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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/16 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
G03G21/16 133
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020052839
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021152588
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100141298
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 文典
(74)【代理人】
【識別番号】100187492
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 元啓
(72)【発明者】
【氏名】グェン バン ミン
【審査官】小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-133003(JP,A)
【文献】特開2016-179844(JP,A)
【文献】実開昭58-046504(JP,U)
【文献】特開2005-049446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/16
G03G 15/00
B41J 29/00-29/70
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面から側面に跨がる開口部を有する筐体と、該筐体に設けられた前記開口部の上方側を覆う上方カバーと、該開口部の側方を覆う側方カバーとを備えた画像形成装置であって、
前記側方カバーは、前記開口部の側方を覆う閉位置と、該閉位置から、該側方カバーの下側端縁部にて水平方向に延びる第一回転軸線回りに筐体側方の外側に回動して該開口部の側方を開放する開位置との間で移動可能であり、
前記上方カバーは、前記開口部の上方を覆う閉位置と、該閉位置から、前記開口部における前記筐体の前記側面側とは反対側の端縁部にて前記第一回転軸と平行に水平方向に延びる第二回転軸線回りに筐体上方の外側に回動して該開口部の上方を開放する開位置との間で移動可能であり、
前記上方カバーは、閉位置において前記開口部の上方を覆う上壁と、閉位置において該上壁における前記筐体の側面側の端縁部から該筐体の側面に沿って延びて前記開口部の側方の一部を覆う側壁とを備え、
前記側方カバーは、該側方カバーが閉位置にある状態で、前記上方カバーが開位置から閉位置に移動した場合に該上方カバーの前記側壁の裏面に対向する嵌合壁を有し、
前記側方カバーを閉位置に保持する閉保持機構をさらに備え、
前記閉保持機構は、前記上方カバーの前記側壁に設けられた係合部と、前記側方カバーの前記嵌合壁に設けられた被係合部とを有していて、前記側方カバーが閉位置にある状態で前記上方カバーを開位置から閉位置に移動させると、前記側方カバーの被係合部に前記上方カバーの係合部が前記筐体側方の外側から係合し、前記側方カバーが閉位置にある状態で前記上方カバーを閉位置から開位置に移動させると、該上方カバーの移動に伴って該係合が解除されるように構成され
前記上方カバーに設けられた係合部は、該上方カバーが閉位置にある状態で水平方向の筐体外側から内側に向かって下側に傾斜する係合面を有し、
前記側方カバーの被係合部は、該側方カバーが閉位置にある状態で、水平方向の筐体内側から外側に向かって上側に傾斜する被係合面を有し、
前記係合面および前記被係合面は、水平方向に対して20度以上30度以下の角度に設定されており、
前記係合部が前記被係合部に係合した状態では、前記被係合部の被係合面に対して、前記係合部の係合面が下方から当接する、画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、
前記上方カバーは、前記第二回転軸線に沿う方向において対向し、前記上壁及び前記側壁の双方に接続される一対の対向壁をさらに有している、画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成装置において、
前記閉保持機構は、前記係合部が、前記上方カバーにおける前記第一回転軸線に沿う方向の両端部に設けられ、前記被係合部が、前記フロントカバーの嵌合壁における前記係合部に対応する位置に設けられて構成されている、画像形成装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の画像形成装置において、
