(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】携帯型心電装置及び心電計測システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/339 20210101AFI20240611BHJP
【FI】
A61B5/339
(21)【出願番号】P 2020048879
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 充
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-195690(JP,A)
【文献】特開2014-223184(JP,A)
【文献】特開2006-061494(JP,A)
【文献】特開2002-125948(JP,A)
【文献】特開2015-020050(JP,A)
【文献】特開2005-000468(JP,A)
【文献】特開2010-166961(JP,A)
【文献】特開2018-161324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/318-5/367
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種の誘導法を用いて心電波形を測定可能な携帯型心電装置であって、
被検者の身体の所定箇所に当接させて心電波形を測定する電極部と、
前記心電波形の測定時における誘導法に応じて、前記電極部によって測定された前記心電波形を解析する解析部と、
前記電極部において測定された前記心電波形と、前記誘導法と、前記解析部によって前記心電波形が解析された解析結果と、が関連付けて保存される記憶部と、
前記解析結果または測定された前記心電波形の状態が所定の条件を満たす場合に、前記心電波形の測定時における誘導法とは異なる所定の誘導法による再測定を使用者に促す再測定促進部と、
を備えることを特徴とする携帯型心電装置。
【請求項2】
前記再測定促進部は、
前記再測定
の時に設定されるべき前記誘導法を表示する表示手段を有することを特徴とする、請求項1に記載の携帯型心電装置。
【請求項3】
前記表示手段には、さらに前記所定の条件が満たされたことが表示されることを特徴とする、請求項2に記載の携帯型心電装置。
【請求項4】
前記心電波形を前記複数種の誘導法のうちいずれの誘導法によって測定するかを設定する設定部をさらに備え、
前記測定時及び前記再測定
の時には、使用者が前記設定部によって前記誘導法を設定することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の携帯型心電装置。
【請求項5】
前記測定時における誘導法は、12誘導法におけるI誘導であり、
前記所定の条件は、前記解析結果において不整脈が認められた場合であり、
前記所定の誘導法は、12誘導法におけるV4誘導であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の携帯型心電装置。
【請求項6】
前記測定時における誘導法は、12誘導法におけるI誘導であり、
前記所定の条件は、前記解析結果において心房細動が認められた場合であり、
前記所定の誘導法は、12誘導法におけるV1誘導であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の携帯型心電装置。
【請求項7】
前記測定時における誘導法は、12誘導法におけるI誘導であり、
前記所定の条件は、前記解析結果において波形品質の不良が認められた場合であり、
前記所定の誘導法は、12誘導法におけるV1誘導またはV4誘導であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の携帯型心電装置。
【請求項8】
被検者の身体の所定箇所に当接させて心電波形を測定する電極部が設けられた携帯型心電装置と、前記携帯型心電装置と通信可能に設けられた携帯通信端末と、を備え、複数種の誘導法を用いて心電波形を測定可能な心電計測システムであって、
前記心電波形の測定時における誘導法に応じて、前記電極部によって測定された前記心電波形を解析する解析部と、
前記電極部において測定された前記心電波形と、前記誘導法と、前記解析部によって前記心電波形が解析された解析結果と、が関連付けて保存される記憶部と、
前記解析結果または測定された前記心電波形の状態が所定の条件を満たす場合に、前記心電波形の測定時における誘導法とは異なる所定の誘導法による再測定を使用者に促す再測定促進部と、
をさらに備えることを特徴とする心電計測システム。
【請求項9】
前記再測定促進部は、
前記携帯型心電装置と、前記携帯通信端末のいずれかに設けられ、
前記再測定
の時に設定されるべき前記誘導法を表示する表示手段を有することを特徴とする、請求項8に記載の心電計測システム。
【請求項10】
前記表示手段には、さらに前記所定の条件が満たされたことが表示されることを特徴とする、請求項9に記載の心電計測システム。
【請求項11】
前記心電波形を前記複数種の誘導法のうちいずれの誘導法によって測定するかを設定する設定部をさらに備え、
前記測定時及び前記再測定
の時には、使用者が前記設定部によって前記誘導法を設定することを特徴とする、請求項8から10のいずれか一項に記載の心電計測システム。
【請求項12】
前記測定時における誘導法は、12誘導法におけるI誘導であり、
前記所定の条件は、前記解析結果において不整脈が認められた場合であり、
前記所定の誘導法は、12誘導法におけるV4誘導であることを特徴とする、請求項8から11のいずれか一項に記載の心電計測システム。
【請求項13】
前記測定時における誘導法は、12誘導法におけるI誘導であり、
前記所定の条件は、前記解析結果において心房細動が認められた場合であり、
前記所定の誘導法は、12誘導法におけるV1誘導であることを特徴とする、請求項8から11のいずれか一項に記載の心電計測システム。
【請求項14】
前記測定時における誘導法は、12誘導法におけるI誘導であり、
前記所定の条件は、前記解析結果において波形品質の不良が認められた場合であり、
前記所定の誘導法は、12誘導法におけるV1誘導またはV4誘導であることを特徴とする、請求項8から11のいずれか一項に記載の心電計測システム。
【請求項15】
請求項9の心電計測システムにおける前記表示手段は前記携帯通信端末に設けられ、
前記表示手段が前記再測定
の時に設定されるべき前記誘導法を表示するように、
前記携帯型心電装置の制御部が前記携帯通信端末を制御する、プログラム。
【請求項16】
請求項10の心電計測システムにおける前記表示手段は前記携帯通信端末に設けられ、
前記表示手段が前記所定の条件が満たされたことを表示するように、
前記携帯型心電装置の制御部が前記携帯通信端末を制御する、プログラム。
【請求項17】
請求項11の心電計測システムにおける前記設定部は前記携帯通信端末に設けられ、
前記測定時及び前記再測定
の時に、使用者が前記設定部によって前記誘導法を設定可能となるように、
前記携帯型心電装置の制御部が前記携帯通信端末を制御する、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日常生活等における心電波形測定が可能な携帯型の心電装置及びこれを含む心電計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
日常生活における胸部の痛みや動悸などの異常発生時に、すぐに心電波形を測定可能な携帯型の心電測定装置(以下、「携帯型心電装置」ともいう)が提案されている。医師等においては、家庭や外出先等で動悸等の症状が起きた際に当該心電装置によって測定された心電波形のデータ等に基づいて、心疾患の早期発見や適切な治療行為を施すことが可能になる。
【0003】
従来、このような携帯型心電装置において、心電波形を記録する方法(誘導法、誘導種別)については、国際的に取り決めがあり、複数種の誘導法を用いる誘導法が広く用いられている。この国際的な取り決めに基づく誘導法には、6種の四肢誘導と6種の胸部誘導が含まれており、適切な誘導法を用いて心電波形を検出・記録することになる。
【0004】
その中で、正電極を含む接触部を被検者の左手に押し当てるI誘導と呼ばれる誘導法と
