(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】画像形成装置および温度調整方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
B41J2/01 129
B41J2/01 101
B41J2/01 401
B41J2/01 125
B41J2/01 305
(21)【出願番号】P 2020009232
(22)【出願日】2020-01-23
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅田 勝比呂
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-271480(JP,A)
【文献】特開2014-069478(JP,A)
【文献】特開2013-139120(JP,A)
【文献】特開2009-214439(JP,A)
【文献】特開2013-256115(JP,A)
【文献】特開2015-189045(JP,A)
【文献】特表2015-524756(JP,A)
【文献】特開平03-151239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エネルギー線硬化性を有するインク液滴をインクジェットヘッドから吐出することによって転写体上に画像を形成する画像形成部と、
吐出されて前記転写体上に着弾した前記インク液滴に、活性エネルギー線を照射して当該インク液滴を硬化させる硬化部と、
前記インク液滴の硬化の際に発生する熱量の違いに基づいて、前記転写体の温度を調整する温度調整部と、
前記転写体上に形成された画像を転写ニップにおいて記録媒体に転写する転写部と、
前記転写体の複数の位置において、前記転写体上の前記インク液滴の量を取得する液滴量取得部と、を備え、
前記温度調整部は、
前記転写体の移動方向における前記転写ニップの下流側に設けられ、前記転写体を加熱する加熱部と、
前記転写体の移動方向における前記加熱部の下流側に設けられ、前記転写体を冷却する冷却部と、を有し、
前記加熱部は、加熱後の前記転写体の温度が均一となるように、前記転写体を加熱すると共に、前記複数の位置における前記インク液滴の量の差分が大きい場合、当該差分が小さい場合と比べて、前記転写体の加熱量を多くする、
画像形成装置。
【請求項2】
活性エネルギー線硬化性を有するインク液滴をインクジェットヘッドから吐出することによって転写体上に画像を形成する画像形成部と、
吐出されて前記転写体上に着弾した前記インク液滴に、活性エネルギー線を照射して当該インク液滴を硬化させる硬化部と、
前記インク液滴の硬化の際に発生する熱量の違いに基づいて、前記転写体の温度を調整する温度調整部と、
前記転写体上に形成された画像を転写ニップにおいて記録媒体に転写する転写部と、
前記画像が転写された後、かつ、
加熱部による加熱前、前記転写体の複数の位置における表面温度を取得する第1の温度取得部と、を備え、
前記温度調整部は、
前記転写体の移動方向における前記転写ニップの下流側に設けられ、前記転写体を加熱する
前記加熱部と、
前記転写体の移動方向における前記加熱部の下流側に設けられ、前記転写体を冷却する冷却部と、を有し、
前記加熱部は、加熱後の前記転写体の温度が均一となるように、前記転写体を加熱すると共に、前記転写体の複数の位置をそれぞれ加熱する複数の加熱部材であって、前記複数の位置における表面温度の差分が大きい場合、当該差分が小さい場合と比べて、前記転写体の加熱量を多くする、
画像形成装置。
【請求項3】
前記加熱部は、前記複数の位置において、前記表面温度が低い位置の加熱量を、前記表面温度が高い位置の加熱量より大きくする、
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
活性エネルギー線硬化性を有するインク液滴をインクジェットヘッドから吐出することによって転写体上に画像を形成する画像形成部と、
吐出されて前記転写体上に着弾した前記インク液滴に、活性エネルギー線を照射して当該インク液滴を硬化させる硬化部と、
前記インク液滴の硬化の際に発生する熱量の違いに基づいて、前記転写体の温度を調整する温度調整部と、
前記転写体上に形成された画像を転写ニップにおいて記録媒体に転写する転写部と、
前記転写体の複数の位置において、前記転写体上の前記インク液滴の量を取得する液滴量取得部と、を備え、
前記温度調整部は、
前記転写体の移動方向における前記転写ニップの下流側に設けられ、前記転写体を加熱する加熱部と、
前記転写体の移動方向における前記加熱部の下流側に設けられ、前記転写体を冷却する冷却部と、を有し、
前記加熱部は、加熱後の前記転写体の温度が均一となるように、前記転写体を加熱すると共に、前記転写体の複数の位置をそれぞれ加熱する複数の加熱部材であって、前記インク液滴の量が少ない位置の加熱量を、前記インク液滴の量が多い位置の加熱量より大きくする、
画像形成装置。
【請求項5】
前記加熱部により加熱された後、前記転写体の温度を取得する第2の温度取得部を備え、
前記冷却部は、前記第2の温度取得部により取得された温度に基づいて、前記転写体を冷却する、
請求項1~4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記冷却部は、前記第2の温度取得部により取得された温度と、前記インク液滴が吐出される前の前記転写体の温度として設定された設定温度との差分が大きい場合、当該差分が小さい場合と比べて、前記転写体の冷却量を大きくする、
請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記画像が転写された後、前記転写体の温度を検出する温度検出部を備える、
請求項1~6の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
活性エネルギー線硬化性を有するインク液滴をインクジェットヘッドから吐出することによって転写体上に画像を形成し、
吐出されて前記転写体上に着弾した前記インク液滴に、活性エネルギー線を照射して当該インク液滴を硬化させ、
前記インク液滴の硬化の際に発生する熱量の違いに基づいて、前記転写体の温度を調整し、
複数の位置における前記インク液滴の量の差分が大きい場合、当該差分が小さい場合と比べて、前記転写体の加熱量を多くする、
温度調整方法。
【請求項9】
活性エネルギー線硬化性を有するインク液滴をインクジェットヘッドから吐出することによって転写体上に画像を形成し、
吐出されて前記転写体上に着弾した前記インク液滴に、活性エネルギー線を照射して当該インク液滴を硬化させ、
前記インク液滴の硬化の際に発生する熱量の違いに基づいて、前記転写体の温度を調整し、
前記転写体の複数の位置における表面温度の差分が大きい場合、当該差分が小さい場合と比べて、前記転写体の加熱量を多くする、
温度調整方法。
【請求項10】
活性エネルギー線硬化性を有するインク液滴をインクジェットヘッドから吐出することによって転写体上に画像を形成し、
吐出されて前記転写体上に着弾した前記インク液滴に、活性エネルギー線を照射して当該インク液滴を硬化させ、
前記インク液滴の硬化の際に発生する熱量の違いに基づいて、前記転写体の温度を調整し、
