(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】インクジェットインク組成物及び記録方法
(51)【国際特許分類】
C09D 11/30 20140101AFI20240611BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20240611BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
C09D11/30
B41M5/00 120
B41J2/01 501
(21)【出願番号】P 2020060116
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】黄木 康弘
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小松 英彦
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼ 晋太郎
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-134164(JP,A)
【文献】特開平05-140495(JP,A)
【文献】特開平11-078211(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0149132(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/
B41M 5/
B41J 2/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材と、有機溶剤と、水とを含有するインクジェットインク組成物であって、
前記有機溶剤として、N-ヒドロキシエチルピロリドンと、
N-ビニル-2-ピロリドンと、を含有する、インクジェットインク組成物。
【請求項2】
請求項1において、
前記N-ヒドロキシエチルピロリドンの含有量が、インクジェットインク組成物の総量に対して1.0質量%以上20.0質量%以下である、インクジェットインク組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記N-ヒドロキシエチルピロリドンの含有量に対する前記N-ビニル-2-ピロリドンの含有量の比率(N-ビニル-2-ピロリドンの含有量/N-ヒドロキシエチルピロリドンの含有量)が、質量基準で500以上10000以下である、インクジェットインク組成物。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
前記有機溶剤として、炭素数3以上6以下のアルカンジオール、及び、下記式(1)で表されるグリコールエーテルから選択される1種以上を、含有する、インクジェットインク組成物。
R
1-O-(CH
2-CH
2-O)
n-R
2 ・・・(1)
(式(1)中、R
1は、H又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、R
2は、炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、nは、2以上3以下の整数を表す。)
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
前記色材が、水溶性染料である、インクジェットインク組成物。
【請求項6】
請求項5において、
前記水溶性染料が、酸性染料、直接染料、及び、反応染料から選択される1種以上である、インクジェットインク組成物。
【請求項7】
請求項5又は請求項6において、
前記水溶性染料の含有量が、インクジェットインク組成物の総量に対して5.0質量%以上20.0質量%である、インクジェットインク組成物。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載のインクジェットインク組成物を、インクジェットヘッドから吐出して、記録媒体に付着させる工程を含む、インクジェット記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットインク組成物及び記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット法は、記録媒体に対する画像の記録だけでなく、布帛の捺染にも適用が試みられ、各種のインクジェット捺染用のインク組成物が検討されている。捺染用のインクジェットインク組成物は、所望の色の画像を得るために色材を含有し、色材として、染料や顔料が用いられる。また、捺染用のインクジェットインク組成物においても、通常のインクジェットインク組成物と同様或いはそれ以上の性能が求められている。
【0003】
インクジェットインク組成物において、有機溶剤を溶媒或いは分散媒として用いることが一般的に行われている。インクジェットインク組成物では、所望する性能を得るために有機溶剤の選択やその配合量について、幅広い検討が行われる。例えば、特許文献1には、色材を溶解又は分散させる有機溶剤として、3-キヌクリジノールを用い、ヒドロキシエチルピロリドンを併用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたインクのように、有機溶剤を用いるインクでは、色材の析出や固化等が生じるような有機溶剤の組合せや配合も存在し、場合によっては吐出安定性の低下や目詰まり回復不良が生じることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るインクジェットインク組成物の一態様は、
色材と、有機溶剤と、水とを含有するインクジェットインク組成物であって、
前記有機溶剤として、N-ヒドロキシエチルピロリドンと、
N-ビニル-2-ピロリドンと、を含有する。
【0007】
本発明に係る記録方法の一態様は、
上記態様のインクジェットインク組成物を、インクジェットヘッドから吐出して、記録媒体に付着させる工程を含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明の実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお、以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
【0009】
本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを表し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを表す。
【0010】
1.インクジェットインク組成物
本実施形態に係るインクジェットインク組成物は、色材と、有機溶剤と、水とを含有し
、有機溶剤として、N-ヒドロキシエチルピロリドンと、N-ビニル-2-ピロリドンと、を含有する。以下各成分につき説明する。
【0011】
1.1.色材
インクジェットインク組成物は、色材を含む。色材としては、水溶性染料、分散染料、顔料が挙げられ、これらのいずれを用いてもよいし、混合して用いてもよい。しかし、インクジェットインク組成物は、水溶性染料を含むことが好ましく、水溶性染料のみを含むことがより好ましい。
【0012】
1.1.1.水溶性染料
本実施形態のインクジェットインク組成物は、酸性染料、反応染料及び直接染料から選ばれる一種以上である水溶性染料を含む。また、本実施形態で用いる水溶性染料は、布帛(繊維)を染色できる染料であるが、染色のメカニズムは特に制限されない。さらにこれらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
酸性染料の具体例としては、
C.I.Acid Red 1、6、8、9、13、14、18、19、24、26、27、28、32、35、37、42、51、52、57、62、75、77、80、82、83、85、87、88、89、92、94、95、97、106、111、114、115、117、118、119、127、128、129、130、131、133、134、138、143、145、149、151、154、155、158、168、180、183、184、186、194、198、199、209、211、215、216、217、219、249、252、254、256、257、260、261、262、263、265、266、274、276、282、283、289、299、301、303、305、315、318、320、321、322、336、337、361、396、397等;
C.I.Acid Violet 5、7、11、15、31、34、35、41、43、47、48、49、51、54、66、68、75、78、90、97、103、106、126等;
C.I.Acid Yellow 1、3、7、11、17、19、23、25、29、36、38、39、40、42、44、49、50、59、61、64、70、72、75、76、78、79、98、99、110、111、112、114、116、118、119、127、128、131、135、141、142、143、151、159、161、162、163、164、165、169、174、184、190、195、196、197、199、207、218、219、222、227、246等;
