(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】情報処理装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G03G 15/01 20060101AFI20240611BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240611BHJP
B41J 29/393 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G03G15/01 Y
G03G15/00 303
B41J29/393 101
(21)【出願番号】P 2020052154
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000039
【氏名又は名称】特許業務法人アイ・ピー・ウィン
(72)【発明者】
【氏名】横橋 麻美
【審査官】藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-217163(JP,A)
【文献】特開2011-004167(JP,A)
【文献】特開2014-102443(JP,A)
【文献】特開2010-197482(JP,A)
【文献】特開2009-003178(JP,A)
【文献】特開2017-198771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/01
G03G 15/00
G03G 21/00
G03G 21/14
B41J 29/393
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリとプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
出力する画像に対する画像処理を行う画像処理部と、前記画像処理部において画像処理された画像を記録媒体上に出力する画像出力部とを備えた画像形成装置に対して、複数のテスト画像から構成される測色用パターンを出力するよう指示し、
前記測色用パターンに含まれる前記複数のテスト画像のうちの単色の最大濃度のテスト画像の濃度値と、画像を出力する際に使用する記録媒体の特性に応じて決定される目標値との差が予め設定された値以上の場合、又は単位面積当たりにおいて使用される色材の量が予め設定された値以上の多重色のテスト画像の測色値と前記目標値との色差が予め設定された値以上の場合、前記画像出力部において再設定を行うべきであると通知し、前記測色用パターンに含まれる前記複数のテスト画像のうちの単色の最大濃度のテスト画像の濃度値と、前記目標値との差が予め設定された値以上ではない場合、かつ、単位面積当たりにおいて使用される色材の量が予め設定された値以上の多重色のテスト画像の測色値と前記目標値との色差が予め設定された値よりも小さい場合、前記画像処理部において再設定を行うべきであると通知する
、
情報処理装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記画像出力部において再設定を行うべきであると通知する際に、前記画像出力部における機械的な出力条件を調整すべきであると通知する請求項
1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記画像出力部における機械的な出力条件が、中間転写体上に形成された色材像を記録媒体に転写するための転写電圧の条件と、記録媒体上に形成された色材像を定着させるための定着温度の条件である請求項
2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記画像処理部において再設定を行うべきであると通知する際に、当該画像処理部における色変換係数を調整すべきであると通知する請求項
1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
出力する画像に対する画像処理を行う画像処理部と、前記画像処理部において画像処理された画像を記録媒体上に出力する画像出力部とを備えた画像形成装置に対して、複数のテスト画像から構成される測色用パターンを出力するよう指示するステップと、
前記測色用パターンに含まれる前記複数のテスト画像のうちの単色の最大濃度のテスト画像の濃度値と、画像を出力する際に使用する記録媒体の特性に応じて決定される目標値との差が予め設定された値以上の場合、又は単位面積当たりにおいて使用される色材の量が予め設定された値以上の多重色のテスト画像の測色値と前記目標値との色差が予め設定された値以上の場合、前記画像出力部において再設定を行うべきであると通知し、前記測色用パターンに含まれる前記複数のテスト画像のうちの単色の最大濃度のテスト画像の濃度値と、前記目標値との差が予め設定された値以上ではない場合、かつ、単位面積当たりにおいて使用される色材の量が予め設定された値以上の多重色のテスト画像の測色値と前記目標値との色差が予め設定された値よりも小さい場合、前記画像処理部において再設定を行うべきであると通知するステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、面積率100%で単色トナー像を形成させて紙に転写させ、それを定着手段で定着させた後のトナー像を測色し、その色の色空間座標及び所定の再現目標色の色空間座標に基づいてトナー付着量が最適となるように画像形成条件に設定し、この画像形成条件にて画像形成手段で面積率100%の単色トナー像を形成させて転写させ、それを定着手段で定着させた後のトナー像を測色し、その色の色空間座標及び所定の再現目標色の色空間座標に基づいて定着条件を制御するようにした画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、出力する画像に対する画像処理を行う画像処理部と、前記画像処理部において画像処理された画像を記録媒体上に出力する画像出力部とを備えた画像形成装置から出力される画像の色を目標値に近づける再設定を行う際に、画像処理部と画像出力部のいずれにおいて再設定を行った方が、より少ない手間で出力される画像の色を目標値に近づけることができるかをユーザに通知することが可能な情報処理装置およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[情報処理装置]
請求項1に係る本発明は、
メモリとプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
出力する画像に対する画像処理を行う画像処理部と、前記画像処理部において画像処理された画像を記録媒体上に出力する画像出力部とを備えた画像形成装置に対して、複数のテスト画像から構成される測色用パターンを出力するよう指示し、
前記測色用パターンに含まれる前記複数のテスト画像のうちの単色の最大濃度のテスト画像の濃度値と、画像を出力する際に使用する記録媒体の特性に応じて決定される目標値との差が予め設定された値以上の場合、又は単位面積当たりにおいて使用される色材の量が予め設定された値以上の多重色のテスト画像の測色値と前記目標値との色差が予め設定された値以上の場合、前記画像出力部において再設定を行うべきであると通知し、前記測色用パターンに含まれる前記複数のテスト画像のうちの単色の最大濃度のテスト画像の濃度値と、前記目標値との差が予め設定された値以上ではない場合、かつ、単位面積当たりにおいて使用される色材の量が予め設定された値以上の多重色のテスト画像の測色値と前記目標値との色差が予め設定された値よりも小さい場合、前記画像処理部において再設定を行うべきであると通知する情報処理装置である。
【0009】
請求項2に係る本発明は、前記プロセッサが、前記画像出力部において再設定を行うべきであると通知する際に、前記画像出力部における機械的な出力条件を調整すべきであると通知する請求項1に記載の情報処理装置である。
【0010】
請求項3に係る本発明は、前記画像出力部における機械的な出力条件が、中間転写体上に形成された色材像を記録媒体に転写するための転写電圧の条件と、記録媒体上に形成された色材像を定着させるための定着温度の条件である請求項2に記載の情報処理装置である。
【0011】
請求項4に係る本発明は、前記プロセッサが、前記画像処理部において再設定を行うべきであると通知する際に、当該画像処理部における色変換係数を調整すべきであると通知する請求項1に記載の情報処理装置である。
【0012】
[プログラム]
請求項5に係る本発明は、出力する画像に対する画像処理を行う画像処理部と、前記画像処理部において画像処理された画像を記録媒体上に出力する画像出力部とを備えた画像形成装置に対して、複数のテスト画像から構成される測色用パターンを出力するよう指示するステップと、
前記測色用パターンに含まれる前記複数のテスト画像のうちの単色の最大濃度のテスト画像の濃度値と、画像を出力する際に使用する記録媒体の特性に応じて決定される目標値との差が予め設定された値以上の場合、又は単位面積当たりにおいて使用される色材の量が予め設定された値以上の多重色のテスト画像の測色値と前記目標値との色差が予め設定された値以上の場合、前記画像出力部において再設定を行うべきであると通知し、前記測色用パターンに含まれる前記複数のテスト画像のうちの単色の最大濃度のテスト画像の濃度値と、前記目標値との差が予め設定された値以上ではない場合、かつ、単位面積当たりにおいて使用される色材の量が予め設定された値以上の多重色のテスト画像の測色値と前記目標値との色差が予め設定された値よりも小さい場合、前記画像処理部において再設定を行うべきであると通知するステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る本発明によれば、出力する画像に対する画像処理を行う画像処理部と、前記画像処理部において画像処理された画像を記録媒体上に出力する画像出力部とを備えた画像形成装置から出力される画像の色を目標値に近づける再設定を行う際に、画像処理部と画像出力部のいずれにおいて再設定を行った方が、より少ない手間で出力される画像の色を目標値に近づけることができるかをユーザに通知することが可能な情報処理装置を提供することができる。
