(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置におけるインク吐出タイミングの調整方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20240611BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
B41J2/165 207
B41J2/01 451
B41J2/01 401
(21)【出願番号】P 2020116785
(22)【出願日】2020-07-07
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三ヶ島 勝雄
(72)【発明者】
【氏名】黒川 悠一朗
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-299219(JP,A)
【文献】特開2007-144665(JP,A)
【文献】特開2011-213095(JP,A)
【文献】特開2007-168277(JP,A)
【文献】特開2005-119284(JP,A)
【文献】米国特許第09844961(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット記録装置におけるインク吐出タイミングの調整方法であって、
第1の読取モードで、搬送ベルトに形成された開口部を読み取って開口部情報を取得し、第2の読取モードで、前記搬送ベルト上に供給された記録媒体を読み取って記録媒体情報を取得する単一の読取センサーを用い、前記読取センサーにより、少なくとも前記記録媒体情報を取得する情報取得工程と、
前記記録媒体情報に基づいて検出される前記記録媒体の先端が、前記搬送ベルトの走行により、前記読取センサーによる読取位置を通過した時点から、前記読取センサーと記録ヘッドとの間を前記記録媒体が搬送される時間として予め設定された初期設定時間を経過した後に、前記記録ヘッドからインクを吐出させて、前記搬送ベルト上の前記記録媒体にテストパターンを印刷する印刷工程と、
前記テストパターンの印刷位置に基づいて入力される前記インクの吐出タイミングの補正値に対応する補正時間を前記初期設定時間に加えて、遅延時間を算出する算出工程と、
前記搬送ベルトの走行によって前記開口部が前記読取位置を通過した時点から所定時間経過後に、前記記録ヘッドが前記開口部に対するインクの吐出を開始するときの前記所定時間を、前記遅延時間に設定する設定工程と、を含むことを特徴とするインク吐出タイミングの調整方法。
【請求項2】
前記情報取得工程では、前記読取センサーの読取モードを、前記第1の読取モードと前記第2の読取モードとで交互に切り替えることを特徴とする請求項1に記載のインク吐出タイミングの調整方法。
【請求項3】
前記情報取得工程では、前記第1の読取モードと前記第2の読取モードとを、前記記録媒体に形成する画像の解像度を構成する1ドットの形成期間の整数倍ずつ、交互に切り替えることを特徴とする請求項2に記載のインク吐出タイミングの調整方法。
【請求項4】
前記情報取得工程では、前記第1の読取モードと前記第2の読取モードとを、前記1ドットの形成期間ずつ、交互に切り替えることを特徴とする請求項3に記載のインク吐出タイミングの調整方法。
【請求項5】
前記情報取得工程の前に、記録媒体検知センサーにより、前記搬送ベルトに供給される前記記録媒体を検知する検知工程をさらに含み、
前記情報取得工程では、前記記録媒体検知センサーでの前記記録媒体の検知結果に基づいて、前記第1の読取モードと前記第2の読取モードとを交互に切り替えることを特徴とする請求項2に記載のインク吐出タイミングの調整方法。
【請求項6】
前記情報取得工程では、前記記録媒体検知センサーでの前記記録媒体の検知結果に基づいて、前記読取センサーの前記読取位置を記録媒体が通過する前に、前記読取センサーの読取モードを前記第1の読取モードから前記第2の読取モードに切り替え、前記読取位置を前記記録媒体が通過した後に、前記読取モードを前記第2の読取モードから前記第1の読取モードに切り替えることを特徴とする請求項5に記載のインク吐出タイミングの調整方法。
【請求項7】
前記情報取得工程では、前記読取センサーの読取モードを前記第2の読取モードに固定して、前記記録媒体情報のみを取得し、
前記印刷工程では、前記記録媒体情報に基づいて認識される前記搬送ベルト上の前記記録媒体に対して、前記搬送ベルトの前記開口部に向かってインクを吐出するときの吐出パターンで前記記録ヘッドからインクを吐出させることにより、前記記録媒体に前記テストパターンを印刷することを特徴とする請求項1に記載のインク吐出タイミングの調整方法。
【請求項8】
前記情報取得工程では、前記読取センサーの読取モードに応じて、第1の光源および第2の光源の点灯を切り替え、
前記読取センサーは、前記第1の読取モードでは、前記第1の光源から出射されて前記開口部を透過した光を受光することにより、前記開口部情報を取得し、前記第2の読取モードでは、前記第2の光源から出射されて前記記録媒体で反射された光を受光することにより、前記記録媒体情報を取得することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のインク吐出タイミングの調整方法。
【請求項9】
前記情報取得工程では、前記読取センサーの読取モードに応じて、前記搬送ベルトに対して前記読取センサーとは反対側に位置する専用光源から出射される光の光量を切り替え、
前記読取センサーは、前記専用光源から出射される、相対的に低い光量の光の受光量に基づいて前記開口部情報を取得し、前記専用光源から出射される、相対的に高い光量の光の受光量に基づいて前記記録媒体情報を取得することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のインク吐出タイミングの調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置におけるインク吐出タイミングの調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターなどのインクジェット記録装置において、速乾性のあるインクを使用する場合には、インクの乾燥による増粘により、記録ヘッドのノズルが詰まりやすくなる。このため、用紙への印刷前に、増粘したインクを吐出して捨てる動作が必要となる。用紙への画像形成に寄与しないインクの吐出動作のことを、ここではフラッシング(空吐出)とも呼ぶ。
【0003】
従来、フラッシングを行う技術については、例えば特許文献1~3に開示されている。特許文献1では、搬送ベルトに供給される用紙と用紙との間で(いわゆる紙間で)、記録ヘッドからインクを吐出し、搬送ベルトに設けられた開口部を通過させることにより、フラッシングを行うようにしている。搬送ベルトの開口部の位置は、開口部検知センサーによって検知され、その検知結果に基づいてフラッシングにおけるインクの吐出が制御される。
【0004】
特許文献2では、記録ヘッドを構成する単位記録ヘッドの大きさに対応する孔部を搬送ベルトに設けた構成が開示されている。この構成では、孔部に向かってインクを吐出することにより、フラッシングが行われる。また、搬送ベルトの内周側には、キャップ手段または清掃手段が配設されている。キャップ手段または清掃手段は、記録ヘッドのインク吐出面に対して、孔部を介して進退可能である。非画像形成時に搬送ベルトを停止させ、孔部を介してキャップ手段を移動させて記録ヘッドのノズルをキャッピングすることにより、ノズル内のインクの乾燥を防ぐことができる。また、非画像形成時に搬送ベルトを停止させ、孔部を介して清掃手段を移動させて記録ヘッドのインク吐出面を清掃することにより、インク吐出面の汚れを除去することができる。
【0005】
また、例えば搬送ベルト上で用紙が開口部と重なって載置されると、用紙に撓みが生じて、記録ヘッドと用紙との間の距離(ギャップ)が不均一となる。このため、用紙に記録された画像の品質が低下することが懸念される。特許文献3では、開口部と重ならないように用紙を搬送ベルトに供給することにより、上記した用紙の撓みに起因する記録画像の品質の低下を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-113690号公報
【文献】特開2005-96116号公報
【文献】特開2006-21399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、フラッシングを実行するためには、搬送ベルトに形成された開口部の情報(例えば開口部の形状、大きさ、位置の情報)を取得することが必要であり、そのためには、開口部の情報を読み取るセンサーが必要となる。また、用紙に対してインク吐出による画像形成を行うためには、搬送ベルト上に供給された用紙の情報(例えば用紙のサイズ、搬送ベルト上での位置の情報)を取得することが必要であり、そのためには、用紙の情報を読み取るセンサーが必要となる。
【0008】
このとき、開口部の情報(以下、「開口部情報」とも称する)を読み取るセンサーと、用紙の情報(以下、「記録媒体情報」とも称する)を読み取るセンサーとを別々に設ける構成は、インクジェット記録装置のコスト低減を図る際の支障となる虞がある。そこで、開口部情報を読み取るセンサーと記録媒体情報を読み取るセンサーとを共通化した単一の読取センサーを用いる構成が望ましい。
【0009】
しかし、読取センサーには取付公差があるため、単一の読取センサーを用いる構成では、読取センサーと記録ヘッドとの間の距離が、インクジェット記録装置ごとにばらつく。このため、搬送ベルトの走行速度(用紙の搬送速度)が一定の条件では、読取センサーと記録ヘッドとの間の用紙の搬送時間が、インクジェット記録装置ごとに異なる。したがって、上記搬送時間として、各インクジェット記録装置で一律に同じ時間(初期設定時間)を設定したのでは、上記初期設定時間に基づいて開口部に向かってインクを吐出するフラッシングを記録ヘッドが実行したときに、インクジェット記録装置によっては、吐出したインクが開口部の位置からずれて開口部の周囲に着弾し、搬送ベルトを汚す事態が起こり得る。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑み、単一の読取センサーによって開口部情報および記録媒体情報を取得するインクジェット記録装置において、読取センサーの取付公差を考慮して、インクの吐出タイミング(吐出位置)を精度よく調整することができ、これによって、搬送ベルトの開口部に対してインクを吐出するフラッシングの際に、上記取付公差に起因して開口部の周囲にインクが着弾して搬送ベルトが汚れる事態を低減することができるインク吐出タイミングの調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面に係るインク吐出タイミングの調整方法は、インクジェット記録装置におけるインク吐出タイミングの調整方法であって、第1の読取モードで、搬送ベルトに形成された開口部を読み取って開口部情報を取得し、第2の読取モードで、前記搬送ベルト上に供給された記録媒体を読み取って記録媒体情報を取得する単一の読取センサーを用い、前記読取センサーにより、少なくとも前記記録媒体情報を取得する情報取得工程と、前記記録媒体情報に基づいて検出される前記記録媒体の先端が、前記搬送ベルトの走行により、前記読取センサーによる読取位置を通過した時点から、前記読取センサーと記録ヘッドとの間を前記記録媒体が搬送される時間として予め設定された初期設定時間を経過した後に、前記記録ヘッドからインクを吐出させて、前記搬送ベルト上の前記記録媒体にテストパターンを印刷する印刷工程と、前記テストパターンの印刷位置に基づいて入力される前記インクの吐出タイミングの補正値に対応する補正時間を前記初期設定時間に加えて、遅延時間を算出する算出工程と、前記搬送ベルトの走行によって前記開口部が前記読取位置を通過した時点から所定時間経過後に、前記記録ヘッドが前記開口部に対するインクの吐出を開始するときの前記所定時間を、前記遅延時間に設定する設定工程と、を含む。
【発明の効果】
【0012】
