(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】ブームカメラシステムおよびブームカメラシステムを備える移動式クレーン
(51)【国際特許分類】
B66C 13/00 20060101AFI20240611BHJP
B66C 13/46 20060101ALI20240611BHJP
G06T 3/00 20240101ALI20240611BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
B66C13/00 D
B66C13/46 Z
G06T3/00 780
H04N7/18 J
(21)【出願番号】P 2020089144
(22)【出願日】2020-05-21
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】100196623
【氏名又は名称】松下 計介
(72)【発明者】
【氏名】米田 瑞生
【審査官】山田 拓実
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-034587(JP,A)
【文献】特開2011-030002(JP,A)
【文献】特開平08-053290(JP,A)
【文献】特開2019-156533(JP,A)
【文献】特許第6551639(JP,B1)
【文献】特開昭61-033490(JP,A)
【文献】特開2005-121343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-15/06;
23/00-23/94
E02F 9/00-9/18;
9/24-9/28
G06T 3/00
H04N 5/222-5/257;
7/18;
23/00;
23/40-23/76;
23/90-23/959
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回台を介して起伏可能なブームからワイヤロープで吊り下げられている荷物を搬送する移動式クレーンのブームカメラシステムであって、
前記ブームに設けられるブームカメラと、
前記ブームカメラが撮影した画像を取得する画像取得部、
前記ブームカメラが撮影した画像において表示範囲の基準となる基準形状を設定する基準形状設定部、
および、前記ブームカメラが現在撮影している現在画像の撮影範囲のうち、前記表示範囲と一致している一致範囲の画像を前記基準形状に基づいて抽出し、前記表示範囲のうち、前記現在画像の撮影範囲と一致していない不一致範囲を算出し、前記画像取得部が取得した所定時間前の過去画像から前記不一致範囲の画像を抽出し、前記一致範囲の画像と前記不一致範囲の画像とを繋ぎ合わせた合成画像を生成する画像生成部、
を含む画像処理装置と、を具備
し、
前記基準形状設定部は、
前記基準形状が前記ブームと連動しない部分の形状である場合、前記ブームの操作信号に基づいて前記基準形状を移動させる、
ブームカメラシステム。
【請求項2】
旋回台を介して起伏可能なブームからワイヤロープで吊り下げられている荷物を搬送する移動式クレーンのブームカメラシステムであって、
前記ブームに設けられるブームカメラと、
前記ブームカメラが撮影した画像を取得する画像取得部、
前記ブームカメラが撮影した画像において表示範囲の基準となる基準形状を設定する基準形状設定部、
および、前記ブームカメラが現在撮影している現在画像の撮影範囲のうち、前記表示範囲と一致している一致範囲の画像を前記基準形状に基づいて抽出し、前記表示範囲のうち、前記現在画像の撮影範囲と一致していない不一致範囲を算出し、前記画像取得部が取得した所定時間前の過去画像から前記不一致範囲の画像を抽出し、前記一致範囲の画像と前記不一致範囲の画像とを繋ぎ合わせた合成画像を生成する画像生成部、
を含む画像処理装置と、を具備し、
前記基準形状設定部は、
前記基準形状を前記表示範囲の中心に移動させる、
ブームカメラシステム。
【請求項3】
前記合成画像は、前記不一致範囲の画像が識別可能な状態で表示される請求項1
または請求項2に記載のブームカメラシステム。
【請求項4】
前記基準形状は、前記ブームカメラが撮影した画像から任意に選択可能に構成される請求項1
から請求項3のいずれか一項に記載のブームカメラシステム。
【請求項5】
旋回台を介して起伏可能なブームからワイヤロープで吊り下げられている荷物を搬送する移動式クレーンであって、
請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載のブームカメラシステムを備える移動式クレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブームカメラシステムおよびブームカメラシステムを備える移動式クレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業車両である移動式クレーンは、旋回台に起伏自在に設けられている伸縮ブームによって荷物を吊り上げて目的地点まで搬送することができる。このような移動式クレーンは、操縦者が地表面の状態、吊り上げられた荷物等の状態を確認するブームカメラを有するものがある。ブームカメラは、ブームの鉛直下方向の対象物を撮影するためにブームの先端に設けられている。例えば、特許文献1の如くである。
【0003】
