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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】帯電装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/02 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
G03G15/02 101
G03G15/02 102
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020079043
(22)【出願日】2020-04-28
(65)【公開番号】P2021173913
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】溝口 聡
(72)【発明者】
【氏名】飯田 紘史
【審査官】小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-184815(JP,A)
【文献】特開2019-184870(JP,A)
【文献】特開平04-230776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被帯電部に接触して該被帯電部を帯電する第1の帯電部と、
前記被帯電部に接触して該被帯電部を帯電する、該被帯電部との接触領域の分布が前記第1の帯電部とは異なる第2の帯電部とを有し、
前記第1の帯電部および前記第2の帯電部が、それぞれ、回転軸方向両端部で前記被帯電部へ向けて押圧されることで該被帯電部に接触して回転する第1の帯電ロールおよび第2の帯電ロールであって、
前記第1の帯電ロールおよび前記第2の帯電ロールの押圧力が互いに異なり、
前記第1の帯電ロールおよび前記第2の帯電ロールのうちの押圧力が相対的に弱い帯電ロールが、回転軸方向の中央部の径が相対的に太く端部の径が相対的に細いクラウン型帯電ロールであり、
前記クラウン型帯電ロールへの印加電圧を経時に応じて上昇させる電源を有することを特徴とする帯電装置。
【請求項2】
記第1の帯電ロールおよび前記第2の帯電ロールが、前記被帯電部への非接触時の径の回転軸方向の分布が双方とも対称形を有し、かつ、該分布が互いに異なることを特徴とする請求項1に記載の帯電装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の帯電装置と、
前記帯電装置による帯電を受ける被帯電部としての、該帯電装置により帯電を受け、露光により形成された静電潜像を保持し、さらにトナーによる現像で形成されたトナー像を保持する像保持部とを備え、
用紙上に、前記像保持部に形成されたトナー像由来の画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
帯電ロールを用いた接触帯電方式の帯電装置の場合、帯電ロールと、被帯電体である、感光層を有する像保持体との間の回転軸方向の、いわゆるニップ幅と呼ばれる接触幅の不均一に起因して、回転軸方向の中央部よりも端部の感光層が偏摩耗することがある。この偏摩耗が進むと、端部の帯電電圧が上昇し、中央部との間の画像濃度に差異が生じるおそれや、現像剤中のキャリアが像保持体に流出して画像欠陥が発生するおそれがある。
【0003】
また、画像形成以外の用途に用いる帯電装置として、特許文献1には、シートの蛇行や巻きずれ等が発生しないように電気絶縁性シートにあらかじめ帯電を付与して、静電気力により蛇行や巻きずれの発生を抑制する帯電ロールを備えた帯電装置が開示されている。
【0004】
この帯電装置においても、帯電ロールと対向する回転体とで形成される接触幅の不均一に起因して、回転体の回転軸方向の中央部よりも端部が偏摩耗することがある。
【0005】
また、近年、プロセススピードを上げて画像の生産性を向上させるために、短時間で帯電できるように2本の帯電ロールを配置した帯電装置が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-132507号公報