上記の調整方法によれば、単一の読取センサーによって開口部情報および記録媒体情報を取得するインクジェット記録装置において、読取センサーの取付公差を考慮して、インクの吐出タイミング(吐出位置)を精度よく調整することができる。これにより、単一の読取センサーを用いる構成であっても、搬送ベルトの開口部に対してインクを吐出するフラッシングの際に、上記取付公差に起因して開口部の周囲にインクが着弾して搬送ベルトが汚れる事態を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置としてのプリンターの概略の構成を示す説明図である。
【
図2】上記プリンターが備える記録部の平面図である。
【
図3】上記プリンターの給紙カセットから第1搬送ユニットを介して第2搬送ユニットに至る用紙の搬送経路の周辺の構成を模式的に示す説明図である。
【
図4】上記プリンターの主要部のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図5】上記第1搬送ユニットが有する第1搬送ベルトの一構成例を示す平面図である。
【
図6】上記プリンターが備える情報読取部の一構成例を模式的に示す説明図である。
【
図7】上記情報読取部が有する第1の光源および第2の光源の点灯タイミングの一例を示す説明図である。
【
図8】上記情報読取部が有する読取センサーによって取得される開口部読取データおよび用紙読取データと、第1搬送ベルトに対するインク吐出領域とを模式的に示す説明図である。
【
図9】上記読取センサーによって取得される開口部読取データおよび用紙読取データの他の例を模式的に示す説明図である。
【
図10】上記情報読取部の他の構成を模式的に示す説明図である。
【
図11】
図10の情報読取部が有する専用光源の点灯タイミングおよび出射光量の一例を示す説明図である。
【
図12】上記専用光源から出射される光の光量の大小と、読取センサーの出力との関係を、種々のケースごとに模式的に示す説明図である。
【
図13】各ケースにおける光強度の強弱と、センサー出力との関係をまとめて示すグラフである。
【
図14】上記プリンターに適用されるインク吐出タイミングの調整方法による動作の流れを示すフローチャートである。
【
図15】上記調整方法に含まれる情報取得工程で取得される記録媒体情報を示す説明図である。
【
図16】上記情報取得工程で取得される開口部情報を示す説明図である。
【
図17】上記インク吐出タイミングの他の調整方法によって取得される開口部情報および記録媒体情報を模式的に示す説明図である。
【
図18】読取モードの切り替えタイミングと、取得される開口部情報および記録媒体情報との関係を模式的に示す説明図である。
【
図19】上記インク吐出タイミングのさらに他の調整方法によって取得される記録媒体情報を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。まず、本実施形態のインク吐出タイミングの調整方法が適用されるインクジェット記録装置について説明する。
【0015】
〔1.インクジェット記録装置の構成〕
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置としてのプリンター100の概略の構成を示す説明図である。プリンター100は、用紙収容部である給紙カセット2を備えている。給紙カセット2は、プリンター本体1の内部下方に配置されている。給紙カセット2の内部には、記録媒体の一例である用紙Pが収容されている。
【0016】
給紙カセット2の用紙搬送方向下流側、すなわち
図1における給紙カセット2の右側の上方には給紙装置3が配置されている。この給紙装置3により、用紙Pは
図1において給紙カセット2の右上方に向け、1枚ずつ分離されて送り出される。
【0017】
プリンター100は、その内部に第1用紙搬送路4aを備えている。第1用紙搬送路4aは、給紙カセット2に対してその給紙方向である右上方に位置する。給紙カセット2から送り出された用紙Pは、第1用紙搬送路4aにより、プリンター本体1の側面に沿って垂直上方に搬送される。
【0018】
用紙搬送方向において第1用紙搬送路4aの下流端には、レジストローラー対13が設けられている。さらに、レジストローラー対13の用紙搬送方向下流側直近には、第1搬送ユニット5および記録部9が配置されている。給紙カセット2から送り出された用紙Pは、第1用紙搬送路4aを通ってレジストローラー対13に到達する。レジストローラー対13は、用紙Pの斜め送りを矯正しつつ、記録部9が実行するインク吐出動作とのタイミングを計り、第1搬送ユニット5(特に後述する第1搬送ベルト8)に向かって用紙Pを送り出す。つまり、レジストローラー対13は、第1搬送ベルト8上に用紙Pを供給する記録媒体供給部を構成している。なお、レジストローラー対13よりも用紙搬送方向の上流側全体が記録媒体供給部を構成してもよい。
【0019】
レジストローラー対13によって第1搬送ユニット5に送り出された用紙Pは、第1搬送ベルト8によって記録部9(特に後述する記録ヘッド17a~17c(
図2参照))との対向位置に搬送される。記録部9から用紙Pにインクが吐出されることにより、用紙P上に画像が記録される。このとき、記録部9におけるインクの吐出は、プリンター100の内部の制御装置110によって制御される。
【0020】
用紙搬送方向において、第1搬送ユニット5の下流側(
図1の左側)には、第2搬送ユニット12が配置されている。記録部9によって画像が記録された用紙Pは、第2搬送ユニット12へ送られる。用紙Pの表面に吐出されたインクは、第2搬送ユニット12を通過する間に乾燥される。
【0021】
用紙搬送方向において、第2搬送ユニット12の下流側であってプリンター本体1の左側面近傍には、デカーラー部14が設けられている。第2搬送ユニット12によってインクが乾燥された用紙Pは、デカーラー部14へ送られて、用紙Pに生じたカールが矯正される。
【0022】
用紙搬送方向において、デカーラー部14の下流側(
図1の上方)には、第2用紙搬送路4bが設けられている。デカーラー部14を通過した用紙Pは、両面記録を行わない場合、第2用紙搬送路4bを通り、プリンター100の左側面外部に設けられた用紙排出トレイ15に排出される。
【0023】
プリンター本体1の上部であって記録部9および第2搬送ユニット12の上方には、両面記録を行うための反転搬送路16が設けられている。両面記録を行う場合、用紙Pの一方の面(第1面)への記録が終了して第2搬送ユニット12およびデカーラー部14を通過した用紙Pは、第2用紙搬送路4bを通って反転搬送路16へ送られる。
【0024】
反転搬送路16へ送られた用紙Pは、続いて用紙Pの他方の面(第2面)への記録のために搬送方向が切り替えられる。そして、用紙Pは、プリンター本体1の上部を通過して右側に向かって送られ、レジストローラー対13を経て第2面を上向きにした状態で再び第1搬送ユニット5へ送られる。第1搬送ユニット5では、記録部9との対向位置に用紙Pが搬送され、記録部9からのインク吐出によって第2面に画像が記録される。両面記録後の用紙Pは、第2搬送ユニット12、デカーラー部14、第2用紙搬送路4bを順に介して用紙排出トレイ15に排出される。
【0025】
また、第2搬送ユニット12の下方には、メンテナンスユニット19およびキャップユニット20が配置されている。メンテナンスユニット19は、パージを実行する際に記録部9の下方に水平移動し、記録ヘッドのインク吐出口から押出されたインクを拭き取り、拭き取られたインクを回収する。なお、パージとは、インク吐出口内の増粘インク、異物、気泡を排出するために、記録ヘッドのインク吐出口からインクを強制的に押し出す動作を言う。キャップユニット20は、記録ヘッドのインク吐出面をキャッピングする際に記録部9の下方に水平移動し、さらに上方に移動して記録ヘッドの下面に装着される。
【0026】
図2は、記録部9の平面図である。記録部9は、ヘッドハウジング10と、ラインヘッド11Y、11M、11C、11Kとを備えている。ラインヘッド11Y~11Kは、駆動ローラー6a、従動ローラー6b、テンションローラー7aおよび7b(
図3参照)を含む複数のローラーに張架された無端状の第1搬送ベルト8の搬送面に対して、所定の間隔(例えば1mm)が形成される高さでヘッドハウジング10に保持される。駆動ローラー6aは、第1搬送ベルト8を用紙Pの搬送方向(矢印A方向)に走行させる。この駆動ローラー6aの駆動は、制御装置110の主制御部110a(
図4参照)によって制御される。なお、上記複数のローラーは、第1搬送ベルト8の走行方向に沿って、テンションローラー7a、テンションローラー7b、従動ローラー6b、および駆動ローラー6aの順に配置されている(
図3参照)。
【0027】
ラインヘッド11Y~11Kは、複数(ここでは3個)の記録ヘッド17a~17cをそれぞれ有している。記録ヘッド17a~17cは、用紙搬送方向(矢印A方向)と直交する用紙幅方向(矢印BB’方向)に沿って千鳥状に配列されている。記録ヘッド17a~17cは、複数のインク吐出口18(ノズル)を有している。各インク吐出口18は、記録ヘッドの幅方向、つまり、用紙幅方向(矢印BB’方向)に等間隔で並んで配置されている。ラインヘッド11Y~11Kからは、記録ヘッド17a~17cのインク吐出口18を介して、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインクが、第1搬送ベルト8で搬送される用紙Pに向かってそれぞれ吐出される。
【0028】
図3は、給紙カセット2から第1搬送ユニット5を介して第2搬送ユニット12に至る用紙Pの搬送経路の周辺の構成を模式的に示している。また、
図4は、プリンター100の主要部のハードウェア構成を示すブロック図である。プリンター100は、上記の構成に加えて、レジストセンサー21と、用紙センサー22と、情報読取部23と、蛇行量検知センサー25と、蛇行補正機構26と、を備えている。なお、情報読取部23の詳細については後述する。
【0029】
レジストセンサー21は、用紙カセット2から給紙装置3によって搬送され、レジストローラー対13に送られる用紙Pを検知する。このレジストセンサー21は、レジストローラー対13よりも用紙Pの供給方向の上流側に位置している。制御装置110の後述する主制御部110aは、レジストセンサー21での検知結果に基づき、レジストローラー対13の回転開始タイミングを制御することができる。例えば、主制御部110aは、レジストセンサー21での検知結果に基づき、レジストローラー対13によるスキュー(斜行)補正後の用紙Pの第1搬送ベルト8への供給タイミングを制御することができる。
【0030】
用紙センサー22は、レジストローラー対13から第1搬送ベルト8に供給される用紙Pの先端の通過(タイミング)を検知する記録媒体検知センサーである。つまり、用紙センサー22は、第1搬送ベルト8に供給される用紙Pを検知する。用紙センサー22は、用紙搬送方向において情報読取部23よりも上流側に位置している。用紙センサー22は、透過型または反射型の光学センサー、CISセンサー(Contact Image Sensor、密着型イメージセンサー)などで構成することができる。
【0031】
なお、本実施形態では、用紙Pの通過を検知する別の用紙センサー22が、最も下流側のラインッド11Yのさらに下流側に配置されているが、その設置は省略されてもよい。
【0032】
蛇行量検知センサー25は、第1搬送ベルト8の蛇行量を検知する。なお、蛇行量とは、第1搬送ベルト8のベルト幅方向における基準位置からの変位量を指す。このような蛇行量検知センサー25は、例えば第1搬送ベルト8の側面(片側)の変位を検知することによって蛇行量を検知する接触式または非接触式の変位センサーで構成される。なお、蛇行量検知センサー25は、ベルト幅方向に長尺状のCISセンサーで構成されてもよい。
【0033】
蛇行量検知センサー25は、第1搬送ベルト8の走行方向の複数箇所に位置している。より具体的には、
図3に示すように、蛇行量検知センサー25は、第1搬送ベルト8の走行方向において、テンションローラー7aよりも下流側に位置する第1蛇行量検知センサー25aと、第1蛇行量検知センサー25aよりもさらに下流側でテンションローラー7bよりも上流側に位置する第2蛇行量検知センサー25bとを含んで構成される。
