(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】化粧シート
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20240611BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240611BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240611BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20240611BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20240611BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240611BHJP
C08K 5/3492 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
C08J5/18 CES
B32B27/00 E
B32B27/18 A
B32B27/20 A
C08L23/00
C08K3/013
C08K5/3492
(21)【出願番号】P 2020041083
(22)【出願日】2020-03-10
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】村田 大輔
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-171821(JP,A)
【文献】特開2019-218509(JP,A)
【文献】国際公開第2018/062299(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02、5/12-5/22
B32B 1/00-43/00
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機顔料とポリオレフィン樹脂を含む基材層であって、前記基材層がトリアジン系紫外線吸収剤を含み、
前記トリアジン系紫外線吸収剤が下記一般式(1)で表される構造を有する第1のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(UVA-A)及び下記一般式(2)で表される構造を有する第2のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(UVA-B)を含有し、
それぞれの含有量が、前記第1のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(UVA-A)と前記第2のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(UVA-B)の質量比(UVA-A/UVA-B)において10/90~90/10の範囲内であり、
450nm以上800nm以下の波長範囲内における平均吸光度が1.0以上2.0以下であ
り、
前記第1の紫外線吸収剤の含有量E質量%と前記第2の紫外線吸収剤の含有量F質量%の和が0.1以上1.5以下であることを特徴とする化粧シート。
【化1】
(一般式(1)中、R1からR3はそれぞれ独立し、水素原子またはメチル基またはフェニル基またはアルコキシ基を示し、かつ少なくとも2つが炭素数6から18のアルコキシ基であり、R4、R5はそれぞれ独立し、ヒドロキシル基またはメチル基または水素原子を示し、R6からR8はそれぞれ独立し、メチル基または水素原子を示す。)
【化2】
(一般式(2)中、R1は炭素数8から18のアルコキシ基であり、R2からR5はそれぞれ独立し、水素原子またはメチル基を示す。)
【請求項2】
前記基材層がヒンダードアミン系光安定剤を含むことを特徴とする請求項1に記載した化粧シート。
【請求項3】
前記基材層の厚みCμmと前記無機顔料の含有量D質量%の積を100で除した値[C×D/100]が0.5以上100以下の範囲内であることを特徴とする請求項1又は2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記紫外線吸収剤(UVA-A)が、下記一般式(3)で表される構造であることを特徴とする請求項1~請求項
3のいずれか1項に記載した化粧シート。
【化3】
(一般式(3)中、R1、R2は炭素数8から18のアルコキシ基、R3は炭素数1から4のアルコキシ基、R4はヒドロキシル基、R5からR8は水素原子を示す。)
【請求項5】
前記紫外線吸収剤(UVA-A)が、下記式(4)に示す構造であることを特徴とする請求項1~請求項
4のいずれか1項に記載した化粧シート。
【化4】
【請求項6】
前記紫外線吸収剤(UVA-B)が、下記式(5)に示す構造であることを特徴とする請求項1~請求項
5のいずれか1項に記載した化粧シート。
【化5】
【請求項7】
前記基材層の一方の面に絵柄層が積層されていることを特徴とする請求項1~請求項
6のいずれか1項に記載した化粧シート。
【請求項8】
前記基材層の一方の面側に、透明樹脂層及びトップコート層の少なくとも一方の層が積層され、シートの総厚が100μm以上250μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1~請求項