前記転写体の複数の位置における、前記インク液滴の量が少ない位置の加熱量を、前記インク液滴の量が多い位置の加熱量より大きくする、
温度調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置および温度調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙、布帛等の種々の記録媒体に対して高精細な画像を形成(記録)する装置として、インクジェットヘッドからインク液滴を吐出して記録媒体に画像を形成するインクジェット方式による画像形成装置(以下、「インクジェット画像形成装置」という)が広く普及している。
【0003】
インクジェット画像形成装置において、インクジェットヘッドから吐出されるインク液滴を中間転写ベルトなどの中間転写体に画像として形成させ、形成された画像を転写ニップで記録媒体に転写する中間転写方式のものが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。この中間転写方式により、予めインク液滴の量を抑制し、転写ニップの転写圧でインク液滴を潰し所望の大きさ(径)に拡張することができる。言い換えると、少ないインク液滴量で画像カバレッジの高い画像を形成することができる。
【0004】
中間転写方式のインクジェット画像形成装置においては、記録媒体に対する画像の転写性を確保するため、活性エネルギー線(例えば、紫外線)で硬化(増粘)するインク(重合性モノマーを含む)を用い、活性エネルギー線透過性を有する中間転写体を使用する構成が挙げられる。この構成では、転写ニップにおいて挟持かつ押圧(ニップ)される画像(インク液滴)に対して、中間転写体の内周面側から活性エネルギー線を照射して当該インク液滴の粘度を調整する。これにより、記録媒体と接触するインク液滴の濡れ性を保ったまま、当該インク液滴が潰れない程度の粘度を確保して転写性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記インクジェット画像形成装置においては、記録媒体上でのドット径を適切な大きさに制御するために、中間転写体の温度を所定の温度に制御する必要がある。ところで、活性エネルギー線の照射によりインク液滴を硬化(増粘)させる際、その硬化反応(重合反応)時に発生する熱量(硬化反応熱量)により中間転写体の温度が上昇する。
【0007】
ここで、中間転写体の複数の位置において、インクジェットヘッドから吐出されたインク液滴量(インク隠蔽率)が異なると硬化反応の際に発生する熱量も異なる。具体的には、インク液滴量が多い位置においては、硬化反応の際に発生する熱量は多くなり中間転写体の温度上昇量は大きくなる一方、インク液滴量が少ない位置においては、硬化反応の際に発生する熱量は少なくなり中間転写体の温度上昇量は小さくなる。そのため、記録媒体への転写後において中間転写体上において温度ムラが発生することとなる。
【0008】
その結果、次回、インクジェットヘッドからインク液滴が吐出される際、中間転写体上に着弾したインク液滴の径(ドット径)にムラが生じる。具体的には、温度が高い位置においては、着弾したインク液滴の径が大きくなる一方、温度が低い位置においては、着弾したインク液滴の径が小さくなる。そして、インク液滴の径にムラが生じたまま記録媒体に画像が転写されると、当該画像の品質が低下してしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、記録媒体に転写される画像の品質の低下を抑制することが可能な画像形成装置および温度調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る画像形成装置は、
活性エネルギー線硬化性を有するインク液滴をインクジェットヘッドから吐出することによって転写体上に画像を形成する画像形成部と、
吐出されて前記転写体上に着弾した前記インク液滴に、活性エネルギー線を照射して当該インク液滴を硬化させる硬化部と、
前記インク液滴の硬化の際に発生する熱量の違いに基づいて、前記転写体の温度を調整する温度調整部と、
前記転写体上に形成された画像を転写ニップにおいて記録媒体に転写する転写部と、
前記転写体の複数の位置において、前記転写体上の前記インク液滴の量を取得する液滴量取得部と、を備え、
前記温度調整部は、
前記転写体の移動方向における前記転写ニップの下流側に設けられ、前記転写体を加熱する加熱部と、
前記転写体の移動方向における前記加熱部の下流側に設けられ、前記転写体を冷却する冷却部と、を有し、
前記加熱部は、加熱後の前記転写体の温度が均一となるように、前記転写体を加熱すると共に、前記複数の位置における前記インク液滴の量の差分が大きい場合、当該差分が小さい場合と比べて、前記転写体の加熱量を多くする。
本発明に係る他の画像形成装置は、
活性エネルギー線硬化性を有するインク液滴をインクジェットヘッドから吐出することによって転写体上に画像を形成する画像形成部と、
吐出されて前記転写体上に着弾した前記インク液滴に、活性エネルギー線を照射して当該インク液滴を硬化させる硬化部と、
前記インク液滴の硬化の際に発生する熱量の違いに基づいて、前記転写体の温度を調整する温度調整部と、
前記転写体上に形成された画像を転写ニップにおいて記録媒体に転写する転写部と、
前記画像が転写された後、かつ、加熱部による加熱前、前記転写体の複数の位置における表面温度を取得する第1の温度取得部と、を備え、
前記温度調整部は、
前記転写体の移動方向における前記転写ニップの下流側に設けられ、前記転写体を加熱する前記加熱部と、
前記転写体の移動方向における前記加熱部の下流側に設けられ、前記転写体を冷却する冷却部と、を有し、
前記加熱部は、加熱後の前記転写体の温度が均一となるように、前記転写体を加熱すると共に、前記転写体の複数の位置をそれぞれ加熱する複数の加熱部材であって、前記複数の位置における表面温度の差分が大きい場合、当該差分が小さい場合と比べて、前記転写体の加熱量を多くする。
本発明に係る他の画像形成装置は、
活性エネルギー線硬化性を有するインク液滴をインクジェットヘッドから吐出することによって転写体上に画像を形成する画像形成部と、
吐出されて前記転写体上に着弾した前記インク液滴に、活性エネルギー線を照射して当該インク液滴を硬化させる硬化部と、
前記インク液滴の硬化の際に発生する熱量の違いに基づいて、前記転写体の温度を調整する温度調整部と、
前記転写体上に形成された画像を転写ニップにおいて記録媒体に転写する転写部と、
前記転写体の複数の位置において、前記転写体上の前記インク液滴の量を取得する液滴量取得部と、を備え、
前記温度調整部は、
前記転写体の移動方向における前記転写ニップの下流側に設けられ、前記転写体を加熱する加熱部と、
前記転写体の移動方向における前記加熱部の下流側に設けられ、前記転写体を冷却する冷却部と、を有し、
前記加熱部は、加熱後の前記転写体の温度が均一となるように、前記転写体を加熱すると共に、前記転写体の複数の位置をそれぞれ加熱する複数の加熱部材であって、前記インク液滴の量が少ない位置の加熱量を、前記インク液滴の量が多い位置の加熱量より大きくする。
【0011】
本発明に係る温度調整方法は、
