(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/08 20060101AFI20240611BHJP
G03G 15/06 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G03G15/08 235
G03G15/06 101
(21)【出願番号】P 2020083543
(22)【出願日】2020-05-12
【審査請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100178582
【氏名又は名称】行武 孝
(72)【発明者】
【氏名】田内 康大
(72)【発明者】
【氏名】清水 保
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 麻美
(72)【発明者】
【氏名】豊田 祐司
(72)【発明者】
【氏名】藤島 正之
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-241491(JP,A)
【文献】特開平07-271139(JP,A)
【文献】特開2006-126747(JP,A)
【文献】特開2007-065401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G13/06-13/08
13/095
13/34
15/00
15/06-15/08
15/095
15/36
21/00-21/02
21/14
21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに画像を形成する画像形成動作を実行することが可能な画像形成装置であって、
回転され、静電潜像が形成されることを許容するとともに前記静電潜像がトナーによって顕在化されたトナー像を担持する表面を有する像担持体と、
前記像担持体を所定の帯電電位に帯電する帯電装置と、
前記帯電装置よりも前記像担持体の回転方向下流側に配置され、前記帯電電位に帯電された前記像担持体の表面を所定の画像情報に応じて露光することで前記静電潜像を形成する露光装置と、
前記露光装置よりも前記回転方向下流側の所定の現像ニップ部において前記像担持体に対向して配置される現像装置であって、回転されトナーおよびキャリアからなる現像剤を担持する周面を有し前記像担持体にトナーを供給することで前記トナー像を形成する現像ローラーを含む現像装置と、
前記像担持体上に担持された前記トナー像をシートに転写する転写部と、
直流電圧に交流電圧が重畳された現像バイアスを前記現像ローラーに印加可能な現像バイアス印加部と、
前記現像ローラーと前記現像バイアス印加部との間を流れる電流の直流成分を検出することが可能な電流検出部と、
前記現像ローラーの軸方向において互いに異なる位置に配置された画像部および白地部を含むように前記像担持体上に形成される所定の測定用潜像に対応して前記現像ローラーに前記現像バイアスを印加することで前記測定用潜像をトナーで現像する際に前記電流検出部によって検出される電流である現像電流と、少なくとも前記現像ローラーの前記周面全体に対向するように前記像担持体上に前記軸方向に沿って連続的に形成された白地部が前記現像ニップ部を通過する際に前記電流検
出部によって検出される電流である白地電流とのそれぞれに基づいて、前記画像形成動作において前記現像ローラーに印加される前記現像バイアスの前記交流電圧のピーク間電圧の基準となる基準ピーク間電圧を決定するバイアス条件決定モードを実行するバイアス条件決定部と、
を備え
、
前記バイアス条件決定部は、前記バイアス条件決定モードにおいて、
前記現像バイアスの前記交流電圧の前記ピーク間電圧を所定の第1測定範囲に含まれる少なくとも3つの第1測定用ピーク間電圧にそれぞれ設定した条件で前記現像電流を前記白地電流で補正した電流である現像実電流をそれぞれ取得し、前記第1測定範囲における前記第1測定用ピーク間電圧と前記取得された現像実電流との関係を示す一次近似式である第1近似式を決定する第1近似式決定動作と、
前記現像バイアスの前記交流電圧の前記ピーク間電圧を前記第1測定範囲の最大値よりも大きな最小値を有するように設定された第2測定範囲に含まれる少なくとも3つの第2測定用ピーク間電圧にそれぞれ設定した条件で前記現像実電流をそれぞれ取得し、前記第2測定範囲における前記第2測定用ピーク間電圧と前記取得された現像実電流との関係を示す一次近似式である第2近似式を決定する第2近似式決定動作と、
前記第1近似式決定動作で決定された前記第1近似式と前記第2近似式決定動作で決定された前記第2近似式とが互いに交差する交点におけるピーク間電圧を前記基準ピーク間電圧として決定する、基準電圧決定動作と、
をそれぞれ実行する、画像形成装置。
【請求項2】
前記バイアス条件決定部は、前記第1測定範囲に含まれる前記少なくとも3つの第1測定用ピーク間電圧においてそれぞれ取得された前記現像実電流から最小二乗法によって前記第1近似式を決定する、請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記バイアス条件決定部は、前記第2測定範囲に含まれる前記少なくとも3つの第2測
定用ピーク間電圧においてそれぞれ取得された前記現像実電流から最小二乗法によって決定された一次近似式である第1判定用近似式の傾きが予め設定された第1閾値よりも大きい場合には、前記少なくとも3つの第2測定用前記ピーク間電圧においてそれぞれ取得された現像実電流の平均値がピーク間電圧の変化に対して一定となる直線式を前記第2近似式として設定し、前記第1判定用近似式の傾きが前記第1閾値よりも小さい場合には、前記第1判定用近似式を前記第2近似式として設定する、請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1測定範囲における前記複数の第1測定用ピーク間電圧の間隔、および、前記第2測定範囲における前記複数の第2測定用ピーク間電圧の間隔は、それぞれ、前記第1測定範囲の前記最大値と前記第2測定範囲の前記最小値との間隔よりも小さく設定されている、請求項
1乃至
3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1測定範囲における前記少なくとも3つの第1測定用ピーク間電圧の数が、前記第2測定範囲における前記少なくとも3つの第2測定用ピーク間電圧の数よりも多く設定されている、請求項
1乃至
4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記バイアス条件決定部は、前記現像実電流を構成する2つの電流であって、前記現像ニップ部の前記画像部において前記現像ローラーから前記像担持体にトナーが移動することで生じる電流であるトナー移動電流と、前記画像部において前記トナーおよび前記キャリアによって前記現像ローラーと前記像担持体とに跨るように形成される磁気ブラシに沿って前記トナー移動電流と同じ向きに流れる電流である画像部磁気ブラシ電流とのバランスが前記ピーク間電圧の変化に応じて変化する点である変化点を、前記第1近似式と前記第2近似式との前記交点によって取得し、前記変化点に対応するピーク間電圧を前記基準ピーク間電圧として決定する、請求項
1乃至
5の何れか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二成分現像方式が適用された現像装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートに画像を形成する画像形成装置として、感光体ドラム(像担持体)と、現像装置と、転写部材と、を備えるものが知られている。感光体ドラム上に形成された静電潜像が、現像装置によってトナーで顕在化されると、感光体ドラム上にトナー像が形成される。転写部材によって、トナー像がシートに転写される。このような画像形成装置に適用される現像装置として、トナーおよびキャリアを含む現像剤が使用される二成分現像技術が知られている。
【0003】
二成分現像技術においては、現像装置が現像ローラーを有し、当該現像ローラーにDCバイアスにACバイアスが重畳された現像バイアスが印加されることで、好適なトナー像が形成される。特に、ACバイアスのうちVpp(ピーク間電圧)を高く設定すると画像濃度が上昇するとともに、ハーフトーン画像のキメの向上や現像ローラーの回転周期で発生しやすいハーフピッチムラが改善する傾向がある。一方、Vppを高く設定しすぎると、感光体ドラムと現像ローラーとが対向する現像ニップ部においてリークが発生することがある。このため、現像バイアスのうちACバイアスのVppを適切に設定する技術が提案されている。
【0004】
特許文献1には、テスト用の静電潜像が現像される際の現像電流が検知され、当該検知された現像電流に応じて感光体ドラムの表面電位や現像バイアスのVppなどを含む画像形成条件が変更される技術が開示されている。また、特許文献2には、現像電流と感光体ドラムにおけるトナー付着量とからトナー帯電量が推定され、当該トナー帯電量に基づいてACバイアスのVppおよびデューティのうちの少なくとも一方が調整される技術が開示されている。また、特許文献3には、基準となる原稿に対する現像時の現像電流が検知され、当該検知された現像電流によって基準原稿に対する画像濃度が判定される技術が開示されている。更に、特許文献4には、検知された現像電流に応じて、露光条件や現像ギャップなどの現像条件が変更される技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-107835号公報
【文献】特開2015-203731号公報
【文献】特開平9-138581号公報
【文献】特開2006-64955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような従来の技術では、現像電流やトナーの帯電量に基づいて画像形成条件が変更される。前述のように現像バイアスのVppを増大させるとトナーの現像量が増えることによって、現像電流のうちDC成分が増加する。このため、従来の技術では、Vppを増大させながら現像電流を確認し、狙いの画像濃度(現像電流)となるように好適なVppが設定されている。