特許文献1に記載のモニタ用カメラは、カメラ本体と、カメラ本体をカメラフレームに対して免振支持する免振支持機構と、カメラ本体の振動を検出する振動検出手段と、カメラ本体に内蔵され、撮像素子上に形成される画像の振れを抑制するように像振れ防止用レンズを駆動する防振アクチュエータと、前記振動検出手段により検出された振動に基づいて、前記防振アクチュエータを制御する制御部と、を有する。前記モニタ用カメラは、前記像振れ防止用レンズが前記防振アクチュエータによって前記振動検出手段が検出した振動を打ち消すように駆動されることにより、前記撮像素子上に形成される画像の振れが抑制される。
【0004】
このように構成される前記モニタ用カメラは、前記アクチュエータで前記像振れ防止用レンズを駆動させている。このため、前記モニタ用カメラは、前記像振れ防止用レンズの駆動によって抑制できる画像の振れの大きさが構造上制限される。つまり、機構の制御によって画像の振れを抑制するモニタ用カメラは、機構の可動範囲を超える振動による画像の振れを抑制できない点で不利であった。また、モニタ用カメラは、前記振動検出手段が検出したモニタカメラ自体の振動による画像の振れを抑制しているので、クレーンに吊り下げられた荷物等、画像に映っている特定の物体の振れを抑制することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ブームカメラの振動の大きさに関わらず画像に映っている特定の物体の振れを抑制することができるブームカメラシステムおよびブームカメラシステムを備えた移動式クレーンの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、第1の発明は、旋回台を介して起伏可能なブームからワイヤロープで吊り下げられている荷物を搬送する移動式クレーンのブームカメラシステムであって、前記ブームに設けられるブームカメラと、前記ブームカメラが撮影した画像を取得する画像取得部、前記ブームカメラが撮影した画像において表示範囲の基準となる基準形状を設定する基準形状設定部、および、前記ブームカメラが現在撮影している現在画像の撮影範囲のうち、前記表示範囲と一致している一致範囲の画像を前記基準形状に基づいて抽出し、前記表示範囲のうち、前記現在画像の撮影範囲と一致していない不一致範囲を算出し、前記画像取得部が取得した所定時間前の過去画像から前記不一致範囲の画像を抽出し、前記一致範囲の画像と前記不一致範囲の画像とを繋ぎ合わせた合成画像を生成する画像生成部を含む画像処理装置と、を具備するブームカメラシステムである。前記基準形状設定部は、前記基準形状が前記ブームと連動しない部分の形状である場合、前記ブームの操作信号に基づいて前記基準形状を移動させる。
【0009】
即ち、第2の発明は、旋回台を介して起伏可能なブームからワイヤロープで吊り下げられている荷物を搬送する移動式クレーンのブームカメラシステムであって、前記ブームに設けられるブームカメラと、前記ブームカメラが撮影した画像を取得する画像取得部、前記ブームカメラが撮影した画像において表示範囲の基準となる基準形状を設定する基準形状設定部、および、前記ブームカメラが現在撮影している現在画像の撮影範囲のうち、前記表示範囲と一致している一致範囲の画像を前記基準形状に基づいて抽出し、前記表示範囲のうち、前記現在画像の撮影範囲と一致していない不一致範囲を算出し、前記画像取得部が取得した所定時間前の過去画像から前記不一致範囲の画像を抽出し、前記一致範囲の画像と前記不一致範囲の画像とを繋ぎ合わせた合成画像を生成する画像生成部を含む画像処理装置と、を具備するブームカメラシステムである。前記基準形状設定部は、前記基準形状を前記表示範囲の中心に移動させる。
【0010】
第3の発明は、前記合成画像は、前記不一致範囲の画像が識別可能な状態で表示されるブームカメラシステムである。
【0011】
第4の発明は、前記基準形状は、前記ブームカメラが撮影した画像から任意に選択可能に構成されるブームカメラシステムである。
【0013】
第5の発明は、旋回台を介して起伏可能なブームからワイヤロープで吊り下げられている荷物を搬送する移動式クレーンであって、上述の発明のいずれか一つに記載のブームカメラシステムを備える移動式クレーンである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
第1の発明および第6の発明において、ブームカメラシステムは、ブームカメラの振動により現在画像に所定の形状を基準として定めた表示範囲の全範囲が含まれていない場合、欠損している範囲を過去画像からで補完することで表示範囲の全範囲の画像を生成する。ブームカメラシステムは、ブームカメラの振動によって移動する撮影範囲の画像を全て取得しているので、過去画像に欠損している範囲の画像が含まれる。これにより、ブームカメラの振動の大きさに関わらず画像に映っている特定の物体の映像の振れを抑制することができる。
【0016】
第2の発明において、ブームカメラシステムは、過去画像で補完されている範囲が認識できるように合成画像を表示するので、過去画像の補完によって操縦者が混乱することがない。これにより、ブームカメラの振動の大きさに関わらず画像に映っている特定の物体の振れを抑制することができる。
【0017】
第3の発明において、ブームカメラシステムは、操縦者が選択した任意の物体を基準として表示範囲が設定され、操縦者が選択した任意の物体を基準とした過去画像によって画像範囲の欠損部分が補われる。これにより、ブームカメラの振動の大きさに関わらず画像に映っている特定の物体の振れを抑制することができる。
【0018】
第4の発明において、ブームカメラシステムは、ブームの操作信号を取得すると、ブームカメラが移動していると判定して、操作信号に基づいて表示範囲の位置を移動させるので、ブームの移動による表示範囲の変動が除外される。これにより、ブームカメラの振動の大きさに関わらず画像に映っている特定の物体の振れを抑制することができる。
