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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】光加熱装置及び加熱処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/26 20060101AFI20240611BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
H01L21/26 F
H01L21/265 602B
H01L21/26 T
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020118998
(22)【出願日】2020-07-10
(65)【公開番号】P2022015867
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北川 鉄也
(72)【発明者】
【氏名】溝尻 貴文
(72)【発明者】
【氏名】中村 祥章
(72)【発明者】
【氏名】横森 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】金津 桂太
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-148129(JP,A)
【文献】特表2012-524400(JP,A)
【文献】特開2002-261038(JP,A)
【文献】特開2021-182582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/26
H01L 21/265
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を加熱するための光加熱装置であって、
前記基板を収容するチャンバと、
前記チャンバ内において、前記基板を支持する支持部材と、
前記支持部材に支持された前記基板に向かって光を出射する複数のLED素子と、
前記支持部材に支持された前記基板に向かって光を出射するフラッシュランプと、
前記LED素子を点灯させた後、所定の時間経過後に前記フラッシュランプを点灯させる制御を行う第一点灯制御部と
前記第一点灯制御部が前記フラッシュランプを点灯させる制御を行う前に、前記LED素子に供給する電力を低下させる第二点灯制御部とを備えることを特徴とする光加熱装置。
【請求項2】
前記チャンバは、内側に加熱用の光を取り込むための透光窓を壁面に有し、
前記支持部材は、前記基板の主面と前記透光窓が対向するように、前記基板を支持し、
前記複数のLED素子と前記フラッシュランプは、前記チャンバの外側から、前記透光窓を介して、前記支持部材に支持された前記基板の主面に向かって光を出射するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の光加熱装置。
【請求項3】
前記複数のLED素子は、前記支持部材に支持された前記基板の一方の主面に向かって光を出射し、
前記フラッシュランプは、前記支持部材に支持された前記基板の他方の主面に向かって光を出射することを特徴とする請求項1に記載の光加熱装置。
【請求項4】
前記チャンバは、内側に加熱用の光を取り込むための、相互に対向する一対の透光窓を有し、
前記支持部材は、前記基板の各主面と前記一対の透光窓がそれぞれ対向するように、前記基板を支持し、
前記複数のLED素子と前記フラッシュランプは、前記チャンバの外側から、前記透光窓を介して、前記支持部材に支持された前記基板の各主面に向かって光を出射するように配置されていることを特徴とする請求項3に記載の光加熱装置。
【請求項5】
前記基板の主面の温度を計測する放射温度計を備え、
前記第一点灯制御部は、前記LED素子を点灯させてから、前記放射温度計が測定する前記基板の主面の温度が所定の温度に到達したことを検知した前記所定の時間経過後に、前記フラッシュランプを点灯させる制御を行うことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の光加熱装置。
【請求項6】
前記第二点灯制御部は、前記放射温度計が測定した温度に基づいて、前記LED素子に供給する電流を制御するとともに、それぞれの前記LED素子に対して同一の電流を供給して前記LED素子の点灯を開始させ、前記LED素子の点灯後、前記放射温度計が測定した前記基板の主面の温度分布において、最も高い温度を示す領域に光を照射する前記LED素子に供給する電流を減少、又は最も低い温度を示す領域に光を照射する前記LED素子に供給する電流を増加させるように制御し、前記第一点灯制御部が前記フラッシュランプを点灯させる制御を行う前に、前記LED素子に供給する電力を低下させることを特徴とする請求項5に記載の光加熱装置。
【請求項7】
前記基板が半導体基板、又はガラス基板であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の光加熱装置。
【請求項8】
前記複数のLED素子が出射する光の主たる発光波長は、300nm~1050nmの範囲内に含まれていることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の光加熱装置。
【請求項9】
基板の加熱処理方法であって、
前記基板を、チャンバ内に収容する工程(A)と、
