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特許7501186エレベータロープの点検装置、エレベータロープの点検方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】エレベータロープの点検装置、エレベータロープの点検方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/02 20060101AFI20240611BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20240611BHJP
   G01N 21/892 20060101ALI20240611BHJP
   B66B 7/12 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
B66B5/02 C
G01B11/24 K
G01B11/24 A
G01N21/892 C
B66B7/12 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020122484
(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2022018991
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】野田 祥希
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-122615(JP,A)
【文献】特開2018-087732(JP,A)
【文献】特開2018-179632(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0071131(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110872038(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00- 5/28
B66B 7/00- 7/12
G01B 11/00-11/30
G01N 21/84-21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサで時系列に計測されたエレベータロープまでの距離情報を用いて前記エレベータロープを点検する装置であって、
前記距離情報に基づき前記エレベータロープのロープ端を検出し、検出されたロープ端間の距離をロープ直径と計測し、計測されたロープ直径に基づきロープ山を検出する検出部と、
前記エレベータロープのロープ表面の同一ラインに対する前記距離情報の変動に基づき前記ロープ山の表面形状の異常を検出し、前記エレベータロープを点検する点検処理部と、
を備えることを特徴とするエレベータロープの点検装置。
【請求項2】
前記センサは、光切断方式のセンサであることを特徴とする請求項1記載のエレベータロープの点検装置。
【請求項3】
前記エレベータロープの背面に背面板が配置されている一方、
前記検出部は、前記背面板から事前に設定された距離を閾値とすることで前記ロープと前記背面板とを区別し、
前記ロープとして区別された距離情報に基づきロープ端を検出することを特徴とする請求項1または2記載のエレベータロープの点検装置。
【請求項4】
前記距離情報の時系列データに基づき前記ロープ中心の時系列の位置変化をロープ揺れとして検出し、前記位置変化の変化量をロープ振動量として計測するロープ揺れ計測部と、
前記点検処理部が前記ロープ表面の同一ラインを観測する際に前記ロープ振動量を用いて位置補正するロープ位置補正部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のエレベータロープの点検装置。
【請求項5】
前記点検処理部は、
ロープ山までの距離情報が事前設定の閾値以上に亙って一定値の連続する箇所を摩耗痕として検出する
ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のエレベータロープの点検装置。
【請求項6】
前記点検処理部は、前記摩耗痕と検出された箇所に事前設定の閾値以上の距離変化が生じていれば、
前記エレベータロープの素線切れを検出することを特徴とする請求項5記載のエレベータロープの点検装置。
【請求項7】