前記側方カバーには、手差し給紙トレイが取付けられ、
前記手差し給紙トレイは前記側方カバーに沿う姿勢で前記筐体の外壁面の一部を構成する収納状態と、前記側方の外側に向かって上方に傾斜する姿勢で上面に用紙が載置される使用状態とに切替え可能に構成されている、画像形成装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像形成装置において、
前記手差し給紙トレイは、収納状態において上端部に取手部を有するように構成され、
前記取手部は、前記給紙トレイにおける前記第一回転軸線に沿う方向の中央部に設けられ、
前記手差し給紙トレイは、下端部が前記筐体に対して回動可能に支持され、前記収納状態において前記取手部を操作して該下端部を支点に筐体側方の外側に回動させることで前記使用状態に切替え可能であり、
前記閉保持機構は、前記係合部及び被係合部を複数有していて、複数の前記係合部が、前記第一回転軸線に沿う方向において前記取手部に対して対称な位置に設けられ、複数の前記被係合部がそれぞれ、該複数の係合部に対応する位置に設けられて構成されている、画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、筐体に設けられた開口部の上方側を覆うトップカバーと、該開口部の側方を覆うフロントカバーとを備えた画像形成装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
フロントカバーは、開口部の側方を覆う閉位置と、該閉位置から、水平方向に延びる回転軸線回りに筐体側方の外側に回動して該開口部の側方を開放する開位置とに変位可能になっている。トップカバーは、前記開口部の上方を覆う閉位置と、該閉位置から、水平方向に延びる回転軸線回りに筐体上方の外側に回動して該開口部の上方を開放する開位置とに変位可能になっている。前記フロントカバーは、例えばフック部材を介して閉位置に保持される。フック部材は例えばフロントカバーに突設されており、フロントカバーが閉位置に移動した際にフック部材が筐体に設けられた突部に係合することでフロントカバーが閉位置に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-174690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の画像形成装置では、フロントカバー(側方カバー)に対して何らからの外力が作用した際に、側方カバーのフック部材と筐体側の突出部との係合が外れて側方カバーが意図せず開いてしまう場合があった。
【0006】
この問題に対して、側方カバーのフック部材と筐体側の突出部との係合代を大きくとって対応することが考えられる。
【0007】
しかし、側方カバーのフック部材と筐体側の突出部との係合代を大きくとると、側方カバーが閉位置で筐体に強固に固定されるため、ユーザーが筐体内部のメンテンナンス作業を行う際にフロントカバーを容易に開くことができないという問題ある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、側方カバーの開き易さ確保しつつ、側方カバーが意図しない外力により開いてしまうのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る画像形成装置は、上面から側面に跨がる開口部を有する筐体と、該筐体に設けられた前記開口部の上方側を覆う上方カバーと、該開口部の側方を覆う側方カバーとを備えている。
【0010】
そして、前記側方カバーは、前記開口部の側方を覆う閉位置と、該閉位置から、該側方カバーの下側端縁部にて水平方向に延びる第一回転軸線回りに筐体側方の外側に回動して該開口部の側方を開放する開位置との間で移動可能であり、前記上方カバーは、前記開口部の上方を覆う閉位置と、該閉位置から、前記開口部における前記筐体の前記側面側とは反対側の端縁部にて前記第一回転軸と平行に水平方向に延びる第二回転軸線回りに筐体上方の外側に回動して該開口部の上方を開放する開位置との間で移動可能であり、前記上方カバーは、閉位置において前記開口部の上方を覆う上壁と、閉位置において該上壁における前記筐体の側面側の端縁部から該筐体の側面に沿って延びて前記開口部の側方の一部を覆う側壁とを備え、前記側方カバーは、該側方カバーが閉位置にある状態で、前記上方カバーが開位置から閉位置に移動した場合に該上方カバーの前記側壁の裏面に対向する嵌合壁を有し、前記側方カバーを閉位置に保持する閉保持機構をさらに備え、前記閉保持機構は、前記上方カバーの前記側壁に設けられた