(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】シート用歯車装置
(51)【国際特許分類】
A47C 7/50 20060101AFI20240611BHJP
B60N 3/06 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
A47C7/50 A
B60N3/06
(21)【出願番号】P 2020049239
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊東 定夫
(72)【発明者】
【氏名】岡田 真樹
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-270298(JP,A)
【文献】特開昭60-236612(JP,A)
【文献】特開平05-092733(JP,A)
【文献】米国特許第05209637(US,A)
【文献】韓国登録特許第10-0245157(KR,B1)
【文献】特開2004-187759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/00-7/74
A47C 1/00-1/16
B60N 2/00-2/90
B60N 3/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに適用されるシート用歯車装置において、
回転中心軸線側に向けて突出した複数の歯を有する第1内歯歯車と、
前記第1内歯歯車と共通の回転中心軸線を有し、当該回転中心軸線側に向けて突出した複数の歯を有する第2内歯歯車であって、当該第1内歯歯車により回転可能に支持された第2内歯歯車と、
前記第1内歯歯車及び前記第2内歯歯車内に配置されて当該第1内歯歯車及び当該第2内歯歯車と噛み合う外歯歯車であって、前記第1内歯歯車及び前記第2内歯歯車の歯数より少ない歯数の外歯歯車と、
前記外歯歯車の回転中心を前記回転中心軸線周りに旋回させるとともに、当該外歯歯車を当該回転中心周りに回転可能に支持する偏心部材であって、外部から回転力が入力されて前記回転中心軸線周りに回転するとともに、前記第1内歯歯車に回転可能に支持された偏心部材とを備え、
前記第1内歯歯車は、略円盤状の第1本体部、及び当該第1本体部の外縁側から前記第2内歯歯車側に突出した環状の第1フランジ部を有し、
前記第2内歯歯車は、略円盤状の第2本体部、及び当該第2本体部の外縁側から前記第1内歯歯車側に突出した環状の第2フランジ部であって前記第1フランジ部と滑り接触可能な第2フランジ部を有しており、
前記第2フランジ部が前記第1フランジ部に滑り接触することにより、前記第2内歯歯車が前記第1内歯歯車に回転可能に支持され、
前記外歯歯車は、前記第1本体部と前記第2本体部との間に配置されており、
前記第1本体部には、前記第2本体部側に突出して前記偏心部材を回転可能に支持する円筒状の軸受部であって
、前記第1本体部に一体化された軸受部が設けられ、
前記第2本体部には、前記偏心部材の一部が嵌り込んだ穴部が設けられており、
さらに、前記穴部の内壁と前記偏心部材との間
に隙間が設けられている
ことにより、前記第2内歯歯車は前記第1内歯歯車に支持され、前記第2内歯歯車に作用する荷重は、前記第1内歯歯車にて受ける構成となっているシート用歯車装置。
【請求項2】
前記軸受部のうち前記第1本体部に圧入された部分は、当該軸受部のうち前記外歯歯車の内周面と滑り接触する部位に比べて外径寸法が大きい請求項1に記載のシート用歯車装置。
【請求項3】
前記第1内歯歯車の歯数と前記第2内歯歯車の歯数とは、異なる歯数である請求項2に記載のシート用歯車装置。
【請求項4】
前記偏心部材は、駆動シャフトを介して電動モータの回転力が入力されて前記回転中心軸線周りに回転する請求項3に記載のシート用歯車装置。
【請求項5】
