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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】車載アンテナモジュール
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/08 20060101AFI20240611BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20240611BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20240611BHJP
   H01Q 15/14 20060101ALN20240611BHJP
【FI】
H04B7/08 052C
H01Q1/22 B
H04B7/08 022
B60R11/02 A
H01Q15/14 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020097808
(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公開番号】P2021190962
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】弁理士法人ワンディ-IPパ-トナ-ズ
(72)【発明者】
【氏名】竹中 祐司
(72)【発明者】
【氏名】寺田 周平
(72)【発明者】
【氏名】桑山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】山岸 傑
(72)【発明者】
【氏名】三木 祐太郎
【審査官】吉江 一明
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-236205(JP,A)
【文献】特開2005-244738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/08
H01Q 1/22
B60R 11/02
H01Q 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のボディに固定され、少なくとも一部が板状である板状部材と、
前記板状部材に設けられる複数のアンテナとを備え、
前記板状部材に設けられる前記複数のアンテナのうちのいずれか複数は、第1の周波数帯のRF(Radio Frequency)信号を受信する第1のダイバーシティアンテナを構成し、
前記第1のダイバーシティアンテナを構成する複数の前記アンテナのうちの少なくともいずれか2つは、前記板状部材が有する平面を前記平面の中心まわりに4象限に分けたときに互いに隣接しない2つの領域にそれぞれ設けられ
前記第1のダイバーシティアンテナを構成する前記複数のアンテナのうちの2つの前記アンテナは、前記第1の周波数帯よりも高い周波数帯のRF信号を受信する他の前記アンテナを挟むように前記板状部材に設けられる、車載アンテナモジュール。
【請求項2】
車両のボディに固定され、少なくとも一部が板状である板状部材と、
前記板状部材に設けられる複数のアンテナとを備え、
前記板状部材に設けられる前記複数のアンテナのうちのいずれか複数は、第1の周波数帯のRF(Radio Frequency)信号を受信する第1のダイバーシティアンテナを構成し、
前記第1のダイバーシティアンテナを構成する複数の前記アンテナのうちの少なくともいずれか2つは、前記板状部材が有する平面を前記平面の中心まわりに4象限に分けたときに互いに隣接しない2つの領域にそれぞれ設けられ、
前記板状部材に設けられる前記複数のアンテナのうちのいずれか複数は、前記第1の周波数帯よりも高い第2の周波数帯のRF信号を受信する第2のダイバーシティアンテナを構成し、
前記第2のダイバーシティアンテナを構成する複数の前記アンテナのうちの少なくともいずれか2つは、前記平面を前記平面の中心まわりに4象限に分けたときに互いに隣接しない2つの領域にそれぞれ設けられる、車載アンテナモジュール。
【請求項3】
車両のボディに固定され、少なくとも一部が板状である板状部材と、
前記板状部材に設けられる複数のアンテナとを備え、
前記板状部材に設けられる前記複数のアンテナのうちのいずれか複数は、第1の周波数帯のRF(Radio Frequency)信号を受信する第1のダイバーシティアンテナを構成し、
前記第1のダイバーシティアンテナを構成する複数の前記アンテナのうちの少なくともいずれか2つは、前記板状部材が有する平面を前記平面の中心まわりに4象限に分けたときに互いに隣接しない2つの領域にそれぞれ設けられ、
前記第1のダイバーシティアンテナを構成する前記複数のアンテナは、6GHz以下の第5世代移動体通信の周波数帯、または第5世代移動体通信より前の世代の移動体通信の周波数帯のRF信号を受信する、車載アンテナモジュール。
【請求項4】
車両のボディに固定され、少なくとも一部が板状である板状部材と、
前記板状部材に設けられる複数のアンテナとを備え、
前記複数のアンテナは、平面視において、車両のルーフパネルにおける開口部に設けられ、
前記複数のアンテナのうちのいずれか複数は、第1の周波数帯のRF信号を受信する第1のダイバーシティアンテナを構成し、
前記第1のダイバーシティアンテナを構成する複数の前記アンテナのうちの少なくともいずれか2つは、平面視において、前記開口部を前記開口部の中心まわりに4象限に分けたときに互いに隣接しない2つの領域にそれぞれ設けられ、
前記第1のダイバーシティアンテナを構成する前記複数のアンテナのうちの2つの前記アンテナは、前記第1の周波数帯よりも高い周波数帯のRF信号を受信する他の前記アンテナを挟むように前記板状部材に設けられる、車載アンテナモジュール。
【請求項5】
車両のボディに固定され、少なくとも一部が板状である板状部材と、
前記板状部材に設けられる複数のアンテナとを備え、
前記複数のアンテナは、平面視において、車両のルーフパネルにおける開口部に設けられ、
前記複数のアンテナのうちのいずれか複数は、第1の周波数帯のRF信号を受信する第1のダイバーシティアンテナを構成し、
前記第1のダイバーシティアンテナを構成する複数の前記アンテナのうちの少なくともいずれか2つは、平面視において、前記開口部を前記開口部の中心まわりに4象限に分けたときに互いに隣接しない2つの領域にそれぞれ設けられ、
前記板状部材に設けられる前記複数のアンテナのうちのいずれか複数は、前記第1の周波数帯よりも高い第2の周波数帯のRF信号を受信する第2のダイバーシティアンテナを構成し、
前記第2のダイバーシティアンテナを構成する複数の前記アンテナのうちの少なくともいずれか2つは、平面視において、前記開口部を前記開口部の中心まわりに4象限に分けたときに互いに隣接しない2つの領域にそれぞれ設けられる、車載アンテナモジュール。
【請求項6】
車両のボディに固定され、少なくとも一部が板状である板状部材と、
