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特許7500967赤外光カットフィルターの製造方法、固体撮像素子用フィルター、および、固体撮像素子
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  • 特許-赤外光カットフィルターの製造方法、固体撮像素子用フィルター、および、固体撮像素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】赤外光カットフィルターの製造方法、固体撮像素子用フィルター、および、固体撮像素子
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20240611BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G02B5/22
H01L27/146 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019233355
(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公開番号】P2021103199
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】岩田 玲子
(72)【発明者】
【氏名】平井 友梨
(72)【発明者】
【氏名】明野 康剛
【審査官】小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0076258(US,A1)
【文献】国際公開第2016/117596(WO,A1)
【文献】特開2011-186398(JP,A)
【文献】特開平11-256098(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0315791(US,A1)
【文献】特開2017-036457(JP,A)
【文献】特開2019-174813(JP,A)
【文献】国際公開第2018/174147(WO,A1)
【文献】特開2017-139286(JP,A)
【文献】特開2019-180048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/22
H01L 27/146
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外光吸収色素を含む赤外光カット層を形成すること、
前記赤外光カット層上に剥離液に対する保護層を形成すること、
前記保護層上にレジストパターンを形成すること、
前記レジストパターンを用いて前記保護層および前記赤外光カット層をドライエッチングによってパターニングすること、および、
前記剥離液を用いて前記レジストパターンを前記保護層から剥離すること、を含む
赤外光カットフィルターの製造方法。
【請求項2】
前記保護層を形成することは、
エポキシ基と、前記エポキシ基と反応する官能基とが架橋した架橋構造を含む樹脂によって前記保護層を形成することを含む
請求項1に記載の赤外光カットフィルターの製造方法。
【請求項3】
前記保護層を形成することは、
フェノール性水酸基とエポキシ基とが架橋した架橋構造を含む樹脂によって前記保護層を形成することを含む
請求項2に記載の赤外光カットフィルターの製造方法。
【請求項4】
前記保護層を形成することは、
4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、グリシジルメタクリレートを少なくとも用いて形成されたアクリル樹脂によって前記保護層を形成することを含む
請求項3に記載の赤外光カットフィルターの製造方法。
【請求項5】
前記保護層を形成することは、
4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、グリシジルメタクリレートを用いて前記アクリル樹脂を形成する際に、
前記アクリル樹脂の形成に用いられたアクリルモノマーの総和を100質量%とする場合に、
4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートを20質量%以上用い、かつ、グリシジルメタクリレートを5質量%以上用いることを含む
請求項4に記載の赤外光カットフィルターの製造方法。
【請求項6】
前記保護層を形成することは、
4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、および、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートおよびグリシジルメタクリレートと共重合が可能なモノマーを用いて形成された前記アクリル樹脂によって前記保護層を形成することを含む
請求項5に記載の赤外光カットフィルターの製造方法。
【請求項7】
前記共重合が可能なモノマーは、側鎖に芳香環を持つアクリルモノマーである
請求項6に記載の赤外光カットフィルターの製造方法。
【請求項8】
前記レジストパターンを前記保護層から剥離することは、
前記剥離液としてN‐メチルピロリドンまたはジメチルスルホキシドを用いることを含む
請求項7に記載の赤外光カットフィルターの製造方法。
【請求項9】
第1光電変換素子に対して光の入射側に位置する赤色用フィルター、緑色用フィルター、および、青色用フィルターの三色のカラーフィルターと、
第2光電変換素子に対して光の入射側に位置する赤外光パスフィルターと、
前記カラーフィルターに対して光の入射側に位置する赤外光カットフィルターと、を備え、
前記赤外光カットフィルターは、赤外光カット層と、前記赤外光カット層に積層され、かつ、前記赤外光カット層に対して光の入射側に位置する保護層と、を備え、
前記保護層を形成する材料は、エポキシ基と、前記エポキシ基と反応する官能基とが架橋した架橋構造を含む樹脂を含み、
前記保護層を形成する材料は、アクリル樹脂であり、