7のいずれか1項に記載した化粧シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の内外装、建具、家具、造作材、床材等の表面化粧等に使用される化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特許文献1に示す通り、環境保護上の問題が懸念されているポリ塩化ビニル製の化粧シートに替わる化粧シートとして、オレフィン系樹脂を使用した化粧シート(例えば、ポリプロピレンシート)が数多く提案されている。これらの化粧シートは、塩化ビニル樹脂を使用しないことで、焼却時における有毒ガス等の発生は抑制される。化粧シートとして用いられるオレフィン系樹脂からなる軟質ポリオレフィンシートの耐傷性を向上させるために、高結晶性かつアイソタクチシティの高い樹脂を用いると、化粧シートが耐候性に劣るという問題点を有していた。これに対し、特許文献2においては、ポリオレフィンシートの表面に、トリアジン系の有機系紫外線吸収剤を含む樹脂からなる表面保護層を設けることが開示されている。
【0003】
また、無機顔料として代表的な酸化チタンは光励起により強い酸化力を示すものであり、酸化チタンを含む化粧部材を外装用途に適用すると、酸化チタンの光触媒作用により基材に含まれる樹脂の分解や化学反応を引き起こすおそれがあり、樹脂の劣化や層剥離が生じ耐候性が低下することがある。
これに対し、酸化チタンの光触媒作用を励起する光は波長帯域380nm以下の紫外線を含むことに着目し、光に曝される化粧シートの表面保護層に紫外線吸収剤を添加し、紫外線による酸化チタンの光触媒作用を抑制する方法が知られている。
【0004】
ところで化粧シートを、木質基板、金属基板、不燃基板等の基板表面に貼り付けることで化粧板となり、化粧シートは化粧板に対し目的に応じた意匠性を付与する。従って、化粧シートは、必要に応じて基板の表面が完全に見えなくなるように覆い隠す必要がある。この場合、少なくとも顔料によって着色され、隠蔽性が付与された化粧シートを用いる必要がある。そして、最も単純な化粧シートの構成としては、着色されたシート単体(単層)からなる基材層だけの構成が挙げられる。このような基材層だけからなる化粧シートの場合、通常は、付与できる意匠が柄の無い単色に限定されてしまうが、例えば顔料としてアルミフレークやパール顔料等の光輝材を添加することで光輝感を付与することはできるため、必要十分な意匠表現は可能である。また、更なる高意匠を付与したい場合は、基材層の表面に印刷等の加飾を施すことも有効である。
【0005】
化粧シートの中で白色シートはドア枠、巾木、各種収納等に用いられる。白色シートは基材の表面が透けて見え易く、隠蔽性を付与するために多量の顔料を添加する必要がある。しかしながら、多量の顔料を添加することで白色シートの耐候性が悪くなる問題がある。特許文献3に、無機顔料をベシクル化された状態で配合し、顔料の添加量が増大しても隠蔽性が優れる化粧シートが提案されているが、顔料の添加量が増大することを回避することはできず、耐候性が悪くなる問題は解消されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3271022号公報
【文献】特許第4032829号公報
【文献】特開2016-155233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
まず、化粧シートの最表層に位置する表面保護層についてのみ耐候性の向上を図っても、例えば、表面保護層に存在するクラック部においては十分な耐候性が得られず、下層に位置する絵柄層や基材層などが劣化して白化が生じるおそれがあるという問題を有している。この他にも、表面保護層を具備しない化粧シートであって、最表層となる透明樹脂層の表面にエンボス模様を形成している化粧シートの場合、いかに透明樹脂層の耐候性を向上させても、層厚が薄くなるエンボス模様の凹部において耐候性が十分に得られないおそれがある。このため、下層に設けられた絵柄層や基材層における当該凹部に位置する部分から劣化が進行して白化や破断が生じるおそれがあるという問題点を有していた。
【0008】
また、高隠蔽性を発現させるためには無機顔料を高濃度化させる必要があり、この場合は耐候性の向上が困難となる。さらに、耐候性の向上のため基材層に紫外線吸収剤を多量に含有させると、凝集した紫外線吸収剤が当該樹脂組成物の表面においてブリードアウトし、基材層表面の粉浮きや、層間密着性の低下が発生するという課題を有していた。
本発明は、耐候性、隠蔽性、耐ブリードアウト性を両立した化粧シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、無機顔料とポリオレフィン樹脂を含む基材層に対し最適な紫外線吸収剤とその添加量を種々検討及び実験を重ねて、上記課題を改善した化粧シートを提供できることを見出した。
【0010】
課題を達成するべく、本発明の一態様に係る化粧シートは、無機顔料とポリオレフィン樹脂を含む基材層であって、前記基材層がトリアジン系紫外線吸収剤を含み、前記トリアジン系紫外線吸収剤が下記一般式(1)で表される構造を有する第1のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(UVA-A)及び下記一般式(2)で表される構造を有する第2のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(UVA-B)を含有し、それぞれの含有量が、前記第1のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(UVA-A)と前記第2のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(UVA-B)の質量比(UVA-A/UVA-B)において10/90~90/10の範囲内であり、450nm以上800nm以下の波長範囲内における平均吸光度が1.0以上2.0以下であることを要旨とする。
【0011】
【化1】
(一般式(1)中、R1からR3はそれぞれ独立し、水素原子またはメチル基またはフェニル基またはアルコキシ基を示し、かつ少なくとも2つが炭素数6から18のアルコキシ基であり、R4、R5はそれぞれ独立し、ヒドロキシル基またはメチル基または水素原子を示し、R6からR8はそれぞれ独立し、メチル基または水素原子を示す。)
【0012】
【化2】
