(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20240611BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20240611BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
B41J2/165 501
B41J2/14 607
B41J2/01 401
B41J2/14 305
B41J2/14 605
(21)【出願番号】P 2019238409
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 康平
(72)【発明者】
【氏名】山田 眞一郎
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-40686(JP,A)
【文献】特開2011-140202(JP,A)
【文献】特開2018-165050(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0062256(US,A1)
【文献】特開2020-100052(JP,A)
【文献】特開2012-232575(JP,A)
【文献】特開2011-126266(JP,A)
【文献】特開2008-155537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通インク室、複数のノズル、個別インク流路、インク供給路、第1圧電アクチュエーター、及び、第2圧電アクチュエーターと、を含むラインヘッドと、
前記ラインヘッドを制御する制御部と、を含み、
前記個別インク流路は、前記ノズルごとに設けられ、一端が前記ノズルと接続され、
前記インク供給路は、前記個別インク流路ごとに設けられ、一端が前記個別インク流路の他端と接続され、他端が前記共通インク室と接続され、
前記第1圧電アクチュエーターは、前記個別インク流路ごとに設けられ、前記個別インク流路の容積が大きくなる方向と、前記個別インク流路の容積が小さくなる方向に変形でき、
前記第2圧電アクチュエーターは、前記インク供給路ごとに設けられ、
前記制御部は、
前記ノズルを乾燥防止状態とするとき、
前記個別インク流路の容積が大きくなる方向に前記第1圧電アクチュエーターを変形させてインクの界面を前記ノズルの内側に引き込み、
前記第2圧電アクチュエーターを変形させ、インクの前記界面を引き込んだ前記個別インク流路に接続されている前記インク供給路を前記第2圧電アクチュエーターに閉じさせ、
前記インクを吐出するとき、
前記個別インク流路の容積が小さくなる方向に前記第1圧電アクチュエーターを変形させ、
前記第2圧電アクチュエーターを変形させず、前記インク供給路を閉じ
ず、
画像データに基づき、インクを前記ラインヘッドに吐出させ、
前記画像データに基づき、前記ノズルごとに、インクを吐出しない区間が予め定められた基準ドット数以上である連続不吐出区間を認識し、
1ページの印刷中、前記連続不吐出区間がある前記ノズルについて、前記連続不吐出区間の間、前記乾燥防止状態とすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記インク供給路は、前記個別インク流路よりも細いことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記インク供給路には突起が設けられ、
前記突起は、
前記第2圧電アクチュエーターに向かう方向に突出し、
変形時に前記第2圧電アクチュエーターが前記インク供給路に圧力を加える方向と向かい合う方向に突出していることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
印刷ジョブの最後のページのインク吐出が完了したとき、
前記制御部は、全ての前記ノズルを前記乾燥防止状態とすることを特徴とする請求項1乃至
3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出して画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドのノズルからインクを吐出して印刷する画像形成装置がある。インクは蒸発する成分を含む。例えば、インクの溶剤が蒸発(気化)する。ノズルの吐出口近傍のインクは空気と接する。長時間吐出のないノズルでは、インクの成分が蒸発し、インクの粘度が高くなる。粘度上昇が続くと、ノズルからインクが吐出されなくなることがある(目詰まり)。乾燥を防ぐため、ヘッドのノズル設置面に、キャップを被せることがある。特許文献1には、キャップを用いる画像形成装置の一例が記載されている。
【0003】
具体的に、特許文献1には、記録液の液滴を吐出するノズルを有する記録ヘッドと、記録ヘッドのノズル面をキャッピングするキャップ部材と、記録ヘッドの回復動作を行う維持回復機構を備え、記録ヘッドのノズルから液滴を吐出して被記録媒体上に画像を形成し、記録ヘッドがキャップ部材によりキャッピングされていない状態の非キャッピング累積時間に基づいてキャップ部材内に記録液の供給を制御する画像形成装置が記載されている。この構成により、記録ヘッドのノズル面をキャッピングし、続いて吸引ポンプを作動させてノズル吸引を行なって、キャップ内にインクを供給する。キャップ内への記録液の供給によって、キャップ内の残留インクの乾燥を抑え、キャッピング時の除湿作用を抑え、キャップしたことによるノズルのインクの増粘や吐出不能を防止しようとする(特許文献1:請求項1、段落[0107]、[0108])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インクジェット方式の画像形成装置は、インクを用いて印刷する。インクは蒸発する成分を含む。使用されない時間が長いノズルでは(インク不吐出の時間が長いノズルでは)、インクの粘度が高くなる。乾燥が進んだ結果、ノズルの目詰まりが生ずることがある。
【0006】