C.I.Acid Blue 1、7、9、15、22、23、25、27、29、40、41、43、45、49、54、59、60、62、72、74、76、78、80、82、83、87、90、92、93、100、102、103、104、106、112、113、114、117、120、126、127、127:1、128、129、130、131、133、138、140、142、143、151、154、156、158、161、166、167、168、170、171、175、181、182、183、184、185、187、192、193、201、203、204、205、207、209、220、221、224、225、229、230、232、239、247、249、258、260、264、271、277、277:1、278、279、280、284、288、290、296、298、300、317、324、326、333、335、338、342、350等;
C.I.Acid Black 1、2、7、24、26、29、31、44、48、50、51、52、52:1、58、60、62、63、64、67、72、76、77、94、107、108、109、110、112、115、118、119、121、122、131、132、139、140、155、156、157、158、159、1
72、191、194、234等;
C.I.Acid Orange 1、7、8、10、19、20、24、28、33、41、43、45、51、56、63、64、65、67、74、80、82、85、86、87、88、94、95、122、123、124等;
C.I.Acid Green 3、7、9、12、16、19、20、25、27、28、35、36、40、41、43、44、48、56、57、60、61、65、73、75、76、78、79等;
C.I.Acid Brown 2、4、13、14、19、20、27、28、30、31、39、44、45、46、48、53、100、101、103、104、106、160、161、165、188、224、225、226、231、232、236、247、256、257、266、268、276、277、282、289、294、295、296、297、298、299、300、301、302等が挙げられる。
【0014】
直接染料の具体例としては、
C.I.Direct Red 2、4、9、23、26、31、39、62、63、72、75、76、79、80、81、83、84、89、92、95、111、173、184、207、211、212、214、218、221、223、224、225、226、227、232、233、240、241、242、243、247等;
C.I.Direct Violet 7、9、47、48、51、66、90、93、94、95、98、100、101等;
C.I.Direct Yellow 8、9、11、12、27、28、29、33、35、39、41、44、50、53、58、59、68、86、87、93、95、96、98、100、106、108、109、110、130、132、142、144、161、163等;
C.I.Direct Blue 1、10、15、22、25、41、55、67、68、71、76、77、78、80、84、86、87、90、98、106、108、109、120、151、156、158、159、160、153、168、189、192、193、194、199、200、201、202、203、207、211、213、214、218、225、226、229、236、237、244、248、249、251、252、264、270、280、288、289、291等;
C.I.Direct Black 9、17、19、22、32、51、56、62、69、77、80、91、94、97、108、112、113、114、117、118、121、122、125、132、146、154、166、168、173、195、199等が挙げられる。
【0015】
反応染料の具体例としては、
C.I.Reactive Yellow 1、2、3、5、11、13、14、15、17、18、20、21、22、23、24、25、26、27、29、35、37、40、41、42、47、51、55、65、67、81、95、116、142、161等;
C.I.Reactive Red 1、3、3:1、4、13、14、17、19、21、22、23、24、24:1、25、26、29、31、32、35、37、40、41、43、44、45、46、49、55、60、66、74、79、96、97、108、141、180、218、226、245等;
C.I.Reactive Violet 1、3、4、5、6、7、8、9、16、17、22、23、24、26、27、33、34等;
C.I.Reactive Blue 1、2、3、5、7、8、10、13、14、15、17、18、19、21、23、25、26、27、28、29、32、35、38、41、49、63、72、75、80、95、190等;
C.I.Reactive Orange 1、2、4、5、7、12、13、14、1
6、20、29、33、35、38、64、67、71、72、72:1、78、82、84、86、87、91、99、99:1、107、113、122、124、125等;
C.I.Reactive Black 1、3、4、5、7、8、11、12、14、17、21、23、26、31、32、34、39等が挙げられる。
【0016】
水溶性染料のインクジェットインク組成物全量に対する含有量は、合計で0.1質量%以上30質量%以下程度であり、好ましくは0.5質量%以上25質量%以下、より好ましくは1質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上15質量%以下である。
【0017】
本実施形態のインクジェットインク組成物において、水溶性染料が、酸性染料、反応染料及び直接染料から選ばれる少なくとも一種である場合には、これを布帛等の記録媒体の捺染に用いることにより、記録媒体を濃く染色することができる。
【0018】
1.1.2.分散色材
インクジェットインク組成物は、色材として分散色材を用いてもよい。分散色材とは、溶媒に溶解しない色材であり、例えば、顔料、分散染料である。溶媒に不溶又は難溶の顔料、分散染料としては、特に限定されず、無機顔料、有機顔料、油溶染料、分散染料等が挙げられる。また顔料、染料の色相も限定されず、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック等のいわゆるプロセスカラーや、白色、蛍光色、光輝色等のいわゆる特色であってもよい。
【0019】
無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.Pigment ブラック7)類、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ等を用いることができる。
【0020】
カーボンブラックとしては、三菱化学株式会社製のNo.2300、900、MCF88、No.20B、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No2200B等が挙げられる。また、カーボンブラックとしてはデグサ社製のカラーブラックFW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、プリテックス35、U、V、140U、スペシャルブラック6、5、4A、4、250等を例示できる。また、カーボンブラックとしてはコロンビアカーボン社製のコンダクテックスSC、ラーベン1255、5750、5250、5000、3500、1255、700等を例示できる。また、カーボンブラックとしてはキャボット社製のリガール400R、330R、660R、モグルL、モナーク700、800、880、900、1000、1100、1300、1400、エルフテックス12等を例示できる。さらに、カーボンブラックとしてはオリヱント化学工業株式会社製のBONJET
BLACK CW-1、CW-1S、CW-2、CW-3、M-800等を例示できる。
【0021】
有機顔料としては、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾメチン系顔料又はアゾ系顔料等を例示できる。
【0022】
シアン顔料としては、C.I.Pigment Blue 1、2、3、15:3、15:4、15:34、16、22、60等;C.I.Vat Blue 4、60等が挙
げられ、好ましくは、C.I.Pigment Blue 15:3、15:4、及び60からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物を例示できる。
【0023】