、正電極を含む接触部を被検者の左胸部に押し当てるV4誘導と呼ばれる誘導法に関して、心電波形などの測定結果を表示部に見易く表示する技術が公知となっている(例えば、特許文献1を参照)。この技術においては、より詳細には、I誘導で測定する際には表示
部に横方向に測定結果を表示し、V4誘導で測定する際には表示部に縦方向に測定結果を表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の従来技術では、心電波形の測定時において、心電波形の状態に応じた最適な誘導法が用いられているとは限らず、心電波形の品質や解析結果の精度が低下する場合があった。
【0007】
上記のような課題に鑑み、本発明は、心電波形を測定する際に、心電波形の状態に応じた最適な誘導法を用いて測定することを可能とし、心電測定の精度を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための本発明は、複数種の誘導法を用いて心電波形を測定可能な携帯型心電装置であって、
被検者の身体の所定箇所に当接させて心電波形を測定する電極部と、
前記心電波形の測定時における誘導法に応じて、前記電極部によって測定された前記心電波形を解析する解析部と、
前記電極部において測定された前記心電波形と、前記誘導法と、前記解析部によって前記心電波形が解析された解析結果と、が関連付けて保存される記憶部と、
前記解析結果または測定された前記心電波形の状態が所定の条件を満たす場合に、前記心電波形の測定時における誘導法とは異なる所定の誘導法による再測定を使用者に促す再
測定促進部と、
を備える、携帯型心電装置である。
【0009】
ここで、特定の誘導法によって心電波形を測定した場合に、必ずしも解析結果や心電波形の状態に対して最適な誘導法によって、測定が行われていない場合がある。このように、最適な誘導法によって測定が行われていない場合には、解析結果の精度も低下する。これに対し、本発明においては、解析結果や心電波形の状態が所定の条件を満たした場合には、再測定促進部が、誘導法を最適なものに変えた上での再測定を促すことにした。これによれば、当所測定時に用いられた誘導法が最適でない場合にも、誘導法を最適化した上で、再測定を行うことが可能となる。その結果、解析結果の精度を向上させることが可能となる。
ここで、使用者は、携帯型心電装置を操作する者をいう。
【0010】
また、本発明においては、前記再測定促進部は、前記再測定時に設定されるべき前記誘導法を表示する表示手段を有するようにしてもよい。この場合には、例えば、複数種の誘導法に関連づけられた発光部が装置本体に設けられており、再測定時に設定されるべき誘導法に関連付けられた発光部を発光させるようにしてもよい。あるいは、文字を表示可能な表示手段において直接、再測定時に設定されるべき誘導法を表示してもよい。これによれば、使用者がより容易に、再測定時に設定されるべき誘導法を認識することが可能である。
【0011】
また、本発明においては、前記表示手段には、さらに前記所定の条件が満たされたことが表示されるようにしてもよい。これによれば、使用者がより容易に、再測定時に設定されるべき誘導法が選択された理由を認識することが可能である。
【0012】
また、本発明においては、前記心電波形を前記複数種の誘導法のうちいずれの誘導法によって測定するかを設定する設定部をさらに備え、
前記測定時及び前記再測定時には、使用者が前記設定部によって前記誘導法を設定するようにしてもよい。これによれば、使用者が自らの意志により、測定時または再測定時に用いる誘導法を選択することが可能となる。
【0013】
また、本発明においては、前記測定時における誘導法は、12誘導法におけるI誘導で
あり、
前記所定の条件は、前記解析結果において不整脈が認められた場合であり、
前記所定の誘導法は、12誘導法におけるV4誘導であることとしてもよい。
【0014】
ここで、12誘導法におけるI誘導によっては、不整脈を特徴づける波形を検知しづら
く、V4誘導によって測定することでより精度よく不整脈の解析を行うことができることが分かっている。すなわち、I誘導による心電波形は、R波形の間隔に基づく不整脈検出
が比較的容易だが、R波形以外の波形形状に基づく不整脈は検出しづらい。一方、I誘導
以外の誘導法(例えば、V4誘導)による心電波形を用いれば、波形リズム以外の不整脈の検出をより精度よく行うことができる。よって、本発明においては、測定時にI誘導を
用いて心電波形を測定し、解析結果において不整脈が認められた場合に、再測定促進部は、V4誘導を用いて再測定を促進することとした。これによれば、より精度よく、不整脈の診断を行うことが可能となる。
【0015】
また、本発明においては、前記測定時における誘導法は、12誘導法におけるI誘導で
あり、
前記所定の条件は、前記解析結果において心房細動が認められた場合であり、
前記所定の誘導法は、12誘導法におけるV1誘導であることとしてもよい。
【0016】
ここで、12誘導法におけるI誘導によっては、心房細動を特徴づける波形を検知しづ
らく、V1誘導によって測定することでより精度よく心房細動の解析を行うことができることが分かっている。すなわち、心房細動の特徴にはRR間隔不規則、P波消失、F波形出現があるが、RR間隔不規則以外の特徴はI誘導による心電波形では捉えにくく、V1
誘導による心電波形では捉えやすい。よって、本発明においては、測定時にI誘導を用い
て心電波形を測定し、解析結果において心房細動が認められた場合に、再測定促進部は、V1誘導を用いて再測定を促進することとした。これによれば、より精度よく、心房細動の診断を行うことが可能となる。
【0017】
また、本発明においては、前記測定時における誘導法は、12誘導法におけるI誘導で
あり、
前記所定の条件は、前記解析結果において波形品質の不良が認められた場合であり、
前記所定の誘導法は、12誘導法におけるV1誘導またはV4誘導であることとしてもよい。
【0018】
ここで、12誘導法におけるI誘導によっては、心電波形の波形品質の不良を検知しづ
らく、V1誘導またはV4誘導によって測定することでより精度よく心電波形の波形品質の不良の解析を行うことができることが分かっている。よって、本発明においては、測定時にI誘導を用いて心電波形を測定し、解析結果において波形品質の不良が認められた場
合に、再測定促進部は、V1誘導またはV4誘導を用いて再測定を促進することとした。これによれば、より精度よく、心電波形の波形品質の不良を検出することが可能となる。
【0019】
また、本発明は、被検者の身体の所定箇所に当接させて心電波形を検出する電極部が設けられた携帯型心電装置と、前記携帯型心電装置と通信可能に設けられた携帯通信端末と、を備え、複数種の誘導法を用いて心電波形を測定可能な心電計測システムであって、
前記心電波形の測定時における誘導法に応じて、前記電極部によって測定された前記心電波形を解析する解析部と、
前記電極部において測定された前記心電波形と、前記誘導法と、前記解析部によって前記心電波形が解析された解析結果と、が関連付けて保存される記憶部と、
前記解析結果または測定された前記心電波形の状態が所定の条件を満たす場合に、前記心電波形の測定時における誘導法とは異なる所定の誘導法による再測定を使用者に促す再測定促進部と、
をさらに備える、心電計測システムであってもよい。
ここで、使用者は、心電計測システムを操作する者をいう。
【0020】
また、本発明は、前記再測定促進部は、
前記携帯型心電装置と、前記携帯通信端末のいずれかに設けられ、
前記再測定時に設定されるべき前記誘導法を表示する表示手段を有することを特徴とする、上記の心電計測システムであってもよい。
これによれば、使用者は、再測定時に用いられるべき誘導法について表示手段を用いて認識することが可能である。また、表示手段が携帯通信端末に設けられている場合には、携帯通信端末の高性能なディスプレイを用いて、再測定時に用いられるべき誘導法について表示することが可能となる。
【0021】
また、本発明は、前記表示手段には、さらに前記所定の条件が満たされたことが表示されることを特徴とする、上記の心電計測システムであってもよい。
これによれば、使用者は、所定の条件について表示手段を用いて認識することが可能である。また、表示手段が携帯通信端末に設けられている場合には、携帯通信端末の高性能なディスプレイを用いて、所定の条件について表示することが可能となる。
【0022】