【0034】
図4に示す蛇行補正機構26は、第1搬送ベルト8を張架するローラー(例えば
図3のテンションローラー7b)の回転軸を傾けることにより、第1搬送ベルト8の蛇行を補正する機構である。主制御部110aは、蛇行量検知センサー25によって検知された第1搬送ベルト8の蛇行量に基づいて、蛇行補正機構26を制御する。これにより、第1搬送ベルト8の蛇行が補正される。
【0035】
また、プリンター100は、操作パネル27と、記憶部28と、通信部29と、をさらに備えている。
【0036】
操作パネル27は、各種の設定入力を受け付けるための操作部である。例えば、ユーザーは、操作パネル27を操作して、給紙カセット2にセットする用紙Pのサイズの情報を入力することができる。また、ユーザーは、操作パネル27を操作して、印刷する用紙Pの枚数を入力したり、印刷ジョブの開始を指示することもできる。さらに、例えばプリンター100の製造工場で作業をする作業者や、プリンター100が市場に出回った後にメンテナンスを行うサービスマンは、操作パネル27を操作することにより、プリンター27の各種の設定や調整を行うことができる。
【0037】
記憶部28は、制御装置110の動作プログラムを記憶するとともに、各種の情報を記憶するメモリであり、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリなどを含んで構成されている。例えば、操作パネル27によって設定された情報は、記憶部28に記憶される。
【0038】
通信部29は、外部(例えばパーソナルコンピュータ(PC))との間で情報を送受信するための通信インターフェースである。例えば、ユーザーがPCを操作し、プリンター100に対して画像データとともに印刷コマンドを送信すると、上記の画像データおよび印刷コマンドが通信部29を介してプリンター100に入力される。プリンター100では、後述する吐出制御部110dが上記画像データに基づいて記録ヘッド17a~17cを制御してインクを吐出させることにより、用紙Pに画像を記録することができる。
【0039】
また、
図3に示すように、プリンター100は、第1搬送ベルト8の内周面側に、インク受け部31Y、31M、31C、31Kを有している。インク受け部31Y~31Kは、ラインヘッド11Y~11Kの記録ヘッド17a~17cと、第1搬送ベルト8を介して対向する位置に設けられている。インク受け部31Y~31Kは、記録ヘッド17a~17cにフラッシングを実行させたときに、記録ヘッド17a~17cから吐出されて第1搬送ベルト8の開口部80を通過したインクを受けて回収する。ここで、フラッシングとは、インクの乾燥によるインク吐出口18の目詰まりを低減または予防する目的で、用紙Pへの画像形成(画像記録)に寄与するタイミングとは異なるタイミングでインク吐出口18からインクを吐出することを言う。インク受け部31Y~31Kで回収されたインクは、例えば廃インクタンクに送られて廃棄されるが、廃棄せずに再利用されてもよい。
【0040】
上述した第2搬送ユニット12は、第2搬送ベルト12aと、乾燥器12bとを有して構成されている。第2搬送ベルト12aは、2つの駆動ローラー12cおよび従動ローラー12dによって張架されている。第1搬送ユニット5によって搬送され、記録部9によるインク吐出によって画像が記録された用紙Pは、第2搬送ベルト12aによって搬送され、搬送中に乾燥器12bによって乾燥されて上述したデカーラー部14に搬送される。
【0041】
〔2.第1搬送ベルトの詳細〕
次に、第1搬送ユニット5の第1搬送ベルト8の詳細について説明する。
図5は、第1搬送ベルト8の一構成例を示す平面図である。用紙Pを順次搬送する第1搬送ベルト8は、開口部80を複数有している。各開口部80は、ベルト幅方向(矢印BB’方向)に長尺の孔で形成されている。各開口部80の平面視での形状は、本実施形態では、
図5のように長方形状であるが、長方形の角部に相当する領域が丸みを帯びた形状であってもよいし、その他の形状(例えば楕円形状)であってもよい。
【0042】
なお、本実施形態では、用紙Pを負圧吸引によって第1搬送ベルト8に吸着させて搬送する負圧吸引方式を採用している。上記の開口部80は、負圧吸引によって発生する吸引風を通過させる吸引孔を兼ねている。
【0043】
本実施形態では、第1搬送ベルト8において、複数の開口部80で構成される開口部群82が、用紙搬送方向(矢印A方向)に一定間隔で並んで配置されている。各開口部群82は、複数の開口部列81で構成されており、本実施形態では、2つの開口部列81aおよび81bで構成されている。
【0044】
各開口部列81aおよび81bは、複数の開口部80をベルト幅方向(矢印BB’方向)に等間隔で有している。一方の開口部列81aの各開口部80は、他方の開口部列81bの各開口部80と、用紙Pの搬送方向(矢印A方向)から見て重なるように配置されている。つまり、第1搬送ベルト8において、複数の開口部80は千鳥状に配置されている。なお、各開口部群82の上記搬送方向の間隔は、各開口部列81aおよび81bの上記搬送方向の間隔に等しい。
【0045】
また、各開口部群82において、一方の開口部列81aの開口部80の数と、他方の開口部列80bの開口部80の数とは同じである。なお、一方の開口部列81aの開口部80の数は、他方の開口部列80bの開口部80の数よりも1つ多くてもよい。この場合、第1搬送ベルト8の各開口部80は、第1搬送ベルト8のベルト幅方向の中心を搬送方向に結ぶ中心線に対して、線対称となる位置にそれぞれ形成される。
【0046】
ここで、ラインヘッド11Y~11K(記録ヘッド17a~17c)のヘッド幅をW1(mm)としたとき、第1搬送ベルト8において、ベルト幅方向における各開口部80の形成領域の最大幅W2(mm)は、ヘッド幅W1よりも大きい。この結果、記録ヘッド17a~17cがフラッシングを実行したとき、記録ヘッド17a~17cの各インク吐出口18から吐出されるインクは、開口部列81aの各開口部80または開口部列81bの各開口部80のいずれかを必ず通過する。したがって、記録ヘッド17a~17cにヘッド幅全体にわたってフラッシングを実行させて、全てのインク吐出口18についてインクの乾燥による目詰まりを低減することが可能となる。
【0047】
〔3.情報読取部について〕
次に、上記した情報読取部23について説明する。
図6は、情報読取部23の一構成例を模式的に示す説明図である。情報読取部23は、第1搬送ベルト8に形成された開口部80の情報、および第1搬送ベルト8に供給された用紙Pの情報を読み取る。ここで、上記開口部80の情報とは、第1搬送ベルト8における開口部80の形状、大きさおよび位置(搬送方向、ベルト幅方向)の少なくともいずれかの情報を含む。また、上記用紙Pの情報とは、第1搬送ベルト8に供給された用紙Pのサイズ(形状、大きさ)および位置(搬送方向、ベルト幅方向)の少なくともいずれかの情報を含む。したがって、例えば、第1搬送ベルト8上で用紙Pが正規の位置からベルト幅方向にずれて位置している場合であっても、その位置情報が情報読取部23によって取得される。このような情報読取部23は、用紙の搬送方向において、記録部9の上流側で用紙センサー22よりも下流側に設けられている(
図3参照)。
【0048】
情報読取部23は、
図4および
図6に示すように、読取センサー231と、第1の光源232と、第2の光源233と、を含んで構成される。読取センサー231は、第1の読取モードにおいて、第1搬送ベルト8の開口部80の情報を読み取り、第2の読取モードにおいて、第1搬送ベルト8上の用紙Pの情報を読み取る。このような読取センサー231は、例えば第1搬送ベルト8のベルト幅方向に沿って長尺状のCISセンサーで構成される。なお、読取センサー231の読取モード(第1の読取モード、第2の読取モード)は、制御装置110の後述する読取モード切替制御部110b(
図4参照)によって制御される。
【0049】
読取センサー231は、第1搬送ベルト8に対して用紙Pの載置側(記録ヘッド17a~17c側)に位置する。第1の光源232は、第1搬送ベルト8に対して読取センサー231とは反対側に位置する。この第1の光源232は、例えば点光源であるLED(発光ダイオード)を第1搬送ベルト8の幅方向に沿って並べて構成される。
【0050】
第1の光源232から出射された光のうち、第1搬送ベルト8の開口部80に入射した光は開口部80を透過し、読取センサー231に到達する。一方、第1の光源232から出射され、開口部80の周囲に入射した光は、第1搬送ベルト8で吸収または遮断されるため、読取センサー231に到達しない。したがって、読取センサー231は、第1の光源232から出射されて第1搬送ベルト8の開口部80を透過した光を受光することにより、開口部80の形状等の情報を取得することができる。
【0051】
なお、第1の光源232の点灯時の読取センサー231での受光量に閾値(例えば第1の閾値)を設けておき、読取センサー231が、受光量が閾値以上である光の受光状態に基づいて、第1搬送ベルト8の開口部80の情報を取得するようにしてもよい。この場合、第1の光源232から出射された光のうち、第1搬送ベルト8の開口部80以外の領域を通過して読取センサー231に入射した光が仮にあったとしても、その光を開口部80の情報に寄与しない光として排除することができる。その結果、読取センサー231は、開口部80の情報を精度よく取得することが可能となる。
【0052】
第2の光源233は、第1搬送ベルト8に対して読取センサー231と同じ側(用紙Pの載置側)に位置する。この第2の光源233は、例えば点光源であるLEDをベルト幅方向に沿って並べて構成される。
【0053】
第2の光源233から出射された光のうち、第1搬送ベルト8上の用紙Pに入射した光は、用紙Pで反射され、反射光(例えば拡散反射光)として読取センサー231に到達する。一方、第2の光源233から出射され、第1搬送ベルト8上で用紙P以外の領域に入射した光は、第1搬送ベルト8で吸収されるか、開口部80をそのまま透過するため、読取センサー231に到達しない。したがって、読取センサー231は、第2の光源233から出射されて用紙Pで反射した光を受光することにより、用紙Pのサイズや位置の情報を取得することができる。
【0054】
なお、第2の光源233の点灯時の読取センサー231での受光量に閾値(例えば第2の閾値)を設けておき、読取センサー231が、受光量が閾値以上である光の受光状態に基づいて、第1搬送ベルト8上の用紙Pの情報を取得するようにしてもよい。この場合、第2の光源233から出射された光のうち、第1搬送ベルト8上の用紙P以外の領域で反射されて、読取センサー231に入射した光が仮にあったとしても、その光を用紙Pの情報に寄与しない光として排除することができる。その結果、読取センサー231は、用紙Pの情報を精度よく取得することが可能となる。
【0055】
本実施形態では、読取センサー231と第2の光源233とは、同じ筐体に設けられており、読取ユニット23aとしてユニット化されている。なお、読取センサー231と第2の光源233とは、別々の筐体に設けられてもよい。
【0056】
〔4.制御装置について〕
図4に示すように、本実施形態のプリンター100は、制御装置110をさらに備えている。制御装置110は、例えばCPU(Central Processing Unit)とメモリとを含んで構成されている。具体的には、制御装置110は、主制御部110aと、読取モード切替制御部110bと、データ格納部110cと、吐出制御部110dと、光源制御部110eと、を備えている。なお、制御装置110は、必要な演算を行う演算部や、時間を計時する計時部をさらに備えていてもよく、制御装置110の各部(主制御部110a等)が上記の演算部や計時部を兼ねていてもよい。主制御部110aは、プリンター100の各部の動作を制御する。
【0057】