マゼンタ顔料としては、C.I.Pigment Red 5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、168、184、202、C.I.Pigment Violet 19等が挙げられ、好ましくはC.I.Pigment Red122、202、及び209、C.I.Pigment Violet 19からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物を例示できる。
【0024】
イエロー顔料としては、C.I.Pigment Yellow1、2、3、12、13、14C、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、119、110、114、128、129、138、150、151、154、155、180、185、等が挙げられ、好ましくはC.I.Pigment Yellow74、109、110、128、及び138からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物を例示できる。
【0025】
オレンジ顔料としては、C.I.Pigment Orange 36若しくは43又はこれらの混合物を例示できる。グリーンインクジェット記録用水系インクに使用される顔料としては、C.I.Pigment Green 7若しくは36又はこれらの混合物を例示できる。
【0026】
光輝性顔料としては、媒体に付着させたときに光輝性を呈しうるものであれば特に限定されないが、例えば、アルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、及び銅からなる群より選択される1種又は2種以上の合金(金属顔料ともいう)の金属粒子や、パール光沢を有するパール顔料を挙げることができる。パール顔料の代表例としては、二酸化チタン被覆雲母、魚鱗箔、酸塩化ビスマス等の真珠光沢や干渉光沢を有する顔料が挙げられる。また、光輝性顔料は、水との反応を抑制するための表面処理が施されていてもよい。
【0027】
また、白色顔料としては、金属酸化物、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の金属化合物が挙げられる。金属酸化物としては、例えば二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム等が挙げられる。また、白色顔料には、中空構造を有する粒子を用いてもよい。
【0028】
顔料は、あらかじめ分散剤によって分散されたものと用いてもよい。分散剤としては、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸-アクリルニトリル共重合体、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル-(メタ)アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン-(メタ)アクリル酸共重合体等の(メタ)アクリル系樹脂及びその塩;スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体等のスチレン系樹脂及びその塩;イソシアネート基とヒドロキシル基とが反応したウレタン結合を含む高分子化合物(樹脂)を例示できる。これらは直鎖状及び/又は分岐状であってもよく、架橋構造の有無を問わないウレタン系樹脂及びその塩;ポリビニルアルコール類;ビニルナフタレン-マレイン酸共重合体及びその塩;酢酸ビニル-マレイン酸エステル共重合体及びその塩;並びに;酢酸ビニル-クロトン酸共重合体及びその塩等の水溶性樹脂を挙げることができる。
【0029】
スチレン-アクリル系樹脂の分散剤の市販品としては、例えば、X-200、X-1、
X-205、X-220、X-228(星光PMC社製)、ノプコスパース(登録商標)6100、6110(サンノプコ株式会社製)、ジョンクリル67、586、611、678、680、682、819(BASF社製)、DISPERBYK-190(ビックケミー・ジャパン株式会社製)、N-EA137、N-EA157、N-EA167、N-EA177、N-EA197D、N-EA207D、E-EN10(第一工業製薬製)等が挙げられる。
【0030】
アクリル系樹脂分散剤の市販品としては、BYK-187、BYK-190、BYK-191、BYK-194N、BYK-199(ビックケミー株式会社製)、アロンA-210、A6114、AS-1100、AS-1800、A-30SL、A-7250、CL-2東亜合成株式会社製)等が挙げられる。
【0031】
ウレタン系樹脂分散剤の市販品としては、BYK-182、BYK-183、BYK-184、BYK-185(ビックケミー株式会社製)、TEGO Disperse710(Evonic Tego Chemi社製)、Borchi(登録商標)Gen1350(OMG Borschers社製)等が挙げられる。
【0032】
分散剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。分散剤の合計の含有量は、顔料50質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下が好ましく、より好ましくは0.5質量部以上25質量部以下、さらにより好ましくは1質量部以上20質量部以下、よりさらに好ましくは1.5質量部以上15質量部以下である。分散剤の含有量が顔料50質量部に対して0.1質量部以上であることにより、顔料の分散安定性をさらに高めることができる。また、分散剤の含有量が顔料50質量部に対して30質量部以下であれば、得られる分散体の粘度をより小さく抑えることができる。
【0033】
また、分散染料、油溶染料としては、インクビヒクル中で溶解せずに分散する色材であればいずれも用いることができ、アゾ系、金属錯塩アゾ系、アントラキノン系、フタロシアニン系、トリアリルメタン系等を例示できる。
【0034】
分散染料としては、C.I.Disperse Red60、82、86、86:1、92、152、154、167:1、191、279、C.I.Disperse Yellow64、71、86、114、153、163、233、245、C.I.Disperse Blue27、60、73、77、77:1、87、165、165:1、257、367、C.I.Disperse Violet 26、33、36、57、C.I.Disperse Orange 30、41、61、80等を例示できる。
【0035】
分散色材は、インク中で安定に分散できることが好ましい。例えば、オゾン、次亜塩素酸、発煙硫酸等により、色材表面を酸化、あるいはスルホン化して色材粒子の表面を修飾することにより、自己分散型の色材として使用してもよいし、上記の分散剤によって分散させて使用してもよい。
【0036】
上記分散色材として例示した顔料、分散染料は一例であり、これらの顔料、分散染料は一種又は二種以上を用いてよいし、顔料及び分散染料の併用や、水溶性染料及び分散色材の併用も可能である。
【0037】
1.2.有機溶剤
本実施形態のインクジェットインク組成物は、有機溶剤を含む。インクジェットインク組成物は、有機溶剤として、N-ヒドロキシエチルピロリドン(HEP)と、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)と、を含有する。
【0038】
1.2.1. N-ヒドロキシエチルピロリドン(HEP)
N-ヒドロキシエチルピロリドンは、別名、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン、1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン-2-オン等と呼ばれる(本明細書では「HEP」と略記することがある。)。HEPは、本実施形態のインクジェットインク組成物に、有機溶剤として含有される。
【0039】
HEPは、水酸基を有していることから、他の有機溶剤と比べて親水性が高い。そのため、HEPを含有することにより、インクジェットインク組成物における上記水溶性染料の溶解性を高めることができ、水溶性染料の析出や固化を生じにくくすることができる。水溶性染料の析出や固化が生じにくいことで、インクジェットインク組成物を、吐出安定性や目詰まり回復性に優れたものとできる。また、インクジェットインク組成物における水溶性染料の濃度が高い場合には、かかる効果が特に顕著となる。
【0040】
HEPの含有量は、インクジェットインク組成物の総量に対して、0.5質量%以上30.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以上20.0質量%以下がより好ましく5.0質量%以上15.0質量%以下がさらに好ましい。
【0041】
1.2.2. N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)