また、本発明は、前記心電波形を前記複数種の誘導法のうちいずれの誘導法によって測定するかを設定する設定部をさらに備え、
前記測定時及び前記再測定時には、使用者が前記設定部によって前記誘導法を設定することを特徴とする、上記の心電計測システムであってもよい。
そうすれば、測定時及び再測定時に用いる誘導法を設定することが可能となる。また、設定部が携帯通信端末に備えられている場合には、携帯通信端末を用いて遠隔的に、測定
時及び再測定時に用いる誘導法を設定することが可能となる。
【0023】
また、本発明は、前記測定時における誘導法は、12誘導法におけるI誘導であり、
前記所定の条件は、前記解析結果において不整脈が認められた場合であり、
前記所定の誘導法は、12誘導法におけるV4誘導であることを特徴とする、上記の心電計測システムであってもよい。
【0024】
また、本発明は、前記測定時における誘導法は、12誘導法におけるI誘導であり、
前記所定の条件は、前記解析結果において心房細動が認められた場合であり、
前記所定の誘導法は、12誘導法におけるV1誘導であることを特徴とする、上記の心電計測システムであってもよい。
【0025】
また、本発明は、前記測定時における誘導法は、12誘導法におけるI誘導であり、
前記所定の条件は、前記解析結果において波形品質の不良が認められた場合であり、
前記所定の誘導法は、12誘導法におけるV1誘導またはV4誘導であることを特徴とする、上記の心電計測システムであってもよい。
【0026】
また、上記の心電計測システムにおける前記表示手段が前記携帯通信端末に設けられた場合に、本発明は、前記表示手段が前記再測定時に設定されるべき前記誘導法を表示するように、前記携帯通信端末を制御する、プログラムであってもよい。
【0027】
また、上記の心電計測システムにおける前記表示手段が前記携帯通信端末に設けられた場合に、本発明は、前記表示手段が前記所定の条件が満たされたことを表示するように、前記携帯通信端末を制御する、プログラムであってもよい。
【0028】
また、上記の心電計測システムにおける前記設定部が前記携帯通信端末に設けられた場合には、本発明は、前記測定時及び前記再測定時に、使用者が前記設定部によって前記誘導法を設定可能となるように、前記携帯通信端末を制御する、プログラムであってもよい。
【0029】
なお、本発明においては、上記の課題を解決するための手段は、可能な限り組み合わせて使用することが可能である。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、心電波形を測定する際に、心電波形の状態に応じた最適な誘導法を用いて測定することを可能とし、心電測定の精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1(A)~(F)は、本実施形態に係る携帯型心電装置の外観を示す図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の携帯型心電装置の機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、本実施形態のスマートフォンの機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、本実施形態の携帯型心電装置の基本的な心電測定処理の手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、心電波形と特定するパラメータを説明する図である。
【
図6】
図6(A)~(L)は、誘導種別ごとの心電波形を例示する図である。
【
図7】
図7は、本実施形態の
携帯型心電装置において、異なる誘導法を追加する心電測定処理の手順を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、本実施形態の携帯型心電装置とスマートフォンとが連携した基本的な心電測定処理の手順を示すフローチャートの一部である。
【
図9】
図9は、本実施形態の携帯型心電装置とスマートフォンとが連携した基本的な心電測定処理の手順を示すフローチャートの一部である。
【
図10】
図10(A)及び(B)は、本実施形態のスマートフォンの表示例を示す図である。
【
図11】
図11は、本実施形態の携帯型心電装置とスマートフォンとが連携して、異なる誘導法を追加する心電測定処理の手順を示すフローチャートの一部である。
【
図12】
図12は、本実施形態の携帯型心電装置とスマートフォンとが連携して、異なる誘導法を追加する心電測定処理の手順を示すフローチャートの一部である。
【
図13】
図13(A)及び(B)は、本実施形態のスマートフォンの他の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。
<実施形態1>
以下に、本発明の実施形態の一例について説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0033】
(携帯型心電装置の構成)
図1(A)~(F)は本実施形態に係る携帯型心電装置100の構成の一例を示す図である。
図1(A)は、携帯型心電装置100を前面から見た図である。
図1(B)は、携帯型心電装置100を下方から見た図である。
図1(C)は、携帯型心電装置100を上方から見た図である。
図1(D)は、携帯型心電装置100の前面から見た左側面を示す図である。
図1(E)は、携帯型心電装置100の前面から見た右側面を示す図である。
図1(F)は、携帯型心電装置100を背面から見た図である。上下方向は、
図1(A)に示す姿勢の携帯型心電装置100に対して、紙面上での上下方向を意味する。
【0034】
図1(A)~(F)に示すように、携帯型心電装置100の本体1は、角を丸めた略四角柱形状であって前面及び背面間が扁平に形成されている。携帯型心電装置100の底部には、第1電極2が設けられている。携帯型心電装置100の上部には、前面から見て左側に第2電極3、同右側に第3電極4が設けられている。携帯型心電装置100の上部は、被検者の右手人差し指が当接しやすいように滑らかに湾曲する形状となっている。
【0035】
携帯型心電装置100の本体1の前面には、測定通知LED5と異常波形検出LED6が上下に並んで配置されている。測定通知LED5は、心電波形の計測時に点灯あるいは明滅する発光素子である。異常波形検出LED6は、計測された心電波形に関し、異常波形が検出された際に点灯する発光素子である。異常波形検出LED6の点灯を通じて、心電波形の測定データから検出された異常波形の有無が被検者に通知される。
【0036】
携帯型心電装置100の本体1の、前面から見て左側面には、電源スイッチ7、電源LED8、BLE通信ボタン9、通信LED10、メモリ残表示LED11、電池交換LED12が上下に並んで配置されている。電源スイッチ7は、携帯型心電装置100の電源を投入するための押下スイッチであり、電源LED8は電源投入時に点灯する発光素子で
ある。BLE通信ボタン9は、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)方式に準拠した機器との通信を機能させるための操作部品であり、通信LED10は、通信時に点灯する発光素子である。なお、携帯型心電装置100の備える通信機能は、BLE方式に限られず、赤外線通信、超音波による情報伝送などの無線通信方法、ケーブル又はコネクタ等を介して接続される有線通信方式であってもよい。メモリ残表示LED11は、後述するメモリ部の空き容量の状態を示す発光素子である。電池交換LED12は、携帯型心電装置100の備える電源(バッテリ)の電力が所定値を下回ったときに点灯し、電池交換を促す発光素子である。
【0037】
携帯型心電装置100の本体1の前面から見て右側面には、誘導種別設定入力部13と、誘導種別表示LED14が配置されている。誘導種別表示LED14は、複数種の誘導法のうちいずれの誘導法によって心電波形を検出するかを表示する。誘導種別表示LED14は、I誘導の表示LED14a、II誘導の表示LED14b、III誘導の表示LED14c、V1誘導の表示LED14d、V2誘導の表示LED14e、V3誘導の表示LED14f、V4誘導の表示LED14g、V5誘導の表示LED14h、V6誘導の表示LED14iから構成される。本体1の右側面には、表示LED14a~14iの近傍に、各誘導法を示す表示が設けられている。誘導種別設定入力部13は、押下によって誘導種別が切り替わるボタンである。例えば、携帯型心電装置100の電源投入時には、初期設定としてI誘導が設定されており、I誘導の表示LED14aが点灯しているが、誘導
