(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】移動式クレーン
(51)【国際特許分類】
B66C 23/00 20060101AFI20240611BHJP
B66C 13/46 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
B66C23/00 A
B66C13/46 F
(21)【出願番号】P 2020118383
(22)【出願日】2020-07-09
【審査請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】100196623
【氏名又は名称】松下 計介
(72)【発明者】
【氏名】元木 浩平
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-095370(JP,A)
【文献】特開2018-095364(JP,A)
【文献】特開2011-102167(JP,A)
【文献】特開2003-020192(JP,A)
【文献】特開2019-123594(JP,A)
【文献】特開2019-048681(JP,A)
【文献】特開2019-205168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00 - 15/06
B66C 19/00 - 23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回台に起伏自在のブームが設けられた移動式クレーンであって、
前記ブームを備えた前記移動式クレーンと前記移動式クレーンの周囲とを上方から撮影する撮影装置と、
前記撮影装置が撮影した画像を表示し、且つ前記ブームの移動軌跡を入力可能な表示装置と、
前記移動式クレーンのアクチュエータを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記撮影装置が撮影した前記移動式クレーンおよび前記移動式クレーンの周囲を含む画像を取得し、前記表示装置に前記画像を表示させ、前記画像と前記ブームの姿勢情報とから前記画像の座標系における前記ブームの旋回中心の座標および前記画像の座標系における前記ブームの先端の座標を算出し、前記画像上で設定された前記ブームの先端が通過する通過点の前記画像の座標系における座標を算出し、前記ブームの先端が前記通過点を所定の速度で通過するように前記移動式クレーンのアクチュエータを制御する、移動式クレーン。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記撮影装置が撮影した画像から前記ブームの先端部の画像を検出し、前記ブームの先端部の画像の向きおよび大きさと、前記ブームの姿勢情報とから前記画像における前記ブームの旋回中心の座標および前記画像の座標系における前記ブームの先端の座標を算出する、請求項1に記載の移動式クレーン。
【請求項3】
旋回台に起伏自在のブームが設けられた移動式クレーンであって、
前記ブームを備えた前記移動式クレーンと前記移動式クレーンの周囲とを上方から撮影する撮影装置と、
前記ブームの旋回中心の絶対座標を検出する第1GNSS受信機と、
前記ブームの延伸方向の方位を検出する方位センサと、
前記撮影装置の絶対座標を検出する第2GNSS受信機と、
前記撮影装置が撮影した画像を表示し、且つ前記ブー
ムの移動軌跡を入力可能な表示装置と、
前記移動式クレーンのアクチュエータを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記撮影装置が撮影した前記移動式クレーンおよび前記移動式クレーンの周囲を含む画像を取得し、前記表示装置に前記画像を表示させ、前記第1GNSS受信機から前記ブームの旋回中心の絶対座標を取得し、前記方位センサから前記ブームの延伸方向の方位を取得し、前記第2GNSS受信機から前記撮影装置の絶対座標を取得し、前記ブームの旋回中心の絶対座標と、前記撮影装置の絶対座標と、前記ブームの姿勢情報とから前記ブームの先端の絶対座標を算出し、
前記ブームの旋回中心の絶対座標と、前記撮影装置の絶対座標と、前記ブームの先端の絶対座標と、前記撮影装置の画角情報とから前記画像上の位置で設定された前記ブームの先端が通過する通過点の絶対座標を算出し、前記ブームの先端が前記通過点の絶対座標を所定の速度で通過するように前記移動式クレーンのアクチュエータを制御する、移動式クレーン。
【請求項4】
前記撮影装置は、
無人飛行体と、前記無人飛行体に設けられているカメラとから構成される請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の移動式クレーン。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記ブームからウインチによって繰り出しおよび繰り入れ自在に構成されているワイヤロープに吊り下げられているフックの地面からの鉛直方向の座標を算出し、前記ブームの先端が前記通過点を通過するように前記ブームを制御する際、前記フックの地面からの鉛直方向の座標を維持するように前記ウインチを制御する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の移動式クレーン。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記ウインチを操作するウインチ用操作具の操作信号を取得すると、前記操作信号に基づいて前記ウインチを制御する請求項5に記載の移動式クレーン。
【請求項7】
無人飛行体と、前記無人飛行体に設けられているカメラとから構成される障害物撮影装置を更に有し、
前記障害物撮影装置は、
前記フックに追従しながら前記フックの周辺を撮影する請求項5から請求項6のいずれか一項に記載の移動式クレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式クレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動式クレーンを用いて荷物を搬送する場合、前記移動式クレーンの操縦者は、前記クレーンのブームを操作するための旋回用操作具、起伏用操作具、伸縮用操作具、荷物を吊り上げ、吊り下げるためのウインチ用操作具等の複数の操作具を操作する必要がある。また、前記移動式クレーンの操縦者は、複数の操作具を同時に操作して、作業現場の構造物等に荷物が接触しないように移動式クレーンを操作しなくてはならない。また、移動式クレーンの操縦者は、作業現場の状況によっては、操縦席から荷物および荷物の周囲が視認できない範囲で荷物を搬送させなければならない。このように構成される移動式クレーンは、操縦者の技量と作業現場の状況によっては目的位置までの荷物の搬送が難しい場合があった。そこで、作業現場の3Dマップ上で入力された荷物の移動経路に基づいて荷物を自動的に搬送するクレーンが知られている。例えば、特許文献1の如くである。
【0003】
特許文献1に記載のクレーンは、ブーム先端のステレオカメラ等で取得した作業現場の三次元情報に基づいて吊荷(荷物)の三次元情報を抽出する。また、前記クレーンは、前記作業現場の三次元情報に基づいて平面図を作成する。次に、前記クレーンは、前記平面図上で操縦者によって入力されてた前記吊荷の水平方向の移動経路を取得する。更に、前記クレーンは、前記作業現場の三次元情報に基づいて水平方向の移動経路に沿って形成される展開断面図を作成する。前記クレーンは、前記展開断面図上で前記吊荷の高さ方向の移動経路を取得することで、前記吊荷の立体的な移動経路を特定する。前記クレーンは、特定した前記移動経路に沿って吊荷を自動的に移動させる。
【0004】
