(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】回路装置、電気光学装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
G09G 3/20 20060101AFI20240611BHJP
G02F 1/133 20060101ALI20240611BHJP
G09G 3/36 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G09G3/20 621F
G02F1/133 505
G09G3/20 621L
G09G3/20 623D
G09G3/20 623L
G09G3/20 623R
G09G3/20 623X
G09G3/20 623Y
G09G3/20 670C
G09G3/36
(21)【出願番号】P 2020067181
(22)【出願日】2020-04-03
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100166523
【氏名又は名称】西河 宏晃
(74)【代理人】
【識別番号】100187539
【氏名又は名称】藍原 由和
(72)【発明者】
【氏名】冨江 晃弘
【審査官】石本 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-279539(JP,A)
【文献】特開2017-167425(JP,A)
【文献】特開2015-094766(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0180589(US,A1)
【文献】特開2012-189756(JP,A)
【文献】国際公開第2012/102229(WO,A1)
【文献】特開2003-157063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F1/133
G09G3/00-3/38
H05B33/00-33/28
44/00
45/60
H10K50/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1~第nデータ線(nは3以上の整数)とデータ信号供給線との間に設けられるスイッチ回路を含む電気光学パネルを駆動する回路装置であって、
前記データ信号供給線にデータ信号を出力するデータ線駆動回路と、
前記第1~第nデータ線と前記データ信号供給線の接続を制御する第1~第n選択信号を、前記スイッチ回路に出力する選択信号出力回路と、
チップセレクト信号とデータとを受信するインターフェース回路と、
前記チップセレクト信号がハイレベルのときイネーブルとなる書き込みイネーブル信号を生成し、前記書き込みイネーブル信号がイネーブルになったときレジスターに前記データを書き込むレジスター設定処理を行う処理回路と、
を含み、
前記選択信号出力回路は、
プリチャージ期間において前記第1~第n選択信号を一括にアクティブにして前記第1~第nデータ線をプリチャージし、
前記処理回路は、
前記プリチャージ期間において前記チップセレクト信号がローレベルからハイレベルになったとき、前記プリチャージ期間の終了後に前記書き込みイネーブル信号をイネーブルにすることで、前記書き込みイネーブル信号がイネーブルになるタイミングと、前記第1~第n選択信号の遷移タイミングとを異ならせることを特徴とする回路装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回路装置において、
前記処理回路は、
画素駆動期間においては、前記チップセレクト信号がローレベルからハイレベルになったときに前記書き込みイネーブル信号をイネーブルにすることを特徴とする回路装置。
【請求項3】
請求項
1に記載の回路装置において、
前記処理回路は、
第1~第n選択制御信号を出力し、
前記選択信号出力回路は、
前記第1~第n選択制御信号に基づいて、前記第1~第n選択信号を出力し、
前記プリチャージ期間において、前記第1~第n選択信号のうち少なくとも2つの選択信号の遷移タイミングを異ならせる遅延処理を行うことを特徴とする回路装置。
【請求項4】
請求項3に記載の回路装置において、
前記処理回路は、
前記プリチャージ期間において、遷移タイミングが互いに同じである前記第1~第n選択制御信号を出力し、
前記選択信号出力回路は、
前記第1~第n選択制御信号に対して前記遅延処理を行うことで、前記第1~第n選択信号のうち前記少なくとも2つの選択信号の遷移タイミングを異ならせることを特徴とする回路装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の回路装置において、
前記選択信号出力回路は、
画素駆動期間において前記遅延処理を行わずに、前記第1~第n選択制御信号に基づいて前記第1~第n選択信号を出力することを特徴とする回路装置。
【請求項6】
請求項3
又は4に記載の回路装置において、
前記選択信号出力回路は、
前記プリチャージ期間において、前記第1~第n選択制御信号のうち第i選択制御信号(iは1以上n以下の整数)を第i遅延量で遅延させた信号を前記第1~第n選択信号のうち第i選択信号として出力する第iタイミング調整回路を含むことを特徴とする回路装置。
【請求項7】
請求項6に記載の回路装置において、
前記選択信号出力回路は、
前記プリチャージ期間において、前記第1~第n選択制御信号のうち第j選択制御信号(jは1以上n以下でj≠iの整数)を第j遅延量で遅延させた信号を前記第1~第n選択信号のうち第j選択信号として出力する第jタイミング調整回路を含み、
前記第j遅延量は、前記第i遅延量と異なることを特徴とする回路装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の回路装置において、
前記第iタイミング調整回路は、
直列接続された第1~第q遅延回路(qは2以上の整数)と、
前記第i選択制御信号及び前記第1~第q遅延回路の第1~第q出力ノードからの信号が入力され、前記プリチャージ期間において前記第i選択制御信号及び前記第1~第q出力ノードからの信号のいずれかを第i出力信号として出力するセレクターと、
前記第i出力信号をレベルシフトすることで前記第i選択信号を出力するレベルシフターと、
を含み、
前記第1~第q遅延回路の第1遅延回路に前記第i選択制御信号が入力されることを特徴とする回路装置。
【請求項9】
請求項8に記載の回路装置において、
前記セレクターは、
画素駆動期間において前記第i選択制御信号を前記第i出力信号として出力することを特徴とする回路装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の回路装置と、
前記電気光学パネルと、
を含むことを特徴とする電気光学装置。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の回路装置を含むことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路装置、電気光学装置及び電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