【0019】
第5の発明において、ブームカメラシステムは、荷物または吊り下げ装置等の特定の形状を表示範囲の中心に配置した状態で表示範囲の合成画像を生成する。つまり、ブームカメラシステムは、荷物等がブームカメラと異なる振動で揺れていても荷物等の画像の揺れを抑制することができる。これにより、ブームカメラの振動の大きさに関わらず画像に映っている特定の物体の振れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】本発明に係るブームカメラシステムの制御構成を示すブロック図。
【
図4】
図4は揺れていないサブフックブロックを基準画像とするブームカメラの振れ制御の状態を示す。(A)はサブフックブロックを基準形状に定めた状態を示すブームカメラの画像を示し、(B)は荷物が搬送されている状態でのブームカメラの画像を示し、(C)は表示範囲にブームカメラの現在画像を表示させている画像を示す。
【
図5】
図5は揺れているサブフックブロックを基準画像とするブームカメラの振れ制御の状態を示す。(A)はサブフックブロックが表示範囲の基準形状の位置座標からずれている状態でのブームカメラの画像を示し、(B)は現在画像と表示範囲との一致範囲と不一致範囲を示し、(C)は表示範囲に現在画像から抽出した一致画像と過去画像から抽出した不一致画像とからなる合成画像を示す。
【
図6】
図6は地物を基準画像とするブームカメラの振れ制御の状態を示す。(A)は地物を基準形状に定めた状態を示すブームカメラの画像を示し、(B)はブームが移動している状態でのブームカメラの画像を示し、(C)は表示範囲に現在画像から抽出した一致画像と過去画像から抽出した不一致画像とからなる合成画像を示す。
【
図7】ブームカメラシステムの振れ制御の態様を表すフローチャートを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、
図1と
図2とを用いて、本発明における移動式クレーンの一実施形態であるクレーン1について説明する。なお、本実施形態においては、ラフテレーンクレーンついて説明を行うが、オールテレーンクレーン、トラッククレーン、積載型トラッククレーン等であればよい。
【0022】
図1に示すように、クレーン1は、不特定の場所に移動可能な移動式クレーンである。クレーン1は、走行体である車両2、作業装置であるクレーン装置6、制御装置29を有する。また、クレーン1は、ブームカメラシステム30(
図2参照)を具備する。
【0023】
車両2は、クレーン装置6を搬送する移動体である。車両2は、複数の車輪3を有し、エンジン4を動力源として走行する。車両2には、アウトリガ5が設けられている。車両2は、アウトリガ5を車両2の幅方向に延伸させるとともにジャッキシリンダを接地させることにより、クレーン1の作業可能範囲を広げることができる。
【0024】
クレーン装置6は、荷物Wをワイヤロープによって吊り上げる装置である。クレーン装置6は、旋回台7、旋回用油圧モータ8、ブーム9、メインフックブロック10、サブフックブロック11、起伏用油圧シリンダ12、メインウインチ13、メイン用油圧モータ13a、メインワイヤロープ14、サブウインチ15、サブ用油圧モータ15a、サブワイヤロープ16およびキャビン17等を具備する。クレーン装置6には、ブームカメラシステム30を介してブームカメラ31が設けられている。
【0025】
旋回台7は、クレーン装置6を旋回する装置である。旋回台7は、円環状の軸受の中心を回転中心として回転自在に構成されている。旋回台7には、アクチュエータである旋回用油圧モータ8が設けられている。旋回台7は、旋回用油圧モータ8によって一方向と他方向とに旋回可能に構成されている。
【0026】
旋回用油圧モータ8は、電磁比例切換弁である旋回用バルブ22(
図2参照)によって回転操作される。旋回用バルブ22は、旋回用油圧モータ8に供給される作動油の流量を任意の流量に制御することができる。旋回台7には、旋回台7の基準位置からの旋回した角度である旋回角度を検出する旋回用センサ26(
図2参照)が設けられている。
【0027】
ブーム9は、荷物Wを吊り上げ可能な状態にワイヤロープを支持する梁部材である。ブーム9は、ベースブーム部材の基端が旋回台7の略中央に起伏可能に設けられている。ブーム9は、電磁比例切換弁である伸縮用バルブ23(
図2参照)によって伸縮操作される。各ブーム部材をアクチュエータである図示しない伸縮用油圧シリンダで移動させることで軸方向に伸縮自在に構成されている。また、ブーム9には、ジブ9aが設けられている。ブーム9には、ブーム9の長さを検出する伸縮用センサ27、荷物Wの重量を検出する重量センサ等が設けられている。さらに、ブーム9には、ブームカメラシステム30を構成するブームカメラ31が設けられている。
【0028】
メインフックブロック10とサブフックブロック11とは、荷物Wを吊り下げる部材である。メインフックブロック10には、メインワイヤロープ14が巻き掛けられる複数のフックシーブと、荷物Wを吊るメインフック10aとが設けられている。サブフックブロック11には、荷物Wを吊るサブフック11aが設けられている。
【0029】
起伏用油圧シリンダ12は、ブーム9を起立および倒伏させ、ブーム9の姿勢を保持するアクチュエータである。起伏用油圧シリンダ12は、電磁比例切換弁である起伏用バルブ24(