しかし、特許文献1に記載のクレーンは、前記ブームの先端に設けられたステレオカメラによって作業現場の三次元情報を取得するため、三次元情報を取得できない範囲が生じる場合がある。また、前記3Dマップは、リアルタイムで取得した前記作業現場の三次元情報から作成されていない。このため、前記クレーンの操縦者は、前記3Dマップを用いて前記吊荷の移動経路を特定する際、前記作業現場の状態が変化していても吊荷を移動させることができるように余裕を持った経路を選択する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、作業現場の状況をリアルタイムで把握しつつ、容易な操作で荷物を目的位置まで搬送することができる移動式クレーンの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
本発明の一実施形態に係る移動式クレーンは、旋回台に起伏自在のブームが設けられた移動式クレーンであって、前記ブームを備えた前記移動式クレーンを上方から撮影する撮影装置と、前記撮影装置が撮影した画像を表示し、且つ前記ブームの移動軌跡を入力可能な表示装置と、前記移動式クレーンのアクチュエータを制御する制御装置と、を備える。
【0009】
前記制御装置は、前記撮影装置が撮影した前記移動式クレーンと前記移動式クレーンの周囲を含む画像を取得し、前記表示装置に前記画像を表示させる。前記制御装置は、前記画像と前記ブームの姿勢情報とから前記画像の座標系における前記ブームの旋回中心の座標および前記画像の座標系における前記ブームの先端の座標を算出する。更に、前記制御装置は、前記画像上で設定された前記ブームの先端が通過する通過点の前記画像の座標系における座標を算出する。次に、前記制御装置は、前記ブームの先端が前記通過点の座標を所定の速度で通過するように前記移動式クレーンのアクチュエータを制御する。
【0010】
上述の構成では、前記移動式クレーンの制御装置は、撮影装置が撮影した前記移動式クレーンおよび前記移動式クレーンの周囲を含む画像において、前記移動式クレーンの旋回中心の座標と前記ブームの先端の座標とを算出する。前記制御装置は、前記移動式クレーンの旋回中心の座標と前記ブームの先端の座標とを算出することにより、前記画像の座標系を前記移動式クレーンの旋回中心を基準とするクレーン座標系に変換することができる。
【0011】
従って、前記移動式クレーンの操縦者は、前記画像上で前記移動式クレーンの周囲の状況をリアルタイムで確認しながら前記ブームの先端の通過点を前記画像上で設定することができる。また、前記制御装置は、前記ブームの先端が前記通過点を通過するように各アクチュエータを制御する自動搬送制御を行う。これにより、操縦者は、前記移動式クレーンによって作業現場の状況をリアルタイムで把握しつつ、容易な操作で荷物を目的位置まで搬送することができる。
【0012】
他の観点によれば、本発明の移動式クレーンは、以下の構成を含むことが好ましい。前記制御装置は、前記撮影装置が撮影した画像から前記ブームの先端部の画像を検出し、前記ブームの先端部の画像の向きおよび大きさと、前記ブームの姿勢情報とから前記画像の座標系における前記ブームの旋回中心の座標および前記画像の座標系における前記ブームの先端の座標を算出する。
【0013】
上述の構成では、前記制御装置は、予め取得している前記ブームの先端部の画像との比較等により、撮影装置が撮影した前記移動式クレーンを含む画像から前記画像の座標系における前記ブームの旋回中心の座標と前記ブームの先端部の座標とを自動的に検出する。前記制御装置は、前記ブームの旋回中心の座標を基準として前記画像上で指定された前記ブームの先端の通過点の座標を容易に算出することができる。これにより、操縦者は、前記移動式クレーンによって作業現場の状況をリアルタイムで把握しつつ、容易な操作で荷物を目的位置まで搬送することができる。
【0014】
本発明の一実施形態に係る移動式クレーンは、旋回台に起伏自在のブームが設けられた移動式クレーンであって、前記ブームを備えた前記移動式クレーンと前記移動式クレーンの周囲とを上方から撮影する撮影装置と、前記ブームの旋回中心の絶対座標を検出する第1GNSS受信機と、前記ブームの延伸方向の方位を検出する方位センサと、前記撮影装置の絶対座標を検出する第2GNSS受信機と、前記撮影装置が撮影した画像を表示し、且つ前記ブームの移動軌跡を入力可能な表示装置と、前記移動式クレーンのアクチュエータを制御する制御装置と、を備える。
【0015】
前記制御装置は、前記撮影装置が撮影した前記移動式クレーンおよび前記移動式クレーンの周囲を含む画像を取得し、前記表示装置に前記画像を表示させる。次に、前記制御装置は、前記第1GNSS受信機から前記ブームの旋回中心の絶対座標を取得し、前記方位センサから前記ブームの延伸方向の方位を取得し、前記第2GNSS受信機から前記撮影装置の絶対座標を取得する。前記制御装置は、前記ブームの旋回中心の絶対座標と、前記撮影装置の絶対座標と、前記ブームの姿勢情報とから前記ブームの先端の絶対座標を算出する。また、前記制御装置は、前記ブームの旋回中心の絶対座標と、前記撮影装置の絶対座標と、前記ブームの先端の絶対座標と、前記撮影装置の画角情報とから前記画像上の位置で設定された前記ブームの先端が通過する通過点の絶対座標を算出し、前記ブームの先端が前記通過点の絶対座標を所定の速度で通過するように前記移動式クレーンのアクチュエータを制御する。
【0016】
上述の構成では、前記移動式クレーンの制御装置は、前記ブームの旋回中心の絶対座標と前記ブームの延伸方向の方位と前記撮影装置の絶対座標と、前記撮影装置の画角情報と、前記ブームの姿勢情報とから、前記ブームの先端の絶対座標を算出する。また、前記制御装置は、前記撮影装置の絶対座標と前記撮影装置の画角情報とに基づいて前記画像の座標系における旋回中心の座標と前記ブームの先端の座標とを算出する。これにより、前記画像の座標系を絶対座標系に変換することができる。
【0017】
従って、前記移動式クレーンの操縦者は、前記画像上で前記移動式クレーンの周囲の状況をリアルタイムで確認しながら前記ブームの先端の通過点を画像上で設定することができる。また、前記制御装置は、前記ブームの先端が前記通過点を通過するように各アクチュエータを制御する自動搬送制御を行う。これにより、操縦者は、前記移動式クレーンによって作業現場の状況をリアルタイムで把握しつつ、容易な操作で荷物を目的位置まで搬送することができる。
【0018】
他の観点によれば、本発明の移動式クレーンは、以下の構成を含むことが好ましい。前記撮影装置は、無人飛行体と、前記無人飛行体に設けられているカメラとから構成される。
【0019】
上述の構成では、前記移動式クレーンは、前記移動式クレーンおよび前記移動式クレーンの周囲の画像を任意の位置から前記撮影装置によって撮影することができる。従って、前記起動式クレーンは、移動式クレーンの作業範囲、作業現場の状況に応じてた画像を取得することができる。これにより、操縦者は、クレーンによって作業現場の状況をリアルタイムで把握しつつ、容易な操作で荷物を目的位置まで搬送することができる。
【0020】
他の観点によれば、本発明の移動式クレーンは、以下の構成を含むことが好ましい。前記制御装置は、前記ブームからウインチによって繰り出しおよび繰り入れ自在に構成されているワイヤロープに吊り下げられているフックの地面からの鉛直方向の座標を算出する。前記制御装置は、前記ブームの先端が前記通過点を通過するように前記ブームを制御する際、前記フックの地面からの鉛直方向の座標を維持するように前記ウインチを制御する。
【0021】
上述の構成では、前記移動式クレーンは、前記ブームの先端が操縦者によって指示された通過点を通過するように前記ブームが起伏、伸縮されてもフックに吊られている荷物の上下方向の位置を維持する。従って、操縦者は、前記ブームの動きに合わせて荷物の高さを制御する必要がない。これにより、操縦者は、前記移動式クレーンによって作業現場の状況をリアルタイムで把握しつつ、容易な操作で荷物を目的位置まで搬送することができる。