電気光学パネルを駆動する表示ドライバーにおいて、画素にデータ電圧を書き込む前に所与のプリチャージ電圧をデータ線に印加することで、画質を改善する手法が知られている。特許文献1、2に、表示ドライバーに関する技術が開示されている。特許文献1には、表示処理を行う処理回路と、表示処理に基づいて表示パネルを駆動する駆動回路と、処理回路及び駆動回路に電源を供給する電源回路と、を含む表示ドライバーが開示されている。特許文献1では、1つの電源回路から各部に電源が供給されている。特許文献2には、電気光学パネルのデマルチプレクサーに複数の選択信号を出力することで、デマルチプレクス駆動を行う表示ドライバーが開示されている。画素駆動時には、複数の選択信号が1つずつアクティブにされるが、プリチャージ時には、全ての選択信号が同時にアクティブにされることで電気光学パネルの全ての信号線がプリチャージされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-97174号公報
【文献】特開2015-79138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気光学パネルのデマルチプレクサーに複数の選択信号を出力する表示ドライバーにおいて、外部から供給された制御信号に基づくロジック回路の信号処理が、プリチャージ時にエラーとなる場合があるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、第1~第nデータ線(nは3以上の整数)とデータ信号供給線との間に設けられるスイッチ回路を含む電気光学パネルを駆動する回路装置であって、前記データ信号供給線にデータ信号を出力するデータ線駆動回路と、第1~第n選択制御信号を出力する処理回路と、前記第1~第n選択制御信号に基づいて、前記第1~第nデータ線と前記データ信号供給線との接続を制御する第1~第n選択信号を、前記スイッチ回路に出力する選択信号出力回路と、を含み、前記選択信号出力回路は、プリチャージ期間において前記第1~第n選択信号をアクティブにして前記第1~第nデータ線をプリチャージし、画素駆動期間において前記第1~第n選択信号のうち駆動される画素のデータ線に対応する選択信号をアクティブにし、前記プリチャージ期間において、前記第1~第n選択信号のうち少なくとも2つの選択信号の遷移タイミングを異ならせる遅延処理を行う回路装置に関係する。
【0006】
また本開示の他の態様は、第1~第nデータ線(nは3以上の整数)とデータ信号供給線との間に設けられるスイッチ回路を含む電気光学パネルを駆動する回路装置であって、前記データ信号供給線にデータ信号を出力するデータ線駆動回路と、第1~第n選択制御信号を出力する処理回路と、前記第1~第n選択制御信号に基づいて、前記第1~第nデータ線と前記データ信号供給線の接続を制御する第1~第n選択信号を、前記スイッチ回路に出力する選択信号出力回路と、外部制御信号が入力される入力端子と、を含み、前記処理回路は、前記外部制御信号に基づく制御信号を用いてレジスター設定処理を行い、前記選択信号出力回路により前記第1~第n選択信号がアクティブにされることで前記第1~第nデータ線がプリチャージされるプリチャージ期間において、前記制御信号の遷移タイミングと、前記第1~第n選択信号の遷移タイミングの少なくとも2つの遷移タイミングとが、ずれている回路装置に関係する。
【0007】
また本開示の更に他の態様は、上記のいずれかに記載の回路装置と、前記電気光学パネルと、を含む電気光学装置に関係する。
【0008】
また本開示の更に他の態様は、上記のいずれかに記載の回路装置を含む電子機器に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】設定インターフェースがデータ受信するときの波形図。
【
図11】本実施形態の第2動作例を説明する波形図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが必須構成要件であるとは限らない。
【0011】
1.回路装置、電気光学パネル
図1に、本実施形態の回路装置100が駆動する電気光学パネル200の構成例を示し、
図2に、本実施形態の回路装置100の構成例を示す。
【0012】
まず
図1の電気光学パネル200について説明する。電気光学パネル200は、デマルチプレクス駆動方式によって駆動されるアクティブマトリクス型の表示パネルであり、例えば液晶表示パネル或いはEL(Electro Luminescence)表示パネルである。電気光学パネル200は、データ信号入力端子TD1~TDpとデータ信号供給線SL1~SLpと選択信号入力端子TSI1~TSI4と選択信号線LL1~LL4とスイッチ回路210とデータ線DL1~DLmと走査信号線GL1~GLkと複数の画素PXとを含む。pは2以上の整数である。mはpにデマルチプレクス数を乗じた整数である。kは2以上の整数である。
【0013】
選択信号線LL1の一端は選択信号入力端子TSI1に接続される。同様に、選択信号線LL2~LL4の一端は選択信号入力端子TSI2~TSI4に接続される。データ信号供給線SL1の一端はデータ信号入力端子TDI1に接続される。同様に、データ信号供給線SL2~SLpの一端はデータ信号入力端子TDI2~TDIpに接続される。
【0014】
スイッチ回路210は、トランジスターSD1~SDmを含む。トランジスターSD1~SDmは、スイッチとして動作し、例えばTFT(Thin Film Transistor)で構成されたN型トランジスターである。トランジスターSD1~SD4のソース又はドレインの一方はデータ信号供給線SL1の他端に共通接続される。トランジスターSD1のソース又はドレインの他方はデータ線DL1の一端に接続される。同様に、トランジスターSD2~SD4のソース又はドレインの他方はデータ線DL2~DL4の一端に接続される。トランジスターSD1のゲートは選択信号線LL1に接続される。同様に、トランジスターSD2~SD4のゲートは選択信号線LL2~LL4に接続される。トランジスターSD2~SD4と同様な構成がトランジスターSD5~SDmにおいても繰り返される。
【0015】
複数の画素PXは、m×k個の画素である。1つの画素PXには、データ線DL1~DLmのうち1つのデータ線と、走査信号線GL1~GLkのうち1つの走査信号線とが接続される。なお、電気光学パネル200は、走査信号線GL1~GLkに走査信号を出力する不図示の走査ドライバーを含んでもよい。或いは、走査ドライバーは回路装置100に設けられてもよい。
【0016】
次に
図2の回路装置100について説明する。回路装置100は、電気光学パネル200を駆動する表示ドライバーであり、半導体プロセスにより回路素子が基板上に構成された集積回路装置である。回路装置100は、データ線駆動回路110と処理回路120と選択信号出力回路130とインターフェース回路140と選択信号出力端子TSQ1~TSQ4とデータ信号出力端子TDQ1~TDQpとインターフェース端子TXCS、TSCK、TSI、THYとを含む。各端子は、集積回路装置の基板に設けられるパッド、又は集積回路装置のパッケージに設けられる端子である。なお