図2参照)によって伸縮操作される。ブーム9には、ブーム9の起伏角度を検出する起伏用センサ28(
図2参照)が設けられている。
【0030】
メインウインチ13とサブウインチ15とは、メインワイヤロープ14とサブワイヤロープ16との繰り入れ(巻き上げ)および繰り出し(巻き下げ)を行う。メインウインチ13は、メインワイヤロープ14が巻きつけられるメインドラムがアクチュエータであるメイン用油圧モータ13aによって回転されるように構成されている。サブウインチ15は、サブワイヤロープ16が巻きつけられるサブドラムがアクチュエータであるサブ用油圧モータ15aによって回転されるように構成されている。
【0031】
メイン用油圧モータ13aは、電磁比例切換弁であるメイン用バルブ25m(
図2参照)によって回転操作される。メインウインチ13は、メイン用バルブ25mによってメイン用油圧モータ13aを制御し、任意の繰り入れおよび繰り出し速度に操作可能に構成されている。同様に、サブウインチ15は、電磁比例切換弁であるサブ用バルブ25s(
図2参照)によってサブ用油圧モータ15aを制御し、任意の繰り入れおよび繰り出し速度に操作可能に構成されている。
【0032】
キャビン17は、旋回台7に搭載されている。キャビン17は、図示しない操縦席が設けられている。操縦席には、車両2を走行操作するための操作具、クレーン装置6を操作するための旋回操作具18、起伏操作具19、伸縮操作具20、メインドラム操作具21m、サブドラム操作具21s等が設けられている。
【0033】
制御装置29は、各操作弁を介してクレーン1のアクチュエータを制御する装置である。制御装置29は、キャビン17内に設けられている。制御装置29は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。制御装置29は、各アクチュエータ、切換え弁、センサ等の動作を制御するために種々のプログラム、データが格納されている。
【0034】
制御装置29は、ブームカメラ31、旋回操作具18、起伏操作具19、伸縮操作具20、メインドラム操作具21mおよびサブドラム操作具21sに接続され、ブームカメラ31の映像を取得し、旋回操作具18、起伏操作具19、メインドラム操作具21mおよびサブドラム操作具21sのそれぞれの操作量を取得することができる。
【0035】
制御装置29は、旋回用バルブ22、伸縮用バルブ23、起伏用バルブ24、メイン用バルブ25mおよびサブ用バルブ25sに接続され、旋回用バルブ22、伸縮用バルブ23、起伏用バルブ24、メイン用バルブ25mおよびサブ用バルブ25sに制御信号を伝達することができる。
【0036】
制御装置29は、旋回用センサ26、伸縮用センサ27および起伏用センサ28に接続され、旋回台7の旋回角度、ブーム9のブーム長さ、起伏角度、メインワイヤロープ14およびサブワイヤロープ16の繰り出し長さ等の姿勢情報および荷物Wの重量を取得することができる。
【0037】
制御装置29は、旋回操作具18、起伏操作具19、伸縮操作具20、メインドラム操作具21mおよびサブドラム操作具21sの操作信号に基づいて各操作具に対応した制御信号を生成することができる。
【0038】
制御装置29は、ブームカメラシステム30の画像処理装置34に有線または無線で接続され、画像処理装置34にクレーン装置6の各操作具の操作信号を送信することができる。
【0039】
このように構成されるクレーン1は、車両2を走行させることで任意の位置にクレーン装置6を移動させることができる。また、クレーン1は、起伏操作具19の操作によって起伏用油圧シリンダ12でブーム9を任意の起伏角度に起立させて、伸縮操作具20の操作によってブーム9を任意のブーム長さに延伸させたりすることでクレーン装置6の揚程、作業半径を拡大することができる。また、クレーン1は、サブドラム操作具21s等によって荷物Wを吊り上げて、旋回操作具18の操作によって旋回台7を旋回させることで荷物Wを搬送することができる。
【0040】
次に、
図1から
図3を用いて、ブームカメラシステム30について説明する。ブームカメラシステム30は、ブームカメラ31が撮影する画像の振れを抑制するシステムである。ブームカメラシステム30は、ブームカメラ31、傾斜計32、表示装置33、画像処理装置34を備える。ブームカメラ31に伝達される振動は、ブーム9の姿勢状態と操作によって生じる振動、風等の自然現象による振動を含む。
【0041】
図1から
図3に示すように、ブームカメラ31は、荷物Wおよび荷物W周辺の地物Cを撮影する撮影装置である。ブームカメラ31は、ブーム9の軸線方向に揺動自在に設けられている。ブームカメラ31は、ブーム9の起伏角度に関わらず重力で鉛直下方向を向くように、ブーム9の先端部に設けられている。ブームカメラ31は、荷物Wの上方から荷物Wおよびクレーン1周辺の地物C、地形を撮影可能に構成されている。ブームカメラ31は、画像処理装置34に画像情報を送信可能に構成される。
【0042】
傾斜計32は、ブームカメラ31の角度を計測する計測器である。傾斜計32は、ブームカメラ31に設けられている。傾斜計32は、鉛直方向に対するブームカメラ31の現在の姿勢角である現在姿勢角θを検出する(
図3参照)。傾斜計32は、画像処理装置34に現在姿勢角θに関する信号を送信可能に構成される。
【0043】
表示装置33は、ブームカメラ31が撮影した画像またはブームカメラ31が撮影した画像同士を合成した画像等の画像情報を表示する装置である。表示装置33は、タッチパネル機能付き液晶モニタ等から構成されている。表示装置33は、キャビン17に設けられている。表示装置33は、画像処理装置34から画像情報を取得可能に構成される。