【0017】
請求項2に係る本発明によれば、出力する画像に対する画像処理を行う画像処理部と、前記画像処理部において画像処理された画像を記録媒体上に出力する画像出力部とを備えた画像形成装置から出力される画像の色を目標値に近づける再設定を行う際に、画像処理部と、画像出力部の機械的な出力条件のいずれにおいて再設定を行った方が、より少ない手間で出力される画像の色を目標値に近づけることができるかをユーザに通知することが可能な情報処理装置を提供することができる。
【0018】
請求項3に係る本発明によれば、出力する画像に対する画像処理を行う画像処理部と、前記画像処理部において画像処理された画像を記録媒体上に出力する画像出力部とを備えた画像形成装置から出力される画像の色を目標値に近づける再設定を行う際に、画像処理部と、画像出力部の転写電圧、定着温度という機械的な出力条件のいずれにおいて再設定を行った方が、より少ない手間で出力される画像の色を目標値に近づけることができるかをユーザに通知することが可能な情報処理装置を提供することができる。
【0019】
請求項4に係る本発明によれば、出力する画像に対する画像処理を行う画像処理部と、前記画像処理部において画像処理された画像を記録媒体上に出力する画像出力部とを備えた画像形成装置から出力される画像の色を目標値に近づける再設定を行う際に、画像処理部における色変換係数と、画像出力部のいずれにおいて再設定を行った方が、より少ない手間で出力される画像の色を目標値に近づけることができるかをユーザに通知することが可能な情報処理装置を提供することができる。
【0020】
請求項5に係る本発明によれば、出力する画像に対する画像処理を行う画像処理部と、前記画像処理部において画像処理された画像を記録媒体上に出力する画像出力部とを備えた画像形成装置から出力される画像の色を目標値に近づける再設定を行う際に、画像処理部と画像出力部のいずれにおいて再設定を行った方が、より少ない手間で出力される画像の色を目標値に近づけることができるかをユーザに通知することが可能なプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態の印刷システムのシステム構成を示す図である。
【
図2】用紙の特性値に基づいて印刷条件パラメータを設定する際に使用される印刷条件管理テーブルの一例を示す図である。
【
図3】用紙情報管理サーバ70に記憶されている用紙データベースの一例を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態の印刷システムにおける端末装置20のハードウェア構成を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態の印刷システムにおける端末装置20の機能構成を示す図である。
【
図6】端末装置20において実行される色精度判定処理を説明するためのフローチャートである。
【
図7】印刷装置10から出力される評価チャートの一例を示す図である。
【
図8】色精度に問題が無い旨を表示部34に表示した際の表示画面の一例を示す図である。
【
図9】
図6のフローチャートのステップS106における調整すべきパラメータの判定処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【
図10】用紙の種類と単色濃度の基準値とが対応付けられた対応テーブルの一例を示す図である。
【
図11】印刷条件パラメータを調整すべきである旨を表示部34に表示した際の表示画面の一例を示す図である。
【
図12】CMSパラメータを調整すべきである旨を表示部34に表示した際の表示画面の一例を示す図である。
【
図13】様々なカバレッジのパッチ画像の測色値と目標値との色差平均を、印刷条件パラメータが適切な場合と適切でない場合とで示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
図1は本発明の一実施形態の印刷システムのシステム構成を示す図である。
【0024】
本発明の一実施形態の印刷システムは、
図1に示されるように、印刷装置10と端末装置20とがネットワーク30により相互に接続されるとともに、端末装置20がインターネット60を介して用紙情報管理サーバ70に接続された構成となっている。
【0025】
端末装置20は、印刷データを生成して、ネットワーク30経由にて生成した印刷データを印刷装置10に対して送信して印刷処理を実行する印刷制御装置である。なお、端末装置20は、パーソナルコンピュータに印刷装置10を制御するためのプログラムをインストールすることにより構成された情報処理装置である。印刷装置10は、帯電、露光、現像、転写、定着などの工程を経て印刷用紙等の記録媒体上に画像を印刷するための画像出力部を有し、端末装置20から送信された印刷データを受け付けて、印刷データに応じた画像を用紙上に出力する。