ノズルの目詰まりを防ぐため、インクの吐き捨てを行うことがある。吐き捨て処理は、粘度が高いインクを意図的に吐出する処理である。吐き捨て処理によって、ノズルのインクの粘度を下げることができる。吐き捨てを行う場合、吐き捨てるインクを受け止める部材をヘッドの下方に移動させる必要がある。吐き捨て処理後、印刷できる状態への復帰する場合、当該部材を退避させる必要がある。吐き捨て処理には、時間がかかる。
【0007】
また、特許文献1の装置のように、ヘッドのノズル(吐出口)にキャップを被せることもある。しかし、キャップを被せる場合、キャップをヘッドの下方に移動させる必要がある。印刷できる状態に戻す場合、キャップを取り外して、キャップを退避させる必要がある。キャップの取り付け、取り外しに時間を要する。
【0008】
1ページの印刷中、各ノズルのインクの吐出回数は、印刷内容による。インクをあまり吐出しないノズルや、インクを全く吐出しないノズルでは、1ページの印刷中でも乾燥が進むという問題がある。印刷中でも、簡易、迅速にインクの乾燥の抑えられるようにすべきである。しかも、吐き捨て、キャップの取り付けのように、全ノズルを対象とせず、1ノズル単位でインクの乾燥を抑えられるようにすることが好ましい。
【0009】
特許文献1記載の装置は、ヘッドの全ノズルにキャップを被せる。しかも、キャップ部材での乾燥防止のためだけに、余分なインクを消費しなくてはならない。従って、特許文献1記載の技術では、上記の問題を解決することはできない。
【0010】
本発明は上記の課題に鑑み、迅速に、1ノズル単位で、ノズルの状態を、インク成分の蒸発を防止する状態に切り替えられるようにし、目詰まりのような吐出不良をなくす。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る画像形成装置は、ラインヘッド、ラインヘッドを制御する制御部を含む。前記ラインヘッドは、共通インク室、複数のノズル、個別インク流路、インク供給路、第1圧電アクチュエーター、及び、第2圧電アクチュエーターと、を含む。前記個別インク流路は、前記ノズルごとに設けられる。前記個別インク流路の一端は、前記ノズルと接続される。前記インク供給路は、前記個別インク流路ごとに設けられる。前記インク供給路の一端は前記個別インク流路の他端と接続され、他端が前記共通インク室と接続される。前記第1圧電アクチュエーターは、前記個別インク流路ごとに設けられる。前記第1圧電アクチュエーターは、前記個別インク流路の容積が大きくなる方向と、前記個別インク流路の容積が小さくなる方向に変形できる。前記第2圧電アクチュエーターは、前記インク供給路ごとに設けられる。前記ノズルを乾燥防止状態とするとき、前記制御部は、前記個別インク流路の容積が大きくなる方向に前記第1圧電アクチュエーターを変形させてインクの界面を前記ノズルの内側に引き込む。また、前記制御部は、前記第2圧電アクチュエーターを変形させ、インクの前記界面を引き込んだ前記個別インク流路に接続されている前記インク供給路を前記第2圧電アクチュエーターに閉じさせる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡易、迅速に、ノズルを乾燥防止状態に切り替えることができる。ノズルでのインク成分の蒸発を抑えられることができる。ノズル単位で乾燥を抑えることができる。目詰まりのような吐出不良をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係るプリンターの一例を示す図である。
【
図2】実施形態に係るプリンターの一例を示す図である。
【
図3】実施形態に係るラインヘッドの一例を示す図である。
【
図4】実施形態に係るヘッドの断面図の一例を示す図である。
【
図5】実施形態に係るヘッドの断面図の一例を示す図である。
【
図6】実施形態に係るヘッドの断面図の一例を示す図である。
【
図7】実施形態に係るプリンターの印刷中の乾燥防止制御の一例を示す図である。
【
図8】乾燥防止状態への移行と解除のタイミングの設定の一例を示す図である。
【
図9】実施形態に係るプリンターの印刷ジョブ完了時の乾燥防止制御の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、
図1~
図9を用いて、本発明の実施形態を説明する。実施形態に係る画像形成装置は、インクを用いて印刷する。以下では、画像形成装置としてプリンター100を例に挙げて説明する。なお、本発明は、複合機のようなプリンター以外の画像形成装置にも、適用できる。
【0015】
(プリンター100の概要)
まず、
図1及び
図2を用いて、実施形態に係るプリンター100の概要を説明する。
図1、
図2は、実施形態に係るプリンター100の一例を示す図である。
【0016】
図1に示すように、プリンター100は、給紙装置100a、本体装置100b、第1後処理装置100c、第2後処理装置100dを含む。
図1において、破線矢印は、用紙搬送方向を示す。給紙装置100aと本体装置100bが連結(接続)される。本体装置100bと第1後処理装置100cが連結(接続)される。第1後処理装置100cと第2後処理装置100dが連結(接続)される。
【0017】
給紙装置100aは複数の給紙カセット101を含む。各給紙カセット101は用紙を収容する。印刷のとき、制御部1は、何れかの給紙カセット101から用紙を供給させる。1つの給紙カセット101に対して1つの給紙ローラーが設けられる。印刷時、用紙を給紙する給紙カセット101の給紙ローラーが回転する。給紙装置100aは、供給した用紙を本体装置100bに向けて搬送する。
【0018】
本体装置100bは用紙に印刷を行う。本体装置100bはインクを用いて印刷する。第1後処理装置100cは、用紙の乾燥とデカール(カール除去)を行う装置である。インク乾燥のため、第1後処理装置100cは、ファン102とヒーター103を含む。ファン102は本体装置100bが印刷した用紙に風を吹き付ける。ヒーター103は用紙に吹き付ける空気を暖める。これにより、インクが乾く。また、第1後処理装置100cはデカールローラー対104を含む。デカールローラー対104は用紙に圧力をかける。第2後処理装置100dは、排出トレイ105に用紙を排出する。第2後処理装置100dは、印刷面が下向きとなるように、用紙の表裏を逆転できる。
【0019】