前記チャンバ内に収容された前記基板に向かって光を出射する複数のLED素子を点灯させる工程(B)と、
前記工程(B)の後、所定の時間経過後、LED素子に供給する電流を低下させた後に前記チャンバ内に収容された前記基板に向かって光を出射するフラッシュランプを点灯させる工程(C)とを含むことを特徴とする加熱処理方法。
【請求項10】
前記工程(C)は、前記工程(B)を開始してから、放射温度計によって前記基板の主面の温度が所定の温度に到達したことが検知された前記所定の時間経過後、LED素子に供給する電流を低下させた後に前記フラッシュランプを点灯させることを特徴とする請求項9に記載の加熱処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光加熱装置及び加熱処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスでは、イオン注入法と称されるSi結晶にイオン注入によって不純物を導入する方法が一般的に用いられている。当該方法では、イオン注入時に発生する結晶欠陥を回復させるため、半導体基板を1000℃以上に加熱する処理が行われる。
【0003】
そして、近年では、微細化や高集積化と共に、不純物拡散層を薄く形成することが求められており、短時間でムラなく加熱処理ができる加熱装置が求められている。そこで、微細プロセスの半導体基板の加熱処理には、例えば、下記特許文献1に記載されているような、フラッシュランプを用いた光加熱装置が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2006-324389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体基板は、瞬間的に室温と1000℃以上の間で昇降温させると、急激な温度変化によって膨張や収縮が発生し、反りや割れが生じてしまうことがある。そこで、上記特許文献1に記載されている光加熱装置は、フラッシュランプでの加熱の昇降温の温度差を小さくして半導体基板の反りや割れを抑制するために、ハロゲンランプを用いて半導体基板全体が不純物の熱拡散が問題にならない温度まで半導体基板を予め加熱する構成が採用されている。ここで、本明細書において、フラッシュランプによる加熱処理の前に、別の光源を用いて予め所定の温度にまで半導体基板を加熱することを「予備加熱」と称する。予備加熱は、上述した理由の他に、半導体基板の厚み方向の温度勾配を小さくするという目的のためにも実施される。
【0006】
ここで、本発明者らは、従来の光加熱装置の更なる改善、改良について鋭意検討を行い、従来の光加熱装置に関して、以下のような課題があることを見出した。以下、図面を参照しながら詳細を説明する。
【0007】
図13は、従来のフラッシュランプ102とハロゲンランプ103を備える光加熱装置100の構成を模式的に示す図面である。図13に示すように、従来の光加熱装置100は、チャンバ101と、フラッシュランプ102と、ハロゲンランプ103を備える。
【0008】
また、チャンバ101は、フラッシュランプ102とハロゲンランプ103から出射される光を内側に取り込むための透光窓104と、チャンバ101内で加熱対象となる半導体基板W1を支持するための支持台105を備える。なお、チャンバ101内を真空にする場合、透光窓104をOリング等によって気密封止するが、図13においては、このような構造は図示を省略している。
【0009】
ハロゲンランプ103は、フラッシュランプ102による加熱が実行される前に点灯され、支持台105と伝熱部106を介して、チャンバ101内に収容された半導体基板W1を所定の温度で安定するまで予備加熱を行う。
【0010】
ここで、ハロゲンランプ103による予備加熱において、半導体基板W1の主面W1aの温度がどのように変化して安定するのかを説明する。図14は、従来のハロゲンランプ103を予備加熱源として用いた場合の、半導体基板W1の主面W1aの温度の時間変化の一例を示すグラフである。図14に示すように、半導体基板W1は、ハロゲンランプ103に供給する電力を調整することによって主面W1aの温度が目標温度(図14の例では600℃)で安定するように予備加熱が実行される。
【0011】
ハロゲンランプ103は、入力電力の変化に対する光出力の追従性が遅い。すなわち、ハロゲンランプ103は、電力の供給が停止された後も、しばらくは高い強度の光の出射が継続する。このため、図14に示すように、半導体基板W1の温度を目標温度よりもさらに高い温度まで上昇させてしまう、いわゆるオーバーシュートが生じる。
【0012】
このオーバーシュートが生じるため、ハロゲンランプ103による予備加熱は、図14に示すように、目標温度を何度も通過しながら(図13では600℃の前後を変動しながら)、徐々に半導体基板W1の主面W1aの温度を目標温度に向かって収束させる制御が行われる。
【0013】
予備加熱による温度が安定しない状態でフラッシュランプ102による加熱処理を実行する場合について説明する。温度が安定していない状態において、フラッシュランプ102による半導体基板の加熱処理が行われると、半導体基板が受ける温度変化の履歴である熱履歴(「サーマルバジェット」とも称される)にバラつきが発生する。
【0014】