【0026】
そして、端末装置20には、用紙の平滑度を測定するメディアセンサ40と、測色器50とが接続されている。
【0027】
ここで、平滑度とは、用紙の表面の凸凹の程度、つまり平坦度合いを示す特性値である。この平坦度の具体的な試験方法はJIS規格により定められており、用紙の表面を吸引して減圧して一定量の空気が流入するまでの時間を平滑度として測定するようになっている。このため、平滑度は、秒(sec)を単位として表現される値となっている。そして、用紙が平坦なほど流入する空気の量が少なくなるため、平滑度の値は大きくなる。つまり、平滑度の値が大きいほど用紙の表面が滑らかであることを示し、平滑度の値が小さいほど用紙の表面が滑らかではないことを示している。例えば、コート紙のような用紙は平滑度が大きな値となる。
【0028】
なお、用紙の平滑度を表す指標としては、上述したような空気式の測定方法による値だけでなく、光を照射して反射光を測定して、測定された反射光の強度により用紙の平滑度を表すような指標が用いられる場合もある。
【0029】
測色器50は、印刷装置10により印刷された評価チャートにおけるパッチ画像を測色して、Lab色空間により表現された測色値として出力する。
【0030】
ここで、印刷装置10により印刷される画像の色は、使用される用紙の特性値によって変化する。ここで、用紙の特性値としては、上述した平滑度だけでなく、1平方m当たりの重量である坪量(g/m2)や、用紙の白色度合いを示すLab値等の様々な値が存在するが、本実施形態では平滑度を用紙の代表的な特性値として用いた場合について説明する。
【0031】
そして、印刷装置10により印刷される画像の色が使用される用紙の特性値によって変化するため、印刷装置10により印刷処理を実行する際には、使用する用紙の特性値に合わせて、印刷装置10の印刷条件パラメータが設定される。
【0032】
ここで、印刷条件パラメータとは、印刷装置10における機械的な出力条件、例えば、中間転写体である中間ベルト上に形成されたトナー像を記録媒体である用紙に転写するための転写電圧の条件と、用紙上に形成されたトナー像を定着させるための定着温度の条件である。
【0033】
なお、印刷条件パラメータには、実際には転写電圧の条件や定着温度の条件以外の様々な条件が含まれるが、本実施形態では、この2つの条件を印刷条件パラメータとした場合について説明する。
【0034】
このように用紙の特性値に基づいて印刷条件パラメータを設定する際に使用される印刷条件管理テーブルの一例を
図2に示す。
【0035】
この印刷条件管理テーブルでは、
図2を参照すると、用紙A~Dという用紙名毎に、坪量及び平滑度という用紙の特性値と、転写電圧調整値、定着温度という印刷条件パラメータとが対応付けられている。ここで、転写電圧調整値とは、ある基準となる転写電圧に対して、どれだけ電圧値を変化させるかをパーセント表示により表したものである。
【0036】
このような印刷条件管理テーブルが印刷装置10において記憶されていることにより、印刷する際に使用する用紙の特性値を設定することにより、その特性値に対応した印刷条件が自動的に設定されるようになっている。
【0037】
なお、具体的には、印刷する際に使用する用紙の平滑度をメディアセンサ40により測定して、その平滑度を端末装置20から印刷装置10に登録することにより印刷条件の設定が行われる。なお、この印刷条件管理テーブルにおいて、印刷する際に使用する用紙の特性値が登録されていない場合には、新たな用紙名を登録して用紙の特性値を設定することにより、設定された特性値に適した転写電圧調整値と定着温度とが自動的に設定される。
【0038】
次に、用紙情報管理サーバ70について説明する。用紙情報管理サーバ70には、用紙の特性値と、CMYK各色の単色濃度の目標値とが対応付けられた用紙データベースが記憶されている。この用紙情報管理サーバ70に記憶されている用紙データベースの一例を
図3に示す。
【0039】
この用紙データベースでは、
図3を参照すると、用紙A~Dという用紙名毎に、坪量及び平滑度という用紙の特性値と、CMYKの各色の単色濃度の目標値とが対応付けられているのが分かる。この単色濃度の目標値とは、最高濃度で単色の印刷を行った際に得られる濃度の目標値である。
【0040】
なお、端末装置20において、この用紙データベースをどのように利用するかについては後述する。
【0041】
次に、本実施形態の印刷システムにおける端末装置20のハードウェア構成を
図4に示す。
【0042】
端末装置20は、
図4に示されるように、CPU11、メモリ12、ハードディスクドライブ等の記憶装置13、ネットワーク30を介して外部の装置等との間でデータの送信及び受信を行う通信インタフェース(IFと略す。)14、タッチパネル又は液晶ディスプレイ並びにキーボードを含むユーザインタフェース(UIと略す。)装置15を有する。これらの構成要素は、制御バス16を介して互いに接続されている。
【0043】