前記偏心部材のうち前記外歯歯車に嵌め込まれた部位に設けられた偏心カムであって、前記外歯歯車の回転中心を中心とする円盤状の偏心カムを備える請求項4に記載のシート用歯車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シートに適用される歯車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載されたシート用歯車装置は、2つの内歯歯車、それら内歯歯車間に挟まれた状態で各内歯歯車に噛み合う外歯歯車、及び外歯歯車を旋回させる偏心カムシャフト等を有して構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明では、一方の内歯歯車及び外歯歯車に作用する荷重が偏心カムシャフトに作用し、かつ、それら荷重の作用点が、回転中心軸線方向において大きくずれているため、偏心カムシャフトを傾けるモーメントが発生する。偏心カムシャフトが傾いてしまうと、荷重が特定の部位に集中し易くなるため、当該部位の摩擦抵抗が増大してシート用歯車装置の作動不良を誘発するおそれがある。
【0005】
本開示は、上記点に鑑み、作動不良の発生を抑制可能なシート用歯車装置の一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
シートに適用されるシート用歯車装置は、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
【0007】
すなわち、当該構成要件は、回転中心軸線(Lo)側に向けて突出した複数の歯を有する第1内歯歯車(11)と、第1内歯歯車(11)と共通の回転中心軸線を有し、当該回転中心軸線(Lo)側に向けて突出した複数の歯を有する第2内歯歯車(12)であって、当該第1内歯歯車(11)により回転可能に支持された第2内歯歯車(12)と、第1内歯歯車(11)及び第2内歯歯車(12)内に配置されて当該第1内歯歯車(11)及び当該第2内歯歯車(12)と噛み合う外歯歯車(13)であって、第1内歯歯車(11)及び第2内歯歯車(12)の歯数より少ない歯数の外歯歯車(13)と、外歯歯車(13)の回転中心(L1)を回転中心軸線(Lo)周りに旋回させるとともに、当該外歯歯車(13)を当該回転中心(L1)周りに回転可能に支持する偏心部材(14)であって、外部から回転力が入力されて回転中心軸線(Lo)周りに回転する偏心部材(14)とである。
【0008】
これにより、当該シート用歯車装置では、シート用歯車装置に作用する荷重の多くは、第1内歯歯車(11)にて受ける構成となる。このため、各荷重の作用点が回転中心軸線方向において大きくずれてしまうことが抑制され得るので、偏心部材(14)を傾けるモーメント(以下、傾斜モーメントという。)が大きくなることが抑制され得る。したがって、偏心部材(14)が傾くことが抑制されるので、作動不良の発生が抑制され得る。
【0009】
なお、当該シート用歯車装置は、例えば、以下の構成であってもよい。
【0010】
すなわち、偏心部材(14)は、第1内歯歯車(11)に回転可能に支持されていることが望ましい。これにより、傾斜モーメントの発生が確実に抑制され得るので、作動不良の発生が抑制され得る。
【0011】
第1内歯歯車(11)は、略円盤状の第1本体部(11B)、及び当該第1本体部(11B)の外縁側から第2内歯歯車(12)側に突出した環状の第1フランジ部(11C)を有し、第2内歯歯車(12)は、略円盤状の第2本体部(12B)、及び当該第2本体部(12B)の外縁側から第1内歯歯車(11)側に突出した環状の第2フランジ部(12C)であって第1フランジ部(11C)と滑り接触可能な第2フランジ部(12C)を有しており、第2フランジ部(12C)が第1フランジ部(11C)に滑り接触することにより、第2内歯歯車(12)が第1内歯歯車(11)に回転可能に支持されることが望ましい。
【0012】
さらに、外歯歯車(13)は、第1本体部(11B)と第2本体部(12B)との間に配置されており、第1本体部(11B)には、第2本体部(12B)側に突出して偏心部材(14)を回転可能に支持する円筒状の軸受部(15)が設けられていることが望ましい。これにより、各荷重の作用点が回転中心軸線方向において大きくずれてしまうことが抑制され得る。
【0013】
第2本体部(12B)には、偏心部材(14)の一部が嵌り込んだ穴部(12H)が設けられており、さらに、穴部(12H)の内壁と偏心部材(14)との間には隙間(12J)が設けられていることが望ましい。これにより、第2内歯歯車(12)に作用する荷重が、偏心部材(14)に作用してしまうことが確実に抑制され得る。したがって、各荷重の作用点が回転中心軸線方向において大きくずれてしまうことが抑制され得る。