熱履歴は、半導体基板内で発生する熱拡散に影響し、特に、微細プロセスにおいては、不純物拡散層の形成に寄与する。つまり、熱履歴のバラつきが大きいと、不純物拡散層が一様に形成されず、半導体基板毎に基板上に形成された素子の特性が大きく異なってしまう。したがって、予備加熱による温度が安定しない状態でフラッシュランプ102による加熱処理を実行する場合は、半導体基板毎に出来栄えが異なってしまう。
【0015】
このため、ハロゲンランプ103による予備加熱が行われる場合、フラッシュランプ102による加熱処理は、半導体基板W1の主面W1aの温度が目標温度で安定したところで行う必要がある。
【0016】
また、上記のオーバーシュートは、目標温度に到達する前にハロゲンランプ103への電力供給を減らすなどして抑えることも可能である。さらに、高性能な電力制御器を用いてハロゲンランプ103の入力電力を制御することで、ハロゲンランプ103の入力電力の変化に対する光出力の追従性を速くすることもできる。
【0017】
図15は、高性能な電力制御器を用いてハロゲンランプ103の入力電力を制御した場合の、半導体基板W1の主面W1aの温度の時間変化の一例を示すグラフである。図15に示すように、上述のような制御をした場合でもオーバーシュートは生じるため、点灯を 開始してから温度が安定するまでには時間T2を要する。図15は、比較のために、図14に示すグラフが破線で併記されている。
【0018】
しかしながら、最近の半導体製造業においては、一つの製造拠点において年間で数十万から数百万枚もの半導体基板が製造されており、一枚ごとの処理にかかる時間が一秒でも短い製造装置や処理装置が期待されている。
【0019】
本発明は、上記課題に鑑み、より短い時間で半導体基板の加熱処理ができる光加熱装置及び加熱処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の光加熱装置は、
基板を加熱するための光加熱装置であって、
前記基板を収容するチャンバと、
前記チャンバ内において、前記基板を支持する支持部材と、
前記支持部材に支持された前記基板に向かって光を出射する複数のLED素子と、
前記支持部材に支持された前記基板に向かって光を出射するフラッシュランプと、
前記LED素子を点灯させた後、所定の時間経過後に前記フラッシュランプを点灯させる制御を行う第一点灯制御部とを備えることを特徴とする。
【0021】
LED素子は、ハロゲンランプと比較して、発光原理的に入力電力の変化に対する光出力の追従性が極めて速い。すなわち、LED素子は、電流の供給を低減、又は停止させる制御を行うと、すぐに輝度を低下、又は光の出射を停止させることができる。したがって、基板の予備加熱をLED素子で行うと共に、目標温度に達するのに要すると想定された時間の経過後に、LED素子から光出力を低下、又は停止させるように制御することで、目標温度を超えて温度が上昇することを抑制することができる。そして、目標温度に到達後、すぐにフラッシュランプによる加熱処理が可能となる。
【0022】
つまり、上記構成とすることで、予備加熱での温度の安定待ち時間を要することなく、基板の加熱処理を実行することができ、従来よりも短い時間で加熱処理を完了させることができる。
【0023】
上記光加熱装置において、
前記チャンバは、内側に加熱用の光を取り込むための透光窓を壁面に有し、
前記支持部材は、前記基板の主面と前記透光窓が対向するように、前記基板を支持し、
前記複数のLED素子と前記フラッシュランプは、前記チャンバの外側から、前記透光窓を介して、前記支持部材に支持された前記基板の主面に向かって光を出射するように配置されていても構わない。
【0024】
上記構成とすることで、チャンバ内を真空や処理ガスを充満させた状態としても、LED素子やフラッシュランプがチャンバの外側に配置されているので、動作中に光源が破損してしまうこと等を防止することができる。また、チャンバ内に配置される部材が少なくなるため、加熱対象である基板を汚損してしまう塵やパーティクル等の発生源が少なくなり、よりクリーンな加熱処理が実現される。
【0025】
上記光加熱装置において、
前記複数のLED素子は、前記支持部材に支持された前記基板の一方の主面に向かって光を出射し、
前記フラッシュランプは、前記支持部材に支持された前記基板の他方の主面に向かって光を出射することを特徴とする請求項1に記載の光加熱装置。
【0026】
さらに、上記光加熱装置において、
前記チャンバは、内側に加熱用の光を取り込むための、相互に対向する一対の透光窓を有し、
前記支持部材は、前記基板の各主面と前記一対の透光窓がそれぞれ対向するように、前記基板を支持し、
前記複数のLED素子と前記フラッシュランプは、前記チャンバの外側から、前記透光窓を介して、前記支持部材に支持された前記基板の各主面に向かって光を出射するように配置されていても構わない。
【0027】
上記構成とすることで、チャンバ内に収容された基板の一方の主面には、フラッシュランプによる閃光が照射され、他方の主面には、LED素子から出射される光が照射される。これにより、フラッシュランプから出射される高い強度の光がLED素子に直接照射されることを抑制することができる。
【0028】
さらに、透光窓を備える構成の説明で上述したように、チャンバ内を真空や処理ガスを充満させた状態としても、LED素子やフラッシュランプがチャンバの外側に配置されているので、動作中に光源が破損してしまうこと等を防止することができる。また、チャンバ内に配置される部材が少なくなるため、加熱対象である基板を汚損してしまう塵やパーティクル等の発生源が少なくなり、よりクリーンな加熱処理が実現される。
【0029】
上記光加熱装置は、