図2ではインターフェース端子THYを1つに省略したが、実際には入力信号の数に応じた端子が設けられる。
【0017】
インターフェース回路140は、外部の処理装置と回路装置100との間の通信を行う。インターフェース回路140は、表示インターフェース141と設定インターフェース142とを含む。
【0018】
表示インターフェース141としては、RGBインターフェース方式又はLVDS(Low Voltage Differential Signal)方式等の種々の画像データインターフェースが採用される。表示インターフェース141は、インターフェース端子THYを介して入力された表示データ及び表示制御信号を受信する。表示制御信号は、クロック信号と同期信号等である。
【0019】
設定インターフェース142としては、SPI(Serial Peripheral Interface)方式又はI2C(Inter Integrated Circuit)方式等の種々のシリアルインターフェースが採用される。以下では、設定インターフェース142がSPI方式である例を説明する。設定インターフェース142は、インターフェース端子TXCSを介して入力されるチップセレクト信号XCSと、インターフェース端子TSCKを介して入力されるクロック信号SCKと、インターフェース端子TSIを介して入力されるシリアルデータ信号SIと、を受信する。
【0020】
処理回路120は、画像データに対する信号処理、表示タイミングの制御、及び回路装置100の動作設定処理を行う。処理回路120は、レジスター121と設定制御回路122と表示制御回路123とを含む。処理回路120はロジック回路であり、例えば自動配置配線により構成されるゲートアレイ、或いは自動配線により構成されるスタンダードセルアレイ等である。なお、処理回路120と、インターフェース回路140の一部又は全部と、選択信号出力回路130の一部又は全部が、一体のゲートアレイ又はスタンダードセルアレイとして構成されてもよい。
【0021】
表示制御回路123は、表示インターフェース141が受信した表示データと表示制御信号に基づいて表示タイミング制御を行う。具体的には、表示制御回路123は、選択制御信号CTS1~CTS4を出力することでデマルチプレクス駆動のタイミングを行い、それに同期したタイミングで表示データPD1~PDpをデータ線駆動回路110に出力する。
【0022】
設定制御回路122は、設定インターフェース142が受信した信号に基づいてレジスター121に動作設定データを書き込む。処理回路120は、レジスター121に記憶された動作設定データに基づいて回路装置100の各部の動作設定を行う。
【0023】
データ線駆動回路110は、電気光学パネル200の画素PXにデータ信号を供給することで、電気光学パネル200を駆動する。データ線駆動回路110は、D/A変換回路DA1~DApとアンプ回路AM1~AMpとを含む。D/A変換回路DA1は、表示データPD1をD/A変換する回路であり、例えば複数の基準電圧の中から表示データPD1に対応した基準電圧を選択するスイッチ回路である。同様に、D/A変換回路DA2~DApは、表示データPD2~PDpをD/A変換する回路である。アンプ回路AM1は、D/A変換回路DA1の出力電圧を増幅又はバッファリングすることでデータ信号VQ1をデータ信号出力端子TDQ1に出力する回路である。同様に、アンプ回路AM2~AMpは、D/A変換回路DA2~DApの出力電圧を増幅又はバッファリングする回路である。アンプ回路AM1~AMpは、例えば演算増幅器、抵抗及びキャパシター等を含むことができる。データ信号出力端子TDQ1~TDQpは、電気光学パネル200のデータ信号入力端子TDI1~TDIpに接続される。
【0024】
選択信号出力回路130は、選択制御信号CTS1~CTS4に基づいて選択信号SEL1~SEL4を選択信号出力端子TSQ1~TSQ4に出力する。選択信号SEL1~SEL4は、データ線とデータ信号供給線との接続を制御する。データ信号供給線SL1を例にとると、選択信号SEL1~SEL4は、データ線DL1~DL4とデータ信号供給線SL1との接続を制御する。選択信号出力端子TSQ1~TSQ4は、電気光学パネル200の選択信号入力端子TSI1~TSI4に接続される。
【0025】
2.比較例における動作
図3は、比較例における動作を説明する波形図である。VQxは、VQ1~VQpのうち任意の1つを示している。xは1以上p以下のいずれかの整数である。
【0026】
画素PXが駆動される画素駆動期間TDGの前にプリチャージ期間TPRが設けられる。プリチャージ期間TPRにおいて、表示制御回路123は、プリチャージ電圧VPRに対応した表示データPDxを出力し、アンプ回路AMxがプリチャージ電圧VPRを出力する。
【0027】
プリチャージ期間TPRにおいて、表示制御回路123は、選択制御信号CTS1~CTS4を同時にローレベルからハイレベルにし、同時にハイレベルからローレベルにする。これにより、選択信号出力回路130は、選択信号SEL1~SEL4を同時にローレベルからハイレベルにし、同時にハイレベルからローレベルにする。ここでは、スイッチ回路210のスイッチをオンにするアクティブレベルがハイレベルであり、スイッチをオフにする非アクティブレベルがローレベルであるとしている。即ち、選択信号SEL1~SEL4がハイレベルのとき、スイッチ回路210のトランジスターSD1~SDmが全てオンになり、データ線DL1~DLm及びそれに接続される画素PXにプリチャージ電圧VPRが印加される。
【0028】
画素駆動期間TDGにおいて、表示制御回路123は、表示インターフェース141から入力された表示データに基づく表示データPDxを出力する。表示データPDxは、4画素分がマルチプレクスされたデータとなっている。アンプ回路AM1~AMnは、データ信号VQxとして、表示データPDxに対応したデータ電圧VG1~VG4を順次に出力する。
【0029】
データ電圧VG1が出力される期間において、表示制御回路123は、選択制御信号CTS1をハイレベルにし、それ以外の選択制御信号CTS2~CTS4をローレベルにする。選択信号出力回路130は、選択信号SEL1をハイレベルにし、それ以外の選択信号SEL2~SEL4をローレベルにする。これにより、スイッチ回路210のトランジスターSD1、SD5、・・・、SDm-3がオンになる。例えば走査信号線GL1が選択されているとすると、走査信号線GL1とデータ線DL1、DL5、・・・、DLm-3とに接続された画素PXにデータ電圧VG1が印加される。同様に、データ電圧VG2~VG4が出力される期間において、表示制御回路123は、選択制御信号CTS2~CTS4をハイレベルにし、それ以外の選択制御信号をローレベルにする。選択信号出力回路130は、選択信号SEL2~SEL4をハイレベルにし、それ以外の選択信号をローレベルにする。
【0030】