【文献】特開2005-017383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、被帯電部を帯電する接触帯電方式の帯電部を2つ備えた構成において、本発明を適用しない場合と比べ回転軸方向の帯電電圧が均一化される帯電装置、およびその帯電装置を使った画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、
被帯電部に接触して該被帯電部を帯電する第1の帯電部と、
前記被帯電部に接触して該被帯電部を帯電する、該被帯電部との接触領域の分布が前記第1の帯電部とは異なる第2の帯電部とを有することを特徴とする帯電装置である。
【0009】
請求項2に係る発明は、
前記第1の帯電部および前記第2の帯電部が、それぞれ、前記被帯電部に接触して回転する第1の帯電ロールおよび第2の帯電ロールであって、
前記第1の帯電ロールおよび前記第2の帯電ロールが、前記被帯電部への非接触時の径の回転軸方向の分布が双方とも対称形を有し、かつ、該分布が互いに異なることを特徴とする請求項1に記載の帯電装置である。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記第1の帯電ロールおよび前記第2の帯電ロールのうちの少なくとも一方の帯電ロールが、回転軸方向の中央部の径が相対的に太く端部の径が相対的に細いクラウン型帯電ロールであることを特徴とする請求項2に記載の帯電装置である。
【0011】
請求項4に係る発明は、
前記第1の帯電部および前記第2の帯電部が、それぞれ、回転軸方向両端部で前記被帯電部向けて押圧されることで該被帯電部に接触して回転する第1の帯電ロールおよび第2の帯電ロールであって、
前記第1の帯電ロールおよび前記第2の帯電ロールの押圧力が互いに異なることを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の帯電装置である。
【0012】
請求項5に係る発明は、前記第1の帯電ロールおよび前記第2の帯電ロールのうちの押圧力が相対的に弱い帯電ロールが、回転軸方向の中央部の径が相対的に太く端部の径が相対的に細いクラウン型帯電ロールであることを特徴とする請求項4に記載の帯電装置である。
【0013】
請求項6に係る発明は、前記クラウン型帯電ロールへの印加電圧を経時に応じて上昇させる電源を有することを特徴とする請求項5に記載の帯電装置である。
【0014】
請求項7に係る発明は、
請求項1から6のうちのいずれか1項に記載の帯電装置と、
前記帯電装置による帯電を受ける被帯電部としての、該帯電装置により帯電を受け、露光により形成された静電潜像を保持し、さらにトナーによる現像で形成されたトナー像を保持する像保持部とを備え、
用紙上に、前記像保持部に形成されたトナー像由来の画像を形成することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の帯電装置および請求項7の画像生成装置によれば、接触領域の分布が互いに同一の第1の帯電部と第2の帯電部を備えた場合と比べ、回転軸方向の帯電電圧の均一化を図ることができる。
【0016】
請求項2の帯電装置によれば、第1の帯電ロールおよび第2の帯電ロールの径の回転軸方向の分布が互いに同一である場合と比べ、回転軸方向の帯電電圧の均一化を図ることができる。
【0017】
請求項3の帯電装置によれば、第1の帯電ロールおよび第2の帯電ロールにいずれもがクラウン型帯電ロールではない場合と比べ、回転軸方向の帯電電圧の均一化を図ることができる。
【0018】
請求項4の帯電装置によれば、第1の帯電ロールおよび第2の帯電ロールの押圧力が互いに同一である場合と比べ、回転軸方向の帯電電圧の均一化を図ることができる。
【0019】
請求項5の帯電装置によれば、押圧力が相対的に弱い帯電ロールがクラウン型帯電ロールではない場合と比べ、回転軸方向の帯電電圧の均一化を図ることができる。
【0020】
請求項6の帯電装置によれば、経時的に一定の電圧を印加する場合と比べ、被帯電層の帯電電圧の経時変化が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】画像形成装置の主要部であるトナー像形成部を示した模式図である。
図2】帯電に起因する、経時的に発生するおそれのある問題点の説明図である。
図3】帯電ロールが像保持体に押し当てられている状態(A)、およびニップ領域の形状(B)(C)を示した模式図である。