前記基板の主面の温度を計測する放射温度計を備え、
前記第一点灯制御部は、前記LED素子を点灯させてから、前記放射温度計が測定する前記基板の主面の温度が所定の温度に到達したことを検知した前記所定の時間経過後に、前記フラッシュランプを点灯するように制御するものであっても構わない。
【0030】
上記構成とすることで、フラッシュランプによる加熱処理は、基板の主面の温度が確実に目標温度に到達したところで実行される。
【0031】
さらに、上記光加熱装置は、
前記放射温度計が測定した温度に基づいて、前記LED素子に供給する電流を制御する第二点灯制御部を備え、
前記第二点灯制御部は、それぞれの前記LED素子に対して同一の電流を供給して前記LED素子の点灯を開始させ、前記LED素子の点灯後、前記放射温度計が測定した前記基板の主面の温度分布において、最も高い温度を示す領域に光を照射する前記LED素子に供給する電流を減少、又は最も低い温度を示す領域に光を照射する前記LED素子に供給する電流を増加させるように制御するものであっても構わない。
【0032】
例えば、予備加熱によって基板を加熱する場合、その外周部は中央部に比べて温度が下がりやすい。このため、複数のLED素子を用いて行う予備加熱では、全てのLED素子に全く同じ電流を供給した場合、基板全体において温度分布にバラつきが生じる。そうすると、フラッシュランプによる加熱処理において、処理ムラが発生してしまい、基板に反りや割れを発生させたり、同一の基板上に形成された素子の特性に大きなバラつきを生じさせたりしてしまう。
【0033】
そこで、第二点灯制御部が上記のように、例えば、数千個並べたLED素子の内、ゾーン分けしたゾーンごとのLED素子(百個程度)について電流を制御することで、基板に予備加熱における温度分布において、最も温度が高い部分と最も温度が低い部分との差が小さくなるように加熱することができ、基板における加熱処理のムラや、反りや割れの発生を抑制することができる。
【0034】
上記光加熱装置は、
前記基板が半導体基板、又はガラス基板であっても構わない。
【0035】
また、上記光加熱装置において、
前記複数のLED素子が出射する光の主たる発光波長は、300nm~1050nmの範囲内に含まれていても構わない。
【0036】
本明細書における「主たる発光波長」とは、出射される光の強度が最も高い波長を指す。
【0037】
特に、シリコン(Si)からなる半導体基板は、紫外光から可視光の波長帯域の光に対して吸収率が高く透過率が低いが、波長が1100nmよりも長くなると急激に吸収率が低くなり、透過率が高くなるという特徴がある。「発明を実施するための形態」の説明において参照される図5に示すように、波長が1100nm以上の光が半導体基板に照射されると、約50%の光が半導体基板を透過してしまう。
【0038】
シリコンからなる半導体基板の場合、波長1100nm以上の光は、処理対象となる主面とは反対側の面に照射されると、一部が半導体基板を透過して、処理対象の主面にまで到達してしまう。そうすると、処理対象となる主面に形成されている配線等がこの光を吸収してしまい、温度分布にバラつきが生じ、半導体基板に反りや割れが生じるおそれがある。このため、LED素子から出射させる光の主たる発光波長は、吸収率が50%以上であって、透過率が20%以下である、1050nm以下であることが好ましい。
【0039】
また、シリコンからなる半導体基板は、波長300nm未満の光に対して、吸収率が最も低いところで約10%程度まで低下してしまう。このため、少なくとも25%以上の吸収率を確保するためには、LED素子から出射される光の主たる発光波長は、300nm以上であることが好ましい。
【0040】
上記構成とすることで、LED素子から出射された光は、半導体基板を透過して処理対象となる主面にはほとんど到達しない。このため、処理対象となる主面は、フラッシュランプから出射される光によって一様に昇温され全体が均一に加熱処理される。
【0041】
なお、「発明を実施するための形態」の説明において参照される図4に示すように、LED素子は、ハロゲンランプと比較して、狭小なスペクトルを有するため、半導体基板の予備加熱用の光として好ましい波長範囲内でのみ高い強度を示す光を出射する光源を構成することができる。
【0042】
本発明の加熱処理方法は、
基板の加熱処理方法であって、
前記基板を、チャンバ内に収容する工程(A)と、
前記チャンバ内に収容された前記基板に向かって光を出射する複数のLED素子を点灯させる工程(B)と、
前記工程(B)の後、所定の時間経過後に、前記チャンバ内に収容された前記基板に向かって光を出射するフラッシュランプを点灯させる工程(C)とを含むことを特徴とする。
【0043】
また、上記加熱処理方法において、
前記工程(C)は、前記工程(B)が開始してから、放射温度計によって前記基板の主面の温度が所定の温度に到達したことが検知された前記所定の時間経過後に、前記フラッシュランプを点灯させる工程であっても構わない。
【0044】
上述したように、LED素子から出射される光によって予備加熱が行われる場合は、目標温度到達直後にフラッシュランプを点灯させて加熱処理することができる。つまり、上記方法とすることで、予備加熱での温度の安定待ち時間を要することなく、基板の加熱処理を実行することができ、従来よりも短い時間で加熱処理を完了させることができる。
【0045】