読取モード切替制御部110bは、上記した情報読取部23の読取センサー231の読取モードを、第1の読取モードと第2の読取モードとで切り替える。より具体的には、読取モード切替制御部110bは、第1の読取モードと第2の読取モードとを、画像の解像度を構成する1ドットの形成期間の整数倍ずつ、交互に切り替える。例えば、上記画像の解像度が600dpi(dot per inch)である場合、読取モード切替制御部110bは、600dpiの1ドットの形成期間ずつ、第1の読取モードと第2の読取モードとを交互に切り替える。この場合、読取センサー231は、開口部80の情報と用紙Pの情報とを、それぞれ300dpiで取得することができる。なお、上記の1ドットは、少なくとも1滴のインク吐出によって形成することが可能である。
【0058】
データ格納部110cは、読取センサー231で取得された情報(開口部80の情報、用紙Pの情報)、吐出制御部110dで生成される後述のフラッシングデータなどを一時的に格納する。このようなデータ格納部110cは、例えばRAMや不揮発性メモリで構成される。なお、読取センサー231で取得された情報は、上述の記憶部28(
図4参照)に記憶されてもよい。
【0059】
吐出制御部110dは、読取センサー231が読み取った開口部80の情報または用紙Pの情報に基づいて、記録ヘッド17a~17cからのインクの吐出を制御する。例えば、吐出制御部110dは、上記開口部80の情報に基づいて、フラッシング時に開口部80を通過させるデータ(フラッシングデータ)を作成し、作成したフラッシングデータに基づいて、記録ヘッド17a~17cにフラッシングを実行させる。また、吐出制御部110dは、上記用紙Pの情報に基づいて記録ヘッド17a~17cを制御して、用紙Pの領域に対応するインク吐出口18からインクを吐出させ、用紙P上に画像を形成させる。
【0060】
光源制御部110eは、読取モード切替制御部110bによって切り替えられる読取センサー231の読取モードに基づいて、情報読取部23の第1の光源232および第2の光源233の点灯を制御する。例えば、
図7は、第1の光源232および第2の光源233の点灯タイミングの一例を示す説明図である。同図に示すように、光源制御部110eは、読取センサー231の読取モードが第1の読取モードであるときに、第1の光源232を点灯させる一方、上記読取モードが第2の読取モードであるときに、第2の光源233を点灯させる。これにより、読取センサー231は、第1の読取モードでは、第1の光源232から出射された光の受光状態に基づいて、開口部80の情報を取得することができ、第2の読取モードでは、第2の光源233から出射された光の受光状態に基づいて、用紙Pの情報を取得することができる。
【0061】
なお、第1の光源232が消灯し始めてから完全に消灯するまでに、タイムラグがある。このため、第1の読取モードでの第1の光源232の点灯期間と、第2の読取モードでの第2の光源233の点灯期間との間が時間的に短すぎると、第2の読取モードにおいて、第1の光源232から出射された光が読取センサー231に到達し、読取センサー231が誤検知する虞がある。
【0062】
そこで、本実施形態では、光源制御部110eは、第1の読取モードでの第1の光源232の点灯期間が第1の読取モードの期間全体の約半分となるように第1の光源232の点灯を制御する。これにより、第1の読取モードにおける第1の光源232の消灯期間が、第1の読取モードの期間全体の約半分ほど確保される。したがって、第1の読取モードでの第1の光源232の点灯期間と、その後の第2の読取モードでの第2の光源233の点灯期間との間隔が十分長くなり、第2の読取モードでの読取センサー231での誤検知を回避することが可能となる。
【0063】
同様の理由により、光源制御部110eは、第2の読取モードでの第2の光源233の点灯期間が第2の読取モードの期間全体の約半分となるように第2の光源233の点灯を制御する。これにより、第2の読取モードにおける第2の光源233の消灯期間が、第2の読取モードの期間全体の約半分ほど確保される。したがって、第2の読取モードでの第2の光源233の点灯期間と、その後の第1の読取モードでの第1の光源232の点灯期間との間隔が十分長くなり、第1の読取モードでの読取センサー231での誤検知を回避することが可能となる。
【0064】
また、読取センサー231は、第1の光源232または第2の光源233を点灯させた読取モード(周期)の次の読取モード(周期)で、前の読取モードで取得した情報の出力を行うように構成されている。例えば、
図7に示すように、第2の読取モードにおいて、第2の光源233の点灯によって読取センサー231が用紙Pの情報を取得した場合、読取センサー231は、次の読取モードである第1の読取モードの期間において、上記用紙Pの情報を出力する。また、第1の読取モードにおいて、第1の光源232の点灯によって読取センサー231が開口部80の情報を取得した場合、読取センサー231は、次の読取モードである第2の読取モードの期間において、上記開口部80の情報を出力する。したがって、読取センサー231の出力も、読取モードに応じて交互に切り替えられる。
【0065】
〔5.動作について〕
次に、本実施形態のプリンター100の動作について説明する。なお、以下の動作を行うにあたって、記録ヘッド17a~17cからのインクの吐出タイミングは、読取センサー231の取付公差を考慮して適切に調整されているとする。なお、読取センサー231の取付公差を考慮したインク吐出タイミングの調整方法の詳細については後述する。
【0066】
図8は、読取センサー231によって取得される開口部80の情報(開口部読取データ)および用紙Pの情報(用紙読取データ)と、第1搬送ベルト8に対するインク吐出領域とを模式的に示している。インク吐出領域は、後述するフラッシング領域FRと画像形成領域MRとを含む。
【0067】
(5-1.用紙の検知)
まず、用紙Pがレジストローラー対13から第1搬送ベルト8に向かって搬送される。用紙センサー22が用紙Pの通過を検知すると、用紙センサー22から用紙Pの検知信号(垂直同期信号VSYNC)が出力される。上記検知信号は、用紙Pが検知される期間ではハイレベルとなり、用紙Pが検知されない期間ではローレベルとなる信号である。
【0068】
(5-2.開口部および用紙の読み取り)
続いて、用紙Pが第1搬送ベルト8上に供給されると、読取センサー231は、第1搬送ベルト8の開口部80の形状、大きさ、位置を読み取って、開口部80の情報を示す開口部読取データを取得する。また、読取センサー231は、第1搬送ベルト8上の用紙のサイズおよび位置を読み取って、用紙Pの情報を示す用紙読取データを取得する。なお、読取センサー231は、600dpiの解像度でモノクロ読み取り動作が可能なセンサーとする。
【0069】
このとき、読取モード切替制御部110bにより、読取センサー231の読取モードが、搬送方向に解像度1ドット(1ライン)の周期で、第1の読取モードと第2の読取モードとで交互に切り替えられる。また、光源制御部110eの制御により、第1の光源232と第2の光源233とが、読取センサー231の読取モードに応じて、1ドットの周期で交互に点灯する(
図7参照)。
【0070】
したがって、読取センサー231は、第1の読取モードにおいて、第1の光源232から出射される光の受光状態に基づいて、開口部読取データ(例えば300dpi)を取得することができる。また、読取センサー231は、第2の読取モードにおいて、第2の光源233から出射される光の受光状態に基づいて、用紙読取データ(例えば300dpi)を取得することができる。
【0071】
ここで、第1の光源232から出射された光のうち、開口部80に入射した光だけがそこを通過して読取センサー231に到達する。このため、読取センサー231では、
図8に示すように、第1搬送ベルト8の開口部80の領域では白(ハッチングなしで示す)となり、開口部80以外の領域では黒(ハッチングありで示す)となる2値のデータが開口部読取データとして得られる。得られた開口部読取データは、データ格納部110cに記憶される。
【0072】
また、第2の光源233から出射された光のうち、第1搬送ベルト8上の用紙Pに入射して拡散反射された光は、ほとんど読取センサー231に到達し、他の領域(例えば第1搬送ベルト8における用紙P以外の部分)で反射された光は第1の搬送ベルト8で吸収されてほとんど読取センサー231には到達しない。このため、読取センサー231では、
図8に示すように、第1搬送ベルト8の用紙Pの領域では白(ハッチングなしで示す)となり、用紙P以外の領域では黒(ハッチングありで示す)となる2値のデータが用紙読取データとして得られる。得られた用紙読取データは、データ格納部110cに記憶される。
【0073】
(5-3.フラッシングデータの生成)
次に、吐出制御部110dは、第1搬送ベルト8上で用紙Pと搬送方向にずれた位置にある各開口部80に対して記録ヘッド17a~17cからインクを吐出させるためのフラッシングデータを生成する。より詳しくは、以下の通りである。
【0074】
《開口部読取データにおける紙間の開口部の認識》
まず、吐出制御部110dは、データ格納部110cから開口部読取データを読み出す。このときの開口部読取データの読み出し開始のタイミングは、用紙センサー22の検知信号(VSYNC)のネゲートタイミングから、用紙センサー22と読取センサー231との間の距離(既知である)を用紙Pが搬送される時間(以下、単に「搬送時間」と称する)だけ遅れたタイミングとする。これにより、吐出制御部110dは、開口部読取データに含まれる複数の開口部80の領域のうち、用紙センサー22によって検知された用紙Pと搬送方向にずれて位置する開口部80の領域80Rを認識することが可能となる。例えば、用紙センサー22が先頭から3枚目の用紙Pと4枚目の用紙とを順に検知した場合、吐出制御部110dは、上記タイミングで開口部読取データをデータ格納部110cから読み出すことにより、第1搬送ベルト8上で3枚目の用紙Pと4枚目の用紙Pとの間に位置する開口部80の、開口部読取データ上での領域80Rを認識することが可能となる。
【0075】
なお、吐出制御部110dは、データ格納部110cに格納された用紙読取データに基づいて、紙間(用紙Pと用紙Pとの間の領域)を認識し、開口部読取データにおいて、上記紙間と対応して位置する開口部80の領域80Rを認識してもよい。
【0076】
《元データの読み出し》
制御装置110のデータ格納部110cには、元データが予め格納され、用意されている。この元データは、記録ヘッド17a~17cの全てのインク吐出口18からインクを吐出させる吐出ONの駆動データであり、例えば第1搬送ベルト8の1周分のデータ長を有する。吐出制御部110dは、このようなフラッシング用の元データを、データ格納部110cから読み出す。
【0077】
《フラッシングデータ生成》
吐出制御部110dは、認識した開口部80の領域80Rに応じた(領域80Rの位置および形状に合った)フラッシングデータを生成する。より具体的には、吐出制御部110dは、データ格納部110cから読み出したフラッシング用の元データを、同じくデータ格納部110cから読み出した開口部読取データでマスクする。そして、元データのうち、開口部読取データ上の領域80Rと重なるデータを、フラッシングデータとする。上記のフラッシングデータは、例えばデータ格納部110cに格納される。
【0078】
(5-4.インク吐出)
吐出制御部110dは、用紙センサー22から出力される垂直同期信号を上記搬送時間だけ遅らせたときに、ハイレベルとなる期間(画像形成期間Tm)とローレベルとなる期間(非画像形成期間Tf)とを認識し、認識した各期間において、記録ヘッド17a~17cを駆動してインクを吐出させる。具体的には、画像形成期間Tmでは、吐出制御部110dは、用紙読取データに基づいて、第1搬送ベルト8上で用紙Pが存在する領域を認識し、この領域に対して、(例えば外部から送信された)画像データに基づいて記録ヘッド17a~17cを駆動して、記録ヘッド17a~17cからインクを吐出させる。これにより、第1搬送ベルト8の用紙P上に画像が形成される。
図8において、インク吐出によって画像が形成される領域を、画像形成領域MRとして示す。
【0079】
一方、非画像形成期間Tfでは、吐出制御部110dは、上記のフラッシングデータに基づいて記録ヘッド17a~17cを駆動し、フラッシングを実行させる。このフラッシングにより、記録ヘッド17a~17cの各インク吐出口18から吐出されたインクは、第1搬送ベルト8において、用紙Pと搬送方向にずれた位置にある各開口部80のいずれかを通過する。