(一般式(2)中、R1は炭素数8から18のアルコキシ基であり、R2からR5はそれぞれ独立し、水素原子またはメチル基を示す。)
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、無機顔料とポリオレフィン樹脂を含む基材層に対し、最適な紫外線吸収剤を最適量添加することで、耐候性、隠蔽性、耐ブリードアウト性を備えた化粧シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る化粧シートの構成を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る他の化粧シートの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状及び構造等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0016】
「構成」
図1に示す実施形態の化粧シート10は、基材層1単体を用いた場合の例である。本実施形態の基材層1は、
図1に示すように、無機顔料をポリプロピレン樹脂に混合してなる着色層2と、着色層2の少なくとも一方の面に形成され、ポリプロピレン樹脂からなるスキン層3とから構成されていてもよい。スキン層3は、着色層2に含まれる無機顔料がブリードし、製造工程において製造設備に付着し、製膜不良となることを防ぐ狙いがある。スキン層3には結晶化度を向上させるため、ナノサイズの造核剤を含有してもよい。結晶化度を向上させることにより、耐傷性が良化する。なお、本実施形態では、造核剤は、例えば、外膜で包含されてベシクル化した造核剤ベシクルの状態で含有されていてもよい。
【0017】
図2に示すように、必要に応じて基材層1の一方の面に絵柄層4を形成(積層)して、意匠性を向上させてもよい。また、化粧シート10は、基材層1の一方の面側に、透明樹脂層5及びトップコート層6の少なくとも一方の層が積層していてもよい。
図2に例示した化粧シート10は、化粧シート10の一方の面に、絵柄層4、ドライラミネート用接着層7、透明樹脂層5及びトップコート層6がこの順に積層した例である。透明樹脂層5又はトップコート層6の一方が省略されていてもよい。また、絵柄層4を省略してもよい。
【0018】
ただし、本実施形態の化粧シート10は、透明樹脂層5及び表面保護層6を設ける場合、その総厚を100μm以上250μm以下の範囲内となるように設計することが好ましい。化粧シート10の総厚が100μm未満の場合、化粧シート10全体としての強度が不足してしまうため、ラッピング加工時の平滑性に問題が生じてしまうことがある。化粧シート10の総厚が250μmを超える場合、化粧シート10全体としての強度が高すぎてしまい、曲げ加工時に不具合が発生してしまうことがある。
【0019】
透明樹脂層5及びトップコート層6を設ける場合、膜厚としては例えば、基材層1が140μm、透明樹脂層5が95μm、トップコート層6が15μmとすればよい。ここで、基材層1、絵柄層4、透明樹脂層5、及びトップコート層6のうち、絵柄層4は層厚が薄いため、絵柄層4の厚さを無視して化粧シート10全体の総厚を100μm以上250μm以下の範囲内となるように設計してもよい。ここで、透明樹脂層5及びトップコート層6の少なくとも一方の層には、意匠性の要求によっては、エンボスによる凹凸形状を付与してもよい。更に、耐傷性等の要求から、透明樹脂層5及びトップコート層6の少なくとも一方の層を複数層積層することも可能であり、その他、公知の他の層を配置する構成としてもよい。
【0020】
図1及び
図2中、符号Bは、基板を表している。基板Bは、化粧シート10が貼り合わせられる基板である。基板Bとしては、特に限定は無いが、例えば、木質ボード類、無機系ボード類、金属板、複数の材料からなる複合板等が例示できる。また、化粧シート10と基板Bとの間に、適宜、プライマー層や隠蔽層等を設けてもよい。本実施形態の化粧シート10の引張弾性率、特に基材層1単体の引張弾性率の範囲が、700MPa以上2000MPa以下であることが好ましい。引張弾性率が700MPa未満の場合、印刷加工時の不具合を抑制することができない、もしくはラッピング加工時の表面平滑性を維持できないおそれがある。引張弾性率が2000MPaを超える場合、結晶性が高すぎるため、造核剤ベシクルを用いた場合でも、曲げ加工において白化や割れといった不具合が生じてしまうおそれがある。引張弾性率の好適な範囲は1000MPa以上1800MPa以下である。この範囲とすることで、印刷加工時の不具合、耐傷性、ラッピング加工時の表面平滑性、引き裂き加工性、及び曲げ加工について、それぞれ優れた状態で両立することができる。
【0021】
次に、化粧シート10を構成する各層について説明する。
<基材層1>
基材層1は、ポリオレフィン樹脂を主原料とし、そのポリオレフィン樹脂に無機顔料が混合されて着色されている。また、スキン層3を設ける場合はポリオレフィン樹脂を含んで形成され、無機顔料は含まれていない。
更に、基材層1の結晶性を上げる目的で、ナノサイズの造核剤が添加する場合、スキン層3を設ける場合はスキン層3に添加することが望ましい。
【0022】
基材層1は、下記一般式(1)および(2)で表される構造を有するヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、即ち第1のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤であるUVA-Aおよび第2のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤であるUVA-Bを、UVA-AとUVA-Bとの質量比(UVA-A/UVA-B)が10/90~90/10の範囲内であるように含有する。