前記アクリル樹脂の総和を100質量%とする場合に、前記アクリル樹脂は、50質量%以上のフェニルメタクリレートに由来する繰り返し単位、25質量%以上の4‐ヒドロキシフェニルメタクリートに由来する繰り返し単位、および、5質量%以上のグリシジルメタクリレートに由来する繰り返し単位を含む
固体撮像素子用フィルター。
【請求項10】
前記第1光電変換素子と、
前記第2光電変換素子と、
請求項9に記載の固体撮像素子用フィルターと、を備える
固体撮像素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外光カットフィルターの製造方法、固体撮像素子用フィルター、および、固体撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOSイメージセンサーおよびCCDイメージセンサーなどの固体撮像素子は、光の強度を電気信号に変換する光電変換素子を備える。固体撮像素子の一例は、複数の色に対応する光を検出することが可能である。固体撮像素子は、各色用のカラーフィルターと各色用の光電変換素子とを備え、各色用の光電変換素子によって各色用の光を検出する(例えば、特許文献1を参照)。固体撮像素子の他の例は、有機光電変換素子と無機光電変換素子とを備え、カラーフィルターを用いずに、各光電変換素子によって各色の光を検出する(例えば、特許文献2を参照)。
【0003】
固体撮像素子は、光電変換素子上に赤外光カットフィルターを備える。赤外光カットフィルターが有する赤外光吸収色素が赤外光を吸収することによって、各光電変換素子が検出し得る赤外光を光電変換素子に対してカットする。これによって、各光電変換素子での可視光の検出精度が高められる。赤外光カットフィルターは、例えば、赤外光吸収色素であるシアニン色素を含む(例えば、特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-060176号公報
【文献】特開2018-060910号公報
【文献】特開2007-219114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、固体撮像素子における画素サイズの微細化に伴い、赤外光カットフィルターの微細化が求められている。赤外光カットフィルターの微細化は、赤外光カットフィルター上に形成されたレジストパターンを用いたドライエッチングにより実現される。ドライエッチングを用いた赤外光カットフィルターのパターニングでは、まず、赤外光カットフィルター上にレジストパターンを形成する。次いで、レジストパターンを用いて赤外光カットフィルターをエッチングし、その後に、レジストパターンを赤外光カットフィルターから剥離する。赤外光カットフィルターからレジストパターンを剥離するために用いられる剥離液は、赤外光カットフィルターに接触することによって、赤外光カットフィルターが含む赤外光吸収色素の一部を赤外光カットフィルターの外部に溶出する。これによって、赤外光カットフィルターの分光特性が劣化してしまう。
【0006】
本発明は、赤外光カットフィルターの分光特性における劣化を抑制可能とした赤外光カットフィルターの製造方法、固体撮像素子用フィルター、および、固体撮像素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための赤外光カットフィルターの製造方法は、赤外光吸収色素を含む赤外光カット層を形成すること、前記赤外光カット層上に剥離液に対する保護層を形成すること、前記保護層上にレジストパターンを形成すること、前記レジストパターンを用いて前記保護層および前記赤外光カット層をドライエッチングによってパターニングすること、および、前記剥離液を用いて前記レジストパターンを前記保護層から剥離することと、を含む。
【0008】
上記課題を解決するための固体撮像素子用フィルターは、第1光電変換素子に対して光の入射側に位置する赤色用フィルター、緑色用フィルター、および、青色用フィルターの三色のカラーフィルターと、第2光電変換素子に対して光の入射側に位置する赤外光パスフィルターと、前記カラーフィルターに対して光の入射側に位置する赤外光カットフィルターと、を備える。前記赤外光カットフィルターは、赤外光カット層と、前記赤外光カット層に積層され、かつ、前記赤外光カット層に対して光の入射側に位置する保護層と、を備える。
【0009】
上記課題を解決するための固体撮像素子は、第1光電変換素子と、第2光電変換素子と、上述した固体撮像素子用フィルターと、を備える。
【0010】
上記各構成によれば、赤外光カット層が剥離液に接触することが保護層によって抑えられるため、赤外光カット層に剥離液が浸透することが抑えられる。これによって、赤外光カット層から赤外光吸収色素が溶出することが抑えられ、結果として、赤外光カットフィルターの分光特性における劣化が抑えられる。
【0011】
上記赤外光カットフィルターの製造方法において、前記保護層を形成することは、エポキシ基と、前記エポキシ基と反応する官能基とが架橋した架橋構造を含む樹脂によって前記保護層を形成することを含んでもよい。この構成によれば、保護層を形成する樹脂が架橋構造を含むため、赤外光カット層から赤外光吸収色素が溶出することがさらに抑えられる。
【0012】
上記赤外光カットフィルターの製造方法において、前記保護層を形成することは、フェノール性水酸基とエポキシ基とが架橋した架橋構造を有した樹脂によって前記保護層を形成することを含んでもよい。この構成によれば、保護層を形成する樹脂が架橋構造を含む樹脂であるため、赤外光カット層から赤外光吸収色素が溶出することがさらに抑えられる。
【0013】
上記赤外光カットフィルターの製造方法において、前記保護層を形成することは、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、グリシジルメタクリレートを少なくとも用いて形成されたアクリル樹脂によって前記保護層を形成することを含んでもよい。
【0014】
上記構成によれば、保護層が4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、グリシジルメタクリレートを用いて形成されることによって、赤外光カット層から赤外光吸収色素が溶出することがさらに抑えられる。