活性エネルギー線硬化性を有するインク液滴をインクジェットヘッドから吐出することによって転写体上に画像を形成し、
吐出されて前記転写体上に着弾した前記インク液滴に、活性エネルギー線を照射して当該インク液滴を硬化させ、
前記インク液滴の硬化の際に発生する熱量の違いに基づいて、前記転写体の温度を調整し、
複数の位置における前記インク液滴の量の差分が大きい場合、当該差分が小さい場合と比べて、前記転写体の加熱量を多くする。
本発明に係る他の温度調整方法は、
活性エネルギー線硬化性を有するインク液滴をインクジェットヘッドから吐出することによって転写体上に画像を形成し、
吐出されて前記転写体上に着弾した前記インク液滴に、活性エネルギー線を照射して当該インク液滴を硬化させ、
前記インク液滴の硬化の際に発生する熱量の違いに基づいて、前記転写体の温度を調整し、
前記転写体の複数の位置における表面温度の差分が大きい場合、当該差分が小さい場合と比べて、前記転写体の加熱量を多くする。
本発明に係る他の温度調整方法は、
活性エネルギー線硬化性を有するインク液滴をインクジェットヘッドから吐出することによって転写体上に画像を形成し、
吐出されて前記転写体上に着弾した前記インク液滴に、活性エネルギー線を照射して当該インク液滴を硬化させ、
前記インク液滴の硬化の際に発生する熱量の違いに基づいて、前記転写体の温度を調整し、
前記転写体の複数の位置における、前記インク液滴の量が少ない位置の加熱量を、前記インク液滴の量が多い位置の加熱量より大きくする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、記録媒体に転写される画像の品質の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施の形態に係るインクジェット画像形成装置の全体構成を概略的に示す図である。
【
図2】インクジェット画像形成装置の主要な機能構成を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施の形態に係るインクジェット画像形成装置の温度調整動作の例を示すフローチャートである。
【
図4】転写ベルトの表面温度を調整する温度調整動作を説明する図である。
【
図5】転写ベルトの表面温度を調整する温度調整動作を説明する図である。
【
図6】第2の実施の形態に係るインクジェット画像形成装置の全体構成を概略的に示す図である。
【
図7】第2の実施の形態に係るインクジェット画像形成装置の温度調整動作の例を示すフローチャートである。
【
図8】転写ベルトの表面温度を調整する温度調整動作を説明する図である。
【
図9】転写ベルトの表面温度を調整する温度調整動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施の形態におけるインクジェット画像形成装置について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、第1の実施の形態に係るインクジェット画像形成装置1の全体構成を概略的に示す図である。また、
図2は、インクジェット画像形成装置1の主要な機能構成を示すブロック図である。
【0015】
図1に示すように、インクジェット画像形成装置1は、インクジェットヘッド102(
図2を参照)が搭載されたヘッドユニット10と、転写ベルト20と、転写ベルト20を回転可能に張架する従動ローラー21,22および駆動ローラーとしての転写ローラー23と、記録媒体Pを搬送する搬送ドラム24と、装置全体の制御を行う制御部40(
図2を参照)とを備える。なお、ヘッドユニット10は、本発明の「画像形成部」として機能する。また、転写ベルト20は、本発明の「転写体」として機能する。また、制御部40は、本発明の「温度調整部」の一部、「液滴量取得部」、「第1の温度取得部」および「第2の温度取得部」として機能する。
【0016】
また、インクジェット画像形成装置1は、転写ベルト20に吐出されたインク液滴の粘度を調整する第1照射部25と、記録媒体Pに転写されたインクを硬化させる第2照射部26と、転写ベルト20の表面を加熱する加熱部27と、転写ベルト20の表面温度を検出する温度検出部28と、転写ベルト20の表面を冷却する冷却部29と、転写ローラー23および搬送ドラム24を駆動する搬送駆動部51とを備える。
【0017】
なお、図示しないが、インクジェット画像形成装置1は、記録媒体Pを積載して搬送ドラム24に給送する給送部、画像が転写された記録媒体Pを搬送ドラム24の搬送方向下流側に排出する排出部、装置の状態を表示する表示部、等を備える。これらは公知の構成であるため、図示および説明を省略する。
【0018】
また、記録媒体Pとしては、普通紙や塗工紙といった用紙の他、布帛またはシート状の樹脂等、転写ベルト20の表面に着弾したインク液滴を転写させることが可能な種々の媒体を用いることができる。
【0019】
転写ベルト20は、上方に配置された従動ローラー21,22と、下方に配置された転写ローラー23(駆動ローラー)とに架け渡されており、搬送駆動部51の転写モーター(図示せず)の駆動力が転写ローラー23に伝達されることにより、
図1中の時計周り方向に回転(移動)する。
【0020】
本実施の形態では、従動ローラー22内に加熱源(例えば、ヒーター)が設けられている。加熱源の温度は、制御部40によって制御される。加熱源によって従動ローラー22が加熱され、その結果、転写ベルト20の温度が目標温度となるように加熱される。目標温度は、転写ベルト20に吐出されたインク液滴の径が所定径となるように設定された温度である。
【0021】
本実施の形態では、転写ベルト20は、活性エネルギー線透過性を有し、ポリイミド(PI)の基材上に、シリコンゴムの弾性層と、アルミニウム(Al)が蒸着された反射層と、ポリプロピレン(PP)の表層と、が積層された無端ベルトが用いられる。
【0022】
また、転写ローラー23としては例えば、直径100mmで、表層のゴム厚が10mmのゴムローラーが用いられる。なお、基材については、ポリイミド(PI)等の樹脂材料が使用されても良いし、ステンレス材料が使用されても良い。
【0023】
インクジェット画像形成装置1において、転写ベルト20は、制御部40の制御信号に基づいて上記の転写モーターが駆動され転写ローラー23が
図1中の時計周り方向に回転することによって、時計周り方向に回転駆動される。本実施の形態では、制御部40の制御の下、転写ベルト20が600mm/秒の速さ(印画速度)で回転するように、転写ローラー23の回転速度が制御される。
【0024】
搬送ドラム24は、円柱面状の外周曲面(搬送面)上に記録媒体Pを保持した状態で
図1の図面に垂直な方向(以下、「直交方向」と称する)に延びた回転軸の回りで回転することで、搬送面に沿った搬送方向に記録媒体Pを搬送する。
【0025】
具体的には、搬送ドラム24は、搬送ドラムモーター(図示せず)を備え、制御部40の制御により搬送ドラムモーターが駆動されることにより、
図1中の反時計周り方向に回転する。本実施の形態では、搬送ドラム24として、大型(例えば印刷機用3倍胴)の金属製ドラムが用いられる。
【0026】
上述した転写ベルト20、転写ローラー23および搬送ドラム24は、800mmの幅すなわち軸方向の長さを有する。