CPU11は、メモリ12または記憶装置13に格納された制御プログラムに基づいて所定の処理を実行して、端末装置20の動作を制御するプロセッサである。なお、本実施形態では、CPU11は、メモリ12または記憶装置13内に格納された制御プログラムを読み出して実行するものとして説明するが、当該プログラムをCD-ROM等の記憶媒体に格納してCPU11に提供することも可能である。
【0044】
図5は、上記の制御プログラムが実行されることにより実現される端末装置20の機能構成を示すブロック図である。
【0045】
本実施形態の端末装置20は、
図5に示されるように、用紙情報取得部31と、色精度判定部32と、色精度目標値記憶部33と、表示部34と、画像処理部35と、印刷制御部36とを備えている。
【0046】
画像処理部35は、出力する画像に対して、予め設定されたCMS(Color Management System)パラメータを用いて色変換、階調補正等の各種画像処理を行う。ここで、CMSパラメータとは、例えば、CMYK空間の画像データを別のCMYK空間に変換するような色変換を行うような4次元のLUT(look Up Table)のような色変換プロファイルである。
【0047】
印刷制御部36は、画像処理部35において画像処理された画像を記録媒体である用紙上に出力するよう印刷装置10に対する印刷指示を行って印刷装置10の動作を制御する。
【0048】
そして、印刷制御部36は、印刷装置10により出力される画像の色の精度を判定する際には、複数のパッチ画像から構成される測色用パターンである評価チャートを出力するよう印刷装置10に対する指示を行う。この評価チャートに含まれる複数のパッチ画像は、それぞれ、予め設定された色により印刷され、印刷された色の色値が目標とする値からずれていなかを確認するためのテスト画像である。
【0049】
用紙情報取得部31は、メディアセンサ40により検出された用紙の特性値、例えば平滑度の情報を用紙情報管理サーバ70に送信して、用紙情報管理サーバ70から、その特性値を有する用紙に単色の最高濃度の画像を印刷した場合に得られるべき濃度の目標値をCMYKの色毎に取得する。
【0050】
例えば、
図3に示したような用紙データベースが用紙情報管理サーバ70に登録されている場合、用紙情報取得部31が平滑度の値として410(sec)という情報を用紙情報管理サーバ70に送信すると、K(ブラック)濃度が1.7、C(シアン)濃度が1.5、M(マゼンタ)濃度が1.3、Y(イエロー)濃度が1.4という単色濃度の目標値を取得する。
【0051】
ここで、単色とは、1種類のトナーのみを用いて表される色である。また、以下において説明する多重色とは、少なくとも2種類以上のトナーを組み合わせて表される色である。
【0052】
色精度目標値記憶部33は、評価チャートに含まれる各パッチ画像の色の目標値のデータを記憶する。
【0053】
色精度判定部32は、測色器50により測色された評価チャート中の各パッチ画像の測色値と、色精度目標値記憶部33に記憶されている各パッチ画像の目標値との色差を算出して、印刷装置10により印刷される画像の色に問題が無いか否かを判定する色精度判定を行う。ここで、算出された色差が、予め設定された基準値以内であれば色精度は問題無いと判定され、予め設定された基準値以上の場合、つまり測色値と目標値とが大きく離れている場合には色精度に問題があると判定される。
【0054】
そして、色精度判定部32により行われた色精度判定の判定結果は表示部34を介してユーザに通知される。
【0055】
このようにして色精度判定部32により行われる色精度判定において、算出された色差の平均値である平均色差が予め設定された基準値以内の場合には色精度に問題無い旨がユーザに通知される。
【0056】
一般的に、印刷装置10をある場所に設置して印刷処理を開始する際には、このような色精度判定が行われ、色精度に問題が無い状態で印刷処理が開始される。しかし、使用する用紙のロット間のばらつきや、印刷装置10が使用されている場所の環境等により用紙の特性値が変化したり、印刷装置10の経年変化により印刷条件パラメータが最適なものではなくなったりする場合がある。そのため、上記のような色精度判定は、定期的に行われたり、印刷結果の色味に問題がある場合に行われたりする。
【0057】
しかし、この色精度判定において色精度に問題があるとされた場合、ユーザは、画像処理部35において設定されているCMSパラメータ、または印刷装置10において設定されている印刷条件パラメータのいずれかのパラメータを再調整して、色精度を問題無いようにしなければならない。
【0058】
ここで、CMSパラメータを再設定することにより調整できる範囲はあまり広くなく、定着温度や転写電圧のような印刷条件パラメータが最適ではない場合、色精度を目標値まで近づけることができない場合もある。このような場合にCMSパラメータだけで色精度を目標値まで到達させようとして、何度も評価チャートの印刷、印刷された評価チャートの測色等の作業を繰り返しても、最終的には色精度を目標値に到達させることはできないことになる。
【0059】