【0022】
他の観点によれば、本発明の移動式クレーンは、以下の構成を含むことが好ましい。前記制御装置は、前記ウインチ用の操作具の操作信号を取得すると、前記操作信号に基づいて前記ウインチを制御する。
【0023】
上述の構成では、前記移動式クレーンは、自動搬送制御中に前記フックに吊られている荷物の上下方向の位置が維持されている状態から操縦者の操作によって前記荷物の上下方向の位置を変更できる状態に切り替えることができる。操縦者は、自動搬送制御中において前記荷物の上下方向の位置を変更する操作に集中することができる。これにより、操縦者は、移動式クレーンによって作業現場の状況をリアルタイムで把握しつつ、容易な操作で荷物を目的位置まで搬送することができる。
【0024】
他の観点によれば、本発明の移動式クレーンは、以下の構成を含むことが好ましい。前記移動式クレーンは、無人飛行体と、前記無人飛行体に設けられているカメラとから構成される障害物撮影装置を更に有する。また、前記障害物撮影装置は、前記フックに追従しながら前記フックの周辺を撮影する。
【0025】
上述の構成では、前記移動式クレーンは、前記障害物撮影装置が前記荷物の周辺を撮影する。従って、前記移動式クレーンの操縦者は、前記荷物の周囲を確認しながら前記荷物の上下方向の位置を変更することができる。これにより、操縦者は、前記移動式クレーンによって作業現場の状況をリアルタイムで把握しつつ、容易な操作で荷物を目的位置まで搬送することができる。
【0026】
本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態のみを定義する目的で使用されるのであって、前記専門用語によって発明を制限する意図はない。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。一般的に使用される辞書に定義された用語は、関連する技術及び本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想的または過度に形式的な意味で解釈されることはない。
【0027】
本発明の説明においては、いくつもの技術および工程が開示されていると理解される。これらの各々は、個別の利益を有し、他に開示された技術の1つ以上、または、場合によっては全てと共に使用することもできる。したがって、明確にするために、本発明の説明では、不要に個々のステップの可能な組み合わせをすべて繰り返すことを控える。しかしながら、本明細書及び特許請求の範囲は、そのような組み合わせがすべて本発明の範囲内であることを理解して読まれるべきである。
【0028】
以下の説明では、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な例を述べる。しかしながら、当業者は、これらの具体的な例がなくても本発明を実施できることが明らかである。よって、以下の開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面または説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【発明の効果】
【0029】
本発明の一実施形態によれば、操縦者は、クレーンによって作業現場の状況をリアルタイムで把握しつつ、容易な操作で荷物を目的位置まで搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明に係るクレーンの全体構成を示す全体図。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るクレーンの制御構成を示すブロック図。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るクレーンによるクレーンの位置関係を取得する状態を示す模式図。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る画像処理装置の制御構成を示すブロック図。
【
図5】本発明の第1実施形態に係るクレーンの通過点を指示している画像を示す概略図。
【
図6】本発明の第1実施形態に係るクレーンの自動搬送制御のフローチャートを示す図。
【
図7】本発明の第2実施形態に係るクレーンの制御構成を示すブロック図。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る画像処理装置の制御構成を示すブロック図。
【
図9】本発明の第2実施形態に係るクレーンの通過点を指示している画像を示す概略図。
【
図10】本発明の第2実施形態に係るクレーンの自動搬送制御のフローチャートを示す図。
【
図11】本発明の第2実施形態の他の実施形態に係る画像処理装置の制御構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、
図1と
図2とを用いて、本発明の第1実施形態に係る移動式クレーン(ラフテレーンクレーン)であるクレーン1について説明する。なお、本実施形態においては、ラフテレーンクレーンついて説明を行うが、オールテレーンクレーン、トラッククレーン等でもよい。
【0032】
図1と
図2とに示すように、クレーン1は、任意の場所に移動可能な移動式クレーンである。クレーン1は、車両2、クレーン装置6、撮影装置20(
図2参照)、表示装置24(
図2参照)、通信機25(
図2参照)、画像処理装置26(
図2参照)、制御装置27(
図2参照)を有する。
【0033】
車両2は、クレーン装置6を搬送する走行体である。車両2は、複数の車輪3を有し、エンジン4を動力源として走行する。車両2には、アウトリガ5が設けられている。アウトリガ5は、車両2の幅方向両側に油圧によって延伸可能な張り出しビームと地面に垂直な方向に延伸可能な油圧式のジャッキシリンダとから構成されている。
【0034】
クレーン装置6は、荷物Wをワイヤロープによって吊り上げる作業装置である。クレーン装置6は、旋回台7、ブーム9、ジブ9b、メインフックブロック10、サブフックブロック11、起伏用油圧シリンダ12、メインウインチ13、メインワイヤロープ14、サブウインチ15、サブワイヤロープ16およびキャビン17等を具備する。
【0035】
旋回台7は、クレーン装置6を旋回可能に構成する回転装置である。旋回台7は、円環状の軸受を介して車両2のフレーム上に設けられる。旋回台7は、円環状の軸受の中心を回転中心として回転自在に構成されている。旋回台7には、アクチュエータである油圧式の旋回用油圧モータ8が設けられている。旋回台7は、旋回用油圧モータ8によって一方向と他方向とに旋回可能に構成されている。
【0036】
ブーム9は、荷物Wを吊り上げ可能な状態にメインワイヤロープ14およびサブワイヤロープ16を支持する可動支柱である。ブーム9は、複数のブーム部材から構成されている。ブーム9は、ベースブーム部材の基端が旋回台7の略中央に揺動可能に設けられている。ブーム9は、各ブーム部材をアクチュエータである伸縮用油圧シリンダ9a(
図2参照)で移動させることで軸方向に伸縮自在に構成されている。また、ブーム9には、ジブ9bが設けられている。
【0037】
メインフックブロック10とサブフックブロック11とは、荷物Wを吊るものである。メインフックブロック10には、メインワイヤロープ14が巻き掛けられる複数のフックシーブと、荷物Wを吊るメインフック10aとが設けられている。サブフックブロック11には、荷物Wを吊るサブフック11aが設けられている。
【0038】
起伏用油圧シリンダ12は、ブーム9を起立および倒伏させ、ブーム9の姿勢を保持するアクチュエータである。起伏用油圧シリンダ12は、シリンダ部の端部が旋回台7に起伏自在に連結され、ロッド部の端部がブーム9のベースブーム部材に揺動自在に連結されている。