【0027】
転写ローラー23は、搬送ドラム24の上部に対向して配置され、転写ベルト20を介して搬送ドラム24を加圧する。また、転写ベルト20を挟んで、搬送ドラム24が転写ローラー23に圧接されることにより、転写ベルト20から記録媒体Pへ画像を転写する転写ニップNPが形成される。本実施の形態では、転写ニップNPにおける転写荷重ないし圧接力(以下、「転写圧」という)の値は、80Nに設定されている。なお、転写ベルト20、転写ローラー23および搬送ドラム24は、本発明の「転写部」として機能する。
【0028】
ヘッドユニット10は、転写ベルト20に対向するインク吐出面に設けられたノズル開口部から転写ベルト20に対してインク液滴を吐出して転写ベルト20上に画像を形成する。搬送ドラム24は、転写ベルト20上に形成された画像が転写ニップNPで記録媒体Pの所定の位置に転写されるように、記録媒体Pを搬送する。
【0029】
本実施の形態におけるインクジェット画像形成装置1では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクにそれぞれ対応する4つのヘッドユニット10が転写ベルト20の回転方向(移動方向)の上流側からY,M,C,Kの色の順に所定の間隔で並ぶように配列されている。
【0030】
各ヘッドユニット10は、インクジェットヘッド102(
図2を参照)を備える。インクジェットヘッド102には、インクを貯留する圧力室と、圧力室の壁面に設けられた圧電素子と、ノズルとを各々有する複数の記録素子が設けられている。この記録素子は、圧電素子を変形動作させる駆動信号が入力されると、圧電素子の変形により圧力室が変形して圧力室内の圧力が変化し、圧力室に連通するノズルからインク液滴を吐出する。
【0031】
インクジェットヘッド102に含まれるノズルの直交方向についての配置範囲は、搬送ドラム24により搬送される記録媒体Pのうち画像が形成される領域の直交方向の幅をカバーしている。ヘッドユニット10は、画像の形成時には搬送ドラム24の回転軸に対して位置が固定されて用いられる。すなわち、インクジェット画像形成装置1は、シングルパス形式のインクジェット画像形成装置である。
【0032】
本実施の形態では、インクジェットヘッド102から転写ベルト20に吐出されるインクとして、紫外線の照射を受けて硬化する紫外線硬化性を有するインクが使用される。より具体的には、転写ベルト20に供給される活性エネルギー線の量(第1照射部25から出力される紫外線(UV:ultra violet)の光量)に応じて粘度が変化するインクが用いられる。第1照射部25から照射される活性エネルギー線の光量が多いほど、粘度が高くなる性質のインクが用いられる。すなわち、このインクジェット画像形成装置1の画像形成部は、UV硬化型インクジェット方式を採用している。
【0033】
第1照射部25は、転写ベルト20の内周面側に配置され、制御部40の制御の下、転写ベルト20上に吐出されたインク液滴が転写ニップNPにおいて挟持かつ押圧(ニップ)される際、当該インク液滴に対して活性エネルギー線を照射して当該インク液滴を硬化させる。なお、第1照射部25は、本発明の「硬化部」として機能する。
【0034】
図1において、第1照射部25から伸びる点線矢印は、転写ベルト20上に吐出されたインク液滴に対して転写ベルト20の表面側から照射された活性エネルギー線を示している。本実施の形態では、第1照射部25は、波長395nmのUV光を出力するUV光源を備え、通常の印刷ジョブにおける照射強度のデフォルト値が3mW/cm
2に設定されている。
【0035】
第2照射部26は、転写ニップNPの下流側に搬送される記録媒体Pに活性エネルギー線を照射するように配置されており、制御部40の制御の下、転写ニップNPにより転写された画像(インク液滴)を本硬化させる。本実施の形態では、第2照射部26は、波長395nmのUV光を出力するUV光源を備え、通常の印刷ジョブにおける照射強度のデフォルト値が10mW/cm2に設定されている。
【0036】
加熱部27は、転写ベルト20の移動方向(回転方向)において転写ニップNPの下流側における転写ベルト20の表面に当接配置され、制御部40の制御を受けて、転写ベルト20の表面を加熱する加熱ローラー27Aである。加熱ローラー27Aは、800mmの幅すなわち軸方向の長さを有する。
【0037】
加熱ローラー27Aは、例えば、アルミニウムなどの金属製の基体表面に、シリコンゴムなどからなる弾性体層が被覆されてなり、所定の外径に形成されたものとすることができる。加熱ローラー27Aは、その内部に、加熱源として例えば300~350Wのハロゲンランプが配設されており、加熱ローラー27Aの表面温度が所定温度となるように内部から加熱する構成とされている。
【0038】
加熱ローラー27Aは、公知の機構を用い、転写ベルト20の表面に対する当接圧を変更することによって接触面積(加熱ニップ幅)を変更したり、転写ベルト20の表面から離間したり、加熱ローラー27Aの表面温度を変更したりすることによって、転写ベルト20の表面に対する加熱量を変更する。
【0039】
なお、加熱部27は、熱風を吹き付けたり、IR(赤外線)ヒーターに赤外線を照射させたりすることによって、転写ベルト20の表面を加熱しても良い。
【0040】
温度検出部28は、転写ベルト20の移動方向において加熱部27の下流側かつ冷却部29の上流側における転写ベルト20の表面に対向配置され、加熱部27により加熱された後における転写ベルト20の表面温度を検出する温度センサーである。温度検出部28は、検出した転写ベルト20の表面温度を制御部40に出力する。
【0041】
冷却部29は、転写ベルト20の移動方向において温度検出部28の下流側かつ従動ローラー21の上流側における転写ベルト20の表面に当接配置され、制御部40の制御を受けて、転写ベルト20の表面を冷却する冷却ローラー29Aである。冷却ローラー29Aは、800mmの幅すなわち軸方向の長さを有する。
【0042】
冷却ローラー29Aは、例えば熱伝導の率の高い金属からなり、内蔵するヒートパイプ(図示せず)により冷却されるか又はファン(図示せず)によりローラー内に送られる冷却風により冷却され、当該冷却ローラーの表面温度が所定温度となるように内部から冷却する構成とされている。
【0043】
冷却ローラー29Aは、公知の機構を用い、転写ベルト20の表面に対する当接圧を変更することによって接触面積(冷却ニップ幅)を変更したり、転写ベルト20の表面から離間したり、冷却ローラーの表面温度を変更したりすることによって、転写ベルト20の表面に対する冷却量を変更する。
【0044】
なお、冷却部29は、冷却ファンにより冷却風を吹き付けたり、ペルチェ素子からなる冷却素子を接触させたりすることによって、転写ベルト20の表面を冷却しても良い。
【0045】
次に、主として
図2を参照して、インクジェット画像形成装置1における他の主要な機能構成を説明する。インクジェット画像形成装置1は、ヘッドユニット10が有するヘッド駆動部101およびインクジェットヘッド102と、制御部40と、搬送駆動部51と、入出力インターフェース52とを備える。
【0046】