図2に示すように、プリンター100は制御部1、記憶部2、操作パネル3、印刷部4、通信部5を含む。制御部1、記憶部2、操作パネル3、通信部5は本体装置100bに設けられる。
【0020】
制御部1はプリンター100の各部を制御する。制御部1は制御回路10、画像処理回路11を含む基板である。例えば、制御回路10はCPUである。記憶部2に記憶される制御プログラムや制御データに基づき、制御回路10は演算、処理を行う。画像処理回路11は印刷に用いる画像データの画像処理を行い、インク吐出用画像データD1を生成する。記憶部2は、ROM、ストレージ(HDD、フラッシュROM)のような不揮発性の記憶装置を含む。また、記憶部2は、RAMのような揮発性の記憶装置を含む。
【0021】
プリンター100は操作パネル3を含む。操作パネル3は、表示パネル31、タッチパネル32を含む。制御部1は、設定画面や情報を表示パネル31に表示させる。表示パネル31は、キー、ボタン、タブのような操作用画像を表示する。タッチパネル32は表示パネル31へのタッチ操作を検知する。タッチパネル32の出力に基づき、制御部1は操作された操作用画像を認識する。制御部1は、使用者が行った設定操作を認識する。
【0022】
プリンター100は印刷部4を含む。印刷部4は、給紙装置100a、本体装置100bの一部、第1後処理装置100c、第2後処理装置100dを含む。本体装置100bは、印刷部4として、用紙搬送部4aと画像形成部4bを含む。印刷ジョブを行うとき、制御部1は印刷部4の動作を制御する。
【0023】
操作パネル3は、印刷に用いる給紙カセット101の選択を受け付ける。印刷ジョブのとき、制御部1は、選択された給紙カセット101の給紙ローラーを回転させる。制御部1は、用紙を本体装置100bの用紙搬送部4aに進入させる。用紙搬送部4aは、画像形成部4bに向けて用紙を搬送する。
図1、
図2に示すように、本体装置100bには、用紙搬送部4aとして、用紙搬送方向上流側から順に、搬送ローラー対41、レジストセンサー42、レジストローラー対43、搬送ユニット44が設けられる。レジストローラー対43を回転させるため、レジストモーター45が設けられる。制御部1は、レジストモーター45の回転を制御して、レジストローラー対43の回転を制御する。
【0024】
本体装置100bはレジストセンサー42を含む。レジストセンサー42は、レジストローラー対43よりも用紙搬送方向上流側に設けられる。レジストセンサー42の出力レベルは、用紙の存在を検知しているか否かにより変化する。レジストセンサー42の出力は制御部1に入力される。レジストセンサー42の出力に基づき、制御部1は、レジストセンサー42に用紙の先端が到達したことを認識する。また、制御部1は、レジストセンサー42を用紙後端が抜けたことを認識する。
【0025】
用紙がレジストローラー対43に到達した時点では、制御部1は、レジストローラー対43を停止させておく。例えば、前の用紙の後端がレジストセンサー42を抜けると、制御部1はレジストローラー対43を停止させる。一方で、制御部1は、レジストローラー対43よりも1つ上流側の搬送ローラー対41を回転させる。用紙の先端は、レジストローラー対43に突き当たる。突き当たった用紙は撓み、用紙の先端はレジストローラー対43のニップに沿う。用紙の斜行が矯正される。レジストセンサー42の出力に基づく用紙の先端到達の認識後、所定の撓み作成時間が経過したとき、制御部1は、レジストローラー対43を回転させる。これにより、用紙は、搬送ユニット44に送り出される。
【0026】
搬送ユニット44は、搬送ベルト46、駆動ローラー47、従動ローラー48を含む。搬送ベルト46は駆動ローラー47と従動ローラー48にかけ回される。駆動ローラー47を回転させるため、ベルトモーター49が設けられる。印刷ジョブ中、制御部1は、ベルトモーター49を回転させ、搬送ベルト46を周回させる。なお、搬送ベルト46は用紙を吸着する。複数の孔が搬送ベルト46に開けられる。例えば、孔から空気を吸引する吸着装置が設けられる。吸着により、印刷中の用紙の位置を固定することができる。
【0027】
画像形成部4bは搬送用紙に印刷を行う。言い換えると、画像形成部4bは、搬送用紙にインクを吐出して画像を記録する。
図1、
図2に示すように、画像形成部4bは、4本のラインヘッド6を含む。ラインヘッド6のうち、1つはブラック、1つはイエロー、1つはシアン、1つはマゼンタのインクを吐出する。各ラインヘッド6は固定される。搬送ベルト46の上方に各ラインヘッド6が設けられる。各ラインヘッド6と搬送ベルト46の間には、一定の隙間が設けられる。用紙はこの隙間を通過する。
【0028】
ラインヘッド6は複数のノズル7を含む。ノズル7は用紙搬送方向と垂直な方向(主走査方向)に並ぶ(
図1では紙面に垂直な方向)。各ノズル7の開口は搬送ベルト46と向かい合う。制御部1は印刷のためのインク吐出用画像データD1をラインヘッド6に供給する。このインク吐出用画像データD1に基づき、ラインヘッド6は、ノズル7からインクを搬送用紙に吐出する。インクは搬送用紙に着弾する。これにより、画像が記録(形成)される。
【0029】
ラインヘッド6の上流側に用紙センサー410が設けられる。用紙センサー410は用紙の先端到達と後端通過を検知する。用紙センサー410はページの印刷開始のタイミングを定めるためのセンサーである。用紙センサー410の出力は制御部1に入力される。用紙センサー410の出力に基づき、制御部1は、用紙センサー410への用紙先端到達を認識する。先端到達認識後、所定の待ち時間が経過すると、制御部1は、ラインヘッド6での1ライン目のインク吐出(描画)を開始させる。待ち時間はラインヘッド6ごとに定められる。例えば、待ち時間は、用紙センサー410の用紙検知位置からラインヘッド6のノズル7までの距離を仕様上の用紙搬送速度で除した時間とされる。
【0030】