前記板状部材に設けられる複数のアンテナとを備え、
前記複数のアンテナは、平面視において、車両のルーフパネルにおける開口部に設けられ、
前記複数のアンテナのうちのいずれか複数は、第1の周波数帯のRF信号を受信する第1のダイバーシティアンテナを構成し、
前記第1のダイバーシティアンテナを構成する複数の前記アンテナのうちの少なくともいずれか2つは、平面視において、前記開口部を前記開口部の中心まわりに4象限に分けたときに互いに隣接しない2つの領域にそれぞれ設けられ、
前記第1のダイバーシティアンテナを構成する前記複数のアンテナは、6GHz以下の第5世代移動体通信の周波数帯、または第5世代移動体通信より前の世代の移動体通信の周波数帯のRF信号を受信する、車載アンテナモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載アンテナモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のアンテナを備え、ダイバーシティ方式を採用した受信システムが提案されている。たとえば、特許文献1(特開2009-224908号公報)には、以下のような地上デジタルテレビの受信システムが開示されている。すなわち、受信システムは、地上デジタルテレビ信号を受信する第1アンテナと第2アンテナとからなる一組または二組のアンテナと、前記第1アンテナに接続する第1バンドパスフィルタと第1増幅回路からなる第1アンプと、前記第2アンテナに接続する第2バンドパスフィルタと第2増幅回路からなる第2アンプと、前記第1アンプと第2アンプで増幅処理された信号を合成する合成処理手段とを備え、前記第1アンプの第1バンドパスフィルタは第2バンドパスフィルタよりも帯域巾が広いか、帯域外減衰特性がなだらかであるか、少なくとも一方の特性を有し、前記第1アンプは高受信感度のアンプとする一方、前記第2アンプの第2バンドパスフィルタは、第1バンドパスフィルタよりも帯域巾が狭いか、帯域外減衰特性が急峻か、少なくとも一方の特性を有し、前記第2アンプは前記第1アンプより大きな妨害波除去機能を有し、該第2バンドパスフィルタに接続する前記第2増幅回路はバイパススイッチ付増幅回路またはゲイン制御した増幅回路とし、第2アンプはダイナミックレンジを前記第1アンプより拡大させた高妨害波除去性を有するアンプとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-224908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような特許文献1に記載の技術において、ダイバーシティアンテナを構成する各アンテナを車両に精度良く配置することは容易ではなく、たとえば、ダイバーシティアンテナを構成する各アンテナの間隔が設計値からずれてしまい、高感度でRF信号を受信することが困難な場合がある。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、より高感度でRF信号を受信することが可能な車載アンテナモジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の車載アンテナモジュールは、車両のボディに固定され、少なくとも一部が板状である板状部材と、前記板状部材に設けられる複数のアンテナとを備え、前記板状部材に設けられる前記複数のアンテナのうちのいずれか複数は、第1の周波数帯のRF(Radio Frequency)信号を受信する第1のダイバーシティアンテナを構成し、前記第1のダイバーシティアンテナを構成する複数の前記アンテナのうちの少なくともいずれか2つは、前記板状部材が有する平面を前記平面の中心まわりに4象限に分けたときに互いに隣接しない2つの領域にそれぞれ設けられる。
【0007】
(5)本開示の車載アンテナモジュールは、車両のボディに固定され、少なくとも一部が板状である板状部材と、前記板状部材に設けられる複数のアンテナとを備え、前記複数のアンテナは、平面視において、車両のルーフパネルにおける開口部に設けられ、前記複数のアンテナのうちのいずれか複数は、第1の周波数帯のRF信号を受信する第1のダイバーシティアンテナを構成し、前記第1のダイバーシティアンテナを構成する複数の前記アンテナのうちの少なくともいずれか2つは、平面視において、前記開口部を前記開口部の中心まわりに4象限に分けたときに互いに隣接しない2つの領域にそれぞれ設けられる。
【0008】
本開示の一態様は、このような特徴的な処理部を備える車載アンテナモジュールとして実現され得るだけでなく、かかる特徴的な処理をステップとする方法として実現され得たり、かかるステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現され得る。また、本開示の一態様は、車載アンテナモジュールの一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得たり、車載アンテナモジュールを含むシステムとして実現され得る。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、より高感度でRF信号を受信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の実施の形態に係る車両の概略斜視図である。
図2図2は、本開示の実施の形態に係るルーフパネルモジュールの断面図である。
図3図3は、本開示の実施の形態に係るルーフパネルモジュールの分解斜視図である。
図4図4は、本開示の実施の形態に係る車載アンテナモジュールの構成の一例を示す平面図である。
図5図5は、本開示の実施の形態に係る車載アンテナモジュールの構成の他の例を示す平面図である。
図6図6は、本開示の実施の形態に係る回路部の構成の一例を示す図である。
図7図7は、本開示の実施の形態に係るアンテナの指向性を示す図である。
図8図8は、本開示の実施の形態に係るアンテナの指向性を示すグラフである。
図9図9は、本開示の実施の形態に係るアンテナの指向性を示すグラフである。
図10図10は、本開示の実施の形態に係るアンテナの指向性を示すグラフである。
図11図11は、本開示の実施の形態に係る車載アンテナモジュールにおける回路部がRF信号を選択的に車載装置へ送信する際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0012】
(1)本開示の実施の形態に係る車載アンテナモジュールは、車両のボディに固定され、少なくとも一部が板状である板状部材と、前記板状部材に設けられる複数のアンテナとを備え、前記板状部材に設けられる前記複数のアンテナのうちのいずれか複数は、第1の周波数帯のRF信号を受信する第1のダイバーシティアンテナを構成し、前記第1のダイバーシティアンテナを構成する複数の前記アンテナのうちの少なくともいずれか2つは、前記板状部材が有する平面を前記平面の中心まわりに4象限に分けたときに互いに隣接しない2つの領域にそれぞれ設けられる。