ヘッド駆動部101は、制御部40の制御に基づいてインクジェットヘッド102の記録素子に対して適切なタイミングで画像データに応じて圧電素子を変形動作させる駆動信号を出力することにより、インクジェットヘッド102のノズルから画像データの画素値に応じた量のインク液滴を吐出させる。
【0047】
制御部40は、CPU41(Central Processing Unit)、RAM42(Random Access Memory)、ROM43(Read Only Memory)および記憶部44を有する。
【0048】
CPU41は、ROM43に記憶された各種制御用のプログラムや設定データを読み出してRAM42に記憶させ、当該プログラムを実行して各種の演算処理を行う。また、CPU41は、インクジェット画像形成装置1の全体動作を統括制御する。
【0049】
RAM42は、CPU41に作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。なお、RAM42は、不揮発性メモリーを含んでも良い。
【0050】
ROM43は、CPU41により実行される各種制御用のプログラムや設定データ等を格納する。なお、ROM43に代えて、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリー等の書き換え可能な不揮発性メモリーが用いられてもよい。
【0051】
記憶部44には、入出力インターフェース52を介して外部装置2から入力された印刷ジョブ(具体的には、印刷枚数などの種々のユーザー設定情報を含む画像形成指示)および当該印刷ジョブに係る画像データが記憶される。記憶部44としては、例えばHDD(Hard Disk Drive)が用いられ、また、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などが併用されても良い。
【0052】
搬送駆動部51は、制御部40から供給される制御信号に基づいて搬送ドラム24の搬送ドラムモーターに駆動信号を供給して搬送ドラム24を所定の速度およびタイミングで回転させる。また、搬送駆動部51は、制御部40から供給される制御信号に基づいて転写ローラー23のモーターに駆動信号を供給して、転写ベルト20を所定の速度およびタイミングで回転させる。
【0053】
入出力インターフェース52は、外部装置2と制御部40との間のデータの送受信を媒介する。入出力インターフェース52は、例えば各種シリアルインターフェース、各種パラレルインターフェースのいずれか、または、これらの組み合わせで構成される。
【0054】
外部装置2は、例えばパーソナルコンピューターであり、入出力インターフェース52を介して印刷ジョブおよび画像データ等を制御部40に供給する。
【0055】
ところで、第1照射部25からの活性エネルギー線の照射によりインク液滴を硬化(増粘)させる際、その硬化反応(重合反応)時に発生する熱量(硬化反応熱量)により転写ベルト20の表面温度が上昇する。
【0056】
ここで、転写ベルト20上の複数の位置において、インクジェットヘッド102から吐出されたインク液滴量(インク隠蔽率)が異なると硬化反応の際に発生する熱量も異なる。具体的には、インク液滴量が多い位置においては、硬化反応の際に発生する熱量は多くなり転写ベルト20上の温度上昇量は大きくなる一方、インク液滴量が少ない位置においては、硬化反応の際に発生する熱量は少なくなり転写ベルト20の温度上昇量は小さくなる。そのため、記録媒体Pへの転写後において転写ベルト20上において温度ムラが発生することとなる。
【0057】
その結果、次回、インクジェットヘッド102からインク液滴が吐出される際、転写ベルト20上に着弾したインク液滴の径(ドット径)にムラが生じる。具体的には、温度が高い位置においては、着弾したインク液滴の径が大きくなる一方、温度が低い位置においては、着弾したインク液滴の径が小さくなる。そして、インク液滴の径にムラが生じたまま記録媒体Pに画像が転写されると、当該画像の品質が低下してしまう。
【0058】
そこで本実施の形態では、インクジェット画像形成装置1は、本発明の「温度調整部」として機能する加熱部27、冷却部29および制御部40の動作により、活性エネルギー線の照射によるインク液滴が硬化する際に発生する熱量の違いに基づいて、転写ベルト20の温度(表面温度)を調整する。
【0059】
図3のフローチャートを参照して、インクジェット画像形成装置1の温度調整動作(本発明の「温度調整方法」に対応)の例について説明する。なお、
図3に示す処理は、印刷ジョブに係る画像データが制御部40に供給されてインクジェットヘッド102のノズルから画像データの画素値に応じた量のインク液滴が吐出される毎に実行される。
【0060】
まず、制御部40は、画像データに基づいて、転写ベルト20の複数の位置におけるインク液滴の量を取得(推定)する(ステップS100)。次に、制御部40は、ステップS100にて取得した複数の位置におけるインク液滴の量の差分が大きいか否かについて判定する(ステップS120)。
【0061】
判定の結果、インク液滴の量の差分が大きい場合(ステップS120、YES)、制御部40は、転写ベルト20の表面に加熱ローラー27A(加熱部27)を当接させる制御を行う(ステップS140)。加熱ローラー27Aは、加熱後の転写ベルト20の表面温度が均一となるように、インク液滴の硬化反応の際に発生する熱量に応じた転写ベルト20の温度上昇量以上の温度を目標温度として、転写ベルト20の表面を加熱する。その後、処理はステップS180に遷移する。
【0062】
一方、インク液滴の量の差分が大きくない、すなわち小さい場合(ステップS120、NO)、制御部40は、転写ベルト20の表面から加熱ローラー(加熱部27)を離間させる制御を行う(ステップS160)。つまり、加熱ローラー27Aは、転写ベルト20の表面を加熱しない。その後、処理はステップS180に遷移する。
【0063】
ステップS140,S160における処理の違いから明らかなように、加熱ローラー27Aは、複数の位置におけるインク液滴の量の差分が大きい場合、当該差分が小さい場合と比べて、転写ベルト20の加熱量を多くする。
【0064】
ステップS180では、制御部40は、温度検出部28の検出結果として、加熱部27により加熱された後における転写ベルト20の表面温度を取得する。
【0065】
最後に、制御部40は、ステップS180にて取得された表面温度に基づいて、転写ベルト20の表面を冷却するように冷却部29(具体的には、冷却ローラー29Aの表面温度)を制御する(ステップS200)。本実施の形態では、冷却部29は、ステップS180にて取得された表面温度と、インク液滴が吐出される前の転写ベルト20の表面温度として設定された設定温度との差分が大きい場合、当該差分が小さい場合と比べて、転写ベルト20の冷却量を大きくする。ステップS200の処理が完了することによって、インクジェット画像形成装置1は、
図3における処理を終了する。
【0066】
次に、
図4を参照して、転写ベルト20の表面温度を調整する温度調整動作の具体例について説明する。
図4Aは、転写ベルト20を下方から見た図となっており、転写ベルト20の移動方向に直交する方向においてインクジェットヘッド102のノズルから吐出されるインク液滴の量の差分が大きい場合、転写ベルト20が転写後に、加熱部27、温度検出部28および冷却部29を通過する様子を示している。