【0014】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態に係る乗物用シートを示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る乗物用シート用オットマン装置を示す図である。
【
図3】第1実施形態に係る乗物用シート用歯車装置の分解図である。
【
図4】第1実施形態に係る乗物用シート用歯車装置の外観図である。
【
図5】第1実施形態に係る乗物用シート用歯車装置の外観図である。
【
図6】第1実施形態に係る第1内歯歯車の外観図である。
【
図7】第1実施形態に係る乗物用シート用歯車装置の構造図である。
【
図8】第1実施形態に係る第2内歯歯車の外観図である。
【
図9】第1内歯歯車と外歯歯車との噛み合い状態を示す図である。
【
図10】第2内歯歯車と外歯歯車との噛み合い状態を示す図である。
【
図11】第2実施形態に係る乗物用シート用歯車装置の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0017】
本実施形態は、車両等の乗物に搭載されるシート(以下、乗物用シートという。)に本開示に係るシート用歯車装置(以下、歯車装置と略す。)が適用された例である。各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び部材又は部位の形状等を理解し易くするために記載されたものである。
【0018】
したがって、当該歯車装置は、各図に付された方向に限定されない。各図に示された方向は、本実施形態に係る乗物用シートが車両に組み付けられた状態における方向である。斜線が付された図は、必ずしも断面図を示さない。
【0019】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示された歯車装置は、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素、並びに図示された構造部位を備える。
【0020】
(第1実施形態)
<1.乗物用シートの概要>
図1に示される乗物用シート1は、シートバック2、シートクッション3、ヘッドレスト4及びオットマン5等を少なくとも備える。シートバック2は着席者の背部を支持するための部位である。
【0021】
シートクッション3は着席者の臀部を支持するための部位である。ヘッドレスト4は着席者の頭部を後方側から支持するための部位である。オットマン5は、着席者の脹脛等を支持するための部位である。
【0022】
当該オットマン5は、乗物用シート1(シートクッション3)の前端に装着されている。そして、本実施形態に係るオットマン5は、「脹脛を支持可能な位置(
図1参照)」と「前端に収納された位置(図示せず。)」との間で変位可能である。
【0023】
オットマン5は、
図2に示される可動装置6により変位可能に支持される。可動装置6は、リンク機構7及び電動モータ8等を少なくとも有する。リンク機構7は、オットマン5を変位させるための機構である。
【0024】
本実施形態に係るリンク機構7は、パンタグラフ方式のXリンク機構を利用したリンク機構である。当該リンク機構7は、右側及び左側に配置された2つのXリンク機構を有している。そして、それら2つのXリンク機構は、左右対称な構成である。
【0025】
電動モータ8は、2つの駆動リンク7Aを回転変位させる回転力を発生する。本実施形態に係る歯車装置10は、電動モータ8の回転出力を減速して2つの駆動リンク7Aに伝達する。
【0026】
なお、各駆動リンク7Aは、各Xリンク機構(リンク機構7)を構成するアーム状の部材である。リンク機構7は、2つ支持アーム7Bを介してシートクッション3の前端に連結されている。
【0027】
2つの支持アーム7Bそれぞれは、歯車装置10を介して各駆動リンク7Aに連結されている。電動モータ8は、2つの駆動リンク7Aのうちいずれか一方の駆動リンク7Aに固定されている。そして、電動モータ8の回転力は、駆動シャフト8Aにより2つの歯車装置それぞれに伝達される。
【0028】
<2.歯車装置>
2つの歯車装置10の構成、並びに当該歯車装置10と駆動リンク7A及び支持アーム7Bと関係は、左右対称な構成である。そして、以下の説明は、
図2の左側に配置された歯車装置10等の説明である。
【0029】
歯車装置10は、
