び9を用い、図5のように、気泡の径が、表面から深さ方向に沿って減少しているシート状の造形物を作製した。
具体的には、三次元造形装置は、ディスペンサー型5軸塗布装置(SSI Japan(株))を使用し、紫外線照射光源としてINTEGRATION TECHNOLOGY LTD社のSubzero-055(100w/cmの強度)を選択し、これらを駆動部と制御部とからなる造形装置に設置し、これを試験用の造形装置とした。
なお、造形装置は、一度の走査(スキャン)毎に厚み500μmのインクの層を形成するものであって、まず、インク9の層を厚み1000μmまで積層し、続いて、インク3の層を厚み1000μmまで積層し、次いで、インク4の層を厚み1000μmまで積層し、続いて、インク5の層を厚み1000μmまで積層した後、紫外線照射による硬化処理を行い、三次元造形物を得た。
また、造形装置では、インクは、遮光条件下、保存タンクから送液ポンプによりサンゴバン社のTygon 2375耐薬チューブを経由し、日本ポール(株)のプロファイル・スター A050フィルター(ろ過精度5μm)を通過させ、異物を除去した後にインクジェットヘッドへ送液する仕組みとした。
この三次元造形装置により、15mm×15mm×4mm(厚さ)のシート状の造形物を得た。
【0129】
得られたシート状の造形物は、造形物の全体積に対して5体積%以上95体積%以下の気泡を有し、気泡の径が、表面(インク5の層の表面)から深さ方向に沿って減少している領域を有するものであった。具体的には、得られたシート状の造形物は、インク5の層中の気泡の個数平均径が120μmであり、インク4の層中の気泡の個数平均径が70μmであり、インク3の層中の気泡の個数平均径が20μmであって、インク5の層の表面から深さ方向に沿って気泡の径が減少する領域を有していた。
得られたシート状の造形物について、実施例1と同様に、衝撃吸収率及びアスカーC硬度の測定を行った。その結果、衝撃吸収率は90%であり、アスカーC硬度は63度であった。
なお、シート状の造形物において、既述の方法で、気泡がクローズドセル構造又はオープンセル構造を有しているかについて確認した結果、クローズドセル構造を有していることが分かった。
【0130】
<実施例9>
下記成分を混合し、液状物を得た。
・UA-3573AB : 3.7質量部
・DCPA : 41質量部
・P2H-A : 50質量部
・Genorad : 0.4質量部
・BAPO : 3質量部
・TEGO RAD2011 : 1.8質量部
・EDB : 0.1質量部
【0131】
続いて、得られた液状物に対し、下記の装置及び条件で気泡を混入させて、インク10-1及び10-2を調製した。
-装置及び条件-
・装置:SGA膜を用いたSPGテクノ(株)の高速ミニキット(KH-125)
インク10-1の場合の装置条件:外圧方式、SPG膜(孔径50μm)、窒素ガス圧力0.3mPa
インク10-2の場合の装置条件:外圧方式、SPG膜(孔径10μm)、窒素ガス圧力0.15mPa
・ポンプ送液量:0.1L/min
・液状物量:200g
・循環時間:10min
得られたインク10-1及び10-2の25℃における粘度は、いずれも、25mPa・sであり、表面張力は23mN/mであった。
また、得られたインク10-1の気泡率は70%であり、気泡の個数平均径は140μmであった。また、得られたインク10-2の気泡率は70%であり、気泡の個数平均径は40μmであった。
【0132】
110mm×110mm×5mm(厚さ)のシリコーン製ゴムシートの中央部を50mm×50mmの四角形にくりぬいたものを型とした。
120mm×120mm×5mm(厚さ)の下側シート上に、上記の型を載せた後、インク10-2を型半分量投入後、ただちにインク10-1を型半分量投入し、5分放置した。その後、インク10-2及び10-1が投入された型の上部に、120mm×120mm×1mm(厚さ)の上蓋シートと、最上部蓋としての120mm×120mm×5mm(厚さ)のガラス板と、をこの順に載せて、90秒放置後、ガラス板側から出力1500Wの高圧水銀ランプにてUV照射を5分間行った。続いて、最上部蓋のガラス板はそのままで、上蓋シートと下側シートに挟まれた型を上下反対にし、ガラス板側から出力1500Wの高圧水銀ランプにてUV照射を5分間行った。
引き続き、上蓋シートと下側シートに挟まれた型を再度上下反対にしてから、ガラス板側から出力1500Wの高圧水銀ランプにてUV照射を3分間行い、続けて、上蓋シートと下側シートに挟まれた型をもう一度上下反対にしてから、ガラス板側から出力1500Wの高圧水銀ランプにてUV照射を3分間行った。
その後、室温にて放置後、得られた造形物を型から外した。
以上のようにして、15mm×15mm×5mm(厚さ)のシート状の造形物を得た。
【0133】
得られたシート状の造形物は、全体の気泡率が70%であり、インク10-1の層中の気泡の個数平均径が140μmであり、インク10-2の層中の気泡の個数平均径が40μmであって、インク10-1の層の表面から深さ方向に沿って気泡の径が減少する領域を有していた。
得られたシート状の造形物について、実施例1と同様に、衝撃吸収率及びアスカーC硬度の測定を行った。その結果、衝撃吸収率は95%であり、アスカーC硬度は50度であった。
なお、シート状の造形物において、既述の方法で、気泡がクローズドセル構造又はオープンセル構造を有しているかについて確認した結果、オープンセル構造を有していることが分かった。
【0134】
(造形物の吸音性)
得られた造形物について、管内法による垂直入射吸音率測定装置を使用して、吸音率を測定した。
具体的には、まず、得られた造形物について、下記装置の試料ホルダの径に合わせて切削し、調整した。
また、インク10-1の層及びインク10-2の層からなるシート状の造形物は、インク10-1の層側から吸音率を測定した。
JIS A 1405-2に準拠し、100Hz~6000Hzの周波数での垂直入射吸音率を測定した。
・装置:垂直入射吸音測定システムSR-4100((株)小野測器)
・条件:インピーダンス管A管(長さ835mm、内径100φ);測定周波数:50Hz~1.6KHz
インピーダンス管B管(長さ500mm、内径29φ);測定周波数:500Hz~6.4KHz
インク10-1の層及びインク10-2の層からなるシート状の造形物は、500Hzでの吸音率が0.25以上、1200Hzでの吸音率が0.3以上、6000Hzでの吸音率が0.3以上であり、吸音性に優れると評価した。
【符号の説明】
【0135】
10 造形ユニット
12 インク吐出ヘッド
14 サポート材吐出ヘッド
16 光照射装置
20 造形台
30 インクカートリッジ
32 サポート材カートリッジ
101 三次元造形装置
B 気泡
図1
図2
図3
図4
図5