(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】X線検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/046 20180101AFI20240611BHJP
【FI】
G01N23/046
(21)【出願番号】P 2020115517
(22)【出願日】2020-07-03
【審査請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠原 啓雅
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-041957(JP,A)
【文献】特開2008-164612(JP,A)
【文献】特開2010-112833(JP,A)
【文献】国際公開第2010/137257(WO,A1)
【文献】特開2011-209054(JP,A)
【文献】国際公開第2017/077627(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-G01N 23/2276
G01B 15/00-G01B 15/08
A61B 6/00-A61B 6/58
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を用いて撮像することにより対象物を検査するX線検査装置であって、
前記対象物のX線画像を撮像する時間を含み、所定の撮像条件のもとで前記対象物を検査する際に要する時間である検査時間に関する条件の
ユーザからの入力を受け付ける検査時間条件取得部と、
前記撮像条件を特定する複数の撮像パラメータからなる撮像パターンであって、前記検査時間に関する条件に関連付けられた撮像パターンを記憶する撮像条件記憶部と、
前記入力された前記検査時間に関する条件に関連付けられた前記撮像パターンに基づいて撮像されたX線画像から画質を判定するための判定用画像を取得する判定用画像取得部と、
前記判定用画像の画質を計測する画質計測部と、
計測された前記判定用画像の画質が判定基準を満たすか否かを判定する画質判定部と、を備え、
前記画質判定部は、前記判定基準を満たすと判定された前記判定用画像を取得する際の前記X線画像に対する前記撮像パターンに含まれる前記撮像パラメータを
前記撮像条件と決定することを特徴とするX線検査装置。
【請求項2】
前記検査時間に関する条件は、
前記ユーザに提示された所定の前記検査時間に対して、前記検査時間が変動するか又は変動しないかを含むことを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記検査時間に関する条件は、前記判定基準を満たすと判定された前記判定用画像を生成する際の前記X線画像に対する前記撮像パターンに関連付けられた前記検査時間のうち、最短の前記検査時間に関連付けられた前記撮像パターンに含まれる前記撮像パラメータを
前記撮像条件と決定することである請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記検査時間に関する条件は、前記検査時間として時間又は範囲を特定することである請求項1に記載のX線検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線の透過又はCT(Computer Tomography)を用いるX線検査装置に関す
る。
【背景技術】
【0002】
従来、X線の透過又はCTを用いるX線検査装置においては、撮像条件の設定項目が多く、作業に手間がかかっていた。また、経験の浅いユーザには、最適な条件設定を判断することも難しかった。
【0003】
そこで、X線CT装置における撮像条件の設定について、特許文献1に記載のような技術が提案されている。ここでは、ユーザは、モニタの撮像条件設定画面を通して、検査対象物の樹脂等の材質や、コントラスト及び画角という画質に関する2次元の指標のような簡単な入力を求められる。そして、この撮像条件設定画面を通してユーザが入力した情報に基づいて予めプリセットされた撮像条件を選択し、選択された撮像条件に対応したプレビュー画像をモニタに表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の技術では、ユーザが撮像条件に関する情報を入力する際に、検査時間(タクトタイム)については言及されていない。X線検査装置においては、検査時間は重要なファクターである。X線検査装置による検査工程を経て製品を出荷するように構成されたラインであれば、X線検査装置による1日当たりの検査可能な数によって、1日当たりの出荷数が制限されてしまうからである。