図3~5に示されるように、第1内歯歯車11、第2内歯歯車12、外歯歯車13、偏心部材14及び軸受部15等を少なくとも備える。外歯歯車13は、第1内歯歯車11及び第2内歯歯車12と噛み合いながら旋回する。偏心部材14は、外歯歯車13を旋回させる。
【0030】
<第1内歯歯車及び第2内歯歯車の詳細>
第1内歯歯車11は、
図6に示されるように、回転中心軸線Lo側に向けて突出した複数の歯11Aを有する歯車である。当該第1内歯歯車11は、第1本体部11B及び第1フランジ部11C等を有する。
【0031】
第1本体部11Bは略円盤状の部位である。第1フランジ部11Cは、第1本体部11Bの外縁側から第2内歯歯車12側に突出した環(リング)状の部位である。本実施形態に係る第1内歯歯車11では、第1フランジ部11Cの内周側に複数の歯11Aが設けられている。
【0032】
なお、本実施形態に係る第1内歯歯車11は、複数の歯11A、第1本体部11B及び第1フランジ部11Cが鍛造又はプレス成形等の塑性加工にて一体成形された一体成形品である。
【0033】
第2内歯歯車12は、
図7に示されるように、第1内歯歯車11と共通の回転中心軸線Loを有し、当該回転中心軸線Lo側に向けて突出した複数の歯12A(
図8参照)を有する歯車である。
【0034】
当該第2内歯歯車12は、
図8に示されるように、略円盤状の第2本体部12B、及び第2フランジ部12C等を有する。第2フランジ部12Cは、第2本体部12Bの外縁側から第1内歯歯車11側に突出した環状の部位である。
【0035】
本実施形態に係る第2フランジ部12Cは、
図7に示されるように、同軸上に配置された2つのリング状の部位12D、12Eを有する。部位12D(以下、小リング部12Dという。)の外側に配置された部位12E(以下、大リング部12Eという。)は、小リング部12Dより内径寸法が大きい。
【0036】
複数の歯12Aは、小リング部12Dの内周面に設けられている。なお、第2内歯歯車12は、複数の歯12A、第2本体部12B及び第2フランジ部12C(小リング部12D及び大リング部12E)が鍛造又はプレス成形等の塑性加工にて一体成形された一体成形品である。
【0037】
そして、本実施形態では、第1内歯歯車11(第1本体部11B)に駆動リンク7Aが固定され、第2内歯歯車12(第2本体部12B)に支持アーム7Bが固定されている。つまり、リンク機構7は、歯車装置10を介して支持アーム7Bに連結されている。
【0038】
<第2内歯歯車の支持構造>
第2内歯歯車12は、
図7に示されるように、第1内歯歯車11により回転可能に支持されている。すなわち、本実施形態では、第2フランジ部12Cが第1フランジ部11Cに滑り接触することにより、第2内歯歯車12が第1内歯歯車11に回転可能に支持されている。
【0039】
すなわち第1フランジ部11Cの外周面11D(以下、第1摺接面11Dという。)、及び第1フランジ部11Cのうち第2内歯歯車12と対向する対向面11E(以下、第2摺接面11Eという。)は、第2内歯歯車12の第2フランジ部12Cと滑り接触可能である。
【0040】
具体的には、大リング部12Eの内周面12F(以下、第1被摺接面12Fという。)は、第1摺接面11Dに滑り接触する。小リング部12Dのうち第2摺接面11Eと対向する面12G(以下、第2被摺接面12Gという。)は、第2摺接面11Eと滑り接触可能である。
【0041】
このため、第1フランジ部11C(第1内歯歯車11)が大リング部12E内に嵌め込まれた状態となるため、第2内歯歯車12が第1内歯歯車11に回転可能に支持された状態となる。
【0042】
つまり、第1摺接面11Dと第1被摺接面12Fとが滑り接触することより、第2内歯歯車12が回転する際に、第1内歯歯車11に対して直径方向にずれることが規制される。なお、直径方向とは、回転中心軸線Loと直交する方向である。
【0043】
そして、第2摺接面11Eと第2被摺接面12Gとが滑り接触することにより、回転中心軸線Loと平行な方向についての第2内歯歯車12の位置が決められる。なお、歯車装置10は、固定リング16を備えている。当該固定リング16は、第1内歯歯車11と第2内歯歯車12とが互いに離間変位することを規制する部材である。
【0044】
<外歯歯車>
外歯歯車13は、
図9及び
図10に示されるように、第1内歯歯車11及び第2内歯歯車12内に配置されて第1内歯歯車11及び第2内歯歯車12と噛み合うピニオンである(