前記センサにカラー光切断センサを用いることにより前記距離情報と併せて前記エレベータロープの画像情報を取得し、
前記画像情報に基づき前記エレベータロープを点検する画像処理部を備え、
請求項3~6の前記距離情報に基づく点検処理と、前記画像処理部の点検処理とを組み合わせて前記エレベータロープを点検する
ことを特徴とするエレベータロープの点検装置。
【請求項8】
ToF(Time-of Flight)方式のセンサによる計測情報を用いて前記ロープ山を計測する
ことを特徴とする請求項1記載のエレベータロープの点検装置。
【請求項9】
コンピュータが、センサで時系列に計測されたエレベータロープまでの距離情報から前記エレベータロープを点検する方法であって、
前記距離情報に基づき前記エレベータロープのロープ端を検出し、検出されたロープ端間の距離をロープ直径と計測し、計測されたロープ直径に基づきロープ山を検出する検出ステップと、
前記エレベータロープのロープ表面の同一ラインに対する前記距離情報の変動に基づき前記ロープ山の表面形状の異常を検出し、前記エレベータロープを点検する点検処理ステップと、
を有することを特徴とするエレベータロープの点検方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ情報に基づきエレベータロープを点検する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータロープは、ロープ芯部の外周に複数本のストランドが撚り合わされたワイヤロープで構成されている。このエレベータロープの点検に関する技術として、例えば特許文献1,2が公知となっている。
【0003】
特許文献1の点検手法は、エレベータロープの三次元形状データに基づきエレベータロープのクラウン部(ロープの表面形状の頂点部分)の凹凸量を計測し、計測された凹凸量からエレベータロープの表面形状の異常を検出する。
【0004】
特許文献2の点検手法は、測定ロール上の複数の糸条を走査して糸条の表面形状を測定し、測定された表面形状データに基づき糸条の外径を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-179632
【文献】特開2006-64502
【文献】特開2020-33137
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の点検手法は、エレベータロープの凹凸両の情報のみから表面形状の異常を判定するため、正確性に欠けるおそれがある。また、特許文献2の点検手法は、接触式なため、エレベータロープの点検には適さないおそれがある。
【0007】
本発明は、エレベータロープとの距離情報を用いることで事前のキャリブレーション作業を必要とすることなく、非接触式によりロープ表面形状の異常を正確に点検することを解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の一態様は、センサで時系列に計測されたエレベータロープまでの距離情報を用いて前記エレベータロープを点検する装置であって、
前記距離情報に基づき前記エレベータロープのロープ端を検出し、検出されたロープ端間の距離をロープ直径と計測し、計測されたロープ直径に基づきロープ山を検出する検出部と、
前記エレベータロープのロープ表面の同一ラインに対する前記距離情報の変動に基づき前記ロープ山の表面形状の異常を検出し、前記エレベータロープを点検する点検処理部と、を備えることを特徴としている。
【0009】
(2)本発明の他の態様は、コンピュータがセンサで時系列に計測されたエレベータロープまでの距離情報から前記エレベータロープを点検する方法であって、
前記距離情報に基づき前記エレベータロープのロープ端を検出し、検出されたロープ端間の距離をロープ直径と計測し、計測されたロープ直径に基づきロープ山を検出する検出ステップと、
前記エレベータロープのロープ表面の同一ラインに対する前記距離情報の変動に基づき前記ロープ山の表面形状の異常を検出し、前記エレベータロープを点検する点検処理ステップと、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エレベータロープとの距離情報を用いることで事前のキャリブレーション作業を必要とすることなく、ロープ表面形状の異常を正確に点検することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1の機器構成図。
図2】同 制御解析装置の機能ブロック図。