【0013】
このように、第1のダイバーシティアンテナを構成するアンテナが、板状部材が有する平面を4象限に分けたときに互いに隣接しない2つの領域にそれぞれ設けられる構成により、予め板状部材上の所望の位置に配置された当該アンテナを含む複数のアンテナをまとめて車両に搭載することができるため、たとえばアンテナを個別に車両に配置する場合と比べて、互いの間隔が設計値通りとなるよう精度良く車両に搭載することができる。さらに、板状部材上の限られた配置スペースにおいて第1のダイバーシティアンテナを構成する2つのアンテナの間隔を確保し、当該2つのアンテナの相関を低くすることができる。したがって、より高感度でRF信号を受信することができる。
【0014】
(2)好ましくは、前記第1のダイバーシティアンテナを構成する前記複数のアンテナのうちの2つの前記アンテナは、前記第1の周波数帯よりも高い周波数帯のRF信号を受信する他の前記アンテナを挟むように前記板状部材に設けられる。
【0015】
このような構成により、高い周波数帯のRF信号を受信するアンテナを板状部材における中心に近い位置に設けることができるため、たとえば板状部材の周囲にRF信号にとっての障害物が設けられる場合であっても、一般的に回折が生じ難い高い周波数帯のRF信号をより高感度で受信することができる。
【0016】
(3)好ましくは、前記板状部材に設けられる前記複数のアンテナのうちのいずれか複数は、前記第1の周波数帯よりも高い第2の周波数帯のRF信号を受信する第2のダイバーシティアンテナを構成し、前記第2のダイバーシティアンテナを構成する複数の前記アンテナのうちの少なくともいずれか2つは、前記板状部材が有する平面を4象限に分けたときに互いに隣接しない2つの領域にそれぞれ設けられる。
【0017】
このような構成により、2つの周波数帯のRF信号をダイバーシティアンテナを用いてより高感度で受信することができる。
【0018】
(4)好ましくは、前記第1のダイバーシティアンテナを構成する前記複数のアンテナは、6GHz以下の第5世代移動体通信の周波数帯、または第5世代移動体通信より前の世代の移動体通信の周波数帯のRF信号を受信する。
【0019】
このような構成により、一般的に遠方の基地局から送信され、低仰角方向から車載アンテナモジュールに入射する、6GHz以下の第5世代移動体通信の周波数帯、または第5世代移動体通信より前の世代の移動体通信の周波数帯のRF信号を、より高感度で受信することができる。
【0020】
(5)本開示の実施の形態に係る車載アンテナモジュールは、車両のボディに固定され、少なくとも一部が板状である板状部材と、前記板状部材に設けられる複数のアンテナとを備え、前記複数のアンテナは、平面視において、車両のルーフパネルにおける開口部に設けられ、前記複数のアンテナのうちのいずれか複数は、第1の周波数帯のRF信号を受信する第1のダイバーシティアンテナを構成し、前記第1のダイバーシティアンテナを構成する複数の前記アンテナのうちの少なくともいずれか2つは、平面視において、前記開口部を前記開口部の中心まわりに4象限に分けたときに互いに隣接しない2つの領域にそれぞれ設けられる。
【0021】
このように、第1のダイバーシティアンテナを構成するアンテナが、平面視において、ルーフパネルにおける開口部を4象限に分けたときに互いに隣接しない2つの領域にそれぞれ設けられる構成により、予め板状部材上の所望の位置に配置された当該アンテナを含む複数のアンテナをまとめて車両に搭載することができるため、たとえばアンテナを個別に車両に配置する場合と比べて、互いの間隔が設計値通りとなるよう精度良く車両に搭載することができる。さらに、板状部材上の限られた配置スペースにおいて第1のダイバーシティアンテナを構成する2つのアンテナの間隔を確保し、当該2つのアンテナの相関を低くすることができる。したがって、より高感度でRF信号を受信することができる。
【0022】
以下、本開示の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0023】
[構成および基本動作]
図1は、本開示の実施の形態に係る車両の概略斜視図である。図1を参照して、車両10は、ボディ12と、ルーフパネルモジュール20とを備える。
【0024】
ボディ12は、車両10の外形をなす部分である。ボディ12は、モノコックボディであってもよいし、ラダーフレーム上に搭載されるボディであってもよい。ボディ12は、たとえば金属板によって形成される。ボディ12は、車両10のルーフ部分に開口部13を有する。たとえば、開口部13の形状は、方形状である。ルーフパネルモジュール20は、ボディ12における開口部13に嵌め込まれる。
【0025】
図2は、本開示の実施の形態に係るルーフパネルモジュールの断面図である。図2は、図1におけるA-A線矢視断面図である。図3は、本開示の実施の形態に係るルーフパネルモジュールの分解斜視図である。図2および図3を参照して、ルーフパネルモジュール20は、車両ルーフパネル22と、電波遮蔽部30と、導電性弾性部材40,45と、車載アンテナモジュール50とを備える。
【0026】
[車両ルーフパネル]
たとえば、車両ルーフパネル22は、樹脂により形成される。車両ルーフパネル22の形状は、方形板状である。より詳細には、車両ルーフパネル22は、ボディ12の開口部13を塞ぐことができるように、開口部13に対応する形状を有する。車両ルーフパネル22は、開口部13に嵌め込まれた状態で、たとえばネジ止めによりボディ12に固定される。
【0027】
車両ルーフパネル22は、平面視における中央部分に、方形状のアンテナ用開口部22hを有する。アンテナ用開口部22hには、車載アンテナモジュール50が嵌め込まれる。アンテナ用開口部22hは、開口部の一例である。
【0028】
[電波遮蔽部]
電波遮蔽部30は、車両ルーフパネル22の車室側の面に固定される。電波遮蔽部30の形状は、方形板状である。たとえば、電波遮蔽部30は、車両ルーフパネル22の車室側の面の全体を覆うことができるよう、平面視において車両ルーフパネル22と同じ形状を有する。なお、電波遮蔽部30の主面の大きさは、車両ルーフパネル22の車室側の面より大きくてもよいし、小さくてもよい。
【0029】
電波遮蔽部30は、平面視における中央部分に、方形状のアンテナ用開口部30hを有する。より詳細には、電波遮蔽部30は、車両ルーフパネル22の車室側の面に固定された状態においてアンテナ用開口部22hに重なる位置にアンテナ用開口部30hを有する。アンテナ用開口部30hには、車載アンテナモジュール50が嵌め込まれる。
【0030】
電波遮蔽部30は、電波遮蔽性を有する。より詳細には、電波遮蔽部30は、一部の周波数の電波に対して遮蔽性を有する。たとえば、電波遮蔽部30は、周波数選択膜(FSS:Frequency Selective Surface)により形成される。周波数選択膜は、樹脂等により形成されたベースフィルムと、当該ベースフィルム上に金属泊等により形成されたユニットセルとを含む。周波数選択膜は、ユニットセルの周波数特性に応じて1または複数の周波数帯の電波を遮蔽し、他の周波数帯の電波を透過させる性質を有する。