以上のように、比較例では選択信号SEL1~SEL4が同時にローレベルからハイレベルになり、同時にハイレベルからローレベルになるので、全てのデータ線DL1~DLm及びそれに接続される画素PXに対して同時にプリチャージを開始され、同時にプリチャージが停止されることになる。このプリチャージの電荷はアンプ回路AM1~AMnが供給するため、データ線駆動回路110の電源VDH及びグランドGNDに大きなノイズが発生する。具体的には、トランジスターSD1~SDmが同時にオンになることで、全てのデータ線DL1~DLm及び画素PXに対する電荷供給が一斉に開始され、それによって電源VDHにノイズが発生する。また、トランジスターSD1~SDmが同時にオフになることで、全てのデータ線DL1~DLm及び画素PXに対する電荷供給が一斉に停止され、それによってグランドGNDノイズが発生する。
【0031】
上記のノイズは、電源回路、グランド配線又は基板を介して処理回路120に伝わり、処理回路120における処理にエラーを発生させる場合がある。例えば、回路装置100は不図示の電源回路を含み、その電源回路は、外部電源に基づいて電源VDHと電源VDLとを生成する。電源VDLは、処理回路120及びインターフェース回路140に供給される。この電源回路を介して、データ線駆動回路110の電源VDH又はグランドGNDに発生したノイズが処理回路120の電源VDL又はグランドGNDに伝わる。或いは、回路装置100内のグランド配線又は基板を介して、データ線駆動回路110のグランドGNDに発生したノイズが処理回路120のグランドGNDに伝わる。
【0032】
図4は、上記ノイズによって生じるエラーの一例として、設定インターフェース142がデータ受信するときの波形図を示す。
【0033】
外部の処理装置は、チップセレクト信号XCSを立ち下げた後、クロック信号SCKと、クロック信号SCKに同期したシリアルデータ信号SIとを回路装置100に送信する。シリアルデータ信号SIは、外部の処理装置が回路装置100の動作を設定するコマンドであり、アドレスビットA11~A0とデータビットB11~B0を含む。
【0034】
設定インターフェース142は、シリアルパラレル変換とカウンターとデータセレクターとを含む。シリアルパラレル変換回路は、クロック信号SCKを用いてシリアルデータ信号SIをシリアルパラレル変換することで、パラレルデータを出力する。カウンターは、クロック信号SCKをカウントし、そのカウント値を出力する。データセレクターは、カウント値に基づいてパラレルデータからアドレスADDR及びデータDATを抽出する。アドレスADDRは、シリアルデータ信号SIのアドレスビットA11~A0に対応し、データDATは、シリアルデータ信号SIのデータビットB11~B0に対応する。またデータセレクターは、シリアルデータ信号SIの転送が終了したときアクティブとなる受信イネーブル信号ENを生成し、受信イネーブル信号ENがアクティブになったときアドレスADDR及びデータDATを保持する。
【0035】
設定インターフェース142は、受信したチップセレクト信号XCSを設定制御回路122に出力する。例えば、設定インターフェース142は、I/Oバッファーによりチップセレクト信号XCSを受信し、そのI/Oバッファーの出力を設定制御回路122に出力する。設定制御回路122は、チップセレクト信号XCSの立ち上がりタイミングにおいて、アドレスADDRにより指定されるレジスター121の記憶領域にデータDATを書き込む。即ち、レジスター121は複数のラッチ回路を含み、設定制御回路122は、データDATの各ビットを、アドレスADDRによって指定されたラッチ回路に書き込む。この書き込みタイミング、即ちチップセレクト信号XCSの立ち上がりタイミングをt0とする。設定制御回路122は、例えば、アドレスADDRを、レジスター121の物理アドレスにデコードするアドレスデコーダーを含む。
【0036】
外部の処理装置は任意のタイミングで設定インターフェース142に信号を送信するため、
図3で説明した電源VDH又はグランドGNDのノイズは、
図4で説明したインターフェース動作において任意のタイミングで発生し得る。このため、設定インターフェース142からレジスター121にデータ転送するタイミングt0と、電源VDH又はグランドGNDにノイズが発生するタイミングとが重なる可能性がある。
図4には、タイミングt0においてグランドGNDのノイズが発生した場合を示している。
【0037】
データ線駆動回路110の電源VDH又はグランドGNDに発生したノイズは、処理回路120の電源VDL又はグランドGNDに影響を与えるので、タイミングt0においてノイズが発生するとレジスター121がデータDATを保持できない場合がある。レジスター121がデータDATを正しく保持できないと、外部の処理装置が送信したコマンドが回路装置100に正しく反映されない。例えば、表示開始コマンド等が送信されたときに上記転送エラーが発生すると、電気光学パネル200に画像が表示されないという動作エラーが発生することになる。
【0038】
3.本実施形態の第1動作例
図5は、本実施形態の第1動作例を説明する波形図である。画素駆動期間TDGにおける動作は
図3と同様なので、その説明を省略する。
【0039】
選択信号出力回路130は、プリチャージ期間TPRにおいて、選択信号SEL1~SEL4のうち少なくとも2つの選択信号の遷移タイミングを異ならせる遅延処理を行う。具体的には、表示制御回路123は、プリチャージ期間TPRにおいて、表示制御回路123は、選択制御信号CTS1~CTS4を同時にローレベルからハイレベルにし、同時にハイレベルからローレベルにする。選択信号出力回路130は、選択制御信号CTS1~CTS4の遷移タイミングを遅延処理することで、選択信号SEL1~SEL4の遷移タイミングを異ならせる。なお
図5には、全ての選択信号SEL1~SEL4の遷移タイミングが異なる例を示している。
【0040】
以上の本実施形態によれば、選択信号出力回路130は、第1~第n選択制御信号に基づいて、第1~第nデータ線とデータ信号供給線との接続を制御する第1~第n選択信号を、スイッチ回路210に出力する。選択信号出力回路130は、プリチャージ期間TPRにおいて第1~第n選択信号をアクティブにして第1~第nデータ線をプリチャージし、画素駆動期間TDGにおいて第1~第n選択信号のうち駆動される画素のデータ線に対応する選択信号をアクティブにする。このとき、選択信号出力回路130は、第1~第n選択信号のうち少なくとも2つの選択信号の遷移タイミングを異ならせる遅延処理を行う。なお、
図1において、例えばデータ線DL1~DL4が第1~第nデータ線に対応する。また
図5において、選択制御信号CTS1~CTS4が第1~第nの選択制御信号に対応し、選択信号SEL1~SEL4が第1~第n選択信号に対応する。但し、nは4に限らず、3以上の整数であればよい。
【0041】
このようにすれば、第1~第nデータ線のうち少なくとも2つのデータ線と他のデータ線とで、プリチャージ開始タイミング及びプリチャージ終了タイミングが異なる。これにより、データ線駆動回路110の電源VDH及びグランドGNDのノイズ発生タイミングが分散され、電源VDH及びグランドGNDのノイズピークが低減される。これにより、処理回路120に回り込むノイズが低減されるので、処理回路120における処理のエラー発生が防止される。