図4】主帯電ロールおよび副帯電ロールのパラメータと経時後の結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について説明する。ここでは、電子写真方式の画像形成装置に採用される帯電装置を例に挙げて説明する。ただし、本発明の帯電装置は、前掲の特許文献1に開示されたタイプの帯電装置等、画像形成装置に採用される帯電装置以外のタイプの帯電装置にも適用可能である。
【0023】
図1は、画像形成装置の主要部であるトナー像形成部を示した模式図である。
【0024】
トナー像形成部10には、像保持体11が備えられている。この像保持体11は、矢印Rの向きに回転しながら、帯電および露光のプロセスを経て、その表面に静電潜像が形成され、さらにトナーによる現像によりトナー像が形成されて一時的に保持される。
【0025】
また、このトナー像形成部10は、帯電装置20を備えている。そして、この帯電装置20は、2本の帯電ロール12_1,12_2を備えている。これら2本の帯電ロール12_1,12_2のうちの、像保持体11の回転の向きの上流側の帯電ロール12_1は、本発明にいう第1の帯電部および第1の帯電ロールの一例に相当する。また、下流側の帯電ロール12_2は、本発明にいう第2の帯電部および第2の帯電ロールの一例に相当する。
【0026】
また、この帯電装置20は、2本の帯電ロール12_1,12_2の各々に帯電電圧を印加する電源13_1,13_2を備えている。2本の帯電ロール12_1,12_2は、各電源13_1,13_2による帯電電圧の印加を受けて、像保持体10を一様な電位に帯電する。本実施形態では、回転軸方向の帯電電圧の不均一さを抑えることをテーマとしている。詳細は後述する。このトナー像形成部10は、像保持体11を2本の帯電ロール12_1,12_2で帯電するため、帯電ロール1本だけの構成と比べ帯電能力が高く、像保持体11の回転速度等からなるプロセススピードを上げて画像の生産性を向上させることができる。
【0027】
さらに、このトナー像形成部10は、露光器14および現像器15を備えている。露光器14は、画像信号に基づいて変調された露光光Lを像保持体11に照射して、像保持体11の表面に静電潜像を形成する。また、現像器15は、トナーとキャリアとを含む現像剤を収容していて、像保持体11上の静電潜像を現像剤中のトナーで現像して像保持体11上にトナー像を形成する。そのトナー像は、転写ロール16の作用により、矢印Mの向きに走行してきた用紙P上に転写される。転写ロール16による転写後の、像保持体11上に残った残存トナーは、クリーニングブレード17により掻き取られる。
【0028】
用紙P上に転写されたトナー像は、不図示の定着装置によりその用紙上に定着され、用紙上に定着トナー像からなる画像が形成される。
【0029】
図2は、帯電に起因する、経時的に発生するおそれのある問題点の説明図である。図2(A)は初期の状態における像保持体11と現像ロール12を示した模式図であり、図2(B)は、例えば画像形成6万枚形成後等、経時後の状態における像保持体11と現像ロール12を示した模式図である。図1に示すように、画像形成部1には、2本の帯電ロール12_1,12_2が備えられているが、ここでは、それら2本を区別せずに代表させて、帯電ロール12と表現している。また、この図2の左右方向は、像保持体11の回転軸方向、すなわち、図1の紙面に垂直な方向である。
【0030】
図2(A)に示す初期状態では、像保持体11は、その回転軸方向の中央部であっても端部であっても狙い値どおりの帯電電圧Vhに均一に帯電される。
【0031】
この初期状態から使用を開始する。像保持体11は走行してきた用紙Pでその表面の感光層(不図示)が徐々に削れて薄くなるが、中央部と比べ端部の方の摩耗が一層進む。このとき、経時を考慮して中央部を狙い値どおりの帯電電圧Vhに帯電させるとすると、端部では、感光層が薄い分、狙い値よりも高い帯電電圧Vhとなる。すると、図1に示す現像器15内の現像剤中のキャリアが像保持体11に移りやすくなり、実際にキャリアが像保持体11に付着するという現象が発生することがある。すると、そのキャリアがトナー像を矢印Rで示す回転方向に引っかき筋状の画像欠陥が発生することがある。本実施形態は、この画像欠陥を抑制する手段を備えている。
【0032】
図3は、帯電ロールが像保持体に押し当てられている状態(A)、およびニップ領域の形状(B)(C)を示した模式図である。
【0033】
