(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】車両用動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
B60K 17/06 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
B60K17/06 E
(21)【出願番号】P 2020103998
(22)【出願日】2020-06-16
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩井 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】更科 俊平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 俊一
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-190475(JP,A)
【文献】特開2005-162002(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0037427(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース部材と、前記ケース部材に設置された油圧制御部品と、前記油圧制御部品に電気的に接続される接続部とを有する車両用動力伝達装置であって、
前記ケース部材は、第1のケースと、前記第1のケースの後方に設置され、前記第1のケースに連結される第2のケースと、前記第2のケースの後方に設置され、前記第2のケースに連結される第3のケースとを有し、
前記第2のケースは、前記第3のケース側の後端部において前記第2のケースの下端から下方に突出する突出部を有し、
前記第1のケースの下端と前記第3のケースの下端は、
前記突出部を除いた前記第2のケースの下端よりも下方に位置しており、
前記第1のケースの後壁面は、前記第3のケースの前壁面に前後方向で対向しており、
前記油圧制御部品は、前記第1のケースの内部において前記第1のケースの下部に設置されており、
前記接続部は、少なくとも前記接続部の下端が
前記突出部を除いた前記第2のケースよりも低い位置に位置して前記第1のケースの前記後壁面に取付けられていることを特徴とする車両用動力伝達装置。
【請求項2】
前記第2のケースは、膨出部を有し、
前記膨出部は、前後方向で前記接続部に対向する前記第3のケースの前記前壁面側から前記接続部に向かって膨出していることを特徴とする請求項1に記載の車両用動力伝達装置。
【請求項3】
前記突出部は、前後方向で前記接続部に対向するようにして前記第2のケースの下端から下方に突出し、突出方向の下端が前記第1のケースの後部下端よりも下方に位置していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用動力伝達装置。
【請求項4】
前記接続部は、車両の幅方向で前記第2のケースと重なる位置で、かつ、上下方向で前記第1のケースの下部と前記第2のケースの間に設置されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両用動力伝達装置。
【請求項5】
前記第2のケースは、リブを有し、
前記リブは、前記接続部の上方に位置する前記第2のケースの外周壁から車両の幅方向の外方に突出し、前記接続部の上方を覆っていることを特徴とする請求項4に記載の車両用動力伝達装置。
【請求項6】
前記第2のケースの上部に車幅方向に延びるシフトアンドセレクト軸を収容するシフトケースが取付けられており、
前記第2のケースの前後方向の長さは、前記シフトケースの前後方向の長さと同程度の長さに形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両用動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
摩擦要素に油圧を供給する油圧供給装置を備えた車両用自動変速機として、特許文献1に記載されるものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載される車両用自動変速機は、ケースと、ケースの下部に設けられたオイルパンと、オイルパンに収容されたバルブボディと、オイルパンに貯留されたオイルの温度を検出する油温検出器とを備えている。
【0004】
油温検出器は、ワイヤハーネスを介してコネクタに電気的に接続されており、コネクタは、ケースの上部に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車両用自動変速機をFR(フロントエンジン・リヤドライブ)車両に適用した場合には、車両用自動変速機がフロアパネルの下方に設置されることになる。この場合には、コネクタがフロアパネルとケースの間に位置する。