【0042】
ここで、「少なくとも2つの選択信号の遷移タイミングを異ならせる」とは、第1~第n選択信号のうち2以上の選択信号と、それ以外の選択信号との遷移タイミングを異ならせることである。例えば、第1選択信号と第2選択信号の遷移タイミングが、第3~第n選択信号の遷移タイミングと異なっていてもよい。このとき、第1選択信号と第2選択信号の遷移タイミングが更に異なっていてもよいし、第3~第n選択信号の遷移タイミングが更に互いに異なっていてもよい。
【0043】
また本実施形態では、選択信号出力回路130は、画素駆動期間TDGにおいて遅延処理を行わずに、第1~第n選択制御信号に基づいて第1~第n選択信号を出力する。
【0044】
画素駆動期間TDGにおいて選択信号の遷移タイミングが変動すると、それに合わせて、アンプ回路がデータ電圧を出力するタイミングを変動させる必要がある。そうしないと、画素の駆動期間が短縮される等の不都合が生じるおそれがある。本実施形態によれば、画素駆動期間TDGにおいて第1~第n選択制御信号に遅延処理が加えられないので、第1~第n選択信号の遷移タイミングは遅延処理により変動しない。これにより、アンプ回路がデータ電圧を出力するタイミングを変える必要がなく、駆動タイミング制御が容易である。
【0045】
また処理回路120は、制御信号の遷移タイミングにおいてレジスター設定処理を行う。このとき、プリチャージ期間TPRにおいて、制御信号の遷移タイミングと、第1~第n選択信号のうち少なくとも2つの遷移タイミングとがずれている。
図4の例において、チップセレクト信号XCSが制御信号に対応し、レジスター121へデータDATを書き込む処理がレジスター設定処理に対応する。
【0046】
このようにすれば、第1~第n選択信号のうち、いずれかの選択信号の遷移タイミングが、制御信号の遷移タイミングに一致したとしても、全ての選択信号の遷移タイミングが制御信号の遷移タイミングに一致することはない。これにより、レジスター設定処理が行われるタイミングにおける電源VDL又はグランドGNDのノイズが低減されるので、レジスター設定処理のエラーが防止される。
【0047】
なお、
図4ではチップセレクト信号XCSを制御信号としてレジスター設定処理を行う例を説明したが、
図11で後述するように、外部制御信号であるチップセレクト信号XCSの遷移タイミングをずらした書き込みイネーブル信号XCSAを生成し、その書き込みイネーブル信号XCSAを制御信号としてレジスター設定処理を行ってもよい。この場合、書き込みイネーブル信号XCSAの遷移タイミングが第1~第n選択信号の遷移タイミングがずらされることで、プリチャージ期間TPRにおいて、制御信号の遷移タイミングと、第1~第n選択信号のうち少なくとも2つの遷移タイミングとがずれることになる。
【0048】
4.選択信号出力回路
図6は、選択信号出力回路130の詳細構成例である。選択信号出力回路130は、タイミング調整回路131~134と設定回路135とを含む。
【0049】
設定回路135は、選択信号SEL1~SEL4の遅延量を設定する遅延設定データTM1~TM4をタイミング調整回路131~134に出力する。例えば、外部の処理装置から設定インターフェース142を介して遅延設定データTM1~TM4が入力され、その遅延設定データTM1~TM4を設定回路135が保持する。
【0050】
タイミング調整回路131は、選択制御信号CTS1を第1遅延量で遅延させた信号を選択信号SEL1として出力する。同様に、タイミング調整回路132~134は、選択制御信号CTS2~CTS4を第2~第4遅延量で遅延させた信号を選択信号SEL2~SEL4として出力する。第1~第4遅延量は、遅延設定データTM1~TM4により設定された遅延量である。選択信号SEL1~SEL4の遷移タイミングは、第1~第4遅延量によって決まる。即ち、第1~第4遅延量のうち少なくとも2つの遅延量は、それ以外の遅延量と異なっている。
【0051】
図7は、タイミング調整回路131の詳細構成例である。タイミング調整回路131は、遅延回路EDL1~EDL7とセレクターSTRとレベルシフターLFSとを含む。なお、以下ではタイミング調整回路131を例に説明するが、タイミング調整回路132~134も同様な構成である。また遅延回路の段数は7に限定されず、2以上の任意の段数であってよい。
【0052】
遅延回路EDL1~EDL7は直列接続される。即ち、遅延回路EDL2の入力ノードは遅延回路EDL1の出力ノードに接続される。同様に、遅延回路EDL3~EDL7の入力ノードは遅延回路EDL2~EDL6の出力ノードに接続される。遅延回路EDL1の入力ノードに選択制御信号CTS1が入力され、その選択制御信号CTS1を遅延回路EDL1が遅延させることで信号EDLQ1を出力する。同様に、遅延回路EDL2~EDL7の入力ノードに、遅延回路EDL1~EDL6が出力した信号EDLQ1~EDLQ6が入力され、その信号EDLQ1~EDLQ6を遅延回路EDL2~EDL7が遅延させることで信号EDLQ2~EDLQ7を出力する。
【0053】
セレクターSTRは、選択制御信号CTS1及び信号EDLQ1~EDLQ7のいずれか1つを選択し、出力信号STRQとして出力する。具体的には、セレクターSTRは、プリチャージ期間TPRにおいて遅延設定データTM1に基づいて選択制御信号CTS1及び信号EDLQ1~EDLQ7のいずれか1つを選択し、画素駆動期間TDGにおいて選択制御信号CTS1を選択する。
【0054】
レベルシフターLFSは、出力信号STRQをレベルシフトすることで選択信号SEL1を出力する。具体的には、遅延回路EDL1~EDL7及びセレクターSTRは電源VDLで動作する。レベルシフターLFSは、電源VDLの信号レベルから電源VDHの信号レベルへのレベルシフトを行う。
【0055】
図8は、セレクターSTRの詳細構成例である。セレクターSTRは、デコーダーDECとアンド回路AA0~AA7、AC1、AC2とオア回路ORA、ORCとインバーターIVAとを含む。
【0056】
デコーダーDECは、遅延設定データTM1をデコードし、そのデコード結果である信号SA0~SA7を出力する。信号SA0~SA7のうち、いずれか1つがハイレベルとなり、それ以外はローレベルとなる。アンド回路AA0は、信号SA0と選択制御信号CTS1の論理積を出力する。アンド回路AA1は、信号SA1と信号EDLQ1の論理積を出力する。同様に、アンド回路AA2~AA7は、信号SA2~SA7と信号EDLQ2~EDLQ7の論理積を出力する。オア回路ORAは、アンド回路AA0~AA7の出力信号の論理和を信号ORAQとして出力する。信号SA0~SA7のいずれか1つがハイレベルなので、選択制御信号CTS1及び信号EDLQ1~EDLQ7のいずれか1つがオア回路ORAから出力される。
【0057】