【0006】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、適切な検査時間で良好な画質が得られる撮像条件を簡便に設定できるX線検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための本発明は、
X線を用いて撮像することにより対象物を検査するX線検査装置であって、
検査時間に関する条件の入力を受け付ける検査時間条件取得部と、
撮像条件を特定する複数の撮像パラメータからなる撮像パターンであって、前記検査時間に関する条件に関連付けられた撮像パターンを記憶する撮像条件記憶部と、
前記入力された前記検査時間に関する条件に関連付けられた前記撮像パターンに基づいて撮像されたX線画像から画質を判定するための判定用画像を取得する判定用画像取得部と、
前記判定用画像の画質を計測する画質計測部と、
計測された前記判定用画像の画質が判定基準を満たすか否かを判定する画質判定部と、を備え、
前記画質判定部は、前記判定基準を満たすと判定された前記判定用画像を生成する際の前記X線画像に対する前記撮像パターンに含まれる前記撮像パラメータを撮像条件と決定することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、検査時間条件取得部により、検査時間に関する条件の入力が受け付けられる。そして、入力された検査時間に関する条件に関連付けられた撮像パターンに基づいて撮像されたX線画像から判定用画像を取得し、判定用画像の計測された画質が判定基準を満たす場合に、判定用画像を取得する際のX線画像に対する撮像パターンに含まれる撮像パラメータを撮像条件として決定する。このため、本発明によれば、検査時間に関する条件を入力することができるので、画質が良好な画像が得られるだけではなく、検査時間が適切なものとなる撮像条件を簡便に設定することができるX線検査装置を提供することができる。
【0009】
また、本発明において、
前記検査時間に関する条件は、前記検査時間が変動するか又は変動しないかを含むようにしてもよい。
【0010】
プリセットされた撮像条件に対応する検査時間のような基準となる所定の検査時間をユーザに提示し、このような所定の検査時間から検査時間が変動する範囲で撮像条件を設定するか、変動しない範囲で撮像条件を設定するかを選択させることができる。このように、検査時間に関する条件して、検査時間が変動するか又は検査時間が変動しないかを入力させることにより、検査時間を重視する場合と、画質を重視する場合のそれぞれの要求を満たす撮像条件の設定を簡便に行うことができる。ここで、検査時間が変動しない場合には、所定の検査時間以下の時間を含む範囲での変動は許容する、すなわち、所定の検査時間を上限と考えて、この上限を超えないような変動は許容するようにしてもよい。検査時間が変動する場合は、所定の検査時間以上の時間となる場合と、所定の検査時間以下の時間となる場合の両者を許容するようにしてもよい。
【0011】
また、本発明において、
前記検査時間に関する条件は、前記判定基準を満たすと判定された前記判定用画像を生成する際の前記X線画像に対する前記撮像パターンに関連付けられた前記検査時間のうち、最短の前記検査時間に関連付けられた前記撮像パターンに含まれる前記撮像パラメータを撮像条件と決定することであるようにしてもよい。
【0012】
このようにすれば、判定基準を満たす撮像条件のうち、検査時間が最短となるような撮像条件を簡便に設定することができる。
【0013】
また、本発明は、
前記検査時間に関する条件は、前記検査時間として時間又は範囲を特定することであるようにしてもよい。
【0014】
このようにすれば、検査時間が特定の時間や特定の時間範囲となり、良好な画質が得られる撮像条件を簡便に設定することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、適切な検査時間で良好な画質が得られる撮像条件を簡便に設定できるX線検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例1に係るX線検査装置の機能ブロック図である。
【
図2】本発明の実施例1に係るX
線検査装置の撮像条件自動設定処理の手順を説明するフローチャートである。