【0007】
このため、コネクタを車両の下方から視認することが困難な上に、コネクタに下方からアクセスすることが困難となり、コネクタに配線を接続する作業やコネクタや配線の交換作業の作業性が悪化する。
【0008】
これに対して、コネクタをケースの下部に設置すれば、コネクタを下方から容易に視認できる上に、コネクタに下方から容易にアクセスすることができ、コネクタに配線を接続する作業等の作業性を向上できる。
【0009】
しかしながら、コネクタをケースの下部に設置すると、車両の悪路走行時にコネクタが岩等の障害物に衝突して過大な荷重を受けるおそれがある。
【0010】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、車両の悪路走行時に接続部を保護しつつ、接続部に配線を接続する作業等の作業性を向上できる車両用動力伝達装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ケース部材と、前記ケース部材に設置された油圧制御部品と、前記油圧制御部品に電気的に接続される接続部とを有する車両用動力伝達装置であって、前記ケース部材は、第1のケースと、前記第1のケースの後方に設置され、前記第1のケースに連結される第2のケースと、前記第2のケースの後方に設置され、前記第2のケースに連結される第3のケースとを有し、前記第2のケースは、前記第3のケース側の後端部において前記第2のケースの下端から下方に突出する突出部を有し、前記第1のケースの下端と前記第3のケースの下端は、前記突出部を除いた前記第2のケースの下端よりも下方に位置しており、前記第1のケースの後壁面は、前記第3のケースの前壁面に前後方向で対向しており、前記油圧制御部品は、前記第1のケースの内部において前記第1のケースの下部に設置されており、前記接続部は、少なくとも前記接続部の下端が前記突出部を除いた前記第2のケースよりも低い位置に位置して前記第1のケースの前記後壁面に取付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
このように上記の本発明によれば、車両の悪路走行時に接続部を保護しつつ、接続部に配線を接続する作業等の作業性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る車両用動力伝達装置の左側面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る車両用動力伝達装置の下面図である。
【
図3】
図3は、
図1のセンタケースとその周辺の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施の形態に係る車両用動力伝達装置は、ケース部材と、ケース部材に設置された油圧制御部品と、油圧制御部品に電気的に接続される接続部とを有する車両用動力伝達装置であって、ケース部材は、第1のケースと、第1のケースの後方に設置され、第1のケースに連結される第2のケースと、第2のケースの後方に設置され、第2のケースに連結される第3のケースとを有し、第1のケースの下端と第3のケースの下端は、第2のケースの下端よりも下方に位置しており、第1のケースの後壁面は、第3のケースの前壁面に前後方向で対向しており、油圧制御部品は、第1のケースの内部において第1のケースの下部に設置されており、接続部は、少なくとも接続部の下端が第2のケースよりも低い位置に位置して第1のケースの後壁面に取付けられている。
【0015】
これにより、本発明の一実施の形態に係る車両用動力伝達装置は、車両の悪路走行時に接続部を保護しつつ、接続部に配線を接続する作業等の作業性を向上できる。
【実施例】
【0016】
以下、本発明の一実施例に係る車両用動力伝達装置について、図面を用いて説明する。
図1から
図4は、本発明の一実施例に係る車両用動力伝達装置を示す図である。
図1から
図4において、上下前後左右方向は、車両に設置された状態の車両用動力伝達装置を基準とし、車両の前後方向を前後方向、車両の左右方向(車両の幅方向)を左右方向、車両の上下方向(車両の高さ方向)を上下方向とする。
【0017】
まず、構成を説明する。
図1、
図2において、車両1には変速機2が搭載されており、変速機2は、エンジン3に接続された状態で車両1のフロアパネル1Aの下方に縦置きに設置されている。本実施例の車両1は、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)車両である。
【0018】
変速機2は変速機ケース4を備えており、変速機ケース4は、フロントケース5と、センタケース6と、リヤケース7と、エクステンションケース8とを備えている。実施例の変速機2は、本発明の車両用動力伝達装置を構成し、変速機ケース4は、本発明のケース部材を構成する。