【0031】
たとえば、電波遮蔽部30は、車両10の車室における、スマートフォン、携帯電話およびパーソナルコンピュータ等の複数の機器同士が通信を行うための周波数の電波に対して遮蔽性を有する。具体的には、電波遮蔽部30は、Wi-Fi(登録商標)通信およびBluetooth(登録商標)通信の周波数帯の電波に対して遮蔽性を有する。あるいは、電波遮蔽部30は、車室における機器に非接触給電を行うための周波数の電波に対して遮蔽性を有する。このような構成により、車室側の機器が出力する電波の車外への伝搬を抑制することができる。
【0032】
なお、電波遮蔽部30は、すべての周波数の電波に対して遮蔽性を有してもよい。この場合、電波遮蔽部30は、たとえばアルミニウムおよび鉄等の金属により形成される。また、電波遮蔽部30は、断熱性および防音性等を有するシート状の部材を含んでもよい。
【0033】
[導電性弾性部材]
導電性弾性部材40,45は、導電性および弾性を有する。たとえば、導電性弾性部材40,45は、導電性カーボンおよび金属粉末等の、導電性フィラーを含むゴムである。
導電性弾性部材40,45は、車両ルーフパネル22の縁に沿って設けられる。
【0034】
導電性弾性部材40は、車両ルーフパネル22の外周縁に沿って設けられる。より詳細には、導電性弾性部材40は、車両ルーフパネル22の外周縁と、車両10の開口部13の縁との間に設けられる。たとえば、導電性弾性部材40は、車両ルーフパネル22の外周縁と開口部13の縁との間に挟まれることにより両者の間に固定される。
【0035】
導電性弾性部材45は、車両ルーフパネル22におけるアンテナ用開口部22hの縁に沿って設けられる。より詳細には、導電性弾性部材40は、アンテナ用開口部22hおよびアンテナ用開口部30hの縁と、車載アンテナモジュール50の外周面との間に設けられる。たとえば、導電性弾性部材45は、アンテナ用開口部22hおよびアンテナ用開口部30hの縁と、車載アンテナモジュール50の外周面との間に挟まれることにより両者の間に固定される。
【0036】
[車載アンテナモジュール]
車載アンテナモジュール50は、板状部材51と、複数のアンテナ52と、回路部53と、ケース54とを備える。
【0037】
板状部材51は、少なくとも一部が板状の部材である。たとえば、板状部材51の形状は、方形板状である。板状部材51における一方の主面たとえば車室側の面には、金属泊等によってグランドとなる導体層51aが形成されている。導体層51aは、電波遮蔽性を有する。
【0038】
アンテナ52および回路部53は、板状部材51に設けられる。たとえば、アンテナ52および回路部53は、板状部材51における車外側の面上に形成される。板状部材51上におけるアンテナ52および回路部53の配置については後述する。
【0039】
ケース54は、たとえば樹脂により形成されている。ケース54は、板状部材51およびアンテナ52の上下および周囲を覆う。より詳細には、ケース54は、平板状の底部54aと、直方体状の外形を有する本体部54bとを含む。底部54aの車外側の面には、板状部材51が固定される。本体部54bは、底部54aに板状部材51が固定された状態において、板状部材51を覆うように底部54aに固定される。底部54aは、本体部54bが底部54aに固定された状態において、平面視において本体部54aよりも外側に張り出している。
【0040】
たとえば、電波遮蔽部30におけるアンテナ用開口部30hおよび車両ルーフパネル22におけるアンテナ用開口部22hの形状は、平面視において、車載アンテナモジュール50のケース54における本体部54bの形状と略同じ形状であり、かつケース54における底部54aより小さい。
【0041】
ルーフパネルモジュール20は、車載アンテナモジュール50のケース54における本体部54bが、アンテナ用開口部30hおよびアンテナ用開口部22hに車室側から嵌め込まれることにより作成される。より詳細には、車載アンテナモジュール50は、電波遮蔽部30におけるアンテナ用開口部30hに嵌め込まれた状態で、電波遮蔽部30に固定される。たとえば、車載アンテナモジュール50のケース54の本体部54bにおける外周面に、導電性弾性部材45が設けられる。そして、ケース54における外周部に、枠状のブラケットがネジ止等により固定される。また、ケース54における外周部とブラケットとの間に、電波遮蔽部30におけるアンテナ用開口部30hの縁が挟み込まれる。
【0042】
また、車載アンテナモジュール50は、車両ルーフパネル22におけるアンテナ用開口部22hに嵌め込まれて固定される。より詳細には、車載アンテナモジュール50のケース54の本体部54bおよび導電性弾性部材45がアンテナ用開口部22hに嵌め込まれるとともに、電波遮蔽部30が車両ルーフパネル22の車室側の面に固定される。このようにして作成されたルーフパネルモジュール20は、たとえば車両ルーフパネル22がボディ12にネジ止めされることにより、ボディ12に固定される。
【0043】
また、板状部材51は、車両10のボディ12に固定される。より詳細には、ルーフパネルモジュール20は、板状部材51がケース54における底部54aに固定された状態で、車両ルーフパネル22がボディ12にネジ止めされることにより、ボディ12に固定される。
【0044】
図4は、本開示の実施の形態に係る車載アンテナモジュールの構成の一例を示す平面図である。図4を参照して、車載アンテナモジュール50は、アンテナ52として、アンテナ52a,52b,52c,52d,52e,52f,52gを備える。各アンテナ52は、図示しない伝送線を介して回路部53に接続される。アンテナ52は、平面視において、車両ルーフパネル22におけるアンテナ用開口部22hに設けられる。たとえば、アンテナ52および回路部53は、板状部材51における車外側の面に設けられる。
【0045】
ここで、日本を含む各国において、互いに異なる周波数帯域に各種通信サービスがそれぞれ割り当てられている。たとえば、526.5kHz~1606.5kHzにAMラジオが割り当てられ、76MHz~108MHzにFMラジオが割り当てられ、470MHz~710MHzにテレビ放送が割り当てられ、2.3GHzに衛星ラジオが割り当てられ、315MHzおよび433MHzにキーレスエントリが割り当てられ、1.5GHzにGPS(Global Positioning System)が割り当てられ、6GHz以下である3.5GHz帯に第5世代移動体通信が割り当てられ、28GHz帯にミリ波帯の第5世代移動体通信が割り当てられ、920MHzにリモコンエンジンスタータが割り当てられ、0.8GHz、1.5GHz、1.7GHzおよび2GHzに第5世代移動体通信より前の世代の移動体通信である第4世代移動体通信が割り当てられ、760MHzおよび5.9GHzにITS(Intelligent Transport Systems)無線が割り当てられ、5.8GHzにETC(Electronic Toll Collection system)が割り当てられる。以下、6GHz以下の第5世代移動体通信の周波数帯を「Sub6」とも称し、第5世代移動体通信より前の世代の移動体通信を「TEL」とも称する。