図7参照)。
【0045】
具体的には、外歯歯車13は、
図7に示されるように、第1本体部11Bと第2本体部12Bとの間に配置され、第1本体部11B及び第2本体部12Bと滑り接触しながら回転旋回する。
【0046】
外歯歯車13の歯数Z3は、第1内歯歯車11の歯数Z1及び第2内歯歯車12の歯数Z2より少ない。このため、外歯歯車13のピッチ円直径は、第1内歯歯車11のピッチ円長径及び第2内歯歯車12のピッチ円直径より小さくなる。
【0047】
したがって、外歯歯車13が第1内歯歯車11及び第2内歯歯車12と噛み合った状態では、外歯歯車13の回転中心L1(
図3)は、常に、回転中心L1(第1内歯歯車11及び第2内歯歯車12の回転中心)に対して直径方向にずれている。
【0048】
なお、第1内歯歯車11の歯数Z1と第2内歯歯車12の歯数Z2とは、異なる歯数である。つまり、Z1>Z2及びZ1<Z2のいずれでもよい。
【0049】
<偏心部材>
偏心部材14は、
図9に示されるように、外歯歯車13の回転中心L1(
図3参照)を回転中心軸線Lo周りに旋回(公転)させるとともに、当該外歯歯車13を当該回転中心L1周りに回転(自転)可能に支持するための部材である。
【0050】
そして、偏心部材14は、駆動シャフト8Aを介して電動モータ8の回転力が入力されて回転中心軸線Lo周りに回転する。本実施形態に係る偏心部材14には、六角穴等の駆動シャフト8Aと係止可能な穴部14Aが設けられている。
【0051】
駆動シャフト8Aは、穴部14Aに嵌め込まれて偏心部材14と一体的に回転する。なお、外歯歯車13が回転中心軸線Lo周りに1回転すると、第1内歯歯車11及び第2内歯歯車12それぞれは、歯数差に応じた角度だけ回転する。
【0052】
具体的には、第1内歯歯車11は、外歯歯車13が1回転すると、(Z1-Z3)/Z1×360だけ回転する。第2内歯歯車12は、外歯歯車13が1回転すると、(Z2-Z3)/Z2×360だけ回転する。
【0053】
偏心部材14の穴部14Aは、
図7に示されるように、円筒部14Bに設けられている。円筒部14Bは、回転中心軸線Loを中心線とする円筒状の部位である。当該円筒部14Bは穴部12Hに嵌め込まれている。穴部12Hは、第2本体部12Bに設けられた貫通穴である。
【0054】
そして、穴部12Hの内壁と偏心部材14(円筒部14Bの外周面)との間には隙間12Jが設けられている。なお、偏心部材14のうち外歯歯車13に嵌め込まれた部位には、偏心カム14Cが設けられている。
【0055】
偏心カム14Cは、外歯歯車13の回転中心L1を中心とする円盤状のカム部である。当該偏心カム14Cの外周には、円筒状のブッシング17が圧入固定されている。ブッシング17は、外歯歯車13の内周面と滑り接触する滑り軸受部を構成する部材である。
【0056】
<軸受部>
軸受部15は、偏心部材14を回転可能に支持するめの円筒状の部位である。当該軸受部15は、第1本体部11Bに設けられ、当該第1本体部11Bから第2本体部12B側に突出した部位である。
【0057】
本実施形態係る軸受部15は、第1本体部11Bと別部品として製造された後、圧入により第1本体部11Bに一体化されている。このため、当該軸受部15のうち第1本体部11Bに圧入された部分15Bは、外歯歯車13の内周面と滑り接触する部位15Aに比べて外径寸法が大きい。
【0058】
本実施形態では、駆動シャフト8Aが軸受部15を貫通する構成である。このため、軸受部15には、駆動シャフト8A用の貫通穴15Cが設けられている。当該貫通穴15Cは、駆動シャフト8Aの最大外形(直径)寸法より大きな直径寸法を有する。
【0059】
<3.本実施形態に係る歯車装置の特徴>
本実施形態に係る歯車装置10では、歯車装置10作用する荷重の多くは、第1内歯歯車11にて受ける構成となる。
【0060】
つまり、第2内歯歯車12は第1内歯歯車11に支持されているため、第2内歯歯車12に作用する荷重は、第1内歯歯車11にて受ける構成となる。第1内歯歯車11と外歯歯車13とが噛み合うことによる噛み合い圧力は、当然に第1内歯歯車11にて受ける。
【0061】
このため、各荷重の作用点が回転中心軸線方向において大きくずれてしまうことが抑制され得るので、偏心部材14を傾けるモーメント、つまり傾斜モーメントが大きくなることが抑制され得る。したがって、偏心部材14が傾くことが抑制されるので、作動不良の発生が抑制され得る。