【
図3】本発明の実施例1に係る外部要件UIを例示する図である。
【
図4】本発明の実施例1に係るUIを例示する図である。
【
図5】プロジェクション数と画質との関係を示す図である。
【
図6】プロジェクション数と画質との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔適用例〕
以下、本発明の適用例について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
まず、本発明の背景となるCTを用いたX線検査装置(「X線CT装置」ともいう。)における撮像条件の設定について説明する。
【0019】
X線CT装置は、複数(例えば15枚~500枚程度)の投影データを用いて再構成処理を行ってCT画像を取得する。X線CT装置によってCT撮像を行う場合には、CT撮像が終了し、かつ再構成処理が終了した後でないと、再構成画像が最適な画像であるか否かを確認することができない。従って、CT撮像条件が適切でなかった場合には、CT撮像及び再構成処理を最初からやり直さなければならない。CT撮像を再度行ったとしても、再設定されたCT撮像条件が最適であるか否かは、再撮像後の再構成画像を確認しないとわからず、場合によっては、最適な再構成画像が得られるまでCT撮像を何回も繰り返さなければならない。
【0020】
このようなX線CT装置では、さまざまな材質や構造を撮像対象とし、画像に求められる分解能(空間分解能や濃度分解能)、撮像時間もさまざまであるので、撮像条件の自由度が高く、表1の左欄に記載された、角度、管電圧、管電流、露光時間、プロジェクション数、分解能のような撮像条件を対象物ごとに設定する必要がある。
【表1】
【0021】
上述の撮像パラメータのうち、プロジェクション数を変更した場合の画質の違いを示す。ただし、管電圧、管電流及び露光時間は変更せず、コントラストが同じになるように設定している。
図5(A)~
図5(H)は、プロジェクション数をそれぞれ1、2、4、8、16、32、64、128と設定した場合の撮像画像を示す。
図6は、このプロジェクション数と画質との関係を示すグラフである。ここでは、縦軸の画質の数値は、信号レベルと雑音レベルの比をパーセンテージで評価した数値を示す。
図5(A)~
図5(D)から分かるように、プロジェクション数の増加に応じて、画質が向上しているが、
図5(E)~
図5(H)から分かるようにプロジェクション数が16を超えると、プロジェクション数が増加しても画質はさほど向上しない。このことは、
図6からも明らかであり、プロジェクション数に応じて画質は指数関数的に向上するが、ある程度プロジェクション数が増加すると画質は収束する傾向にある。一方で、プロジェクション数の増加に比例して、タクトタイムも延びる。
【0022】
上述のように、X線CT装置において、撮像条件によっては検査時間(タクトタイム)
が延びる可能性があるため、本発明では、最適な画質と検査時間とをバランスよく実現できるよう撮像条件を設定する。
【0023】
図1は、本発明が適用されるX線検査装置1の機能ブロック図であり、
図2は、X線検査装置1における撮像条件自動設定処理のフローチャートである。
【0024】
X線検査装置は、外部要件UI131を含む。この外部要件UI131は、
図3に示すように、検査時間が変動しないか検査時間が変動するかを選択して入力できるように構成されている。検査時間が変動しないを選択すると(ステップS1)、撮像条件記憶部11
4に記憶された設定条件のうち、検査時間が変動しない撮
像パターンが順次設定される(ステップS3)。そして、それぞれの撮像条件に従って撮像されたX線画像から検査対象物の三次元データ再構成される(ステップS4、S5)。三次元データから取得された判定用画像について画質が計測され(ステップS6、S7)、判定基準を満たすか否かが判定される(ステップS8)。そして、判定基準を満たすと判定された判定用画像に対応する撮像条件を、検査に使用する撮像条件に決定する(ステップS10)。
【0025】
このように、本発明によれば、適切な検査時間で最適な画質が得られる撮像条件を簡便に設定できる。
【0026】
〔実施例1〕
以下では、本発明の実施例1に係るX線検査装置1について、図面を用いて、より詳細に説明する。ただし、この実施の形態に記載されている装置の構成は各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0027】
<装置構成>