【0046】
アンテナ52は、互いに異なる通信サービスに対応して設けられる。アンテナ52は、対応の通信サービスが割り当てられた周波数帯域のRF信号を受信可能である。たとえば、アンテナ52a,52bがTELに対応し、アンテナ52c,52dがSub6に対応し、アンテナ52eが760MHz帯のITS無線に対応し、アンテナ52fが5.9GHz帯のITS無線に対応し、アンテナ52gがGPSに対応している。
【0047】
以下、アンテナ52aをTELアンテナ52aとも称し、アンテナ52bをTELアンテナ52bとも称し、アンテナ52cをSub6アンテナ52cとも称し、アンテナ52dをSub6アンテナ52dとも称し、アンテナ52eをITS760MHzアンテナ52eとも称し、アンテナ52fをITS5.9GHzアンテナ52fとも称し、アンテナ52gをGPSアンテナ52gとも称する。
【0048】
回路部53は、アンテナ52により受信されたRF信号を、たとえば通信サービスごとに車両10に設けられた図示しない車載装置へ送信する。
【0049】
アンテナ52のうちのいずれか複数は、ある同一の周波数帯のRF信号を受信するダイバーシティアンテナを構成する。たとえば、TELアンテナ52aおよびTELアンテナ52bは、TELの2GHz帯のRF信号を受信するダイバーシティアンテナを構成する。また、たとえば、Sub6アンテナ52cおよびSub6アンテナ52dは、Sub6である3.5GHz帯のRF信号を受信するダイバーシティアンテナを構成する。TELアンテナ52aおよびTELアンテナ52bが構成するダイバーシティアンテナは、第1のダイバーシティアンテナの一例である。Sub6アンテナ52cおよびSub6アンテナ52dが構成するダイバーシティアンテナは、第2のダイバーシティアンテナの一例である。
【0050】
Sub6アンテナ52cおよびSub6アンテナ52dが受信するRF信号の周波数帯すなわち3.5GHz帯は、TELアンテナ52aおよびTELアンテナ52bが受信するRF信号の周波数帯すなわち2GHz帯よりも高い周波数帯である。
【0051】
ダイバーシティアンテナにより受信されたRF信号は、回路部53により選択的に車載装置へ送信される。より詳細には、回路部53は、ダイバーシティアンテナを構成するあるアンテナにより受信されたRF信号s1の信号強度g1が所定値より大きい場合、RF信号s1を選択して対応の車載装置へ送信する。一方、回路部53は、信号強度g1が上記所定値以下であり、かつ当該ダイバーシティアンテナを構成する他のアンテナにより受信されたRF信号s2の信号強度g2が上記所定値より大きい場合、RF信号s2を選択して対応の車載装置へ送信する。一方、回路部53は、当該ダイバーシティアンテナを構成する複数のアンテナにより受信された各RF信号が上記所定値以下である場合、当該ダイバーシティアンテナを構成する複数のアンテナにより受信された各RF信号のうちの信号強度が最も高いRF信号を選択し、選択したRF信号を対応の車載装置へ送信する。
【0052】
TELアンテナ52aおよびTELアンテナ52bは、板状部材51が有する平面を当該平面の中心Oまわりに4象限に分けたときに互いに隣接しない2つの領域にそれぞれ設けられる。また、TELアンテナ52aおよびTELアンテナ52bは、平面視において、アンテナ用開口部22hをアンテナ用開口部22hの中心まわりに4象限に分けたときに互いに隣接しない2つの領域にそれぞれ設けられる。より詳細には、TELアンテナ52aおよびTELアンテナ52bは、板状部材51が有する平面を、中心Oを通る直線であって、かつ互いに直交する直線L1,L2により分けたときに互いに隣接しない領域Rg3,Rg1にそれぞれ設けられる。たとえば、直線L1は、矩形状の板状部材51における第1の辺に平行な直線であり、直線L2は、矩形状の板状部材51における第2の辺に平行な直線である。また、たとえば、直線L1は、矩形状のアンテナ用開口部22hにおける第1の辺に平行な直線であり、直線L2は、矩形状のアンテナ用開口部22hにおける第2の辺に平行な直線である。
【0053】
たとえば、TELアンテナ52aおよびTELアンテナ52bは、板状部材51における対角線D1上の位置に設けられる。具体的には、たとえば、TELアンテナ52aの中心およびTELアンテナ52bの中心は、板状部材51における対角線D1上に存在する。また、たとえば、TELアンテナ52aおよびTELアンテナ52bは、板状部材51上で互いの間隔が最も大きくなるよう、板状部材51の車外側の面上における互いに対向する角部分に設けられる。
【0054】
Sub6アンテナ52cおよびSub6アンテナ52dは、板状部材51が有する平面を当該平面の中心Oまわりに4象限に分けたときに互いに隣接しない2つの領域にそれぞれ設けられる。また、Sub6アンテナ52cおよびSub6アンテナ52dは、平面視において、アンテナ用開口部22hをアンテナ用開口部22hの中心まわりに4象限に分けたときに互いに隣接しない2つの領域にそれぞれ設けられる。より詳細には、Sub6アンテナ52cおよびSub6アンテナ52dは、板状部材51が有する平面を直線L1,L2により分けたときに互いに隣接しない領域Rg3,Rg1にそれぞれ設けられる。
【0055】
たとえば、Sub6アンテナ52cおよびSub6アンテナ52dは、板状部材51における対角線D1上の位置に設けられる。具体的には、たとえば、Sub6アンテナ52cの中心およびSub6アンテナ52dの中心は、板状部材51における対角線D1上に存在する。
【0056】
たとえば、TELアンテナ52aおよびTELアンテナ52bは、2GHz帯よりも高い周波数帯のRF信号を受信するアンテナ52を挟むように板状部材51に設けられる。図に示す例では、TELアンテナ52aおよびTELアンテナ52bは、Sub6アンテナ52cおよびSub6アンテナ52dを挟むように板状部材51に設けられる。
【0057】
図5は、本開示の実施の形態に係る車載アンテナモジュールの構成の他の例を示す平面図である。図5を参照して、TELアンテナ52aおよびTELアンテナ52bは、板状部材51が有する平面を直線L1,L2により分けたときに互いに隣接しない領域Rg3,Rg1にそれぞれ設けられる。たとえば、TELアンテナ52aおよびTELアンテナ52bは、板状部材51における対角線D1上の位置に設けられる。また、Sub6アンテナ52cおよびSub6アンテナ52dは、板状部材51が有する平面を直線L1,L2により分けたときに互いに隣接しない領域Rg2,Rg4にそれぞれ設けられる。たとえば、Sub6アンテナ52cおよびSub6アンテナ52dは、板状部材51における対角線D2上の位置に設けられる。具体的には、たとえば、Sub6アンテナ52cの中心およびSub6アンテナ52dの中心は、板状部材51における対角線D2上に存在する。また、たとえば、Sub6アンテナ52cおよびSub6アンテナ52dは、板状部材51上で互いの間隔が最も大きくなるよう、板状部材51の車外側の面上における互いに対向する角部分に設けられる。