【0039】
メインウインチ13とサブウインチ15とは、メインワイヤロープ14とサブワイヤロープ16との繰り入れ(巻き上げ)および繰り出し(巻き下げ)を行うものである。メインウインチ13は、メインワイヤロープ14が巻きつけられるメインドラムがアクチュエータである図示しないメイン用油圧モータによって回転されるように構成されている。サブウインチ15は、サブワイヤロープ16が巻きつけられるサブドラムがアクチュエータである図示しないサブ用油圧モータによって回転されるように構成されている。
【0040】
キャビン17は、操縦席を覆う筐体である。キャビン17は、旋回台7に搭載されている。図示しない操縦席が設けられている。操縦席には、車両2を走行操作するための走行用操作具18、クレーン装置6を操作するためのクレーン装置用操作具19、撮影装置20を操作するための遠隔操作端末等が設けられている(
図2参照)。
【0041】
図2と
図3とに示すように、撮影装置20は、クレーン1および作業現場におけるクレーン1の周囲を撮影する。撮影装置20は、無人飛行体21、カメラ22を備える。
【0042】
無人飛行体21は、制御信号によって遠隔操作および自立飛行可能な自立型無人飛行体(ドローン)である。無人飛行体21は、例えば、複数のプロペラを有するマルチコプターである。無人飛行体21は、遠隔操作端末23と制御信号等を送受信可能に構成されている。これにより、無人飛行体21は、遠隔操作端末23によって任意の位置に移動可能に構成されている。なお、無人飛行体21は、クレーン1のブーム9等に取り付けられたビーコン、画像処理装置26が検出したブーム9の画像、ブーム9に設けられたARタグ等を追従するように構成されていてもよい。
【0043】
カメラ22は、無人飛行体21に設けられている。カメラ22は、無人飛行体21の鉛直下方を撮影するように構成されている。カメラ22は、遠隔操作端末23からの制御信号等を取得可能に構成されている。また、カメラ22は、撮影した画像データを画像処理装置26に送信可能に構成されている。これにより、カメラ22は、遠隔操作端末23によって、撮影の開始、停止、撮影方向の決定、ズーム等の操作を行うことができる。
【0044】
遠隔操作端末23は、無人飛行体21およびカメラ22の操作を行う操作端末である。遠隔操作端末23は、キャビン17に配置されている。遠隔操作端末23は、携帯可能な筐体に無人飛行体21の操作具およびカメラ22の操作具が設けられている。つまり、遠隔操作端末23は、キャビン17の外部に持ち運び可能な携帯操作端末として構成されている。遠隔操作端末23は、操作具の操作によって無人飛行体21をクレーン1の上方に配置し、任意の位置でホバリングさせることができる。遠隔操作端末23は、無人飛行体21およびカメラ22に制御信号を送受信可能に構成されている。また、遠隔操作端末23は、クレーン1の制御装置27に入力信号、操作信号等を送受信可能に構成されている。遠隔操作端末23には、表示装置24が設けられている。
【0045】
表示装置24は、カメラ22が撮影した画像Pを表示する。表示装置24は、液晶モニタ等から構成されている。表示装置24は、クレーン1の操縦者が視認可能な位置に配置されている。表示装置24は、カメラ22が撮影した画像Pを、遠隔操作端末23を介して取得可能に構成されている。表示装置24には、カメラ22が撮影した画像P、およびカメラ22が撮影した画像Pに基づいて算出されたクレーン1に関する情報が表示される。また、表示装置24には、自動搬送制御を開始する自動搬送制御スイッチ24aと、メインウインチ13またはサブウインチ15のウインチ用操作具としてウインチ用操作スイッチ24bが表示されている。
【0046】
表示装置24は、画面から制御信号を入力可能なタッチパネル等の入力装置として構成されている。表示装置24は、画面からブーム9の移動軌跡であるブーム9の先端の通過点を入力可能に構成されている。なお、表示装置24は、画面から無人飛行体21およびカメラ22の操作信号を入力可能に構成してもよい。また、表示装置24は、遠隔操作端末23と別に独立してキャビン17に配置されていてもよい。
【0047】
通信機25は、画像データ、制御信号を送受信するものである。通信機25は、遠隔操作端末23に設けられている。通信機25は、画像処理装置26との間で撮影装置20の無人飛行体21およびカメラ22の制御信号を送受信することができる。また、通信機25は、カメラ22が撮影した画像Pを画像処理装置26に送信することができる。通信機25は、無人飛行体21およびカメラ22のとの間で制御信号を送受信することができる。通信機25は、カメラ22が撮影した画像Pを受信することができる。
【0048】
画像処理装置26は、撮影装置20のカメラ22が撮影した画像P(
図4参照)を処理する。また、画像処理装置26は、無人飛行体21およびカメラ22の動作を制御する。画像処理装置26は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。本実施形態において、画像処理装置26は、遠隔操作端末23に設けられている。画像処理装置26は、撮影装置20の無人飛行体21、カメラ22等の動作を制御したり画像データを処理したりするために種々のプログラムおよびデータが格納されている。画像処理装置26は、制御装置27に接続されている。つまり、画像処理装置26は、電気的に制御装置27に含まれるものとする。なお、画像処理装置26は、制御装置27と一体に構成されていてもよい。
【0049】
画像処理装置26は、表示装置24に接続されている。画像処理装置26は、表示装置24から無人飛行体21およびカメラ22の操作信号を取得することができる。画像処理装置26は、表示装置24から入力された無人飛行体21の操作信号に基づいて無人飛行体21の制御信号を生成する。同様に、画像処理装置26は、表示装置24から入力されたカメラ22の操作信号に基づいてカメラ22の制御信号を生成する。画像処理装置26は、通信機25に接続されている。画像処理装置26は、生成した制御信号を、通信機25を介して無人飛行体21またはカメラ22に送信する。
【0050】
画像処理装置26は、予め保持している学習モデルに基づいて、カメラ22が撮影した画像Pからブーム9の先端部を検出する。画像処理装置26は、本実施形態において、画像Pのカラーヒストグラムによるベクトル化、オートエンコーダによるベクトル化および局所特徴量によるベクトル化等を併用してそれぞれのベクトル化による特徴量の算出を行う。カラーヒストグラムによるベクトル化は、色の強度と出現頻度を特徴量としてベクトル化する手法である。オートエンコーダによるベクトル化は、オートエンコーダの中間層を、画像Pを代表する特徴量とする手法である。オートエンコーダは、3層ニューラルネットにおいて、入力層と出力層に同じデータを用いて教師あり学習をさせたものである。局所特徴量によるベクトル化は、KAZE局所特徴量を用いて画像Pをベクトル化する手法である。
【0051】
画像処理装置26は、画像Pのカラーヒストグラムによるベクトル化、オートエンコーダによるベクトル化および局所特徴量によるベクトル化により、3つの特徴量を算出する。なお、特徴量としては、画像Pに含まれる輝度値、エッジのヒストグラム、色とエッジの相関関数等でもよい。また、画像処理装置26は、HOG(Histogram of Oriented Gradients)、SIFT(Scale Invariant Feature Transform)等の画像Pの局所特徴量を算出するようにしてもよい。
【0052】
次に、