種別設定入力部13のボタンを選択して押下することにより、II誘導が設定され、II誘導の表示LED14bが点灯する。同様に、誘導種別設定入力部13のボタンを押下するごとに、III誘導、V1誘導、V2誘導、V3誘導、V4誘導、V5誘導、V6誘導と設定
される誘導種別が順次切り替わり、対応する誘導種別表示LED14c~14iが順次点灯する。そして、誘導種別表示LED14及び誘導種別設定入力部13が、本発明の設定部に対応する。
誘導種別表示LEDは、上述のように誘導種別ごとにLEDを設ける場合に限られず、誘導種別ごとに異なる色で発光する一つのLEDを設け、LEDの発光色によって誘導種別を区別するようにしてもよい。
【0038】
また、携帯型心電装置100の本体1の背面には、着脱可能な電池カバー15が設けら
れている。
【0039】
ここで、心電測定において、例えば、I誘導測定が行われる場合には、携帯型心電装置
100を右手で把持しつつ、本体1の底部に設けられた第1電極2を左手掌に接触させる。携帯型心電装置100を把持する際には、右手の人差し指の先端部を第2電極3に接触させ、右手の人差し指の中節を第3電極4に接触させる。被検者は、例えば、第2電極3、第3電極4が設けられた本体1の上部側から、底部に設けられた第1電極2を左手掌方向の押し当てる方向に押圧しながら心電測定を行う。ここでは、右手の人差し指の先端部及び中節並びに左手掌が、本発明の、被検者の身体の所定箇所に対応する。
【0040】
心電測定において、II誘導測定が行われる場合には、携帯型心電装置100を右手で把持しつつ、本体1の底部に設けられた第1電極2を左大腿部(又は左足首)に接触させる。携帯型心電装置100を把持する際には、右手の人差し指の先端部を第2電極3に接触させ、右手の人差し指の中節を第3電極4に接触させる。ここでは、右手の人差し指の先端部及び中節並びに左大腿部(又は左足首)が、本発明の、被検者の身体の所定箇所に対応する。
【0041】
また、心電測定において、III誘導測定が行われる場合には、携帯型心電装置100を
左手で把持しつつ、本体1の底部に設けられた第1電極2を左大腿部(又は左足首)に接触させる。携帯型心電装置100を左手で把持する際には、左手の人差し指の先端部を第3電極4に接触させ、左手の人差し指の中節を第2電極3に接触させる。被検者は、例えば、第2電極3、第3電極4が設けられた本体の上部側から、底部に設けられた第1電極2を左大腿部(又は左足首)方向の押し当てる方向に押圧しながら心電測定を行う。ここでは、左手の人差し指の先端部及び中節並びに左大腿部(又は左足首)が、本発明の被検者身体の所定箇所に対応する。
【0042】
また、心電測定においてV4誘導測定が行われる場合では、被検者は、例えば、携帯型心電装置100を右手で把持しつつ、本体1の底部に設けられた第1電極2を、左胸部の心窩部やや左方・乳頭下方の皮膚に接触させる。携帯型心電装置100を把持する際には、右手の人差し指を第2電極3に接触させ、右手人差し指の中節を第3電極4に接触させる。そして、第2電極3、第3電極4が設けられた本体1の上部側から、底部に設けられた第1電極2を、測定部位方向に押し当てる方向に押圧しながら心電測定が行われる。ここでは、右手の人差し指の先端部及び中節並びに左胸部の心窩部やや左方・乳頭下方の皮膚が、本発明の被検者身体の所定箇所に対応する。
【0043】
(携帯型心電装置の構成)
次に、携帯型心電装置100の構成を説明する。
図2は、本実施形態に係る携帯型心電装置100の構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0044】
図2に示すように、携帯型心電装置100は、電極部101と、アンプ部102と、AD(Analog to Digital)変換部103と、制御部104と、タイマ部105を含んで構
成される。また、携帯型心電装置100の構成には、メモリ部106と、表示部107と、操作部108と、電源部109と、通信部110が含まれる。制御部104と、タイマ部105と、メモリ部106と、表示部107と、操作部108と、電源部109と、通信部110とは相互に接続されている。
【0045】
電極部101は、一対の測定電極として機能する第1電極2及び第3電極4と、GND電極として機能する第2電極3を備える。被検者の皮膚に接触された電極部101を通じて、所定期間内における心電波形が検出される。電極部101の各電極で検出された心電波形は、それぞれ、当該電極部に接続されるアンプ部102に入力される。アンプ部102では、電極部101で検出された信号が増幅されてAD変換部103に出力される。AD変換部103では、アンプ部102を通じて増幅された心電波形の検出信号がデジタル変換されて制御部104に出力される。
【0046】
制御部104は、携帯型心電装置100の制御を司るCPU等のプロセッサであり、メモリ部106に記憶されたプログラムを実行することにより、誘導種別の設定、誘導法に応じた心電波形の測定及び解析等の各種処理が実行される。ここでは、誘導法に応じた心電波形の解析処理を実行する制御部104が、本発明の解析部に対応する。
【0047】
タイマ部105は、制御部104からの指示を受け付け、心電波形の測定に係る各種時間又は期間をカウントする手段である。
【0048】
メモリ部106は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)などの主記憶装置の他、例えばフラッシュメモリなどの長期記憶媒体を含んで構成される。メモリ部106には、心電波形の測定及び解析に係る各種プログラム、異常波形等を検出するための各種の情報が記憶される。ここでは、メモリ部106が、本発明の記憶部に対応する。
【0049】
表示部107は、心電波形の測定に係る各種の情報を表示する手段である。表示部107には、測定通知LED5、異常波形検出LED6、電源LED8、通信LED10、メモリ残表示LED11、電池交換LED12、誘導種別表示LED14が含まれる。表示部107は、液晶ディスプレイ等の画像・映像により各種の情報を表示する手段を含んでもよい。
【0050】
操作部108は、被検者又は使用者からの操作入力を受け付ける手段である。操作部108には、電源スイッチ7、BLE通信ボタン9、誘導種別設定入力部13が含まれる。電源部109は、携帯型心電装置100を機能させるための電力を供給する手段であり、バッテリや2次電池等が含まれる。通信部110は、スマートフォン200といった機器との間で信号の送受信を司る通信インターフェィスである。通信部110の提供する通信機能としてBLE通信が例示できるが、他の公知の無線通信方式、有線通信方式が採用できる。
【0051】
(スマートフォン)
図3は、スマートフォン200の構成を示すブロック図である。後述するように、スマートフォン200は、携帯型心電装置100と連携して心電計測システムを構成する。
スマートフォン200は、制御部201と、タッチパネルディスプレイ202、スピーカ等の音声出力部203、メモリ部204、マイク等の音声入力部205、ボタン等の操作部206、電源部207、携帯型心電装置100との間でBLE通信等の方式による信号の送受信を司る通信インターフェースである通信部208を備える。制御部201において、メモリ部204に記憶されたプログラムを実行することにより、誘導種別の設定、心電波形及び解析結果の表示、保存等の各種処理が実行される。携帯型心電装置100と通信可能に設けられた携帯通信端末の一例であるスマートフォン200としては公知の構成を採用することができるので、詳述しない。ここでは、スマートフォン200のメモリ部204が、本発明の記憶部に対応する。
【0052】
(基本的な心電測定処理)
図4は、携帯型心電装置100を用いた心電波形測定処理のうち基本的な心電波形測定処理の手順を示すフローチャートである。
まず、携帯型心電装置100の電源スイッチ7を押下することにより電源をONする(ステップS1)。このとき、電源LED8が点灯し、電源がONになっていることを表示する。
【0053】
次に、被検者又は使用者が、誘導種別設定入力部13により、測定を行う誘導種別を入力する(ステップS2)。例えば、被検者がV4誘導による心電波形の測定を行うとすると、初期設定でI誘導の表示LED14aが点灯している状態から、誘導種別設定入力部