【0007】
しかしながら、このようにVppを変化させながら現像電流を検出することで目標画像濃度を得ることができるVppを決定する方法では、現像電流の検出誤差によって適切なVppを設定することが難しく、結果として画像濃度が変動しやすいという問題があった。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためのものであり、画像形成装置に備えられる二成分現像方式が適用された現像装置において、現像電流の検出結果に基づいてピーク間電圧を安定して設定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面に係る現像装置は、シートに画像を形成する画像形成動作を実行することが可能な画像形成装置であって、回転され、静電潜像が形成されることを許容するとともに前記静電潜像がトナーによって顕在化されたトナー像を担持する表面を有する像担持体と、前記像担持体を所定の帯電電位に帯電する帯電装置と、前記帯電装置よりも前記像担持体の回転方向下流側に配置され、前記帯電電位に帯電された前記像担持体の表面を所定の画像情報に応じて露光することで前記静電潜像を形成する露光装置と、前記露光装置よりも前記回転方向下流側の所定の現像ニップ部において前記像担持体に対向して配置される現像装置であって、回転されトナーおよびキャリアからなる現像剤を担持する周面を有し前記像担持体にトナーを供給することで前記トナー像を形成する現像ローラーを含む現像装置と、前記像担持体上に担持された前記トナー像をシートに転写する転写部と、直流電圧に交流電圧が重畳された現像バイアスを前記現像ローラーに印加可能な現像バイアス印加部と、前記現像ローラーと前記現像バイアス印加部との間を流れる現像電流の直流成分を検出することが可能な電流検出部と、前記現像ローラーの軸方向において互いに異なる位置に配置された画像部および白地部を含むように前記像担持体上に形成される所定の測定用潜像に対応して前記現像ローラーに前記現像バイアスを印加することで前記測定用潜像をトナーで現像する際に前記電流検出部によって検出される電流である現像電流と、少なくとも前記現像ローラーの前記周面全体に対向するように前記像担持体上に前記軸方向に沿って連続的に形成された白地部が前記現像ニップ部を通過する際に前記電流検知部によって検出される電流である白地電流とのそれぞれに基づいて、前記画像形成動作において前記現像ローラーに印加される前記現像バイアスの前記交流電圧のピーク間電圧の基準となる基準ピーク間電圧を決定するバイアス条件決定モードを実行するバイアス条件決定部と、を備える。
【0010】
本構成によれば、画像部と白地部とを含む測定用潜像に対応する現像電流に対して白地部の影響をキャンセルした現像実電流に基づいて、基準ピーク間電圧を精度良くかつ安定して設定することができる。また、トナーの消費を伴う測定用トナー像の形成時に画像部の領域を限定することができるため、測定用トナー像の形成に伴うトナー消費量を低減することができる。更に、同じトナー消費量を前提として、現像ローラーの回転方向に沿って長く延びる測定用トナー像を形成することができるため、現像ローラーの振れや回転むらなどの影響に伴う現像電流の変動を平準化することが可能となる。
【0011】
上記の構成において、前記バイアス条件決定部は、前記バイアス条件決定モードにおいて、第1近似式決定動作と、第2近似式決定動作と、基準電圧決定動作と、をそれぞれ実行する。前記バイアス条件決定部は、第1近似式決定動作では、前記現像バイアスの前記交流成分の前記ピーク間電圧を所定の第1測定範囲に含まれる少なくとも3つの第1測定用ピーク間電圧にそれぞれ設定した条件で前記現像電流を前記白地電流で補正した電流である現像実電流をそれぞれ取得し、前記第1測定範囲における前記第1測定用ピーク間電圧と前記取得された現像実電流との関係を示す一次近似式である第1近似式を決定する。前記バイアス条件決定部は、第2近似式決定動作では、前記現像バイアスの前記交流成分の前記ピーク間電圧を前記第1測定範囲の最大値よりも大きな最小値を有するように設定された第2測定範囲に含まれる少なくとも3つの第2測定用ピーク間電圧にそれぞれ設定した条件で前記現像実電流をそれぞれ取得し、前記第2測定範囲における前記第2測定用ピーク間電圧と前記取得された現像実電流との関係を示す一次近似式である第2近似式を決定する。前記バイアス条件決定部は、基準電圧決定動作では、前記第1近似式決定動作で決定された前記第1近似式と前記第2近似式決定動作で決定された前記第2近似式とが互いに交差する交点におけるピーク間電圧を前記基準ピーク間電圧として決定する。また、画像形成動作時の実ピーク間電圧は、前記基準ピーク間電圧に対して、その基準ピーク間電圧そのままの値、もしくはその基準ピーク間電圧に一定比率を乗じた値、もしくは一定値を加えた値、または一定比率を乗じた上に一定値を加えた値を用いてもよい。
【0012】
本構成によれば、第1測定範囲および第2測定範囲のそれぞれの範囲において交流バイアスのピーク間電圧と現像実電流との関係を示す第1近似式と第2近似式との交点から基準ピーク間電圧が設定される。上記の交点の近傍では、交流バイアスのピーク間電圧と現像実電流との関係の変化点が存在するため、第1測定範囲における第1近似式の傾きの影響を受けにくく、トナーの帯電量や現像ギャップの変動によって画像濃度が変化することを抑止することができる。また、キャリアの抵抗などの変動に応じて第2近似式の傾きが所定の閾値よりも小さくなる領域であってピーク間電圧の増加に応じて現像実電流が低下しやすい領域に基準ピーク間電圧を設定することが抑止される。この結果、画像形成動作において安定した画像濃度を出力することが可能な現像バイアスの交流バイアスを設定することが可能となる。
【0013】
上記の構成において、前記バイアス条件決定部は、前記第1測定範囲に含まれる前記少なくとも3つの第1測定用ピーク間電圧においてそれぞれ取得された前記現像実電流から最小二乗法によって前記第1近似式を決定することが望ましい。
【0014】
本構成によれば、第1測定範囲に含まれる第1測定用ピーク間電圧から、簡易な演算処理によって第1近似式を決定することができる。
【0015】
上記の構成において、前記バイアス条件決定部は、前記第2測定範囲に含まれる前記少なくとも3つの第2測定用ピーク間電圧においてそれぞれ取得された前記現像実電流から最小二乗法によって決定された一次近似式である第1判定用近似式の傾きが予め設定された第1閾値よりも大きい場合には、前記少なくとも3つの第2測定用前記ピーク間電圧においてそれぞれ取得された現像実電流の平均値がピーク間電圧の変化に対して一定となる直線式を前記第2近似式として設定し、前記第1判定用近似式の傾きが前記第1閾値よりも小さい場合には、前記第1判定用近似式を前記第2近似式として設定することが望ましい。
【0016】
本構成によれば、キャリアの抵抗値などの影響によって、その傾きが変化しやすい第2近似式の決定過程において、第1判定用近似式の傾きに応じてより適切な近似式を第2近似式として選択することができる。
【0017】
上記の構成において、前記第1測定範囲における前記複数の第1測定用ピーク間電圧の間隔、および、前記第2測定範囲における前記複数の第2測定用ピーク間電圧の間隔は、それぞれ、前記第1測定範囲の前記最大値と前記第2測定範囲の前記最小値との間隔よりも小さく設定されていることが望ましい。
【0018】
本構成によれば、第1測定範囲と第2測定範囲とを明確に区別し、更にそれぞれの測定範囲においてピーク間電圧の間隔を細かく設定することで、第1近似式、第2近似式の決定精度を高めることができる。
【0019】
上記の構成において、前記第1測定範囲における前記少なくとも3つの第1測定用ピーク間電圧の数が、前記第2測定範囲における前記少なくとも3つの第2測定用ピーク間電圧の数よりも多く設定されていることが望ましい。
【0020】
本構成によれば、現像実電流が大きく変化しやすい第1測定範囲において相対的に多くのデータを取得することで、より精度の高い基準ピーク間電圧を決定することができる。
【0021】
上記の構成において、前記バイアス条件決定部は、前記現像実電流を構成する2つの電流であって、前記現像ニップ部の前記画像部において前記現像ローラーから前記像担持体にトナーが移動することで生じる電流であるトナー移動電流と、前記画像部において前記トナーおよび前記キャリアによって前記現像ローラーと前記像担持体とに跨るように形成される磁気ブラシに沿って前記トナー移動電流とは同じ向きに流れる電流である画像部磁気ブラシ電流とのバランスによって基準ピーク間電圧を決定する。この際、前記ピーク間電圧の変化に応じて変化する変化点を前記第1近似式と前記第2近似式との前記交点によって取得し、前記変化点に対応するピーク間電圧を前記基準ピーク間電圧として決定することが望ましい。
【0022】
本構成によれば、トナー移動電流および画像部磁気ブラシ電流の2つの電流のバランスが変化する変化点を2つの近似式の交点によって予測し、基準ピーク間電圧を決定することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、画像形成装置に備えられる二成分現像方式が適用された現像装置において、現像電流の検出結果に基づいてピーク間電圧を安定して設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の内部構造を示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る現像装置の断面図および制御部の電気的構成を示したブロック図である。
【
図3A】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の現像動作を示す模式図である。
【