【0015】
上記赤外光カットフィルターの製造方法において、前記保護層を形成することは、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、グリシジルメタクリレートを用いて前記アクリル樹脂を形成する際に、前記アクリル樹脂の形成に用いられたアクリルモノマーの総和を100質量%とする場合に、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートを20質量%以上用い、かつ、グリシジルメタクリレートを5質量%以上用いることを含んでもよい。
【0016】
上記赤外光カットフィルターの製造方法において、前記保護層を形成することは、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、および、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートおよびグリシジルメタクリレートと共重合が可能なモノマーを用いて形成された前記アクリル樹脂によって前記保護層を形成することを含んでもよい。
【0017】
上記赤外光カットフィルターの製造方法において、前記共重合が可能なモノマーは、側鎖に芳香環を持つアクリルモノマーであってもよい。
【0018】
上記各構成によれば、アクリル樹脂を形成するための各モノマーの割合が上述した範囲に含まれるため、赤外光カット層から赤外光吸収色素が溶出することがさらに抑えられ、かつ、保護層を含む赤外光カットフィルターの耐熱性が維持される。
【0019】
上記赤外光カットフィルターの製造方法において、前記レジストパターンを前記保護層から剥離することは、前記剥離液としてN‐メチルピロリドンまたはジメチルスルホキシドを用いることを含んでもよい。
【0020】
上記構成によれば、剥離液が、N‐メチルピロリドンまたはジメチルスルホキシドであるため、保護層によって剥離液に対する赤外光吸収色素の溶出を抑えることが可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、赤外光カットフィルターの分光特性における劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一実施形態の固体撮像素子における構造を示す分解斜視図。
図2】赤外光カットフィルターの製造方法を説明するための工程図。
図3】赤外光カットフィルターの製造方法を説明するための工程図。
図4】赤外光カットフィルターの製造方法を説明するための工程図。
図5】赤外光カットフィルターの製造方法を説明するための工程図。
図6】赤外光カットフィルターの製造方法を説明するための工程図。
図7】赤外光カットフィルターの製造方法を説明するための工程図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1から図7を参照して、赤外光カットフィルターの製造方法、固体撮像素子用フィルター、および、固体撮像素子における一実施形態を説明する。以下では、固体撮像素子、赤外光カットフィルターの製造方法、および、実施例を順に説明する。なお、本実施形態において、赤外光は、0.7μm以上1mm以下の範囲に含まれる波長を有した光であり、近赤外光は、赤外光のなかで特に700nm以上1100nm以下の範囲に含まれる波長を有した光である。
【0024】
[固体撮像素子]
図1を参照して、固体撮像素子を説明する。図1は、固体撮像素子の一部における各層を分離して示す概略構成図である。
【0025】
図1が示すように、固体撮像素子10は、固体撮像素子用フィルター10F、および、複数の光電変換素子11を備える。
複数の光電変換素子11は、赤色用光電変換素子11R、緑色用光電変換素子11G、青色用光電変換素子11B、および、赤外光用光電変換素子11Pを備える。赤色用光電変換素子11R、緑色用光電変換素子11G、および、青色用光電変換素子11Bが第1光電変換素子の一例であり、赤外光用光電変換素子11Pが第2光電変換素子の一例である。
【0026】
固体撮像素子10は、複数の赤色用光電変換素子11R、複数の緑色用光電変換素子11G、複数の青色用光電変換素子11B、および、複数の赤外光用光電変換素子11Pを備える。複数の赤外光用光電変換素子11Pは、赤外光の強度を測定する。なお、図1では、図示の便宜上、固体撮像素子10における光電変換素子11の繰り返し単位が示されている。
【0027】
固体撮像素子用フィルター10Fは、複数の可視光用フィルター、赤外光パスフィルター12P、赤外光カットフィルター13、複数の可視光用マイクロレンズ、および、赤外光用マイクロレンズ14Pを備える。
【0028】
可視光用カラーフィルターは、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12Bから構成される。赤色用フィルター12Rは、赤色用光電変換素子11Rに対して光の入射側に位置する。緑色用フィルター12Gは、緑色用光電変換素子11Gに対して光の入射側に位置する。青色用フィルター12Bは、青色用光電変換素子11Bに対して光の入射側に位置する。
【0029】
赤外光パスフィルター12Pは、赤外光用光電変換素子11Pに対して光の入射側に位置する。赤外光パスフィルター12Pは、赤外光用光電変換素子11Pが検出し得る可視光を赤外光用光電変換素子11Pに対してカットする。これによって、赤外光用光電変換素子11Pによる赤外光の検出精度が高められる。赤外光用光電変換素子11Pが検出し得る赤外光は、例えば近赤外光である。
【0030】
赤外光カットフィルター13は、各色用フィルター12R,12G,12Bに対して光の入射側に位置する。赤外光カットフィルター13は、赤外光カット層13Aと保護層13Bとを備える。保護層13Bは、赤外光カット層13Aに積層され、かつ、赤外光カット層13Aに対して光の入射側に位置する。
【0031】