図1は、X線検査装置1の概略構成を示す機能ブロック図である。ここでは、X線のCT画像を用いるX線検査装置について説明する。
X線検査装置1は、検査対象物を、複数の撮像位置から撮像して3次元データを取得する装置であり、主として、撮像部11、演算部12、UI部13及びバス14を含んで構成される。バス14は、各部を接続してデータが送受信される伝送路である。
【0028】
撮像部11は、X線発生器111、X線検出器112、ステージ113及び撮像条件記憶部114を含む。
X線発生器111は、検査対象物に対してX線を照射する装置である。
X線検出器112は、X線発生器111から出力され、検査対象物を透過したX線を検出して画像化する2次元X線検出器であり、例えば、I.I.(Image Intensifier)管
やFPD(フラットパネルディテクタ)を用いることができる。
ステージ113は、検査対象物を複数の撮像位置から撮像するために、X線発生器111、X線検出器112及び検査対象物の全部又は一部のX方向、Y方向及びZ方向の相対位置を変更する機構である。
撮像条件記憶部114は、メモリ(例えば、後述する補助記憶部によって構成される)の所定領域であり、撮像条件を、当該撮像条件のもとで検査を行ったときの検査時間と関連付けて記憶している。
【0029】
演算部12は、三次元データ作成部121、Z位置取得部122、XY位置取得部123、判定用画像取得部124、画質計測部125、画質判定部126及びXYZ位置情報記憶部127を含む。演算部12は、X線CTの計算や検査処理などの各種演算を行う装置であり、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)のような論理回路により構成されてもよい。また、CPU(中
央演算処理装置)と呼ばれる一般的な汎用演算装置、主記憶部及び補助記憶部を用いることができる。主記憶部としてRAMなどのメモリを用いることができる。補助記憶部にはROMやHDDやSSDなどを用いることができる。
【0030】
三次元データ作成部121は、X線検出器112によって撮像された複数のX線透過画像から三次元データを生成する機能部である。
Z位置取得部122は、三次元データ作成部121によって生成された三次元データのZ位置を取得する機能部である。
XY位置取得部123は、三次元データ作成部121によって生成された三次元データのうち、Z位置取得部122によって取得された領域のXY位置を取得する機能部である。
判定用画像取得部124は、XYZ位置情報記憶部127から取得されたXYZ位置情報に基づいて、三次元データ作成部121によって作成された三次元データの対応する領域の画像について、画質を判定するための判定用画像を取得する機能部である。
画質計測部125は、判定用画像取得部124において取得された判定用画像について、画質を計測する機能部である。
画質判定部126は、判定用画像取得部124において取得された判定用画像について、画質計測部125における計測結果に基づいて、画質が判定基準を満たすか否かを判定する機能部である。
XYZ位置情報記憶部127は、メモリ(例えば、補助記憶部によって構成される)の所定領域であり、UI部13を通じて、画質を判定するための画像の、検査対象物の三次元データにおけるXYZ位置情報を記憶している。
【0031】
UI部13は、外部要件UI131、XYZ位置UI132、検査対象部品(領域)位置UI133及び結果表示UI134を含む。UI部13は、ユーザとX線検査装置の間で種々の情報の授受を行うインタフェースであり、例えば、入出力部を兼ねたタッチパネルディスプレイに表示されてもよいし、独立に構成されたディスプレイ等の出力部に表示され、マウス、キーボード等の入力部による入力を受け付けるものであってもよい。
外部要件UI131は、外部要件として、検査時間に関する条件の入力を受け付けるユーザインタフェースであり、例えば、
図3に示すようなユーザインタフェースによって構成される。ここでは、外部要件UI131が、本発明の検査
時間条件取得部に対応する。
XYZ位
置UI132は、検査対象物の三次元データのうち、画質判定に用いる領域のXYZ位置を入力するユーザインタフェースである。
検査対象部品(領域)位置UI133は、検査対象物のうちの検査対象となる部品(検査対象部品)又は検査対象となる領域(検査対象領域)の位置を入力するユーザインタフェースである。以下、検査対象部品及び/又は検査対象領域を「検査対象部品(領域)」と略記する。