【0044】
画像処理装置34は、ブームカメラ31が撮影した画像を表示範囲A0の画像として合成処理する装置である。画像処理装置34は、キャビン17内に設けられている。画像処理装置34は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。画像処理装置34は、ブームカメラ31が撮影した画像を処理するために種々のプログラム、データが格納されている。画像処理装置34は、画像取得部35、基準形状設定部36、画像生成部39を含む。本実施形態において、表示範囲A0は、傾斜計32が検出するブームカメラ31の現在姿勢角θがゼロ度とみなせる所定角度範囲θs未満においてブームカメラ31が撮影している範囲とする。すなわち、表示範囲A0は、ブームカメラ31が鉛直下方を向いているとみなせる状態において撮影している範囲である。
【0045】
画像取得部35は、ブームカメラ31が撮影した画像を取得する画像処理装置34の一部である。
【0046】
画像取得部35は、ブームカメラ31に接続されている。画像取得部35は、ブームカメラ31が撮影した画像を取得することができる。また、画像取得部35は、ブームカメラ31が撮影した画像を所定時間Tの保持期間だけ保持することができる。つまり、画像取得部35は、所定時間T内にブームカメラ31の振動によって移動しながら撮影した範囲である振動撮影範囲A1の画像を全て取得することができる。
【0047】
基準形状設定部36は、表示装置33に表示する表示範囲A0の基準を設定する画像処理装置34の一部である。基準形状設定部36は、傾斜計32の現在姿勢角θが所定角度範囲θs未満である状態においてブームカメラ31が撮影した画像内から任意に選択された形状の座標情報を表示範囲A0の基準となる基準形状BSの座標情報として設定する。基準形状設定部36は、基準位置移動操作具37と地物選択操作具38とを備える。
【0048】
基準形状設定部36は、傾斜計32に接続されている。基準形状設定部36は、傾斜計32から現在姿勢角θを取得することができる。
【0049】
基準形状設定部36は、表示装置33に接続されている。基準形状設定部36は、表示装置33で指定された形状の座標情報と輝度、色彩等の画像情報を取得することができる。
【0050】
基準形状設定部36は、取得した座標情報と画像情報とから選択された位置座標を含む形状を抽出することができる。基準形状設定部36は、抽出した形状の座標情報を基準形状BSの座標情報として設定することができる。また、基準形状設定部36は、基準位置移動操作具37の操作によって基準形状BSの位置座標を表示範囲A0の中心に変更することができる。さらに、基準形状設定部36は、地物選択操作具38の操作によって、基準形状BSの位置座標をブーム9の操作信号に基づいて移動させることができる。つまり、基準形状設定部36は、基準形状BSがブーム9と連動しない部分の形状である場合、基準形状BSの位置座標をブーム9の操作信号に基づいて移動させることができる。この際、基準形状設定部36は、基準形状BSの移動量が基準値を超えると、ブームカメラシステム30による振れ抑制制御を解除する。基準形状BSの座標情報は、表示範囲A0における基準形状BSの位置座標を含む情報である。
【0051】
基準形状設定部36は、クレーン1の制御装置29に接続されている。基準形状設定部36は、制御装置29からブーム9の操作信号を取得することができる。基準形状設定部36は、取得した操作信号に基づいて表示範囲A0を移動させることができる。すなわち、基準形状設定部36は、操作信号に基づいて、表示範囲A0における基準形状BSの位置座標を変更することができる。
【0052】
画像生成部39は、表示範囲A0に表示する画像を生成する画像処理装置34の一部である。
【0053】
画像生成部39は、ブームカメラ31に接続されている。画像生成部39は、ブームカメラ31からブームカメラ31が現在撮影している現在画像を取得することができる。
【0054】
画像生成部39は、画像取得部35から所定時間T前までの過去画像を取得することができる。
【0055】
画像生成部39は、基準形状設定部36から基準形状BSの座標情報を取得することができる。また、画像生成部39は、取得した基準形状BSの座標情報に基づいて、現在画像から基準形状BSを検出することができる。
【0056】
画像生成部39は、表示範囲A0における基準形状BSの位置座標と現在画像における基準形状BSの位置座標とを一致させるようにして表示範囲A0に現在画像を重ね合わせることができる。また、画像生成部39は、現在画像の撮影範囲である現在撮影範囲A2のうち、表示範囲A0と一致している一致範囲の画像を一致画像Iaとして抽出することができる。
【0057】
画像生成部39は、表示範囲A0のうち、現在撮影範囲A2と一致していない部分を算出することができる。さらに、画像生成部39は、画像取得部35が取得した所定時間T前までの過去画像から一致していない不一致範囲の画像を不一致画像Ibとして抽出することができる。
【0058】
画像生成部39は、一致画像Iaと不一致画像Ibとを繋ぎ合わせた合成画像Icを生成することができる。
【0059】
画像生成部39は、生成した合成画像Icを表示装置33に表示することができる。この際、画像生成部39は、一致画像Iaと不一致画像Ibとが認識可能な状態(例えば、色、枠表示等による表示)で合成画像Icを表示装置33に表示させることができる。
【0060】