赤外光カット層13Aは、貫通孔13AHを備える。赤外光カット層13Aが広がる平面と対向する視点から見て、貫通孔13AHが区画する領域内には、赤外光パスフィルター12Pが位置する。一方で、赤外光カット層13Aが広がる平面と対向する視点から見て、赤外光カット層13Aは、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12B上に位置する。
【0032】
赤外光カット層13Aは、赤外光吸収色素を含む。赤外光吸収色素は、近赤外光に含まれるいずれかの波長において、赤外光の吸光度における最大値を有する。そのため、赤外光カット層13Aによれば、赤外光カット層13Aを通過する近赤外光を確実に吸収することが可能である。これにより、各色用の光電変換素子11で検出され得る近赤外光が、赤外光カット層13Aによって十分にカットされる。
【0033】
保護層13Bは、貫通孔13BHを備える。保護層13Bが広がる平面と対向する方向から見て、保護層13Bの貫通孔13BHは、赤外光カット層13Aの貫通孔13AHに重なる。保護層13Bの貫通孔13BHの縁が有する形状は、赤外光カット層13Aの貫通孔13AHの縁が有する形状に等しい。保護層13Bが広がる平面と対向する視点から見て、貫通孔13BHが区画する領域内には、赤外光パスフィルター12Pが位置する。
【0034】
一方で、保護層13Bが広がる平面と対向する視点から見て、保護層13Bは、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12B上に位置する。
【0035】
保護層13Bは、可視光用フィルター、および、赤外光カット層13Aの分光特性に影響を与えない透明樹脂によって形成されることが好ましい。保護層13Bは、近赤外光に対して、例えば90%以上の透過率を有することが好ましい。
【0036】
保護層13Bの厚さは、1nm以上200nm以下であることが好ましい。保護層13Bが1nm以上であることによって、赤外光カットフィルター13を形成する際に、剥離液が保護層13Bの表面から赤外光カット層13Aまで浸透することを抑える確実性が高まる。保護層13Bが200nm以下であることによって、保護層13Bの厚さが赤外光カット層13Aの分光特性に影響を与えることが抑えられる。
【0037】
マイクロレンズは、赤色用マイクロレンズ14R、緑色用マイクロレンズ14G、青色用マイクロレンズ14B、および、赤外光用マイクロレンズ14Pから構成される。赤色用マイクロレンズ14Rは、赤色用フィルター12Rに対して光の入射側に位置する。緑色用マイクロレンズ14Gは、緑色用フィルター12Gに対して光の入射側に位置する。青色用マイクロレンズ14Bは、青色用フィルター12Bに対して光の入射側に位置する。赤外光用マイクロレンズ14Pは、赤外光パスフィルター12Pに対して光の入射側に位置する。
【0038】
各マイクロレンズ14R,14G,14B,14Pは、外表面である入射面14Sを備える。各マイクロレンズ14R,14G,14B,14Pは、入射面14Sに入る光を各光電変換素子11R,11G,11B,11Pに向けて集めるための屈折率差を外気との間において有する。各マイクロレンズ14R,14G,14B,14Pは、透明樹脂を含む。
【0039】
[赤外光カットフィルターの製造方法]
図2から図7を参照して、赤外光カットフィルター13の製造方法を説明する。
赤外光カットフィルターの製造方法は、赤外光カット層を形成すること、保護層を形成すること、レジストパターンを形成すること、保護層および赤外光カット層をパターニングすること、および、レジストパターンを保護層から剥離することを含む。赤外光カット層を形成することでは、赤外光吸収色素を含む赤外光カット層を形成する。保護層を形成することでは、赤外光カット層上に剥離液に対する保護層を形成する。レジストパターンを形成することでは、保護層上にレジストパターンを形成する。保護層および赤外光カット層をパターニングすることでは、レジストパターンを用いて、保護層および赤外光カット層をドライエッチングによってパターニングする。レジストパターンを保護層から剥離することでは、剥離液を用いてレジストパターンを保護層から剥離する。
【0040】
以下、図面を参照して、赤外光カットフィルターの製造方法をより詳しく説明する。なお、図2から図7では、図示の便宜上、図1が示す固体撮像素子10の繰り返し単位をII‐II線で切断したときの断面に対応する構造のみを示している。
【0041】
図2が示すように、赤外光カットフィルターを製造する際には、まず、複数の光源変換素子が形成された半導体基板21を準備する。半導体基板21には、複数の光電変換素子が二次元的に配置されている。半導体基板21は、上述した青色用フィルター12Bに対応する青色用光電変換素子21B、および、赤外光パスフィルター12Pに対応する赤外光用光電変換素子21Pを含む。半導体基板21を形成する材料は、例えば、Si、および、SiOなどのシリコン酸化物、SiNなどのシリコン窒化物、および、これらの混合物などであってよい。
【0042】
次いで、半導体基板21が有する各光電変換素子に対応する各色用フィルター、および、赤外光パスフィルターを形成する。これにより、青色用光電変換素子21B上に青色用フィルター22Bを形成し、赤外光用光電変換素子21P上に赤外光パスフィルター22Pを形成する。
【0043】
各色用フィルターは、顔料および感光性樹脂を含む塗膜の形成、および、フォトリソグラフィー法を用いた塗膜のパターニングによって形成される。各色用フィルターを形成するための顔料には、有機顔料または無機顔料を単独でまたは2種類以上混合して用いることができる。顔料は、発色性が高く、かつ、耐熱性の高い顔料、特に耐熱分解性の高い顔料であることが好ましく、有機顔料であることが好ましい。有機顔料は、例えば、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、イソインドリン系顔料、キノフタロン系顔料、および、ジケトピロロピロール系顔料などであってよい。
【0044】