図4を用いて、クレーン1の画像処理装置26におけるブーム9の先端部分とブーム9の延伸方向との検出について説明する。画像処理装置26は、基準画像保持部26a、判定画像検出部26b、姿勢判定部26cを有している。画像処理装置26は、ブーム9の先端の所定範囲を教師あり学習させた学習モデルを有している。画像処理装置26は、カメラ22が撮影した画像Pの3つの特徴量からブーム9の先端部分とブーム9の延伸方向とを検出することができる。
【0053】
図4に示すように、基準画像保持部26aは、画像処理装置26の一部であり、ブーム9の先端部分の基準画像Isを予め保持している。基準画像Isは、ブーム9の先端部分を判定するための基準となる画像である。基準画像Isは、任意に定めた基準姿勢でのブーム9の先端部分の画像の少なくとも一部の画像から構成される。つまり、基準画像Isは、ブーム9の先端部分の基準姿勢を示す画像である。本実施形態において、基準姿勢は、所定の起伏角度のブーム9とする。つまり、基準画像Isは、所定の起伏角度のブーム9の先端部分を上方から撮影した画像の少なくとも一部から構成されている。
【0054】
判定画像検出部26bは、画像処理装置26の一部であり、現在の画像Pから基準画像Isに該当する部分の画像を判定画像Ijとして検出する。判定画像Ijは、ブーム9の先端部分の基準姿勢に対する現在の画像Pにおけるブーム9の先端部分の画像である。つまり、判定画像Ijは、現在の画像Pにおけるブーム9の先端部分の基準画像Isに対する相対的な姿勢を算出するための画像である。判定画像Ijは、現在の画像Pにおけるブーム9の先端部分の少なくとも一部の画像から構成される。
【0055】
判定画像検出部26bは、選択した基準画像Isの特徴点を算出することができる。さらに、判定画像検出部26bは、現在の画像Pから特徴点を算出することができる。判定画像検出部26bは、基準画像Isの特徴点と現在の画像Pの特徴点とを比較し、現在の画像Pから基準画像Isに該当する部分を判定画像Ijとして検出することができる。
【0056】
姿勢判定部26cは、画像処理装置26の一部であり、荷物Wの基準姿勢に対する現在のブーム9の延伸方向の方位Dを判定する。姿勢判定部26cは、基準画像Isと判定画像Ijとの比較から基準画像Isに対する判定画像Ijの形状、向きおよび傾きを算出可能に構成されている。姿勢判定部26cは、基準画像Isの各部の座標と、判定画像Ijの各部の座標とから、ブーム9の先端部分の基準姿勢に対する現在の画像Pの座標系におけるブーム9の先端座標Bとブーム9の延伸方向の方位Dを算出することができる。
【0057】
画像処理装置26は、検出したブーム9の先端部分の画像Pにおける大きさ、ブーム9の延伸方向、ブーム9の起伏角度、ブーム9の伸縮長さ、ブーム9の旋回角度およびブーム9の形状寸法等のブーム9の姿勢情報とから、画像Pの座標系におけるブーム9の旋回中心の座標である旋回中心座標Cとを算出することができる。画像処理装置26は、算出した先端座標B、旋回中心座標C、ブーム9の方位Dを表示装置24に表示されている画像Pに重畳表示させる。
【0058】
画像処理装置26は、画像Pの座標系におけるブーム9の先端座標B、ブーム9の旋回中心座標Cおよびブーム9の姿勢情報から、画像Pの座標系をブーム9の旋回中心を原点とするクレーン座標系に変換する変換式を算出することができる。画像処理装置26は、変換式によって画像Pの座標系における先端座標Bおよび旋回中心座標Cをクレーン座標系における変換先端座標Bcおよび変換旋回中心座標Ccに変換することができる。
【0059】
また、画像処理装置26は、表示装置24から入力されたブーム9の先端の通過点の位置を画像Pの座標系における座標である通過点座標T1(x1、y1)、T2(x2、y2)、・・(以下、単に「通過点座標T(n)」と記す。nは順番を示す整数。)取得する。更に、画像処理装置26は、変換式によって通過点座標T(n)をクレーン座標系の座標である変換通過点座標Tc1(xc1、yc1)、Tc2(xc2、yc2)、・・(以下、単に「変換通過点座標Tc(n)」と記す。nは順番を示す整数。)に変換する(
図5参照)。画像処理装置26は、変換通過点座標Tc(n)を、制御装置27に送信する。
【0060】
図2に示すように、制御装置27は、クレーン1の各アクチュエータを制御する。制御装置27は、キャビン17内に設けられている。制御装置27は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。制御装置27は、アクチュエータ、切換え弁、センサ等の動作を制御したり画像データを処理したりするために種々のプログラムおよびデータが格納されている。制御装置27には、画像処理装置26が含まれている。
【0061】
図2と
図4とに示すように、制御装置27は、走行用操作具18およびクレーン装置用操作具19に接続されている。制御装置27は、走行用操作具18、クレーン装置用操作具19のそれぞれの操作信号を取得することができる。制御装置27は、走行用操作具18の操作により生成される操作信号に基づいて、車両2の制御信号を生成する。同様に、制御装置27は、クレーン装置用操作具19の操作により生成される操作信号に基づいて、クレーン装置6の制御信号を生成する。制御装置27は、生成した制御信号をクレーン装置6の各アクチュエータに送信することができる。
【0062】
制御装置27は、ブーム9の姿勢情報とメインウインチ13によるメインワイヤロープ14の繰り出し量、またはサブウインチ15によるサブワイヤロープ16の繰り出し量からメインワイヤロープ14に吊り下げられているメインフック10aまたはサブワイヤロープ16に吊り下げられているサブフック11aの地面から鉛直方向の高さ(鉛直方向の座標)を算出することができる。また、制御装置27は、ブーム9の先端が通過点を通過するようにブーム9を制御する際、メインフック10aまたはサブフック11aの地面からの鉛直方向の座標が変動しないようにメインウインチ13またはサブウインチ15を制御することができる。つまり、クレーン1は、自動搬送制御によって荷物Wを搬送する場合、荷物Wの地面からの高さを一定に維持する。
【0063】
制御装置27は、画像処理装置26に有線または無線で接続されている。制御装置27は、画像処理装置26にブーム9の姿勢情報を送信することができる。制御装置27は、画像処理装置26からクレーン座標系におけるブーム9の先端の通過点の座標である複数の変換通過点座標Tc(n)を取得することができる。制御装置27は、画像処理装置26からクレーン座標系におけるブーム9の先端の座標である変換先端座標Bcとブーム9の旋回中心の座標である変換旋回中心座標Ccを取得することができる。
【0064】
制御装置27は、取得した変換先端座標Bcと複数の変換通過点座標Tc(n)からブーム9の先端が複数の変換通過点座標Tc(n)を通過するための制御信号を生成することができる。制御装置27は、生成した変換通過点座標Tc(n)を通過するための制御信号をクレーン装置6の各アクチュエータに送信することができる。つまり、制御装置27は、荷物Wを通過点に沿って所定の速度で自動的に搬送する自動搬送制御を行うことができる。
【0065】
制御装置27は、画像処理装置26からメインウインチ13またはサブウインチ15の操作信号を取得することができる。制御装置27は、メインウインチ13またはサブウインチ15の操作信号に基づいて、メインウインチ13またはサブウインチ15の制御信号を生成する。制御装置27は、生成した制御信号をクレーン装置6の各アクチュエータに送信することができる。制御装置27は、自動搬送制御中に荷物Wの鉛直方向の位置を手動で変更することができる。
【0066】