図3】同 処理内容を示すチャート図。
図4】同 計測データのカメラからの距離と計測位置との関係を示すグラフ。
図5】同 線形回帰による背面板の補間を示すグラフ。
図6】同 計測閾値の設定を示すグラフ。
図7】同 ロープ山の位置を示す部分拡大図。
図8】(a)はロープ端の時系列凹凸データを示すグラフ、(b)は(a)のロープ山部分の検出を示すグラフ。
図9】ロープ摩耗痕の検出方法を示す部分拡大図。
図10】同 グラフ
図11】ロープ素線破断の検出方法を示すグラフ。
図12】実施例2の処理内容を示すチャート図。
図13】実施例3の機器構成図。
図14】同 ロープ山検出のチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係るエレベータロープの点検装置(点検方法)を説明する。この点検装置は、センサにより計測されたエレベータロープ(ワイヤロープ)までの距離情報に基づきロープ表面の異常(摩耗痕・素線破断など)を検出することでエレベータロープの保守・点検を行う。この点検装置の詳細を実施例1~3に基づき説明する。
【実施例1】
【0013】
図1図11に基づき前記点検装置の実施例1を説明する。図1中の1は、前記点検装置を主体とする点検システムを示している。ここでは光切断法を利用してエレベータロープをリアルタイムに点検する。
【0014】
光切断法には、3D画像走査装置(光切断式のカメラ)が用いられ、ライン状のレーザ光源を点検対象、即ちエレベータロープR(以下、ロープRとする。)に照射し、その反射光を高さデータ(プロファイル)としてイメージングセンサ(CMOSセンサ)で取得する。
【0015】
このとき三角測距することで3次元の距離情報(3次元距離データ)が得られ、また検査時に点検対象を移動させてロープR全体の三次元形状を取得する。ここでは点検対象のロープRの背面には背面板Bが設置されている。
【0016】
前記点検システム1は、光切断式のカメラ2(1台)と、図示省略のエレベータ装置を制御するエレベータコントローラ3と、両者2,3からの入力情報に基づき制御・解析を実行する制御解析装置4とにより構成され、各構成2~4は有線/無線のネットワークを介してデータ送受信自在に接続されている。
【0017】
(1)制御解析装置4の構成例
制御解析装置4は、解析によりロープRのロープ表面形状の異常を検出し、前記点検装置を構成する。この制御解析装置4は、エレベータコントローラ3などの外部入力によって前記エレベータ装置の位置信号が入力され、ロープRの位置とカメラ2の撮影ライン(撮影位置)Eとの同期制御を実行する。
【0018】
具体的には制御解析装置4は、コンピュータにより構成され、通常のコンピュータのハードウェアリソース(例えばCPU,RAM,ROMなど)を備える。このハードウェアリソースとソフトウェアリソース(OS,アプリケーションなど)との協働の結果、制御解析装置4は、図2に示すように、距離計測部5,ロープ径計測部6,ロープ揺れ計測部7,ロープ山検出部8,ロープ位置補正部9,異常検出部10を実装する。
【0019】
(2)制御解析装置4の処理内容
図3に基づき制御解析装置4の処理内容の詳細を説明する。この制御解析装置4の処理は、前記エレベータ装置の稼働時に実行される。このときカメラ2は、運転中のエレベータ装置にて撮影位置Pを通過するロープRに連続的にレーザ光を照射し、反射光をイメージングセンサで受光してロープRを撮影する。
【0020】
S01:制御解析装置4の処理が開始されると距離計測部5は、カメラ2を用いてロープRとカメラ2との間の距離を計測する。すなわち、距離計測部5は、カメラ2を制御することにより、一定の時系列区間における計測位置毎の両者4,R間の距離情報(計測距離/計測値)を取得させる。
【0021】
ここで計測されたカメラ2からの距離情報には、図4に示すロープRの計測データD1と背面板Bの計測データD2とが含まれ、それぞれネットワーク経由で制御解析装置4に入力される。
【0022】
S02:ロープ径計測部6は、S01で入力された各計測データD1,D2の距離情報の分布からロープRの直径(ロープ直径/ロープ径)を算出する。その際には、ロープRの計測データD1と背面板Bの計測データD2とを区別する必要がある。
【0023】
そこで、ロープ径計測部6は、図5に示すように、線形回帰手法を用いて背面板Bの検出を行う。線形回帰手法として、「RANSAC」や「LMedS」などのロバスト推定手法を用いることで背面板Bを推定可能となる。
【0024】