赤外光パスフィルターは、黒色色素または黒色染料と、感光性樹脂を含む塗膜の形成、および、フォトグラフィー法を用いた塗膜のパターニングによって形成される。赤外光パスフィルター22Pを形成する材料は、黒色色素、あるいは、黒色染料と、感光性組成物とを含む。黒色色素は、単一で黒色を有する色素、あるいは、2種以上の色素によって黒色を有する混合物である。黒色染料は、例えば、アゾ系染料、アントラキノン系染料、アジン系染料、キノリン系染料、ペリノン系染料、ペリレン系染料、および、メチン系染料などであってよい。感光性組成物には、例えば、バインダー樹脂、光重合開始剤、重合性モノマー、有機溶剤、および、レベリング剤などが含まれる。
【0045】
赤外光パスフィルター22Pを形成する材料は、屈折率を調整するための無機酸化物の粒子を含有可能である。無機酸化物は、例えば、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化チタンである。赤外光パスフィルター22Pは、光安定剤、酸化防止剤、熱安定剤、および、帯電防止剤などの他の機能を兼ね備えるための添加物を含有可能である。
【0046】
そして、赤外光吸収色素を含む赤外光カット層23Aを形成する。赤外光カット層23Aを形成する際には、まず、赤外光吸収色素、透明樹脂、および、有機溶剤を含む塗布液を各色用フィルター、および、赤外光パスフィルター上に塗布し、塗膜を乾燥させる。次いで、乾燥した塗膜を加熱することによって硬化させる。これにより、各色用フィルター、および、赤外光パスフィルター上に赤外光カット層23Aが形成される。
【0047】
赤外光カット層23Aを形成する材料は、透明樹脂および赤外光吸収色素を含む。透明樹脂は、例えば、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、および、ノルボルネン樹脂であってよい。透明樹脂は、これら樹脂のうち、アクリル樹脂であることが好ましい。
【0048】
赤外光吸収色素は、例えば、アントラキノン系色素、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、ジチオール系色素、ジイモニウム系色素、スクアリリウム系色素、および、クロコニウム系色素などであってよい。赤外光吸収色素は、これら色素のうち、シアニン系色素およびフタロシアニン系色素であることが好ましい。
【0049】
図3が示すように、赤外光カット層23A上に保護層23Bを形成する。保護層23Bを形成する際には、まず、透明樹脂を含む塗布液を、赤外光カット層23A上に塗布し、塗膜を乾燥させる。次いで、乾燥した塗膜を加熱することによって硬化させる。これにより、保護層23Bが形成される。
【0050】
保護層23Bを形成する材料は、透明樹脂を含む。透明樹脂は、例えば、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、および、ノルボルネン樹脂であってよい。
【0051】
保護層23Bを形成する材料は、エポキシ基と、エポキシ基と反応する官能基とが架橋した架橋構造を有する樹脂を含むことが好ましい。保護層23Bを形成する樹脂が架橋構造を有した樹脂であることによって、保護層23Bにおける剥離液に対する耐性が高められる。
【0052】
エポキシ基と反応する官能基は、例えば、水酸基、フェノール性水酸基、有機酸、酸無水物、および、アミノ基などである。これらは塗膜形成時にエポキシ基と反応しやすく、架橋構造を形成することで、剥離液に対する耐性を高められる。特に、保護層23Bを形成する材料は、フェノール性水酸(‐COH)基とエポキシ基とが架橋した架橋構造を有した樹脂であることがより好ましい。当該樹脂が、フェノール性水酸基とエポキシ基とによる架橋構造を有するため、保護層23Bにおける剥離液に対する耐性がより高められる。フェノール性水酸基は弱酸性を示すことで、樹脂重合過程ではエポキシ基と架橋反応しにくく、塗膜作製時の加熱工程において架橋反応を起こすことから、塗布性の面において有利である。
【0053】
さらには、保護層23Bがアクリル樹脂から形成されることが好ましい。アクリル樹脂を構成するモノマーには、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、グリシジルメタクリレートを用いることが好ましい。
【0054】
保護層23Bを形成するアクリル樹脂を構成するモノマーには、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、グリシジルメタクリレートに加えて、これらに共重合可能なモノマーを用いることが可能である。共重合可能なモノマーは、例えば、スチレン系モノマー、(メタ)アクリルモノマー、ビニルエステル系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、ハロゲン元素含有ビニル系モノマー、ジエン系モノマー、および、マレイミド系モノマーなどであってよい。スチレン系モノマーは、例えば、スチレン、α‐メチルスチレン、p‐メチルスチレン、m‐メチルスチレン、p‐メトキシスチレン、p‐ヒドロキシスチレン、p‐アセトキシスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、フェニルスチレン、および、ベンジルスチレンなどであってよい。(メタ)アクリルモノマーは、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2‐エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2‐エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、および、ジシクロペンタニルメタクリレートなどであってよい。ビニルエステル系モノマーは、例えば、酢酸ビニルなどであってよい。ビニルエーテル系モノマーは、例えば、ビニルメチルエーテルなどであってよい。ハロゲン元素含有ビニル系モノマーは、例えば、塩化ビニルなどであってよい。ジエン系モノマーは、例えば、ブタジエン、および、イソブチレンなどであってよい。マレイミド系モノマーは、例えば、シクロヘキシルマレイミド、および、フェニルマレイミドなどであってよい。アクリル樹脂は、上述したモノマーのうち、2種以上のモノマーから形成されてもよい。