【0019】
フロントケース5の前端部には図示しないボルトによって内燃機関としてのエンジン3が接続されている。エンジン3は、燃料の燃焼を行い、熱エネルギーを機械的エネルギーに変換する。
【0020】
センタケース6は、フロントケース5の後方に設置されており、ボルト31Aによってセンタケース6に連結されている。
【0021】
リヤケース7は、センタケース6の後方に設置されており、ボルト31Bによってセンタケース6に連結されている。エクステンションケース8は、リヤケース7の後方に設置されており、ボルト31Cによってリヤケース7に連結されている。
【0022】
すなわち、フロントケース5、センタケース6、リヤケース7およびエクステンションケース8は、前側から後側に向かって前後方向に並んで設置されている。
【0023】
図4に示すように、センタケース6の前端部には隔壁6Wが設けられており、フロントケース5の間の空間とセンタケース6の内部の空間は、隔壁6Wによって仕切られている。
【0024】
変速機ケース4の内部には図示しないトルクコンバータと、摩擦クラッチ20と(
図4参照)、図示しない変速機構とが収容されている。トルクコンバータは、エンジン3から動力が伝達される流体継手であり、変速機構は、トルクコンバータから伝達される動力(回転速度)を変速して出力する。
【0025】
摩擦クラッチ20は、前後方向でトルクコンバータと変速機構の間に設置されており、エンジン3の動力を変速機構に伝達し、また、変速機構に伝達することを遮断する。
【0026】
本実施例の変速機2において、トルクコンバータおよび摩擦クラッチ20は、フロントケース5に収容されており、変速機構は、センタケース6、リヤケース7およびエクステンションケース8に収容されている。
【0027】
図4に示すように、変速機構は、例えば、図示しない複数の入力ギヤを有する入力軸9と、入力ギヤに噛み合う図示しない複数のカウンタギヤを有するカウンタ軸10を備えている。
【0028】
変速機構は、エンジン3の動力を入力軸9から入力ギヤおよびカウンタギヤを介してカウンタ軸10に伝達し、カウンタ軸10から図示しない出力軸を介して図示しないディファレンシャル装置に伝達する。入力軸9は、センタケース6の隔壁6Wに回転自在に支持されている。
【0029】
トルクコンバータには図示しないロックアップクラッチが設けられており、ロックアップクラッチは、ロックアップクラッチ締結用のオイルが供給されると、エンジンの動力を、流体を介さずに入力軸9に伝達する。
【0030】
ロックアップクラッチは、ロックアップクラッチ解除用のオイルが供給されると、エンジン3の動力を、流体を介して入力軸9に伝達する。
【0031】
図1に示すように、フロントケース5の下部にはオイルパン11が設けられており、オイルパン11にはバルブボディ12が収容されているとともに、オイルが貯留されている。オイルパン11の外周縁にはフランジ部11Aが形成されている(
図2参照)。
【0032】
フロントケース5の下部にはオイルパン締結部5Cが形成されており、オイルパン締結部5Cは、バルブボディ12の周囲を取り囲むようにしてフロントケース5の底壁5cから下方に突出している。フランジ部11Aは、ボルト21によってオイルパン締結部5Cの下部に締結されている。
【0033】
バルブボディ12は、フロントケース5の底壁5cに図示しないボルトによって締結されている。
【0034】
フロントケース5の底壁5cとオイルパン締結部5Cとオイルパン11とによって囲まれる空間は、バルブボディ室を構成しており、バルブボディ12は、バルブボディ室に設置されている。すなわち、本実施例のバルブボディ12は、フロントケース5の下部に設置されている。
【0035】
なお、フロントケース5には図示しないブリーザ室が形成されている。ブリーザ室は、バルブボディ室よりも上方に形成されており、バルブボディ室に連通している。そして、バルブボディ12の一部は、ブリーザ室に設置されている。
【0036】
本実施例のフロントケース5およびオイルパン11は、本発明の第1のケースを構成し、センタケース6は、本発明の第2のケースを構成する。リヤケース7は、本発明の第3のケースを構成する。
【0037】
バルブボディ12は、いずれも図示しないレギュレータ、ロックアップバルブおよび電磁ソレノイド等を備えている。
【0038】
バルブボディ12は、レギュレータによってオイルパンに貯留されるオイルを調圧する。 バルブボディ12は、電磁ソレノイドによってロックアップバルブが駆動されると、ロックアップバルブによっていずれも図示しないロックアップクラッチ締結用の油路またはロックアップクラッチ解除用の油路を選択するように切換えられる。
【0039】