制御部1は通信部5と接続される。通信部5は通信用コネクター、通信制御回路、通信用メモリーを含む。通信用メモリーは、通信用ソフトウェアを記憶する。通信部5はコンピューター200と通信する。コンピューター200は、例えば、PCやサーバーである。制御部1はコンピューター200から印刷用データを受信する。印刷用データは印刷設定や印刷内容を含む。例えば、印刷用データはページ記述言語で記述されたデータを含む。制御部1(画像処理回路11)は、受信した(入力された)印刷用データを解析する。受信した印刷用データに基づき、制御部1は画像データ(ラスターデータ)を生成する。制御部1は、生成した画像データを処理して、インク吐出用画像データD1を生成する。
【0031】
(ラインヘッド6)
次に、
図3を用いて、実施形態に係るラインヘッド6の一例を説明する。
図3は、実施形態に係るラインヘッド6の一例を示す図である。なお、各色のラインヘッド6の構成は、同じである。そこで、以下の説明では、ブラックのラインヘッド6を例に挙げて説明する。ブラックのラインヘッド6の説明は、シアン、マゼンタ、イエローの各ラインヘッド6にもあてはまる。
【0032】
1色のラインヘッド6は2以上の(複数の)ヘッド60を含む。言い換えると、ラインヘッド6は複数のヘッド60を組み合わせたものである。1色のラインヘッド6では、各ヘッド60は、主走査方向に列状、又は、千鳥状に並べられる。
【0033】
各ヘッド60は複数のノズル7を含む。各ノズル7は主走査方向(用紙搬送方向と垂直な方向)に並ぶ。主走査方向の間隔が均等になるようにノズル7が形成される。ノズル7の開口からインクが吐出される。主走査方向にノズル7が並ぶように各ヘッド60は固定される。
【0034】
1つのノズル7に対し、1つの第1圧電アクチュエーター81と第2圧電アクチュエーター82が設けられる。つまり、ラインヘッド6は複数の第1圧電アクチュエーター81と第2圧電アクチュエーター82を含む。各圧電アクチュエーターは圧電素子を含む。例えば、圧電素子はピエゾ素子である。例えば、各圧電アクチュエーターは圧電素子を層状に積み重ねたものである。各圧電アクチュエーターは、駆動電圧の印加により変形する。
【0035】
ラインヘッド6は、1又は複数のドライバー回路61を含む。
図3は、1つのヘッド60につき、1つのドライバー回路61を設ける例を示す。ドライバー回路61は各第1圧電アクチュエーター81への電圧印加のON/OFFを行う。また、ドライバー回路61は、各第2圧電アクチュエーター82への電圧印加のON/OFFを行う。ドライバー回路61は、制御部1の指示に基づき、各圧電アクチュエーターの変形を実際に制御する。
【0036】
印刷ジョブのとき、制御部1はインク吐出用画像データD1(インクを吐出すべきノズル7を示すデータ)を各ドライバー回路61に与える。インク吐出用画像データD1は、インクの吐出、不吐出を指示するデータ(2値的なデータ)である。例えば、制御部1(画像処理回路11)は、主走査方向の1ライン単位でインク吐出用画像データD1を各ドライバー回路61に送信する。
【0037】
インク吐出用画像データD1に基づき、ドライバー回路61は、インクを吐出すべきノズル7の第1圧電アクチュエーター81に駆動電圧を印加する。駆動電圧の印加により、第1圧電アクチュエーター81は変形する。変形の圧力がノズル7にインクを供給する流路(詳細は後述)に加わる。流路への圧力により、ノズル7からインクが吐出される。一方、ドライバー回路61は、インクを吐出させない画素に対応するノズル7の第1圧電アクチュエーター81に駆動電圧を印加しない。
【0038】
プリンター100は駆動電圧生成回路106を含む。駆動電圧生成回路106は、複数種の大きさの異なる電圧を生成する。例えば、駆動電圧生成回路106は、出力電圧が異なる電源回路を複数含む。駆動電圧生成回路106のそれぞれ出力電圧は、各ドライバー回路61に入力される(
図3において破線で図示)。ドライバー回路61は、駆動電圧生成回路106から供給される駆動電圧を用いて、第1圧電アクチュエーター81と第2圧電アクチュエーター82に電圧を印加する。例えば、第1圧電アクチュエーター81に印加する駆動電圧の大きさを変えることにより、ドライバー回路61は、吐出するインク量(液滴の量)を調整することができる。
【0039】
また、制御部1は駆動信号生成回路12を含む。駆動信号生成回路12は駆動信号S1を生成する。駆動信号S1はインクを周期的に吐出させるための信号である。駆動信号S1は、例えば、クロック信号である。ヘッド60(ドライバー回路61)は、駆動信号S1が1回立ち上がる又は立ち下がるごとに、インクを吐出させる。インク吐出の基準周期が予め定められる。制御部1は、基準周期の駆動信号S1を駆動信号生成回路12に生成させる。そして、用紙搬送部4aは、駆動信号S1の1周期あたり1画素の距離だけ用紙を搬送する。この処理をページの最初から最後まで、用紙搬送方向(副走査方向)で繰り返すことで、1ページが印刷される。
【0040】
(ノズル7とインクの流路)
次に、
図4を用いて、実施形態に係るノズル7とインクの流路の一例を説明する。
図4は、実施形態に係るヘッド60の断面図の一例を示す図である。
【0041】
図4は、ノズル7を通るようにヘッド60を用紙搬送方向(ヘッド60の短手方向)に沿って切った断面を、主走査方向(用紙搬送方向と垂直な方向)から見た図の一例を示す(
図5、
図6も同様)。そして、ヘッド60内部には、ノズル7、個別インク流路91、インク供給路92、共通インク室93、第1圧電アクチュエーター81、及び、第2圧電アクチュエーター82が設けられる。
【0042】
ヘッド60の下面にノズル層70(ノズルプレート)が取り付けられる。ノズル層70には、主走査方向に沿って、複数のノズル7が設けられる。
図4に示すノズル7は、複数のノズル7のうちの1つである。1つのノズル7は上側と下側が開口している。下側(用紙と向かいあう側)の開口からインクが吐出される。
【0043】
ノズル7の上側の開口は、個別インク流路91の一端と接続される。個別インク流路91は、ノズル7ごとに設けられる。
図4の例では、個別インク流路91は逆L字(逆U字)状の形状をしている。個別インク流路91はディセンダー91aとキャビティ91bを含む。ディセンダー91aは、個別インク流路91のうち、ノズル7と接続された垂直方向(上下方向)のインク流路である。キャビティ91bは、個別インク流路91のうち、水平方向(用紙搬送方向)のインク流路である。キャビティ91bは、第1圧電アクチュエーター81により圧力が加えられる部分である。