【0055】
4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、グリシジルメタクリレートに共重合が可能なモノマーは、特に、側鎖に芳香環を含むアクリルモノマーであることが好ましい。芳香環を含むアクリルモノマーは、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2‐(メタ)アクリロイルオキシエチル‐2‐ヒドロキシプロピルフタレート、2‐ヒドロキシ‐3‐フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2‐(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2‐(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、エトキシ化オルト‐フェニルフェノール(メタ)アクリレート、o‐フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3‐フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、4‐ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、2‐ナフトール(メタ)アクリレート、4‐ビフェニル(メタ)アクリレート、9‐アントリルメチル(メタ)アクリレート、2‐[3‐(2H‐ベンゾトリアゾール‐2‐イル)‐4‐ヒドロキシフェニル]エチル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキシド(EO)変性アクリレート、ノニルフェノールEO変性アクリレート、フタル酸2‐(メタ)アクリロイルオキシエチル、および、ヘキサヒドロフタル酸2‐(メタ)アクリロイルオキシエチルなどであってよい。側鎖に芳香環を含むアクリルモノマーは、特にフェニルメタクリレートであることが好ましい。
【0056】
図4が示すように、保護層23Bのうちで、各色用フィルター上に位置する部分に、レジストパターンRPを形成する。レジストパターンRPを形成する際には、まず、保護層23Bの全体を覆うようにフォトレジスト層を形成する。フォトレジスト層を形成する材料には、ポジ型レジストを用いてもよいし、ネガ型レジストを用いてもよい。
【0057】
そして、フォトマスクを用いてフォトレジスト層の一部を露光する。この際に、フォトレジスト層がポジ型レジストから形成される場合には、フォトレジスト層のうちで、赤外光パスフィルター22Pを覆う部分のみを露光する。これに対して、フォトレジスト層がネガ型レジストから形成される場合には、フォトレジスト層のうちで、各色用フィルターを覆う部分のみを露光する。
【0058】
次いで、フォトレジスト層を現像する。これにより、保護層23Bが広がる平面と対向する視点から見て、赤外光パスフィルター22Pに重なる開口を有したレジストパターンRPが形成される。
【0059】
図5が示すように、レジストパターンRPを用いたドライエッチングによって、保護層23B、および、赤外光カット層23Aをパターニングする。これにより、保護層23Bが広がる平面と対向する視点から見て、保護層23Bおよび赤外光カット層23Aの積層体のうちで、赤外光パスフィルター22Pを覆う部分を各層23A,23Bから除去する。
【0060】
ドライエッチングは、例えば、プラズマエッチングであってよい。ドライエッチングでは、エッチングガスとして、反応性ガスと希ガスとを用いることが可能である。赤外光カット層23Aと保護層23Bとのドライエッチングでは、これらの層23A,23Bを含むエッチング対象物にバイアスを印加することが可能である。これにより、レジストパターンRPを用いた異方性エッチングが可能である。
【0061】
図6が示すように、剥離液LMを用いてレジストパターンRPを保護層23Bから剥離する。剥離液LMには、レジストパターンRPを溶解することが可能な液体を用いることができる。剥離液LMは、例えば、N‐メチルピロリドン、または、ジメチルスルホキシドであってよい。剥離液LMがN‐メチルピロリドンまたはジメチルスルホキシドである場合には、保護層23Bが上述した架橋構造を有したアクリル樹脂であることによって、剥離液LMに対する耐性と、耐熱性と、赤外光カットフィルターにおける分光特性とをともに満たすことが可能である。
【0062】
なお、本実施形態の製造方法では、赤外光カット層23Aが剥離液LMに接する際に、赤外光カット層23Aが赤外光吸収色素を含まない保護層23Bによって覆われている。そのため、赤外光カット層23Aが保護層23Bによって覆われていない場合に比べて、赤外光カット層23Aにおける剥離液LMとの接触面積が小さくなることから、赤外光カット層23A中に浸透する剥離液LMの量を減らすことができる。結果として、赤外光カット層23Aから赤外光吸収色素が溶出する量を減らすことが可能である。また、保護層23Bは剥離液LMに接するものの、保護層23Bは赤外光吸収色素を含まないため、保護層23Bの分光特性が、赤外光カットフィルターの分光特性に影響することは抑えられる。
【0063】
なお、図6では、保護層23Bと剥離液LMとを接触させる方法としてディップ法を例示しているが、保護層23Bと剥離液LMとを接触させる方法は、スプレー式およびスピン式であってもよい。
【0064】
図7が示すように、保護層23B上からレジストパターンRPが除去される。これにより、保護層23Bおよび赤外光カット層23Aを備える赤外光カットフィルターを形成することができる。以上説明した製造方法によって形成された赤外光カット層23Aおよび保護層23Bのうち、光電変換素子11の繰り返し単位に対応する部分が、赤外光カット層13Aおよび保護層13Bを備える赤外光カットフィルター13である。
【0065】