また、印刷条件パラメータの再設定を行うことにより色精度を目標値に近づけようとした場合、印刷装置10における印刷特性がそもそも変化してしまうため、CMSパラメータも再設定しなければならなくなる等の大きな手間が発生する。そのため、CMSパラメータで調整可能な場合にまで印刷条件パラメータの再設定を行ってしまうと色精度を目標値まで到達させるための手間がかかり過ぎてしまうことになる。
【0060】
そして、一般的なユーザでは、色精度に問題がある場合、CMSパラメータを調整すべきなのか印刷条件パラメータを調整すべきなのかを判定することは難しい。
【0061】
そこで、本実施形態の端末装置20では、色精度判定部32により下記のような処理を行うことにより、印刷装置10から出力される画像の色を目標値に近づける再設定を行う際に、CMSパラメータと印刷条件パラメータのいずれのパラメータの再設定を行った方が、より少ない手間で出力される画像の色を目標値に近づけることができるかをユーザに通知するようにしている。
【0062】
具体的には、色精度判定部32は、色精度に問題があると判定した場合、出力された評価チャートの各パッチ画像の色を測色器50により測定した測定値と、画像を出力する際に使用する用紙の特性に応じて決定される目標値との差に基づいて、画像処理部35において再設定を行うべきなのか、印刷装置10の画像出力部において再設定を行うべきであるのかを表示部34を介してユーザに通知する。
【0063】
より具体的には、色精度判定部32は、評価チャートに含まれる複数のパッチ画像のうちのCMYKそれぞれの単色の最大濃度のパッチ画像の濃度値と、用紙の特性に応じて決定される目標値との差が予め設定された値以上の場合に、印刷装置10の画像出力部において再設定を行うべきであるとユーザに通知する。
【0064】
また、色精度判定部32は、評価チャートに含まれる複数のパッチ画像のうちのCMYKそれぞれの単色の最大濃度のパッチ画像の濃度値と、用紙の特性に応じて決定される目標値との差が予め設定された値以上ではない場合でも、単位面積当たりにおいて使用されるトナー量であるカバレッジが予め設定された値以上の多重色のパッチ画像の測色値と目標値との色差が予め設定された値以上の場合、印刷装置10の画像出力部において再設定を行うべきであるとユーザに通知する。
【0065】
ここで、トナー量とは、記録媒体上の単位面積当たりに使用されるトナーの量、例えばトナー重量(g/m2)を意味するが、以下の説明では、単位面積、例えば1ピクセル当たり使用する各色トナーの量の最大値を100%とした場合の、印刷する際に使用する各色のトナー量の割合を%で示した値であるトナーカバレッジ(以降単にカバレッジと略す。)で表現する。
【0066】
また、色精度判定部32は、評価チャートに含まれる複数のパッチ画像のうちのCMYKそれぞれの単色の最大濃度のパッチ画像の濃度値と、用紙の特性に応じて決定される目標値との差が予め設定された値以上ではない場合、単位面積当たりにおいて使用されるトナー量であるカバレッジが予め設定された値以上の多重色のテスト画像の測色値と目標値との色差が予め設定された値よりも小さい場合、画像処理部35のCMSパラメータにおいて再設定を行うべきであるとユーザに通知する。
【0067】
ここで、色精度判定部32は、印刷装置10の画像出力部において再設定を行うべきであると通知する際に、この画像出力部における機械的な出力条件、例えば、中間転写体上に形成されたトナー像を用紙に転写するための転写電圧の条件と、用紙上に形成されたトナー像を定着させるための定着温度の条件を調整すべきであるとユーザに通知する。
【0068】
そして、色精度判定部32は、画像処理部35において再設定を行うべきであると通知する際には、この画像処理部35において設定されている色変換係数であるCMSパラメータを調整すべきであるとユーザに通知する。
【0069】
次に、本実施形態の印刷システムにおける端末装置20の動作について図面を参照して詳細に説明する。
【0070】
まず、端末装置20において実行される色精度判定処理について
図6のフローチャートを参照して説明する。
【0071】
まず、色精度判定処理を行う際には、印刷制御部36は、ステップ101において、色精度判定処理を行うための測色用パターンである評価チャートを印刷装置10から出力させる。
【0072】
このようにして印刷装置10から出力される評価チャートの一例を
図7に示す。
図7を参照すると、この評価チャートは、CMYK各色の最高濃度、つまりカバレッジが100%のパッチ画像からなる単色パッチ画像71と、CMYK色のうちの少なくとも2色以上が組わせられて構成されている多重色パッチ画像72とから構成されている。
【0073】
ここで、単色パッチ画像71の各色のパッチ画像については画像処理部35において色変換プロファイルによる色変換が行われない画像データに基づいて印刷される。そして、多重色パッチ画像72のそれぞれのパッチ画像については画像処理部35において色変換プロファイルによる色変換が行われた画像データに基づいて印刷される。
【0074】