本実施形態に係る化粧シート10におけるフィルムの保護において、UVA-AとUVA-Bとの質量比(UVA-A/UVA-B)が10/90に満たない場合、UVA-Aの含有量が少な過ぎるため、基材層1や後述する絵柄層4の変色が大きくなることがある。また、UVA-AとUVA-Bとの質量比(UVA-A/UVA-B)が90/10を超える場合、UVA-Aの含有量が多過ぎるため、短波長側の吸収が弱くなり、保護フィルム10自体の白化やワレが生じやすくなることがある。このように、何れの場合であっても耐候性の問題を生じることがある。
【0023】
UVA-Aとしては下記一般式(3)で表される化合物が好ましく、とりわけ下記式(4)に示す化合物、2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-(2-エチルヘキシルオキシ)フェニル]-6-(4-メトキシフェニル)-s-トリアジンがより好ましい。
UVA-Bとしては、例えば、下記式(5)、(6)、(7)に示す化合物が挙げられるが、とりわけ下記式(5)で表される化合物、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-[2-ヒドロキシ-4-(オクチルオキシ)フェニル]-s-トリアジンが好ましい。なお、当該化合物のオクチルオキシ基は直鎖および分岐の両者を含んでもよい。
【0024】
【0025】
なお、一般式(1)中、R1からR3はそれぞれ独立し、水素原子またはメチル基またはフェニル基またはアルコキシ基を示し、かつ少なくとも2つが炭素数8から18のアルコキシ基であり、R4、R5はそれぞれ独立し、ヒドロキシル基またはメチル基または水素原子を示し、R6からR8はそれぞれ独立し、メチル基または水素原子を示す。
【0026】
【0027】
なお、一般式(2)中、R1は炭素数8から18のアルコキシ基であり、R2からR5
はそれぞれ独立し、水素原子またはメチル基を示す。
【0028】
【0029】
なお、一般式(3)中、R1、R2は炭素数8から18のアルコキシ基、R3は炭素数1から4のアルコキシ基、R4はヒドロキシル基、R5からR8は水素原子を示す。
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、即ちUVA-A及びUVA-Bの配合量は特に限定されるものではなく、基材層1の厚さなどの諸条件により適宜設定されるが、通常はオレフィン樹脂100質量部に対して0.1質量部以上2質量部以下の範囲内である。ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤の配合量が0.1質量部に満たないと透明ポリオレフィン樹脂層に十分な耐候性を付与することができないことがある。また、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤の配合量が2質量部を超えると基材層1が粉や液体が析出し、シートの意匠性に問題が生じることがある。
【0035】
基材層1は、450nm以上800nm以下の波長範囲内における平均吸光度が1.0以上2.0以下の範囲内であると良い。450nm以上800nm以下の波長範囲内における平均吸光度が1.0未満の場合、シートが下地を隠すことができず透けてしまうことがある。450nm以上800nm以下の波長範囲内における吸光度が2.0を超える場合は、顔料濃度が高くなりすぎ耐候性が低下する。450nm以上800nm以下の波長範囲内における吸光度は1.0以上2.0以下が好ましく、1.4以上1.8以下が更に好ましい。
【0036】
基材層1の厚みCμmと無機顔料の含有量D質量%の積を100で除した値[C×D/100]が0.5以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましく、5.0以上であることが更に好ましい。また、上記[C×D/100]の値は、100.0以下であることが好ましく、60.0以下であることがより好ましく、40.0以下であることが更に好ましい。基材中の無機顔料濃度に関し、上記[C×D/100]の値が上記範囲内であれば、化粧シートが優れた耐候性を発現するのに好適である。
【0037】
(ポリオレフィン樹脂)
基材層1に用いるポリオレフィン樹脂は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテンなどの他に、αオレフィン(例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセンなどを)を単独重合あるいは2種類以上共重合させたものや、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・エチルメタクリレート共重合体、エチレン・ブチルメタクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体などのように、エチレンまたはαオレフィンとそれ以外のモノマーとを共重合させたものが挙げられる。
【0038】
基材層1中のコア層2に用いるポリオレフィン樹脂は、無機顔料の分散性を考慮し、柔軟性の高い、エチレンコンテンツを有するランダムポリプロピレン樹脂や、公知の非晶性ポリプロピレン樹脂をランダムポリプロピレン樹脂や結晶性の高いホモポリプロピレン樹脂に混合したものが好ましい。曲げ加工等の加工性をより重視する用途においては、高結晶性ホモポリプロピレンに対し、例えば、所定の範囲内でエチレンコンテンツを有するランダムポリプロピレン樹脂や公知の非晶性ポリプロピレン樹脂を混合することができる。
【0039】
また、スキン層3を設ける場合、スキン層3に用いるポリオレフィン樹脂は、柔軟性の高い、エチレンコンテンツを有するランダムポリプロピレン樹脂や、公知の非晶性ポリプロピレン樹脂をランダムポリプロピレン樹脂や結晶性の高いホモポリプロピレン樹脂に混合したものが好ましい。
また、着色ポリオレフィンフィルムからなる基材層1の厚さは、40μm以上200μm以下の範囲内であることが重要である。
【0040】