N-ビニル-2-ピロリドンは、1-ビニル-2-ピロリドン、1-エテニルピロリジン-2-オン等と呼ばれる(本明細書では「NVP」と略記することがある。)。NVPは、本実施形態のインクジェットインク組成物に、有機溶剤として含有される。
【0042】
上述したように、HEPは、染料の可溶化剤として優れた機能を有している。しかしHEPは、インクジェットインク組成物の粘度を上昇させやすい性質がある。インクジェットインク組成物の粘度が高まると、インクジェットヘッドから吐出する場合に、インク滴の重量が低下して吐出が不安定になる場合がある。本実施形態では、インクジェットインク組成物に、NVPが含有されることにより、インクジェットインク組成物の吐出性が改善されることを見出した。詳細な理由は不明だが、HEPとNVPが混在することにより、HEPの添加量を抑制しつつ、染料の可溶化性を好適に発現させることができると推察する。その結果、インクジェットインク組成物の粘度をインクジェットヘッドからの吐出に適切な値にしつつ、インクジェット組成物における染料の溶解性を維持し目詰まり回復性を良好とした上で、吐出安定性も優れたものとすることができるものと考える。また、後述する程度に少ないNVPの含有量であっても、このような効果を得ることができる。
【0043】
また、色材として分散色材を用いる場合など、インクジェットインク組成物に界面活性剤や添加剤を比較的多く用いる場合、系の親水性が高くなると、界面活性剤や添加剤が析出しやすくなり、いわゆる油状分離を生じることがある。HEPは、上述したように親水性が高いので、含有量によっては、油状分離を生じる懸念がある。しかし、インクジェットインク組成物にNVPが含有されることにより、HEPの親水性を緩和する効果が得られ、油状分離を抑制することができる。この効果は、後述する程度に少ないNVPの含有量であっても得ることができる。
【0044】
NVPの含有量は、インクジェットインク組成物の総量に対して、0.0001質量%以上0.05質量%以下が好ましく、0.0005質量%以上0.02質量%以下がより好ましく0.001質量%以上0.01質量%以下がさらに好ましい。
【0045】
1.3.水
本実施形態に係るインクジェットインク組成物は、水を含有する。水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、及び蒸留水等の純水、並びに超純水のような、イオン性不純物を低減したものが挙げられる。また、紫外線照射又は過酸化水素の添加等
によって滅菌した水を用いると、インクジェットインク組成物を長期保存する場合に細菌類や真菌類の発生を抑制することができる。
【0046】
水の含有量は、インクジェットインク組成物の総量に対して、30質量%以上、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは45質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上である。なおインクジェットインク組成物中の水というときには、例えば、原料に水が含まれる場合の当該水及び添加する水を含むものとする。水の含有量が30質量%以上であることにより、インクジェットインク組成物を比較的低粘度とすることができる。また、水の含有量の上限は、インクジェットインク組成物の総量に対して、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは85質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以下である。
【0047】
1.4.その他の成分
本実施形態のインクジェットインク組成物は、有機溶剤、水、キレート化剤、その他の物質を含有してもよい。
【0048】
1.4.1.その他の有機溶剤
本実施形態にインクジェットインク組成物は、上述のHEP及びNVP以外の有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤としては、グリコールエーテル、アルキルポリオール、環状アミド等が挙げられる。
【0049】
1.4.1.1.アルキルポリオール
本実施形態のインクジェットインク組成物は、アルキルポリオールを含んでもよい。アルキルポリオールを含むことにより、インクジェットインク組成物の保湿性をさらに高め、インクジェット法による吐出安定性を優れたものとしつつ、長期放置時による記録ヘッドからの水分蒸発を効果的に抑制することができる。また、これにより、ノズルの目詰まりを生じやすい種の色材を用いた場合でも、放置回復性や連続吐出安定性をより良好に維持することができる。
【0050】
アルキルポリオールの具体例としては、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。これらのアルキルポリオールは、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0051】
アルキルポリオールを含有させる場合の含有量は、インクジェットインク組成物の全質量に対して、5質量%以上であれば効果を奏することができるが、5質量%以上40質量%以下であることが好ましく、10質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上25質量%以下であることがさらに好ましい。
【0052】
インクジェットインク組成物は、アルキルポリオールのうち、炭素数3以上6以下のアルカンジオールを含むことがより好ましい。炭素数3以上6以下のアルカンジオールとしては、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-エ
チル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオールを挙げることができる。
【0053】
インクジェットインク組成物が、炭素数3以上6以下のアルカンジオールを含む場合には、粘度がさらに抑制され、かつ、より良好な吐出安定性(連続吐出信頼性)を得ることができる。また、色材の溶解性や分散性が良好で、良好な目詰まり回復性を得ることができる。
【0054】
1.4.1.2.グリコールエーテル
本実施形態のインクジェットインク組成物は、グリコールエーテルを含んでもよい。グリコールエーテルとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールから選択されるグリコールのモノアルキルエーテル又はジアルキルエーテルを挙げることができる。より具体的には、メチルトリグリコール(トリエチレングリコールモノメチルエーテル)、ブチルトリグリコール(トリエチレングリコールモノブチルエーテル)、ブチルジグリコール(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられ、典型例としてジエチレングリコールモノブチルエーテルが挙げられる。
【0055】
インクジェットインク組成物は、グリコールエーテルのうち、下記式(1)で表されるグリコールエーテルから選択される1種以上を、含有することがさらに好ましい。
R1-O-(CH2-CH2-O)n-R2 ・・・(1)
(式(1)中、R1は、H又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、R2は、炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、nは、2以上3以下の整数を表す。)
【0056】
式(1)で表されるグリコールエーテルとしては、メチルトリグリコール(トリエチレングリコールモノメチルエーテル)、ブチルトリグリコール(トリエチレングリコールモノブチルエーテル)、ブチルジグリコール(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等を例示できる。
【0057】
グリコールエーテルは、複数種を混合して用いてもよい。また、グリコールエーテルを用いる場合、その配合量は、インクジェットインク組成物の粘度調整、保湿効果による目詰まり抑制の点から、インクジェットインク組成物の全量に対して合計で、0.5質量%以上30質量%以下、好ましくは1.0質量%以上20質量%以下、より好ましくは3.0質量%以上10.0質量%以下である。
【0058】
1.4.1.3.環状アミド
本実施形態のインクジェットインク組成物は、環状アミド、を含んでもよい。ただし、環状アミドは、上述したHEP及びNVPと化学構造が類似するので、HEP及びNVPの上記効果を妨げない程度に用いることが好ましい。環状アミドは、上述した染料を溶解させやすく、かつ、インクジェットインク組成物の固化や乾燥を抑制するという機能を備える。
【0059】
環状アミドとしては、アミド基を含む環構造を有する化合物が挙げられる。そのような化合物としては、2-ピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン(N-メチル-2-ピロリドン)、1-エチル-2-ピロリドン(N-エチル-2-ピロリドン)、1-プロピル