図5中のD3(直線の太線部分)は、線形回帰手法により推定された背面板Bの推定データを示し、推定データD3から事前に定められた距離がロープRの検出閾値Sと設定されている。この閾値Sを用いることで背面板Bまでの距離情報が補間され、両データD1,D2を明確に区別することが可能となる。
【0025】
このように区別された時系列の計測データD1は、RAMなどの前記記憶装置に記憶される。ここで記憶された時系列の計測データD1から計測位置の最小値・最大値を検出することでロープRのロープ端を検出する。
【0026】
図5中のR1,R2は、検出されたロープ端R1,R2を示し、ロープ端R1,R2間の距離がロープ直径として検出される。なお、検出された時系列のロープ端R1,R2およびロープ直径の情報も、計測データD1と同様に前記記憶部に記憶される。
【0027】
S03:ロープ揺れ計測部7は、前記記憶装置から計測データD1およびロープ端R1,R2の情報を取得し、図6に示すように、ロープ端R1,R2間の中心R3を算出する。その後、計測データD1に基づきロープ中心R3の時系列の位置変化をロープ揺れとして検出する。このとき前記位置変化の変化量をロープRの振動量として計測し、計測された振動量をロープ中心R3の時系列情報と併せて前記記憶装置に記憶させる。
【0028】
S04:ロープ山検出部8は、前記記憶装置からロープ端R1,R2の情報を取得し、ロープ山を検出する。ここでロープ山は、ロープRの撚り線形状における図7中の凸部分Mを意味する。例えば前記エレベータ装置の設置現場では凸部分Mにおける直径値をノギスにより管理している。以下、ロープ山Mと呼ぶこととする。
【0029】
具体的にはロープ山検出部8は、図8(a)に示すロープ端R1,R2の時系列情報に基づき極大値(最大値)・極小値(最小値)の計測位置を探索する。その後、図8(b)に示すように、極大値の計測位置をロープ山Mの部分として検出し、検出結果を前記記憶装置に記憶させる。
【0030】
S05:ロープ位置補正部9は、前記記憶装置から計測データD1,ロープ中心R3,振動量の時系列情報を取得して位置補正を実行する。すなわち、S06~S09のロープ摩耗痕検出やロープ素線切れ検出では、ロープRのロープ表面とカメラ2との距離変動に着目する。そのため、図9に示すように、計測データD1に基づきロープRの時系列のラインCを観測する必要がある。
【0031】
ところが、実際のロープRには、前記エレベータ装置の稼働に伴うロープ揺れで位置変動が生じる。そこで、ロープ位置補正部9は、S03で検出した振動量に基づき計測データD1の位置補正を実行する。例えば前記振動量分だけ計測データD1中のロープ中心R3を調整するなどの処理が実行され、位置補正後に前記記憶装置の計測データD1が更新される。これにより前記同一ラインCの観測時に常時同じ箇所のデータを観測することが可能となる。
【0032】
S06,S07:異常検出部10は、前記記憶装置を参照してS06の位置補正後の計測データD1を取得し、ロープRの時系列のラインCを観測し(図9参照)、摩耗痕Wの有無を判定する。
【0033】
ここで判定される摩耗痕Wは、ロープRの素線の表面にある凹凸が削れることで発生する。したがって、摩耗痕Wの発生箇所では、図10に示すように、計測データD1の計測距離に変動がなく、一定の値が連続する。
【0034】
そこで、異常検出部10は、前記計測距離に事前設定の閾値以上に渡って一定値が連続する箇所か否かを確認する(S06)。確認の結果、前記連続する箇所であれば、摩耗痕Wの発生箇所として検出される(S07)。一方、そうでなければ、S10に進む。
【0035】
S08,S09:ロープRの素線破断Fは、ロープ摩耗の進行箇所に発生することが多いため、その発生時には、図11に示すように、摩耗痕Wの発生により一定の計測距離となっている途中で計測距離の変化が生じる。
【0036】
そこで、異常検出部10は、S07,S08の摩耗痕Wの検出中において計測距離が事前に定められた閾値以上に急激に変化するか否かも併せて確認する(S08)。確認の結果、前記急激に変化していればロープ素線切れ(破断)Fの発生箇所として検出される(S09)。一方、そうでなければS10に進む。なお、S07,S09の検出結果は、前記記憶装置に記憶され、モニタなどの外部装置に出力することができる。
【0037】
S10:カメラ2の撮影が終了したか否かが確認される。確認の結果、前記撮影が終了していなければS01に戻って処理を続行する。一方、前記撮影が終了していれば制御解析装置4の処理を終了する。
【0038】