このように構成されるクレーン1は、走行用操作具18の操作によって車両2を任意の位置に移動させることができる。また、クレーン1は、クレーン装置用操作具19の操作によって、ブーム9を旋回、起伏、伸縮させることで荷物Wを任意の位置に搬送することができる。また、クレーン1は、クレーン装置用操作具19の操作によって、メインウインチ13等で荷物Wを吊り上げたり吊り下げたりすることができる。一方、クレーン1は、撮影装置20が撮影した画像Pに基づいて設定された通過点をブーム9の先端が通過するように制御する自動搬送制御を行うことができる。
【0067】
以下に、
図4と
図5とを用いて、画像処理装置26による画像処理について説明する。なお、撮影装置20が撮影する画像Pには、クレーン1とクレーン1の周囲の作業現場が含まれている。クレーン1は、荷物Wをサブウインチ15によって所定の高さまで吊り上げた状態であるものとする。撮影装置20の無人飛行体21は、搬送開始前のブーム9の先端の上方でホバリングしているものとする(
図3参照)。また、無人飛行体21は、ブーム9が移動してもブーム9が移動する前のホバリング位置を維持するものとする。この際、画像処理装置26は、自動的に検出、または操縦者によって指定された建造物等の目標物の画面上の位置が変動しないように揺れ補正を行っているものとする。
【0068】
画像処理装置26は、通信機25を介してカメラ22が撮影したクレーン1の上方からの画像Pを単位時間毎に取得する(
図4参照)。合わせて、画像処理装置26は、制御装置27からブーム9の姿勢情報を単位時間毎に取得する。画像処理装置26は、取得した画像Pを表示装置24に表示させる。
【0069】
画像処理装置26は、カメラ22が撮影した最新の画像Pからブーム9の先端部の画像である判定画像Ijを検出する。画像処理装置26には、様々なクレーン1のブーム先端部分の画像からCNN(Convolutional Neural Network)を用いて検出されたブーム9の先端部分の画像である基準画像Isが予め格納されている(
図4参照)。
【0070】
画像処理装置26は、基準画像Isに基づいてCNNを用いた画像分類により、最新の画像Pからブーム9の先端部の画像である判定画像Ijを検出する。画像処理装置26は、検出した判定画像Ijとブーム9の姿勢情報とから判定画像Ijにおけるブーム9の軸線の方位Dと、前記軸線上のブーム9の先端の位置を画像Pの座標系で示した先端座標Bと、ブーム9の旋回中心を画像Pの座標系で示した旋回中心座標Cを算出する。
【0071】
具体的には、画像処理装置26は、ブーム9の姿勢情報であるブーム9先端の幅、ブーム9の起伏角度およびブーム9の伸縮長さから、ブーム9を上方から撮影した画像Pの座標系におけるブーム9の先端から基端までの長さを算出する。画像処理装置26は、算出した先端座標Bと軸線の方位Dとブーム9の先端から基端までの長さから旋回中心座標Cを算出する。これにより、画像処理装置26は、先端座標B、旋回中心座標C、軸線の方位Dおよびブーム9の姿勢情報とから、画像Pの座標系を、ブーム9の旋回中心を原点としてクレーン1の車両2の前進方向をY軸方向とするクレーン座標系に変換することができる。画像処理装置26は、画像Pの座標系における先端座標Bおよび旋回中心座標Cをクレーン座標系における変換先端座標Bcおよび変換旋回中心座標Ccに変換する。なお、本実施形態においてクレーン座標系は、直交座標としているが、極座標でもよい。
【0072】
操縦者は、ブーム9の先端を通過させる通過点を画像P上に入力する。操縦者は、通過点を複数の点の集合である線として入力する。つまり、操縦者は、ブーム9の先端の通過点をブーム9先端の軌跡線として、表示装置24に表示されている画像P上を指でなぞるなどして入力する。操縦者は、画像Pに表示されているクレーン1のブーム9と、荷物Wの吊り上げ位置および荷物Wの設置位置との状況をクレーン1の上方から確認しながら通過点を設定する。これにより、操縦者は、作業現場内の建造物の配置を踏まえて障害物を避けた搬送経路を直感的に設定することができる。
【0073】
画像処理装置26は、操縦者が表示装置24の画面上から入力した軌跡線上において所定の間隔毎に通過点の座標である通過点座標T(1)、T(2)・・通過点座標T(n)を算出する。次に、画像処理装置26は、画像Pの座標系における変換通過点座標Tc(n)に変換する。つまり、画像処理装置26は、画像P上の位置を示す通過点座標T(n)を作業現場における実際の位置を示す変換通過点座標Tc(n)に変換する(
図4参照)。画像処理装置26は、変換した変換通過点座標Tc(n)を制御装置27に送信する。
【0074】
制御装置27は、変換旋回中心座標Ccと変換先端座標Bcとに基づいて、ブーム9の先端を各変換通過点座標Tc(n)に移動させるための各アクチュエータの作動量を変換通過点座標Tc(n)毎に算出する。また、制御装置27は、吊り下げられている荷物Wの鉛直方向の座標を維持するためのサブウインチ15の作動量を算出する。
【0075】
制御装置27は、画像処理装置26を介して表示装置24に表示されている自動搬送制御スイッチ24aの操作信号を取得すると、算出した各アクチュエータの作動量に基づいて各アクチュエータを制御する。これにより、クレーン1は、操縦者が入力した通過点(軌跡線)の変換通過点座標Tc(n)に沿ってブーム9の先端が移動する(
図5の2点鎖線図参照)。この際、制御装置27は、サブフック11aの地面から鉛直方向の高さを維持するためにサブワイヤロープ16を繰り出したり繰り入れたりする。制御装置27は、サブウインチ15を操作するウインチ用操作スイッチ24bの操作信号を取得すると、操作信号に応じたサブウインチ15の制御信号を生成する。制御装置27は、荷物Wの鉛直方向の座標を維持する制御を解除してサブウインチ15の操作スイッチの操作信号に基づいて荷物Wの鉛直方向の座標を変更する。
【0076】
以下に、
図6を用いて、クレーン1の自動搬送制御のステップについて説明する。本実施形態において、撮影装置20は、カメラ22を備えた無人飛行体21が所定の位置にホバリングしながら下方のクレーン1を撮影しているものとする。また、制御装置27および画像処理装置26は、ブーム9の姿勢情報を有しているものとする。
【0077】
図6に示すように、クレーン1における自動搬送制御のステップS110において、制御装置27に含まれる画像処理装置26は、カメラ22が撮影したクレーン1を含む作業現場の最新の画像Pを取得する。画像処理装置26は、ステップをステップS120に移行させる。
【0078】
ステップS120において、画像処理装置26は、取得した最新の画像PからCNNを用いた画像分類により、基準画像Isに基づいてブーム9の先端部の画像である判定画像Ijを検出する。画像処理装置26は、ステップをステップS130に移行させる。
【0079】
ステップS130において、画像処理装置26は、検出した判定画像Ijとブーム9の姿勢情報とから判定画像Ijにおけるブーム9の軸線の方位Dと、前記軸線上のブーム9の先端の位置を画像Pの座標系で示した先端座標Bと、ブーム9の旋回中心を画像Pの座標系で示した旋回中心座標Cとを算出する。画像処理装置26は、ステップをステップS140に移行させる。
【0080】
ステップS140において、画像処理装置26は、ブーム9の姿勢情報と、先端座標Bと、旋回中心座標Cとから、画像Pの座標系をクレーン座標系に変換する変換式を算出する。画像処理装置26は、ステップをS150に移行させる。
【0081】
ステップS150において、画像処理装置26は、表示装置24から入力された画面上の通過点の位置を画像Pの座標系で示した通過点座標T(n)として算出する。画像処理装置26は、ステップをS160に移行させる。
【0082】
ステップS160において、画像処理装置26は、旋回中心座標C、先端座標Bおよび通過点座標T(n)を算出した変換式によって変換旋回中心座標Cc、変換先端座標Bcおよび変換通過点座標Tc(n)に変換する。画像処理装置26は、ステップをステップS170に移行させる。
【0083】