電磁ソレノイドによってロックアップバルブが駆動され、ロックアップクラッチ締結用の油路が選択されると、レギュレータによって調圧されたオイルは、図示しないオイルポンプによってロックアップクラッチ締結用の油路を通してロックアップクラッチに供給される。これにより、ロックアップクラッチが締結され、エンジン3の動力がロックアップクラッチを介して入力軸9に伝達される。
【0040】
電磁ソレノイドによってロックアップバルブが駆動され、ロックアップクラッチ解除用の油路が選択されると、レギュレータによって調圧されたオイルは、オイルポンプによってロックアップクラッチ解除用の油路を通してロックアップクラッチに供給される。
【0041】
これにより、ロックアップクラッチが解除され、エンジン3の動力が流体を介して入力軸9に伝達される。本実施例のバルブボディ12は、本発明の油圧制御部品を構成する。
【0042】
フロントケース5、センタケース6およびリヤケース7の外径形状は、フロントケース5が最も大きく、センタケース6が最も小さく、リヤケース7がフロントケース5よりも小さく、かつ、センタケース6よりも大きい。
【0043】
図1、
図3に示すように、オイルパン11の下端11aとリヤケース7の下端7aは、センタケース6の下端6aよりも下方に位置している。
【0044】
図3に示すように、オイルパン11は、フロントケース5の下面の全体を覆っており、本実施例のオイルパン11の下端11aは、本発明の第1のケースの下端を構成する。以下、オイルパン11の下端11aをフロントケース5の下端11aという。
【0045】
フロントケース5の後壁面5aは、リヤケース7の前壁面7bに前後方向で対向している。フロントケース5の後壁面5aは、フロントケース5の後壁面5aとオイルパン11の後壁面を含む。
【0046】
フロントケース5にはコネクタ13が取付けられている。コネクタ13は、その下端13aがセンタケース6の下端6aよりも低い位置に位置しており、フロントケース5の後壁面5aに取付けられている。コネクタ13の下端13aは、本発明の接続部の下端を構成する。なお、コネクタ13は、全体的にセンタケース6の下端6aよりも低い位置に位置してもよい。
【0047】
コネクタ13は、ワイヤハーネス16を介してバルブボディ12のバルブソレノイドに接続されており、ワイヤハーネス16を介してバルブボディ12に電気的に接続されている。
【0048】
コネクタ13には、図示しない外部ワイヤハーネスのコネクタが接続される。外部ワイヤハーネスは、図示しないECM(Engine Control Module)等の制御回路に接続されており、バルブボディ12は、制御回路によって制御される。本実施例のコネクタ13は、本発明の接続部を構成する。
【0049】
図2、
図3に示すように、センタケース6は、膨出部6Aを有する。膨出部6Aは、前後方向でコネクタ13に対向するリヤケース7の前壁面7b側からコネクタ13に向かって膨出している。
【0050】
リヤケース7にはパーキングロック機構が収容されており、パーキングロック機構の一部は、膨出部6Aに収容されている。
【0051】
センタケース6は、突出部6Bを有する。突出部6Bは、前後方向でコネクタ13に対向するようにしてセンタケース6の下端6aから下方に突出しており、突出方向の下端6uがオイルパン11の後部下端5u、すなわち、フロントケース5の後部下端5uよりも下方に位置している。
【0052】
図4に示すように、コネクタ13は、車両1の幅方向(以下、単に車幅方向という)でセンタケース6に重なる位置に設置されており、上下方向でフロントケース5の下端11aとセンタケース6の間に設置されている。
【0053】
センタケース6は、リブ6Cを有する。リブ6Cは、コネクタ13の上方に位置するセンタケース6の外周壁6bから車幅方向の外方(左方)に突出しており、コネクタ13の上方を覆っている。
【0054】
図1、
図3に示すように、センタケース6の上部にはシフトケース14が取付けられており、シフトケース14にはシフトアンドセレクト軸15が収容されている。シフトアンドセレクト軸15は、車幅方向に延びており、シフトケース14に回転自在、かつ、軸方向に移動自在に支持されている。
【0055】
シフトアンドセレクト軸15は、図示しない変速用のシフトヨークを選択的に作動させ、いずれも図示しないシフト軸、シフトフォークおよび同期装置を介して、例えば、入力軸9と相対回転自在で所定の変速段を成立可能な入力ギヤを入力軸9に連結させる。
【0056】
所定の変速段を成立可能な入力ギヤが入力軸9に連結されると、エンジン3の動力が入力ギヤ、同期装置、入力軸9およびカウンタギヤを介してカウンタ軸10に伝達される。
【0057】