基材層1の厚さが40μm未満の場合、フィルム強度が不足してしまうため、印刷加工時の不具合や耐傷性の悪化を抑制することが困難であり、ラッピング加工時の表面平滑性を維持することも困難である。一方、基材層1の厚さが200μmを超える場合、曲げ加工において白化や割れといった不具合が生じてしまう可能性が高く、ラッピング加工時においては木質基板の端面や積層部分への追従性が著しく悪くなり、接着力が不十分となることで、経時での剥離といった不具合が生じてしまうことがある。
基材層1の厚さのより好適な範囲は、60μm以上150μm以下の範囲内である。この範囲であれば、印刷加工時の不具合、ラッピング加工時の表面平滑性、耐傷性、及び曲げ加工を十分な余裕を持って両立することができる。
【0041】
(無機顔料)
無機顔料は、隠蔽性を付与するための酸化チタンに代表される公知の無機顔料を用いることができる。着色用の無機顔料としては、例えば、鉄-亜鉛、クロム-アンチモン、鉄-アルミ等の複合酸化物、酸化鉄等が挙げられるが、これらは所望の色によって自由に配合を調整されるものである。また、無機顔料として、例えば、アルミフレークやパール顔料といった光輝材も添加することができる。また、例えば、カーボンブラックのような有機顔料を併用しても構わない。
更に、分散性の向上や、押出適性を改善するために脂肪酸金属塩等の添加剤を加えても構わない。
【0042】
<絵柄層4>
着色ポリオレフィンフィルム(基材層1)の表面には、化粧シート10に柄模様を付加するための絵柄層4を設けることができる。柄模様としては、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形等を用いることができる。
更に、基材層1と絵柄層4との間には、目的とする意匠の程度に応じて下地ベタインキ層(不図示)を設けるようにしてもよい。下地ベタインキ層は、基材層1の全面を被覆するようにして設けられる。また、下地ベタインキ層は、隠蔽性等、必要に応じて2層以上の多層としてもよい。更に、絵柄層2は、求められる意匠を表現するために必要な分版の数だけ積層して形成してもよい。このように、絵柄層2と下地ベタインキ層とは、求められる意匠、つまり、表現したい意匠に応じて様々な組み合わせとなるが、特に限定されるものではない。
【0043】
下地ベタインキ層及び絵柄層4の構成材料は、特に限定されるものではない。例えば、マトリックスと、染料、顔料等の着色剤とを溶剤中に溶解、分散してなる印刷インキやコーティング剤を用いることができる。マトリックスとしては、例えば、油性の硝化綿樹脂、2液型ウレタン樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニル系樹脂、アルキド樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂等の各種合成樹脂類、又はこれらの混合物、共重合体等を用いることができる。また、着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、黄鉛、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料や、アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料、又はこれらの混合物を用いることができる。また、溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、水等、もしくはこれらの混合物等を用いることができる。
【0044】
また、下地ベタインキ層及び絵柄層2には、各種機能を付与するために、例えば、体質顔料、可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着付与剤、接着助剤、乾燥剤、硬化剤、硬化促進剤及び硬化遅延剤等の機能性添加剤を添加してもよい。
ここで、下地ベタインキ層及び絵柄層2は、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等の各種印刷方法によって形成することができる。また、下地ベタインキ層は、基材層1の全面を被覆しているため、例えば、ロールコート法、ナイフコート法、マイクログラビアコート法、ダイコート法等の各種コーティング方法によっても形成することができる。これらの印刷方法、コーティング方法は、形成する層によって別々に選択してもよいが、同じ方法を選択して一括加工することが効率的である。
【0045】
<透明樹脂層5>
透明樹脂層5の主成分として用いる樹脂材料は、オレフィン系樹脂からなることが好適であり、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等の他に、αオレフィン(例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4、4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセン等)を単独重合あるいは2種類以上を共重合させたものや、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・エチルメタクリレート共重合体、エチレン・ブチルメタクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体等のように、エチレン又はαオレフィンとそれ以外のモノマーとを共重合させたものが挙げられる。また、化粧シート10の表面強度の向上を図る場合には、高結晶性のポリプロピレン樹脂を用いることが好ましい。
ここで、本明細書で主成分とは、特に特定が無い場合には、対象とする材料の90質量%以上を指す。
【0046】
透明樹脂層5を設ける場合、透明樹脂層5の層厚は50μm以上100μm以下の範囲内が好ましい。透明樹脂層5の層厚が50μm未満の場合、透明樹脂層5表面の耐傷性の向上の効果や耐候性向上の効果が低く、透明樹脂層5を設ける意義が少なくなってしまうことがある。透明樹脂層5の層厚が100μmを超える場合、曲げ加工時の白化や割れといった不具合が発生してしまうことがある。