図3B】本発明の一実施形態に係る像担持体および現像ローラーの電位の大小関係を示す模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る画像形成装置において実行されるACキャリブレーションのフローチャートである。
【
図5】本発明の一実施形態に係る画像形成装置において実行されるACキャリブレーションの第1近似式決定ステップのフローチャートである。
【
図6】本発明の一実施形態に係る画像形成装置において実行されるACキャリブレーションの第2近似式決定ステップのフローチャートである。
【
図7】本発明の一実施形態に係る画像形成装置において実行されるACキャリブレーションにおける画像部および白地部を含む測定用潜像を示す模式図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る画像形成装置において実行されるACキャリブレーションにおける白地部のみの測定用潜像を示す模式図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る画像形成装置において実行されるACキャリブレーションのVppと現像実電流との関係を示すグラフである。
【
図10】本発明の一実施形態に係る画像形成装置において実行されるACキャリブレーションのVppと現像実電流との関係を示すグラフである。
【
図11】本発明の一実施形態に係る画像形成装置において実行されるACキャリブレーションのVppと現像実電流との関係を示すグラフである。
【
図12】本発明の一実施形態に係る画像形成装置において実行されるACキャリブレーションのVppと現像実電流との関係を示すグラフである。
【
図13】本発明の変形実施形態に係る画像形成装置において実行されるACキャリブレーションの第2近似式決定ステップのフローチャートである。
【
図14】本発明の変形実施形態に係る画像形成装置において実行されるACキャリブレーションの第2近似式決定ステップの一部のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係る画像形成装置10について、図面に基づき詳細に説明する。本実施形態では、画像形成装置の一例として、タンデム方式のカラープリンタを例示する。画像形成装置は、例えば、複写機、ファクシミリ装置、及びこれらの複合機等であってもよい。また、画像形成装置は、単色(モノクロ)画像を形成するものでもよい。画像形成装置10は、シートPに画像を形成する画像形成動作を実行することが可能とされている。
【0026】
図1は、画像形成装置10の内部構造を示す断面図である。この画像形成装置10は、箱形の筐体構造を備える装置本体11を備える。この装置本体11内には、シートPを給紙する給紙部12、給紙部12から給紙されたシートPに転写するトナー像を形成する画像形成部13、前記トナー像が一次転写される中間転写ユニット14(転写部)、画像形成部13にトナーを補給するトナー補給部15、及び、シートP上に形成された未定着トナー像をシートPに定着する処理を施す定着部16が内装されている。さらに、装置本体11の上部には、定着部16で定着処理の施されたシートPが排紙される排紙部17が備えられている。
【0027】
装置本体11の上面の適所には、シートPに対する出力条件等を入力操作するための図略の操作パネルが設けられている。この操作パネルには、電源キーや出力条件を入力するためのタッチパネルや各種の操作キーが設けられている。
【0028】
装置本体11内には、さらに、画像形成部13より右側位置に、上下方向に延びるシート搬送路111が形成されている。シート搬送路111には、適所にシートを搬送する搬送ローラー対112が設けられている。また、シートのスキュー矯正を行うと共に、後述する二次転写のニップ部に所定のタイミングでシートを送り込むレジストローラー対113が、シート搬送路111における前記ニップ部の上流側に設けられている。シート搬送路111は、シートPを給紙部12から排紙部17まで、画像形成部13及び定着部16を経由して搬送させる搬送路である。
【0029】
給紙部12は、給紙トレイ121、ピックアップローラー122、及び給紙ローラー対123を備える。給紙トレイ121は、装置本体11の下方位置に挿脱可能に装着され、複数枚のシートPが積層されたシート束P1を貯留する。ピックアップローラー122は、給紙トレイ121に貯留されたシート束P1の最上面のシートPを1枚ずつ繰り出す。給紙ローラー対123は、ピックアップローラー122によって繰り出されたシートPをシート搬送路111に送り出す。
【0030】
給紙部12は、装置本体11の、
図1に示す左側面に取り付けられる手差し給紙部を備える。手差し給紙部は、手差しトレイ124、ピックアップローラー125、及び給紙ローラー対126を備える。手差しトレイ124は、手差しされるシートPが載置されるトレイであり、手差しでシートPを給紙する際、
図1に示すように、装置本体11の側面から開放される。ピックアップローラー125は、手差しトレイ124に載置されたシートPを繰り出す。給紙ローラー対126は、ピックアップローラー125によって繰り出されたシートPをシート搬送路111に送り出す。
【0031】
画像形成部13は、シートPに転写するトナー像を形成するものであって、異なる色のトナー像を形成する複数の画像形成ユニットを備える。この画像形成ユニットとして、本実施形態では、後述する中間転写ベルト141の回転方向上流側から下流側に向けて(
図1に示す左側から右側へ)順次配設された、マゼンタ(M)色の現像剤を用いるマゼンタ用ユニット13M、シアン(C)色の現像剤を用いるシアン用ユニット13C、イエロー(Y)色の現像剤を用いるイエロー用ユニット13Y、及びブラック(Bk)色の現像剤を用いるブラック用ユニット13Bkが備えられている。各ユニット13M、13C、13Y、13Bkは、それぞれ感光体ドラム20(像担持体)と、感光体ドラム20の周囲に配置された帯電装置21、現像装置23、一次転写ローラー24及びクリーニング装置25とを備える。また、各ユニット13M、13C、13Y、13Bk共通の露光装置22が、画像形成ユニットの下方に配置されている。
【0032】
感光体ドラム20は、その軸回りに回転駆動され、静電潜像が形成されることを許容するとともに前記静電潜像がトナーによって顕在化されたトナー像を担持する円筒状の表面を有する。この感光体ドラム20としては、一例として、公知のアモルファスシリコン(α-Si)感光体ドラムや有機(OPC)感光体ドラムが用いられる。帯電装置21は、感光体ドラム20の表面を所定の帯電電位に均一に帯電する。帯電装置21は、帯電ローラーと、前記帯電ローラーに付着したトナーを除去するための帯電クリーニングブラシとを備える。露光装置22は、帯電装置21よりも感光体ドラム20の回転方向下流側に配置され、光源やポリゴンミラー、反射ミラー、偏向ミラーなどの各種の光学系機器を有する。露光装置22は、前記帯電電位に均一に帯電された感光体ドラム20の表面に、画像データ(所定の画像情報)に基づき変調された光を照射して露光することで、静電潜像を形成する。
【0033】
現像装置23は、露光装置22よりも感光体ドラム20の回転方向下流側の所定の現像ニップ部NP(
図3A)において感光体ドラム20に対向して配置される。現像装置23は、回転されトナーおよびキャリアからなる現像剤を担持する周面を有し、感光体ドラム20にトナーを供給することで前記トナー像を形成する現像ローラー231を含む。
【0034】
一次転写ローラー24は、中間転写ユニット14に備えられている中間転写ベルト141を挟んで感光体ドラム20とニップ部を形成する。更に、一次転写ローラー24は、感光体ドラム20上のトナー像を中間転写ベルト141上に一次転写する。クリーニング装置25は、トナー像転写後の感光体ドラム20の周面を清掃する。
【0035】
中間転写ユニット14は、画像形成部13とトナー補給部15との間に設けられた空間に配置され、中間転写ベルト141と、図略のユニットフレームにて回転可能に支持された駆動ローラー142と、従動ローラー143と、バックアップローラー146と、濃度センサ100と、を備える。中間転写ベルト141は、無端状のベルト状回転体であって、その周面側が各感光体ドラム20の周面にそれぞれ当接するように、駆動ローラー142及び従動ローラー143、バックアップローラー146に架け渡されている。中間転写ベルト141は駆動ローラー142の回転により周回駆動される。従動ローラー143の近傍には、中間転写ベルト141の周面上に残存したトナーを除去するベルトクリーニング装置144が配置されている。濃度センサ100(濃度検出部)は、ユニット13M、13C、13Y、13Bkよりも下流側において中間転写ベルト141に対向して配置されており、中間転写ベルト141上に形成されたトナー像の濃度を反射光によって検出する(反射式)。なお、他の実施形態において、濃度センサ100は、感光体ドラム20上のトナー像の濃度を検出するものでもよく、また、シートP上に定着されたトナー像の濃度を検出するものでもよい。
【0036】
駆動ローラー142に対向して、中間転写ベルト141の外側には、二次転写ローラー145が配置されている。二次転写ローラー145は、中間転写ベルト141の周面に圧接されて、駆動ローラー142との間で転写ニップ部を形成している。中間転写ベルト141上に一次転写されたトナー像は、給紙部12から供給されるシートPに、転写ニップ部において二次転写される。すなわち、中間転写ユニット14および二次転写ローラー145は、感光体ドラム20上に担持されたトナー像をシートPに転写する転写部として機能する。また、駆動ローラー142には、その周面を清掃するためのロールクリーナー200が配置されている。
【0037】
トナー補給部15は、画像形成に用いられるトナーを貯留するものであり、本実施形態ではマゼンタ用トナーコンテナ15M、シアン用トナーコンテナ15C、イエロー用トナーコンテナ15Y及びブラック用トナーコンテナ15Bkを備える。これらトナーコンテナ15M、15C、15Y、15Bkは、それぞれM/C/Y/Bk各色の補給用トナーを貯留するものである。コンテナ底面に形成されたトナー排出口15Hから、M/C/Y/Bk各色に対応する画像形成ユニット13M、13C、13Y、13Bkの現像装置23に各色のトナーが補給される。