-2-ピロリドン、1-ブチル-2-ピロリドン等のγ-ラクタム類、β-ラクタム類、δ-ラクタム類、ε-カプロラクタム等のε-ラクタム類等が挙げられる。これらの環状アミドは、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0060】
1.4.1.4.その他の有機溶剤
本実施形態のインクジェットインク組成物は、その他の有機溶媒を含んでもよい。その他の有機溶剤の例としては、γ-ブチロラクトン等のラクトン類、ベタイン化合物等が挙げられる。
【0061】
1.4.2.その他の物質
本実施形態のインクジェットインク組成物は、上記以外の物質として、界面活性剤、樹脂粒子、pH調整剤、キレート化剤、尿素類、防腐剤、防かび剤、糖類及びその他を含有してもよい。
【0062】
1.4.2.1.界面活性剤
本実施形態に係るインクジェットインク組成物は、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤は、インクジェットインク組成物の表面張力を低下させ記録媒体との濡れ性、例えば布帛等への浸透性を調整、向上させるために用いることができる。界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも使用することができ、さらにこれらは併用してもよい。また、界面活性剤の中でも、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0063】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG-50、104S、420、440、465、485、SE、SE-F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA、DF110D(商品名、Air Products and Chemicals Inc.社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD-001、PD-002W、PD-003、PD-004、PD-005、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、EXP.4123、EXP.4300、AF-103、AF-104、AK-02、SK-14、AE-3(商品名、日信化学工業社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(商品名、川研ファインケミカル社製)が挙げられる。
【0064】
シリコーン系界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリシロキサン系化合物が好ましく挙げられる。当該ポリシロキサン系化合物としては、特に限定されないが、例えばポリエーテル変性オルガノシロキサンが挙げられる。当該ポリエーテル変性オルガノシロキサンの市販品としては、例えば、BYK-306、BYK-307、BYK-333、BYK-341、BYK-345、BYK-346、BYK-348(商品名、BYK社製)、KF-351A、KF-352A、KF-353、KF-354L、KF-355A、KF-615A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、KF-6020、X-22-4515、KF-6011、KF-6012、KF-6015、KF-6017(商品名、信越化学工業社製)が挙げられる。
【0065】
フッ素系界面活性剤としては、フッ素変性ポリマーを用いることが好ましく、具体例としては、BYK-340(商品名、ビックケミー・ジャパン社製)が挙げられる。
【0066】
インクジェットインク組成物に界面活性剤を配合する場合には、インクジェットインク組成物全体に対して、界面活性剤の合計で0.01質量%以上3質量%以下、好ましくは
0.05質量%以上2質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以上1.5質量%以下、特に好ましくは0.2質量%以上1質量%以下配合することが好ましい。
【0067】
また、インクジェットインク組成物が界面活性剤を含有することにより、ヘッドからインクを吐出する際の安定性が増す傾向がある。
【0068】
1.4.2.2.樹脂粒子
インクジェットインク組成物は、樹脂粒子を含有してもよい。樹脂粒子は、記録媒体に付着させたインクジェットインク組成物による画像の密着性などをさらに向上させることができる。樹脂粒子としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂(スチレンアクリル系樹脂を含む)、フルオレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ロジン変性樹脂、テルペン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニル系樹脂等からなる樹脂粒子が挙げられる。なかでも、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオフレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂が好ましい。これらの樹脂粒子は、エマルジョン形態で取り扱われることが多いが、粉体の性状であってもよい。また、樹脂粒子は1種単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0069】
ウレタン系樹脂とは、ウレタン結合を有する樹脂の総称である。ウレタン系樹脂には、ウレタン結合以外に、主鎖にエーテル結合を含むポリエーテル型ウレタン樹脂、主鎖にエステル結合を含むポリエステル型ウレタン樹脂、主鎖にカーボネート結合を含むポリカーボネート型ウレタン樹脂等を使用してもよい。また、ウレタン系樹脂として、市販品を用いてもよく、例えば、スーパーフレックス 460、460s、840、E-4000(商品名、第一工業製薬株式会社製)、レザミン D-1060、D-2020、D-4080、D-4200、D-6300、D-6455(商品名、大日精化工業株式会社製)、タケラック WS-5100、WS-6021、W-512-A-6(商品名、三井化学ポリウレタン株式会社製)、サンキュアー2710(商品名、LUBRIZOL社製)、パーマリンUA-150(商品名、三洋化成工業社製)などの市販品を用いてもよい。
【0070】
アクリル系樹脂は、少なくとも(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルなどのアクリル系単量体を1成分として重合して得られる重合体の総称であって、例えば、アクリル系単量体から得られる樹脂や、アクリル系単量体とこれ以外の単量体との共重合体などが挙げられる。例えばアクリル系単量体とビニル系単量体との共重合体であるアクリル-ビニル系樹脂などが挙げられる。また例えば、ビニル系単量体としては、スチレンなどが挙げられる。
【0071】
アクリル系単量体としてはアクリルアミド、アクリロニトリル等も使用可能である。アクリル系樹脂を原料とする樹脂エマルジョンには、市販品を用いてもよく、例えばFK-854(商品名、中央理科工業社製)、モビニール952B、718A(商品名、日本合成化学工業社製)、NipolLX852、LX874(商品名、日本ゼオン社製)等の中から選択して用いてもよい。
【0072】
なお、本明細書において、アクリル系樹脂は、後述するスチレン・アクリル系樹脂であってもよい。また、本明細書において、(メタ)アクリルとの表記は、アクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味する。
【0073】
スチレン・アクリル系樹脂は、スチレン単量体と(メタ)アクリル系単量体とから得られる共重合体であり、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸-アクリル酸エス
テル共重合体等が挙げられる。スチレン・アクリル系樹脂には、市販品を用いても良く、例えば、ジョンクリル62J、7100、390、711、511、7001、632、741、450、840、74J、HRC-1645J、734、852、7600、775、537J、1535、PDX-7630A、352J、352D、PDX-7145、538J、7640、7641、631、790、780、7610(商品名、BASF社製)、モビニール966A、975N(商品名、日本合成化学工業社製)、ビニブラン2586(日信化学工業社製)等を用いてもよい。
【0074】
ポリオレフィン系樹脂は、エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィンを構造骨格に有するものであり、公知のものを適宜選択して用いることができる。オレフィン樹脂としては、市販品を用いることができ、例えばアローベースCB-1200、CD-1200(商品名、ユニチカ株式会社製)等を用いてもよい。
【0075】