【0058】
たとえば、TELアンテナ52aおよびTELアンテナ52bは、2GHz帯よりも高い周波数帯のRF信号を受信するアンテナ52を挟むように板状部材51に設けられる。図5に示す例では、TELアンテナ52aおよびTELアンテナ52bは、ITS5.9GHzアンテナ52fを挟むように板状部材51における対角線D1上の位置に設けられる。また、図5に示す例では、Sub6アンテナ52cおよびSub6アンテナ52dは、ITS5.9GHzアンテナ52fを挟むように板状部材51における対角線D1とは異なる対角線D2上の位置に設けられる。
【0059】
図6は、本開示の実施の形態に係る回路部の構成の一例を示す図である。図6を参照して、回路部53は、受信部61a,61b,61c,61d,61e,61f,61gと、選択部62a,62bとを含む。以下、受信部61a,61b,61c,61d,61e,61f,61gの各々を受信部61とも称し、選択部62a,62bの各々を選択部62とも称する。
【0060】
受信部61の各々は、対応のアンテナ52に接続される。より詳細には、受信部61aはTELアンテナ52aに接続され、受信部61bはTELアンテナ52bに接続され、受信部61cはSub6アンテナ52cに接続され、受信部61dはSub6アンテナ52dに接続され、受信部61eはITS760MHzアンテナ52eに接続され、受信部61fはITS5.9GHzアンテナ52fに接続され、受信部61gはGPSアンテナ52gに接続される。
【0061】
たとえば、受信部61は、バンドパスフィルタおよび増幅回路を有し、対応のアンテナ52により受信されたRF信号をフィルタ処理するとともに増幅する。受信部61a,61bは、増幅後のRF信号を選択部62aへ出力する。受信部61c,61dは、増幅後のRF信号を選択部62bへ出力する。受信部61e,61f,61gは、増幅後のRF信号を対応の車載装置へ送信する。
【0062】
選択部62は、ダイバーシティアンテナを構成する2つのアンテナ52により受信された各RF信号を選択的に車載装置へ送信する。より詳細には、選択部62は、2つの受信部61から受けたRF信号のいずれか一方を選択して車載装置へ送信する。具体的には、たとえば、選択部62aは、受信部61aから受けたRF信号saの信号強度gaがしきい値Th1より大きい場合、当該RF信号saを選択して対応の車載装置へ送信する。一方、選択部62aは、受信部61aから受けたRF信号saの信号強度gaがしきい値Th1以下であり、かつ受信部61bから受けたRF信号sbの信号強度gbがしきい値Th1より大きい場合、当該RF信号sbを選択して対応の車載装置へ送信する。一方、選択部62aは、RF信号saの信号強度gaがしきい値Th1以下であり、かつRF信号sbの信号強度gbがしきい値Th1以下である場合、RF信号saおよびRF信号sbのうちの信号強度が高い方のRF信号を選択し、選択したRF信号を対応の車載装置へ送信する。
【0063】
また、たとえば、選択部62bは、受信部61cから受けたRF信号scの信号強度gcがしきい値Th2より大きい場合、当該RF信号scを選択して対応の車載装置へ送信する。一方、選択部62bは、受信部61cから受けたRF信号scの信号強度gcがしきい値Th2以下であり、かつ受信部61dから受けたRF信号sdの信号強度gdがしきい値Th2より大きい場合、当該RF信号sdを選択して対応の車載装置へ送信する。一方、選択部62bは、RF信号scの信号強度gcがしきい値Th2以下であり、RF信号sdの信号強度gdがしきい値Th2以下である場合、RF信号scおよびRF信号sdのうちの信号強度が高い方のRF信号を選択し、選択したRF信号を対応の車載装置へ送信する。
【0064】
たとえば、選択部62は、対応の受信部61から受けたRF信号の信号強度と、しきい値または他の対応の受信部61から受けたRF信号の信号強度とを比較する比較回路、および、2つの受信部61から受けた各RF信号のうちの、対応の車載装置へ送信すべきRF信号を切り替えるためのスイッチを有する。選択部62は、定期的または不定期に、対応の受信部61から受けたRF信号の信号強度としきい値とを比較する。そして、選択部62は、比較結果に基づいて、2つの受信部61から受けた各RF信号のいずれか一方を選択して対応の車載装置へ送信する。
【0065】
図7は、本開示の実施の形態に係るアンテナの指向性を示す図である。図7は、図4に示す車載アンテナモジュール50におけるTELアンテナ52aの、仰角40°の方向から入射する垂直偏波のRF信号に対する指向性を示している。図8は、本開示の実施の形態に係るアンテナの指向性を示すグラフである。図8は、図4に示す車載アンテナモジュール50におけるTELアンテナ52bの、仰角40°の方向から入射する垂直偏波のRF信号に対する指向性を示している。
【0066】
図7および図8を参照して、TELアンテナ52aおよびTELアンテナ52bは、板状部材51上での設置位置の影響により互いに異なる指向性を有する。具体的には、たとえば、TELアンテナ52aの指向性は、約240°の方位角の方向にヌルポイントを有する。すなわち、TELアンテナ52aは、約240°の方位角の方向から入射するRF信号に対する受信感度が低い。一方、TELアンテナ52bは、約240°の方位角の方向にヌルポイントを有しない。また、約240°の方位角の方向から入射するRF信号に対するTELアンテナ52bの受信感度は、約240°の方位角の方向から入射するRF信号に対するTELアンテナ52aの受信感度よりも高い。
【0067】
図9は、本開示の実施の形態に係るアンテナの指向性を示すグラフである。図9は、図4に示す車載アンテナモジュール50におけるSub6アンテナ52cの、仰角40°の方向から入射する垂直偏波のRF信号に対する指向性を示している。図10は、本開示の実施の形態に係るアンテナの指向性を示すグラフである。図10は、図4に示す車載アンテナモジュール50におけるSub6アンテナ52dの、仰角40°の方向から入射する垂直偏波のRF信号に対する指向性を示している。
【0068】
図9および図10を参照して、Sub6アンテナ52cおよびSub6アンテナ52dは、板状部材51上での設置位置の影響により互いに異なる指向性を有する。具体的には、たとえば、Sub6アンテナ52cの指向性は、約140°の方位角の方向および約290°の方位角の方向にヌルポイントを有する。すなわち、Sub6アンテナ52cは、約140°の方位角の方向から入射するRF信号および約290°の方位角の方向から入射するRF信号に対する受信感度が低い。一方、Sub6アンテナ52dは、約140°の方位角の方向および約290°の方位角の方向にヌルポイントを有しない。また、約140°の方位角の方向から入射するRF信号に対するSub6アンテナ52dの受信感度は、約140°の方位角の方向から入射するRF信号に対するSub6アンテナ52cの受信感度よりも高い。また、約290°の方位角の方向から入射するRF信号に対するSub6アンテナ52dの受信感度は、約290°の方位角の方向から入射するRF信号に対するSub6アンテナ52cの受信感度よりも高い。