また、上記加熱処理方法において、各工程は、人が手作業でスイッチやボタンを操作して行うものであっても構わない。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、より短い時間で基板の加熱処理ができる光加熱装置及び加熱処理方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】光加熱装置の一実施形態の構成を模式的に示す側面断面図である。
図2】リフレクタを除いた状態で図1の光加熱装置を+Z側から見たときの図面である。
図3】LED素子が配置されているLED基板を+Z側から見たときの図面である。
図4】フラッシュランプとLED素子が出射する光のスペクトルを示すグラフである。
図5】シリコンからなる半導体基板の光に対する吸収率と透過率のスペクトルを示すグラフである。
図6】光加熱装置による加熱処理工程の順序を示すフローチャートである。
図7】光加熱装置による加熱処理での半導体基板の主面の温度変化を示すグラフである。
図8A】半導体基板の領域とLED素子の関連付けの一例を示す、図1の光加熱装置のLED基板周辺の拡大図である。
図8B】LED基板をいくつかの領域に区分けした例を示す図面である。
図9】光加熱装置の一実施形態の構成を模式的なに示す面断面図である。
図10図9の光加熱装置を-Z側から見たときの図面である。
図11】光加熱装置の別実施形態の構成を模式的に示す側面断面図である。
図12】光加熱装置の別実施形態の構成を模式的に示す側面断面図である。
図13】従来のフラッシュランプとハロゲンランプを備える光加熱装置の構成を模式的に示す図面である。
図14】従来のハロゲンランプを予備加熱源として用いた場合の、半導体基板の主面の温度の時間変化の一例を示すグラフである。
図15】高性能な電力制御器を用いてハロゲンランプの入力電力を制御した場合の、半導体基板の主面の温度の時間変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の光加熱装置及び加熱処理方法について、図面を参照して説明する。なお、光加熱装置に関する以下の各図面は、いずれも模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比や個数は、実際の寸法比や個数と必ずしも一致していない。
【0049】
[第一実施形態]
図1は、光加熱装置1の一実施形態の構成を模式的に示す側面断面図であり、図2は、後述のリフレクタ17を除いた状態で図1の光加熱装置1を+Z側から見たときの図面である。図1に示すように、第一実施形態の光加熱装置1は、半導体基板W1が収容されるチャンバ10と、複数のフラッシュランプ11と、複数のLED素子12と、制御部13と、放射温度計14とを備える。
【0050】
以下の説明においては、図1及び図2に示すように、複数のフラッシュランプ11が配列されている方向をX方向、フラッシュランプ11が延伸する方向をY方向、X方向及びY方向と直交する方向をZ方向とする。そして、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+Z方向」、「-Z方向」のように、正負の符号を付して記載され、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「Z方向」と記載される。
【0051】
図1に示すように、チャンバ10は、内側に半導体基板W1を支持する支持部材16を備える。支持部材16は、半導体基板W1の主面(W1a,W1b)がXY平面上に配置されるように、半導体基板W1を支持する。なお、支持部材16による半導体基板W1の支持は、その主面(W1a,W1b)がXY平面上に配置されるようなものであればよく、例えば支持部材16がピン状の突起を複数備え、その突起により半導体基板W1を点で支持するものであっても構わない。ここで、主面W1aは、回路素子や配線等が形成され、フラッシュランプ11から出射される光が照射される面であり、主面W1bは、予備加熱のためにLED素子12から出射される光が照射される面である。
【0052】
また、チャンバ10は、Z方向において相互に対向するように設けられた一対の透光窓15を備える。一対の透光窓15は、それぞれ、フラッシュランプ11から出射された光と、LED素子12から出射された光をチャンバ10内に取り込むために設けられている。図1及び図2に示すように、チャンバ10は、直方体形状を呈しているが、例えば、Z方向から見たときに円形状である円筒状等、直方体形状以外の形状を呈していても構わない。
【0053】
図1に示すように、一対の透光窓15のそれぞれは、支持部材16で支持される半導体基板W1の各主面(W1a,W1b)と対向するように構成されている。つまり、フラッシュランプ11から出射された光は、+Z側の透光窓15を介して半導体基板W1の主面W1aに照射され、LED素子12から出射された光は、-Z側の透光窓15を介して半導体基板W1の主面W1bに照射される。
【0054】
さらに、光加熱装置1は、放射温度計14を備えており、放射温度計14によって半導体基板W1の主面W1aの温度を観測するための観測用窓10aがチャンバ10の-X側の壁面に設けられている。観測用窓10aが設けられていることにより、図1において破線の矢印で模式的に示すように、放射温度計14は、観測用窓10aを介して半導体基板W1の主面W1aの温度を観測する。
【0055】