図8において、インクが通過する開口部80の領域を、フラッシング領域FRとして示す。各開口部80を通過したインクは、インク受け部31Y~31K(
図3参照)で回収され、その後、廃インクタンクに送液される。
【0080】
なお、吐出制御部110dは、上記の画像形成期間Tmおよび非画像形成期間Tfを、用紙読取データに基づいて認識してもよい。つまり、用紙P(白の領域)が存在する期間を画像形成期間Tmとして認識し、用紙Pが存在しない期間を非画像形成期間Tfとして認識してもよい。そして、吐出制御部110dは、画像形成期間Tmおよび非画像形成期間Tfにおいて、上記と同様のインク吐出制御を行って、フラッシングまたは画像形成を記録ヘッド17~17cに実行させてもよい。
【0081】
なお、読取センサー231が読取位置にて用紙Pまたは開口部80を読み取ってから、その読み取った用紙Pまたは開口部80に対して、記録ヘッド17a~17cからインクを吐出させるまでの遅延期間はTL(sec)に設定されるが、このTLの設定の仕方については、後述するインク吐出タイミングの調整方法において説明する。
【0082】
〔6.インクジェット記録装置の上記構成による効果〕
以上のように、本実施形態では、吐出制御部110dが、読取センサー231で読み取られた開口部読取データ(開口部80の情報)または用紙読取データ(用紙Pの情報)に基づいて、記録ヘッド17~17cにおけるインクの吐出を制御する。これにより、記録ヘッド17a~17cから開口部80に向かってインクを吐出させるフラッシングを行うことができ、また、記録ヘッド17a~17cから用紙Pに向かってインクを吐出させて、用紙P上に画像を形成することができる。
【0083】
また、読取モード切替制御部110bは、読取センサー231の読取モードを、第1の読取モードと第2の読取モードとで切り替える(
図7参照)。これにより、同じ読取センサー231を用いて、開口部80の情報の読み取りと、用紙Pの情報の読み取りとを交互に行って、開口部読取データおよび用紙読取データを取得することができる。つまり、情報を読み取るセンサーとして、単一の読取センサー231を用いる構成で、開口部読取データと用紙読取データとを両方取得することができる。その結果、別々のセンサーを用いて開口部読取データと用紙読取データとを取得する構成に比べて、プリンター100のコスト低減を図ることができる。
【0084】
また、読取モード切替制御部110bは、第1の読取モードと第2の読取モードとを、画像の解像度を構成する1ドットの形成期間の整数倍ずつ、交互に切り替える。この場合、読取センサー231は、上記画像の解像度よりも低い解像度でありながら、開口部80および用紙Pを認識できる程度に、開口部読取データおよび用紙読取データを取得することができる。
【0085】
特に、本実施形態のように、読取モード切替制御部110bは、第1の読取モードと第2の読取モードとを、上記1ドットの形成期間ずつ(上記整数倍=1倍)、交互に切り替える。この場合、上記画像の解像度よりも低い解像度でありながら、できるだけ高精細の開口部読取データおよび用紙読取データを取得することができる。
【0086】
また、読取センサー231は、第1の光源232から出射されて第1搬送ベルト8の開口部80を透過した光を受光することにより、開口部80の情報を取得し、第2の光源233から出射されて用紙Pで反射された光を受光することにより、用紙Pの情報を取得する。このように、1つのセンサー(読取センサー231)に対して、2つの光源(第1の光源232、第2の光源233)を用いる構成で、開口部80の情報と、用紙Pの情報とを取得することができる。また、第2の光源233と読取センサー231とは、用紙Pに対して同じ側に位置する配置となるため、第2の光源233と読取センサー231とを一体的なユニット(
図6の読取ユニット23a)として構成することができる。したがって、一体的なユニットに第1の光源232を加える簡単な構成で、開口部80の情報と用紙Pの情報とを取得することができる。
【0087】
また、光源制御部110eは、読取センサー231の読取モードに応じて、第1の光源232および第2の光源233の点灯を切り替える。これにより、1つの読取センサー231を用いた構成で、第1の光源232からの透過光の受光に基づく開口部80の情報の読み取りと、第2の光源233からの反射光の受光に基づく用紙Pの情報の読み取りとを行うことができる。
【0088】
特に、光源制御部110eは、読取センサー231が第1の読取モードであるときに、第1の光源232を点灯させる一方、読取センサー231が第2の読取モードであるときに、第2の光源232を点灯させる。第1の読取モードでは、第1の光源232が点灯するため、読取センサー231は、第1の光源232から出射されて開口部80を透過した光を受光することにより、開口部80の情報の読み取りを行うことができる。一方、第2の読取モードでは、第2の光源233が点灯するため、読取センサー231は、第2の光源233から出射されて用紙Pで反射された光を受光することにより、用紙Pの情報の読み取りを行うことができる。
【0089】
また、吐出制御部110dは、第1の読取モードで読取センサー231によって読み取られた開口部80の情報に基づいて、開口部80を通過させるフラッシング用のデータを作成し、作成したデータに基づいて、記録ヘッド17a~17cにフラッシングを実行させる。これにより、第1搬送ベルト8に対して、用紙Pの載置されていない開口部80に向かってインクを吐出させる、いわゆる紙間フラッシングを適切に行うことができる。
【0090】
なお、吐出制御部110dは、各開口部80ごとに、フラッシング用のデータを縮小し、縮小したデータを用いて記録ヘッド17a~17cにフラッシングを実行させてもよい。この場合、フラッシング時には、開口部80よりも確実に内側をインクが通過するため、開口部80の周囲にインクが付着する、いわゆるベルト汚れを低減することができる。
【0091】
また、吐出制御部110dは、第2の読取モードで読取センサー231によって読み取られた用紙Pの情報に基づいて、記録ヘッド17a~17cから画像形成用のインクを吐出させる。これにより、画像形成用のインクを、第1搬送ベルト8に載置された用紙P上に適切に着弾させて、用紙P上に画像を形成することができる。
【0092】
また、読取センサー231が読み取る開口部80の情報は、第1搬送ベルト8における開口部80の形状、大きさおよび位置の少なくともいずれかの情報を含む。これにより、吐出制御部110dは、開口部80の形状等の情報に基づいて、開口部80を通過するようにインクを吐出させるフラッシングデータを適切に作成して、記録ヘッド17a~17cにフラッシングを適切に実行させることができる。
【0093】
また、読取センサー231が読み取る用紙Pの情報は、用紙Pのサイズおよび位置の少なくともいずれかの情報を含む。これにより、どのようなサイズの用紙Pを用いる場合でも、また、第1搬送ベルト8上でどの位置に用紙Pが載置された場合でも、吐出制御部110dは、読み取った用紙Pの情報に基づいて記録ヘッド17a~17cのインク吐出を制御して、その用紙Pに対して画像を適切に形成することができる。
【0094】
〔7.他の読み取り制御について〕
図9は、読取センサー231によって取得される開口部読取データおよび用紙読取データの他の例を模式的に示している。読取モード切替制御部110bは、用紙センサー22での用紙Pの検知結果に基づいて、第1の読取モードと第2の読取モードとを交互に切り替えてもよい。この場合、用紙Pおよび開口部80のそれぞれの情報を、解像度を落とさずに(例えば600dpiの解像度で)取得することができる。より詳細に説明すると、以下の通りである。
【0095】
用紙Pは等速で搬送されるため、用紙センサー22から出力される垂直同期信号(VSYNC)を、用紙センサー22と読取センサー231との間の距離を用紙Pが搬送される時間だけ遅らせることにより、読取モード切替制御部110bは、遅れた上記垂直同期信号に基づいて、読取センサー231の直下の位置(読取位置)を、用紙Pが通過しているか否かを判断することができる。つまり、読取モード切替制御部110bは、上記用紙センサー22での用紙Pの検知結果に基づいて、読取センサー231による読取位置を(第1搬送ベルト8の走行によって)用紙Pが通過するタイミングおよび期間を判断することができる。
【0096】
読取モード切替制御部110bは、上記の読取位置を用紙Pが通過する期間(VSYNCがハイレベルとなる期間)では、読取センサー231の読取モードを第2の読取モードに設定する一方、上記期間以外(VSYNCがローレベルとなる期間)では、読取センサー231の読取モードを第1の読取モードに設定する。VSYNCがハイレベルとなる期間とローレベルとなる期間とは、用紙センサー22での用紙Pの検知の有無によって交互に切り替えられるため、第1の読取モードと第2の読取モードとは、それぞれの期間に対応して交互に切り替えられることになる(
図9参照)。
【0097】
このように、読取モード切替制御部110bが、用紙センサー22での用紙Pの検知結果に基づいて、第1の読取モードと第2の読取モードとを交互に切り替えることにより、読取センサー231の直下の読取位置を用紙Pが通過する期間では、読取モードを第2の読取モードに固定して、読取センサー231を常に第2の読取モードで動作させることができる。これにより、上記読取位置を用紙Pが通過する期間では、読取センサー231は常に用紙Pの情報を読み取ることができ、用紙Pの情報を、解像度を落とさずに(例えば600dpiの解像度で)取得することができる。
【0098】
また、読取センサー231の直下の読取位置を用紙Pが通過する期間以外の期間では、読取モードを第1の読取モードに固定して、読取センサー231を常に第1の読取モードで動作させることができる。これにより、上記読取位置を用紙Pが通過する期間以外の期間では、読取センサー231は常に開口部80の情報を読み取ることができ、開口部80の情報を、解像度を落とさずに(例えば600dpiの解像度で)取得することができる。
【0099】
このように、読取モード切替制御部110bは、用紙センサー22による用紙Pの検知結果に基づいて、読取センサー231による読取位置を用紙Pが通過する期間では、読取センサー231の読取モードを第2の読取モードに設定する一方、上記期間以外では、読取センサー231の読取モードを第1の読取モードに設定することにより、上記両期間のいずれにおいても、高解像度で情報(用紙Pの情報、開口部80の情報)を取得することができる。したがって、吐出制御部110dは、高解像度で取得された情報に基づいて、記録ヘッド17a~17cにおけるインクの吐出を制御して、用紙Pに対する画像形成および紙間でのフラッシングを適切に行うことができる。
【0100】
〔8.情報読取部の他の構成〕
図10は、本実施形態の情報読取部23の他の構成を模式的に示す説明図である。情報読取部23は、読取センサー231と、専用光源232Aとで構成されてもよい。読取センサー231および専用光源232Aは、
図6の読取センサー231および第1の光源232と全く同じものである。読取センサー231は、読取ユニット23a内に収容されている。読取ユニット23aには、第2の光源233が収容されているが、ここでは利用しない。
【0101】
読取センサー231は、第1搬送ベルト8に対して専用光源232Aとは反対側に位置する。そして、読取センサー231は、専用光源232Aから出射された光の受光量に基づいて、用紙Pの情報と、開口部80の情報と、を取得する。この場合、光源が1つ(専用光源232A)と、センサーが1つ(読取センサー231)とを用いた簡易な構成で、用紙Pの情報と、開口部80の情報とを取得することができる。
【0102】
専用光源232Aの点灯は、光源制御部110eによって制御される。光源制御部110eは、読取センサー231の読取モードに応じて、専用光源232Aから出射される光の光量(光強度)を切り替える。