ステップS170において、制御装置27は、自動搬送制御スイッチ24aの操作信号を取得するとブーム9の先端が所定の速度で変換通過点座標Tc(n)を通過するように各アクチュエータを作動させる。制御装置27は、ステップをステップS180に移行させる。
【0084】
ステップS180において、制御装置27は、サブウインチ15を操作するウインチ用操作スイッチ24bの操作信号を取得したか否か判定する。
その結果、サブウインチ15を操作するウインチ用操作スイッチ24bの操作信号を取得した場合、制御装置27はステップをステップS190に移行させる。
一方、サブウインチ15を操作するウインチ用操作スイッチ24bの操作信号を取得していない場合、制御装置27はステップをステップS200に移行させる。
【0085】
ステップS190において、制御装置27は、サブウインチ15をウインチ用操作スイッチ24bの操作信号に基づいて作動させる。制御装置27は、ステップをステップS200に移行させる。
【0086】
ステップS200において、制御装置27は、ブーム9の先端が全ての変換通過点座標Tc(n)を通過したか否か判定する。
その結果、ブーム9の先端が全ての変換通過点座標Tc(n)を通過した場合、すなわち、荷物Wが目的位置まで搬送された場合、制御装置27はステップを終了させる。
一方、ブーム9の先端が全ての変換通過点座標Tc(n)を通過していない場合、制御装置27はステップをステップS180に移行させる。
【0087】
このように構成することで、画像処理装置26は、カメラ22が撮影したクレーン1およびクレーン1の周囲を含む画像Pにおいて、予め取得しているブーム9の先端部の画像Pとの比較等により、クレーン1の旋回中心の座標とブーム9の先端の座標とを自動的に算出する。制御装置27は、画像処理装置26によってブーム9の旋回中心座標Cと先端座標Bとを算出することにより、画像Pの座標系をクレーン1の旋回中心を基準とするクレーン座標系に変換することができる。
【0088】
画像処理装置26は、旋回中心座標Cを基準として画像P上で指定された通過点座標T(n)の変換通過点座標Tc(n)を容易に算出することができる。従って、クレーン1の操縦者は、画像P上でクレーン1の周囲の状況をリアルタイムで確認しながらブーム9の先端の通過点を画像P上で設定することができる。また、制御装置27は、ブーム9の先端が所定の速度で通過点を通過するように各アクチュエータを制御する自動搬送制御を行う。この際、クレーン1は、ブーム9の先端が操縦者によって指示された通過点を通過するようにブーム9が起伏、伸縮されてもフックに吊られている荷物Wの鉛直方向の座標を維持する。従って、操縦者は、ブーム9の動きに合わせて荷物Wの鉛直方向の位置を制御する必要がない。これにより、操縦者は、クレーン1によって作業現場の状況をリアルタイムで把握しつつ、容易な操作で荷物Wを目的位置まで搬送することができる。
【0089】
次に、
図7と
図8とを用いて、本発明の第2実施形態に係るクレーン1Aについて説明する。なお、以下の実施形態に係るクレーン1Aは、
図1から
図11に示すクレーン1が適用されるものとして、その説明で用いた名称、図番、符号を用いることで、同じものを指す。よって、以下の実施形態において、既に説明した実施形態と同様の点に関してはその具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
【0090】
図7に示すように、クレーン1Aは、任意の場所に移動可能な移動式クレーンである。クレーン1Aは、車両2、クレーン装置6、撮影装置20、表示装置24、第1GNSS受信機28、方位センサ29、第2GNSS受信機30、通信機25、画像処理装置26、制御装置27を有する。
【0091】
第1GNSS受信機28は、全球測位衛星システム(Global Navigation Satellite System)を構成する受信機である。第1GNSS受信機28は、衛星から測距電波を受信し、受信機の絶対座標である緯度、経度、標高を算出するものである。第1GNSS受信機28は、ブーム9の旋回中心に設けられている。クレーン1Aは、第1GNSS受信機28によって、ブーム9の旋回中心の絶対座標を取得することができる。
【0092】
方位センサ29は、方位を検出するものである。方位センサ29は、MRセンサ、MIセンサ等の地磁気センサ、2つのアンテナを有するGNSS受信機等から構成される。方位センサ29は、ブーム9の延伸方向の方位を検出する。方位センサ29は、ブーム9の旋回中心に設けられている。方位センサ29は、第1GNSS受信機28が兼用する構成でもよい。
【0093】
第2GNSS受信機30は、全球測位衛星システム(Global Navigation Satellite System)を構成する受信機である。第2GNSS受信機30は、衛星から測距電波を受信し、受信機の絶対座標である緯度、経度、標高を算出するものである。第2GNSS受信機30は、撮影装置20の無人飛行体21に設けられている。第2GNSS受信機30は、算出した絶対座標をクレーン1Aは、第2GNSS受信機30によって、無人飛行体21に設けられているカメラ22の絶対座標を取得することができる。
【0094】
通信機25は、第1GNSS受信機28が算出した絶対座標を受信することができる。通信機25は、第2GNSS受信機30が算出した絶対座標を受信することができる。
【0095】
図8に示すように、画像処理装置26は、カメラ22が撮影した画像Pを処理する。画像処理装置26は、第1GNSS受信機28が受信した旋回中心の絶対座標である絶対旋回中心座標Caと、方位センサ29が算出したブーム9の延伸方向の方位Dと、第2GNSS受信機30が受信したカメラ22の絶対座標である絶対カメラ座標Iaと、ブーム9の姿勢情報とから画像Pの座標系を絶対座標系に変換する変換式を算出することができる。画像処理装置26は、変換式を用いてブーム9の先端の絶対座標である絶対先端座標Baとを算出することができる。また、画像処理装置26は、変換式を用いて表示装置24に入力されたブーム9の先端の通過点の通過点座標T(n)から絶対通過点座標Ta(n)を算出することができる。画像処理装置26は、算出した絶対通過点座標Ta(n)を、制御装置27に送信する。
【0096】
以下に、
図9を用いて、画像処理装置26による画像処理について説明する。なお、撮影装置20が撮影する画像Pには、クレーン1Aとクレーン1Aの周囲の作業現場が含まれている。クレーン1Aは、荷物Wをサブウインチ15によって所定の高さまで吊り上げた状態であるものとする。撮影装置20の無人飛行体21は、搬送開始前のブーム9の先端の上方でホバリングしているものとする。また、無人飛行体21は、ブーム9が移動してもホバリング位置を維持するものとする。この際、画像処理装置26は、自動的または操縦者によって指定された建造物等の目標物の画面上の位置が変動しないように揺れ補正を行っているものとする。
【0097】
クレーン1Aの画像処理装置26は、通信機25を介してカメラ22が撮影したクレーン1Aの上方からの画像Pを単位時間毎に取得する。合わせて、画像処理装置26は、制御装置27からブーム9の姿勢情報を単位時間毎に取得する。画像処理装置26は、取得した画像Pを表示装置24に表示させる。
【0098】
画像処理装置26は、第1GNSS受信機28から絶対旋回中心座標Caを取得し、方位センサ29からブーム9の延伸方向の方位Dを取得し、第2GNSS受信機30から絶対カメラ座標Iaを取得する。画像処理装置26は、絶対カメラ座標Iaと絶対旋回中心座標Caとの位置関係に基づいて、絶対旋回中心座標Caとブーム9の延伸方向の方位Dとブーム9の姿勢情報とから絶対先端座標Baを算出する。また、画像処理装置26は、絶対カメラ座標Iaと、カメラ22の画角情報とに基づいて、画像Pの座標系における座標を絶対座標に変換する変換式を算出する。