図4の例では、キャビティ91bの上方に第1圧電アクチュエーター81が設けられる。
【0044】
個別インク流路91の他端は、インク供給路92の一端と接続される。インク供給路92はサプライと称されることもある。インク供給路92は、個別インク流路91よりも細い。インク供給路92は、個別インク流路91ごとに設けられる。
図4の例では、インク供給路92は用紙搬送方向(水平方向)の管である。
【0045】
共通インク室93はそれぞれのインク供給路92の他端と接続される。共通インク室93はマニホルドと称されることもある。共通インク室93の底面の近くにそれぞれのインク供給路92が接続される。共通インク室93は、ヘッド60の主走査方向に沿って設けられる。主走査方向の一端から他端までの全てのノズル7にインクが到達するようら、共通インク室93が設けられる。
【0046】
共通インク室93のインクは、インク供給路92、個別インク流路91を経て、ノズル7に供給される。共通インク室93は不図示のタンクと接続される。インクが消費されても、水頭差によって、タンクのインクが共通インク室93に流れ込む。共通インク室93のインクはインク供給路92を介して、それぞれの個別インク流路91とノズル7に供給される。全てのノズル7に過不足なくインクが供給される。
【0047】
個別インク流路91(キャビティ91b)の上側(上面)に第1圧電アクチュエーター81が取り付けられる。第1圧電アクチュエーター81は、個別インク流路91ごと(ノズル7ごと)に設けられる。具体的に、個別インク流路91(キャビティ91b)の上側に第1電極板8aが設けられる。この第1電極板8aの上側に第1圧電アクチュエーター81が取り付けられる。第1電極板8aは、例えば、薄い金属の板である。第1圧電アクチュエーター81を変形させるとき、ドライバー回路61は、第1電極板8aに電圧を印加する。
【0048】
第1電極板8aと第1圧電アクチュエーター81の上下方向の位置関係は逆でもよい。個別インク流路91の上側に第1圧電アクチュエーター81が設けられてもよい。この場合、第1圧電アクチュエーター81の上側に第1電極板8aが取り付けられる。
【0049】
なお、
図4で図示はしないが、第1共通電極が設けられる。第1電極板8aと第1共通電極は、第1圧電アクチュエーター81を上下方向で挟む。第1共通電極は、それぞれの第1圧電アクチュエーター81と接する。例えば、第1共通電極は接地される。
【0050】
第1電極板8aへの電圧印加により、第1圧電アクチュエーター81は、例えば、湾曲する。制御部1は、第1圧電アクチュエーター81の変形方向を指示し、第1圧電アクチュエーター81の変形を制御できる。
【0051】
例えば、第1電極板8aに正極性又は負極性の電圧を印加したとき、第1圧電アクチュエーター81は上に凸な形状に変形する。この変形にあわせ、第1電極板8aと個別インク流路91の形状も変形する。上に凸な形状に変形した場合、個別インク流路91の容積が大きくなる。このように、第1圧電アクチュエーター81は、個別インク流路91の容積が大きくなる方向に変形できる。
【0052】
また、第1電極板8aに上に凸な形状に変形するときと逆極性の電圧を印加したとき、第1圧電アクチュエーター81は下に凸な形状に変形する。この変形にあわせ、第1電極板8aと個別インク流路91の形状も変形する。下に凸な形状に変形した場合、個別インク流路91の容積が小さくなる。このように、第1圧電アクチュエーター81は、個別インク流路91の容積が小さくなる方向に変形できる。
【0053】
また、インク供給路92(サプライ)の上側(上面)に第2圧電アクチュエーター82が取り付けられる。第2圧電アクチュエーター82は、インク供給路92ごと(ノズル7ごと)に設けられる。具体的に、インク供給路92の上側に第2電極板8bが設けられる。この第2電極板8bの上側に第2圧電アクチュエーター82が取り付けられる。第2電極板8bは、例えば、薄い金属の板である。制御部1は、第2電極板8bへの電圧印加(第2圧電アクチュエーター82の変形)をドライバー回路61に指示できる。
【0054】
第2電極板8bと第2圧電アクチュエーター82の上下方向の位置関係は逆でもよい。インク供給路92の上側に第2圧電アクチュエーター82が設けられてもよい。この場合、第2圧電アクチュエーター82の上側に第2電極板8bが取り付けられる。なお、
図4で図示はしないが、第2共通電極が設けられる。第2電極板8bと第2共通電極は、第2圧電アクチュエーター82を上下方向で挟む。第2共通電極は、各第2圧電アクチュエーター82と接する。例えば、第2共通電極は接地される。
【0055】
第2圧電アクチュエーター82を変形させるとき、ドライバー回路61は、第2電極板8bに電圧を印加する。電圧印加により、第2圧電アクチュエーター82は、例えば、湾曲する。ドライバー回路61は、下に凸な形状に、第2圧電アクチュエーター82を変形させる。ドライバー回路61は、第2圧電アクチュエーター82が下に凸な方向に変形する極性の電圧を第2電極板8bに印加する。
【0056】
第2圧電アクチュエーター82(第2電極板8b)への電圧印加により、インク供給路92を閉じることができる。第2圧電アクチュエーター82への電圧印加により、共通インク室93から個別インク流路91へのインクの流入を防ぐことができる。共通インク室93からノズル7方向へのインクの流れを遮断することができる。
【0057】
インク供給路92には突起94が設けられる。インク供給路92のうち、突起94がある部分では、インクが流れる通路が狭くなる。突起94は、第2圧電アクチュエーター82に向かう方向に突出している。突起94は、変形時の第2圧電アクチュエーター82がインク供給路92に圧力を加える方向と向かい合う方向に突出している。第2圧電アクチュエーター82(第2電極板8b)のうちで電圧印加時の上下方向の変形量が最も大きい場所と突起94の頂点が向かいあうように、突起94が設けられる。第2電極板8bへの電圧印加により、第2電極板8bが突起94と接する。これにより、インク供給路92が閉じられる。
【0058】
(インク吐出動作)
次に、
図5を用いて、実施形態に係るノズル7でのインクの吐出動作の一例を説明する。