結果表示UI134は、撮像条件の自動設定処理の結果を表示するユーザインタフェースである。
【0032】
<撮像条件自動設定処理>
次に、
図2を参照して、撮像条件自動設定処理の手順について説明する。
【0033】
撮像条件の自動設定処理に先立って、検査対象物の撮像画像に対して、撮像画像に含まれる検査対象部品(領域)のそれぞれにウィンドウを設定する。ウィンドウを設定する際に、標準の撮像条件もプリセットされる。
【0034】
そして、ウィンドウを設定した検査対象部品(領域)のいずれかを選択し、自動設定ボタンを押下することによって、撮像条件の自動設定処理が開始する。このとき、後述する画質を計測する場所を決めてもよい。
【0035】
まず、ディスプレイに外部要件UI131を表示し、ユーザの入力を受け付ける(ステップS1)。このとき、例えば、図3に示すようなダイアログをディスプレイに表示する。ここには、撮像条件の自動設定であること案内する「自動調整」との表示に加えて、「検査時間が変動しない」及び「検査時間が変動する」のいずれかを選択するための2つのラジオボタンが表示される。「検査時間が変動しない」を選択した場合には、検査時間が変動しないような外部要件(撮像条件の調整パラメータ)が設定され、「検査時間が変動する」を選択した場合には、検査時間の変動を許容する外部要件が設定される。また、このとき、プリセットされた標準の撮像条件による検査時間(例えば、6.0秒)をダイアログの中又は外に表示する。ここで表示される検査時間は、検査領域全体に対するものであっても、検査対象部品だけに対するものであってもよい。そして、ダイアログには、「確定」ボタンと「キャンセル」ボタンが表示される。「確定」ボタンが押下されると、ユ
ーザのラジオボタンによる選択が、入力として確定する。「キャンセル」ボタンが押下されると、ユーザのラジオボタンによる選択がキャンセルされ、ラジオボタンの選択をやり直す。
【0036】
次に、検査対象物の三次元データのうち、画質を計測するための場所を設定する(ステップS2)。ウィンドウ設定時に決定している場合、又は、後の工程で設定する場合には、この工程は省略してもよい。
【0037】
次に、ステップS1において設定した外部条件に基づいて、撮像条件の自動設定処理に使用するX線撮像
パラメータの撮像パターンを設定する(ステップS3)。
撮像パターンを構成するX線撮像パラメータの例を表2に示す。
【表2】
【0038】
ここでは、X線撮像パラメータとして、角度、管電圧、管電流、露光時間、プロジェクション数、分解能が例示されているが、撮像条件の自動設定に使用するX線撮像パラメータはこれらに限られない。
【0039】
これらのX線撮像パラメータのうち、タクトタイムに影響を与えるものは、角度、露光時間、プロジェクション数及び分解能であり、タクトタイムに影響を与えないものは、管電圧及び管電流である。このうち、分解能を変更しても、解像度が変わるだけで画質には影響しないため、分解能は、撮像条件の自動設定には使用しない。ここでは、タクトタイムは、設定された撮像条件のもとで検査対象物を検査する際に要する時間(検査時間)である。
【0040】
ステップS1において、外部条件として、「検査時間が変動しない」が選択された場合には、管電圧及び管電流をX線撮像パラメータとして使用して、撮像条件の自動設定のための撮像パターンを設定する。
また、ステップS1において、外部条件として、「検査時間が変動する」が選択された
場合には、角度、管電圧、管電流、露光時間及びプロジェクション数をX線撮像パラメータとして使用して、撮像条件の自動設定のための撮像パターンを設定する。
撮像条件の自動設定ための撮像パターンは、これらに限られない。
【0041】
次に、後述するステップS4からステップS9までの処理を、全撮像パターンに対して繰り返す(ループL1)。このとき、全撮像パターンについて撮像を繰り返す際に、撮像パターンに含まれる複数の撮像パラメータをどのような優先順位で変更するかは、適宜設定することができるが、ステップS1において、「検査時間が変動する」を選択した場合であれば、角度、管電圧、管電流の順に、値を変更するようにしてもよい。
【0042】
一つの撮像パターンに対して、まず、X線発生器111及びX線検出器112を制御して、検査対象物のX線撮像を行う(ステップS4)。
【0043】
次に、三次元データ作成部121が、ステップS4において撮像されたX線画像に基づいて、三次元データを作成する(ステップS5)。
【0044】