図3(A)に示すように、帯電ロール12は、ゴム状の弾性体からなり、その弾性体の中心を貫く回転軸121および両側の軸受け122を備えている。そして、両側の軸受け122が、不図示のばね部材等により、押圧力Fで像保持体11に押し当てられる。この図3(A)には、回転軸方向の中央部の径が相対的に太く端部の径が相対的に細いクラウン型帯電ロール12が示されている。このため、帯電ロール12の中央部が像保持体11に食い込むように示されているが、実際は、像保持体11に押し当てられることによって押しつぶされ、像保持体11と帯電ルール12が接したニップ領域Nが形成される。このニップ領域Nは、本発明にいう接触領域に対応する。
【0034】
図3(B)には、中央部と端部とでニップ幅Wが同一な、矩形のニップ領域N(実線)と、中央部のニップ幅Wが端部のニップ幅よりも狭いニップ領域N(破線)が示されている。図3(A)に示すように、帯電ロール12はその両側の軸受け122が押圧される。このため、像保持体11への非接触時にクラウン型を成している帯電ロール12であっても、押圧されることにより回転軸121がわずかに撓み、中央部と端部とでニップ幅Wが同一な矩形のニップ領域N、あるいは中央部のニップ幅Wが狭いニップ領域Nを形成することができる。ニップ幅Wは帯電性能に関係する。像保持体11の感光層の厚みが均一の場合、中央部と端部とでニップ幅Wを中央部と端部とで同一とすることにより、像保持体11を中央部と端部とで均一な帯電電圧Vhで帯電することができる。あるいは、中央部のニップ幅Wを端部のニップ幅Wよりも狭めることにより中央部よりも端部の帯電電圧Vhを高めた帯電とすることができる。この図3(B)に示したニップ領域Nは、図1に示した2本の帯電ロール12_1,12_2のうちの、例えば上流側の帯電ロール12_1のニップ領域Nの典型例である。
【0035】
図3(C)には、相対的に中央部のニップ幅Wが広く、端部のニップ幅Wが狭いニップ領域Nが示されている。このような、相対的に中央部のニップ幅Wが広い。この場合、像保持体11は、その中央部がより高い帯電電圧Vhに帯電され、端部が相対的に低い帯電電圧Vhに帯電される。この図3(C)に示したニップ領域Nは、図1に示した2本の帯電ロール12_1,12_2のうちの、例えば下流側の帯電ロール12_2のニップ領域Nの典型例である。
【0036】
図3(B)、(C)に示すようなニップ領域Nの形状の調整は、以下のようなパラメータの調整により行われる。
【0037】
ここでは、前提として、帯電ロール12は、像保持体11への非接触時の径の回転軸方向の分布が対称形を有し、両側が互いに同一の押圧力Fで像保持体11に押し当てられる。このため、ニップ領域Nのプロセス方向の幅であるニップ幅Wの回転軸方向の分布も対称形であることを前提としている。
【0038】
この前提の下で、例えば、
・帯電ロール12の回転軸方向の径の分布を異ならせる、具体的には、中央部の径と端部の径との差を調整する。
・押圧力Fを調整する。
ことにより、ニップ領域Nの形状を調整することができる。
【0039】
特に、図3(C)の形状のニップ領域を形成するには、クラウン型の帯電ロール12を採用し、かつ、図3(B)の形状のニップ領域を形成する帯電ロールよりも弱い押圧力Fで押圧することが有効である。
【0040】
なお、図3(B)に破線で示した、中央部のニップ幅Wが狭いニップ領域Nを形成するにあたっては、帯電ロール12は必ずしもクラウン型である必要はないが、クラウン型であっても実現可能である。
【0041】
図3(B)の形状のニップ領域を形成する帯電ロールと図3(C)の形状のニップ領域を形成する帯電ロールとの2本の帯電ロールを備えることで、図2を参照して説明した問題点が解消される原理について説明する。
【0042】
ここでは、図3(B)のニップ領域を形成する帯電ロールを、像保持体11の主な帯電を担わせる意味で主帯電ロールと称する。また、図3(C)にニップ領域を形成する帯電ロールを、回転軸方向の帯電電圧分布の調整を担わせる意味で副帯電ロールと称する。
【0043】
像保持体11は、主帯電ロールでは、回転軸方向について均一の帯電電圧に帯電されるか、あるいは端部が多少強く帯電される。像保持体11は、副帯電ロールでは、回転軸方向について中央部が強く帯電される。初期状態では、副帯電ロールへの印加電圧を調整して、中央部の帯電を補って中央部も端部も許容範囲内で同一の帯電電位となるように作用させる。
【0044】