もっとも、透明樹脂層5の上にトップコート層6を設ける場合には、透明樹脂層5の層厚は50μm未満としてもよい。
なお、透明樹脂層5を構成する樹脂組成物には、必要に応じて、例えば、熱安定剤、光安定化剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種機能性添加剤を含有させてもよい。これらの各種機能性添加剤は、周知のものから適宜選択して用いることができる。
【0047】
<トップコート層6>
更なる耐傷性の向上や艶の調整が必要な場合は、透明樹脂層3の表面にトップコート層4を設けることができる。
トップコート層6の主成分の樹脂材料としては、例えば、ポリウレタン系、アクリルシリコン系、フッ素系、エポキシ系、ビニル系、ポリエステル系、メラミン系、アミノアルキッド系、尿素系等の樹脂材料から適宜選択して用いることができる。樹脂材料の形態は、水性、エマルジョン、溶剤系など特に限定されるものではない。硬化法についても1液タイプ、2液タイプ、紫外線硬化法など適宜選択して行うことができる。
【0048】
トップコート層6の主成分として用いる樹脂材料としては、イソシアネートを用いたウレタン系のものが作業性、価格、樹脂自体の凝集力等の観点から好適である。イソシアネートには、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(HXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)等の誘導体であるアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体等の硬化剤より適宜選定して用いることができるが、耐候性を考慮すると、直鎖状の分子構造を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)もしくはイソホロンジイソシアネート(IPDI)をベースとする硬化剤が好適である。この他にも、表面硬度の向上を図る場合には、紫外線や電子線等の活性エネルギー線で硬化する樹脂を用いることが好ましい。なお、これらの樹脂は相互に組み合わせて用いることが可能であり、例えば、熱硬化型と光硬化型とのハイブリッド型とすることにより、表面硬度の向上、硬化収縮の抑制及び密着性の向上を図ることができる。
【0049】
トップコート層6には艶調整のために艶調整剤を添加することができる。艶調整剤は市販されている公知の物を用いればよい。例えば、シリカ、ガラス、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機材料からなる微粒子を用いてもよい。又は、アクリル等の有機材料からなる微粒子を用いることもできる。ただし、高い透明性が要求される場合には、透明性の高いシリカ、ガラス、アクリル等の微粒子を用いることが望ましい。特に、シリカやガラス等の微粒子のなかでも、中実の真球状粒子ではなく、微細な1次粒子が2次凝集してなる嵩密度の低い艶調整剤は添加量に対する艶消し効果が高い。それゆえ、このような艶調整剤を用いることで、艶調整剤の添加量を少なくすることができる。
【0050】
また、トップコート層4に各種機能を付与するために、抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤を添加してもよい。また、必要に応じて紫外線吸収剤、光安定化剤を添加してもよい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、シアノアクリレート系を用いることができる。また、光安定化剤としては、ヒンダードアミン系を用いることができる。
トップコート層4の層厚は3μm以上15μm以下の範囲内が好ましい。トップコート層4の層厚が3μm未満の場合、耐傷性の向上効果が低く、トップコート層4を設ける意義が少なくなってしまうことがある。トップコート層4の層厚が15μmを超える場合、曲げ加工時においてクラックや割れが生じてしまい、意匠上の問題や耐候性が悪化する問題が発生するおそれがある。
【0051】
<作用その他>
(1)本実施形態の化粧シート10は、無機顔料とポリオレフィン樹脂を含む基材層であって、前記基材層がトリアジン系紫外線吸収剤を含み、前記トリアジン系紫外線吸収剤が一般式(1)で表される構造を有する第1のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(UVA-A)及び一般式(2)で表される構造を有する第2のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(UVA-B)を含有し、それぞれの含有量が、前記第1のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(UVA-A)と前記第2のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(UVA-B)の質量比(UVA-A/UVA-B)において10/90~90/10の範囲内であり、450nm以上800nm以下の波長範囲内における平均吸光度が1.0以上2.0以下の範囲内である。
この構成によれば、前記トリアジン系紫外線吸収剤を添加することで、耐候性、隠蔽性、耐ブリードアウト性を備えた化粧シート10を提供することができる。
【0052】
(2)本実施形態の化粧シート10は、基材層1がヒンダードアミン系光安定剤を含むことが好ましい。
この構成によれば、耐候性を、更に向上させることができる。
(3)本実施形態の化粧シート10は、基材層1の厚みCμmと前記無機顔料の含有量D質量%の積を100で除した値[C×D/100]が0.1以上100以下の範囲内であることが好ましい。
この構成によれば、耐候性、隠蔽性、耐ブリードアウト性が更に向上した化粧シート10を提供することができる。