係合部と、前記側方カバーの前記嵌合壁に設けられた被係合部とを有していて、前記側方カバーが閉位置にある状態で前記上方カバーを開位置から閉位置に移動させると、前記側方カバーの被係合部に前記上方カバーの係合部が前記筐体側方の外側から係合し、前記側方カバーが閉位置にある状態で前記上方カバーを閉位置から開位置に移動させると、該上方カバーの移動に伴って該係合が解除されるように構成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フロントカバーの開き易さ確保しつつ、フロントカバーが意図しない外力により開いてしまうのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係る画像形成装置を示す外観斜視図であって手差しトレイが閉じられた状態を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る画像形成装置を示す外観斜視図であって手差しトレイを開いた状態を示す図である。
図3図3は、画像形成装置の筐体を示す外観斜視図である。
図4図4は、図3のIV-IV線断面図である。
図5図5は、トップカバーの天井壁を省略して示す、該トップカバーの外観斜視図である。
図6図6は、フロントカバーを示す外観斜視図である。
図7図7は、筐体のトップカバーを開いた状態を示す外観斜視図である。
図8図8は、筐体のトップカバーとフロントカバーとの双方を開いた状態を示す外観斜視図である。
図9図9は、筐体のフロントカバーのみを開いた状態を示す外観斜視図である。
図10図10は、図7のX部における前後方向に沿った鉛直断面である。
図11図11は、図7のXI部における前後方向に沿った鉛直断面である。
図12図12は、図4におけるXII部を拡大して示す拡大図である。
図13図13は、フロントカバーの連結梁に設けられた溝部を拡大して示す拡大図である。
図14図14は、トップカバーの前側壁に設けられた係合突部を拡大して示す拡大図である。
図15図15は、トップカバーを開位置と閉位置との間で移動させる際の移動軌跡を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
《実施形態》
図1は、本実施形態に係る画像形成装置1を示す外観斜視図である。この画像形成装置1は、外部端末等から受信した画像データを印刷するプリンターである。尚、以下の説明において、前側、後側は、画像形成装置1の前側、後側を意味し、左側、右側は、画像形成装置1を前側から見たときの左側、右側を意味するものとする。
【0015】
画像形成装置1は、矩形箱状の樹脂部材からなる筐体2を備えている。筐体2の下部には給紙カセット3が前側に引き出し可能に装着されている。給紙カセット3内には、用紙が束状に積載されてセットされている。
【0016】
筐体2の前側面には、手差し給紙トレイ4が開閉可能に設けられている。手差し給紙トレイ4は下端部に設けられた支軸(図示せず)の回りに回動可能に支持されている。手差し給紙トレイ4は、収納状態では図1に示すように、上方カバー30及び側方カバー40と面一となる姿勢に側方カバー40に収納され、筐体2の外壁面の一部を構成している。一方、手差し給紙トレイ4は、使用状態では図2に示すように、前側に向かって上側に傾斜して配置される。手差し給紙トレイ4の上端部の左右方向の中央部には凹部形状の取手部4aが形成されており、ユーザーは取手部4aに指を掛けて、手差し給紙トレイ4を開くことでその上面に用紙を手でセット(載置)することができる。
【0017】
筐体2内における前記給紙カセット3の上側の空間内には、画像形成部と定着部と(いずれも図示せず)が収容されている。画像形成部は、給紙カセット3又は手差し給紙トレイ4より供給される記録材に対して電子写真方式によりトナー像を形成する。定着部は、記録材に形成されたトナー像を熱定着させる。筐体2の上面の周縁部の内側には、定着処理が完了した記録材を排出する排紙トレイ5が設けられている。筐体2の上面の前側且つ右側の隅部には、使用者が印刷条件の設定や印刷開始の指示等を行うための操作部6が設けられている。
【0018】
[筐体2の構成]
図3に示すように、筐体2は、筐体本体20、トップカバー30、及びフロントカバー40を備えている。トップカバー30が上方カバーに相当し、フロントカバー40が側方カバーに相当する。
【0019】
筐体本体20は略直方体状の樹脂製ケースからなる。筐体本体20の下端部には、前側に開放して給紙カセット3を着脱可能に収容する収容空間Sが設けられている。筐体本体20の前側端部における収容空間Sの上側には開口部21が設けられている。この開口部21は、作業者が筐体2の内部にアクセスして機器のメンテナンス(消耗品の交換やジャム処理等)を行うために設けられている。開口部21は、筐体本体20の上面における右側端部から前側面の上下方向の中間部付近に亘って形成されている(例えば図8等参照)。