【0069】
受信部61aから出力されるRF信号saの信号強度gaと、受信部61bから出力されるRF信号sbの信号強度gbとは、上述のようなTELアンテナ52aおよびTELアンテナ52bの指向性の相違に起因して、互いに異なる場合がある。また、受信部61cから出力されるRF信号scの信号強度gcと、受信部61dから出力されるRF信号sdの信号強度gdとは、上述のようなSub6アンテナ52cおよびSub6アンテナ52dの指向性の相違に起因して、互いに異なる場合がある。
【0070】
選択部62は、受信部61aから受けたRF信号saの信号強度gaおよび受信部61bから受けたRF信号sbの信号強度gbとしきい値Th1とを比較し、比較結果に基づいて、RF信号saおよびRF信号sbのいずれか一方を対応の車載装置へ送信する。また、選択部62は、受信部61cから受けたRF信号scの信号強度gcおよび受信部61dから受けたRF信号sdの信号強度gdとしきい値Th2とを比較し、比較結果に基づいて、RF信号scおよびRF信号sdのいずれか一方を対応の車載装置へ送信する。
【0071】
これにより、たとえば、TELアンテナ52a,52bの一方のRF信号の信号強度が低下した場合であっても、他方のRF信号を対応の車載装置へ送信することにより、車載装置が受信するRF信号の信号強度の低下を抑制することができる。また、たとえば、Sub6アンテナ52cおよびSub6アンテナ52dの一方のRF信号の信号強度が低下した場合であっても、他方のRF信号を対応の車載装置へ送信することにより、車載装置が受信するRF信号の信号強度の低下を抑制することができる。
【0072】
[動作の流れ]
本開示の実施の形態に係る車載アンテナモジュール50は、メモリを含むコンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU等の演算処理部は、以下のフローチャートおよびシーケンスの各ステップの一部または全部を含むプログラムを当該メモリから読み出して実行する。このプログラムは、外部からインストールすることができる。このプログラムは、記録媒体に格納された状態で流通する。
【0073】
図11は、本開示の実施の形態に係る車載アンテナモジュールにおける回路部がRF信号を選択的に車載装置へ送信する際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。図11は、回路部53が、受信部51c,51dから受けたRF信号のいずれか一方を選択して車載装置へ送信する際の動作手順を示している。
【0074】
図11を参照して、まず、回路部53は、所定周期に従う選択タイミングを待ち受け(ステップS102でNO)、選択タイミングにおいて(ステップS102でYES)、受信部61cから受けたRF信号scの信号強度gcと、所定のしきい値Th2とを比較する(ステップS104)。
【0075】
次に、回路部53は、RF信号scの信号強度gcがしきい値Th2より大きい場合(ステップS106でYES)、車載装置へ送信すべきRF信号をRF信号scに設定し、車載装置へのRF信号scの送信を開始する(ステップS108)。次に、回路部53は、新たな選択タイミングを待ち受ける(ステップS102)。
【0076】
一方、回路部53は、RF信号scの信号強度gcがしきい値Th2以下である場合(ステップS106でNO)、受信部61dから受けたRF信号sdの信号強度gdと、しきい値Th2とを比較する(ステップS110)。
【0077】
次に、回路部53は、RF信号sdの信号強度gdがしきい値Th2より大きい場合(ステップS112でYES)、車載装置へ送信すべきRF信号をRF信号sdに設定し、車載装置へのRF信号sdの送信を開始する(ステップS114)。次に、回路部53は、新たな選択タイミングを待ち受ける(ステップS102)。
【0078】
一方、回路部53は、RF信号sdの信号強度gdがしきい値Th2以下である場合(ステップS112でNO)、受信部61cから受けたRF信号scの信号強度gcと、受信部61dから受けたRF信号sdの信号強度gdとを比較する(ステップS116)。
【0079】
次に、回路部53は、RF信号scの信号強度gcがRF信号sdの信号強度gdより大きい場合(ステップS118でYES)、車載装置へ送信すべきRF信号をRF信号scに設定し、車載装置へのRF信号scの送信を開始する(ステップS120)。次に、回路部53は、新たな選択タイミングを待ち受ける(ステップS102)。
【0080】
一方、回路部53は、RF信号scの信号強度gcがRF信号sdの信号強度gd以下である場合(ステップS118でNO)、車載装置へ送信すべきRF信号をRF信号sdに設定し、車載装置へのRF信号sdの送信を開始する(ステップS122)。次に、回路部53は、新たな選択タイミングを待ち受ける(ステップS102)。
【0081】
なお、本開示の実施の形態に係る車載アンテナモジュール50では、アンテナ52として、TELアンテナ52a,52bと、Sub6アンテナ52c,52dと、ITS760MHzアンテナ52eと、ITS5.9GHzアンテナ52fと、GPSアンテナ52gとを備える構成であるとしたが、これに限定するものではない。車載アンテナモジュール50は、上記の通信サービスに対応するアンテナ52に加えて、または上記の通信サービスに対応するアンテナ52の代わりに、上記以外の他の通信サービスに対応するアンテナ52を備える構成であってもよい。
【0082】
また、本開示の実施の形態に係る車載アンテナモジュール50では、TELアンテナ52aおよびTELアンテナ52bは、Sub6アンテナ52c,52dまたはITS5.9GHzアンテナ52fを挟むように板状部材51に設けられる構成であるとしたが、これに限定するものではない。TELアンテナ52aおよびTELアンテナ52bは、間に他のアンテナ52を挟まないように板状部材51に設けられてもよいし、Sub6アンテナ52c,52dおよびITS5.9GHzアンテナ52f以外の他のアンテナ52を挟むように板状部材51に設けられてもよい。
【0083】
また、本開示の実施の形態に係る車載アンテナモジュール50は、ダイバーシティアンテナを構成するTELアンテナ52a,52bと、ダイバーシティアンテナを構成するSub6アンテナ52c,52dとを備える構成であるとしたが、これに限定するものではない。車載アンテナモジュール50は、1つまたは3つ以上のダイバーシティアンテナを備える構成であってもよい。
【0084】