このように構成されるブームカメラシステム30は、ブームカメラ31が所定時間T前までの過去に撮影した過去画像と、ブームカメラ31現在撮影している現在画像とから、任意に選択された基準形状BSの座標情報に基づいた表示範囲A0の合成画像Icを生成するように構成されている。このように構成されることで、ブームカメラシステム30は、選択された基準形状BSを表示範囲A0の所定の位置に表示することができる。また、ブームカメラシステム30は、ブームカメラ31の振動によって現在の撮影範囲と表示範囲A0との間にずれが生じても、所定時間T前までに撮影された過去画像を利用することで、表示範囲A0内に基準形状BSを含む合成画像Icを表示させることができる。
【0061】
次に、
図4から
図6を用いて、ブームカメラシステム30の振れ制御について具体的に説明する。本実施形態において、ブームカメラシステム30は、ブームカメラ31の現在姿勢角θが鉛直下方を向いているとみなせる現在姿勢角θに含まれる状態での撮影範囲(画角)を表示範囲A0とする。また、ブームカメラ31は、ブーム9の伸縮方向に揺動自在に構成されているものとする。なお、便宜的に、表示範囲A0は、紙面に向かって上方向をX方向、右方向をY方向と定義する。
【0062】
図4に示すように、ブームカメラシステム30は、ブームカメラ31の振動によって撮影範囲が移動している状態で撮影された過去画像が画像取得部35に保持されている。これにより、ブームカメラシステム30は、ブームカメラ31が現在撮影している現在撮影範囲A2よりも広い振動撮影範囲A1の過去映像を保持している。
【0063】
図4(A)に示すように、ブームカメラシステム30は、振れを抑制したい形状として表示装置33に表示されている現在画像からサブフックブロック11が選択されると、基準形状設定部36によってサブフックブロック11の座標情報と輝度、色彩等の画像情報、現在姿勢角θを取得する。基準形状設定部36は、取得した座標情報と画像情報とから選択された位置座標を含むサブフックブロック11を抽出し、表示範囲A0の基準となる基準形状BSの座標情報として設定する。基準形状設定部36は、基準形状BSの座標情報に基づいて基準形状BSの位置座標に十字マーク(破線)を表示させる。
【0064】
図4(B)に示すように、ブームカメラシステム30は、画像生成部39によってブームカメラ31から現在撮影範囲A2の現在画像を取得するとともに、現在画像からサブフックブロック11を検出させる。本実施形態において、現在画像は、ブーム9によってブームカメラ31がY方向に移動された状態を示す。
【0065】
図4(C)に示すように、画像生成部39は、表示範囲A0における基準形状BSの位置座標と現在撮影範囲A2におけるサブフックブロック11の位置座標とを一致させるようにして表示範囲A0に現在画像を重ね合わせる。ブームカメラ31の現在姿勢角θが所定角度範囲θs未満であり、かつ現在画像におけるサブフックブロック11の座標情報と基準形状BSの座標情報とが一致している場合、つまり、サブフックブロック11がブームカメラ31に対して相対的に振動していない場合、現在撮影範囲A2の現在画像は、表示範囲A0とが全範囲で一致している。従って、画像生成部39は、現在画像全体を一致画像Iaとして抽出する(薄墨部分)。一方、画像生成部39は、表示範囲A0のうち、現在撮影範囲A2と一致していない不一致範囲が存在しない旨を算出する。
【0066】
図5(A)に示すように、ブームカメラ31の現在姿勢角θが所定角度範囲θs未満であり、かつ現在画像におけるサブフックブロック11の座標情報と基準形状BSの座標情報とが一致していない場合、つまり、サブフックブロック11がブームカメラ31に対して相対的に振動している場合、現在撮影範囲A2の現在画像におけるサブフックブロック11の位置座標は、表示範囲A0における基準形状BSの位置座標からサブフックブロック11の移動方向と移動量によって定まる距離Dだけずれている。
【0067】
図5(B)に示すように、画像生成部39は、現在撮影範囲A2の現在画像におけるサブフックブロック11の位置座標と表示範囲A0における基準形状BSの位置座標とが一致するように現在撮影範囲A2を移動させる。画像生成部39は、現在撮影範囲A2のうち、表示範囲A0と一致している一致範囲の画像を一致画像Iaとして抽出する(薄い薄墨部分)。一方、画像生成部39は、表示範囲A0のうち、現在撮影範囲A2と一致していない不一致範囲を算出する。画像生成部39は、画像取得部35が取得した所定時間T前までの過去画像から不一致画像Ibを抽出する(濃い薄墨部分)。
【0068】
同様に、ブームカメラ31の現在姿勢角θがゼロ度でなく、現在画像におけるサブフックブロック11の座標情報と基準形状BSの座標情報とが一致していない場合、つまり、ブームカメラ31またはブームカメラ31とサブフックブロック11が振動している場合、現在撮影範囲A2の現在画像におけるサブフックブロック11の位置座標は、表示範囲A0における基準形状BSの位置座標からブームカメラ31の移動方向および移動量またはブームカメラ31の移動方向および移動量とサブフックブロック11の移動方向および移動量との合算によって定まる距離Dだけずれている。従って、画像生成部39は、現在撮影範囲A2のうち、表示範囲A0と一致している一致範囲の画像を一致画像Iaとして抽出する。一方、画像生成部39は、画像取得部35が取得した所定時間T前までの過去画像から不一致画像Ibを抽出する。
【0069】