13のボタンを6回押下すると、誘導種別がII、IIIと順次切り替わって、V4誘導の表
示LED14gが点灯して、V4誘導による心電測定が設定されていることを表示する(ステップS2-1)。
【0054】
V4誘導では、第2電極3に右手の人差し指の先端部を接触させ、第3電極4に右手人差し指の中節を接触させる。そして、第1電極2を、左胸部の心窩部やや左方・乳頭下方の皮膚に接触させる。各電極2、3、4を介して取得された電気信号をアンプ部102で増幅し、AD変換部103でデジタル変換し、接触状態検出信号を生成する。このようにして生成された接触状態検出信号を制御部104に送信し、被検者と各電極2、3、4との接触状態を検出する(ステップS3)。
【0055】
制御部104は、電極接触状態が維持されて所定時間が経過したか否かを判断する(ステップS4)。
ステップS4において、Noと判断された場合には、ステップS4を繰り返す。
ステップS4において、Yesと判断された場合には、制御部104は誘導種別を判定
する(ステップS5)。
【0056】
ステップS2において、V4誘導が設定されている場合には、制御部104は、ステップS5において、誘導種別がV4誘導であると判定し、ステップS17に進み、V4誘導による心電波形の測定を開始する。
【0057】
制御部104は、タイマ部105で、測定開始からの時間をカウントし、所定の測定時間を経過したか否かを判断する(ステップS18)。
ステップS18でNoの場合には、ステップS17に戻り、心電波形の測定を継続する。
ステップS18でYesの場合には、制御部104はV4誘導による心電波形の解析を行う(ステップS19)。心電波形の解析が終了すると、測定通知LED5を点灯し、測定終了が被検者に通知される。
誘導法により、心電波形を特定するパラメータの特徴が異なるため、取得したい情報に適した心電波形データが得られる誘導法を設定することが望ましい。また、心電波形データの解析において誘導法に応じた心電波形解析を行うことにより、最適な心電波形解析が可能となる。
【0058】
図5に代表的な心電波形パラメータを示す。P波について、P波高さ及びP波幅、Q波について、Q波高さ、P波及びQ波について、PQ時間、R波について、R波高さ、S波について、S波高さ、Q波、R波及びS波について、QRS幅、T波について、T波高さ及びT波幅、Q波及びT波について、QT時間、U波について、U波高さ及びU波幅がそれぞれ定義されている。これらの心電図各部の一つ又は複数の数値若しくは一つ又は複数の数値に基づいて算出される値を心電図の波形を特定するパラメータとして用いることができる。
【0059】
図6は、代表的な誘導種別の心電波形を示す。
図6(A)は、I誘導、
図6(B)はII
誘導、
図6(C)はIII誘導、
図6(D)はV1誘導、
図6(E)はV2誘導、
図6(F
)はV3誘導、
図6(G)はV4誘導、
図6(H)はV5誘導、
図6(I)はV6誘導、
図6(J)はaVR誘導、
図6(K)はaVL誘導、
図6(L)はaVF誘導により測定された心電波形である。
【0060】
図6(A)に示すように、I誘導による心電波形はピーク値が高いR波形の間隔で不規
則脈波であるか否かの大まかな判定は可能である。しかし、I誘導による心電波形は波高
値が小さく、P波やF波(不規則な基線の
動揺)はノイズに埋もれやすい。そこで、
図5にしめすような代表的な心電波形パラメータを測定するには、V4誘導のようにPQRSTの形状が大きい誘導法による心電波形データを収集することにより最適な心電測定が可能となる。
また、誘導法に応じた心電波形解析の例としては、V4誘導はSTの変化を捉えやすいので、ST昇降の判定も行うが、V4誘導以外の誘導法では、STの変化が捉えにくいので、ST昇降の判定はせずに、その他の判定を行うようにしてもよいが、これに限られない。
【0061】
心電波形の解析が終了すると、制御部104は、V4誘導による心電波形と解析結果を関連付けてメモリ部106の所定領域に保存する(ステップS20)。
そして、制御部104は、心電波形を解析した結果を表示する(ステップS21)。具体的には、心電波形を解析した結果、異常波形を検出した場合には、異常波形検出LED6を点灯させ、被検者に異常波形が検出されたことを通知する。
心電波形の解析結果が表示されて、心電測定処理が終了すると、被検者又は使用者が電源スイッチ7を再度押下することにより、電源がOFFされる。心電波形の解析結果表示
から、電源スイッチ7が操作されることなく所定時間が経過した場合に、電源がOFFになるようにしてもよい。
【0062】
上述の例では、ステップS2において、誘導種別としてV4誘導が設定された場合について説明したが、ステップS2において、誘導種別としてI誘導が設定された場合にも、
制御部104は同様の手順で処理を実行する。すなわち、I誘導による心電波形を測定し
(ステップS6)、所定の測定時間の経過を待って(ステップS7)、I誘導の心電波形
解析を行い(ステップS8)、I誘導による心電波形と解析結果をメモリ部106の所定
領域に保存する(ステップS9)。そして、心電波形に異常が検出された場合には、異常波形検出LED6を点灯させて解析結果を表示して(ステップS10)、心電測定処理を終了し、電源スイッチ7の押下により電源がOFFされる(ステップS11)。
【0063】
図4では、ステップS2において、I誘導及びV4誘導以外に、V1誘導が設定された
場合の処理(ステップS12~ステップS16)、V6誘導が設定された場合の処理(ステップS22~ステップS26)についても記載しているが、I誘導及びV4誘導につい
て説明した処理と同様であるので説明は省略する。
図4では、記載を省略している他の誘導種別、すなわちV2誘導、V3誘導、V5誘導についても、I誘導及びV4誘導につい
て説明した処理と同様であるので説明は省略する。
【0064】
(異なる誘導法による心電波形の再測定を追加する処理)
以下に、
図7を参照して、携帯型心電装置100を用いた心電波形測定処理のうち、異なる誘導法による心電波形の再測定を追加する処理について説明する。
図4に示す心電波形測定処理と同様の手順については、同様の符号を用いて詳細な説明を省略する。
【0065】
ステップS1からステップS10については、
図4に示す心電波形測定処理と同様である。ここでは、ステップS2において、誘導種別としてI誘導が設定されている例につい
て説明する。
【0066】
ステップS6及びステップS7においてI誘導による心電波形測定が行われ、ステップ
S8において心電波形が解析される。そして、ステップS9において、I誘導による心電
波形と解析結果がメモリ部106の所定領域に保存される。ステップS8において、I誘
導による心電波形に異常がある場合には、ステップS10において、異常波形検出LED6を点灯させる。ステップS8において、I誘導による心電波形に異常がない場合には、
ステップS10において、測定解析結果を表示する。解析結果に異常がない旨は、異常波形検出LED6を点灯させない、又は、異常波形検出LED6を、解析結果に異常がある場合とは異なる態様で点灯又は点滅させることに表示する。ここでは、異常波形検出LED6は、本発明の表示手段に対応する。
【0067】
ここでは、次のステップS31において、制御部104が、心電波形解析の結果、I誘
導による心電波形に異常があるか否かを判定する。ここで、心電波形解析の結果、心電波形に異常があるか否かは、心電波形の解析結果が所定の条件を満たすか否かによって判断
する。所定の条件とは、例えば、不整脈が認められる、心房細動が認められる、波形品質の不良が認められる等の条件である。このような条件を満たす場合に、制御部104は、心電波形に異常があると判断する。
ステップS31において、Noと判断された場合には、心電測定処理を終了し、電源スイッチ7の押下により電源がOFFされる(ステップS41)。
ステップS31において、Yesと判断された場合には、ステップS32に進む。
【0068】
I誘導では、ピーク値が高いR波形の間隔により、不規則脈波であるか否かの大まかな
判定が可能である(
図6(A)参照)。しかし、I誘導では、
図5に示す心電波形の代表
的なパラメータであるPQRST波の大きさが小さく最適な解析が難しい。そのため、このまま心電波形測定を終了すれば、I誘導による簡易的な心電波形測定で終了することと