図5は、実施形態に係るヘッド60の断面図の一例を示す図である。
【0059】
インクを吐出するとき、ノズル7からインクを押し出す必要がある。そのため、制御部1は、個別インク流路91の容積が小さくなるように、インクを吐出するノズル7に対応する第1圧電アクチュエーター81を変形させる。変形により、制御部1は、個別インク流路91に圧力を加える。
【0060】
インクが飛び出させるため、制御部1は、個別インク流路91の容積が大きくなる方向に第1圧電アクチュエーター81を変形させてから、個別インク流路91の容積が小さくなる方向に第1圧電アクチュエーター81を変形させてもよい。
図5の例では、制御部1は、第1圧電アクチュエーター81を上方向に変形させた後、下方向に変形させてもよい。インクの動きの反動を利用して、ひとかたまりのインク(液体)から液滴をちぎることができる。
【0061】
なお、インクを吐出するとき、制御部1は、第2圧電アクチュエーター82を変形させない。言い換えると、制御部1は、第2圧電アクチュエーター82への電圧印加をドライバー回路61に行わせない。制御部1はインク供給路92を閉じない。
【0062】
(乾燥防止状態)
次に、
図6を用いて、実施形態に係るノズル7の乾燥防止状態の一例を説明する。
図6は、実施形態に係るヘッド60の断面図の一例を示す図である。
【0063】
ノズル7(吐出口)部分のインクは空気と接する。空気との接触により、インクの成分が蒸発する。例えば、インクの溶剤が蒸発する。液体の成分が減る。蒸発が進むとノズル7内のインクの粘度が大きくなる。粘度が大きくなりすぎると目詰まりが生ずる。ノズル7でのインクの乾燥はノズル7の目詰まりの原因の1つである。
【0064】
プリンター100では、第1圧電アクチュエーター81と第2圧電アクチュエーター82を用いることにより、ノズル7を乾燥防止状態とすることができる。乾燥防止状態とすることにより、ノズル7でのインクの蒸発を減らすことができる。目詰まりの発生を防ぐことができる。
【0065】
ノズル7を乾燥防止状態とするとき、制御部1は、第1圧電アクチュエーター81を変形させる。
図6に示すように、制御部1は、乾燥防止状態とするノズル7に対応する第1圧電アクチュエーター81を、個別インク流路91の容積が大きくなる方向に変形させる。その結果、
図6に示すように、インクの界面95(空気とインクの境目)は、ノズル7の内側に引き込まれる。
【0066】
さらに、ノズル7を乾燥防止状態とするとき、制御部1は、第2圧電アクチュエーター82を変形させる。
図6に示すように、制御部1は、インクを引き込んだ個別インク流路91に接続されるインク供給路92を第2圧電アクチュエーター82に閉じさせる。
【0067】
第2圧電アクチュエーター82がインク供給路92を閉じる。個別インク流路91の体積が増えたものの、インク供給路92から個別インク流路91にインクが流れ込まない。そのため、ノズル7内部にインク界面95が引き込まれた状態が維持される。
【0068】
なお、乾燥防止状態とするとき、第1圧電アクチュエーター81と第2圧電アクチュエーター82の変形(電圧印加)は、同時に行ってもよい。また、第2圧電アクチュエーター82の変形(電圧印加)を行って、インク供給路92を閉じてから、第1圧電アクチュエーター81の変形(電圧印加)を開始してもよい。
【0069】
インクの液面(界面95)をノズル7の内側に引き込むことにより、インクの蒸発が抑えられることがわかっている。液面をノズル7の内側に引き込んだ状態では、ノズル7が空洞状態となる。液面から蒸発し、気体化したインク成分は、ノズル7の空洞に滞留する。空気とインクの間の微少な空間(ノズル7の空洞)に、インクから蒸発した成分を高濃度に含む気体層が形成される。この気体層によって、インクの液面から成分が蒸発しづらくなると考えられる。
【0070】
(印刷中の乾燥防止制御)
次に、
図7、
図8を用いて、実施形態に係るプリンター100の印刷中の乾燥防止制御の一例を説明する。
図7は、実施形態に係るプリンター100の印刷中の乾燥防止制御の一例を示す図である。
図8は、画像解析に基づく乾燥防止状態への移行と解除のタイミングの設定の一例を示す図である。
【0071】
制御部1は、インク吐出用画像データD1に基づき、インクをラインヘッド6(各ヘッド60)に吐出させる。印刷内容によっては、1ページの印刷中のインクの吐出回数が少ないノズル7がある。また、1ページの印刷中に1回もインクを吐出しないこともあり得る。インクの吐出回数が少ないほど、ノズル7のインクの粘度が高くなりやすい。印刷中でも、インクの吐出回数が少ないノズル7では、蒸発が進む場合がある。
【0072】
そこで、制御部1は、1ページの印刷中にインクの吐出が少ないノズル7を乾燥防止状態とする。以下、
図7、
図8を用いて、印刷中の乾燥防止制御の一例を説明する。
【0073】
図7のスタートは、印刷のために1ページ分のインク吐出用画像データD1の生成が完了した時点である。複数枚の用紙(ページ)を連続して印刷する印刷ジョブの場合、1ページごとに、
図7のフローチャートが実行される。
【0074】
まず、制御部1(画像処理回路11)は、1ページのインク吐出用画像データD1を解析し、ノズル7ごとに、連続不吐出区間A1を認識する(ステップ♯11)。具体的に、制御部1(画像処理回路11)は、ノズル7ごとに、インクを吐出しない副走査方向の区間が基準ドット数以上の区間を連続不吐出区間A1と認識する。
【0075】
図8は、インク吐出用画像データD1の一例を示す。
図8の横方向はノズル7が並ぶ方向(主走査方向)を示す。
図8の縦方向は、用紙搬送方向(副走査方向)を示す。また、
図8のうち、1マスは1ドットを示す。白丸を含むドットは、インクを吐出するドットを示す。白丸を含まないドットは、インク不吐出のドットを示す。また、
図8での網掛けは、制御部1が認識した連続不吐出区間A1の一例を示す。
【0076】
基準ドット数は予め定められる。記憶部2は不揮発的に基準ドット数を記憶する。基準ドット数は、例えば、以下の関係を満たすように定められる。
(式)T0 > T1 + T2
T0は、基準ドット数の区間の印刷に要する時間である。