なお、基準形状BSであるサブフックブロック11の位置座標が表示範囲A0の中心でない状態において、基準位置移動操作具37の操作によりブームカメラシステム30がサブフックブロック11の表示位置を表示範囲A0の中心に移動させた場合、現在撮影範囲A2の現在画像におけるサブフックブロック11の位置座標は、表示範囲A0における基準形状BSの位置座標から基準形状BSの移動方向と移動量によって定まる距離Dだけずれている。従って、画像生成部39は、現在撮影範囲A2のうち、表示範囲A0と一致している一致範囲の画像を一致画像Iaとして抽出する。一方、画像生成部39は、画像取得部35が取得した所定時間T前までの過去画像から不一致画像Ibを抽出する。
【0070】
図5(C)に示すように、画像生成部39は、一致画像Iaと不一致画像Ibとを繋ぎ合わせた合成画像Icを表示装置33に表示させる。また、画像生成部39は、不一致画像Ibを識別可能な表示方法(本実施形態においては、不一致画像Ibの薄墨表示)で表示させる。画像生成部39は、合成画像Icのサブフックブロック11が表示範囲A0における基準形状BSに一致するように合成画像Icを表示させる。このように構成することで、ブームカメラシステム30は、サブフックブロック11の振動の有無に関わらず、表示範囲A0における基準形状BSの座標位置にサブフックブロック11が表示される。
【0071】
図6(A)に示すように、ブームカメラシステム30は、振れを抑制したい形状として表示装置33に表示されている現在画像から地物Cが選択されると、基準形状設定部36によって地物Cの座標情報と輝度、色彩等の画像情報、現在姿勢角θを取得する。基準形状設定部36は、取得した座標情報と画像情報とから選択された位置座標を含む地物Cを抽出し、表示範囲A0の基準となる基準形状BSの座標情報として設定する。基準形状設定部36は、基準形状BSの座標情報に基づいて基準形状BSの位置座標に十字マーク(破線)を表示させる。
【0072】
図6(B)に示すように、ブームカメラシステム30は、画像生成部39によってブームカメラ31から現在画像を取得するとともに、現在画像から地物Cを検出する。本実施形態において、現在画像は、ブーム9によってブームカメラ31が-Y方向に移動された状態を示す。
【0073】
図6(C)に示すように、画像生成部39は、表示範囲A0における基準形状BSの位置座標と現在画像に現在撮影範囲A2おける地物Cの位置座標を一致させるようにして表示範囲A0に現在画像を重ね合わせる。ブームカメラシステム30は、現在画像における地物Cの座標情報と基準形状BSの座標情報とが一致していない場合、つまり、ブーム9、ブームカメラ31の振動によってブームカメラ31が地物Cに対して相対的に振動している場合、現在撮影範囲A2の現在画像における地物Cの位置座標は、表示範囲A0における基準形状BSの位置座標から地物Cの移動方向と移動量によって定まる距離Dだけずれている。従って、画像生成部39は、現在撮影範囲A2のうち、表示範囲A0と一致している一致範囲の画像を一致画像Iaとして抽出する。一方、画像生成部39は、画像取得部35が取得した所定時間T前までの過去画像から不一致画像Ib(薄墨部分)を抽出する。
【0074】
画像生成部39は、一致画像Iaと不一致画像Ibとを繋ぎ合わせた合成画像Icを表示装置33に表示させる。画像生成部39は、合成画像Icの地物Cを表示範囲A0における基準形状BSに一致させながら表示装置33に表示させる。このように構成することで、ブームカメラシステム30は、ブーム9またはブームカメラ31の振動の有無に関わらず、表示範囲A0における基準形状BSの座標位置に地物Cが表示される。
【0075】
ブームカメラシステム30は、地物選択操作具38が操作された場合、つまり、ブームの旋回操作、起伏操作、伸縮操作等に基づいて、基準形状BSの位置座標が移動された場合、現在撮影範囲A2の現在画像における地物Cの位置座標は、表示範囲A0における基準形状BSの位置座標から基準形状BSの移動方向と移動量によって定まる距離Dだけずれている。従って、画像生成部39は、現在撮影範囲A2のうち、表示範囲A0と一致している一致範囲の画像を一致画像Iaとして抽出する。一方、画像生成部39は、画像取得部35が取得した所定時間T前までの過去画像から不一致画像Ibを抽出する。
【0076】
次に、
図7を用いて、ブームカメラシステム30による振れ抑制制御について具体的に説明する。なお、本実施形態において、ブームカメラシステム30は、ブームカメラ31が現在撮影している現在撮影範囲A2よりも広い振動撮影範囲A1の過去映像を保持していることとする。また、ブームカメラシステム30には、サブフックブロック11が基準形状BSとして選択されたものとする。
【0077】
図7に示すように、振動抑制制御のステップS110において、画像処理装置34は、表示装置33の画面上に表示されている現在画像で選択されたサブフックブロック11の座標情報を基準形状BSの座標情報として抽出し、ステップをステップS120に移行させる。
【0078】
ステップS120において、画像処理装置34は、傾斜計32から現在姿勢角θを取得し、ステップをステップS130に移行させる。
【0079】
ステップS130において、画像処理装置34は、取得した現在姿勢角θが所定角度範囲θs未満か否かを判定する。
その結果、取得した現在姿勢角θが所定角度範囲θs未満である場合、すなわちブームカメラ31が鉛直下方向を向いているとみなせる場合、画像処理装置34はステップをステップS140に移行させる。
一方、取得した現在姿勢角θが所定角度範囲θs未満でない場合、すなわちブームカメラ31が鉛直下方向を向いていない場合、画像処理装置34はステップをステップS135に移行させる。
【0080】