【0062】
偏心部材14は、第1内歯歯車11に回転可能に支持されている。これにより、偏心部材14に作用する荷重も第1内歯歯車11にて受ける構成となるので、傾斜モーメントの発生が確実に抑制され得るので、作動不良の発生が抑制され得る。
【0063】
第1本体部11Bには、第2本体部12B側に突出して偏心部材14を回転可能に支持する軸受部15が設けられている。これにより、各荷重の作用点が回転中心軸線方向において大きくずれてしまうことが抑制され得る。
【0064】
つまり、
図7に示されるように、第2内歯歯車12が第1内歯歯車11に作用させる荷重を荷重F1とし、偏心部材14が軸受部15に作用させる荷重を荷重F2としたとき、荷重F1及び荷重F2の作用点は、共に外歯歯車13の厚み範囲内に収まる。したがって、各荷重の作用点が回転中心軸線方向において大きくずれてしまうことが抑制され得る。
【0065】
穴部12Hの内壁と偏心部材14との間には隙間12Jが設けられている。これにより、第2内歯歯車12に作用する荷重が、偏心部材14に作用してしまうことが確実に抑制され得る。したがって、各荷重の作用点が回転中心軸線方向において大きくずれてしまうことが抑制され得る。
【0066】
(第2実施形態)
本実施形態に係る歯車装置20は、上述の実施形態に係る歯車装置10に対して、偏心部材14の小型化され、かつ、ブッシング17が廃止されたものである。
【0067】
以下の説明は、上述の実施形態に係る歯車装置10との相違点に関する説明である。なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。このため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。
【0068】
図11に占めされるように、本実施形態に係る偏心部材24の偏心カム24Cは、三日月状構成されている。つまり、本実施形態に係る偏心カム24Cは、環状ではなく、回転中心軸線Loに対して回転中心L1と反対側が欠けた形状である。
【0069】
(その他の実施形態)
上述の実施形態に係る軸受部15は、第1本体部11B(第1内歯歯車11)と別部品として製造された後、圧入により第1本体部11Bに一体化されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、軸受部15が第1本体部11Bと共に一体成形された一体品であってもよい。
【0070】
上述の実施形態では、駆動シャフト8Aが軸受部15を貫通する構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、駆動シャフト8Aが軸受部15を貫通しない構成であってもよい。
【0071】
上述の実施形態では、第1内歯歯車11に駆動リンク7Aが固定され、第2内歯歯車12に支持アーム7Bが固定されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、第1内歯歯車11に支持アーム7Bが固定され、第2内歯歯車12に駆動リンク7Aが固定されていてもよい。
【0072】
上述の実施形態では、電動モータ8が駆動リンク7Aに固定されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、電動モータ8が支持アーム7Bに固定されていてもよい。
【0073】
上述の実施形態に係る歯車装置10はオットマン装置に組み込まれた例であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、ヘッドレストの傾斜角度を電動調整するための機構にも適用可能である。
【0074】
上述の実施形態では、車両に本開示に係る乗物用シートを適用した。しかし、本明細書に開示された発明の適用はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、鉄道車両、船舶及び航空機等の乗物に用いられるシート、並びに劇場や家庭用等に用いられる据え置き型シートにも適用できる。
【0075】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0076】
10… 歯車装置
11… 第1内歯歯車
12… 第2内歯歯車
13… 外歯歯車
14… 偏心部材
15… 軸受部