なお、上述した方法によって製造された赤外光カットフィルター上に、複数のマイクロレンズを形成することによって、固体撮像素子を製造することが可能である。複数のマイクロレンズは、例えば、透明樹脂を含む塗膜の形成、フォトリソグラフィー法を用いた塗膜のパターニング、および、熱処理によるリフローによって形成される。
【0066】
[実施例]
表1を参照して、赤外光カットフィルターの実施例および比較例を説明する。
[実施例1]
ガラス基板上に赤外光吸収色素であるシアニン色素と、アクリル樹脂とを含む赤外光カット層を形成し、赤外光カット層上に50nmの厚さを有する保護層を形成した。
【0067】
保護層の形成には、フェニルメタクリレート、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、グリシジルメタクリレートを共重合させたアクリル樹脂を用いた。また、アクリル樹脂を共重合する際には、上述したモノマーの総和を100質量%とする場合に、フェニルメタクリレートを50質量%に設定し、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートを25質量%に設定し、グリシジルメタクリレートを25質量%に設定した。これにより、実施例1の赤外光カットフィルターを得た。
【0068】
[実施例2]
実施例1において、フェニルメタクリレートを65質量%に設定し、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートを30質量%に設定し、かつ、グリシジルメタクリレートを5質量%に設定した以外は、実施例1と同様の方法によって実施例2の赤外光カットフィルターを得た。
【0069】
[比較例1]
実施例1において、保護層を形成しない以外は、実施例1と同様の方法によって比較例1の赤外光カットフィルターを得た。
【0070】
[評価方法]
[分光特性]
分光光度計(U-4100、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、350nmから1150nmの各波長を有した光に対する赤外光カットフィルターの透過率を測定した。これにより、各赤外光カットフィルターについて、透過率のスペクトルを得た。なお、透過率のスペクトルは、以下に説明する耐剥離性の試験、および、耐熱性の試験を行う前、および、各試験を行った後のそれぞれにおいて各赤外光カットフィルターについて得た。各試験の前後において、各赤外光カットフィルターにおける最大吸収波長は、950nmであることが、透過率のスペクトルから認められた。
【0071】
[耐剥離液性]
各赤外光カットフィルターを1分間にわたって剥離液に浸漬した。浸漬後の赤外光カットフィルターの透過率を測定し、950nmにおいて、浸漬前の赤外光カットフィルターの透過率に対する浸漬後の赤外光カットフィルターの透過率の差分を算出した。
【0072】
[耐熱性]
耐剥離液性の試験が行われた後の各赤外光カットフィルターを250℃のホットプレートで10分間加熱した。加熱後の赤外光カットフィルターの透過率を測定し、950nmにおいて、加熱前の赤外光カットフィルターの透過率に対する加熱後の赤外光カットフィルターの透過率の差分を算出した。
【0073】
[評価結果]
【表1】
【0074】
表1が示すように、耐剥離液性の試験後において、実施例1の赤外光カットフィルターにおける透過率の差分は0.6%であり、実施例2の赤外光カットフィルターにおける透過率の差分は0.03%であることが認められた。このように、実施例1および実施例2の赤外光カットフィルターでは、耐剥離液性の試験後において、透過率の差分が1%以下であることが認められた。これに対して、耐剥離液性の試験後において、比較例1の赤外光カットフィルターにおける透過率の差分は10%であることが認められた。また、比較例1の赤外光カットフィルターにおける差分は、実施例1,2の赤外光カットフィルターにおける差分よりも10倍以上大きいことが認められた。このように、赤外光カットフィルターが赤外光カット層を覆う保護層を備えることによって、剥離液による処理の後において、赤外光カットフィルターの透過率における変化が抑えられることが認められた。
【0075】
また、耐熱性の試験後において、実施例1の赤外光カットフィルターにおける透過率の差分は13%であり、実施例2の赤外光カットフィルターにおける透過率の差分は12%であることが認められた。これに対して、耐熱性の試験後において、比較例1の赤外光カットフィルターにおける透過率の差分は、13%であることが認められた。
【0076】
このように、実施例1、実施例2および比較例1の耐熱試験前後における透過率の差分はいずれも同程度であった。すなわち、実施例1および実施例2の赤外光カットフィルターと比較例1の赤外光カットフィルターとは同程度の耐熱性を有するといえる。以上の結果より、赤外光カットフィルターに対する保護膜の付与は、赤外光カットフィルターの耐熱性に影響せず、実施例1および実施例2の赤外光カットフィルターによれば、剥離液に対する耐性と、熱に対する耐性とが両立されることが認められた。
【0077】
以上説明したように、赤外光カットフィルターの製造方法、固体撮像素子用フィルター、および、固体撮像素子の一実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)赤外光カット層23Aが剥離液LMに接触することが保護層23Bによって抑えられるため、赤外光カット層23Aに剥離液が浸透することが抑えられる。これによって、赤外光カット層23Aから赤外光吸収色素が溶出することが抑えられ、結果として、赤外光カットフィルター13の分光特性における劣化が抑えられる。
【0078】
(2)保護層23Bを形成する樹脂が架橋構造を含むため、赤外光カット層23Aから赤外光吸収色素が溶出することがさらに抑えられる。
【0079】
(3)保護層23Bを形成する樹脂が架橋構造を含むアクリル樹脂であるため、赤外光カット層23Aから赤外光吸収色素が溶出することがさらに抑えられる。
【0080】