図4Aにおいて、転写ベルト20上の領域60に吐出されるインク液滴の量は多く、領域62に吐出されるインク液滴の量は少ない。
【0067】
図4Bは、インクジェットヘッド102から吐出されたインク液滴が着弾し、活性エネルギー線の照射によりインク液滴が硬化し、転写ニップNPで当該インク液滴(画像)が転写され、加熱部27による加熱、冷却部29による冷却を経て、インクジェットヘッド102から次回のインク液滴が吐出されて着弾するまでの、転写ベルト20上における温度の時間変化を示している。
【0068】
図4Bにおいて、点線L1は、転写ベルト20上の領域60における表面温度の時間変化を示し、実線L2は、転写ベルト20上の領域62における表面温度の時間変化を示している。
【0069】
図4Bに示すように、インク液滴量が多い位置(領域60)においては、硬化反応の際に発生する熱量は多くなり転写ベルト20上の温度上昇量は大きくなる一方、インク液滴量が少ない位置(領域62)においては、硬化反応の際に発生する熱量は少なくなり転写ベルト20の温度上昇量は小さくなる。そのため、記録媒体Pへの転写後において転写ベルト20上において温度ムラ(温度差)が発生することとなる。
【0070】
そこで、本実施の形態では、制御部40は、転写ベルト20の表面に加熱ローラー27A(加熱部27)を当接させる制御を行う。加熱ローラー27Aは、加熱後の転写ベルト20の表面温度を均一となるように、インク液滴の硬化反応の際に発生する熱量に応じた転写ベルト20の温度上昇量以上の温度T1(
図4Bを参照)を目標温度として、転写ベルト20の表面を加熱する。
【0071】
その後、制御部40は、温度検出部28の検出結果として、加熱部27により加熱された後における転写ベルト20の表面温度を取得する。そして、制御部40は、取得された表面温度に基づいて、転写ベルト20の表面を冷却するように冷却部29(具体的には、冷却ローラー29Aの表面温度)を制御する。具体的には、冷却部29は、次回のインク液滴が吐出されるまでの間に、取得された表面温度と、インク液滴が吐出される前の転写ベルト20の表面温度として設定された設定温度T2(
図4Bを参照)との差分が小さくなるように転写ベルト20の表面を冷却する。
【0072】
以上のような加熱および冷却による温度調整制御を行うことによって、次回、インクジェットヘッド102からインク液滴が吐出される際、転写ベルト20上において温度ムラの発生を防止し、転写ベルト20上に着弾したインク液滴の径(ドット径)にムラが生じることを防止することができる。その結果、インク液滴の径にムラが生じずに記録媒体Pに画像が転写されることによって、当該画像の品質の低下を抑制することができる。
【0073】
また、
図5を参照して、転写ベルト20の表面温度を調整する温度調整動作の具体例について説明する。
図5Aは、転写ベルト20を下方から見た図となっており、転写ベルト20の移動方向に直交する方向においてインクジェットヘッド102のノズルから吐出されるインク液滴の量の差分が小さい場合、転写ベルト20が転写後に、加熱部27、温度検出部28および冷却部29を通過する様子を示している。
図5Aにおいて、転写ベルト20上の領域60,62に吐出されるインク液滴の量は少ない。
【0074】
図5Bは、インクジェットヘッド102から吐出されたインク液滴が着弾し、活性エネルギー線の照射によりインク液滴が硬化し、転写ニップNPで当該インク液滴(画像)が転写され、冷却部29による冷却を経て、インクジェットヘッド102から次回のインク液滴が吐出されて着弾するまでの、転写ベルト20上における温度の時間変化を示している。
【0075】
図5Bにおいて、点線L1は、転写ベルト20上の領域60における表面温度の時間変化を示し、実線L2は、転写ベルト20上の領域62における表面温度の時間変化を示している。
【0076】
図5Bに示すように、インク液滴量が少ない位置(領域60,62)においては、硬化反応の際に発生する熱量は少なく、転写ベルト20上の温度上昇量は小さく同程度である。そのため、記録媒体Pへの転写後に転写ベルト20上において温度ムラ(温度差)は発生しない。
【0077】
そこで、本実施の形態では、制御部40は、転写ベルト20の表面から加熱ローラー27A(加熱部27)を離間させる、すなわち転写ベルト20の表面を加熱しない制御を行う。
図5Aでは、加熱ローラー27Aを点線で表すことによって、転写ベルト20の表面から加熱ローラー(加熱部27)が離間している状態を示す。
【0078】
その後、制御部40は、温度検出部28の検出結果として、インク液滴の硬化反応の際に発生する熱量に応じて温度上昇した後の転写ベルト20の表面温度を取得する。そして、制御部40は、取得された表面温度に基づいて、転写ベルト20の表面を冷却するように冷却部29を制御する。具体的には、冷却部29は、次回のインク液滴が吐出されるまでの間に、取得された表面温度と、インク液滴が吐出される前の転写ベルト20の表面温度として設定された設定温度T2(
図5Bを参照)との差分が小さくなるように転写ベルト20の表面を冷却する。
【0079】
以上のような冷却による温度調整制御を行うことによって、次回、インクジェットヘッド102からインク液滴が吐出される際、転写ベルト20上において温度ムラが発生しておらず、転写ベルト20上に着弾したインク液滴の径(ドット径)にムラが生じない。その結果、インク液滴の径にムラが生じずに記録媒体Pに画像が転写されることによって、当該画像の品質の低下を抑制することができる。
【0080】
以上詳しく説明したように、本実施の形態では、インクジェット画像形成装置1(画像形成装置)は、活性エネルギー線硬化性を有するインク液滴をインクジェットヘッド102から吐出することによって転写ベルト20(転写体)上に画像を形成するヘッドユニット10(画像形成部)と、吐出されて転写ベルト20上に着弾したインク液滴に、活性エネルギー線を照射して当該インク液滴を硬化させる第1照射部25(硬化部)と、インク液滴の硬化の際に発生する熱量の違いに基づいて、転写ベルト20の温度を調整する温度調整部(加熱部27、冷却部29および制御部40)と、を備える。
【0081】
このように構成した本実施の形態によれば、インク液滴の硬化の際に発生する熱量の違いに基づいて、転写ベルト20の表面温度が調整される。そのため、次回、インクジェットヘッド102からインク液滴が吐出される際、転写ベルト20上において温度ムラの発生を防止し、ひいては、転写ベルト20上に着弾したインク液滴の径(ドット径)にムラが生じることを防止することができる。その結果、インク液滴の径にムラが生じさせずに記録媒体Pに画像を転写させることによって、当該画像の品質の低下を抑制することができる。
【0082】
図6は、第2の実施の形態に係るインクジェット画像形成装置1の全体構成の変形例を概略的に示す図である。本実施の形態では、インクジェット画像形成装置1は、第1の実施の形態と比べて、転写ベルト20の表面温度を検出する温度検出部30を更に備える。
【0083】