経時が進むにつれて、図2(B)を参照して説明したように、端部の帯電電位が上昇する。そこで、副帯電ロールへの印加電圧を上げていく。また、経時が進むにつれて像保持体の感光層の厚みが減っていき、帯電電圧が上昇していくことも利用する。この副帯電ロールは、図3(C)の形状のニップ領域Nを形成していて、中央部を強く帯電させる。すると、中央部の帯電電圧も上昇し、初期状態と同様に、中央部も端部も許容範囲内で同一の帯電電位となる。全体の帯電電位Vhは狙い目どおりの帯電電位となるように主帯電ロールへの印加電圧を調整することで対応することができる。
【0045】
本実施形態の帯電装置には2本の帯電ロール12_1,12_2が備えられており、2本の帯電ロール12_1,12_2で強力な帯電を担わせながら、さらに上記のような役割分担を担わせる。こうすることにより、帯電ロールを1本だけ備えた装置と比べ、高速なプロセススピードを実現しつつ、経時による中央部と端部の帯電電圧の不均一を解消することができる。
【0046】
なお、図1に示した2本の帯電ロール12_1,12_2のうちの、上流側および下流側のどちらの帯電ロールが主帯電ロールあるいは副帯電ロールであってもよい。
【0047】
図4は、上記の思想に基づいて製作された主帯電ロールおよび副帯電ロールのパラメータと経時後の結果を示した図である。ここでは、主に、実施例1を使って説明する。
【0048】
この図4には、主帯電ロールおよび副帯電ロールのパラメータとして、「ニップ荷重(N)」、「クラウン量(μm)」、「Δニップ幅(mm)」、「初期Δ電位(V)」が示されている。
【0049】
「ニップ荷重(N)」は、図3に示した押圧力Fの左右の合計値である。実施例1における、主帯電ロールのニップ荷重は5N(ニュートン)、副帯電ロールのニップ荷重は2Nである。主帯電ロールのほうが像保持体11に強い力で押し当てられ、これにより、主帯電ロールでは図3(B)に示した形状のニップ領域Nを形成し、副帯電ロールでは図3(C)に示した形状のニップ領域Nを形成している。
【0050】
「クラウン量(μm)」は、端部に対する中央部の太径の程度を表している。実施例1の場合、主帯電ロールのクラウン量は90μmである。これは、主帯電ロールが、端部の径よりも中央部の径が90μmだけ太径であることを意味している。これに対し、実施例1の場合の副帯電ロールのクラウン量は140μmである。すなわち、この実施例1の場合、主帯電ロールよりも副帯電ロールの方がクラウン量が大きい。この点も、「ニップ荷重(N)」の相違とともに、主帯電ロールおよび副帯電ロールが、それぞれ図3(B)、図3(C)の各形状のニップ領域Nを形成するのに役立っている。
【0051】
また、「Δニップ幅(mm)」は、図3(B),(C)に示したニップ幅Wに関し、端部のニップ幅が中央部のニップ幅よりもどれだけ幅広であるかを示している。実施例1の場合の主帯電ロールのΔニップ幅は、0.2mmである。すなわち、端部のニップ幅の方が中央部のニップ幅よりも0.2mmだけ幅広であることを表している。これは、すなわち、主帯電ロールのニップ領域は、図3(B)に破線で示したような形状のニップ領域であることを意味している。これに対し、実施例1の場合の副帯電ロールのΔニップ幅は、-0.3mmである。すなわち、端部のニップ幅の方が中央部のニップ幅よりも0.3mmだけ狭いことをであることを表している。これは、すなわち、副帯電ロールのニップ領域は、図3(C)に破線で示したような形状のニップ領域であることを意味している。
【0052】
また、「初期Δ電位(V)」は、初期状態における、中央部と端部の帯電電位の差分値(V)を表している。ここでは、目標の帯電電位を500Vとしている。そして、この差分値の許容範囲を±20Vとしている。
【0053】
この図4には、主帯電ロールに関しては、主帯電ロール単独での差分値、副帯電ロールに関しては、副帯電ロール単独での差分値が示されている。主帯電ロールおよび副帯電ロールのいずれについても、ニップ幅Wや主帯電ロールおよび副帯電ロールの各々への印加電圧等に基づく計算値である。実施例1の場合、主帯電ロールの「初期Δ電位(V)」は、5Vである。これは、主帯電ロールは、像保持体を、端部の方が中央部よりも5V高い帯電電圧Vhに帯電することを意味している。一方、実施例1の場合、副帯電ロールの「初期Δ電位(V)」は、-10Vである。これは、副帯電ロールは、像保持体を、中央部の方が端部よりも10V高い帯電電圧Vhに帯電することを意味している。したがって、計算上、主帯電ロールと副帯電ロールの2本の帯電ロールでは、像保持体は、計算上、中央部の方が端部よりも5V高い帯電電圧Vhに帯電される。ここでは、中央部と端部の帯電電圧の差分値は、±20Vまで許容されている。したがって、差分値5Vは、許容範囲内に十分に入る値である。