なり、より精度の高い心電波形測定や解析ができない。そこで、I誘導による心電波形測
定において、不整脈のような異常な心電波形が検出された場合、又は、波形品質が不良である場合には、別の誘導法による心電波形測定を促すために、制御部104は、追加で実施する誘導法に対応する誘導種別表示LED14を点滅させる(ステップS32)。このように、心電波形に異常があるか否かを判断し、異常があると判断した場合に、再測定を促す誘導種別
表示LED14を点滅させる処理を行う制御部104が、本発明の再測定促進部に対応する。
【0069】
例えば、心電波形パターンをより的確に把握し解析したい場合には、V4誘導による心電波形の再測定を追加することとして、対応する表示LED14gを点滅させる。このようにして、V4誘導による再測定が設定された後の、ステップS33~ステップS35の処理は、
図4のステップS3~ステップS5と同様であり、ステップS36~ステップS41の処理は、
図4のステップS17~ステップS21及びステップS11と同様である。
【0070】
I誘導による心電波形測定に追加する誘導法は上述のV4誘導に限られず、種々の誘導
法を設定することができる。例えば、ステップS8における心電波形の解析の結果、制御部104が心房細動(AF)の可能性があると判定した場合には、I誘導では心房細動の
判定をより確実にすることが難しく、P波やF波(不規則な基線の
動揺)の有無を確認することが好ましい。このときには、ステップS32において、V1誘導による心電波形の再測定を追加する。V1誘導による心電波形は、
図6(D)に例示される波形であるため、P波やF波が把握しやすいV1誘導を追加して再測定させることで心房細動の有無の判定に、より有益な心電波形データを収集することができる。
【0071】
(携帯型心電装置とスマートフォンとが連携した基本的な心電測定処理)
図8及び
図9は、携帯型心電装置100と、スマートフォン200等のBLE方式の通信機能を搭載した端末とがBLE通信しながら基本的な心電波形を測定する手順を説明するフローチャートであり、
図8及び
図9は、一連の手順を示す。
【0072】
まず、携帯型心電装置100の電源スイッチ7を押下することにより電源をONする(ステップS301)。一方、スマートフォン200では、心電測定用のアプリを開く(ステップS401)。被検者のIDの登録等は、上述の初期設定の際に完了しているものとして説明する。
【0073】
次に、携帯型心電装置100とスマートフォン200との間で、所定の手順に従ってBLE接続を行う(ステップS302、ステップS402)。
携帯型心電装置100とスマートフォン200との間で、BLE接続が確立されると、スマートフォン200は携帯型心電装置100に対して、通信開始要求を送信する(ステップS403)。
【0074】
次に、スマートフォン200は、制御部201が誘導種別の入力を受け付ける(ステップS404)。
図10(A)は、被検者又は使用者がスマートフォン200で、誘導種別設定を入力する際のタッチパネルディスプレイ202の表示例である。タッチパネルディスプレイ202には、誘導種別設定画面2021には、文字とともに、複数種誘導法のうち、設定すべき誘導法を選択するボタン2022が表示されている。誘導種別を選択するボタン2022は、複数種の誘導法に対応したボタンを含む。すなわち、ボタン2022は、I誘導を設定するボタン2022a、II誘導を設定するボタン2022b、III誘導を
設定するボタン2022c、V1誘導を設定するボタン2022d、V2誘導を設定するボタン2022e、V3誘導を設定するボタン2022f、V4誘導を設定するボタン2022g、V5誘導を設定するボタン2022h、V6誘導を設定するボタン2022iを含む。各ボタン2022a~2022iには、各誘導法に関連した表示がなされている。例えば、被検者又は使用者が、V4誘導による心電測定を選択する場合には、タッチパネルディスプレイ202のボタン2022gに触れる。V4誘導が設定されると、タッチパネルディスプレイ202には、
図10(B)に示すように、設定された誘導法に応じて、被検者が、携帯型心電装置100の電極2を接触させるべき位置(測定部位)を、図と文字を用いて説明する案内画面2023を表示する。ここでは、V4誘導に応じた案内画面を例示しているが、被検者又は使用者が選択可能な誘導法に対して、同様の案内画面を表示することができる。設定された誘導種別に応じて電極2を接触させる測定部位を、スマートフォン200のタッチパネルディスプレイ202に表示することにより、被検者が正確な位置に電極2を接触させることができる。このような案内画面2023により、被検者に測定部位を案内することにより、より確実に、最適な誘導を設定することができ、正確な心電波形の測定が可能となる。ここでは、ボタン2022a~2022iを含むボタン2022は、本発明の設定部に対応する。
【0075】
ステップS404において設定された誘導種別はスマートフォン200から、携帯型心電装置100に送信される。携帯型心電装置100は、誘導種別を受信し(ステップS303)、メモリ部106の所定領域に保存する。
【0076】
次に、携帯型心電装置100では、制御部104は、電極接触状態を検出する(ステップS304)。
具体的には、携帯型心電装置100によりV4誘導測定を行う場合には、第2電極3に右手の人差し指の先端部を接触させ、第3電極4に右手人差し指の中節を接触させる。そ
して、第1電極2を、左胸部の心窩部やや左方・乳頭下方の皮膚に接触させる。また、携帯型心電装置100によりI誘導測定を行う場合には、第2電極3に右手の人差し指の先端部を接触させ、第3電極4に右手人差し指の中節を接触させる。そして、第1電極2に左手掌を接触させる。このように、被検者は、設定された誘導種別に応じた測定部位に各電極2、3、4を接触させる。各電極2、3、4を介して取得された電気信号をアンプ部102で増幅し、AD変換部103でデジタル変換し、接触状態検出信号を生成する。このようにして生成された接触状態検出信号を制御部104に送信し、被検者と各電極2、3、4との接触状態を検出する。
【0077】
携帯型心電装置100では、電極接触状態を示す情報を、スマートフォン200に送信する(ステップS305)。スマートフォン200は電極接触状態を示す情報を受信すると(ステップS405)、電極接触状態をタッチパネルディスプレイ202等に表示し(ステップS406)、各電極2、3、4に正常に接触していることを被検者に知らせる。
【0078】
制御部104は、電極接触状態が維持されて所定時間が経過したか否かを判断する(ステップS306)。
ステップS306において、Noと判断された場合には、ステップS304に戻る。
ステップS306において、Yesと判断された場合には、制御部104は、設定された誘導種別に応じた心電測定を開始する(ステップS307)。
【0079】
心電測定が開始されると、携帯型心電装置100はスマートフォン200との間でストリーミング通信を行い、誘導種別情報と心電波形情報と測定時間情報をスマートフォン200に送信する(ステップS308)。測定時間情報は、タイマ部105でカウントされている、心電測定開始からの経過時間に関する情報であり、ここでは、心電測定開始からの経過時間を、所定時間から減算した、残りの測定時間を示す情報である。携帯型心電装
置100から心電測定開始からの経過時間の情報をスマートフォン200に送信し、スマートフォン200側で所定時間からの減算処理を行ってもよい。一方、スマートフォン200では、携帯型心電装置100から誘導種別情報、心電波形情報及び測定時間情報を受信する(ステップS407)。
【0080】
スマートフォン200では、タッチパネルディスプレイ202に誘導種別、心電波形及び測定時間を表示する(ステップS408)。これにより、誘導種別と、心電測定が正常に行われていることと、残りの測定時間が被検者に報知される。
タッチパネルディスプレイ202に表示された誘導種別を、被検者に正しい測定姿勢を指導するのに利用することができる。また、タッチパネルディスプレイ202に、被検者が意図していた誘導法と異なる誘導種別が表示された場合には、正しい測定姿勢での再度の測定を促すことができる。
【0081】
心電波形の測定が開始されてから所定の測定時間(例えば30秒)が経過したか否かを判断する(ステップS309)。