温度検出部30は、転写ベルト20の移動方向において転写ニップNPの下流側かつ加熱部27の上流側における転写ベルト20の表面に対向配置され、転写ニップNPにて画像が記録媒体Pに転写された後における転写ベルト20の表面温度を検出する温度センサーである。温度検出部30は、検出した転写ベルト20の表面温度を制御部40に出力する。
【0084】
本実施の形態では、加熱部27は、転写ベルト20の移動方向(回転方向)において転写ニップNPの下流側における転写ベルト20の表面に当接配置され、制御部40の制御を受けて、転写ベルト20の複数の位置をそれぞれ加熱する複数の加熱ローラー27A,27B,27Cである(
図8Aを参照)。具体的には、
図8Aに示すように、複数(3つ)の加熱ローラー27A,27B,27Cは、転写ベルト20の移動方向に直交する方向に沿って分割配置され、当該直交する方向における複数の位置をそれぞれ加熱する。なお、加熱ローラー27A,27B,27Cは、本発明の「加熱部材」として機能する。
【0085】
加熱ローラー27A,27B,27Cは、例えば、アルミニウムなどの金属製の基体表面に、シリコンゴムなどからなる弾性体層が被覆されてなり、所定の外径に形成されたものとすることができる。加熱ローラー27A,27B,27Cは、その内部に、加熱源として例えば300~350Wのハロゲンランプが配設されており、加熱ローラー27A,27B,27Cの表面温度が所定温度となるように内部から加熱する構成とされている。
【0086】
加熱ローラー27A,27B,27Cは、公知の機構を用い、転写ベルト20の表面に対する当接圧を変更することによって接触面積(加熱ニップ幅)を変更したり、転写ベルト20の表面から離間したり、加熱ローラー27A,27B,27Cの表面温度を変更したりすることによって、転写ベルト20の表面に対する加熱量を変更する。
【0087】
図7のフローチャートを参照して、インクジェット画像形成装置1の温度調整動作(本発明の「温度調整方法」に対応)の例について説明する。なお、
図7に示す処理は、印刷ジョブに係る画像データが制御部40に供給されてインクジェットヘッド102のノズルから画像データの画素値に応じた量のインク液滴が吐出される毎に実行される。
【0088】
まず、制御部40は、温度検出部30の検出結果に基づいて、転写ベルト20の複数の位置における表面温度を取得する(ステップS300)。次に、制御部40は、ステップS300にて取得した複数の位置における表面温度の差分が大きいか否かについて判定する(ステップS320)。
【0089】
判定の結果、表面温度の差分が大きい場合(ステップS320、YES)、制御部40は、転写ベルト20の表面に加熱ローラー27A,27B,27C(加熱部27)を当接させる制御を行う(ステップS340)。加熱ローラー27A,27B,27Cは、加熱後の転写ベルト20の表面温度が均一となるように、インク液滴の硬化反応の際に発生する熱量に応じた転写ベルト20の温度上昇量以上の温度を目標温度として、転写ベルト20の表面を加熱する。加熱ローラー27A,27B,27Cは、複数の位置において、表面温度が低い位置の加熱量を、表面温度が高い位置の加熱量より大きくすることによって、転写ベルト20の表面温度が均一となるように加熱を行う。その後、処理はステップS380に遷移する。
【0090】
一方、表面温度の差分が大きくない、すなわち小さい場合(ステップS320、NO)、制御部40は、転写ベルト20の表面から加熱ローラー27A,27B,27C(加熱部27)を離間させる制御を行う(ステップS360)。つまり、加熱ローラー27A,27B,27Cは、転写ベルト20の表面を加熱しない。その後、処理はステップS380に遷移する。
【0091】
ステップS340,S360における処理の違いから明らかなように、加熱ローラー27A,27B,27Cは、複数の位置における表面温度の差分が大きい場合、当該差分が小さい場合と比べて、転写ベルト20の加熱量を多くする。
【0092】
ステップS380では、制御部40は、温度検出部28の検出結果として、加熱部27により加熱された後における転写ベルト20の表面温度を取得する。
【0093】
最後に、制御部40は、ステップS380にて取得された表面温度に基づいて、転写ベルト20の表面を冷却するように冷却部29(具体的には、冷却ローラー29Aの表面温度)を制御する(ステップS400)。本実施の形態では、冷却部29は、ステップS380にて取得された表面温度と、インク液滴が吐出される前の転写ベルト20の表面温度として設定された設定温度との差分が大きい場合、当該差分が小さい場合と比べて、転写ベルト20の冷却量を大きくする。ステップS400の処理が完了することによって、インクジェット画像形成装置1は、
図7における処理を終了する。
【0094】
次に、
図8を参照して、転写ベルト20の表面温度を調整する温度調整動作の具体例について説明する。
図8Aは、転写ベルト20を下方から見た図となっており、転写ベルト20の移動方向に直交する方向においてインクジェットヘッド102のノズルから吐出されるインク液滴の量の差分が大きい場合、転写ベルト20が転写後に、温度検出部30、加熱部27、温度検出部28および冷却部29を通過する様子を示している。
図8Aにおいて、転写ベルト20上の領域60に吐出されるインク液滴の量は多く、領域62に吐出されるインク液滴の量は少ない。
【0095】
図8Bは、インクジェットヘッド102から吐出されたインク液滴が着弾し、活性エネルギー線の照射によりインク液滴が硬化し、転写ニップNPで当該インク液滴(画像)が転写され、加熱ローラー27A,27B,27Cによる加熱、冷却部29による冷却を経て、インクジェットヘッド102から次回のインク液滴が吐出されて着弾するまでの、転写ベルト20上における温度の時間変化を示している。
【0096】
図8Bにおいて、点線L1は、転写ベルト20上の領域60における表面温度の時間変化を示し、実線L2は、転写ベルト20上の領域62における表面温度の時間変化を示している。
【0097】
図8Bに示すように、インク液滴量が多い位置(領域60)においては、硬化反応の際に発生する熱量は多くなり転写ベルト20上の温度上昇量は大きくなる一方、インク液滴量が少ない位置(領域62)においては、硬化反応の際に発生する熱量は少なくなり転写ベルト20の温度上昇量は小さくなる。そのため、記録媒体Pへの転写後に転写ベルト20上において温度ムラ(温度差)が発生することとなる。
【0098】
そこで、本実施の形態では、制御部40は、温度検出部30の検出結果に基づいて、転写ベルト20の複数の位置(領域60,62)における表面温度を取得し、温度ムラ(温度差)の発生を検知する。
【0099】
制御部40は、温度ムラ(温度差)の発生を検知した場合、転写ベルト20の表面に加熱ローラー27A,27B,27C(加熱部27)を当接させる制御を行う。具体的には、加熱ローラー27A,27B,27Cは、加熱後の転写ベルト20の表面温度が均一となるように、インク液滴の硬化反応の際に発生する熱量に応じた転写ベルト20の温度上昇量以上の温度T1(
図8Bを参照)を目標温度として、転写ベルト20の表面を加熱する。
【0100】