フラッシュランプ11は、制御部13によって点灯制御が行われると、半導体基板W1の主面W1aに向けて、閃光を出射する。フラッシュランプ11から出射された閃光が、チャンバ10の+Z側の透光窓15を介して半導体基板W1の主面W1aに照射されることで、半導体基板W1が1000℃以上まで瞬間的に加熱される。
【0056】
フラッシュランプ11の+Z側には、チャンバ10とは反対側(+Z側)に向かって進行する光を、チャンバ10側(-Z側)に向かうように反射させるリフレクタ17が備えられている。これにより、フラッシュランプ11から出射される光は、無駄なく半導体基板W1の主面W1aに照射される。
【0057】
なお、第一実施形態においては、フラッシュランプ11は複数配置されているが、出射する光の強度が十分高ければ、一本だけで構成されていてもよく、リフレクタ17が配置されていなくても構わない。
【0058】
図3は、LED素子12が配置されているLED基板12aを+Z側から見たときの図面である。図3に示すように、LED基板12aは、載置されている複数のLED素子12がXY平面上に配列されており、LED素子12から出射される光が、-Z側の透光窓15に向かうように配置されている。
【0059】
第一実施形態の光加熱装置1は、図1及び図3に示すように、一つのLED基板12aに複数のLED素子12が同一平面上に配置されているが、LED基板12aが曲面を構成し、LED素子12は、当該曲面上に配置されていてもよい。また、LED基板12aが複数備えられていても構わない。
【0060】
ここで、フラッシュランプ11と、LED素子12から出射される光のスペクトルについて説明する。図4は、フラッシュランプ11とLED素子12が出射する光のスペクトルを示すグラフであり、図5は、シリコンからなる半導体基板W1の光に対する吸収率と透過率のスペクトルを示すグラフである。図4に示すグラフは、ピーク波長の光強度を1とした相対強度で示すグラフである。図5に示すグラフは、素子や配線が形成されていないシリコン基板における吸収率と透過率のグラフである。また、図4は、従来構成との比較のために、ハロゲンランプ103のスペクトルが破線で併記されている。
【0061】
図4に示すように、第一実施形態におけるLED素子12から出射される光は、主たる発光波長が400nmであって、光強度のピーク値に対する相対強度が50%以上となる波長帯域の幅が100nm以下の発光スペクトルを示し、フラッシュランプ11から出射される光は、発光波長帯域の幅が1000nm以上のブロードな発光スペクトルを示す。
【0062】
図5に示すように、シリコンからなる半導体基板W1は、1100nm以下の波長帯域の光に対しては、吸収率が透過率を上回っており、1100nm以上の波長帯域の光に対しては、透過率が吸収率を上回っている。したがって、効率よく半導体基板W1を加熱するためには、予備加熱に用いるLED素子12の主たる発光波長が、シリコンからなる半導体基板W1において、吸収率が50%以上であって、透過率が20%以下である、1050nm以下であることが好ましい。
【0063】
また、シリコンからなる半導体基板W1は、300nm未満の波長帯域の光に対して吸収率が著しく低くなってしまう。このため、LED素子12の主たる発光波長は、300nm以上であることが好ましい。
【0064】
図4に示すように、ハロゲンランプ103から出射される光は、フラッシュランプ11と同様に、発光波長帯域の幅が1000nm以上のブロードな発光スペクトルである。したがって、従来のハロゲンランプ103による予備加熱では、半導体基板W1を透過する1100nm以上の波長帯域の光が、高い強度で半導体基板W1の主面W1bに照射されてしまう。
【0065】
制御部13は、フラッシュランプ11の点灯制御を行う第一点灯制御部13aと、LED素子12の点灯制御を行う第二点灯制御部13bと、LED素子12の点灯を開始した直後からの経過時間を計測するタイマ13cを備える。第一点灯制御部13aは、タイマ13cがLED素子12の点灯開始から所定の時間が経過したことを検知すると、フラッシュランプ11を点灯させる制御を行う。第二点灯制御部13bによる好ましい制御内容については後述される。なお、タイマ13cは、光加熱装置1とは別に設けられていても構わない。
【0066】
以下、第一実施形態の光加熱装置1によって行われる、半導体基板W1の加熱処理の各工程について説明する。図6は、光加熱装置1による加熱処理工程の順序を示すフローチャートであり、図7は、光加熱装置1による加熱処理での半導体基板W1の主面W1aの温度変化を示すグラフである。また、図7は、従来の構成との比較のために、図13及び図14に示す、従来の光加熱装置100による加熱処理での半導体基板W1の主面W1aの温度変化を示すグラフが破線で併記されている。
【0067】
図6に示すように、まず、チャンバ10内に半導体基板W1が収容される(ステップS1)。このステップS1が、工程(A)に対応する。
【0068】
ステップS1の実行後、第二点灯制御部13bが、LED素子12に電流の供給を開始するように制御し、LED素子12を点灯させて予備加熱を開始する(ステップS2)。このステップS2が、工程(B)に対応する。
【0069】
ステップS2の実行後、タイマ13cが経過時間の計測を開始し、図7に示すように、半導体基板W1が目標温度に到達するまでの時間T1が経過するまで待機する(ステップS3)。この時間T1は、半導体基板W1の大きさや厚さ等に応じて、適宜決定される時間であり、図7に示す設定は、単なる一例であるが、高性能な電力制御器を用いてハロゲンランプの入力電力を制御する場合の安定待ち時間T2より短く設定することができる。