また、樹脂粒子は、エマルジョンの形態で供給されてもよく、そのような樹脂エマルジョンの市販品の例としては、マイクロジェルE-1002、E-5002(日本ペイント社製商品名、スチレン-アクリル系樹脂エマルジョン)、ボンコート4001(DIC社製商品名、アクリル系樹脂エマルジョン)、ボンコート5454(DIC社製商品名、スチレン-アクリル系樹脂エマルジョン)、ポリゾールAM-710、AM-920、AM-2300、AP-4735、AT-860、PSASE-4210E(アクリル系樹脂エマルジョン)、ポリゾールAP-7020(スチレン・アクリル樹脂エマルジョン)、ポリゾールSH-502(酢酸ビニル樹脂エマルジョン)、ポリゾールAD-13、AD-2、AD-10、AD-96、AD-17、AD-70(エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルジョン)、ポリゾールPSASE-6010(エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルジョン)(昭和電工社製商品名)、ポリゾールSAE1014(商品名、スチレン-アクリル系樹脂エマルジョン、日本ゼオン社製)、サイビノールSK-200(商品名、アクリル系樹脂エマルジョン、サイデン化学社製)、AE-120A(JSR社製商品名、アクリル樹脂エマルジョン)、AE373D(イーテック社製商品名、カルボキシ変性スチレン・アクリル樹脂エマルジョン)、セイカダイン1900W(大日精化工業社製商品名、エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルジョン)、ビニブラン2682(アクリル樹脂エマルジョン)、ビニブラン2886(酢酸ビニル・アクリル樹脂エマルジョン)、ビニブラン5202(酢酸アクリル樹脂エマルジョン)(日信化学工業社製商品名)、エリーテルKA-5071S、KT-8803、KT-9204、KT-8701、KT-8904、KT-0507(ユニチカ社製商品名、ポリエステル樹脂エマルジョン)、ハイテックSN-2002(東邦化学社製商品名、ポリエステル樹脂エマルジョン)、タケラックW-6020、W-635、W-6061、W-605、W-635、W-6021(三井化学ポリウレタン社製商品名、ウレタン系樹脂エマルジョン)、スーパーフレックス870、800、150、420、460、470、610、700(第一工業製薬社製商品名、ウレタン系樹脂エマルジョン)、パーマリンUA-150(三洋化成工業株式会社製、ウレタン系樹脂エマルジョン)、サンキュアー2710(日本ルーブリゾール社製、ウレタン系樹脂エマルジョン)、NeoRez R-9660、R-9637、R-940(楠本化成株式会社製、ウレタン系樹脂エマルジョン)、アデカボンタイター HUX-380,290K(株式会社ADEKA製、ウレタン系樹脂エマルジョン)、モビニール966A、モビニール7320(日本合成化学株式会社製)、ジョンクリル7100、390、711、511、7001、632、741、450、840、74J、HRC-1645J、734、852、7600、775、537J、1535、PDX-7630A、352J、352D、PDX-7145、538J、7640、7641、631、790、780、7610(以上、BASF社製)、NKバインダーR-5HN(新中村化学工業株式会社製)、ハイドランWLS-210(非架橋性ポリウレタン:DIC株式会社製)、ジョンクリル7610(BASF社製)等が挙げられる。
【0076】
インクジェットインク組成物に樹脂粒子を含有させる場合の含有量は、インクジェットインク組成物の全質量に対して、固形分として、0.1質量%以上20質量%以下、好ましくは1質量%以上15質量%以下、より好ましくは2質量%以上10質量%以下である。
【0077】
1.4.2.3.キレート化剤
本実施形態のインクジェットインク組成物は、キレート化剤を使用してもよい。キレート化剤は、インクジェットインク組成物中の所定のイオンを除去することができる。
【0078】
キレート化剤の例としては、EDTA、EDTA-2Na(エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム塩)、EDTA-3Na(エチレンジアミン四酢酸一水素三ナトリウム塩)、EDTA-4Na(エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩)、及び、EDTA-3K(エチレンジアミン四酢酸一水素三カリウム塩)などのエチレンジアミン四酢酸及びその塩類、DTPA、DTPA-2Na(ジエチレントリアミン五酢酸二ナトリウム塩)、及び、DTPA-5Na(ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム塩)などのジエチレントリアミン五酢酸及びその塩類、NTA、NTA-2Na(ニトリロ三酢酸二ナトリウム塩)、及び、NTA-3Na(ニトリロ三酢酸三ナトリウム塩)などのニトリロ三酢酸及びその塩類、エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸及びその塩類、3-ヒドロキシ-2,2’-イミノジコハク酸及びその塩類、L-アスパラギン酸-N,N’-二酢酸及びその塩類、L-グルタミン酸二酢酸及びその塩類、N-(1-カルボキシラトメチル)イミノ二酢酸及びその塩類、並びに、N-(2-ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸及びその塩類を挙げることができる。
【0079】
また、酢酸アナログ以外のキレート化剤の例としては、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸及びその塩類、エチレンジアミンテトラメタリン酸及びその塩類、エチレンジアミンピロリン酸及びその塩類、並びに、エチレンジアミンメタリン酸及びその塩類等が挙げられる。
【0080】
本実施形態のインクジェットインク組成物にキレート化剤を含有させる場合、上記例示したものから選択して1種又は2種以上を用いることができる。
【0081】
1.4.2.4.pH調整剤
本実施形態のインクジェットインク組成物は、pH調整剤を添加することができる。pH調整剤としては、特に限定されないが、酸、塩基、弱酸、弱塩基の適宜の組み合わせが挙げられる。そのような組み合わせに用いる酸、塩基の例としては、無機酸として、硫酸、塩酸、硝酸等、無機塩基として水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア等が挙げられ、有機塩基として、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(THAM)等が挙げられ、有機酸として、アジピン酸、クエン酸、コハク酸、乳酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(BES)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、モルホリノエタンスルホン酸(MES)、モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)、カルバモイルメチルイミノビス酢酸(ADA)、ピペラジン-1,4-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸(ACES)、コラミン塩酸、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸(TES)、アセトアミドグリシン、トリシン、グリシンアミド、ビシン等のグッドバッファー、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液等を用いてもよい。さらに、これらのうち、pH調整剤の一部又は全部として、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールア
ミン等の第三級アミン、及び、アジピン酸、クエン酸、コハク酸、乳酸等のカルボキシル基含有有機酸、が含まれることが、pH緩衝効果をより安定に得ることができるため好ましい。
【0082】
1.4.2.5.尿素類
インクジェットインク組成物の保湿剤として、あるいは、染料の染着性を向上させる染着助剤として、尿素類を使用してもよい。尿素類の具体例としては、尿素、エチレン尿素、テトラメチル尿素、チオ尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等が挙げられる。尿素類を含有する場合には、その含有量は、インクジェットインク組成物の全質量に対して、1質量%以上10質量%以下とすることができる。
【0083】
1.4.2.6.防腐剤、防かび剤、防錆剤