図11は、専用光源232Aの点灯タイミングおよび出射光量の一例を示す説明図である。同図に示すように、光源制御部110eは、読取センサー231が第1の読取モードであるときに、上記光量を相対的に低くする(光強度を相対的に弱くする)一方、読取センサー231が第2の読取モードであるときに、上記光量を相対的に高くする(光強度を相対的に強くする)。読取センサー231が、次の読取モード(周期)で、前の読取モードで取得した情報を出力するように構成されている点は、
図7の場合と同様である。
【0103】
第1搬送ベルト8は、ポリイミドをベースとした薄いフィルムで構成されるため、専用光源232Aから出射される光の光量に応じて、第1搬送ベルト8を透過する光の光量(透過量)を変えることができる。そこで、光源制御部110eにより、専用光源232Aを用紙検知用の光源として利用するときは、専用光源232Aの光強度を強くし、開口部検知用の光源として利用するときは、専用光源232Aの光強度を弱くし、このような光強度の切り替えを1周期ごとに交互に行う。このような光強度の切り替えにより、それぞれの光源環境における読取センサー231の出力を、用紙Pの情報または開口部80の情報として取得することができる。
【0104】
図12は、専用光源232Aから出射される光の光量の大小(光強度の強弱)と、読取センサー231の出力との関係を、種々のケースごとに模式的に示している。以下、ケースごとに、光強度の強弱とセンサー出力との関係について説明する。
【0105】
(ケース1)
ケース1は、専用光源232Aと読取センサー231との間に、第1搬送ベルト8の開口部80が位置し、かつ、用紙Pが位置していない状況である。ケース1の場合、光強度が「弱」であっても「強」であっても、専用光源232Aから出射された光は、途中で遮蔽または吸収されずに読取センサー231に到達する。このため、光強度が「弱」であっても「強」であっても、読取センサー231からのセンサー出力は最大(max)となる。
【0106】
(ケース2)
ケース2は、専用光源232Aと読取センサー231との間に、第1搬送ベルト8の開口部80が位置せず、かつ、用紙Pが位置していない状況である。ケース2の場合、専用光源232Aから出射された光のうち、一部は第1搬送ベルト8で遮蔽または吸収され、残りは第1搬送ベルト8を透過して、読取センサー231に到達する。
【0107】
光強度が「弱」である場合、第1搬送ベルト8を透過する光量が少ないため、読取センサー231での受光量が低下する。このため、読取センサー231からのセンサー出力は最大値から低下する。一方、光強度が「強」である場合、専用光源232Aから出射された光の一部が第1搬送ベルト8で遮蔽または吸収されたとしても、第1搬送ベルト8を透過する光量が多く、読取センサー231での受光量が多い。このため、読取センサー231からの出力は最大となる。
【0108】
(ケース3)
ケース3は、専用光源232Aと読取センサー231との間に、第1搬送ベルト8の開口部80が位置し、かつ、用紙Pが位置する状況である。ケース3の場合、専用光源232Aから出射された光のうち、一部は用紙Pで遮蔽または吸収され、残りは用紙Pを透過して、読取センサー231に到達する。光強度が「弱」である場合、用紙Pでの光の遮蔽または吸収により、読取センサー231での受光量がケース2の場合よりもさらに低下する。このため、読取センサー231からのセンサー出力は、ケース2の場合よりもさらに低下する。光強度が「強」である場合、光強度が「弱」の場合に比べて、専用光源232Aから出射されて用紙Pを透過する光量が多く、読取センサー231での受光量が多い。このため、読取センサー231からの出力は、最大値から低下するものの、光強度が「弱」の場合よりも高くなる。
【0109】
(ケース4)
ケース4は、専用光源232Aと読取センサー231との間に、第1搬送ベルト8の開口部80が位置せず、かつ、用紙Pが位置する状況である。ケース4の場合、専用光源232Aから出射された光のうち、一部は第1搬送ベルト8および用紙Pで遮蔽または吸収され、残りは第1搬送ベルト8および用紙Pを透過して、読取センサー231に到達する。光強度が「弱」であっても「強」であっても、第1搬送ベルト8および用紙Pでの光の遮蔽または吸収の影響が大きいため、読取センサー231での受光量は、ケース3の場合よりもさらに低下する。このため、光強度が「弱」であっても「強」であっても、読取センサー231からのセンサー出力は、ケース3の場合よりもさらに低くなる。
【0110】
図13は、上述したケース1~4における光強度の強弱と、センサー出力との関係をまとめて示したグラフである。
図13に示すように、センサー出力は、最大値に到達するまでは光強度に比例する。このことを利用すると、専用光源232Aと読取センサー231との間に、例えば用紙Pが載置されていない開口部80が位置しているか否かを見分けることができ、そのためには、ケース1とそれ以外のケース2~4とを区別できればよい。
図13より、光強度が「弱」の条件での、ケース1でのセンサー出力(理論値)とケース2でのセンサー出力(理論値)との間に閾値Th-1を設定すれば、光強度が「弱」のときのセンサー出力(実測値)と閾値Th-1との大小関係に基づいて、ケース1とそれ以外のケースとを区別することができる。つまり、専用光源232Aと読取センサー231との間に、用紙Pが載置されていない開口部80が位置しているか否かを見分けることができる。
【0111】
例えば、専用光源232Aの光強度を「弱」にし、そのときの読取センサー231の出力(実測値)が閾値Th-1以上であれば、ケース1の場合に相当するため、専用光源232Aと読取センサー231との間に、用紙Pが載置されていない開口部80が位置していることになる。一方、専用光源232Aの光強度が「弱」のときに、読取センサー231の出力(実測値)が閾値Th-1未満であれば、ケース2~4のいずれかの場合に相当するため、専用光源232Aと読取センサー231との間に、開口部80が位置していないか(ケース2)、用紙Pが載置されている(ケース3、4)ことになる。
【0112】
したがって、専用光源232Aの光強度が「弱」の条件では、閾値Th-1以上である読取センサー231の出力が、読取センサー231の直下の読取位置に開口部80が位置する情報を示すことになる。
【0113】
また、専用光源232Aと読取センサー231との間に、例えば用紙Pが位置しているか否かを見分けるためには、ケース1および2をまとめたグループAと、ケース3および4をまとめたグループBとを互いに区別できればよい。
図13より、光強度が「強」の条件での、グループAでのセンサー出力(理論値)とグループB(例えば代表としてケース3)でのセンサー出力(理論値)との間に閾値Th-2を設定すれば、光強度が「強」のときのセンサー出力(実測値)と閾値Th-2との大小関係に基づいて、グループAとグループBとを区別することができる。つまり、専用光源232Aと読取センサー231との間に、用紙Pが位置しているか否かを見分けることができる。
【0114】
例えば、専用光源232Aの光強度を「強」にし、そのときの読取センサー231の出力(実測値)が閾値Th-2以上であれば、グループAの場合に相当するため、専用光源232Aと読取センサー231との間に用紙Pが位置していないことになる。一方、専用光源232Aの光強度が「強」のときに、読取センサー231の出力(実測値)が閾値Th-2未満であれば、グループBに相当するため、専用光源232Aと読取センサー231との間に、用紙Pが位置していることになる。
【0115】
したがって、専用光源232Aの光強度が「強」の条件では、閾値Th-2未満である読取センサー231の出力が、読取センサー231の直下の読取位置に用紙Pが位置する情報を示すことになる。
【0116】
以上、読取センサー231での受光量に応じたセンサー出力は、読取センサー231の直下の読取位置に用紙Pが位置するか否かを示す情報、または上記読取位置に開口部80が位置するか否かを示す情報と対応付けられる。したがって、光源制御部110eが、読取センサー231の読取モードに応じて、専用光源232Aから出射される光の光量(光強度)を切り替えることにより、第1の読取モードでは、第1の読取モードに応じた光量の光(例えば光強度が「弱」の光)を専用光源232Aから出射させて、読取センサー231に開口部80の情報を取得させることができる。また、第2の読取モードでは、第2の読取モードに応じた光量の光(例えば光強度が「強」の光)を専用光源232Aから出射させて、読取センサー231に用紙Pの情報を取得させることができる。つまり、情報読取部23が単一の専用光源232Aを用いる構成であっても、読取センサー231に用紙Pの情報と開口部80の情報とを両方取得させることができる。
【0117】
特に、光源制御部110eは、読取センサー231が第1の読取モードであるときに、専用光源232Aから出射される光の光量を相対的に低くする(光強度を「弱」にする)一方、読取センサー231が第2の読取モードであるときに、上記光量を相対的に高くする(光強度を「強」にする)。第1の読取モードでは、専用光源232Aからの出射光量が相対的に低いため、読取センサー231では、専用光源232Aから出射されて受光した光の光量に基づいて、受光した光が開口部80を通過した光であるか否かを検知して、開口部80の情報を取得することができる。また、第2の読取モードでは、専用光源232Aから出射される光の光量が相対的に高いため、読取センサー231では、専用光源232Aから出射されて受光した光の光量に基づいて、受光した光が用紙Pを通過した光であるか否かを検知して、用紙Pの情報を取得することができる。
【0118】
〔9.インク吐出タイミングの調整方法〕
上述したように、本実施形態のプリンター100は、読取センサー231を備える。読取センサー231は、第1の読取モードで、第1搬送ベルト8に形成された開口部80を読み取って開口部80の情報(以下、「開口部情報」とも称する)を取得し、第2の読取モードで、第1搬送ベルト8上に供給された用紙Pを読み取って用紙Pの情報(以下、「記録媒体情報」とも称する)を取得する。この読取センサー231には取付公差があるため、その取付公差に起因して、実際のプリンター100の使用時(例えばフラッシング時)に、開口部80を通過させるインクの適正なタイミングが、個々のプリンター100ごとに異なる。
【0119】
そこで、以下では、開口部情報および記録媒体情報を読み取るセンサーとして単一の読取センサー231を備えたプリンター100に適用されるインク吐出タイミングの調整方法について説明する。なお、本実施形態の調整方法は、例えばプリンター100の工場出荷時(厳密には出荷前)に行われるが、プリンター100が工場から出荷されて市場に出回った後であっても、部品交換やメンテナンスの際に、本実施形態の調整方法が併せて行われてもよい。
【0120】
図14は、本実施形態のインク吐出タイミングの調整方法による動作の流れを示すフローチャートである。上記調整方法は、用紙検知工程(S1)と、情報読取工程(S2)と、テストパターンの印刷工程(S3)と、補正値の入力受付工程(S4)と、遅延時間算出工程(S5)と、吐出タイミング設定工程(S6)と、を含む。以下、各工程について説明する。
【0121】
(S1;用紙検知工程)
用紙Pがレジストローラー対13から第1搬送ベルト8に向かって搬送されると、用紙センサー22により、第1搬送ベルト8に供給される上記用紙Pが検知される(S1)。用紙センサー22からは、用紙Pの検知信号(垂直同期信号VSYNC)が出力される。
【0122】
(S2;情報取得工程)
第1搬送ベルト8に供給された用紙Pは、読取センサー231の直下の読取位置に到達する。上記読取位置では、読取センサー231により、用紙Pに形成された開口部80の位置等の情報が開口部情報として読み取られるとともに、用紙Pの位置等の情報が記録媒体情報として読み取られる。
【0123】
ここでは、読取モード切替制御部110bにより、第1の読取モードと第2の読取モードとが、例えば1ドットの形成期間ずつ交互に切り替えられる。これにより、読取センサー231として、600dpiの解像度でモノクロ読み取り動作が可能なセンサーを用いた場合、読取センサー231により、開口部情報が300dpiの解像度で取得されるとともに、記録媒体情報が300dpiの解像度で取得される。なお、第1の読取モードと第2の読取モードとを交互に切り替えるサイクルは、上記した1ドットの形成期間には限定されず、上記1ドットの形成期間の2倍以上であってもよい。