【0020】
図3及び図4に示すように、開口部21は、トップカバー30及びフロントカバー40により開閉可能に覆われている。以下の説明では、特に断らない限り、トップカバー30及びフロントカバー40が閉位置にあるものとして説明を行う。
【0021】
[トップカバー30の構成]
トップカバー30は、開口部21を上側から開閉可能に覆うカバーである。具体的には、トップカバー30は、図3図5に示すように、天井壁31(図5では二点鎖線で示す)と一対の対向壁32と前側壁33とを有するケース状をなしている。
【0022】
天井壁31は、筐体2の上面の右側端部にて左右方向の全体に亘って延びる矩形板状をなしている。一対の対向壁32は、天井壁31の左右方向の両側端縁から下側に垂下している。前側壁33は、天井壁31の前側端縁から下側に垂下している。前側壁33の左右方向の両側端縁は、一対の対向壁32の前側端縁に接続されている。
【0023】
図4に示すように、トップカバー30は、筐体本体20の左右両側壁の内面に突設された支持ピン51(図4では左側の支持ピン51のみ示す)に、回動ブラケット52を介して支持されている。トップカバー30は、支持ピン51を支点に回動ブラケット52と共に回動可能になっている。そして、トップカバー30は、筐体本体20の上面を覆う閉位置と、該閉位置から、支持ピン51を支点に上側に回動して開口部21を開放する開位置との間で変位可能になっている。尚、支持ピン51が、開口部21における筐体2の側面側とは反対側の端縁部にて第一回転軸線と平行に水平方向に延びる第二回転軸線に相当する。
【0024】
[フロントカバー40の構成]
図6に示すように、フロントカバー40は、前後方向にて対向する左右の円弧柱41と、該左右の円弧柱41の上端同士を連結する連結梁42とを有している。そして、フロントカバー40は、前側から見ると下側に開放するコ字状をなしている。左右の円弧柱41と連結梁42との内側の開放部43には、手差し給紙トレイ4が開閉可能に装着される。
【0025】
左右の円弧柱41は、上側から見て筐体本体20の前側の二つの隅部に配置される。左右の円弧柱41の下端部は、図4に示すように、筐体本体20の内面に突設された支持ピン53に回動可能に支持されている。フロントカバー40は、筐体本体20の開口部21を前側から覆う閉位置と、該閉位置から、支持ピン53(前記第一回転軸線)を支点に前側(図4の右側)に回動して該開口部21を開放する開位置との間で変位可能になっている。尚、支持ピン53の軸線が、フロントカバー40の下側端縁部にて水平方向に延びる第一回転軸線に相当する。
【0026】
図6に戻って、左右の円弧柱41の上端部及び前記連結壁42の上端部には、嵌合壁41bが立設されている。嵌合壁41bは、左右の円弧柱41に対して段差面41aを介して立設されている。段差面41aは、トップカバー30を開位置から閉位置に移動させた際にその下端面に当接することでトップカバー30を水平に保持する。嵌合壁41bは、各円弧柱41に沿った円弧状部41cと連結壁42に沿った直線状部41dとで構成されている。フロントカバー40を閉じた状態でトップカバー30を閉じると、トップカバー30の内面が嵌合壁41bの外側面に対して嵌合する。そうして、トップカバー30及びフロントカバー40の双方が閉じた状態(図3の状態)では、トップカバー30の側壁が、フロントカバー40の嵌合壁41bに対して外側から重なることとなる。よって、フロントカバー40は、トップカバー30及びフロントカバー40の双方を閉じた状態では、トップカバー30によって回動が拘束される。
【0027】
すなわち、通常の操作では、フロントカバー40を開くためには、先ず図7に示すように、トップカバー30を開いた後、図8に示すようにフロントカバー40を開く操作が必要になる。図8に示すようにトップカバー30とフロントカバー40との双方が開いた状態からトップカバー30を閉じることで、図9に示すようにフロントカバー40のみが開いた状態になる。
【0028】
上記画像形成装置1において、フロントカバー40の嵌合壁41bとトップカバー30の内面との嵌合精度は、成形性の観点及びトップカバー30の閉め易さの観点から緩め(隙間を大きく)に設定することが好ましい。しかし嵌合精度を緩めに設定すると、フロントカバー40及びトップカバー30が閉位置にあるときに、トップカバー30によるフロントカバー40の回動の拘束力が低下するという問題が発生する。
【0029】
[第一閉保持機構M1及び第二閉保持機構M2の構成]