インクジェットインク組成物は、防腐剤、防かび剤を使用してもよい。防腐剤、防かび剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2-ピリジンチオール-1-オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2-ジベンゾイソチアゾリン-3-オン(ゼネカ社のプロキセルCRL、プロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL-2、プロキセルTN、プロキセルLV)、4-クロロ-3-メチルフェノール(バイエル社のプリベントールCMK等)などが挙げられる。防錆剤としては、例えば、ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0084】
1.4.2.7.糖類
インクジェットインク組成物の固化、乾燥を抑制する目的で、糖類を使用してもよい。糖類の具体例としては、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール(ソルビット)、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、及びマルトトリオース等が挙げられる。
【0085】
1.4.2.8.その他
さらに上記以外の成分として、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、溶解助剤など、インクジェット用のインクジェットインク組成物において通常用いることができる添加剤を含有してもよい。
【0086】
1.5.NVP及びHEPの含有比率
本実施形態のインクジェットインク組成物は、HEPによる色材の溶解効果を得るとともに、NVPによってHEPによる粘度上昇又は油状分離促進を抑制することができる。このときNVPは、既に述べたように相対的に少量であっても十分な効果が得られる。
【0087】
N-ヒドロキシエチルピロリドン(HEP)の含有量に対するN-ビニル-2-ピロリドン(NVP)の含有量の比率(NVPの含有量/HEPの含有量)の好ましい範囲としては、質量基準で200以上20000以下、より好ましくは250以上15000以下、さらに好ましくは500以上10000以下、さらに好ましくは1000以上5000以下である。HEP及びNVPの含有量の比率が上記範囲内であれば、より良好な吐出安定性及びより良好な目詰まり回復性を得ることができる。
【0088】
1.6.インクジェットインク組成物の製造及び物性
インクジェットインク組成物は、上述の成分を任意の順序で混合し、必要に応じて濾過などを行い、不純物を除去することにより得ることができる。混合方法としては、メカニカルスターラーやマグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合する方法が好適に用いられる。濾過方法として、例えば、遠心濾過やフィルター濾過などを必要に応じて行うことができる。
【0089】
インクジェットインク組成物は、インクジェット用インクとしての信頼性の観点から、20℃における表面張力が20mN/m以上40mN/m以下であることが好ましく、22mN/m以上35mN/m以下であることがより好ましい。また、同様の観点から、インクの20℃における粘度は、1.5mPa・s以上10mPa・s以下であることが好ましく、2mPa・s以上8mPa・s以下であることがより好ましい。表面張力及び粘度を前記範囲内とする、一つの手法としては、上述した有機溶剤や界面活性剤の種類、及びこれらと水の添加量等を調整することが挙げられる。
【0090】
2.記録方法
本実施形態の記録方法は、上述のインクジェットインク組成物を用い、インクジェットインク組成物を、インクジェットヘッドから吐出して、記録媒体に付着させる工程を含む。以下、記録媒体、記録方法で用い得るインクジェット記録装置及び工程について説明する。
【0091】
2.1.記録媒体
記録媒体としては、特に限定されず、液体を吸収する記録面を有するものであっても、液体を吸収する記録面を有しないものであってもよい。したがって記録媒体としては、特に制限はなく、例えば、紙、フィルム、布、金属、ガラス、高分子等を用いることができる。また、記録媒体に対して昇華転写を行うための転写紙についてもインクジェット捺染記録方法の記録媒体とし得る。
【0092】
布帛としては、特に限定されない。布帛を構成する素材としては、特に限定されず、例えば、綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、ポリプロピレン、ポリエステル、アセテート、トリアセテート、ポリアミド、ポリウレタン等の合成繊維、ポリ乳酸等の生分解性繊維などが挙げられ、これらの混紡繊維であってもよい。布帛としては、上記に挙げた繊維を、織物、編物、不織布等いずれの形態にしたものでもよいし、混織等を施したものでもよい。
【0093】
2.2.インクジェット記録装置
インクジェット記録装置は、シリアル型及びライン型のいずれでも使用することができる。これらの型のインクジェット記録装置には、インクジェットヘッドが搭載されており、記録媒体とインクジェットヘッドとの相対的な位置関係を変化させながら、インクジェットヘッドのノズル孔からインクジェットインク組成物の液滴を所定のタイミングでかつ所定の体積(質量)で吐出させ、記録媒体にインクジェットインク組成物を付着させて所定の画像を形成することができる。
【0094】
本実施形態で用いられるインクジェット記録装置には、例えば、乾燥ユニット、ロールユニット、巻き取り装置などの公知の構成を任意に採用することができる。また、インクジェット記録装置は、記録媒体を搬送する搬送手段、インク組成物を用いて画像を記録する画像層形成手段、乾燥手段、記録面の加熱及び送風を行なう全体乾燥手段等を有することができる。
【0095】
搬送手段は、例えば、ローラーによって構成されることができる。その場合、複数のローラーを有してもよい。また別の手段として、記録媒体をゴムベルト等に密着・吸着させて搬送する方法等を用いてもよい。搬送手段は、記録媒体が搬送できる限り、設けられる位置や個数は任意である。搬送手段は、ロール機構、トレイ及び各種のプラテンなどを備えてもよい。
【0096】
画像層形成手段は、記録媒体の記録面に対して、本実施形態のインクジェットインク組成物を吐出して画像層を記録する。画像層形成手段は、ノズルを備えたインクジェットヘ
ッドを備えており、所定の組成物毎にノズル列が割り当てられる。
【0097】
乾燥手段は、記録面に形成される画像層の加熱、乾燥及び/又は記録媒体上の揮発成分の除去のために使用できる。乾燥手段は、付着工程を行なうタイミングと、記録媒体の搬送経路等を考慮していずれの位置に設けてもよいし、いくつ設けてもよい。画像層乾燥手段としては、プラテン加熱等により記録媒体に熱を加える方法、記録媒体上の画像に風を吹きつける方法、さらにそれらを組み合わせる方法等が挙げられる。具体的には、これらの方法に用いられる手段としては、強制空気加熱、輻射加熱、電導加熱、高周波乾燥、マイクロ波乾燥等であってもよい。
【0098】
2.3.記録方法の各工程
インクジェットインク組成物を記録媒体へ付着させる工程は上述のインクジェット記録装置を用いて行うことができる。すなわち、インクジェットインク組成物を所定のノズルから吐出できるように、インクジェットヘッドに充填し、その状態で所定のタイミングで記録媒体に対して吐出させることで、インクジェットインク組成物を記録媒体へ付着させる工程を行うことができる。
【0099】
また、本実施形態の記録方法は、適宜、記録媒体を加熱する工程を備えてもよい。記録媒体を加熱する工程は、例えば、インクジェット記録装置を用いる場合には、上述の乾燥手段等を用いて行うことができる。また、インクジェット記録装置に限らず、適宜の乾燥手段により行うことができる。これにより得られる画像を乾燥させ、画像の滲みを抑制したり、より効率的に定着させたりすることができる。
【0100】
本実施形態の記録方法は、さらに、他の工程を適宜付加することができ、例えば、他の組成物を付与する工程、洗浄工程等を有してもよい。本実施形態の記録方法によれば、上述のインクジェットインク組成物を用いるので、良好な吐出安定性と、良好な目詰まり回復性とにより安定した記録を行うことができる。
【0101】
3.実施例
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。以下「%」は、特に記載のない限り、質量基準である。
【0102】
3.1.インクジェットインク組成物の調製
(実施例1~16、比較例1~3の調製)
表1及び表2の組成になるように各成分を容器に入れて、マグネチックスターラーで2時間混合及び攪拌した後、孔径5μmのメンブランフィルターで濾過することで、実施例及び比較例に係るインクジェットインク組成物を得た。
【0103】
(実施例17、比較例4の調製)
Pigment Red 122 40g、ジョンクリル611 10g、トリエタノールアミン 5g、超純水200gを混合し、ジルコニアビーズによるボールミルにて10時間分散を行った。得られた分散原液を孔径約8μmのメンブレンフィルターで濾過して粗大粒子を除き、超純水で顔料濃度10質量%になるように希釈して顔料分散液を調製した。