【0038】
定着部16は、内部に加熱源を備えた加熱ローラー161と、加熱ローラー161に対向配置された定着ローラー162と、定着ローラー162と加熱ローラー161とに張架された定着ベルト163と、定着ベルト163を介して定着ローラー162と対向配置され定着ニップ部を形成する加圧ローラー164とを備えている。定着部16へ供給されたシートPは、前記定着ニップ部を通過することで、加熱加圧される。これにより、前記転写ニップ部でシートPに転写されたトナー像は、シートPに定着される。
【0039】
排紙部17は、装置本体11の頂部が凹没されることによって形成され、この凹部の底部に排紙されたシートPを受ける排紙トレイ171が形成されている。定着処理が施されたシートPは、定着部16の上部から延設されたシート搬送路111を経由して、排紙トレイ151へ向けて排紙される。
【0040】
<現像装置について>
図2は、本実施形態に係る現像装置23の断面図および制御部980の電気的構成を示したブロック図である。現像装置23は、現像ハウジング230と、現像ローラー231と、第1スクリューフィーダー232と、第2スクリューフィーダー233と、規制ブレード234とを備える。現像装置23には、二成分現像方式が適用されている。
【0041】
現像ハウジング230には、現像剤収容部230Hが備えられている。現像剤収容部230Hには、トナーとキャリアとからなる二成分現像剤が収容されている。また、現像剤収容部230Hは、現像剤が現像ローラー231の軸方向の一端側から他端側に向かう第1搬送方向(
図2の紙面と直交する方向、後から前に向かう方向)に搬送される第1搬送部230Aと、軸方向の両端部において第1搬送部230Aに連通され、第1搬送方向とは逆の第2搬送方向に現像剤が搬送される第2搬送部230Bとを含む。第1スクリューフィーダー232および第2スクリューフィーダー233は、
図2の矢印D22、D23方向に回転され、それぞれ、現像剤を第1搬送方向および第2搬送方向に搬送する。特に、第1スクリューフィーダー232は、現像剤を第1搬送方向に搬送しながら、現像ローラー231に現像剤を供給する。
【0042】
現像ローラー231は、現像ニップ部NP(
図3A)において、感光体ドラム20に対向して配置されている。現像ローラー231は、回転されるスリーブ231Sと、スリーブ231Sの内部に固定配置された磁石231Mとを備える。磁石231Mは、S1、N1、S2、N2およびS3極を備える。N1極は主極とし機能し、S1極およびN2極は搬送極として機能し、S2極は剥離極として機能する。また、S3極は、汲み上げ極および規制極として機能する。一例として、S1極、N1極、S2極、N2極およびS3極の磁束密度は、54mT、96mT、35mT、44mTおよび45mTに設定される。現像ローラー231のスリーブ231Sは、
図2の矢印D21方向に回転される。現像ローラー231は、回転され、現像ハウジング230内の現像剤を受け取って現像剤層を担持し、感光体ドラム20にトナーを供給する。なお、本実施形態では、現像ローラー231は、感光体ドラム20と対向する位置において、同方向(ウィズ方向)に回転する。また、現像ローラー231の軸方向(幅方向)において、二成分現像剤の磁気ブラシが形成される範囲は、一例として、304mmである。
【0043】
規制ブレード234(層厚規制部材)は、現像ローラー231に所定の間隔をおいて配置され、第1スクリューフィーダー232から現像ローラー231の周面上に供給された現像剤の層厚を規制する。
【0044】
現像装置23を備える画像形成装置10は、更に、現像バイアス印加部971と、駆動部972と、電流計973(電流検出部)と、制御部980とを備える。制御部980は、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)等から構成されている。
【0045】
現像バイアス印加部971は、直流電源と交流電源とから構成され、後記のバイアス制御部982からの制御信号に基づき、現像装置23の現像ローラー231に、直流電圧に交流電圧が重畳された現像バイアスを印加する。
【0046】
駆動部972は、モーター及びそのトルクを伝達するギア機構からなり、後記の駆動制御部981からの制御信号に応じて、現像動作時に、感光体ドラム20に加え、現像装置23内の現像ローラー231および第1スクリューフィーダー232、第2スクリューフィーダー233を回転駆動させる。
【0047】
電流計973は、現像ローラー231と現像バイアス印加部971との間を流れる直流電流(現像電流の直流成分)を検出する。
【0048】
制御部980は、前記CPUがROMに記憶された制御プログラムを実行することにより、駆動制御部981、バイアス制御部982、記憶部983およびキャリブレーション実行部984(バイアス条件決定部)を備えるように機能する。
【0049】
駆動制御部981は、駆動部972を制御して、現像ローラー231、第1スクリューフィーダー232、第2スクリューフィーダー233を回転駆動させる。また、駆動制御部981は、不図示の駆動機構を制御して、感光体ドラム20を回転駆動させる。
【0050】
バイアス制御部982は、現像ローラー231から感光体ドラム20にトナーが供給される現像動作時(画像形成動作時)に、現像バイアス印加部971を制御して、感光体ドラム20と現像ローラー231との間に直流電圧および交流電圧の電位差を設ける。前記電位差によって、トナーが現像ローラー231から感光体ドラム20に移動される。
【0051】
記憶部983は、駆動制御部981、バイアス制御部982およびキャリブレーション実行部984によって参照される各種の情報を記憶している。一例として、現像ローラー231の回転数や環境に応じて調整される現像バイアスの値などが記憶されている。また、記憶部983は、複数の測定用トナー像を形成する際の各トナー像に応じて設定された印字率およびライン線数を格納している。なお、記憶部983に格納されるデータは、グラフやテーブルなどの形式でもよい。
【0052】
キャリブレーション実行部984は、後記のACキャリブレーション(バイアス条件決定モード)を実行する。キャリブレーション実行部984は、ACキャリブレーションにおいて、感光体ドラム20、帯電装置21、露光装置22および現像装置23を制御しながら、感光体ドラム20上に複数の測定用トナー像を形成する。そして、キャリブレーション実行部984は、感光体ドラム20上に形成される所定の測定用潜像に対応して現像ローラー231に前記現像バイアスを印加することで前記測定用潜像をトナーで現像する際に電流計973によって検出される直流電流に基づいて、前記画像形成動作において現像ローラー231に印加される現像バイアスの交流電圧のピーク間電圧の基準となる基準ピーク間電圧を決定する。
【0053】
<現像動作について>
図3Aは、本実施形態に係る画像形成装置10の現像動作の模式図、
図3Bは、感光体ドラム20および現像ローラー231の電位の大小関係を示す模式図である。
図3Aを参照して、現像ローラー231と感光体ドラム20との間に、現像ニップ部NPが形成されている。現像ローラー231上に担持されるトナーTNおよびキャリアCAは磁気ブラシを形成する。現像ニップ部NPにおいて、磁気ブラシからトナーTNが感光体ドラム20側に供給され、トナー像TIが形成される。
図3Bを参照して、感光体ドラム20の表面電位は、帯電装置21によって、背景部電位V0(V)に帯電される。その後、露光装置22によって露光光が照射されると、感光体ドラム20の表面電位が、印刷される画像に応じて背景部電位V0から最大で画像部電位VL(V)まで変化される。一方、現像ローラー231には、現像バイアスの直流電圧Vdcが印加されるとともに、直流電圧Vdcに不図示の交流電圧が重畳されている。
【0054】
このような反転現像方式の場合、表面電位V0と現像バイアスの直流成分Vdc(DCバイアス)との電位差が、感光体ドラム20の背景部へのトナーかぶりを抑制する電位差である。一方、露光後の表面電位VLと現像バイアスの直流成分Vdcとの電位差が、感光体ドラム20の画像部に、プラス極性のトナーを移動させる現像電位差となる。更に、現像ローラー231に印加される現像バイアスの交流成分(ACバイアス)によって、現像ローラー231から感光体ドラム20へのトナーの移動が促進される。
【0055】
<現像バイアスと画像濃度との関係について>
ここで、現像装置23内のトナーの帯電量が変化した場合や、現像ローラー231の振れなどによって現像ギャップが変化した場合には、上記のDCバイアスおよびACバイアスのいずれにおいても、トナーに付与される移動力F(=トナーの電荷量Q×電界の大きさE)が変化し、画像濃度が変動するという性質を持っている。ただし、厳密にはDCバイアスとACバイアスとでは互いに異なった特性も持っている。ACバイアスの場合、そのVpp(ピーク間電圧)を増大させていくと、画像濃度は上昇するが、やがて画像濃度の上昇はほとんどなくなり、更にアップさせると、逆に画像濃度は低下していく。一方、DCバイアスにおける前記現像電位差(Vdc-VL)を増大させていくと画像濃度は上昇を続けるとともに、やがて画像濃度の上昇量は小さくなるがACバイアスのような画像濃度低下は確認されなかった。これは、AC電界が現像ニップ部において感光体ドラム20と現像ローラー231との間で双方向の電界(往復電界)を形成する一方、DC電界は一方向の電界を形成することに起因していると推察される。
【0056】