なお、本実施形態では、色精度判定処理に用いる評価チャートと、色精度判定処理で色精度に問題があると判定した際に、CMSパラメータと印刷条件パラメータのいずれかで再設定を行うべきかを判定するための評価チャートとを同一のものした場合について説明するが、それぞれの評価チャートを別構成とするようにしても良い。
【0075】
そして、色精度判定部32は、ステップS102において、このような評価チャートの各パッチ画像を測色器50により測色して得られた測色値を入力する。
【0076】
すると、色精度判定部32は、ステップS103において、色精度目標値記憶部33に記憶されている各パッチ画像の目標値と、入力された各パッチ画像の測色値との色差をそれぞれ計算する。
【0077】
そして、色精度判定部32は、ステップS104において、計算により得られた色差の平均値である平均色差が、予め設定された基準値を超えているか否かを判定する。
【0078】
ここで、平均色差が基準値を超えていない場合には、色精度判定部32は、ステップS105において、色精度に問題が無い旨を表示部34に表示する。このようにして表示部34に表示される画面の一例を
図8に示す。
【0079】
図8を参照すると、「色精度は問題ありません。」という文字が画面上に表示されており、現在の状態で印刷装置10から出力される画像の色精度は目標を満たしていることがユーザに通知されているのが分かる。
【0080】
そして、ステップS104において、平均色差が基準値以上の場合には、色精度判定部32は、ステップS106において、CMSパラメータを調整すべきであるのか印刷条件パラメータを調整すべきであるのかを判定して、判定結果をユーザに通知する処理を実行する。
【0081】
このステップS106における調整すべきパラメータの判定処理の詳細を
図9のフローチャートを参照して説明する。
【0082】
まず、用紙情報取得部31は、ステップS201において、メディアセンサ40により測定された用紙の特性値である平滑度に基づいて、用紙情報管理サーバ70に登録されている用紙データベースから、単色濃度の基準値を取得する。
【0083】
なお、用紙の平滑度のような特性値が得られない場合には、用紙情報取得部31は、用紙の種類に基づいて単色濃度の基準値を取得するようにしても良い。具体的には、予め
図10に示すような対応テーブルが用意されている場合には、用紙情報取得部31は、印刷処理において使用する用紙種類に対応した単色濃度の基準値を取得することができる。
【0084】
次に、色精度判定部32は、ステップS202において、測色器50により測色された測色値のうちの単色パッチ画像71のそれぞれの濃度の測定値と、用紙情報取得部31により取得された単色濃度の目標値とを比較する。なお、本実施形態では、この目標値と測色値の大きさを単純に比較するのでは、目標値に0.9を乗算した値と測色値とを比較するものとして説明する。
【0085】
そして、色精度判定部32は、ステップS203において、単色パッチ画像71のそれぞれの濃度の測定値が、基準値に0.9を乗算した値よりも小さい場合、ステップS204において、印刷条件パラメータを調整すべきである旨を表示部34に表示する。このようにして表示部34に表示される画面の一例を
図11に示す。
【0086】
図11を参照すると、「色精度に問題があります。用紙設定を再登録して、転写電圧、定着温度等の印刷条件パラメータを最適化して下さい。」という文字が画面上に表示されており、印刷装置10の印刷条件パラメータを再調整すべきである旨がユーザに通知されているのが分かる。
【0087】
ここで、用紙設定を再登録するという意味は、
図2に示したような印刷条件管理テーブルにおいて、新たな用紙名を追加して、現在使用している用紙の特性値を新たに登録して、その特性値に応じた転写電圧調整値や定着温度を印刷条件パラメータとして設定することを意味する。
【0088】
また、色精度判定部32は、ステップS203において、単色パッチ画像71のそれぞれの濃度の測定値が、基準値に0.9を乗算した値以上の場合、ステップS205において、多重色パッチ画像72の各パッチ画像のうちカバレッジが200%以上のパッチ画像の目標値と測色値との色差を計算する。
【0089】
そして、色精度判定部32は、ステップS206において、計算した色差の平均値である平均色差が、予め設定された基準値例えば10より大きいか否かを判定する。
【0090】
このステップS206において、平均色差が10よりも大きい場合には、色精度判定部32は、ステップS204において、印刷条件パラメータを調整すべきである旨を表示部34に表示する。
【0091】
また、このステップS206において、平均色差が10以下の場合には、色精度判定部32は、ステップS207において、CMSパラメータを調整すべきである旨を表示部34に表示する。このようにして表示部34に表示される画面の一例を
図12に示す。
【0092】
図12を参照すると、「色精度に問題があります。色変換プロファイル、階調調整等のCMSパラメータを調整して下さい。」という文字が画面上に表示されており、CMSパラメータを再調整すべきである旨がユーザに通知されているのが分かる。