これに対して、前記画像形成装置1では、フロントカバー40を閉位置に保った状態で筐体本体20に係合させる第一閉保持機構M1と、フロントカバー40を閉位置に保った状態でトップカバー30に係合させる第二閉保持機構M2とを設けるようにしている。この第二閉保持機構M2が本発明の閉保持機構に相当する。
【0030】
図7図10及び図11を参照して、第一閉保持機構M1の構成を説明する。第一閉保持機構M1は、筐体本体20に設けられた左右の被係合突部22L,22Rと、フロントカバー40に設けられた左右の係合フック44L,44Rとを有している。
【0031】
図10及び図11に示すように、左右の被係合突部22L,22Rは、筐体本体20における前記開口部21に隣接する左右の側壁の上端面にそれぞれ突設されている。各被係合突部22L,22Rは、前後方向から見て台形状をなしている。各被係合突部22L,22Rの台形寸法は若干異なるものの基本的な形状構成は同じである。すなわち、各被係合突部22L,22Rは、上端面22aと、上端面22aの前側及び後側に位置する前側傾斜面22b及び後側傾斜面22cとを有している。前側傾斜面22bは、その傾斜角度が後側傾斜面22cの傾斜角度に比べて小さくなるように形成されている。
【0032】
左右の係合フック44L,44Rは、形状が若干異なるものの基本的な形状構成は同じである。すなわち、各係合フック44L,44Rは、フロントカバー40の後方側から後側に突出する可撓梁部44aと、可撓梁部44aの先端部に形成された係合爪44bとを有している。可撓梁部44aは、その基端部を支点に上下に可撓可能に構成されている。係合爪44bは、側面視で台形状をなしていて、前記可撓梁部44aの先端部から下側に突出している。
【0033】
フロントカバー40を開位置から閉位置に回動させて行くと、左右の係合フック44L,44Rの係合爪44bが、筐体本体20の被係合突部22L,22Rに係合する。フロントカバー40を閉位置から所定以上の荷重で前側(図10及び図11における右側)に引くと、左右の係合フック44L,44Rの係合爪44bが各被係合突部22L,22Rを乗越えて係合が解除される。
【0034】
[第二閉保持機構M2の構成]
次に、図5図6図12図15を参照して、前記第二閉保持機構M2の構成を説明する。第二閉保持機構M2は、フロントカバー40に設けられた左右の溝部45(図6及び図12参照)と、トップカバー30に設けられて各溝部45のそれぞれに係合する左右の係合突部34(図5及び図12参照)とを有している。
【0035】
図6に示すように、左右の溝部45は、前記嵌合壁41bのうちフロントカバー40の連結梁42に立設された直線状部41dの左右方向の両端部に形成されている。各溝部45は、図13に示すように、前側に開放するとともに左右方向に長いスリット溝状に形成されている。各溝部45は、鉛直壁部46と、鉛直壁部46の上端部から前側に向かって上側に傾斜する傾斜壁部47と、鉛直壁部46が立設される底壁48とによって形成されている。傾斜壁部47の上壁面47aは、前側に向かって上側に傾斜する傾斜面からなる。各溝部45を構成する壁部46~48は、前記嵌合壁41bに接続されている。
【0036】
図5に示すように、左右の係合突部34は、トップカバー30の前側壁33の裏面における左右方向の両端部に突設されている。また、溝部45は左右方向において手差し給紙トレイ4の取手部4aに対して対称の位置に形成されている。左右の係合突部34の形状は同じであるため、以下では左右の係合突部34を区別せずに同じ符号を使用して説明を行う。
【0037】
図14に示すように、各係合突部34は、左右方向に等間隔に並ぶ三つの突出爪34aと、該三つの突出爪34aの下端同士を連結する矩形状の連結板部34bとを有している。各突出爪34aは、左右方向にから見て上辺が斜辺となる台形状をなしている。各突出爪34aの上端面34cは、後側に向かって下側に傾斜している。
【0038】
図12に示すように、各係合突部34は、その上端面34cが溝部45の上壁面47aに当接する状態で溝部45に係合する。ここで、各係合突部34の上端面34cの傾斜角度α(=溝部45の上壁面47aの傾斜角度)が大きい程、トップカバー30を開位置と閉位置との間で移動させる際に係合突部34の溝部45に対する挿抜性が向上する。しかし、傾斜角度αが大き過ぎると、溝部45の上壁面47aに対する係合突部34のかかり代が小さくなって、トップカバー30によるフロントカバー40の位置保持力が低下する。
【0039】
発明者らは、このことを考慮して、鋭意研究の末、係合突部34の上端面34cの傾斜角度αを20°以上30°以下に設定することで、溝部45に対する係合突部34の挿抜性を確保しつつ、トップカバー30によるフロントカバー40の位置保持力を確保できる点を見出した。そして、本実施形態では一例として、前記傾斜角度αを25°に設定するようにしている。