より詳しくは、ACバイアスの前記往復電界は、トナーを現像ローラー231から感光体ドラム20に供給する現像電界と、トナーを感光体ドラム20から現像ローラー231に回収する回収電界という互いに逆方向の2つの電界から成り立っている。そして、Vppを上昇させた場合には、この両方の電界が上昇するが、やがて現像電界によるトナーの供給量は最大となる。その後、更にVppを上昇させると回収電界の上昇によりトナーの回収量はアップするが、現像電界によるトナーの供給量は既に最大となっている。この結果、感光体ドラム20と現像ローラー231との間でのトナーの供給と回収との大小関係によって、最終的なトナーの現像量はVppの上昇に応じて低下する。
【0057】
<Vppと現像電流との関係について>
このように、DCバイアスおよびACバイアスとトナーの現像量との関係を把握することはできる一方、ACバイアスのVppを増大させた場合に、現像ローラー231と現像バイアス印加部971との間を流れる現像電流がどのような挙動を示すかは十分知られていなかった。
【0058】
この原因は、現像ニップ部NPにおいて生成される現像電流が、「トナーの移動によって流れるトナー移動電流」と、「画像部において現像剤の磁気ブラシを流れる磁気ブラシ電流(画像部磁気ブラシ電流)」と、「非画像部で現像剤の磁気ブラシを流れる磁気ブラシ電流(非画像部磁気ブラシ電流または白地電流)」とから構成されているためであると推察される。なぜなら、トナー移動電流はトナーの移動量に応じて変化するため、Vppをアップさせていくと、トナー移動電流は上昇した後、低下していくが、画像部磁気ブラシ電流は、現像ニップ部NPにおいて磁気ブラシを流れる電流であるため、Vppの上昇と共に上昇する傾向にある。更に、非画像部磁気ブラシ電流は、画像形成領域に隣接する非画像形成領域(白地部)において、Vppの上昇とともに画像部磁気ブラシ電流とは逆方向の電流を上昇させる傾向にある。このため、トナー移動電流、画像部磁気ブラシ電流および非画像部磁気ブラシ電流の合計の電流の挙動の影響を複雑に受ける現像電流が、Vppの増大に応じてどのような挙動を示すかは十分知られていなかった。
【0059】
そこで、本発明者は現像バイアスのACバイアスのVppを増大させた時の現像電流の挙動を確認する実験を鋭意実施することで、その傾向に複数のパターンが存在することを新たに知見した。すなわち、ACバイアスのVppを増大させると、現像電流(直流電流)は上昇していくが、やがてその勾配が変化する変化点に到達するとともにその後も現像電流が緩やかに上昇するパターンや、逆に前記変化点から現像電流が低下するパターンがあることが明らかになった。
【0060】
本発明者は、このような現像電流のパターンに基づいて、ACバイアスのVppを画像濃度の変化が少ない領域に設定することに新たに着目した。この結果、トナー帯電量や現像ギャップが変化しても、画像濃度の変化を少なくすることが可能となった。以下に、このようなVppを設定するためのACキャリブレーションの詳細について説明する。
【0061】
<ACキャリブレーションについて>
図4は、本実施形態に係る画像形成装置1において実行されるACキャリブレーションのフローチャートである。
図5は、本実施形態に係る画像形成装置1において実行されるACキャリブレーションの第1近似式決定ステップのフローチャートである。
図6は、本実施形態に係る画像形成装置1において実行されるACキャリブレーションの第2近似式決定ステップのフローチャートである。
図7は、本実施形態に係る画像形成装置1において実行されるACキャリブレーションにおける画像部および白地部を含む測定用潜像を示す模式図である。
図8は、本実施形態に係るACキャリブレーションにおける白地部のみの測定用潜像を示す模式図である。
【0062】
本実施形態では、画像形成動作が行われていないタイミングで、キャリブレーション実行部984がACキャリブレーション(バイアス条件決定モード)を実行する。ACキャリブレーションは、前記画像形成動作において現像ローラー231に印加される現像バイアスの交流電圧のピーク間電圧(Vpp)の基準となる基準ピーク間電圧(ターゲット電圧)を決定するモードである。
【0063】
ACキャリブレーションが開始されると、キャリブレーション実行部984は、第1近似式決定ステップ(
図4のステップS01)、第2近似式決定ステップ(
図4のステップS02)、ターゲット電圧決定ステップ(
図4のステップS03)を順に実行する。
【0064】
図5を参照して、第1近似式決定ステップについて詳述する。第1近似式決定ステップが開始されると、キャリブレーション実行部984は、記憶部983に記憶されている第1測定範囲に関する情報を取得する。第1測定範囲は、第1近似式決定ステップにおいて現像ローラー231に印加される交流バイアスのVppの範囲および間隔に関する情報である。本実施形態では、一例として、4つの第1測定用ピーク間電圧に関する情報がキャリブレーション実行部984によって取得される。この結果、第1近似式決定ステップにおける第1測定範囲が決定される(ステップS11)。
【0065】
次に、キャリブレーション実行部984は、現像電流Idcを測定する(ステップS12)。具体的に、キャリブレーション実行部984は、感光体ドラム20上に測定用潜像を形成し、現像ローラー231に現像バイアスを印加することで、前記測定用潜像を現像する。この際、画像形成時と同様に、感光体ドラム20が回転され、帯電装置21によって感光体ドラム20の周面が250Vに一様帯電される。なお、一例として、感光体ドラム20の軸方向(幅方向)における帯電範囲は322mmに設定される。そして、露光装置22から照射される露光光によって感光体ドラム20の一部の電位が10Vまで低下され、測定用パッチ(測定用潜像、画像部)がベタ黒潜像として感光体ドラム20上に形成される。本実施形態では、
図7に示すように、現像ローラー231上の磁気ブラシ幅P(mm)に対して、測定用パッチの幅がM(mm)と定義される。そして、測定パッチの両側には、測定用パッチが形成されていない白地部が形成される。この場合、測定用パッチの両側をあわせて、白地部の幅(非パッチ幅)は、P-M(mm)で算出される。この白地部が、前述の非画像磁気ブラシ電流(白地電流)が流れる領域となる。
【0066】
一方、現像ローラー231には、一例として、直流電圧150Vに、周波数10kHz、Duty50%の交流バイアスが重畳される。なお、交流バイアスのVppは、前記4つの第1測定用ピーク間電圧に順に設定される。この結果、各第1測定用ピーク間電圧に関して、上記の測定用パッチが現像ローラー231によって現像される際に、電流計973が現像ローラー231と現像バイアス印加部971との間を流れる現像電流の直流成分(現像電流Idc)をそれぞれ測定する(ステップS12)。この結果、4つの第1測定用ピーク間電圧に対応した4つの現像電流Idcが取得される。なお、現像電流Idcの測定は現像ローラー231の回転について1周分以上の平均電流によって行われるものが望ましく、1周の整数倍の回転について平均されることが更に望ましい。後記の各電流においても同様である。
【0067】
次に、キャリブレーション実行部984は、白地電流Idwを測定する(ステップS13)。この際も、感光体ドラム20が回転され、帯電装置21によって感光体ドラム20の周面が250Vに一様帯電される。一方、
図8に示すように、感光体ドラム20上には画像部に相当する静電潜像が形成されることなく、非画像部(白地部)が現像ローラー231上の磁気ブラシの軸方向全体に対向するように形成される。すなわち、露光装置22から露光光は照射されない。この場合、白地部の幅(非パッチ幅)が磁気ブラシ幅Pと一致する。一方、現像ローラー231には、現像電流Idcの測定時と同様に、直流電圧150Vに、周波数10kHz、Duty50%の交流バイアスが重畳される。また、交流バイアスのVppは、前記4つの第1測定用ピーク間電圧に順に設定される。前述のような白地部が現像ニップ部Nを通過する際に、電流計973が現像ローラー231と現像バイアス印加部971との間を流れる現像電流の直流成分(白地電流Idw)をそれぞれ測定する。この結果、4つの第1測定用ピーク間電圧に対応した4つの白地電流Idwが取得される。
【0068】
次に、キャリブレーション実行部984は、4つの第1測定用ピーク間電圧に対応した4つの現像実電流Idrを算出する(ステップS14)。具体的に、キャリブレーション実行部984は、以下の式1を用いて、各第1測定用ピーク間電圧における現像実電流Idrをそれぞれ算出する。
Idr=Idc-Idw×M/P ・・・(式1)
この結果、第1測定用ピーク間電圧および現像実電流Idrに関する4組のデータが取得される。
【0069】
次に、キャリブレーション実行部984は、上記の4つの第1測定用ピーク間電圧と4つの現像実電流Idrとの関係を一次式で回帰し、その相関係数Rを演算する(ステップS15)。一例として、キャリブレーション実行部984は最小二乗法によって前記一次式を演算し、相関係数Rを取得する。
【0070】
次に、キャリブレーション実行部984は、上記で取得した相関係数Rと予め記憶部983に格納された閾値R1との大小関係を比較する(ステップS16)。一例として、閾値R1は、0.90に設定されている。ここで、閾値R1≦相関係数Rの場合(ステップS16でYES)、キャリブレーション実行部984は、上記で回帰した一次式を第1近似式として決定する(ステップS17)。一方、ステップS16において閾値R1>相関係数Rの場合(ステップS16でNO)、キャリブレーション実行部984は、上記の4組のデータのうち、最も大きなVppのデータを取り除いた状態で残りの3つのデータに基づいて、相関係数Rを再度演算する。その後、キャリブレーション実行部984は、上記と同様にステップS16、S17を実行する。なお、ステップS18において最大Vppのデータを取り除いたあとも閾値R1≦相関係数Rの関係が満たされない場合、キャリブレーション実行部984は、更に一部のデータを取り除いてステップを繰り返してもよいし、ACキャリブレーションの実行を中断して前回行われたACキャリブレーションの結果を援用してもよい。
【0071】
上記のように、第1近似式決定ステップが完了すると、第2近似式決定ステップが開始される。