T1は、電圧印加開始から乾燥防止状態への移行完了までに要する時間(第1圧電アクチュエーター81と第2圧電アクチュエーター82の変形に要する時間)である。
T2は、第1圧電アクチュエーター81と第2圧電アクチュエーター82への電圧印加を解除してからインクの液面(界面95)がノズル7の先端(吐出口)に到る(戻る)までの時間である。このように、乾燥防止状態への移行に要する時間と、乾燥防止状態を解除してインク吐出可能な状態に戻るまでの時間を考慮して、基準ドット数を定めることができる。
【0077】
図8の例では、基準ドット数を12としている。基準ドット数は、12以下でもよいし、12以上でもよい。
図8の例は、あくまで一例にすぎない。
【0078】
そして、制御部1は、何れかのノズル7で、連続不吐出区間A1があったか否かを確認する(ステップ♯12)。ベタ画像のようなインク吐出が多い画像を印刷する場合、どのノズル7にも連続不吐出区間A1がない場合がある。また、制御部1は、1つのノズル7に複数の連続不吐出区間A1を認識してもよい。
【0079】
どのノズル7にも連続不吐出区間A1が無かった場合(ステップ♯12のNo)、制御部1は、印刷中に乾燥防止状態にするノズル7がないことを各ドライバー回路61に通知する(ステップ♯13→エンド)。この場合、制御部1は、どのノズル7も乾燥防止状態にしない。
【0080】
一方、何れかのノズル7で連続不吐出区間A1があった場合(ステップ♯12のYes)、制御部1は、各連続不吐出区間A1について、ノズル7ごとに、乾燥防止状態の開始時点と終了時点を定める(ステップ♯14)。開始時点は、第1圧電アクチュエーター81と第2圧電アクチュエーター82への電圧印加(変形)を開始する時点である。終了時点は、第1圧電アクチュエーター81と第2圧電アクチュエーター82への電圧印加(変形)を終了し、インク供給路92を開ける時点である。
【0081】
図8において、△印は、制御部1が設定した開始時点の一例を示す。□印は、制御部1が設定した終了時点の一例を示す。
図8は、制御部1は、インクを吐出する数ドット前に終了時点を設定する例を示す。また、
図8は、ドットを基準に乾燥防止状態の開始時点と終了時点を定める例を示す。
【0082】
例えば、
図8では、番号が8番のノズル7については、制御部1は、副走査方向の1ライン目(先頭ライン、描画開始時点)を開始時点と設定している。また、制御部1は、副走査方向の14ライン目を終了時点と設定している。この場合、制御部1は、1ライン目の描画開始時点に、8番のノズル7を乾燥防止状態とする。また、制御部1は、14ライン目のインクを吐出する時点に、8番のノズル7の乾燥防止状態を解除させる。
【0083】
開始時点と終了時点を定めたとき、制御部1は、ノズル7ごとに、開始時点と終了時点をドライバー回路61に通知する(ステップ♯15)。言い換えると、制御部1は、ノズル7ごとに、乾燥防止状態にする時点と、乾燥防止状態を解除する時点を指示する。この指示に基づき、ドライバー回路61は、1ページの印刷の間、ノズル7ごとの乾燥防止状態への移行と解除を行う(ステップ♯16→エンド)。
【0084】
(印刷ジョブ完了時の乾燥防止制御)
次に、
図9を用いて、実施形態に係るプリンター100の印刷ジョブ完了時の乾燥防止制御の一例を説明する。
図9は、実施形態に係るプリンター100の印刷ジョブ完了時の乾燥防止制御の一例を示す図である。
【0085】
図9のスタートは、印刷ジョブの最後のページのインクの吐出を終えた時点である。言い換えると、印刷ジョブが完了した時点ともいえる。このとき、制御部1は、全てのノズル7を乾燥防止状態とする(ステップ♯21)。制御部1は、全ノズル7の乾燥防止状態への移行を各ドライバー回路61に指示する。制御部1は、各第1圧電アクチュエーター81と各第2圧電アクチュエーター82の変形をドライバー回路61に行わせる。
【0086】
次に、制御部1は、新たな印刷ジョブを開始するか否かを確認する(ステップ♯22)。例えば、新たな印刷ジョブ用のデータを通信部5が受け付けたとき、制御部1は、新たなジョブを開始すると判定する。
【0087】
新たな印刷ジョブを開始しないとき(ステップ♯22のNo)、制御部1は、全てのノズル7を乾燥防止状態で維持させる(ステップ♯23)。そして、制御部1は、ステップ♯22を行う(ステップ♯22に戻る)。制御部1は、印刷ジョブの終了から新たな印刷ジョブを開始するまで、全てのノズル7を乾燥防止状態で維持する。
【0088】
新たな印刷ジョブを開始するとき(ステップ♯22のYes)、制御部1は、全てのノズル7の乾燥防止状態を解除する(ステップ♯24)。具体的に、制御部1は、全ノズル7の乾燥防止状態の解除を各ドライバー回路61に指示する。制御部1は、各第1圧電アクチュエーター81と各第2圧電アクチュエーター82の変形(電圧印加)をドライバー回路61に解除させる。これにより、各ノズル7において、インクの界面95がノズル7の開口(吐出口)まで移動する。そして、本フローは終了する。新たな印刷ジョブが完了すれば、本フローチャートが再度開始される。
【0089】
なお、プリンター100はキャップ部材107を含んでもよい(
図1参照)。キャップ部材107は、ラインヘッド6(各ヘッド60)の下面を覆う。ラインヘッド6の下面はノズル7の開口が並ぶ面である。キャップ部材107は、例えば、ゴム性である。キャップ部材107は、ノズル7を密閉するように、ヘッド60の下側に嵌め合わされる。
【0090】
ラインヘッド6(各ヘッド60)と搬送ユニット44(搬送ベルト46)の間の間隔は狭い。キャップ部材107でラインヘッド6の下側を覆う場合、ラインヘッド6と搬送ユニット44の間隔を広げる必要がある。そのため、プリンター100は、昇降機構108を有する(
図2参照)。昇降機構108は搬送ユニット44を上下動させる機構である。操作パネル3は、キャップ部材107の取り付け指示を受け付ける。操作パネル3が取り付け指示を受け付けたとき、制御部1は、搬送ユニット44の位置を昇降機構108に下げさせる。これにより、ラインヘッド6と搬送ユニット44の間に、キャップ部材107を差し込む隙間ができる。
【0091】