【0124】
図15および
図16は、S2の情報取得工程で取得される記録媒体情報(用紙読取データ)および開口部情報(開口部読取データ)をそれぞれ示す。
図15に示すように、記録媒体情報としては、用紙Pの領域が白であり、それ以外の領域が黒である、白/黒の2値のデータ(300dpi)が得られる。また、
図16に示すように、開口部情報としては、開口部80の領域が白であり、それ以外の領域が黒である、白/黒の2値のデータ(300dpi)が得られる。なお、情報取得工程では、開口部情報および記録媒体情報のうち、記録媒体情報のみを読取センサー231が取得してもよいが、この例については後述する。
【0125】
また、情報取得工程では、光源制御部110eが、読取センサー231の読取モードに応じて、第1の光源232および第2の光源233(
図6参照)の点灯を切り替える。このときの第1の光源232および第2の光源233の点灯の切り替えは、
図7と同様のタイミングで行うことができる。つまり、第1の読取モードでは、第1の光源232が点灯し(第2の光源233は消灯し)、第2の読取モードでは、第2の光源233が点灯する(第1の光源232は消灯する)。したがって、読取センサー231は、第1の読取モードでは、第1の光源232から出射されて開口部80を透過した光を受光することにより、上記の開口部情報を取得することができ、第2の読取モードでは、第2の光源233から出射されて用紙Pで反射された光を受光することにより、上記の記録媒体情報を取得することができる。なお、各読取モードにおいて、第1の光源232および第2の光源233の点灯期間は、誤検知を防止する観点から、各読取モードの期間の約半分の期間とする。
【0126】
(S3;テストパターンの印刷工程)
次に、主制御部110aは、S2で取得した記録媒体情報に基づいて、用紙Pの先端を検出する。
図15で示した記録媒体情報において、上述したように、白で示す部分が用紙Pの領域に相当し、黒(ハッチング部分)で示す部分が用紙P以外の領域に相当する。したがって、主制御部110aは、用紙搬送方向の下流側から見て、画像データが黒から白に切り替わる部分PBを、用紙Pの先端の位置として検出することができる。
【0127】
次に、吐出制御部110dは、上記で検出された用紙Pの先端が、第1搬送ベルト8の走行により、読取センサー231による読取位置を通過した時点から、読取センサー231と記録ヘッド17a~17cとの間を用紙Pが搬送される時間として予め設定された初期設定時間Tdef(sec)を経過した後に、記録ヘッド17a~17cからインクを吐出させる。これにより、第1搬送ベルト8上の用紙Pに、テストパターンが印刷される。
【0128】
ここで、読取センサー231の設置位置には公差があるものの、読取センサー231と記録ヘッド17a~17cとの間の距離は、予め設計値に設定されている。また、用紙Pの搬送速度は、予め決まっている。したがって、読取センサー231と記録ヘッド17a~17cとの間を用紙Pが搬送される理論上の時間(初期設定時間Tdef)は、上記距離を上記搬送速度で除することによって求めることができる。また、上記のテストパターンは、どのようなパターンであってもよいが、ここでは、インクの吐出によって用紙幅方向に沿って形成されるラインを考えることができる。
【0129】
(S4;補正値の入力受付工程)
用紙P上にテストパターンが印刷されると、例えば作業者は、テストパターンの印刷位置を見て、テストパターンが本来の位置からどの程度ずれて形成されているか否かを判断することができる。例えば、テストパターンが、本来、用紙Pの先端から上流側に20mmの位置に形成されるように、インク吐出タイミングが初期設定されている場合において、読取センサー231の取付公差に起因して、S3で実際に印刷されたテストパターンの位置が、用紙Pの先端から上流側に22mmの位置であったとする。この場合、テストパターンの本来の位置と実際の位置とのずれ(2mm)に相当する時間Tc(sec)だけ、フラッシング時のインク吐出タイミングをずらさないと(上記の例では遅らさないと)、実際のプリンター100の使用におけるフラッシング時には、吐出したインクが開口部80から上流側に2mmだけずれた位置を通る。その結果、上記インクが開口部80から外れてその周囲のベルト部分に着弾し、第1搬送ベルト8を汚す事態が生じる。
【0130】
そこで、この場合、工場の作業者は、上記テストパターンの印刷位置に基づいて、操作パネル27で補正時間(上記の+2mmに対応する時間)に相当する補正値(例えば「+2」など)を入力する。つまり、操作パネル27は、作業者による上記補正値の入力を受け付ける。このような補正値の入力により、用紙読取データ(記録媒体情報)として300dpiのデータを用いつつ(補正の精度は300dpiであるが)、600dpiの各ドットを形成するインクの吐出タイミングを補正することが可能となる。
【0131】
(S5;遅延時間算出工程)
S4で、補正値の入力を受け付けると、主制御部110aは、上記補正値に対応する補正時間(上記の例では搬送距離+2mmに相当する時間Tc)を初期設定時間Tdefに加えて、読取センサー231での読取位置からインクの吐出タイミングを遅延させる時間としての遅延時間TL(sec)を算出する。つまり、TL=Tdef+Tcである。
【0132】
(S6;吐出タイミング設定工程)
S6では、主制御部110aは、第1搬送ベルト8の走行によって開口部80が読取位置を通過した時点から所定時間経過後に、記録ヘッド17a~17cが開口部80に対するインクの吐出を開始するときの上記所定時間を、S5で算出した遅延時間TLに設定する。これにより、実際のフラッシング時および画像形成時には、記録ヘッド17a~17cからのインクの吐出タイミングが、遅延時間TLに相当するライン数(600dpi換算)だけ、遅延時間TLへの設定前よりもずれる(
図15、
図16参照)。
【0133】
〔10.上記調整方法による効果〕
以上のように、本実施形態のインク吐出タイミングの調整方法では、遅延時間算出工程(S5)において、初期設定時間Tdefに補正時間(時間Tc)を加えて遅延時間TLを算出する。そして、インク吐出タイミング設定工程(S6)において、実際のフラッシング時に、用紙Pの先端が読取位置を通過してから所定時間の経過後に、開口部80に対するインクの吐出(フラッシング)を開始するときの上記所定時間を、上記遅延時間TLに設定する。これにより、読取センサー231に取付公差があったとしても、実際のプリンター100の使用時には、上記取付公差の補正値を加味した適切なタイミングで(読取位置から遅延時間TLの経過後に)、記録ヘッド17a~17cからインクを吐出させて開口部80を通過させることができる。その結果、フラッシングの際に、読取センサー231の取付公差に起因して、開口部80の周囲にインクが着弾して第1搬送ベルト8が汚れる事態を低減することができる。
【0134】
特に、本実施形態では、開口部情報を取得するセンサーと、記録媒体情報を取得するセンサーとが、共通の(同一の)読取センサー231である。このため、記録媒体情報に基づいて検出した用紙Pの先端を基準として印字した結果(テストパターン)から得られるインク吐出タイミングの補正値、つまり、記録ヘッド17a~17cに対する読取センサー231の位置ズレ量(取付公差)を加味した補正値を、画像形成時のインク吐出タイミングのズレ量の補正のみならず、フラッシングのときのインク吐出タイミングのズレ量の補正にも適用することができる。したがって、本実施形態のインク吐出タイミングの調整方法は、開口部情報と記録媒体情報とを同一の読取センサー231で取得する構成であるからこそ、実現することができると言える。
【0135】
また、S2の情報取得工程では、読取センサー231の読取モードを、第1の読取モードと第2の読取モードとで交互に切り替える。これにより、単一の読取センサー231を用いたプリンター100において、インク吐出タイミングの調整の際に、開口部情報と記録媒体情報とを取得することができる。記録媒体情報を取得することにより、S3のテストパターンの印刷工程では、記録媒体情報に基づいて第1搬送ベルト8上の用紙Pの領域を認識して用紙P上にテストパターンを印刷することができる。また、開口部情報を取得することにより、例えば、S6にてインク吐出タイミングを設定した後に、上記開口部情報に基づいて認識される開口部80の領域に、実際に記録ヘッド17a~17cからインクを吐出させて、開口部80を通過したか否か(第1搬送ベルト8の開口部80の周囲が汚れていないか)を確認することができる。
【0136】
また、S2の情報取得工程では、第1の読取モードと第2の読取モードとを、用紙Pに形成する画像の解像度を構成する1ドットの形成期間の整数倍ずつ、交互に切り替える。この場合、読取センサー231は、インク吐出タイミングの調整の際に、用紙Pに形成する画像の解像度よりも低い解像度でありながら、開口部80および用紙Pを認識できる程度に、開口部情報および記録媒体情報を取得することができる。
【0137】
特に、S2の情報取得工程では、第1の読取モードと第2の読取モードとを、上記1ドットの形成期間ずつ、交互に切り替える。これにより、読取センサー231は、インク吐出タイミングの調整の際に、用紙Pに形成する画像の解像度よりも低い解像度でありながら、できるだけ高精細の(粗くない)開口部情報および記録媒体情報を取得することができる。これにより、特に、記録媒体情報に基づいて、用紙Pの先端の位置を高精度に検出することが可能となる。
【0138】
また、S2の情報取得工程では、光源制御部110eにより、読取センサー231の読取モードに応じて、第1の光源232および第2の光源233の点灯が切り替えられる。そして、読取センサー231は、第1の読取モードでは、第1の光源232から出射されて開口部80を透過した光を受光することにより、上記の開口部情報を取得し、第2の読取モードでは、第2の光源233から出射されて用紙Pで反射された光を受光することにより、記録媒体情報を取得する。このように、単一の読取センサー231を用いた構成であっても、2種の光源(第1の光源232、第2の光源233)の点灯を切り替えることにより、インク吐出タイミングの調整の際に、上記した開口部情報と記録媒体情報とを両方とも取得することができる。
【0139】
ところで、S2の情報取得工程では、読取センサー231は、以下のようにして、開口部情報および記録媒体情報を取得してもよい。つまり、情報読取部23として、
図10で示した専用光源232Aと読取センサー231とを用い、光源制御部110eが、読取センサー231の読取モードに応じて、専用光源232Aから出射される光の光量を切り替える。そして、読取センサー231は、専用光源232Aから出射される、相対的に低い光量の光の受光量に基づいて開口部情報を取得し、専用光源232Aから出射される、相対的に高い光量の光の受光量に基づいて記録媒体情報を取得する。なお、読取モードに応じた光量の切り替えは、
図11で示した通常印刷時と同様のタイミングで行うことができる。
【0140】
このように、1個の専用光源232Aを用い、読取モードに応じて専用光源232Aの出射光量を切り替えることにより、読取センサー231は、受光量に応じた情報を開口部情報または記録媒体情報として取得することができる。なお、上記各情報の取得の原理については、
図12に基づいて先に説明した通りである。
【0141】
〔11.インク吐出タイミングの他の調整方法〕
図17は、インク吐出タイミングの他の調整方法によって取得される開口部情報および記録媒体情報を模式的に示す説明図である。上述したS2の情報取得工程では、S1の用紙検知工程での用紙センサー22での用紙Pの検知結果に基づいて、読取モード切替制御部110bが、第1の読取モードと第2の読取モードとを交互に切り替えてもよい。
【0142】
例えば、インク吐出タイミングの調整において、読取モード切替制御部110bは、