図6を参照して、第2近似式決定ステップについて詳述する。第2近似式決定ステップが開始されると、キャリブレーション実行部984は、記憶部983に記憶されている第2測定範囲に関する情報を取得する。第2測定範囲は、第2近似式決定ステップにおいて現像ローラー231に印加される交流バイアスのVppの範囲および間隔に関する情報である。本実施形態では、一例として、3つの第2測定用ピーク間電圧に関する情報がキャリブレーション実行部984によって取得される。この結果、第2近似式決定ステップにおける第2測定範囲が決定される(ステップS21)。なお、第1測定範囲(4つの第1測定用ピーク間電圧)の最大値よりも、第2測定範囲(3つの第2測定用ピーク間電圧)の最小値は大きく設定されている。
【0072】
次に、キャリブレーション実行部984は、
図5のステップS12と同様に、感光体ドラム20上に測定用パッチ(
図7)を形成し、現像ローラー231に現像バイアスを印加することで、前記測定用潜像を現像する。この際、現像ローラー231には、直流電圧150Vに、周波数10kHz、Duty50%の交流バイアスが重畳され、交流バイアスのVppは、前記3つの第2測定用ピーク間電圧に順に設定される。この結果、各第2測定用ピーク間電圧に関して、上記の測定用潜像が現像ローラー231によって現像される際に、電流計973が現像ローラー231と現像バイアス印加部971との間を流れる現像電流の直流成分(現像電流Idc)をそれぞれ測定する(ステップS22)。この結果、3つの第2測定用ピーク間電圧に対応した3つの現像電流Idcが取得される。
【0073】
次に、キャリブレーション実行部984は、
図5のステップS13と同様に、白地電流Idwを測定する(ステップS23)。この際も、感光体ドラム20が回転され、帯電装置21によって感光体ドラム20の周面が250Vに一様帯電される。一方、
図8に示すように、感光体ドラム20上には画像部に相当する静電潜像が形成されることなく、非画像部(白地部)が現像ローラー231上の磁気ブラシの軸方向全体に対向するように形成される。一方、現像ローラー231には、現像電流Idcの測定時と同様に、直流電圧150Vに、周波数10kHz、Duty50%の交流バイアスが重畳される。また、交流バイアスのVppは、前記3つの第2測定用ピーク間電圧に順に設定される。前述のような白地部が現像ニップ部Nを通過する際に、電流計973が現像ローラー231と現像バイアス印加部971との間を流れる現像電流の直流成分(白地電流Idw)をそれぞれ測定する。この結果、3つの第2測定用ピーク間電圧に対応した3つの白地電流Idwが取得される。
【0074】
次に、キャリブレーション実行部984は、3つの第2測定用ピーク間電圧に対応した3つの現像実電流Idrを前述の式1に基づいて算出する(ステップS24)。この結果、第2測定用ピーク間電圧および現像実電流Idrに関する3組のデータが取得される。
【0075】
次に、キャリブレーション実行部984は、上記の3つの第2測定用ピーク間電圧と3つの現像実電流Idrとの関係を一次式(第1判定用近似式)で回帰し、その傾きLを演算する(ステップS25)。一例として、キャリブレーション実行部984は最小二乗法によって前記一次式を演算し、傾きLを取得する。
【0076】
次に、キャリブレーション実行部984は、上記で取得した傾きLと予め記憶部983に格納された閾値L1との大小関係を比較する(ステップS26)。一例として、閾値L1は、0(ゼロ)に設定されている。ここで、傾きL<閾値L1の場合(ステップS26でYES)、キャリブレーション実行部984は、上記で回帰した一次式を第2近似式として決定する(ステップS27)。一方、ステップS26において傾きL≧閾値L1の場合(ステップS26でNO)、キャリブレーション実行部984は、上記の3組のデータのVppの平均値を演算し、当該平均値がピーク間電圧の変化に対して一定となる直線式を前記第2近似式として設定する(ステップS28)。
【0077】
図5、
図6に示される第1近似式決定ステップおよび第2近似式決定ステップがそれぞれ終了すると、キャリブレーション実行部984は、ターゲット電圧決定ステップを実行する(
図4のステップS03)。当該ターゲット電圧決定ステップでは、キャリブレーション実行部984は、第1近似式と第2近似式とが互いに交差する交点におけるピーク間電圧を基準ピーク間電圧(ターゲット電圧VT)として決定する。この結果、第1測定範囲および第2測定範囲のそれぞれにおけるピーク間電圧と現像電流との関係の境界付近(ピーク付近)において画像形成動作時のピーク間電圧を設定することができる。なお、本実施形態では、上記のように決定された基準ピーク間電圧を、所定の安全率を含めて、1.2倍したピーク間電圧を画像形成動作時の実ピーク間電圧として適用する。
【0078】
以下、本実施形態におけるACキャリブレーションについてデータを基に更に詳述する。後記のデータは以下の各条件において行ったものである。
【0079】
<共通条件>
・プリント速度:55枚/分
・感光体ドラム20:アモルファスシリコン感光体(α-Si)
・現像ローラー231:外径20mm、表面形状ローレット溝加工+ブラスト加工(周方向に沿って80列の凹部(溝)が形成されている)、
・規制ブレード234:SUS430製、磁性、厚み1.5mm
・規制ブレード234後の現像剤搬送量:250g/m2
・現像ローラー231の感光体ドラム20に対する周速:1.8(対向位置でトレール方向)
・感光体ドラム20と現像ローラー231との間の距離:0.25mm
・感光体ドラム20の白地部(背景部)電位V0:+250V
・感光体ドラム20の画像部電位VL:+10V
・現像ローラー231の現像バイアス:周波数=7kHz、Duty=50%の交流電圧矩形波(Vppは各実験条件に応じて調整)、Vdc(直流電圧)=150V
・トナー:正帯電極性トナー、体積平均粒子径6.8μm、トナー濃度6%
・キャリア:体積平均粒子径35μm、フェライト・樹脂コートキャリア
【0080】
<現像剤について>
トナーは粉砕型トナー、コアシェル構造のトナーのどちらであっても同様の効果が確認されている。また、トナー濃度についても、3%から12%までの範囲で同様の効果が奏されることが確認された。交流電界によるトナーの移動は、磁気ブラシが細かいほどより顕著に起こりやすいことから、キャリアの体積平均粒子径は45μm以下が好ましく、30μm以上40μm以下がより好ましい。また、フェライトキャリアよりも真比重の小さい、樹脂キャリアの方がより好ましい。
【0081】
<キャリアについて>
キャリアは、体積平均粒子径35μmのフェライトコアにシリコンやフッ素などをコーティングしたものであり、具体的には以下の手順で作成した。キャリアコアEF-35(パウダーテック社製)1000重量部に、シリコン樹脂KR-271(信越化学社製)20質量部をトルエン200質量部に溶解させて、塗布液を作製する。そして、流動層塗布装置により、塗布液を噴霧塗布した後、200℃で60分間熱処理して、キャリアを得た。この塗布液の中に、導電剤や荷電制御剤をそれぞれコート樹脂100部に対し、0~20部の範囲で混合し、分散させることで、抵抗調整・帯電調整を行なっている。
【0082】
図9乃至
図12は、それぞれ、本実施形態に係る画像形成装置1において実行されるACキャリブレーションのVppと現像実電流Idrとの関係を示すグラフである。
【0083】
表1、2は、それぞれ、
図9、
図10に示される第1測定範囲、第2測定範囲におけるVppと現像電流との関係を示したものである。
【0084】
【0085】
【0086】
表1、表2では、それぞれ第1測定範囲および第2測定範囲において検出された現像電流Idc、白地電流Idwおよび前述の式1に基づいて現像実電流Idrが算出されている。なお、各表における白地電流Idwは、式1の右側第2項に基づいて幅に関する換算を行った後の値である。また、白地電流は、磁気ブラシから現像電流とは反対の向きに電流が流れるため、その符号はマイナスとされている。すなわち、式1に基づいて現像電流Idcを白地電流に関して補正した後の現像実電流Idrは、現像電流Idcよりもその絶対値が大きくなる。
【0087】
ここで、
図9では、現像実電流Idrが縦軸(Y軸)、Vppが横軸(X軸)で示されている。一方、
図10では、
図9との比較のために、現像電流Idcが縦軸(Y軸)、Vppが横軸(X軸)で示されている。
【0088】
図9では、
図5に示される第1近似式決定ステップにおいて、第1近似式としてy=0.0123x+4.5129の一次式が算出されている。一方、
図6に示される第2近似式決定ステップでは、傾きLがプラス(L>L1=0)であるため、ステップS28において現像実電流Idrの平均値が演算され、第2近似式としてy=18.204の一次式が算出されている。この結果、ターゲット電圧決定ステップS03において、第1近似式と第2近似式との交点として、Vpp=ターゲット電圧VT=1113Vが算出され、安全係数として1.2が設定されることで、画像形成動作時のVpp=1113×1.2=1335(V)が選択される。
【0089】
一方、
図10では、本実施形態に係る白地電流Idwに基づく補正が行われることなく、現像電流Idcに基づいてターゲット電圧VTが算出される様子を示している。すなわち、
図5に示される第1近似式決定ステップにおいて、第1近似式としてy=0.0099x+4.32の一次式が算出されている。一方、
図6に示される第2近似式決定ステップでは、傾きLがプラス(L>L1=0)であるため、ステップS28において現像実電流Idrの平均値が演算され、第2近似式としてy=14.233の一次式が算出されている。この結果、ターゲット電圧決定ステップS03において、第1近似式と第2近似式との交点として、Vpp=ターゲット電圧VT=1001Vが算出され、安全係数として1.2が設定されることで、画像形成動作時のVpp=1001×1.2=1201(V)が選択される。
【0090】
すなわち、白地電流Idwに基づく補正を行わない場合、以後の画像形成動作において設定されるVppが1335-1201=134(V)低くなってしまう。この結果、