ラインヘッド6と搬送ユニット44の間隔が広がった後、キャップ部材107がラインヘッド6の下面に取り付けられる。プリンター100は、キャップ部材107の取り付け、取り外しを行う着脱装置109を含んでもよい(
図2参照)。ラインヘッド6と搬送ユニット44の間隔が広がったとき、着脱装置109は、ラインヘッド6の下面にキャップ部材107を移動させる。その後、着脱装置109は、キャップ部材107を上昇させてラインヘッド6の下面にキャップ部材107を嵌め込む。
【0092】
なお、印刷を行える状態に戻したい場合、使用者は、復帰指示を操作パネル3に入力する。復帰指示を受け付けたとき、制御部1は、キャップ部材107の下降を着脱装置109に行わせる。これにより、ラインヘッド6からキャップ部材107が取り外される。次に、制御部1は、ラインヘッド6と搬送ユニット44の間からのキャップ部材107からの退避を着脱装置109に行わせる。キャップ部材107の退避後、制御部1は、搬送ユニット44を昇降機構108に上昇させる。制御部1は、ラインヘッド6の下面と搬送ユニット44(搬送ベルト46)の隙間を印刷時の間隔に戻す。
【0093】
このようにして、実施形態に係る画像形成装置(プリンター100)は、ラインヘッド6、ラインヘッド6を制御する制御部1を含む。ラインヘッド6は、共通インク室93、複数のノズル7、個別インク流路91、インク供給路92、第1圧電アクチュエーター81、及び、第2圧電アクチュエーター82と、を含む。個別インク流路91は、ノズル7ごとに設けられる。個別インク流路91の一端はノズル7と接続される。インク供給路92は、個別インク流路91ごとに設けられる。インク供給路92は、一端が個別インク流路91の他端と接続され、他端が共通インク室93と接続される。第1圧電アクチュエーター81は、個別インク流路91ごとに設けられる。第1圧電アクチュエーター81は、個別インク流路91の容積が大きくなる方向と、個別インク流路91の容積が小さくなる方向に変形できる。第2圧電アクチュエーター82は、インク供給路92ごとに設けられる。ノズル7を乾燥防止状態とするとき、制御部1は、個別インク流路91の容積が大きくなる方向に第1圧電アクチュエーター81を変形させてインクの界面95をノズル7の内側に引き込む。また、制御部1は、第2圧電アクチュエーター82を変形させ、インクの界面95を引き込んだ個別インク流路91に接続されているインク供給路92を第2圧電アクチュエーター82に閉じさせる。
【0094】
乾燥防止状態とするとき、第1圧電アクチュエーター81を動作させ、ノズル7部分でのインクの界面95をノズル7の内側(奥側)に引き込む。さらに、第2圧電アクチュエーター82を動作させてインクの流れをせき止める。これらにより、インクの界面95をノズル7の内側に引き込んだ状態を維持することができる。インクの界面95をノズル7の内側に引き込んだ場合、ノズル7内(筒内)に蒸発した成分が高濃度で滞留する。これにより、インクの成分の蒸発が抑えられる(遅くなる)ことがわかっている。従って、第1圧電アクチュエーター81と第2圧電アクチュエーター82を動作させるだけで、迅速にノズル7を乾燥防止状態に移行させることができる。印刷中でも、迅速にノズル7を乾燥防止状態にすることができる。また、第1圧電アクチュエーター81と第2圧電アクチュエーター82を解除するだけで、乾燥防止状態を解除することができる。直ちに印刷を再開することができる。
【0095】
しかも、インク供給路92、第1圧電アクチュエーター81、第2圧電アクチュエーター82は、ノズル7ごとに設けられるので、ノズル単位で、ノズル7を乾燥防止状態とすることができる。印刷中、使わないノズル7を乾燥防止状態に切り替えることで、ノズル単位でノズル7の乾燥を抑えることができる。目詰まりのような吐出不良をなくすことができる。
【0096】
インク供給路92は、個別インク流路91よりも細い。インク供給路92は細いので、第2圧電アクチュエーター82によりインク供給路92を容易に閉じることができる。また、インク供給路92は細いので、第1圧電アクチュエーター81や第2圧電アクチュエーター82の動作(変形)の影響を、他のノズル7に及びにくくすることができる。
【0097】
インク供給路92には突起94が設けられる。突起94は、第2圧電アクチュエーター82に向かう方向に突出する。突起94は、変形時に第2圧電アクチュエーター82がインク供給路92に圧力を加える方向と向かい合う方向に突出している。突起94を設けることにより、インク供給路92を閉じるための第2圧電アクチュエーター82の変形量を少なくすることかできる。インクの流れの遮断に必要な圧力と変形量を最小限に抑えることができる。
【0098】
制御部1は、画像データに基づき、インクをヘッド60に吐出させる。画像データに基づき、制御部1は、ノズル7ごとに、インクを吐出しない区間が予め定められた基準ドット数以上である連続不吐出区間A1を認識する。1ページの印刷中、制御部1は、連続不吐出区間A1があるノズル7について、連続不吐出区間A1の間、乾燥防止状態とする。1ページの印刷中、インクの吐出回数が少ないノズル7の乾燥を防ぐことができる。印刷内容に応じて、ノズル単位でノズル7の乾燥を抑えることができる。
【0099】
印刷ジョブの最後のページのインク吐出が完了したとき、制御部1は、全てのノズル7を乾燥防止状態とする。印刷ジョブの完了時、全てのノズル7の乾燥を抑えることができる。次の印刷ジョブまでの間でのノズル7の乾燥を抑えることができる。第1圧電アクチュエーター81と第2圧電アクチュエーター82の変形を解除するだけで、直ちに印刷を再開することができる。
【0100】
本発明の実施形態と変形例を説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は搬送用紙を読み取るイメージセンサーを含む画像形成装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0102】
100 プリンター(画像形成装置) 1 制御部
6 ラインヘッド 7 ノズル
81 第1圧電アクチュエーター 82 第2圧電アクチュエーター
91 個別インク流路 92 インク供給路
93 共通インク室 94 突起
95 界面 A1 連続不吐出区間