図15は、フロントカバー40が閉位置にある状態において、トップカバー30を開位置と閉位置との間で移動させる際のトップカバー30の移動軌跡を示す図である。図15中の矢印D1が、トップカバー30の開位置から閉位置への移動方向であり、矢印D2は、トップカバー30の閉位置から開位置への移動方向である。この図によれば、トップカバー30を閉位置に移動させることで、係合突部34が傾斜壁部47と干渉することなく溝部45に対して前側から係合し、トップカバー30を開位置に移動させることで、係合突部34が傾斜壁部47と干渉することなく退避して係合解除されることが理解される。
[本実施形態の作用効果]
次に、本実施形態の画像形成装置1の作用効果について、第二閉保持機構M2を有さない従来の画像形成装置と比較しながら説明する。
【0040】
従来の画像形成装置において、フロントカバー40に対して開方向の意図しない衝撃(例えば、手差し給紙トレイ4を開く際の衝撃等)が加わった場合を考える。この場合、フロントカバー40の上端部が回動方向に傾きながらトップカバー30の内面を押す。この結果、トップカバー30が上側に押し上げられて、フロントカバー40がトップカバー30の下端を通過して意図せず開放される虞があった。
【0041】
この問題を回避するために、左右の係合フック44L,44Rの係合爪44bの突出量を増やして、左右の係合フック44L,44Rと、第一閉保持機構M1の被係合突部22L,22Rとの引っ掛かり量を大きくすることが考えられる。しかしそうすると、フロントカバー40を開く際に、左右の係合フック44L,44Rが被係合突部22L,22Rから簡単に外れなくなる。このため、フロントカバー40の開閉操作性が悪くなるという問題が生じる。
これに対して、本実施形態の画像形成装置1では、第一閉保持機構M1とは別に第二閉保持機構M2を設けるようにした。
【0042】
この第二閉保持機構M2は、前述のように、トップカバー30に設けられた係合突部34と、フロントカバー40の嵌合壁41bに設けられた被係合部としての溝部45とを有していて、フロントカバー40が閉位置にある状態でトップカバー30を開位置から閉位置に移動させると、フロントカバー40の溝部45にトップカバー30の係合突部34が前側(筐体側方の外側の一例)から係合し、フロントカバー40が閉位置にある状態でトップカバー30を閉位置から開位置に移動させると、トップカバー30の移動に伴って該係合が解除されるように構成されている。
【0043】
この構成によれば、フロントカバー40が閉位置にある状態でトップカバー30を開位置から閉位置に移動させる際に(図15の矢印D1方向に移動させる際に)、フロントカバー40の溝部45にトップカバー30の係合突部34が前側から係合する。したがって、フロントカバー40に対して前側(開放側)への意図しない衝撃が加わったとしても、トップカバー30の係合突部34がフロントカバー40の溝部45(被係合部の一例)に前側から係合しているので、フロントカバーが前側に回動することはない。
【0044】
ここで、第二閉保持機構M2を採用した場合には、フロントカバー40を開く際に必ず、トップカバー30を前もって開く必要がある。このため、フロントカバー40の開放操作が煩雑になるようにも思える。しかし、作業者が開口部21を通じてメンテナンス作業を行う際には、通常、トップカバー30を先に開いた後にフロントカバー40を開くという手順を取る。このため、メンテナンス作業のためにトップカバー30開いた後は、トップカバー30の係合突部34とフロントカバー40の溝部45との係合が必然的に解除される。したがって、作業者がメンテナンス作業時にフロントカバー40の開放操作を煩わしく感じることもない。
【0045】
また、本実施形態では、トップカバー30の前側壁33に設けられた係合突部34は、トップカバー30が閉位置にある状態で後側に向かって下側(水平方向の筐体外側から内側に向かって下側)に傾斜する上端面34c(係合面の一例)を有している。フロントカバー40の溝部45は、フロントカバー40が閉位置にある状態で、前側に向かって上側(水平方向の筐体内側から外側に向かって上側)に傾斜する上壁面47a(被係合面の一例)を有している。そして、トップカバー30の係合突部34がフロントカバーの溝部45に係合した状態では、溝部45の上壁面47aに対して、係合突部34の上端面34cが下方から当接する。
【0046】