次に、表1に記載の材料のうち、Pigiment Red 122、ジョンクリル611、トリエタノールアミン水を除く成分を容器に入れ、超純水15質量%をさらに加えて攪拌・混合した。これに上記の顔料分散液を40質量%分と、更に全体が100質量%となるように水を加えて2時間攪拌し、孔径約5μmのメンブレンフィルターにて濾過することで、実施例17および比較例4のインクジェットインク組成物を得た。
【0104】
【0105】
【0106】
表中、商品名で記載した成分は、以下の通りである。
・ジョンクリル611:スチレン-アクリル酸共重合体(BASFジャパン株式会社製)
・タケラックWS-5100:ウレタン系樹脂エマルション(三井化学株式会社製、なお、表中の数値は固形分量を表す。)
・オルフィンE1010:アセチレングリコール系界面活性剤(日信化学工業株式会社製)
・オルフィンP002W:アセチレングリコール系界面活性剤(日信化学工業株式会社製)
・サーフィノール104PG-50:アセチレングリコール系界面活性剤(日信化学工業株式会社製)
・プロキセルXL-2:BIT系防腐剤(ロンザジャパン株式会社製)
なお、その他の成分は、市販されているものを用いた。
【0107】
3.2.評価方法
3.2.1.吐出回復性
調製した各例のインクジェットインク組成物を、それぞれインクジェットプリンター EW-M770T(セイコーエプソン株式会社製)のCyan列に充填した。次いで、クリーニング動作を行い、その途中で(インクジェットヘッドがCap部から離れて印字部に移動してきたとき)、電源ケーブルを抜いて強制的に停止させた。この状態で常温にて2週間放置した後、再び電源ケーブルを挿して電源を入れ、その後、正常に吐出するようになるまでに要したクリーニング回数を数えた。以下の基準で評価し、結果を表に記載した。
A:クリーニング4回以内で回復
B:クリーニング7回以内で回復
C:クリーニング10回以内で回復
D:クリーニング10回行っても回復せず
【0108】
3.2.2.連続吐出安定性(1)
インクジェット捺染機 Monna Lisa Evo Tre 32-180(セイコーエプソン株式会社製)に各例のインクジェットインク組成物をそれぞれ充填し、前処理を施した100%絹布(ツイル、50~60g/m2、幅140cm)のロールをセットし、600×600D.P.I.2Passモードにて連続印字を行った。絹布の前処理は、アルギン酸ナトリウム1質量%と、グアーガム1質量%と、硫酸アンモニウム4質量%と、尿素10質量%と、水84質量%と、を混合して作成した前処理液を布帛に塗布し、マングルにてピックアップ率20%で絞り、乾燥させて行った。絹布の送り量100m毎にノズルチェックを行い、抜け・曲がり等なく正常に印刷できているかを確認した。以下の基準で評価し、結果を表に記載した。
A:1000m以上、正常に印刷できた
B:500m以上、正常に印刷できた
C:200m以上、正常に印刷できた
D:200m以内に飛行曲りが発生した
【0109】
3.2.3.連続吐出安定性(2)
インクジェットプリンターEW-M770T(セイコーエプソン株式会社製)の任意のカラー列(Cyan、Magenta、Yellow、Photo Black列)にインクジェットインク組成物を充填し、FUJI XEROX社製プリンター用紙「P」(A4判)をセットし、普通紙・標準モードにて連続印字を行った。1000枚毎にノズルチェックを行い、抜け・曲がり等なく正常に印刷できているかを確認した。以下の基準で評価し、結果を表に記載した。
A:5000枚以上、正常に印刷できた
B:2500枚以上、正常に印刷できた
C:1000枚以上、正常に印刷できた
D:1000枚以内に飛行曲りが発生した
【0110】
3.3.評価結果
色材と、有機溶剤と、水とを含有し、有機溶剤として、N-ヒドロキシエチルピロリドン(HEP)と、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)と、を含有する、各実施例のインクジェットインク組成物は、良好な吐出安定性、及び良好な目詰まり回復性を示すことが判明した。
【0111】
上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態及び各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0112】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0113】
上述した実施形態及び変形例から以下の内容が導き出される。
【0114】
インクジェットインク組成物の一態様は、
色材と、有機溶剤と、水とを含有するインクジェットインク組成物であって、
前記有機溶剤として、N-ヒドロキシエチルピロリドンと、
N-ビニル-2-ピロリドンと、を含有する、インクジェットインク組成物。
【0115】
このインクジェットインク組成物によれば、色材が染料である場合には、染料の可溶化剤として、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン(HEP)を用いているので、染料の析出や固化を抑制することができる。その上、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)を併用しているので、染料の溶解性を良好とし、良好な吐出安定性と、良好な目詰まり回復性と、を得ることができる。
【0116】
また、このインクジェットインク組成物によれば、色材として顔料を用いる場合には、HEPを含む結果、顔料を効果的に記録媒体上に残しつつ溶媒を速やかに記録媒体に浸透させることができる。その上、HEPの高い親水性に由来する組成物における油状分離を、NVPを含むことにより、抑制することができ、良好な吐出安定性と、良好な目詰まり回復性と、を得ることができる。
【0117】
上記インクジェットインク組成物の態様において、
前記N-ヒドロキシエチルピロリドンの含有量が、インクジェットインク組成物の総量に対して1.0質量%以上20.0質量%以下であってもよい。
【0118】
このインクジェットインク組成物によれば、粘度がさらに抑制され、かつ、より良好な吐出安定性(連続吐出信頼性)を得ることができる。また、色材の溶解性や分散性が良好で、良好な目詰まり回復性を得ることができる。
【0119】
上記インクジェットインク組成物の態様において、
前記N-ヒドロキシエチルピロリドンの含有量に対する前記N-ビニル-2-ピロリドンの含有量の比率(N-ビニル-2-ピロリドンの含有量/N-ヒドロキシエチルピロリドンの含有量)が、質量基準で500以上10000以下であってもよい。
【0120】
このインクジェットインク組成物によれば、より良好な吐出安定性及びより良好な目詰まり回復性を得ることができる。
【0121】
上記インクジェットインク組成物の態様において、
前記有機溶剤として、炭素数3以上6以下のアルカンジオール、及び、下記式(1)で表されるグリコールエーテルから選択される1種以上を、含有してもよい。
R1-O-(CH2-CH2-O)n-R2 ・・・(1)
(式(1)中、R1は、H又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、R2は、炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、nは、2以上3以下の整数を表す。)
【0122】
このインクジェットインク組成物によれば、HEPよりも親水性が抑制された式(1)で表される有機溶剤により、インクジェットインク組成物の全体の親水性をより良好な範囲に調節することができる。
【0123】
上記インクジェットインク組成物の態様において、
前記色材が、水溶性染料であってもよい。
【0124】
このインクジェットインク組成物によれば、染料の可溶化剤として、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン(HEP)を用いているので、染料の析出や固化を抑制することができる。その上、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)を併用しているので、染料の溶解性を良好とし、良好な吐出安定性と、良好な目詰まり回復性と、を得ることができる。
【0125】
上記インクジェットインク組成物の態様において、
前記水溶性染料が、酸性染料、直接染料、及び、反応染料から選択される1種以上であってもよい。
【0126】
上記インクジェットインク組成物の態様において、
前記水溶性染料の含有量が、インクジェットインク組成物の総量に対して5.0質量%以上20.0質量%であってもよい。
【0127】
このインクジェットインク組成物によれば、色材の含有量がより多い場合であっても、溶解性が良好で、高い発色性を維持しながら、吐出安定性、目詰まり回復性を良好とできる。
【0128】
記録方法の一態様は、上記いずれかの態様のインクジェットインク組成物を、インクジェットヘッドから吐出して、記録媒体に付着させる工程を含む。
【0129】
この記録方法によれば、良好な吐出安定性と、良好な目詰まり回復性とを得ることができる。