【0053】
(4)本実施形態の化粧シート10は、前記第1の紫外線吸収剤の含有量E質量%と前記第2の紫外線吸収剤の含有量F質量%の和が0.1以上1.5以下であることが好ましい。
この構成によれば、耐候性を、更に向上させることができる。
(5)本実施形態の化粧シート10は、基材層1の一方の面に絵柄層4を積層されていることが好ましい。
この構成によれば、化粧シート10の意匠性を向上させることができる。
(6)本実施形態の化粧シート10は、基材層1の一方の面側に、透明樹脂層3及びトップコート層4の少なくとも一方の層が積層し、化粧シート10の総厚が100μm以上250μm以下の範囲内であることが好ましい。
この構成によれば、ラッピング加工時においては木質基板の端面や積層部分への追従性が著しく悪くなって接着力が不十分となることに起因する、経時での剥離といった不具合を発生させることを抑制できる。
【実施例】
【0054】
以下に、本実施形態の化粧シート10の具体的な実施例について説明する。
【0055】
(実施例1)
着色シートである基材層1の原料として、エチレン成分を4%配合したメルトフローレート(MFR)が12g/10min(230℃)のランダムポリプロピレン樹脂30質量部に対し、ペンタッド分率が97.8%、メルトフローレート(MFR)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂35質量部と無機顔料として酸化チタン顔料35質量部配合し、更に光安定剤(チヌビンXT55;BASFジャパン(株)製)0.5質量部とヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤として下記式(4)に示す化合物(チノソーブS;BASFジャパン(株)製)0.25質量部、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤として下記式(5)に示す化合物(KEMISORB102;ケミプロ化成(株)製)0.25質量部を添加した樹脂、溶融押出機を用いて押出成形して100μmの着色ポリプロピレンフィルムからなる基材層1を製膜し、化粧シートとした。
【0056】
【0057】
【0058】
(実施例2)
上述の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂67.5質量部と無機顔料として酸化チタン顔料2.5質量部配合し、上述の基材層厚さを20μmとした、以外は実施例1と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して基材層1を製膜し、化粧シートとした。
(実施例3)
上述の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂30質量部と無機顔料として酸化チタン顔料40質量部配合し、上述の基材層厚さを250μmとした、以外は実施例1と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して基材層1を製膜し、化粧シートとした。
【0059】
(実施例4)
上述の紫外線吸収剤として上式(4)に示す化合物0.45質量部、上述の紫外線吸収剤として上式(5)に示す化合物0.05質量部を添加した、以外は実施例1と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して基材層1を製膜し、化粧シートとした。
(実施例5)
上述の紫外線吸収剤として上式(4)に示す化合物0.05質量部、上述の紫外線吸収剤として上式(5)に示す化合物0.45質量部を添加した、以外は実施例1と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して基材層1を製膜し、化粧シートとした。
【0060】
(実施例6)
上述の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂67.5質量部と無機顔料として酸化チタン顔料2.5質量部配合し、上述の基材層厚さを12μmとした、以外は実施例1と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して基材層1を製膜し、化粧シートとした。
(実施例7)
上述の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂20質量部と無機顔料として酸化チタン顔料50質量部配合し、上述の基材層厚さを12μmとした、以外は実施例1と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して基材層1を製膜し、化粧シートとした。
【0061】
(実施例8)
上述の紫外線吸収剤として上式(4)に示す化合物0.025質量部、上述の紫外線吸収剤として上式(5)に示す化合物0.025質量部を添加した、以外は実施例1と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して基材層1を製膜し、化粧シートとした。
(実施例9)
上述の紫外線吸収剤として上式(4)に示す化合物0.05質量部、上述の紫外線吸収剤として上式(5)に示す化合物0.05質量部を添加した、以外は実施例1と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して基材層1を製膜し、化粧シートとした。
【0062】
(実施例10)
上述の紫外線吸収剤として上式(4)に示す化合物0.5質量部、上述の紫外線吸収剤として上式(5)に示す化合物0.5質量部を添加した、以外は実施例1と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して基材層1を製膜し、化粧シートとした。
(実施例11)