このような制御解析装置4によれば、従来はロープRの凹凸情報のみから表面形状の異常を判定していたが、カメラ2からの距離情報を用いることにより、事前のキャリブレーション作業を必要とすることなく、ロープ直径・摩耗痕Wおよび素線切れFなどの異常を正確に検出可能な効果が得られる。
【実施例2】
【0039】
前記点検装置の実施例2を説明する。本実施例では、カラー光切断カメラを用いた前記点検装置を提供する。
【0040】
ここではカメラ2にカラー光切断カメラを用いることにより、カメラ2・ロープR間の距離情報だけでなく、画像情報も同時に取得する。したがって、距離情報と画像情報とを組み合わせて、さらに高精度な摩耗痕Wおよび素線切れの検出が可能となる。
【0041】
図12に基づき説明すれば、本実施例の制御解析装置4は、カラー光切断カメラ2からの画像情報を処理する画像処理部11を備える。この画像処理部11による画像処理G(S11~S20)としては、例えば特許文献3に記載された手法を用いることができる。
【0042】
図12に基づき説明すれば、制御解析装置4の処理が開始されると、S11~S16の画像処理(特許文献3参照)と、S01~S07の距離情報に基づく処理(実施例1参照)とを並行して実行し、S17以降の処理に移行する。
【0043】
すなわち、S11~S16の画像処理と01~S07の距離情報に基づく処理において摩耗痕Wの検出箇所が同一か否かを確認する(S17)。確認の結果、検出箇所が相違すればS10に進む一方、検出箇所が同一であれば摩耗痕Wの発生と判定し(S18)、その後にS19,S20の処理とS08,S09の処理とを並行して実行する。
【0044】
また、異常検出部10は、S19,S20の処理とS08,S09の処理との結果、素線切れ検出箇所が同一か否かを確認する(S21)。確認の結果、検出箇所が相違すればロープ素線切れ検出の判定をすることなく、S10に進む。一方、検出箇所が同一であればロープ素線切れFを検出し、S10に進む。このS10では、実施例1と同じ処理を行う。
【0045】
このような実施例2によれば、カメラ2からロープRまでの距離情報に加えて画像処理を組み合わせることでロープRの表面異常について精度の高い計測が可能となる。また、画像を組み合わせることで人の目による確認作業も併せて行うことができるようになる。
【実施例3】
【0046】
図13および図14に基づき前記点検装置の実施例3を説明する。本実施例の制御解析装置4は、図13に示す点検システム12に用いられている。ここでは光切断式のカメラ2ではなく、ToF(Time-of Flight)センサとしてのToFカメラ13を用いて簡易的にロープRを点検する。
【0047】
ToFカメラ13は、空間的に高い解像度を持つが、撮影周期が低いため、高速稼働する前記エレベータ装置の計測には適さないおそれがある。そこで、本実施例では、止まっているロープRを解析し、前記エレベータ装置の設置現場でノギス計測の代替えとしてロープ山の検出に用いる。
【0048】
ここではS02のロープ径計測およびS04のロープ山検出にToFカメラ13の撮影データ(計測情報)を用いる。すなわち、図14に示すように、制御解析装置4には、処理開始時にToFカメラ13の撮影データが入力される(S31)。ここで入力された三次元情報の撮影データに基づきロープRの直径が計測され(S32)、計測された直径値からロープ山を検出し(S33)、処理を終了する。
【0049】
このときS32,S33の処理方法としては、S02,S04と同様な方法を用いることができ、またS03,S05~S10の処理を実施例1と同様に実行してロープRの摩耗痕W・素線切れFを検出することが可能である。
【0050】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載された範囲内で変形して実施することができる。例えば制御解析装置4の装置構成は、図2に限定されるものではなく、図3図12図14の処理が実行できればよいものとする。
【符号の説明】
【0051】
1,12…点検システム
2…光切断式のカメラ(センサ)
3…エレベータコントローラ
4…制御解析装置(エレベータロープの点検装置)
5…距離計測部
6…ロープ径計測部
7…ロープ揺れ計測部
8…ロープ山検出部
9…ロープ位置補正部
10…異常検出部
11…画像処理部
13…ToFカメラ(ToFセンサ)
R…エレベータロープ
B…背面板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14