図10に示される態様では、Vppの設定誤差に基づいて画質欠陥が生じやすくなる。一方、
図9に示される態様では、本来不要な白地電流が除外(キャンセル)されることで、画像形成時により精度良くVppを設定することが可能となる。
【0091】
表3、4は、先の表1、表2と同様に、それぞれ、
図11、
図12に示される第1測定範囲、第2測定範囲におけるVppと現像電流との関係を示したものである。
【0092】
【0093】
【0094】
同様に、
図11では、現像実電流Idrが縦軸(Y軸)、Vppが横軸(X軸)で示されている。一方、
図12では、
図11との比較のために、現像電流Idcが縦軸(Y軸)、Vppが横軸(X軸)で示されている。
【0095】
図11では、
図5に示される第1近似式決定ステップにおいて、第1近似式としてy=0.0159x+8.3653の一次式が算出されている。一方、
図6に示される第2近似式決定ステップでは、傾きLがマイナス(L<L1=0)であるため、ステップS27において第2近似式としてy=-0.0006x+24.273の一次式が算出されている。この結果、ターゲット電圧決定ステップS03において、第1近似式と第2近似式との交点として、Vpp=ターゲット電圧VT=964Vが算出され、安全係数として1.2が設定されることで、画像形成動作時のVpp=964×1.2=1156(V)が選択される。
【0096】
一方、
図12では、本実施形態に係る白地電流Idwに基づく補正が行われることなく、現像電流Idcに基づいてターゲット電圧VTが算出される様子を示している。すなわち、
図5に示される第1近似式決定ステップにおいて、第1近似式としてy=0.0135x+8.1の一次式が算出されている。一方、
図6に示される第2近似式決定ステップでは、傾きLがマイナス(L<L1=0)であるため、ステップS27において第2近似式としてy=-0.0045x+24.9の一次式が算出されている。この結果、ターゲット電圧決定ステップS03において、第1近似式と第2近似式との交点として、Vpp=ターゲット電圧VT=933Vが算出され、安全係数として1.2が設定されることで、画像形成動作時のVpp=933×1.2=1119(V)が選択される。
【0097】
すなわち、白地電流Idwに基づく補正を行わない場合、以後の画像形成動作において設定されるVppが1156-1119=37(V)低くなってしまう。この結果、
図12に示される態様では、Vppの設定誤差に基づいて画質欠陥が生じやすくなる。一方、
図11に示される態様では、本来不要な白地電流が除外(キャンセル)されることで、画像形成時により精度良くVppを設定することが可能となる。なお、上記の安全係数は、ターゲット電圧VTに応じて変えても良く、ターゲット電圧VTが低い時は安全係数を大きめにし、逆にターゲット電圧VTが高い時は安全係数を小さめにし、設定されるVppの変化幅を小さめにしておくことで、画像品質の大きな変化を抑えることも有用である。
【0098】
<現像電流(DC成分)がピーク(変化点)を持つ理由について>
次に、前述の各データのように、現像電流(DC成分)がVppに対してピーク(変化点)をもつ理由について推察する。現像電流は、前述のように「トナー移動電流+画像部磁気ブラシ電流+非画像部磁気ブラシ電流」から構成されるが、現像電流を取得する際、静電潜像のうち画像部に対応する部分(ベタ画像部分)では、この「トナー移動電流+画像部磁気ブラシ電流」の両方が流れるが、幅方向端部の白地部分では、画像部とは反対方向に「非画像部磁気ブラシ電流」のみが流れる。このため、Vppを増加させていくと、この白地部分の非画像部磁気ブラシ電流が増加して、トータルの現像電流が低下する。
【0099】
なお、Vppの増加に応じて画像部の画像部磁気ブラシ電流も増加するが、トナーが感光体ドラム20の表面に付着することで形成されるトナー層が抵抗層になり、画像部磁気ブラシ電流の極端な増加が抑えられる。一方、白地部分では、多少のトナーは現像ローラー231のスリーブ表面に移動するが、その量は画像部に比べ圧倒的に少ないため、前記スリーブ表面に付着したトナー層は画像部と比較して高い抵抗にはならない。この結果、白地部分の非画像部磁気ブラシ電流は、Vppの増加とともに大きく増加し、この磁気ブラシ電流がトナー移動電流とは逆方向に流れるため、現像電流は変化点(ピーク)を持つことになるものと推察される。
【0100】
本発明者は、鋭意実験を重ねることで、現像電流とVppとの上記の関係を新たに知見した。また、この現象は、キャリアの抵抗が低いほど発生しやすく、ギャップ1mmの平行平板(面積240mm2)の間にキャリアを0.2g充填し1000Vの電圧を印加した時に流れる電流に基づいて、キャリアの抵抗値を求めた場合、10の9乗オーム以下でこの現象が顕著に現れることを更に知見した。
【0101】
すなわち、感光体ドラム20と現像ローラー231との間に二成分現像剤が介在し、かつ、静電潜像の軸方向(幅方向)の中央部に測定用潜像が形成され、その両端部に白地部分が配置されると、本実施形態における第1測定範囲、第2測定範囲の2つの範囲の境界において、上記のような変化点が発生する。特に、第2近似式の傾きが正および負の広い範囲に分布する現象は、上記のような現像ローラー231の軸方向の両端部に中央部とは逆方向の電流が流れることに起因している。特に、本実施形態では、軸方向において、感光体ドラム20上の帯電範囲よりも現像ローラー231上の磁気ブラシの範囲の方が狭く、更に、感光体ドラム20上に形成される測定用潜像のうち画像部(ベタ画像部)の範囲が、磁気ブラシの範囲よりも更に狭く設定されている。この結果、上記のように、現像ローラー231の軸方向の両端部では画像部とは逆方向の電流が磁気ブラシに流れる領域が形成されている。
【0102】
以上のように、本実施形態では、キャリブレーション実行部984は、現像ローラー231の軸方向において互いに異なる位置に配置された画像部および白地部を含むように感光体ドラム20上に形成される所定の測定用潜像に対応して現像ローラー231に現像バイアスを印加することで前記測定用潜像をトナーで現像する際に電流計973によって検出される電流である現像電流Idcと、少なくとも現像ローラー231の周面全体に対向するように感光体ドラム20上に前記軸方向に沿って連続的に形成された白地部が現像ニップ部NPを通過する際に電流計973によって検出される電流である白地電流Idwとのそれぞれに基づいて、画像形成動作において現像ローラー231に印加される現像バイアスの交流電圧のピーク間電圧の基準となる基準ピーク間電圧を決定するACキャリブレーション(バイアス条件決定モード)を実行する。
【0103】
このような構成によれば、画像部と白地部とを含む測定用潜像に対応する現像電流に対して白地部の影響をキャンセルした現像実電流Idrに基づいて、基準ピーク間電圧を精度良くかつ安定して設定することができる。また、トナーの消費を伴う測定用トナー像の形成時に画像部の領域を軸方向の一部に限定することができるため、測定用トナー像の形成に伴うトナー消費量を低減することができる。更に、同じトナー消費量を前提として、現像ローラー231の回転方向に沿って長く延びる測定用トナー像を形成することができるため、現像ローラー231の振れや回転むらなどの影響に伴う現像電流の変動を平準化することが可能となる。
【0104】
また、本実施形態では、第1測定範囲および第2測定範囲のそれぞれの範囲において交流バイアスのピーク間電圧と現像実電流Idrとの関係を代表する第1近似式と第2近似式との交点から基準ピーク間電圧が設定される。上記の交点の近傍では、交流バイアスのピーク間電圧と現像実電流Idrとの関係の変化点が存在するため、第1測定範囲における第1近似式の傾きの影響を受けにくく、トナーの帯電量や現像ギャップの変動によって画像濃度が変化することを抑止することができる。また、キャリアの抵抗などの変動に応じて第2近似式の傾きが所定の閾値よりも小さくなる領域であってピーク間電圧の増加に応じて現像実電流Idrが低下しやすい領域に基準ピーク間電圧を設定することが抑止される。この結果、画像形成動作において安定した画像濃度を出力することが可能な現像バイアスの交流バイアスを設定することが可能となる。なお、画像形成動作時の実ピーク間電圧は、前記基準ピーク間電圧に対して、その基準ピーク間電圧そのままの値、もしくはその基準ピーク間電圧に一定比率を乗じた値、もしくは一定値を加えた値、または一定比率を乗じた上に一定値を加えた値や、基準ピーク間電圧が低い時はピッチむらを改善するために乗じる係数を大きく(例えば1以上)した値や、基準間ピーク電圧が高い時はリークの発生を抑えるために乗じる係数を小さく(例えば1未満)した値を用いることができる。また、初期に設定されたピーク間電圧(初期設定値)に基づき、画像形成動作時の実ピーク間電圧の上下限を決定してもよい。初期設定時は、環境要因や使用履歴などの影響をあまり含まないため、特性が一番安定している。このため、当該初期設定値に基づいて、ピッチむらやリークなどの不具合が将来発生する可能性がある電圧にならないように、実ピーク間電圧の上下限を予め設定しておくことが望ましい。
【0105】
また、本実施形態では、キャリブレーション実行部984は、前記第1測定範囲に含まれる前記少なくとも3つの第1測定用ピーク間電圧においてそれぞれ取得された前記現像実電流Idrから最小二乗法によって前記第1近似式を決定する。本構成によれば、第1測定範囲に含まれる第1測定用ピーク間電圧から、簡易な演算処理によって第1近似式を決定することができる。
【0106】
また、本実施形態では、キャリブレーション実行部984は、前記第2測定範囲に含まれる前記少なくとも3つの第2測定用ピーク間電圧においてそれぞれ取得された前記現像実電流Idrから最小二乗法によって決定された一次近似式である第1判定用近似式の傾きが予め設定された第1閾値L1よりも大きい場合には、前記少なくとも3つの第2測定用前記ピーク間電圧においてそれぞれ取得された現像実電流Idrの平均値がピーク間電圧の変化に対して一定となる直線式を前記第2近似式として設定し、前記第1判定用近似式の傾きが前記第1閾値L1よりも小さい場合には、前記第1判定用近似式を前記第2近似式として設定する。本構成によれば、キャリアの抵抗値などの影響によって、その傾きが変化しやすい第2近似式の決定過程において、第1判定用近似式の傾きに応じてより適切な近似式を第2近似式として選択することができる。