図9と同様に、用紙センサー22での用紙Pの検知結果に基づき、読取センサー231の読取位置を(第1搬送ベルト8の走行によって)用紙Pが通過する期間(VSYNCがハイレベルとなる期間)では、読取センサー231の読取モードを第2の読取モードに設定する一方、上記期間以外(VSYNCがローレベルとなる期間)では、読取センサー231の読取モードを第1の読取モードに設定してもよい。
【0143】
これにより、読取センサー231の直下の読取位置を用紙Pが通過する期間では、読取センサー231を常に第2の読取モードで動作させることができるため、読取センサー231は記録媒体情報を、解像度を落とさずに(例えば600dpiの解像度で)取得することができる。また、上記期間以外の期間では、読取センサー231を常に第1の読取モードで動作させることができるため、読取センサー231は開口部情報を、解像度を落とさずに(例えば600dpiの解像度で)取得することができる。つまり、600dpiの解像度でモノクロ読み取り動作が可能な読取センサー231を用いて、開口部情報および記録媒体情報をそれぞれ600dpiの高解像度で取得することができる。
【0144】
特に、記録媒体情報を600dpiの解像度で取得することにより、記録媒体情報に基づく用紙Pの先端の検出精度を上げることが可能となる。これにより、用紙Pの先端が、第1搬送ベルト8の走行により、読取センサー231による読取位置を通過した時点を精度よく判断して、インク吐出タイミングの調整を精度よく行うことが可能となる。つまり、記録媒体情報として600dpiの用紙読取データを用いることにより、600dpiの精度でインク吐出タイミングを補正することができる。
【0145】
ところで、第1搬送ベルト8による用紙Pの搬送速度(読取センサー231と記録ヘッド17a~17cとの間の用紙Pの搬送速度)と、第1搬送ベルト8に供給される用紙Pの搬送速度(例えばレジストローラー対13による第1搬送ベルト8への用紙Pの送り出し速度)とは、通常、同期(一致)するように制御される。しかし、何らかの原因で、これらの搬送速度の間にズレ(誤差)が生じると、例えば第1の読取モードから第2の読取モードに切り替わる前に、既に用紙Pの先端が読取センサー231の読取位置を通過している事態が生じ得る。この場合、第2の読取モードにおいて、読取センサー231が記録媒体情報を取得したとしても、その記録媒体情報に基づいて、用紙Pの先端(黒/白の境界)を検出することができない。
図17は、例として、第1搬送ベルト8による用紙Pの搬送速度が、レジストローラー対13による第1搬送ベルト8への用紙Pの送り出し速度よりも速い場合に取得された開口部情報(開口部読取データ)および記録媒体情報(用紙読取データ)を示している。
【0146】
そこで、上記の場合を想定して、記録媒体情報に基づいて用紙Pの先端を確実に検出するためには、第1の読取モードから第2の読取モードへの切り替えを、前もって行うことが望ましい。また、第1搬送ベルト8による用紙Pの搬送速度が、レジストローラー対13による第1搬送ベルト8への用紙Pの送り出し速度よりも遅い場合もあり得るため、第2の読取モードから第1の読取モードへの切り替えを、遅めに行うことが望ましい。
【0147】
つまり、S2の情報取得工程では、用紙センサー22での用紙Pの検知結果に基づいて、読取センサー231の読取位置を用紙P(特に先端)が通過する前に、読取センサー231の読取モードを第1の読取モードから第2の読取モードに切り替え、上記読取位置を用紙P(特に後端)が通過した後に、読取モードを第2の読取モードから第1の読取モードに切り替えることが望ましい。
【0148】
この場合、用紙センサー22で用紙Pを検知してから、読取センサー231の読取モードを第1の読取モードから第2の読取モードに切り替えるまでの遅延期間Tf1(sec)は、用紙センサー22と読取センサー231との間を用紙Pが搬送される理論上の時間をTs(sec)とし、マージンとなる時間をTm1(sec)として、以下の式(1)で表される。なお、マージンとなる時間Tm1とは、読取モードを第1の読取モードから第2の読取モードに前もって切り替える時点から、用紙Pの先端が読取位置を通過する時点までの余裕となる時間を指す。
Tf1=Ts-Tm1
【0149】
同様に、用紙センサー22で用紙Pを検知してから、読取センサー231の読取モードを第2の読取モードから第1の読取モードに切り替えるまでの遅延期間Tf2(sec)は、マージンとなる時間をTm2(sec)として、以下の式で表される。なお、マージンとなる時間Tm2とは、用紙Pの後端が読取位置を通過する時点から、読取モードを第2の読取モードから第1の読取モードに切り替える時点までの余裕となる時間を指す。
Tf2=Ts+Tm2
【0150】
ここで、用紙センサー22と読取センサー231との間の距離は、(読取センサー231に取付公差があったとしても)予め設計値に設定されている。また、レジストローラー対13による用紙Pの送り出し速度は、ほぼ決まっている。したがって、理論上の時間Ts(sec)は、上記距離を上記送り出し速度で除することによって求めることができる。なお、読取センサー231の取付公差に対応する誤差(搬送時間のズレ)については、上記のマージンとなる時間Tm1またはTm2で吸収することができる。
【0151】
図18は、読取モードの切り替えタイミングと、取得される開口部情報および記録媒体情報との関係を模式的に示している。ここでは、読取モードの切り替えが、時刻t1~t3において行われるとする。なお、時刻t1は、用紙Pの先端が用紙センサー22で検知される時刻を指す。時刻t2は、時刻t1から、遅延時間Tf1後の時刻を指す。時刻t3は、時刻t1から、遅延時間Tf2後の時刻を指す。
【0152】
時刻t1では、読取モード切替制御部110bにより、読取センサー231の読取モードが第2の読取モードから第1の読取モードに切り替えられる。したがって、時刻t1から次の切り替えタイミング(時刻t2)では、第1の読取モードにより、読取センサー231にて開口部情報(開口部読取データ)が取得される。なお、時刻t1において、読取センサー231の読取モードが既に第1の読取モードに設定されている場合(例えば前の用紙Pの読取終了後など)、その第1の読取モードが維持される。
【0153】
時刻t2では、読取モード切替制御部110bにより、読取センサー231の読取モードが第1の読取モードから第2の読取モードに切り替えられる。したがって、時刻t2から次の切り替えタイミング(時刻t3)までは、第2の読取モードにより、読取センサー231にて記録媒体情報(用紙読取データ)が取得される。
【0154】
時刻t3では、読取モード切替制御部110bにより、読取センサー231の読取モードが第2の読取モードから再び第1の読取モードに切り替えられる。したがって、時刻t3から次の切り替えタイミングまでは、第1の読取モードにより、読取センサー231にて開口部情報が取得される。以降、後続の用紙Pの先端が用紙センサー22で検知されるごとに、上記した時刻t1~t3での処理と同様の処理が繰り返される。
【0155】
上記のように、第1の読取モードから第2の読取モードへの切り替えは、読取センサー231による読取位置を用紙Pが通過する時点(時刻t1から)よりもマージンTm1の分だけ早めに行われ、第2の読取モードから第1の読取モードへの切り替えも、上記読取位置を用紙Pが通過してからマージンTm2の分だけ遅めに行われる。したがって、第1搬送ベルト8による用紙Pの搬送速度(読取センサー231と記録ヘッド17a~17cとの間の用紙Pの搬送速度)と、第1搬送ベルト8に供給される用紙Pの搬送速度(例えばレジストローラー対13による第1搬送ベルト8への用紙Pの送り出し速度)とが何らかの原因でずれたとしても、読取センサー231による読取位置を用紙Pが通過する期間が、時刻t2と時刻t3との間に収まる確率を上げることができる。したがって、読取センサー231が、第2の読取モードにおいて、用紙Pをその先端から読み取ることができる確率が上がる。その結果、主制御部110aは、読取センサー231が取得した記録媒体情報に基づいて、用紙Pの先端を検出することが確実に可能となり、上記した搬送速度のズレにも容易に対応することが可能となる。
【0156】
なお、紙間でフラッシングを行うためには、連続して搬送される用紙Pと用紙Pとの間に物理的な距離を確保する必要がある。上記したマージンTm1を長めに確保しすぎると、上記物理的距離が狭くなる。したがって、読取センサー231の読取位置を用紙Pが通過する前に、読取センサー231の読取モードを、第1の読取モードから第2の読取モードに早めに切り替える手法は、工場出荷後の通常印刷における読取モードの制御に適用することは好ましくはない。マージンTm1を長めに確保しすぎると、通常印刷時に、紙間でフラッシングを行うべく、上記物理的距離を確保するために、連続して搬送される用紙Pと用紙Pとの間隔を広げる必要が生じ、生産性の低下につながるからである。
【0157】
〔12.インク吐出タイミングのさらに他の調整方法〕
図19は、インク吐出タイミングのさらに他の調整方法によって取得される記録媒体情報を模式的に示す説明図である。上述したS2の情報取得工程では、読取モード切替制御部110bが読取センサー231の読取モードを第2の読取モードに固定し、読取センサー231が記録媒体情報のみを取得するようにしてもよい。そして、S3の印刷工程では、読取センサー231が第2の読取モードで取得した記録媒体情報に基づいて、吐出制御部110dが第1搬送ベルト8上の用紙Pの位置を認識し、その用紙Pに対して、第1搬送ベルト8の開口部に向かってインクを吐出するときの予め設定された吐出パターンで、記録ヘッド17a~17cからインクを吐出させることにより、用紙Pにテストパターンを印刷してもよい。
【0158】
このような読取センサー231の読取モードの制御では、S2の情報取得工程において、例えば第1の読取モードと第2の読取モードとを1ドットずつ交互に切り替えて開口部情報と記録媒体情報とを取得する場合に比べて、記録媒体情報を高解像度で(例えば600dpiで)取得することができる。これにより、取得した記録媒体情報に基づいて用紙Pの先端を高精度で検出することができる。その結果、
図17の場合と同様に、インク吐出タイミングの調整を精度よく行うことが可能となる。つまり、600dpiの精度でインク吐出タイミングを補正することができる。
【0159】
また、
図19の例では、予め設定されたフラッシング用の吐出パターンでインクを用紙Pに吐出させてテストパターンを印刷する。用紙Pに印刷されたフラッシングパターンをテストパターン代わりに用いても、作業者はテストパターンの印刷位置に基づいて、適切な補正値を入力することができる。この補正値の入力により、作業者はインク吐出タイミングを適切に補正することができる。
【0160】
〔13.その他〕
以上では、開口部群82(開口部列82)が搬送方向に等間隔で形成された第1搬送ベルト8を用いた例について説明したが、開口部群82が搬送方向に不定期の間隔で(間隔がランダムで)形成された第1搬送ベルト8を用いた場合でも、本実施形態の情報読取部23を適用して用紙Pの情報および開口部80の情報を取得することは可能である。
【0161】
以上では、用紙Pを負圧吸引によって第1搬送ベルト8に吸着させて搬送する場合について説明したが、第1搬送ベルト8を帯電させ、用紙Pを第1搬送ベルト8に静電吸着させて搬送するようにしてもよい(静電吸着方式)。
【0162】
以上では、インクジェット記録装置として、4色のインクを用いてカラーの画像を記録するカラープリンターを用いた例について説明したが、ブラックのインクを用いてモノクロの画像を記録するモノクロプリンターを用いた場合でも、本実施形態のフラッシングデータの生成およびフラッシング制御を適用することは可能である。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明は、インクジェットプリンターなどのインクジェット記録装置におけるインク吐出タイミングの調整に利用可能である。
【符号の説明】
【0164】
8 第1搬送ベルト
17a~17c 記録ヘッド
22 用紙センサー(記録媒体検知センサー)
231 読取センサー
232 第1の光源
232A 専用光源
233 第2の光源
80 開口部
100 プリンター(インクジェット記録装置)
P 用紙(記録媒体)