ステップS309において、Noと判断された場合には、ステップS307に戻り、心電測定を継続する。
ステップS309において、Yesと判断された場合には、制御部104は、設定された所定の誘導法に応じた心電波形の解析を行う(ステップS310)。設定された所定の誘導法に応じて、心電波形を解析することにより、精度のよい解析が可能となる。
【0082】
制御部104は、心電波形の解析中に、スマートフォン200に対して、心電波形の解析中であることを示す情報を送信する(ステップS311)。スマートフォン200は、携帯型心電装置100から、心電波形の解析中であることを示す情報を受信すると(ステップS409)、心電波形の解析中であることを示す情報をタッチパネルディスプレイ202に表示する(ステップS410)。
【0083】
心電波形の解析が終了すると、制御部104は、誘導種別、心電波形及び解析結果を関連付けてメモリ部106の所定領域に保存する(ステップS312)。誘導種別を心電波形及び解析結果と関連付けてメモリ部106の所定領域に保存しておくことにより、医師が心電波形を読み出して診断等に利用する場合に、有用な情報を提供することができる。互いに関連付けられた誘導種別、心電波形及び解析結果を携帯型心電装置100のメモリ部106に保存せずに、スマートフォン200側にのみ保存するようにしてもよい。また、誘導種別、心電波形及び解析結果のいずれかのみを携帯型心電装置100のメモリ部106に保存するようにしてもよい。
心電波形の解析により、異常波形が検出された場合には、制御部104は、異常波形検出LED13を点滅させて、被検者に異常波形検出を通知するようにしてもよい。
【0084】
また、心電波形の解析が終了すると、制御部104は、高速のデータ通信により解析結果をスマートフォン200に送信する(ステップS314)。このとき、スマートフォン200では、携帯型心電装置100から送信された解析結果を受信し(ステップS411)、解析結果、すなわち、心電測定結果が正常で問題がなかったのか、異常波形が検出されたのかをタッチパネルディスプレイ202に表示する(ステップS412)。
【0085】
そして、携帯型心電装置100に未送信の心電波形データ、誘導種別判定結果データ、解析結果がある場合には、制御部104は、高速のデータ通信により、これらの情報を、新しいものから順にスマートフォン200に送信する(ステップS315)。このとき、スマートフォン200では、未送信の心電波形データ、誘導種別判定結果データ、解析結果を携帯型心電装置100から受信し(ステップS413)、メモリ部204の所定領域に保存する。そして、スマートフォン200では、最新の心電波形と心電測定結果が正常であったか異常波形が検出されたか等の解析結果をタッチパネルディスプレイ202に表示する(ステップS414)。
【0086】
携帯型心電装置100において、未送信の心電波形データ、誘導種別判定結果データ、解析結果の送信が完了すると(ステップS316)、スマートフォン200から送信される通信終了要求(ステップS415)に応じて、BLE通信を切断する(ステップS317)。携帯型心電装置100におけるBLE通信の切断に対応して、スマートフォン200側でもBLE通信が切断される(ステップS416)。
【0087】
BLE通信を切断した後に、携帯型心電装置100では、電源スイッチ7がOFFされる(ステップS318)。電源スイッチ7は、BLE切断後、所定の時間の経過により制御部104が自動的にOFFにしてもよいし、被検者又は使用者による電源スイッチ7の押下によるOFFにしてもよい。一方、スマートフォン200では、BLE通信を切断した後に、アプリを閉じる(ステップS417)。このようにして、携帯型心電装置100におけるスマートフォン200と連携した心電測定が終了する。
【0088】
(携帯型心電装置とスマートフォンとが連携して異なる誘導法による心電波形の再測定を追加する処理)
図11及び
図12は、携帯型心電装置100と、スマートフォン200等のBLE方式の通信機能を搭載した端末とがBLE通信しながら一つの誘導法による心電波形を測定し、その後異なる誘導法による心電波形を測定する手順を説明するフローチャートであり、
図11及び
図12は、一連の手順を示す。
図8及び
図9に示す、基本的な心電波形測定処理と共通する処理については、同じ符号を用いて詳細な説明を省略する。
【0089】
まず、携帯型心電装置100におけるステップS301及びステップS302と、スマートフォン200におけるステップS401~ステップS403の処理は、
図8に示す場合と同様であるので説明は省略する。
【0090】
続いて、スマートフォン200は、制御部201が誘導種別の入力を受け付ける(ステップS604)。このとき、スマートフォン200では、I誘導が選択され、入力される
。このとき、被検者又は使用者がスマートフォン200のタッチパネルディスプレイ20
2で、I誘導を設定するボタン2022aに触れる。I誘導が設定されると、タッチパネルディスプレイ202には、
図13(A)に示すように、設定されたI誘導に応じて、被検
者が、携帯型心電装置100の電極2を接触させるべき位置(測定部位)を、図と文字を用いて説明する案内画面2024を表示する。ここでは、
I誘導に応じた案内画面を例示
しているが、被検者又は使用者が選択可能な誘導法に対して、同様の案内画面を表示することができる。設定された誘導種別に応じて電極2を接触させる測定部位を、スマートフォン200のタッチパネルディスプレイ202に表示することにより、被検者が正確な位置に電極2を接触させることができる。このような案内画面202
4により、被検者に測定部位を案内することにより、より確実に、最適な誘導を設定することができ、正確な心電波形の測定が可能となる。ここでは、ボタン2022a~2022iを含むボタン2022は、本発明の設定部に対応する。
【0091】
ステップS604において設定された誘導種別はスマートフォン200から、携帯型心電装置100に送信される。携帯型心電装置100は、誘導種別を受信し(ステップS503)、メモリ部106の所定領域に保存する。
【0092】
次に、携帯型心電装置100では、制御部104は、電極接触状態を検出する(ステップS504)。
具体的には、携帯型心電装置100によりI誘導測定を行う場合には、第2電極3に右手の人差し指の先端部を接触させ、第3電極4に右手人差し指の中節を接触させる。そして、第1電極2に左手掌を接触させる。このように、被検者は、設定された誘導種別に応じた測定部位に各電極2、3、4を接触させる。各電極2、3、4を介して取得された電気信号をアンプ部102で増幅し、AD変換部103でデジタル変換し、接触状態検出信号を生成する。このようにして生成された接触状態検出信号を制御部104に送信し、被検者と各電極2、3、4との接触状態を検出する。
【0093】
携帯型心電装置100では、電極接触状態を示す情報を、スマートフォン200に送信する(ステップS505)。スマートフォン200は電極接触状態を示す情報を受信すると(ステップS605)、電極接触状態をタッチパネルディスプレイ202等に表示し(ステップS606)、各電極2、3、4に正常に接触していることを被検者に知らせる。
【0094】
制御部104は、電極接触状態が維持されて所定時間が経過したか否かを判断する(ステップS506)。
ステップS506において、Noと判断された場合には、ステップS504に戻る。
ステップS506において、Yesと判断された場合には、制御部104は、設定されたI誘導による心電測定を開始する(ステップS507)。
【0095】
心電測定が開始されると、携帯型心電装置100はスマートフォン200との間でストリーミング通信を行い、I誘導であることを示す誘導種別情報と心電波形情報と測定時間
情報をスマートフォン200に送信する(ステップS508)。測定時間情報は、タイマ部105でカウントされている、心電測定開始からの経過時間に関する情報であり、ここでは、心電測定開始からの経過時間を、所定時間から減算した、残りの測定時間を示す情報である。携帯型心電装置100から心電測定開始からの経過時間の情報をスマートフォン200に送信し、スマートフォン200側で所定時間からの減算処理を行ってもよい。一方、スマートフォン200では、携帯型心電装置100から誘導種別情報、心電波形情報及び測定時間情報を受信する(ステップS607)。
【0096】