アンド回路AC1は、プリチャージ制御信号PRTMの論理反転信号と選択制御信号CTS1の論理積を出力する。アンド回路AC2は、プリチャージ制御信号PRTMと信号ORAQの論理積を出力する。オア回路ORCは、アンド回路AC1、AC2の出力信号の論理和を信号STRQとして出力する。プリチャージ制御信号PRTMは、処理回路120から選択信号出力回路130に入力され、プリチャージ期間TPRにおいてハイレベルであり、画素駆動期間TDGにおいてローレベルである。即ち、プリチャージ期間TPRにおいて信号ORAQが信号STRQとして出力され、画素駆動期間TDGにおいて選択制御信号CTS1が信号STRQとして出力される。これにより、プリチャージ期間TPRにおいては、遅延設定データTM1により指定された遅延量の信号が選択され、画素駆動期間TDGにおいては、遅延処理されない選択制御信号CTS1が選択される。
【0058】
図9は、遅延回路EDL1の第1詳細構成例である。ここでは遅延回路EDL1を例に説明するが、遅延回路EDL2~EDL7も同様な構成である。
図9の遅延回路EDL1は、バッファーBFCと抵抗RDLとキャパシターCDLとを含む。
【0059】
バッファーBFCは、遅延回路EDL1の入力信号である選択制御信号CTS1をバッファリングする。抵抗RDL及びキャパシターCDLはローパスフィルターを構成しており、そのRC時定数で決まる遅延量でバッファーBFCの出力信号を遅延させ、その遅延後の信号EDLQ1を出力する。
【0060】
図10は、遅延回路EDL2の第2詳細構成例である。ここでは遅延回路EDL1を例に説明するが、遅延回路EDL2~EDL7も同様な構成である。
図10の遅延回路EDL1は、フリップフロップ回路FF1を含む。
【0061】
フリップフロップ回路FF1は、入力信号である選択制御信号CTS1をクロック信号CLKの遷移タイミングでラッチし、ラッチ後の信号EDLQ1を出力する。信号EDLQ1は、選択制御信号CTS1に対してクロック信号CLKの1クロック分だけ遅延する。クロック信号CLKは、例えば表示インターフェース141が受信したクロック信号であり、外部の処理装置から表示インターフェース141への表示データの転送に用いられるクロック信号である。但しクロック信号CLKは、プリチャージ期間TPRよりも十分短い周期を有するクロック信号であればよい。
【0062】
以上の実施形態によれば、選択信号出力回路130は第1~第nタイミング調整回路を含む。第iタイミング調整回路は、プリチャージ期間TPRにおいて、第i選択制御信号を第i遅延量で遅延させた信号を第i選択信号として出力する。iは1以上n以下の整数である。なお
図6において、タイミング調整回路131~134が第1~第nタイミング調整回路に対応し、そのうち任意の1つが第iタイミング調整回路に対応する。例えばタイミング調整回路131を第iタイミング調整回路としたとき、i=1であり、CTS1、SEL1がそれぞれ第i選択制御信号、第i選択信号に対応する。
【0063】
このようにすれば、選択信号出力回路130は、プリチャージ期間TPRにおいて第1~第n選択信号の各々を任意の遅延量で遅延できるので、第1~第n選択信号のうち少なくとも2つの選択信号の遷移タイミングを異ならせる遅延処理を行うことが可能となる。
【0064】
また本実施形態では、第jタイミング調整回路は、プリチャージ期間TPRにおいて、第j選択制御信号を第j遅延量で遅延させた信号を第j選択信号として出力する。jは1以上n以下でj≠iの整数である。第j遅延量は、第i遅延量と異なる。
【0065】
このようにすれば、選択信号出力回路130は、プリチャージ期間TPRにおいて、少なくとも第i選択信号と第j選択信号の遅延量が異なるような任意の遅延量で第1~第n選択信号を遅延できる。
【0066】
また本実施形態では、第iタイミング調整回路は、直列接続された第1~第q遅延回路と、セレクターSTRと、レベルシフターLFSとを含む。qは2以上の整数である。セレクターSTRは、第i選択制御信号及び第1~第q遅延回路の第1~第q出力ノードからの信号が入力され、プリチャージ期間TPRにおいて第i選択制御信号及び第1~第q出力ノードからの信号のいずれかを第i出力信号として出力する。レベルシフターLFSは、第i出力信号をレベルシフトすることで第i選択信号を出力する。第1遅延回路には、第i選択制御信号が入力される。なお
図7において、遅延回路EDL1~EDL7が第1~第q遅延回路に対応し、EDLQ1~EDLQ7が第1~第q出力ノードからの信号に対応し、信号STRQが第i出力信号に対応する。
【0067】
このようにすれば、プリチャージ期間TPRにおいて第i選択制御信号及び第1~第q遅延回路の第1~第q出力ノードからの信号のいずれかがセレクターSTRにより選択されることで、第i遅延量で遅延された第i選択信号が得られる。
【0068】
また本実施形態では、セレクターSTRは、画素駆動期間TDGにおいて第i選択制御信号を第i出力信号として出力する。
【0069】
このようにすれば、プリチャージ期間TPRにおいては、遅延処理された第i選択信号が出力され、画素駆動期間TDGにおいては、遅延処理されない第i選択信号が出力される。
【0070】
5.本実施形態の第2動作例
図11は、本実施形態の第2動作例を説明する波形図である。
図11には、選択信号SEL1~SEL4の立ち下がりとチップセレクト信号XCSの立ち上がりが偶然に一致したときの波形図を示す。
【0071】
表示制御回路123は、プリチャージ期間TPRにおいてハイレベルのプリチャージ制御信号PRTMを出力する。選択信号SEL1~SEL4は、プリチャージ制御信号PRTMが立ち上がった後に立ち上がり、プリチャージ制御信号PRTMが立ち下がる前に立ち下がる。即ち、選択信号SEL1~SEL4が立ち下がった後、プリチャージ制御信号PRTMが立ち下がるまでに時間が空いている。
【0072】
設定制御回路122は、チップセレクト信号XCSとプリチャージ制御信号PRTMに基づいて書き込みイネーブル信号XCSAを出力する。具体的には、設定制御回路122は、プリチャージ制御信号PRTMがハイレベルのときにチップセレクト信号XCSがローレベルからハイレベルになったときには、プリチャージ制御信号PRTMがローレベルに遷移したタイミングで書き込みイネーブル信号XCSAをローレベルからハイレベルにする。なお、プリチャージ制御信号PRTMがローレベルのときには、設定制御回路122は、チップセレクト信号XCSを書き込みイネーブル信号XCSAとして出力する。本動作例では、この書き込みイネーブル信号XCSAの立ち上がりタイミングでコマンド反映が行われる。即ち、レジスター121は、書き込みイネーブル信号XCSAの立ち上がりタイミングでデータDATを保持する。これにより、グランドGNDにノイズが発生する選択信号SEL1~SEL4の立ち下がりタイミングと、レジスター設定処理のタイミングとがずれるので、レジスター設定処理のエラーが防止される。
【0073】
なお、
図11では選択信号SEL1~SEL4の遷移タイミングが同時である例を示したが、本動作例においても選択信号SEL1~SEL4のうち少なくとも2つの選択信号の遷移タイミングが異なっていてもよい。
【0074】
図12は、設定制御回路122の詳細構成例である。設定制御回路122は、アドレスデコーダーADECとタイミングシフト回路XTMCとを含む。
【0075】