【0070】
タイマ13cが所定の時間が経過したことを検知すると、第一点灯制御部13aがフラッシュランプ11を点灯させる制御を行う(ステップS4)。このステップS4が、工程(C)に対応する。このとき、第二点灯制御部13bは、LED素子12の温度上昇を抑制するために、LED素子12に供給する電流を低下させるように制御しても構わない。
【0071】
ステップS4の実行後、第二点灯制御部13bがLED素子12を消灯させるために電流の供給を停止させる(ステップS5)。
【0072】
なお、LED素子12は、半導体基板W1の予備加熱を行うための光源であって、フラッシュランプ11の点灯時に、必ずしも点灯している必要はない。すなわち、本実施形態において、ステップS5は、ステップS4の実行後に行われているが、ステップS5は、ステップS4のフラッシュランプ11の点灯制御と同時、又はステップS4の直前に行われても構わない。
【0073】
ステップS5の実行後、半導体基板W1の温度が、チャンバ10内から取り出せる温度に下がったところで、半導体基板W1を取り出す(ステップS6)。
【0074】
このとき、チャンバ10内の温度が半導体基板W1を取り出せる温度まで低下しているかどうかは、放射温度計14によって判断してもよく、タイマ13cで所定の時間が経過したかどうかで判断しても構わない。半導体基板W1をチャンバ10から取り出す温度は、装置構成等に応じて任意に設定されるものであって、図7において二点破線で取り出す温度を示しているが、この設定は、単なる一例である。
【0075】
上記構成とすることで、図7に示すように、予備加熱での温度の安定待ち時間を要することなく、フラッシュランプ11による光照射を実行することができ、従来よりも加熱処理時間を数sec~数十sec短縮させることができる。
【0076】
また、制御部13によって、予備加熱での温度ムラが小さくなるようにLED素子12の点灯制御が行われる。このため、半導体基板W1の温度分布のバラつきが抑えられ、加熱処理のムラや、反りや割れの発生が抑制される。
【0077】
さらに、第一実施形態においては、LED素子12の主たる発光波長が400nmであるため、上述した理由により、LED素子12から出射される光は、半導体基板W1の主面W1aにほとんど到達しない。このため、回路素子や配線の光吸収による温度分布のバラつきを抑えることができる。
【0078】
なお、ステップS2において、第二点灯制御部13bは、複数のLED素子12のうち、特定のLED素子12に対して供給する電力を減少、又は増加させることで、素子毎に輝度を異ならせるように制御を行うものとしても構わない。
【0079】
具体的には、第二点灯制御部13bは、同一の電流を供給させてLED素子12の点灯が開始させた後、放射温度計14が測定した半導体基板W1の主面W1aの温度分布において、最も温度が高いことを示す領域に光を照射するLED素子12に、供給する電流を減少させるように制御する。また、第二点灯制御部13bは、最も温度が低いことを示す領域に光を照射するLED素子12に供給する電流を増加させるように制御しても構わない。
【0080】
図8Aは、半導体基板W1の領域(W1p,W1q)とLED素子12の関連付けの一例を示す、図1の光加熱装置1のLED基板12a周辺の拡大図である。図8Aに示すように、上記制御は、半導体基板W1の主面W1aの各領域(W1p,W1q)と、主面W1a上の各領域(W1p,W1q)に光を照射するLED素子(12p,12q)とを関連付けておき、第二点灯制御部13bが、それぞれの領域(W1p,W1q)の温度に応じて、各LED素子(12p,12q)に供給する電流を制御する。図8Aは、説明の便宜のために、X方向に関してのみ図示しているが、半導体基板W1のXY平面における各領域が、LED基板12a上に配置されたいずれかのLED素子12に関連付けされている。
【0081】
図8Bは、LED基板12aをいくつかの領域(Z1,Z2,Z3)に区分けした例を示す図面である。図8Aを参照して説明した制御方法とは別の制御方法としては、例えば、図8Bに示すように、LED基板12aをいくつかの領域(Z1,Z2,Z3)に区分けし、第二点灯制御部13bが、領域(Z1,Z2,Z3)毎にLED素子12群に供給する電流を制御する方法がある。この方法の場合、第二点灯制御部13bは、放射温度計14が測定した半導体基板W1の主面W1aの温度分布において、最も温度が高いことを示す領域に光を照射するLED素子12群に、供給する電流を減少させるように制御する。
【0082】
この制御方法の場合においても、それぞれのLED素子12を個別に見れば、第二点灯制御部13bは、放射温度計14が測定した半導体基板W1の主面W1aの温度分布において、最も温度が高いことを示す領域に光を照射するLED素子12に、供給する電流を減少させるように制御している。なお、当該制御方法においても、第二点灯制御部13bは、放射温度計14が測定した半導体基板W1の主面W1aの温度分布において、最も温度が低いことを示す領域に光を照射するLED素子12群に、供給する電流を増加させるように制御しても構わない。
【0083】
光加熱装置1は、第二点灯制御部13bが、LED素子12を一括して点灯制御するように構成され、放射温度計14が備えられていなくても構わない。また、第一実施形態の光加熱装置1は、図1に示すように、放射温度計14が、チャンバ10の外側に配置され、観測用窓10aを介して半導体基板W1の主面W1aの温度測定を行うように構成されているが、放射温度計14は、チャンバ10内に設けられていても構わない。