【0099】
画像処理装置26は、操縦者が表示装置24の画面上から入力した複数の通過点の座標である通過点座標T(n)を算出する。画像処理装置26は、絶対カメラ座標Iaと、カメラ22の画角情報とに基づいて算出した関係式によって、算出した通過点座標T(n)から絶対通過点座標Ta(n)を算出する。つまり、画像処理装置26は、画像P上の位置を示す通過点座標T(n)から作業現場における実際の位置を絶対座標で示す絶対通過点座標Ta(n)を算出する。画像処理装置26は、算出した絶対通過点座標Ta(n)を制御装置27に送信する。
【0100】
制御装置27は、取得した複数の絶対通過点座標Ta(n)と絶対先端座標Baとからブーム9の先端を各絶対通過点座標Ta(n)に移動させるための各アクチュエータの作動量を絶対通過点座標Ta(n)毎に算出する。また、制御装置27は、吊り下げられている荷物Wの鉛直方向の座標を維持するためのサブウインチ15の作動量を算出する。
【0101】
以下に、
図10を用いて、クレーン1Aの自動搬送制御について説明する。本実施形態において、撮影装置20は、カメラ22を備えた無人飛行体21が所定の位置にホバリングしながら下方のクレーン1Aを撮影しているものとする。また、制御装置27および画像処理装置26は、ブーム9の姿勢情報を有しているものとする。
【0102】
図10に示すように、クレーン1Aにおける自動搬送制御のステップS110において、制御装置27に含まれる画像処理装置26は、カメラ22が撮影した最新の画像Pを取得する。画像処理装置26は、ステップをステップS220に移行させる。
【0103】
ステップS220において、画像処理装置26は、第1GNSS受信機28から絶対旋回中心座標Caを取得し、方位センサ29から延伸方向の方位Dを取得し、第2GNSS受信機30から絶対カメラ座標Iaを取得する。画像処理装置26は、ステップをステップS230に移行させる。
【0104】
ステップS230において、画像処理装置26は、絶対カメラ座標Iaと絶対旋回中心座標Caの位置関係に基づいて、絶対旋回中心座標Caとブーム9の延伸方向の方位Dとブーム9の姿勢情報とから絶対先端座標Baを算出する。画像処理装置26は、ステップをステップS240に移行させる。
【0105】
ステップS240において、画像処理装置26は、絶対カメラ座標Iaと、カメラ22の画角情報とに基づいて、画像Pの座標系における座標を絶対座標に変換する変換式を算出する。画像処理装置26は、ステップをステップS140に移行させる。
【0106】
ステップS150において、画像処理装置26は、表示装置24から入力された通過点の位置を画像Pの座標系で示した通過点座標T(n)として算出する。画像処理装置26は、ステップをS260に移行させる。
【0107】
ステップS260において、画像処理装置26は、画像Pの座標系における座標を絶対座標に変換する変換式によって通過点座標T(n)から絶対通過点座標Ta(n)を算出する。画像処理装置26は、ステップをS170に移行させる。
【0108】
ステップS300において、制御装置27は、ブーム9の先端が全ての絶対通過点座標Ta(n)を通過したか否か判定する。
その結果、ブーム9の先端が全ての絶対通過点座標Ta(n)を通過した場合、すなわち、荷物Wが目的位置まで搬送された場合、制御装置27はステップを終了させる。
一方、ブーム9の先端が全ての絶対通過点座標Ta(n)を通過していない場合、制御装置27はステップをステップS180に移行させる。
【0109】
このように構成することで、制御装置27は、ブーム9の絶対旋回中心座標Caとブーム9の延伸方向の方位Dと絶対カメラ座標Iaと、カメラ22の画角情報と、ブーム9の姿勢情報とから、絶対先端座標Baを算出する。また、制御装置27は、絶対カメラ座標Iaとカメラ22の画角情報とに基づいて画像Pの座標系における座標を絶対座標に変換する変換式を算出する。これにより、画像Pの座標系を絶対座標系に変換することができる。
【0110】
従って、クレーン1Aの操縦者は、画像P上でクレーン1Aの周囲の状況をリアルタイムで確認しながらブーム9の先端の通過点を画像P上で設定することができる。また、制御装置27は、ブーム9の先端が通過点を通過するように各アクチュエータを制御する自動搬送制御を行う。これにより、操縦者は、クレーン1Aによって作業現場の状況をリアルタイムで把握しつつ、容易な操作で荷物Wを目的位置まで搬送することができる。
【0111】
なお、上述の各実施形態において、クレーン1、1Aは、荷物Wと建造物等の障害物との接触を監視する障害物撮影装置31を更に備えていてもよい。
図11に示すように、本発明の第2実施形態の他の実施形態として、クレーン1Aは、障害物用無人飛行体32と、障害物用カメラ33とを含む障害物撮影装置31を備える。
【0112】
障害物用無人飛行体32は、制御信号によって遠隔操作および自立飛行可能な自立型無人飛行体(ドローン)である。障害物用無人飛行体32は、例えば、複数のプロペラを有するマルチコプターである。障害物用無人飛行体32は、遠隔操作端末23と制御信号等を送受信可能に構成されている。これにより、障害物用無人飛行体32は、遠隔操作端末23によって任意の位置に移動可能に構成されている。
【0113】
障害物用カメラ33は、障害物用無人飛行体32に設けられている。障害物用カメラ33は、障害物用無人飛行体32から任意の方向を撮影可能に構成されている。障害物用カメラ33は、遠隔操作端末23からの制御信号等を取得可能に構成されている。また、障害物用カメラ33は、撮影した画像データを画像処理装置26に送信可能に構成されている。これにより、障害物用カメラ33は、遠隔操作端末23によって、撮影の開始、停止、撮影方向の決定、ズーム等の操作を行うことができる。
【0114】
自動搬送制御が開始されると、制御装置27は、荷物Wと荷物Wの周辺を撮影可能な位置を維持しつつ荷物Wに追従するように障害物用無人飛行体32を制御する。制御装置27は、サブウインチ15を操作する操作スイッチの操作信号を取得すると、操作信号に応じたサブウインチ15の制御信号を生成する。制御装置27は、荷物Wの吊り下げ位置を維持する制御を解除してサブウインチ15の操作スイッチの操作信号に基づいて荷物Wの吊り下げ位置を変更する。同時に、制御装置27は、荷物Wの吊り下げ位置に追従するように障害物用無人飛行体32を自動的に制御する。制御装置27は、障害物用カメラ33によって荷物Wと荷物Wの周辺の画像Pを取得する。
【0115】
障害物撮影装置31を備えるクレーン1Aの操縦者は、自動搬送制御時に荷物Wの鉛直方向の位置を変更する場合、障害物撮影装置31からの画像Pを確認しながら荷物Wの鉛直方向の位置を調整することができる。また、障害物撮影装置31を備えるクレーン1Aの操縦者は、遠隔操作端末23から障害物用無人飛行体32を任意の位置に移動させることができる。これにより、操縦者は、クレーン1Aによって作業現場の状況をリアルタイムで把握しつつ、容易な操作で荷物Wを目的位置まで搬送することができる。
【0116】
なお、上述の各実施形態において、クレーン1、1Aの制御装置27は、自動搬送制御時にブーム9の先端が通過点を全て通過するとブーム9を停止させる。しかしながら、制御装置27は、操縦者による停止信号を取得するとブーム9の移動を停止させる構成でもよい。
【0117】
上述の実施形態は、代表的な形態を示したに過ぎず、一実施形態の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0118】
1 移動式クレーン
9 ブーム
20 撮影装置
24 表示装置
21 無人飛行体
22 カメラ
26 画像処理装置
27 制御装置
P 画像
C 旋回中心座標
B 先端座標
T(n) 通過点座標