アドレスデコーダーADECは、アドレスADDRをレジスター121の物理アドレスにデコードする。タイミングシフト回路XTMCは、プリチャージ制御信号PRTMに基づいて、
図11で説明したようにチップセレクト信号XCSの遷移タイミングをずらした書き込みイネーブル信号XCSAを生成する。レジスター121は、書き込みイネーブル信号XCSAの立ち上がりタイミングで、アドレスデコーダーADECが指示した物理アドレスにデータDATの各ビットを書き込む。
【0076】
図13は、タイミングシフト回路XTMCの詳細構成例である。タイミングシフト回路XTMCは、エクスクルーシブオア回路XOREとアンド回路AEとを含む。
【0077】
エクスクルーシブオア回路XOREは、チップセレクト信号XCSとプリチャージ制御信号PRTMの排他的論理和を出力する。アンド回路AEは、エクスクルーシブオア回路XOREの出力信号とチップセレクト信号XCSの論理積を書き込みイネーブル信号XCSAとして出力する。これにより、プリチャージ制御信号PRTMがハイレベルの期間において書き込みイネーブル信号XCSAがローレベルに維持されるので、プリチャージ制御信号PRTMにおいてチップセレクト信号XCSが立ち上がったとき、プリチャージ制御信号PRTMが終了したタイミングで書き込みイネーブル信号XCSAが立ち上がる。
【0078】
以上の実施形態によれば、回路装置100は、外部制御信号が入力される入力端子を含む。処理回路120は、外部制御信号の遷移タイミングを、第1~第n選択信号の遷移タイミングからずらした制御信号に基づいて、レジスター設定処理を行う。なお
図2においてインターフェース端子TXCSが入力端子に対応し、
図11~
図13においてチップセレクト信号XCSが外部制御信号に対応し、書き込みイネーブル信号XCSAが制御信号に対応する。
【0079】
このようにすれば、第1~第n選択信号の遷移タイミングと制御信号の遷移タイミングとがずれる。これにより、第1~第n選択信号の遷移タイミングと、制御信号の遷移タイミングで行われるレジスター設定処理のタイミングとがずれ、レジスター設定処理のエラーが防止される。
【0080】
6.電気光学装置、及び電子機器
図14は、回路装置100を含む電気光学装置350の構成例である。電気光学装置350は、回路装置100と電気光学パネル200とを含む。
【0081】
回路装置100は例えばフレキシブル基板に実装され、そのフレキシブル基板が電気光学パネル200に接続され、フレキシブル基板に形成された配線によって回路装置100のデータ信号出力端子と電気光学パネル200のデータ信号入力端子とが接続される。或いは、回路装置100はリジッド基板に実装され、リジッド基板と電気光学パネル200とがフレキシブル基板により接続され、リジッド基板及びフレキシブル基板に形成された配線によって回路装置100のデータ電圧出力端子と電気光学パネル200のデータ電圧入力端子とが接続されてもよい。
【0082】
図15は、回路装置100を含む電子機器300の構成例である。電子機器300は、処理装置310、回路装置100、電気光学パネル200、記憶装置330、データインターフェース340、ユーザーインターフェース360を含む。電子機器300の具体例としては、例えばプロジェクターやヘッドマウントディスプレイ、携帯情報端末、車載装置、携帯型ゲーム端末、情報処理装置等の、表示装置を搭載する種々の電子機器を想定できる。車載装置は、例えばメーターパネル、カーナビゲーションシステム等である。
【0083】
ユーザーインターフェース360は、ユーザーからの種々の操作を受け付ける。ユーザーインターフェース360は、例えば、ボタンやマウスやキーボード、電気光学パネル200に装着されたタッチパネル等である。データインターフェース340は、画像データや制御データの入出力を行う。データインターフェース340は、例えば無線LANや近距離無線通信等の無線通信インターフェース、或いは有線LANやUSB等の有線通信インターフェースである。記憶装置330は、例えばデータインターフェース340から入力されたデータを記憶したり、或いは、処理装置310のワーキングメモリーとして機能したりする。記憶装置330は、例えばRAMやROM等のメモリー、或いはHDD等の磁気記憶装置、或いはCDドライブ、DVDドライブ等の光学記憶装置等である。処理装置310は、電子機器300の制御処理や、種々の信号処理等を行う。処理装置310は、例えばCPUやMPU等のプロセッサー、或いはASIC等である。或いは、処理装置310は、表示コントローラーであってもよいし、プロセッサーと表示コントローラーの両方により構成されていてもよい。処理装置310は、データインターフェース340から入力された或いは記憶装置330に記憶された画像データを処理して回路装置100に転送する。回路装置100は、表示コントローラー320から転送された画像データに基づいて電気光学パネル200に画像を表示させる。
【0084】
例えば電子機器300がプロジェクターである場合、電子機器300は更に光源と光学系とを含む。光学系は、例えばレンズ、プリズム、ミラー等である。電気光学パネル200が透過型である場合、光学装置が光源からの光を電気光学パネル200に入射させ、電気光学パネル200を透過した光をスクリーンに投影させる。電気光学パネル200が反射型である場合、光学装置が光源からの光を電気光学パネル200に入射させ、電気光学パネル200から反射された光をスクリーンに投影させる。
【0085】
以上に説明した本実施形態の回路装置は電気光学パネルを駆動する。電気光学パネルは、第1~第nデータ線(nは3以上の整数)とデータ信号供給線との間に設けられるスイッチ回路を含む。回路装置は、データ信号供給線にデータ信号を出力するデータ線駆動回路と、第1~第n選択制御信号を出力する処理回路と、選択信号出力回路とを含む。選択信号出力回路は、第1~第n選択制御信号に基づいて、第1~第nデータ線とデータ信号供給線との接続を制御する第1~第n選択信号を、スイッチ回路に出力する。選択信号出力回路は、プリチャージ期間において第1~第n選択信号をアクティブにして第1~第nデータ線をプリチャージし、画素駆動期間において第1~第n選択信号のうち駆動される画素のデータ線に対応する選択信号をアクティブにする。選択信号出力回路は、プリチャージ期間において、第1~第n選択信号のうち少なくとも2つの選択信号の遷移タイミングを異ならせる遅延処理を行う。
【0086】
このようにすれば、第1~第nデータ線のうち少なくとも2つのデータ線と他のデータ線とで、プリチャージ開始タイミング及びプリチャージ終了タイミングが異なる。これにより、データ線駆動回路の電源及びグランドのノイズ発生タイミングが分散され、電源及びグランドのノイズピークが低減される。これにより、処理回路に回り込むノイズが低減されるので、処理回路における処理のエラー発生が防止される。
【0087】
また本実施形態では、選択信号出力回路は、画素駆動期間において遅延処理を行わずに、第1~第n選択制御信号に基づいて第1~第n選択信号を出力してもよい。
【0088】