【0084】
上述の説明では、加熱処理の対象がシリコンからなる半導体基板W1で説明されているが、光加熱装置1は、シリコンからなる半導体基板W1以外の加熱、さらには、半導体基板以外の基板材料の加熱に用いることができる。一例としては、ディスプレイの製造工程におけるガラス基板の加熱処理に使用することができる。
【0085】
なお、光加熱装置1に搭載するLED素子12は、上述したように、光強度のピーク値に対する相対強度が50%以上となる波長帯域の幅が100nm以下と狭いため、加熱効率の観点等から、加熱対象物の吸収スペクトルに応じて、出射する光の主たる発光波長を適切に設定することが好ましい。
【0086】
[第二実施形態]
本発明の光加熱装置1の第二実施形態の構成につき、第一実施形態と異なる箇所を中心に説明する。
【0087】
図9は、光加熱装置1の一実施形態の構成を模式的に示す側面断面図である。図10は、図9の光加熱装置1を-Z側から見たときの模式的な図面である。図10に示すように、光加熱装置1の第二実施形態は、Z方向に見たときに、LED基板12aが円環状に形成されている。
【0088】
第二実施形態の光加熱装置1は、第一実施形態と同様に制御部13を備えるが、煩雑な図示を避けるため、図9において制御部13は図示していない。
【0089】
また、LED基板12aのLED素子12を載置する平面は、XY平面に対して傾斜しており、LED素子12から出射される光は、Z方向とは非平行の方向から半導体基板W1の主面W1bに照射される。
【0090】
上記構成とすることで、光加熱装置1は、LED基板12aの内側を通して、-Z側の透光窓15からチャンバ10内の様子を観察することができ、チャンバ10内に収容された半導体基板W1が、支持部材16から外れていないか等、チャンバ10内の様子を確認することができる。また、図9及び図10に示すように、チャンバ10の-Z側に放射温度計14を設けることで、半導体基板W1の主面W1bの温度が測定することができる。
【0091】
LED素子12から出射される光が照射される主面W1bの温度が観測できることで、第二点灯制御部13bは、各主面(W1a、W1b)の温度分布に基づいて、半導体基板W1全体の温度ムラがより小さくなるように、LED素子12に供給する電流を制御することができる。
【0092】
[別実施形態]
以下、別実施形態につき説明する。
【0093】
〈1〉 上記実施形態では、フラッシュランプ11とLED素子12が、半導体基板W1から見て反対側に配置されている構成で説明したが、光加熱装置1は、フラッシュランプ11とLED素子12が、半導体基板W1から見て同じ側に配置されていても構わない。また、上記実施形態では、フラッシュランプ11やLED素子12は、チャンバ10の外側に配置され、チャンバ10の透光窓15を介して半導体基板W1に向かって光を出射しているが、フラッシュランプ11やLED素子12がチャンバ10内に配置され、チャンバ10が透光窓15を備えない構成としても構わない。
【0094】
図11及び図12は、光加熱装置1の別実施形態を模式的に示す側面断面図である。図11に示すように、光加熱装置1は、半導体基板W1から見て同じ側に配置されていても構わない。さらに、図12に示すように、光加熱装置1は、フラッシュランプ11やLED素子12がチャンバ10内に配置され、チャンバ10に透光窓15が構成されていなくても構わない。
【0095】
〈2〉 上記実施形態では、ステップS2の実行からの経過時間をタイマ13cが計測し、この経過時間が所定の時間T1に達した後に、ステップS4が実行されるものとして説明した。しかし、この制御内容に代替して、第一点灯制御部13aは、ステップS2の実行後、放射温度計14が測定する半導体基板W1の主面W1aの温度が所定の温度まで上昇したことを検知したところで、フラッシュランプ11を点灯させる制御を行うように構成されていても構わない。この場合、ステップS2が実行されてから半導体基板W1の主面W1aの温度が所定の温度に達するまでに要した時間が、「所定の時間」に対応する。なお、ここでいう「所定の温度」とは、半導体基板W1の目標温度であるものとして構わない。
【0096】
〈3〉 光加熱装置1は、LED素子12から出射された光が、半導体基板W1の主面W1b全体にムラなく照射されるために、例えば、レンズ、プリズム、拡散板やインテグレータ光学系等の光学系が備えられていても構わない。
【0097】
〈4〉 上述した光加熱装置1が備える構成は、あくまで一例であり、本発明は、図示された各構成に限定されない。
【符号の説明】
【0098】
1 : 光加熱装置
10 : チャンバ
10a : 観測用窓
11 : フラッシュランプ
12 : LED素子
12a : LED基板
13 : 制御部
13a : 第一点灯制御部
13b : 第二点灯制御部
13c : タイマ
14 : 放射温度計
15 : 透光窓
16 : 支持部材
17 : リフレクタ
100 : 光加熱装置
101 : チャンバ
102 : フラッシュランプ
103 : ハロゲンランプ
104 : 透光窓
105 : 支持台
106 : 伝熱部
W1 : 半導体基板
W1a,W1b :主面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15