図8に示す例では、加熱ローラー27A,27B,27Cは、複数の位置(領域60,62)において、表面温度が低い位置(領域62)の加熱量を、表面温度が高い位置(領域60)の加熱量より大きくする。すなわち、加熱ローラー27Cにより加熱される領域62の加熱量は、加熱ローラー27Aにより加熱される領域60の加熱量より大きい。このように、加熱ローラー27A,27B,27Cの加熱量を個別に制御することにより、第1の実施の形態よりも、複数の位置(領域60,62)における表面温度を均一に、かつ、目標温度に近づけることができる(
図8Bを参照)。
【0101】
その後、制御部40は、温度検出部28の検出結果として、加熱ローラー27A,27B,27Cにより加熱された後における転写ベルト20の表面温度を取得する。そして、制御部40は、取得された表面温度に基づいて、転写ベルト20の表面を冷却するように冷却部29を制御する。具体的には、冷却部29は、次回のインク液滴が吐出されるまでの間に、取得された表面温度と、インク液滴が吐出される前の転写ベルト20の表面温度として設定された設定温度T2(
図8Bを参照)との差分が小さくなるように転写ベルト20の表面を冷却する。
【0102】
以上のような加熱および冷却による温度調整制御を行うことによって、次回、インクジェットヘッド102からインク液滴が吐出される際、転写ベルト20上において温度ムラの発生を防止し、転写ベルト20上に着弾したインク液滴の径(ドット径)にムラが生じることを防止することができる。その結果、インク液滴の径にムラが生じずに記録媒体Pに画像が転写されることによって、当該画像の品質の低下を抑制することができる。
【0103】
また、
図9を参照して、転写ベルト20の表面温度を調整する温度調整動作の具体例について説明する。
図9Aは、転写ベルト20を下方から見た図となっており、転写ベルト20の移動方向に直交する方向においてインクジェットヘッド102のノズルから吐出されるインク液滴の量の差分が小さい場合、転写ベルト20が転写後に、温度検出部30、加熱部27、温度検出部28および冷却部29を通過する様子を示している。
図9Aにおいて、転写ベルト20上の領域60,62に吐出されるインク液滴の量は少ない。
【0104】
図9Bは、インクジェットヘッド102から吐出されたインク液滴が着弾し、活性エネルギー線の照射によりインク液滴が硬化し、転写ニップNPで当該インク液滴(画像)が転写され、冷却部29による冷却を経て、インクジェットヘッド102から次回のインク液滴が吐出されて着弾するまでの、転写ベルト20上における温度の時間変化を示している。
【0105】
図9Bにおいて、点線L1は、転写ベルト20上の領域60における表面温度の時間変化を示し、実線L2は、転写ベルト20上の領域62における表面温度の時間変化を示している。
【0106】
図9Bに示すように、インク液滴量が少ない位置(領域60,62)においては、硬化反応の際に発生する熱量は少なく、転写ベルト20上の温度上昇量は小さく同程度である。そのため、記録媒体Pへの転写後に転写ベルト20上において温度ムラ(温度差)は発生しない。
【0107】
制御部40は、温度検出部30の検出結果に基づいて、転写ベルト20の複数の位置(領域60,62)における表面温度を取得し、温度ムラ(温度差)の発生を検知しない。
【0108】
そこで、本実施の形態では、制御部40は、温度ムラ(温度差)の発生を検知しなかった場合、転写ベルト20の表面から加熱ローラー27A,27B,27C(加熱部27)を離間させる、すなわち転写ベルト20の表面を加熱しない制御を行う。
図9Aでは、加熱ローラー27A,27B,27Cを点線で表すことによって、転写ベルト20の表面から加熱ローラー27A,27B,27C(加熱部27)が離間している状態を示す。
【0109】
その後、制御部40は、温度検出部28の検出結果として、インク液滴の硬化反応の際に発生する熱量に応じて温度上昇した後の転写ベルト20の表面温度を取得する。そして、制御部40は、取得された表面温度に基づいて、転写ベルト20の表面を冷却するように冷却部29を制御する。具体的には、冷却部29は、次回のインク液滴が吐出されるまでの間に、取得された表面温度と、インク液滴が吐出される前の転写ベルト20の表面温度として設定された設定温度T2(
図9Bを参照)との差分が小さくなるように転写ベルト20の表面を冷却する。
【0110】
以上のような冷却による温度調整制御を行うことによって、次回、インクジェットヘッド102からインク液滴が吐出される際、転写ベルト20上において温度ムラが発生しておらず、転写ベルト20上に着弾したインク液滴の径(ドット径)にムラが生じない。その結果、インク液滴の径にムラが生じずに記録媒体Pに画像が転写されることによって、当該画像の品質の低下を抑制することができる。
【0111】
なお、上記第2の実施の形態において、必ずしも温度検出部30を設けなくても良い。この場合、制御部40は、印刷ジョブに係る画像データに基づいて、転写ベルト20の複数の位置(領域60,62)におけるインク液滴の量を取得(推定)する。
【0112】
次に、制御部40は、取得した複数の位置(領域60,62)におけるインク液滴の量の差分が大きい場合、転写ベルト20の表面に加熱ローラー27A,27B,27C(加熱部27)を当接させる制御を行う。ここで、加熱ローラー27A,27B,27Cは、複数の位置(領域60,62)において、表面温度が低い位置(領域62)の加熱量を、表面温度が高い位置(領域60)の加熱量より大きくする。
【0113】
また、上記第1および第2の実施の形態では、転写ベルト20の移動方向に直交する方向においてインクジェットヘッド102のノズルから吐出されるインク液滴の量が異なる例(
図4A,8Aを参照)について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、転写ベルト20の移動方向において、インクジェットヘッド102のノズルから吐出されるインク液滴の量が異なる場合についても本発明を適用可能である。この場合には、加熱部27は、転写ベルト20の移動方向における転写ベルト20の表面温度を均一となるように、インク液滴の硬化反応の際に発生する熱量に応じた転写ベルト20の温度上昇量以上の温度T1を目標温度として、転写ベルト20の表面を加熱する。
【0114】
また、上記第1および第2の実施の形態では、第1照射部25により照射される活性エネルギー線は、紫外線である例について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、活性エネルギー線は、電子線であっても良い。この場合、電子線に応じて粘度が変化するインクが用いられることが好ましい。
【0115】
また、上記実施の形態では、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0116】
1 インクジェット画像形成装置
2 外部装置
10 ヘッドユニット
20 転写ベルト
21,22 従動ローラー
23 転写ローラー
24 搬送ドラム
25 第1照射部
26 第2照射部
27 加熱部
27A,27B,27C 加熱ローラー
28,30 温度検出部
29 冷却部
29A 冷却ローラー
40 制御部
41 CPU
42 RAM
43 ROM
44 記憶部
51 搬送駆動部
52 入出力インターフェース
60,62 領域
101 ヘッド駆動部
102 インクジェットヘッド
NP 転写ニップ
P 記録媒体