【0054】
ここでは、初期状態において以上のパラメータをもつ主帯電ロールおよび副帯電ロールを用いて、A4サイズの普通紙上に画像密度5%の一様画像を形成した。このとき、像保持体の摩耗が1μm進むにつれ像保持体の帯電電位が10Vずつずれるため、画像形成枚数で摩耗の程度を推測し、画像形成枚数に応じて副帯電ロールの印加電圧を上げていった。
【0055】
そして、画像上にプロセス方向に延びる筋状の画像欠陥が現れ、あるいは画像上にキャリアが検出されるまでの画像形成枚数を確認した。目標は、画像形成枚数6万枚まで異常がないことである。「信頼性評価結果」の欄にある〇印は、7万枚でも問題がなかったことを意味している。また、△印は、6万枚を超えたところで問題が発生したことを意味している。また、×印は、6万枚未満で問題が発生したことを意味している。
【0056】
「結果」の欄には、経時後のデータが示されている。具体的には、ここには、「経時後偏摩耗量(μm)」、「経時後Δ電位(V)」(主帯電ロール単独の場合の計算値)、および「経時後Δ電位(V)」(主帯電ロールと副帯電ロールの合計)が示されている。この「結果」の欄の各値は、7万枚(〇の場合)あるいは問題が発生したとき(△、×の場合)の値である。
【0057】
実施例1の場合、「経時後偏摩耗量(μm)」は2μmである。これは、像保持体の摩耗について、中央部に比べて端部の摩耗が2μmだけ余計に摩耗したことを意味している。
【0058】
また、実施例1の場合、「経時後Δ電位(V)」(主帯電ロール単独の場合の計算値)は、25Vである。これは、主帯電ロールのみの場合、像保持体は、その端部の方が中央部よりも25V高い帯電電圧に帯電されることを意味している。
【0059】
また、実施例1の場合、「経時後Δ電位(V)」(主帯電ロールと副帯電ロールの合計)は、15Vである。これは、像保持体は、その端部の方が中央部よりも15V高い帯電電圧に帯電されていることを意味している。すなわち、端部と中央部との帯電電圧の差分が主帯電ロール単独の場合よりも下がり、目標の±20V以内に入っている。この実施例1の「信頼性評価結果」は〇である。
【0060】
「経時後Δ電位(V)」(主帯電ロールと副帯電ロールの合計)の欄を縦に見ていくと、実施例1、2,3はいずれも目標の±20V以内に入っている。そして実施例1、2に関しては、いずれも、「信頼性評価結果」は〇である。実施例3の場合は、目標ぎりぎりの20Vである。そして、「信頼性評価結果」は△である。ただし、ここまでは、合格である。これに対し、比較例1の場合、35Vである。そして、「信頼性評価結果」は×である。この比較例1の主帯電ロールおよび副帯電ロールのパラメータを見ると、主帯電ロールと副帯電ロールとで同一の帯電ロールを使用していることが分かる。
【0061】
なお、ここでは、各実施例とも、図1に示す2本の帯電ロール12_1,1_2のうちの上流側の帯電ロール12_1の位置に主帯電ロールを配置し、下流側の帯電ロール12_2の位置に副帯電ロールを配置した。ただし、主帯電ロールおよび副帯電ロールはどちらが上流側であっても下流側であってもよい。
【0062】
このように、本実施形態の帯電装置によれば、2本の帯電ロールを備えて強力な帯電を担わせながら、さらに役割分担をさせ、あるいは互いの欠点を補わせている。これにより、帯電ロールを1本だけ備えた装置と比べ、高速なプロセススピードを実現しつつ、経時による中央部と端部の帯電電圧の不均一性が抑えられる。
【0063】
なお、ここでは電子写真方式の画像形成装置に組み込まれる帯電装置を例に挙げて説明したが、本発明の帯電装置は、前掲の特許文献1に示された、シートの蛇行や巻きずれ等の発生防止目的の帯電装置や、その他さまざまな用途の帯電装置として採用することができる。
【符号の説明】
【0064】
10 トナー像形成部
11 像保持体
12,12_1,12_2 帯電ロール
121 回転軸
122 軸受け
13_1,13_2 電源
14 露光器
15 現像器
16 転写ロール
17 クリーニングブレード
図1
図2
図3
図4