【0093】
次に、
図9に示したような処理により印刷条件パラメータとCMSパラメータのうちのいずれのパラメータの調整を行うべきかが判定できる理由を以下において説明する。
【0094】
まず、印刷条件パラメータが使用する用紙の特性値に対して適切でない場合、出力可能な最大濃度が低くなってしまう。そのため、色精度に問題がある場合でもCMSパラメータをいくら調整しようとしても色精度を目標まで到達させることができない場合がある。
【0095】
そのため、色精度判定部32は、まずは単色の最高濃度のパッチ画像の濃度を、その用紙に応じた目標値以上となっているが、少なくとも90%以上となっているか否かを確認することにより、まずは印刷条件パラメータが用紙に対して適切に設定されているか否かを判定している。
【0096】
そして、この判定処理において、単色の最高濃度のパッチ画像の濃度が、目標値の90%にも満たないような場合には、色精度判定部32は、まずは印刷条件パラメータを調整すべき旨をユーザに通知するのである。
【0097】
そして、単色の最高濃度、つまりカバレッジが100%の場合には色精度が問題無い場合でも、カバレッジが100%よりも大きくなる多重色の場合には色精度に問題が発生する場合もある。つまり、CMYKそれぞれのカバレッジが全て100%の場合にはその画像のカバレッジは400%となるため、トナー画像の転写や定着が適切に行われない可能性がある。
【0098】
そのため、色精度判定部32は、多重色パッチ画像72のうちのカバレッジが200%以上のパッチ画像を選択して、選択したパッチ画像の測色値と目標値との色差を算出して平均色差を求めているのである。
【0099】
ここで、色精度判定部32が、多重色パッチ画像72のうちのカバレッジが200%以上のパッチ画像のみを選択している理由について
図13を参照して説明する。
【0100】
図13を参照すると、様々なカバレッジのパッチ画像の測色値と目標値との色差平均を、印刷条件パラメータが適切な場合と適切でない場合とがグラフにより表されている。
【0101】
ここで、パッチ画像のカバレッジが150%ぐらいまでは、印刷条件パラメータが適切な場合と適切でない場合とで色差平均に大きな差が無いが、カバレッジが大きくなるにつれて色差平均の差が大きくなっているのが分かる。特に、カバレッジが200%を以上になるとその差が大きくなっているのが分かる。
【0102】
図13に示したグラフでは、カバレッジが200%以上になると、印刷条件パラメータが適切できない場合の色差平均は全て10以上となっているのが分かる。
【0103】
つまり、カバレッジが100%程度の場合であれば、トナーの転写や定着に問題が発生しないような場合でもカバレッジが200%以上になると、印刷条件パラメータが適切できないことによりトナーの転写や定着に問題が発生する場合があることが分かる。
【0104】
そのため、色精度判定部32は、カバレッジが200%以上のパッチ画像の目標値と測色値との差の平均値である平均色差が10よりも大きい場合には、印刷条件パラメータを調整すべきである旨をユーザに通知するようにしている。
【0105】
そして、色精度判定部32は、上記のような判定処理により、印刷条件パラメータは適切に設定されていると判定した場合には、CMSパラメータを調整して色精度を向上すれば良い旨をユーザに通知するようにしている。
【0106】
上記各実施形態において、プロセッサとは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit、等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス等)を含むものである。
【0107】
また上記各実施形態におけるプロセッサの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。また、プロセッサの各動作の順序は上記各実施形態において記載した順序のみに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0108】
[変形例]
上記実施形態では、端末装置20に画像処理部35と印刷制御部36が設けられている構成の場合を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、画像処理部35と印刷制御部36が印刷装置10内に設けられたような構成の画像形成装置の場合でも同様に本発明を適用することができるものである。
【符号の説明】
【0109】
10 印刷装置
11 CPU
12 メモリ
13 記憶装置
14 通信インタフェース
15 ユーザインタフェース装置
16 制御バス
20 端末装置
30 ネットワーク
31 用紙情報取得部
32 色精度判定部
33 色精度目標値記憶部
34 表示部
35 画像処理部
36 印刷制御部
40 メディアセンサ
50 測色器
60 インターネット
70 用紙情報管理サーバ
71 単色パッチ画像
72 多重色パッチ画像