ステップS135において、画像処理装置34は、基準形状BSの座標情報を、現在姿勢角θがゼロ度における場合の座標情報に換算して基準形状BSの座標情報として設定し、ステップをステップS140に移行させる。
【0081】
ステップS140において、画像処理装置34は、抽出した基準形状BSの座標情報を基準として表示範囲A0を設定し、ステップをステップS150に移行させる。
【0082】
ステップS150において、画像処理装置34は、基準位置移動操作具37が操作されたか否かを判定する。
その結果、基準位置移動操作具37が操作された場合、ステップをステップS160に移行させる。
一方、基準位置移動操作具37が操作されていない場合、画像処理装置34はステップをステップS170に移行させる。
【0083】
ステップS160において、画像処理装置34は、基準形状BSの位置座標を表示範囲A0の中心に移動させて、ステップをステップS170に移行させる。
【0084】
ステップS170において、画像処理装置34は、ブームカメラ31から現在画像を取得するとともに、サブフックブロック11の画像を抽出し、ステップをステップS180に移行させる。
【0085】
ステップS180において、画像処理装置34は、取得した現在画像のサブフックブロック11位置座標を表示範囲A0の基準形状BSの位置座標に一致させるようにして、現在画像を表示範囲A0に表示し、ステップをステップS190に移行させる。
【0086】
ステップS190において、画像処理装置34は、現在撮影範囲A2のうち、表示範囲A0と一致している部分の画像を一致画像Iaとして抽出する。一方、画像処理装置34は、画像取得部35が取得した所定時間T前までの過去画像から不一致画像Ibを抽出し、ステップをステップS200に移行させる。
【0087】
ステップS200において、画像処理装置34は、一致画像Iaと不一致画像Ibとを区別できるように繋ぎ合わせた合成画像Icを表示装置33に表示させ、ステップをステップS110に移行させる。
【0088】
このように構成されるブームカメラシステム30は、任意に選択された所定の形状を基準形状BSとして設定する。さらに、ブームカメラシステム30は、基準形状BSを基準として表示装置33にブームカメラ31が撮影した現在映像を表示させる。この際、ブームカメラシステム30は、ブームカメラ31の振動によって現在画像に表示範囲A0の全範囲が含まれていない場合、欠損している範囲を過去画像から抽出した不一致画像Ibで補完した合成画像Icを生成する。ブームカメラシステム30は、ブームカメラ31の振動によって移動しながら撮影された画像を全て取得しているので、過去画像に不一致画像Ibが含まれる。
【0089】
この際、ブームカメラシステム30は、過去画像で補完されている部分が認識できるように合成画像Icを表示するので、過去画像による補完によって操縦者が混乱することがない。つまり、ブームカメラシステム30は、表示される現在画像に合成する過去画像の時間的範囲を所定時間Tの期間に限定することで、現在画像と過去画像との整合性をある程度まで担保しつつ、ブームカメラ31の振動による欠損部分を過去画像で補完可能に構成されている。これにより、ブームカメラシステム30は、ブームカメラ31の振動の大きさに関わらず現在画像に映っている任意の物体の画像の振れを抑制することができる。
【0090】
また、ブームカメラシステム30は、操縦者が選択した任意の物体の画像を基準形状BSとして表示範囲A0を設定し、操縦者が選択した任意の物体の画像を基準とした過去画像によって画像範囲の欠損部分を補う。つまり、ブームカメラシステム30は、操縦者が任意に選択した物体についての画像の振れを抑制することができる。さらに、ブームカメラシステム30は、地物選択操作具38が操作された状態でブーム9の操作信号を取得すると、ブームカメラ31がブーム9によって移動されていると判定する。そして、ブームカメラシステム30は、操作信号に基づいて表示範囲A0の位置を移動させるので、ブーム9の移動による表示範囲A0の変動が表示範囲に表示される合成画像Icに反映される。これにより、ブームカメラシステム30は、ブームカメラ31の振動の大きさ、ブーム9の操作に関わらず現在画像に映っている任意の物体の画像の振れのみを抑制することができる。
【0091】
また、ブームカメラシステム30は、基準位置移動操作具37が操作されると、荷物Wまたはサブフックブロック11等の任意の形状を表示範囲A0の中心に配置した状態で表示範囲A0の合成画像Icを生成する。つまり、ブームカメラシステム30は、荷物W等がブームカメラ31と異なる振動で揺れていても荷物W等の画像を表示範囲A0の中心に振れを抑制させた状態で表示することができる。これにより、ブームカメラシステム30は、ブームカメラ31の振動の大きさに関わらず現在画像に映っている任意の物体の画像の振れを抑制することができる。
【0092】
上述の実施形態は、代表的な形態を示したに過ぎず、一実施形態の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。さらに、上述の実施形態は、種々なる形態で実施し得ることは勿論のことである。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0093】
1 クレーン
6 クレーン装置
9 ブーム
30 画像処理装置
31 ブームカメラ
34 ブーカメラシステム
35 画像取得部
36 基準形状設定部
39 画像生成部
BS 基準形状
A0 表示範囲
Ia 一致画像
Ib 不一致画像
Ic 合成画像