画素駆動期間において選択信号の遷移タイミングが変動すると、それに合わせて、アンプ回路がデータ電圧を出力するタイミングを変動させる必要がある。そうしないと、画素の駆動期間が短縮される等の不都合が生じるおそれがある。本実施形態によれば、画素駆動期間において第1~第n選択制御信号に遅延処理が加えられないので、第1~第n選択信号の遷移タイミングは遅延処理により変動しない。これにより、アンプ回路がデータ電圧を出力するタイミングを変える必要がなく、駆動タイミング制御が容易である。
【0089】
また本実施形態では、選択信号出力回路は、第iタイミング調整回路(iは1以上n以下の整数)を含んでもよい。第iタイミング調整回路は、プリチャージ期間において、第1~第n選択制御信号のうち第i選択制御信号を第i遅延量で遅延させた信号を第1~第n選択信号のうち第i選択信号として出力してもよい。
【0090】
このようにすれば、選択信号出力回路は、プリチャージ期間において第1~第n選択信号の各々を任意の遅延量で遅延できるので、第1~第n選択信号のうち少なくとも2つの選択信号の遷移タイミングを異ならせる遅延処理を行うことが可能となる。
【0091】
また本実施形態では、選択信号出力回路は、第jタイミング調整回路(jは1以上n以下でj≠iの整数)を含んでもよい。第jタイミング調整回路は、プリチャージ期間において、第1~第n選択制御信号のうち第j選択制御信号を第j遅延量で遅延させた信号を第1~第n選択信号のうち第j選択信号として出力してもよい。第j遅延量は、第i遅延量と異なる。
【0092】
このようにすれば、選択信号出力回路は、プリチャージ期間において、少なくとも第i選択信号と第j選択信号の遅延量が異なるような任意の遅延量で第1~第n選択信号を遅延できる。
【0093】
また本実施形態では、第iタイミング調整回路は、直列接続された第1~第q遅延回路(qは2以上の整数)と、セレクターと、レベルシフターとを含んでもよい。セレクターは、第i選択制御信号及び第1~第q遅延回路の第1~第q出力ノードからの信号が入力され、プリチャージ期間において第i選択制御信号及び第1~第q出力ノードからの信号のいずれかを第i出力信号として出力してもよい。レベルシフターは、第i出力信号をレベルシフトすることで第i選択信号を出力してもよい。第1~第q遅延回路の第1遅延回路に第i選択制御信号が入力されてもよい。
【0094】
このようにすれば、プリチャージ期間において第i選択制御信号及び第1~第q遅延回路の第1~第q出力ノードからの信号のいずれかがセレクターにより選択されることで、第i遅延量で遅延された第i選択信号が得られる。
【0095】
また本実施形態では、セレクターは、画素駆動期間において第i選択制御信号を第i出力信号として出力してもよい。
【0096】
このようにすれば、プリチャージ期間においては、遅延処理された第i選択信号が出力され、画素駆動期間においては、遅延処理されない第i選択信号が出力される。
【0097】
また本実施形態では、処理回路は、制御信号の遷移タイミングにおいてレジスター設定処理を行ってもよい。プリチャージ期間において、制御信号の遷移タイミングと、第1~第n選択信号のうち少なくとも2つの遷移タイミングとがずれていてもよい。
【0098】
このようにすれば、第1~第n選択信号のうち、いずれかの選択信号の遷移タイミングが、仮に制御信号の遷移タイミングに一致したとしても、全ての選択信号の遷移タイミングが制御信号の遷移タイミングに一致することはない。これにより、レジスター設定処理が行われるタイミングにおける電源又はグランドのノイズが低減されるので、レジスター設定処理のエラーが防止される。
【0099】
また本実施形態では、回路装置は、外部制御信号が入力される入力端子を含んでもよい。処理回路は、外部制御信号の遷移タイミングを、第1~第n選択信号の遷移タイミングからずらした制御信号に基づいて、レジスター設定処理を行ってもよい。
【0100】
このようにすれば、第1~第n選択信号の遷移タイミングと制御信号の遷移タイミングとがずれる。これにより、第1~第n選択信号の遷移タイミングと、制御信号の遷移タイミングで行われるレジスター設定処理のタイミングとがずれ、レジスター設定処理のエラーが防止される。
【0101】
また本実施形態の回路装置は、データ信号供給線にデータ信号を出力するデータ線駆動回路と、第1~第n選択制御信号を出力する処理回路と、選択信号出力回路と、外部制御信号が入力される入力端子とを含む。選択信号出力回路は、第1~第n選択制御信号に基づいて、第1~第nデータ線とデータ信号供給線の接続を制御する第1~第n選択信号を、スイッチ回路に出力する。処理回路は、外部制御信号に基づく制御信号を用いてレジスター設定処理を行う。選択信号出力回路により第1~第n選択信号がアクティブにされることで第1~第nデータ線がプリチャージされるプリチャージ期間において、制御信号の遷移タイミングと、第1~第n選択信号の遷移タイミングの少なくとも2つの遷移タイミングとが、ずれている。
【0102】
また本実施形態では、処理回路は、外部制御信号の遷移タイミングを、第1~第n選択信号の遷移タイミングからずらした制御信号に基づいて、レジスター設定処理を行ってもよい。
【0103】
また本実施形態では、選択信号出力回路は、プリチャージ期間において、第1~第n選択信号のうち少なくとも2つの選択信号の遷移タイミングを異ならせる遅延処理を行ってもよい。
【0104】
また本実施形態の電気光学装置は、上記のいずれかに記載の回路装置と、電気光学パネルとを含む。
【0105】
また本実施形態の電子機器は、上記のいずれかに記載の回路装置を含む。
【0106】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本開示の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。また回路装置、電気光学パネル、電気光学装置及び電子機器の構成及び動作等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0107】
100…回路装置、110…データ線駆動回路、120…処理回路、121…レジスター、122…設定制御回路、123…表示制御回路、130…選択信号出力回路、131~134…タイミング調整回路、135…設定回路、140…インターフェース回路、141…表示インターフェース、142…設定インターフェース、200…電気光学パネル、210…スイッチ回路、300…電子機器、310…処理装置、320…表示コントローラー、330…記憶装置、340…データインターフェース、350…電気光学装置、360…ユーザーインターフェース、CTS1~CTS4…選択制御信号、DL1~DLm…データ線、EDL1~EDL7…遅延回路、GL1~GLk…走査信号線、GND…グランド、LFS…レベルシフター、PD1~PDp…表示データ、PRTM…プリチャージ制御信号、PX…画素、SEL1~SEL4…選択信号、SL1~SLp…データ信号供給線、STR…セレクター、TDG…画素駆動期間、TPR…プリチャージ期間、VDH,VDL…電源、VPR…プリチャージ電圧、VQ1~VQp…データ信号、XCS…チップセレクト信号、XCSA…書き込みイネーブル信号