上述の紫外線吸収剤として上式(4)に示す化合物0.75質量部、上述の紫外線吸収剤として上式(5)に示す化合物0.75質量部を添加した、以外は実施例1と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して基材層1を製膜し、化粧シートとした。
(実施例12)
上述の紫外線吸収剤として上式(4)に示す化合物1.0質量部、上述の紫外線吸収剤として上式(5)に示す化合物1.0質量部を添加した、以外は実施例1と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して基材層1を製膜し、化粧シートとした。
【0063】
(比較例1)
上述の紫外線吸収剤として上式(4)に示す化合物0.5質量部、上述の紫外線吸収剤として上式(5)に示す化合物を添加しないとした、以外は実施例1と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して基材層1を製膜し、化粧シートとした。
(比較例2)
上述の紫外線吸収剤として上式(4)に示す化合物を添加せず、上述の紫外線吸収剤として上式(5)に示す化合物0.5質量部を添加した、以外は実施例1と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して基材層1を製膜し、化粧シートとした。
【0064】
(比較例3)
上述の紫外線吸収剤をベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(Tinuvin326;BASF(株)社製)に置き換え0.5質量部添加した、以外は実施例1と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して基材層1を製膜し、化粧シートとした。
(比較例4)
上述の紫外線吸収剤を添加しない以外は実施例1と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して基材層1を製膜し、化粧シートとした。
【0065】
(比較例5)
上述の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂20質量部と無機顔料として酸化チタン顔料50質量部配合し、上述の基材層厚さを250μmとした、以外は実施例1と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して基材層1を製膜し、化粧シートとした。
(比較例6)
上述の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂68質量部と無機顔料として酸化チタン顔料2質量部配合し、上述の基材層厚さを10μmとした、以外は実施例1と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して基材層1を製膜し、化粧シートとした。
【0066】
(評価)
以上の実施例1~12、比較例1~4について、化粧シートとしての基材層1の耐候性、隠蔽性、耐ブリードアウト性について評価を行った。
【0067】
<耐候性>
化粧シートの耐候促進試験後の外観を目視観察し、絵柄の変色と保護フィルムの外観変化を以下の基準により評価した。なお、耐候促進試験はアイスーパーUVテスター(SUV-W161;岩崎電気(株))を用い、ブラックパネル温度63℃、照度65mW/cm2で、(UV照射20時間+結露4時間)を1サイクルとし30サイクル実施した。
【0068】
(基材外観変化)
○:外観の差異が認められない。
△:基材層にひび割れが認められる(程度小)。
×:基材層にひび割れが認められる(程度大)。
【0069】
<隠蔽性>
隠蔽性の評価においては、x-rite社の分光測色計(530JP/LP)を用い、BYK-GARDNER社製の隠蔽試験紙(byco-chart高明度2A)の白下地と黒下地で測定した色差で判断した。色差の値が小さいほど、隠蔽性が良好であると言え、隠蔽性が0.3未満の場合を「◎」、0.3以上0.5未満の場合を「〇」、0.5以上1.0未満の場合を「△」、1.0以上の場合を「×」とした。なお、「〇」以上の評価であれば、一般に用いられる基材全般について実用上問題ないが、「△」評価の場合は、一部基材には適さないものの、大多数の基材において実用上問題ない。「〇」以上の評価であることが好ましい。
【0070】
<耐ブリードアウト性>
耐ブリードアウト性については、高温恒温機(型番HT310、エスペック(株)製)を用い、60℃の環境下2000時間静置して試験し、評価を行った。
基材層表面に艶変化やべたつきが無い場合を「〇」、表面に艶変化が見える場合を「△」、表面がべたついている場合を「×」とした。
なお、「△」以上の評価であれば、実用上の問題はないが、「○」以上の評価であることが好ましい。
これらの評価結果を表1に示す。
【0071】
【0072】
表1から分かるように、実施例1、3~5、7~12の化粧シートでは、高い無機顔料配合量にも関わらず、高耐候性、耐ブリードアウト性の化粧シートであることが分かる。また、実施例2、6の化粧シートでは、薄膜かつ低い無機顔料配合にも関わらず、求められる性能に対し、十分な余裕を持って両立できていることが分かる。
一方、比較例1~4では、紫外線吸収剤の量や耐候剤の種類により、耐候性が悪くなることが確認された。また比較例5,6では、450nm~800nmの波長における平均吸光度がある範囲を満たさないと、求められる性能を満たさないことが分かった。
【0073】
以上から、実施例1~12の化粧シートは、高耐候性、高隠蔽性、耐ブリードアウト性の全てを備えた化粧シートであることが明らかとなった。
なお、本発明の化粧シートは、上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 基材層
2 着色層
3 スキン層
4 絵柄層
5 透明樹脂層
6 表面保護層
7 ドライラミネート用接着層
8 基板との接着層
10 化粧シート
B 基板