図3に示すように、シフトケース14の前後方向の長さL1は、センタケース6の前後方向の長さL2よりも僅かに短い長さに形成されており、シフトケース14の前後方向の長さL1とセンタケース6の前後方向の長さL2は、同程度の長さとなっている。ここでいう、同程度とは、シフトケース14の前後方向の長さL1とセンタケース6の前後方向の長さL2が同じである場合も含む。
【0058】
本実施例のシフトアンドセレクト軸15は、軸方向が車幅方向に延びるようにセンタケース6の上部に設置されているので、センタケース6の上部に取付けられるシフトケース14の前後方向の長さを短くできる。
【0059】
このため、センタケース6の前後方向の長さをフロントケース5とリヤケース7の前後方向の長さよりも短くでき、センタケース6の外径をフロントケース5とリヤケース7の外径よりも小さくできる。
【0060】
図3に示すように、オイルパン11のフランジ部11Aの後端11rは、フロントケース5の後壁面5aからリヤケース7の前壁面7b側に突出している。突出部6Bの前面6fとオイルパン11のフランジ部11Aの後端11rの前後方向の距離L3は、シフトケース14の前後方向の長さL1とセンタケース6の前後方向の長さL2よりも小さくなっている。詳しくは、L2>L1>L3の関係となっている。
【0061】
次に、本実施例の変速機2の効果を説明する。
本実施例の変速機2は、変速機ケース4を有し、変速機ケース4は、フロントケース5と、フロントケース5の下部に連結されるオイルパン11と、フロントケース5の後方に設置され、フロントケース5に連結されるセンタケース6と、センタケース6の後方に設置され、センタケース6に連結されるリヤケース7とを有する。
【0062】
フロントケース5の下端11aとリヤケース7の下端7aは、センタケース6の下端6aよりも下方に位置しており、フロントケース5の後壁面5aは、リヤケース7の前壁面7bに前後方向で対向している。
【0063】
これに加えて、バルブボディ12は、フロントケース5の下部に設置されており、コネクタ13は、下端13aがセンタケース6よりも低い位置に位置してフロントケース5の後壁面5aに取付けられている。
【0064】
これにより、車両1の下方からコネクタ13を視認し易い上に、下方からコネクタ13に容易にアクセスできる。このため、オイルパン11をフロントケース5から取り外してバルブボディ12をメンテナンスする作業やワイヤハーネス16の交換やメンテナンスをする作業等の作業性を向上できる。
【0065】
これに加えてコネクタ13を交換する作業、コネクタ13に外部ワイヤハーネスのコネクタを接続する作業、あるいは外部ワイヤハーネスを交換する作業等の作業性を向上できる。
【0066】
また、コネクタ13を変速機ケース4のくびれ部、すなわち、フロントケース5の後壁面5aとセンタケース6の下端6aとリヤケース7の前壁面7bとによって囲まれた空間18に設置できる。
【0067】
このため、車両1の悪路走行時に道路上の岩や飛び石等の障害物がコネクタ13に干渉する前に、フロントケース5の下端11aとリヤケース7の下端7aに衝突させることにより、障害物がコネクタ13に干渉することを抑制でき、コネクタ13に外力が加わることを防止できる。このため、コネクタ13を保護できる。
【0068】
また、本実施例の変速機2によれば、センタケース6は、膨出部6Aを有し、膨出部6Aは、前後方向でコネクタ13に対向するリヤケース7の前壁面7b側からコネクタ13に向かって膨出している。
【0069】
これにより、
図2に示すように、変速機2を下方から見た場合に膨出部6Aとフロントケース5の後壁面5aの間の前後方向の隙間を小さくして、コネクタ13が設置される空間18を狭くできる。
【0070】
このため、障害物がコネクタ13に干渉することをより効果的に抑制でき、コネクタ13をより効果的に保護できる。
【0071】
これに加えて、膨出部6Aによってリヤケース7の前壁面7bの剛性を向上でき、前壁面7bに連続するリヤケース7の下端7aの剛性を膨出部6Aによって向上できる。
【0072】
すなわち、コネクタ13よりも下方に位置することによりコネクタ13よりも障害物に干渉し易い前壁面7b側のリヤケース7の下端7aの剛性を、膨出部6Aによって向上できる。
【0073】
したがって、障害物がリヤケース7の下端7aに衝突したときに、前壁面7b側のリヤケース7の下端7aが変形することを抑制して、障害物がコネクタ13に干渉することをより効果的に抑制でき、コネクタ13をより効果的に保護できる。
【0074】
また、本実施例の変速機2によれば、リヤケース7は、突出部6Bを有し、突出部6Bは、前後方向でコネクタ13に対向するようにしてセンタケース6の下端6aから下方に突出し、突出方向の下端6uがフロントケース5の後部下端5uよりも下方に位置している。
【0075】
これにより、車両1の悪路走行時において障害物がコネクタ13に衝突する前に突出部6Bに衝突させ、障害物がコネクタ13に干渉することをより効果的に防止でき、コネクタ13をより効果的に保護できる。