【0107】
また、本実施形態では、前記第1測定範囲における前記複数の第1測定用ピーク間電圧の間隔、および、前記第2測定範囲における前記複数の第2測定用ピーク間電圧の間隔は、それぞれ、前記第1測定範囲の前記最大値と前記第2測定範囲の前記最小値との間隔よりも小さく設定されている。本構成によれば、第1測定範囲と第2測定範囲とを明確に区別し、更にそれぞれの測定範囲においてピーク間電圧の間隔を細かく設定することで、第1近似式、第2近似式の決定精度を高めることができる。
【0108】
また、キャリブレーション実行部984は、前記第1近似式決定動作において、前記第1近似式の相関係数が予め設定された第2閾値よりも小さい場合には、前記少なくとも3つの第1測定用ピーク間電圧から少なくとも一のピーク間電圧を除外した残りのピーク間電圧に対する前記現像実電流Idrに基づいて前記第1近似式を決定する。本構成によれば、第1近似式の決定過程において相関係数が小さい場合には、少なくとも一のピーク間電圧のデータを除外することで、より精度の高い第1近似式を決定することができる。
【0109】
特に、キャリブレーション実行部984は、前記第1近似式決定動作において、前記第1近似式の相関係数が予め設定された第2閾値R1よりも小さい場合には、前記少なくとも3つの第1測定用ピーク間電圧のうちの最も大きなピーク間電圧を除外した残りのピーク間電圧に対する前記現像実電流Idrに基づいて前記第1近似式を決定する。本構成によれば、第1近似式の決定過程において相関係数が小さい場合には、第2測定範囲に近いピーク間電圧のデータを除外することで、更に精度の高い第1近似式を決定することができる。
【0110】
また、キャリブレーション実行部984は、前記第2近似式決定動作において除外された前記最も大きなピーク間電圧または前記最も小さなピーク間電圧を、前記第2測定範囲から予め除外して次のバイアス条件決定モードを実行する。本構成によれば、前回のバイアス条件決定モードにおいて除外されたデータを次のバイアス条件決定モードでは最初から除外しておくことで、モード実行時間を短縮し精度の高い基準ピーク間電圧を決定することができる。
【0111】
また、本実施形態では、前記第1測定範囲における前記少なくとも3つの第1測定用ピーク間電圧の数が、前記第2測定範囲における前記少なくとも3つの第2測定用ピーク間電圧の数よりもが多く設定されている。本構成によれば、第1近似式の傾きが正であり、現像実電流Idrが大きく変化しやすい第1測定範囲において相対的に多くのデータを取得することで、より精度の高い基準ピーク間電圧を決定することができる。
【0112】
また、本実施形態では、トナー移動電流、画像部磁気ブラシ電流および非画像部磁気ブラシ電流(白地電流Idw)の3つの電流から、非画像部磁気ブラシ電流の影響を取り除いた後、トナー移動電流と画像部磁気ブラシ電流とのバランス(各電流の合計)が変化する変化点を2つの近似式の交点によって予測し、基準ピーク間電圧を決定することができる。
【0113】
なお、本実施形態では、基準ピーク間電圧の設定を現像実電流Idrに基づいて決定している。従来では、画像濃度を測定してその安定性から基準ピーク間電圧を決定することも考えられたが、たとえば感光体ドラム20や中間転写ベルト141上の画像濃度を測定する濃度センサは画像濃度が高くなると測定精度が低下しやすく、本発明の第2測定範囲における画像濃度を精度よく検出することができない。この点からも、第1測定範囲および第2測定範囲において基準ピーク間電圧を決定するためのデータは現像電流、特に、現像実電流Idrであることが好適とされる。
【0114】
また、第1測定範囲では現像実電流Idrが大きく変化しやすいため、可能な限り広いピーク間電圧の範囲で測定を行うことが望ましい。一方、第2測定範囲では、現像実電流Idrの変化が比較的小さく、またピーク間電圧を過剰に大きく設定すると現像ニップ部においてリークが発生する可能性がある。このため、第2測定範囲は第1測定範囲よりも狭く、測定ポイントを少なく設定することが望ましい。この結果、モード実行時間の短縮、消費トナー量の抑制が可能となる。
【0115】
また、現像実電流Idrおよびこれを算出するための現像電流Idc、白地電流Idwの測定は、現像バイアス印加部971内の回路において行ってもよい。なお、トナーの移動電流は感光体ドラム20側でも測定可能であるが、感光体ドラム20には転写ローラーから流入する電流も含まれるため、これらの電流を分離することができない。したがって、各電流は現像バイアス印加部971側において測定することが望ましい。
【0116】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば次のような変形実施形態を取り得る。
【0117】
(1)上記実施形態では、現像ローラー231の表面にローレット溝加工+ブラスト加工が施される態様にて説明したが、現像ローラー231の表面に凹形状(ディンプル)+ブラスト加工を有するものや、ブラスト加工のみ、ローレット溝のみ、凹形状(ディンプル)のみ、メッキ加工が施されたものでもよい。
【0118】
(2)
図1のように画像形成装置10が複数の現像装置23を有する場合、上記実施形態に係るACキャリブレーションを1つもしくは2つの現像装置23で行い、その結果を他の現像装置23で利用するものでもよい。また、第1近似式決定ステップおよび第2近似式決定ステップの処理手順は上記に限定されるものではない。一例として、第1近似式決定ステップおよび第2近似式決定ステップにおける現像電流Idcを連続的に測定した後、第1近似式決定ステップおよび第2近似式決定ステップにおける白地電流Idwを連続的に測定し、その後に現像実電流Idrを算出するものでもよい。
【0119】
(3)
図13は、本発明の変形実施形態に係る画像形成装置において実行されるACキャリブレーションの第2近似式決定ステップのフローチャートである。
図14は、同第2近似式決定ステップの一部のフローチャートである。本変形実施形態では、先の実施形態と比較して、
図13のステップS24A、S24BおよびS24Cにおいて相違する。すなわち、ステップS24において現像実電流Idrが算出される。この際、本変形実施形態では、第1近似式決定ステップと同様に、4つの第2測定用ピーク間電圧に対応した4つの現像電流Idcおよび白地電流Idwがそれぞれ取得され、第2測定用ピーク間電圧および現像実電流Idrに関する4組のデータが取得される。
【0120】
ここで、キャリブレーション実行部984は、第1近似式決定ステップと同様に、相関係数Rを演算する(ステップS24A)。そして、当該相関係数Rと予め記憶部983に格納された閾値R2との大小関係を比較する(ステップS24B)。一例として、閾値R2は、0.90に設定されている。ここで、閾値R2≦相関係数Rの場合(ステップS24BでYES)、キャリブレーション実行部984は、先の実施形態と同様に、ステップS25で傾きLを演算し、ステップS26における判定結果に基づいて、ステップS27またはステップS28において第2近似式をそれぞれ演算する。一方、ステップS24Bにおいて、R2>Rの場合(ステップS24BでNO)、キャリブレーション実行部984は、ステップS24Cの修正相関係数Rを決定する。
【0121】
図14を参照して、当該修正相関係数Rの決定ステップが開始されるとステップS31において、キャリブレーション実行部984は、上記の4組のデータのうち、最も大きなVppのデータを取り除いた状態で残りの3つのデータに基づいて、相関係数Rmを演算する(ステップS31)。次に、キャリブレーション実行部984は、上記の4組のデータのうち、最も小さなVppのデータを取り除いた状態で残りの3つのデータに基づいて、相関係数Rnを演算する(ステップS32)。そして、キャリブレーション実行部984は、上記で演算された相関係数Rm、Rnの大小関係を比較し、大きい方の相関係数を修正相関係数Rとして選択する(ステップS33)。その後、
図13に戻って、選択された修正相関係数Rに基づいて、ステップS24B以降の処理が繰り返される。
【0122】
このように、本変形実施形態では、第2近似式決定ステップにおいて、相関係数が小さい場合には、相関係数の高いデータを選択し、そのデータに基づいて第2近似式が設定される。このため、少なくとも一のピーク間電圧のデータを除外することで、より精度の高い第2近似式を決定することができる。
【0123】
特に、キャリブレーション実行部984は、前記少なくとも3つの第2測定用ピーク間電圧のうちの最も大きなピーク間電圧を除外した残りのピーク間電圧に対する前記現像実電流に基づいて決定された第2判定用近似式の相関係数Rmと、前記少なくとも3つの第2測定用ピーク間電圧のうちの最も小さなピーク間電圧を除外した残りのピーク間電圧に対する前記現像実電流に基づいて決定された第3判定用近似式の相関係数Rnとを互いに比較し、前記第2判定用近似式および前記第3判定用近似式のうち相関係数が大きい方の判定用近似式を前記第2近似式として決定する。本構成によれば、第2近似式の決定過程において相関係数が小さい場合には、第2測定範囲のうち第1測定範囲に最も近い最小のピーク間電圧、または、放電リークが生じやすくノイズを含みやすい最大のピーク間電圧のデータうちのいずれかのデータを除外することで、より精度の高い第2近似式を決定することができる。
【符号の説明】
【0124】
10 画像形成装置
20 感光体ドラム
23 現像装置
231 現像ローラー
971 現像バイアス印加部
972 駆動部
973 電流計(電流検出部)
980 制御部
981 駆動制御部
982 バイアス制御部
983 記憶部
984 キャリブレーション実行部(バイアス条件決定部)