また、本開示の実施の形態に係る車載アンテナモジュール50は、2つのアンテナにより構成されるダイバーシティアンテナを備える構成であるとしたが、これに限定するものではない。車載アンテナモジュール50は、3つ以上のアンテナにより構成されるダイバーシティアンテナを備える構成であってもよい。
【0085】
また、本開示の実施の形態に係る車載アンテナモジュール50は、ダイバーシティアンテナとして、TELの周波数帯のRF信号を受信するTELアンテナ52a,52bおよびSub6の周波数帯のRF信号を受信するSub6アンテナ52c,52dを備える構成であるとしたが、これに限定するものではない。車載アンテナモジュール50は、他の周波数帯のRF信号を受信するダイバーシティアンテナを備える構成であってもよい。
【0086】
また、本開示の実施の形態に係る車載アンテナモジュール50における回路部53では、選択部62は、2つの受信部61から受けたRF信号を選択的に車載装置へ送信する構成であるとしたが、これに限定するものではない。選択部62は、2つの受信部61から受けた各RF信号を合成して車載装置へ送信する構成であってもよい。
【0087】
また、本開示の実施の形態に係る車載アンテナモジュール50は、回路部53を備える構成であるとしたが、これに限定するものではない。回路部53の一部または全部が、車載アンテナモジュール50の外部に設けられてもよい。
【0088】
ところで、より高感度でRF信号を受信することを可能とする技術が望まれる。たとえば、車載アンテナモジュール50におけるアンテナ52は、低仰角方向から車載アンテナモジュール50に入射するRF信号を受信する際、車両10のボディ12において反射されるRF信号の影響により、一部の方位角の方向から入射するRF信号に対して受信感度が低下する場合がある。すなわち、アンテナ52の指向性は、一部の方位角の方向にヌルポイントを有する場合がある。そこで、このような問題を解決するために、ダイバーシティアンテナを用いることが考えられる。しかしながら、ダイバーシティアンテナを構成する各アンテナを車両10に精度良く配置することは容易ではなく、たとえば、ダイバーシティアンテナを構成する各アンテナの間隔が設計値からずれてしまう場合がある。
【0089】
これに対して、本開示の実施の形態に係る車載アンテナモジュール50では、板状部材51は、車両10のボディ12に固定され、少なくとも一部が板状である。複数のアンテナ52は、板状部材51に設けられる。複数のアンテナ52のうちのTELアンテナ52a,52bは、第1の周波数帯のRF信号を受信する第1のダイバーシティアンテナである。TELアンテナ52a,52bは、板状部材51が有する平面を当該平面の中心まわりに4象限に分けたときに互いに隣接しない2つの領域にそれぞれ設けられる。
【0090】
このように、第1のダイバーシティアンテナを構成するTELアンテナ52a,52bが、板状部材51が有する平面を4象限に分けたときに互いに隣接しない2つの領域にそれぞれ設けられる構成により、予め板状部材51上の所望の位置に配置されたTELアンテナ52a,52bを含む複数のアンテナをまとめて車両10に搭載することができるため、たとえばTELアンテナ52a,52bを個別に車両10に配置する場合と比べて、互いの間隔が設計値通りとなるよう精度良く車両10に搭載することができる。さらに、板状部材51上の限られた配置スペースにおいてTELアンテナ52a,52bの間隔を確保し、TELアンテナ52a,52bの相関を低くすることができる。
【0091】
また、本開示の実施の形態に係る車載アンテナモジュール50では、板状部材51は、車両10のボディ12に固定され、少なくとも一部が板状である。複数のアンテナ52は、板状部材51に設けられる。複数のアンテナ52は、平面視において、車両ルーフパネル22におけるアンテナ用開口部22hに設けられる。複数のアンテナ52のうちのTELアンテナ52a,52bは、第1の周波数帯のRF信号を受信する第1のダイバーシティアンテナである。TELアンテナ52a,52bは、平面視において、アンテナ用開口部22hをアンテナ用開口部22hの中心まわりに4象限に分けたときに互いに隣接しない2つの領域にそれぞれ設けられる。
【0092】
このように、第1のダイバーシティアンテナを構成するTELアンテナ52a,52bアンテナが、平面視において、アンテナ用開口部22hを4象限に分けたときに互いに隣接しない2つの領域にそれぞれ設けられる構成により、予め板状部材51上の所望の位置に配置されたTELアンテナ52a,52bを含む複数のアンテナをまとめて車両10に搭載することができるため、たとえばTELアンテナ52a,52bを個別に車両10に配置する場合と比べて、互いの間隔が設計値通りとなるよう精度良く車両10に搭載することができる。さらに、板状部材51上の限られた配置スペースにおいてTELアンテナ52a,52bの間隔を確保し、TELアンテナ52a,52bの相関を低くすることができる。したがって、より高感度でRF信号を受信することができる。
【0093】
したがって、本開示の実施の形態に係る車載アンテナモジュール50では、より高感度でRF信号を受信することができる。
【0094】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0095】
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
車両のボディに固定され、少なくとも一部が板状である板状部材と、
前記板状部材に設けられる複数のアンテナとを備え、
前記板状部材に設けられる前記複数のアンテナのうちのいずれか複数は、第1の周波数帯のRF信号を受信する第1のダイバーシティアンテナを構成し、
前記第1のダイバーシティアンテナを構成する複数の前記アンテナのうちの少なくともいずれか2つは、前記板状部材が有する平面を4象限に分けたときに互いに隣接しない2つの領域にそれぞれ設けられ、
前記板状部材の形状は、方形状であり、
前記第1のダイバーシティアンテナを構成する複数の前記アンテナのうちの少なくともいずれか2つは、前記板状部材の一方の面における互いに対向する角部分に設けられる、車載アンテナモジュール。
【符号の説明】
【0096】
10 車両
12 ボディ
13 開口部
20 ルーフパネルモジュール
22 車両ルーフパネル
22h アンテナ用開口部
30 電波遮蔽部
30h アンテナ用開口部
40 導電性弾性部材
45 導電性弾性部材
50 車載アンテナモジュール
51 板状部材
51a 導体層
52 アンテナ
52a,52b TELアンテナ
52c,52d Sub6アンテナ
52e ITS760MHzアンテナ
52f ITS5.9GHzアンテナ
52g GPSアンテナ
53 回路部
54 ケース
54a 底部
54b 本体部
61 受信部
62 選択部
図1
図2
図3
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