次に、判定用画像取得部124が、ステップS2において設定された画質を計測する断層を特定するXYZ位置をXYZ位置情報記憶部127から取得し、XYZ位置に対応する画質判定用画像を抽出する(ステップS6)。ステップS2では、画質を計測する場所を特定するXYZ位置を設定しない場合には、この工程で設定してもよい。
【0045】
次に、画質計測部125が画質を計測する(ステップS7)。画質の計測方法は、特に限定されないが、例えば、SN比、平均二乗誤差(MSE)、詳細分散と背景分散等の適宜の方法を採用することできる。画質の計測には、自動設定処理に先立って設定したウィンドウを使用してもよい。
【0046】
次に、画質判定部126がステップS7における画質の計測結果について、画質について内部で設定された判定基準を満たしているか否かを判定する(ステップS8)。
【0047】
ステップS8において、画質が判定基準を満たしている場合には、ステップS10に進む。ステップS10では、画質判定部126が、ステップS8において基準を満たすと判断された撮像に対する撮像条件を、設定すべき撮像条件であると決定する。ステップS10において決定された撮像条件及び当該撮像条件での検査時間をダイアログ等の結果表示UI134の形でディスプレイに表示するとともに(ステップS11)その際の撮像条件及び検査時間を設定し、自動設定処理を終了する。
ステップS8において、画質が基準を満たしていない場合には、次の撮像パターンに対する処理に進み(ステップS9)、具体的には、X線撮像(ステップS4)以下の処理を繰り返す。
【0048】
すべての撮像パターンについて、ステップS8において画質が基準を満たさなかった場合には、画質判定部126は、
図4に示すようなダイアログをディスプレイに表示して、ユーザにその旨を報知する(ステップS12)。ここでは、「基準を満たしませんでしたが、最も画質が良い撮像条件を設定します。」とのメッセージとともに、「OK」ボタンが表示される。ここで、ユーザが「OK」ボタンを押下すると、最も画質が良い撮像条件が、設定すべき撮像条件であると決定され(ステップS13)、ステップS11と同様の処理が行われる。ユーザが「OK」ボタンを押下せずに所定時間が経過した場合には、自動設定処理を終了する。
【0049】
画角に、複数の検査対象部品(領域)が含まれる場合には、他の検査対象部品(領域)に対しても、同様に撮像条件を自動設定する。
【0050】
このように、本実施例に係るX線検査装置1では、適切な検査時間で最適な画質が得られる撮像条件を簡便に設定することができる。
【0051】
〔変形例〕
上述の実施例1では、外部要件UI131として、検査時間に関して、検査時間が変動するか、検査時間が変動しないか、を選択して入力できるようにしている。外部要件UI131によって入力し得る、検査時間に関する条件は、これに限られない。例えば、判定基準を満たす撮像条件が複数存在する場合に、検査時間が最短となる撮像条件を検査に使用する撮像条件に決定するようにしてもよい。また、検査時間が特定の時間又は特定の時間の範囲となるような条件を入力できるようにしてもよい。このようにすれば、ユーザの希望に沿った検査時間で良好な画質が得られる撮像条件を簡便に設定することができる。
【0052】
なお、以下には本発明の構成要件と実施例の構成とを対比可能とするために、本発明の構成要件を図面の符号付きで記載しておく。
<発明1>
X線を用いて撮像することにより対象物を検査するX線検査装置(1)であって、
検査時間に関する条件の入力を受け付ける検査時間条件取得部(131)と、
撮像条件を特定する複数の撮像パラメータからなる撮像パターンであって、前記検査時間に関する条件に関連付けられた撮像パターンを記憶する撮像条件記憶部(114)と、
前記入力された前記検査時間に関する条件に関連付けられた前記撮像パターンに基づいて撮像されたX線画像から画質を判定するための判定用画像を取得する判定用画像取得部(124)と、
前記判定用画像の画質を計測する画質計測部(125)と、
計測された前記判定用画像の画質が判定基準を満たすか否かを判定する画質判定部(127)と、
を備え、
前記画質判定部(126)は、前記判定基準を満たすと判定された前記判定用画像を取得する際の前記X線画像に対する前記撮像パターンに含まれる前記撮像パラメータを撮像条件と決定することを特徴とするX線検査装置(1)。
【符号の説明】
【0053】
1 :X線検査装置
114 :撮像条件記憶部
124 :判定用画像取得部
125 :画質計測部
126 :画質判定部
131 :外部要件UI