【0076】
これに加えて、突出部6Bによってリヤケース7の前壁面7bの剛性を向上でき、前壁面7bに連続するリヤケース7の下端7aの剛性を突出部6Bによって向上できる。
【0077】
すなわち、コネクタ13よりも下方に位置することによってコネクタ13よりも障害物に干渉し易い前壁面7b側のリヤケース7の下端7aの剛性を突出部6Bによって向上できる。
【0078】
したがって、障害物がリヤケース7の下端7aに衝突したときに、前壁面7b側のリヤケース7の下端7aが変形することを抑制して、障害物がコネクタ13に干渉することをより効果的に抑制でき、コネクタ13をより効果的に保護できる。
【0079】
また、本実施例の変速機2によれば、コネクタ13は、車幅方向でセンタケース6と重なる位置で、かつ、上下方向でフロントケース5の下端11aとセンタケース6の間に設置されている。
【0080】
これにより、フロントケース5の後壁面5aとセンタケース6の下端6aとリヤケース7の前壁面7bとによって囲まれた空間18の車幅方向の中央側にコネクタ13を設置できる。
【0081】
このため、車両1の悪路走行時に障害物がコネクタ13に干渉する前に、障害物をフロントケース5の下端11aとリヤケース7の下端7aに衝突させることにより、障害物がコネクタ13に干渉することをより効果的に抑制でき、コネクタ13をより効果的に保護できる。
【0082】
また、コネクタ13の上方をセンタケース6によって覆うことができるので、雨天走行時等に、フロアパネル1Aの下方において変速機ケース4の上方から滴下される水W(
図4参照)をセンタケース6で遮り、コネクタ13に到達することを抑制できる。このため、コネクタ13が被水することを抑制して、水からコネクタ13を保護できる。
【0083】
また、本実施例の変速機2によればセンタケース6は、リブ6Cを有し、リブ6Cは、コネクタ13の上方に位置するセンタケース6の外周壁6bから車幅方向の外方に突出し、コネクタ13の上方を覆っている。
【0084】
これにより、コネクタ13の上方をリブ6Cによって覆うことができるので、雨天走行時等に、フロアパネル1Aの下方において変速機ケース4の上方から滴下される水Wをリブ6Cで遮り(
図4参照)、コネクタ13に到達することをより効果的に抑制できる。このため、コネクタ13が被水することを抑制して、水からコネクタ13を保護できる。
【0085】
また、本実施例の変速機2によれば、センタケース6の上部に車幅方向に延びるシフトアンドセレクト軸15を収容するシフトケース14が取付けられており、センタケース6の前後方向の長さL2は、シフトケース14の前後方向の長さL1と同程度の長さに形成されている。
【0086】
これにより、センタケース6の上部に取付けられるシフトケース14の前後方向の長さを短くでき、センタケース6の前後方向の長さをフロントケース5とリヤケース7の前後方向の長さよりも短くできる。
【0087】
このため、フロントケース5の後壁面5aとリヤケース7の前壁面7bの前後方向の隙間をより一層小さくして、コネクタ13が設置される空間18をより一層狭くできる。
【0088】
この結果、障害物がコネクタ13に干渉することをより効果的に抑制でき、コネクタ13をより効果的に保護できる。
【0089】
また、本実施例の変速機2によれば、オイルパン11のフランジ部11Aの後端11rがフロントケース5の後壁面5aから前壁面7b側に突出しているので、コネクタ13の下方の一部をフランジ部11Aによって覆うことができる。
【0090】
このため、障害物がコネクタ13に衝突することをフランジ部11Aによって抑制でき、コネクタ13をより効果的に保護できる。
なお、本実施例の車両用動力伝達装置は、変速機に適用されているが、変速機に限定されるものではない。
【0091】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0092】
1...車両、2...変速機(車両用動力伝達装置)、4...変速機ケース(ケース部材)、5...フロントケース(第1のケース)、5a...後壁面(第1のケースの後壁面)、5u...後部下端(第1のケースの後部下端)、6...センタケース(第2のケース)、6A...膨出部、6a...下端(第2のケースの下端)、6B...突出部、6b...外周壁(第2のケースの外周壁)、6C...リブ、7...リヤケース(第3のケース)、6u...下端(突出部の突出方向の下端)、7a...下端(第3のケースの下端)、7b...前壁面(第3のケースの前壁面)、11...オイルパン(第1のケース)、11a...下端(第1のケースの下端)、12...バルブボディ(油圧制御部品)、13...コネクタ(接続部)、13a...下端(接続部の下端)、14...シフトケース、15...シフトアンドセレクト軸