この構成によれば、フロントカバー40に対して開き側(前側)への衝撃力が加わった際に、トップカバー30の係合突部34の上端面34cには楔作用により下側への分力Fv(図12参照)が作用する。このため、トップカバー30を該分力Fにより下側に押させ付けることができる。よって、フロントカバー40に開き側の衝撃が加わった際にトップカバー30が意図せず上側に回動するのを確実に防止し、延いては、フロントカバー40が意図せず開いてしまうのを防止することができる。
【0047】
また、トップカバー30は、前後方向において対向し、天井壁31及び前側壁33の双方に接続される一対の対向壁32をさらに有している。これにより、トップカバー30の剛性を高めることできるので、トップカバー30を閉める際に、係合突部34を、溝部46における傾斜壁部47の傾斜面47に当たり負けせずに確実に当接さることができる。
【0048】
また、第二閉保持機構M2は、係合突部34が、トップカバー30における前後方向の両端部に設けられ、被係合部としての溝部45がフロントカバー40の嵌合壁41bにおける前記係合部34に対応する位置に設けられている。
【0049】
この構成によれば、トップカバー30とフロントカバー40とが、前後方向の両端部において、係合部34及び溝部45の係合により強固に固定される。したがって、フロントカバー40に開き側の衝撃が加わった際にトップカバー30が意図せず上側に回動するのをより一層確実に防止することができる。
【0050】
また、フロントカバー40には手差し給紙トレイ4が取付けられており、手差し給紙トレイ4は、フロントカバー40に沿う姿勢で筐体2の外壁面の一部を構成する収納状態と、筐体2の前側(側方の外側)に向かって上方に傾斜する姿勢で上面に用紙が載置される使用状態とに切替え可能に構成されている。
【0051】
このような給紙トレイ4を備えた画像形成装置1では、手差し給紙トレイ4を開いた際の衝撃や、手差し給紙トレイ4の上面に用紙をセットする際の衝撃でフロントカバー40が意図せず開き易い。本発明は、このような画像形成装置に対して特に有用である。
【0052】
また、手差し給紙トレイ4は、収納状態において上端部に取手部4aを有するように構成されている。取手部4aは、手差し給紙トレイ4における前後方向の中央部に設けられている。そして、第二閉保持機構M2は、二つの係合突部34が、前後方向において取手部34に対して対称な位置に設けられ、二つの溝部46が、該二つの係合突部34に対応する位置に設けられて構成されている。
【0053】
この構成によれば、トップカバー30とフロントカバー40とを左右均等の力で固定することができる。よって、一方の係合突部34だけが溝部46に係合するような不釣り合いな状態を回避し、意図しないフロントカバー40の開放動作を可及的に防止することができる。
【0054】
《他の実施形態》
上記実施形態では、画像形成装置1は、フロントカバー40を閉位置に保持するための機構として第一閉保持機構M1と第二閉保持機構M2とを備えているが、第一閉保持機構M1は必ずしも必要ではなく、第一閉保持機構M1を廃止して第二閉保持機構M2のみを備えるようにしてもよい。
【0055】
上記実施形態では、側方カバーの一例としてフロントカバー40を挙げて説明したが、これに限ったものではない。側方カバーは、筐体本体20の後側に位置するリアーカバーや、左右に位置するサイドカバーであってもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、フロントカバー40には被係合部として溝部45を設け、トップカバー30に係合部として係合突部34を設けるようにしているが、これに限ったものではない。例えば、フロントカバー40の被係合部として突部を設けて、トップカバー30の係合部として溝部を設けるようにしてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、画像形成装置1がプリンターである例を説明したが、これに限ったものではない。画像形成装置1は、例えば、ファクシミリ、複写機、又は複合機(mFP)等により構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上説明したように、本発明は、画像形成装置について有用であり、特に、プリンター、ファクシミリ、複写機又は複合機(MFP)等に適用する場合に有用である。
【符号の説明】
【0059】
1 :画像形成装置
1a :取手部
2 :筐体
4 :手差し給紙トレイ
21 :開口部
30 :トップカバー(上方カバー)
34 :係合突部(係合部)
34c :上端面(係合面)
40 :フロントカバー(側方カバー)
47a :上壁面(係合面)
50 :溝部(被係合部)
M2 :第二閉保持機構
図1
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図15