スマートフォン200では、タッチパネルディスプレイ202に誘導種別、心電波形及び測定時間を表示する(ステップS608)。これにより、誘導種別がI誘導であること
と、心電測定が正常に行われていることと、残りの測定時間が被検者に報知される。
【0097】
心電波形の測定が開始されてから所定の測定時間(例えば30秒)が経過したか否かを判断する(ステップS509)。
ステップS509において、Noと判断された場合には、ステップS507に戻り、心電測定を継続する。
ステップS509において、Yesと判断された場合には、制御部104は、設定された所定の誘導法に応じた心電波形の解析を行う(ステップS510)。設定されたI誘導
に応じて、心電波形を解析することにより、精度のよい解析が可能となる。
【0098】
制御部104は、心電波形の解析中に、スマートフォン200に対して、心電波形の解析中であることを示す情報を送信する(ステップS511)。スマートフォン200は、携帯型心電装置100から、心電波形の解析中であることを示す情報を受信すると(ステップS609)、心電波形の解析中であることを示す情報をタッチパネルディスプレイ202に表示する(ステップS610)。
【0099】
心電波形の解析が終了すると、制御部104は、I誘導である誘導種別、心電波形及び
解析結果を関連付けてメモリ部106の所定領域に保存する(ステップS512)。誘導種別を心電波形及び解析結果と関連付けてメモリ部106の所定領域に保存しておくことにより、医師が心電波形を読み出して診断等に利用する場合に、有用な情報を提供することができる。互いに関連付けられた誘導種別、心電波形及び解析結果を携帯型心電装置100のメモリ部106に保存せずに、スマートフォン200側にのみ保存するようにしてもよい。また、誘導種別、心電波形及び解析結果のいずれかのみを携帯型心電装置100のメモリ部106に保存するようにしてもよい。
心電波形の解析により、異常波形が検出された場合には、制御部104は、異常波形検出LED13を点滅させて、被検者に異常波形検出を通知するようにしてもよい。
【0100】
また、心電波形の解析が終了すると、制御部104は、高速のデータ通信により解析結果をスマートフォン200に送信する(ステップS514)。このとき、スマートフォン200では、携帯型心電装置100から送信された解析結果を受信し(ステップS611)、解析結果、すなわち、心電測定結果が正常で問題がなかったのか、異常波形が検出されたのかをタッチパネルディスプレイ202に表示する(ステップS612)。
【0101】
制御部104は、心電波形解析の結果、I誘導による心電波形に異常があるか否かを判
定する(ステップS515)。
ステップS515において、Noと判断された場合には、心電測定処理を終了し、電源スイッチ7の押下により電源がOFFされる(ステップS516)。
ステップS515において、Yesと判断された場合、すなわち、I誘導による心電波
形に異常が認められた場合には、制御部104は、より正確な誘導法で心電測定を行うために別誘導法による再測定の追加をスマートフォン200に送信する(ステップS517)。
【0102】
ステップS515でI誘導による心電波形に異常があると判定された場合に、タッチパ
ネルディスプレイ202に表示された解析結果の例を
図13(B)に示す。ここでは、タッチパネルディスプレイ202には、I誘導による心電波形の解析結果が表示されている
。タッチパネルディスプレイ202には、「不整脈が認められます。」という解析結果表示2025と、「正確な診断のため追加でV4誘導測定を行ってください。」との、異なる誘導法での心電波形の再測定を促す表示2026がなされている。このように、心電波形に異常があるか否かを判断し、異常があると判断した場合に、別の誘導法による再測定の追加をスマートフォン200に送信し、タッチパネルディスプレイ202に異なる誘導法での心電波形の再測定を促す表示2026を行わせる制御部104が、本発明の再測定促進部に対応する。また、ここでは、異なる誘導法での心電波形の再測定を促す表示2026を行うタッチパネルディスプレイ202が、本発明の表示手段に対応する。
【0103】
図6(A)に示すように、I誘導による心電波形は、ピーク値が高いR波形の間隔で不
規則脈波であるかどうかの大まかな判定はできる。しかし、
図5に示す代表的な心電波形パラメータの
PQRST波の大きさが小さく最適な解析が難しい。そのため、このまま心電波形測定を終了すれば、I誘導による簡易的な心電波形測定で終了することとなり、よ
り精度の高い心電波形測定や解析ができない。そこで、I誘導による心電波形測定におい
て、不整脈のような異常な心電波形が検出された場合、又は、波形品質が不良である場合には、
図13(B)に示すように、スマートフォン200のタッチパネルディスプレイ202に別の誘導法による心電波形測定を促す表示2026を行う(ステップS613)。ここでは、心電波形パターンをより的確に把握し解析するために、V4誘導による心電測定を行うように促している。
【0104】
図13(B)に示す、別の誘導法による心電波形測定を促す表示2026がなされたタッチパネルディスプレイ202に被検者又は使用者が触れると、
図10(A)に示す誘導種別設定画面2021が表示される。被検者又は使用者がV4誘導を設定するボタン2022gに触れることにより、別の誘導法であるV4誘導による心電波形の再測定を追加することに対する被検者又は使用者の同意(OK)が取得される(ステップS614)。こ
れを受けて、スマートフォン200からは、別誘導種別の情報としてV4誘導であることを示す情報が、携帯型心電装置100に送信される。また、被検者又は使用者が、誘導種別設定画面2021のV4誘導を設定するボタン2022gに触れると、タッチパネルディスプレイ202には、
図10(B)に示すように、設定された誘導法に応じて、被検者が、携帯型心電装置100の電極2を接触させるべき位置(測定部位)を、図と文字を用いて説明する案内画面2023が表示される。これにより、被検者は正確な位置に電極2を接触させることができ、正確な心電波形の測定が可能となる。
【0105】
携帯型心電装置100が、別誘導測定の情報を受信する(ステップ518)。
以降は、別の誘導法として設定されたV4誘導による心電測定が行われる。ステップS519以降の処理手順は、
図8及び
図9に示したステップS304及びステップS405以降の処理手順と同じであるから説明を省略する。
【0106】
I誘導による心電波形測定に追加する誘導法は上述のV4誘導に限られず、種々の誘導
法を設定することができる。例えば、ステップ
S8における心電波形の解析の結果、制御部104が心房細動(AF)の可能性があると判定した場合には、I誘導では心房細動の
判定をより確実にすることが難しく、P波やF波(不規則な基線の
動揺)の有無を確認することが好ましい。このときには、ステップS32において、V1誘導による心電波形の再測定を追加する。V1誘導による心電波形は、
図6(D)に例示される波形であるため、P波やF波が把握しやすいV1誘導を追加して再測定させることで心房細動の有無の判定に、より有益な心電波形データを収集することができる。
【0107】
このようにして、一つの誘導法による心電測定に追加して別の誘導法による心電波形の再測定を行うことができる。これにより、心電波形パターンを正確に測定でき、正確な診断のために有益な情報を収集することができる。I誘導による心電測定にV4誘導による
心電波形の再測定を追加する例と、I誘導による心電測定にV1誘導による心電波形の再
測定を追加する例について説明したが、I誘導による心電測定に追加して心電波形の再測
定を行う場合の誘導法はこれらに限られない。また、初めに心電測定する際の誘導法と、心電波形の再測定を追加する場合の誘導法との組み合わせもこれらに限られない。一つの誘導法による心電測定において、波形品質が悪い、ノイズが多い、波形パターンが不明瞭である等の理由により、精度の良い解析が望めない場合には、それを補完する特性を有する心電波形の測定が可能な誘導法による心電波形の再測定を追加することにより、心電測定の精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0108】
1 :携帯型心電装置本体
2,3,4:電極
13 :誘導種別設定入力部
14 :誘導種別表示LED
100 :携帯型心電装置
200 :スマートフォン
202 :タッチパネルディスプレイ