(4)保護層23Bが、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、グリシジルメタクリレートから構成されるアクリル樹脂を用いて形成されることによって、赤外光カット層23Aから赤外光吸収色素が溶出することがさらに抑えられる。
【0081】
(5)アクリル樹脂を形成するための各モノマーの割合が上述した範囲に含まれるため、赤外光カット層23Aから赤外光吸収色素が溶出することがさらに抑えられ、かつ、保護層23Bを含む赤外光カットフィルターの耐熱性が維持される。
【0082】
(6)剥離液LMが、N‐メチルピロリドンまたはジメチルスルホキシドであるため、保護層23Bによって剥離液LMに対する赤外光吸収色素の溶出を抑えることが可能である。
【0083】
[変更例]
なお、上述した実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[保護層]
・保護層13Bにおいて、フェニルメタクリレート、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、グリシジルメタクリレートを用いてアクリル樹脂を形成する際の各モノマーの質量%は適宜変更可能である。また、保護層13Bは、フェニルメタクリレート、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、グリシジルメタクリレートを用いて形成されたアクリル樹脂によって形成されなくてもよい。この場合であっても、赤外光カットフィルター13が赤外光カット層13Aを覆う保護層13Bを備えることによって、上述した(1)に準じた効果を得ることは可能である。
【0084】
・保護層13Bは、フェノール性水酸基とエポキシ基とが架橋した架橋構造を有した樹脂によって形成されなくてもよく、また、エポキシ基と、エポキシ基と反応する官能基とが架橋した架橋構造を有した樹脂によって形成されなくてもよい。この場合であっても、赤外光カットフィルター13が赤外光カット層13Aを覆う保護層13Bを備えることによって、上述した(1)に準じた効果を得ることは可能である。
【0085】
・保護層13Bを形成する材料は、各マイクロレンズを形成する材料と同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0086】
[剥離液]
・剥離液LMは、レジストパターンRPを形成する材料を溶解することが可能な液体であれば、N‐メチルピロリドンおよびジメチルスルホキシド以外の液体であってもよい。
【0087】
[バリア層]
・固体撮像素子用フィルター10Fは、赤外光カットフィルター13と、各マイクロレンズとの間に位置するバリア層を備えていてもよい。バリア層は、赤外光カットフィルター13の酸化源の透過を抑制する。酸化源は、酸素および水などである。なお、バリア層は、各マイクロレンズの外表面に配置されることも可能である。
【0088】
・固体撮像素子用フィルター10Fがバリア層を備える場合には、固体撮像素子10は、バリア層とバリア層の下層との間にアンカー層を備えてもよい。この場合には、バリア層とバリア層の下層との密着性がアンカー層によって高められる。また、固体撮像素子10は、バリア層とバリア層の上層との間にアンカー層を備えてもよい。この場合には、バリア層とバリア層の上層との密着性をアンカー層によって高められる。アンカー層を形成する材料は、例えば、多官能アクリル樹脂、あるいは、シランカップリング剤などである。
【0089】
[カラーフィルター]
・カラーフィルターは、シアン用フィルター、イエロー用フィルター、マゼンタ用フィルターから構成された三色用フィルターでもよい。また、カラーフィルターは、シアン用フィルター、イエロー用フィルター、マゼンタ用フィルター、ブラック用フィルターから構成された四色用フィルターでもよい。また、カラーフィルターは、透明用フィルター、イエロー用フィルター、赤色用フィルター、ブラック用フィルターから構成された四色用フィルターでもよい。
【0090】
[その他]
・各色用フィルター12R,12G,12Bは、赤外光パスフィルター12Pと互いに等しい厚さを有してもよいし、互いに異なる暑さを有してもよい。各色用フィルター12R,12G,12Bの厚さは、例えば、0.5μm以上5μm以下であってよい。
【0091】
・赤外光カットフィルター13を形成する材料は、光安定剤、酸化防止剤、熱安定剤、および、帯電防止剤などの他の機能を兼ね備えるための添加物を含むことが可能である。
・固体撮像素子10は、赤外光カットフィルター13に対して入射面14Sの側に位置する積層構造での酸素透過率が、5.0cc/m/day/atom以下である構成であってもよい。例えば、積層構造は、平坦化層や密着層などの他の機能層であって、各マイクロレンズと共に、その酸素透過率が5.0cc/m/day/atom以下であってもよい。
【0092】
・固体撮像素子10は、複数のマイクロレンズに対して光の入射面側にバンドパスフィルターを備えてもよい。バンドパスフィルターは可視光と近赤外光の特定の波長を有する光のみを透過するフィルターであり、赤外光カットフィルター13と類似の機能を備える。すなわち、バンドパスフィルターにより各色用光電変換素子11R,11G,11Bが検出し得る不要な赤外光をカットすることができる。それによって、各色用光電変換素子11R,11G,11Bによる可視光の検出精度、および、赤外光用光電変換素子11Pの検出対象である850nmあるいは940nm帯域の波長を有した近赤外光の検出精度を高めることができる。
【符号の説明】
【0093】
10…固体撮像素子
10F…固体撮像素子用フィルター
11…光電変換素子
12R…赤色用フィルター
12G…緑色用フィルター
12B,22B…青色用フィルター
12P,22P…赤外光パスフィルター
13…赤外光カットフィルター
13A,23A…赤外光カット層
13AH,13BH…貫通孔
13B,23B…保護層
21B…青色用光電変換素子
21P…赤外光用光電変換素子
LM…剥離液
RP…レジストパターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7