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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】モータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20240611BHJP
   G01M 17/007 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
B60H1/00 101Z
G01M17/007 K
B60H1/00 101U
B60H1/00 102F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020124637
(22)【出願日】2020-07-21
(65)【公開番号】P2022021180
(43)【公開日】2022-02-02
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】徳田 直樹
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-303392(JP,A)
【文献】特開2019-084926(JP,A)
【文献】特開2015-072087(JP,A)
【文献】特開平08-040088(JP,A)
【文献】特開2000-158934(JP,A)
【文献】特開平10-016545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
G01M 17/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転速度を取得する速度取得部(S23)と、
前記速度取得部における今回の取得処理で取得された前記回転速度の最新値と、前回の取得処理で取得された前記回転速度の前回値とから前記回転速度が低下したか否かを判定する低下判定部(S25)と、
前記回転速度が低下したと判定されると、前記低下判定部による判定に用いた前記最新値を保存値として保存する保存部(S26)と、
前記回転速度が低下したと判定された時点から所定時間経過した時点の前記回転速度である今回値と、前記保存値との差分値を取得する差分取得部(S29、S30)と、
前記モータとは異なる外部要因によって前記回転速度が低下する外部要因低下が発生するか否かを判定する低下発生判定部(S20~S22)と、
前記外部要因低下が発生すると判定されず、かつ、前記差分値が異常判定閾値に達すると、前記モータが異常であると判定する異常判定部(S31,S32)と、を備えているモータ制御装置。
【請求項2】
前記低下発生判定部は、前記回転速度を目標回転速度に近づけるように減速制御しているか否かを判定し、前記減速制御していると判定した場合、前記外部要因低下が発生すると判定する請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記低下発生判定部は、前記回転速度を減速させるフェールセーフが発生中か否かを判定し、前記フェールセーフが発生していると判定した場合、前記外部要因低下が発生すると判定する請求項1または2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
電源から電圧が供給されて動作するものであり、
前記低下発生判定部は、前記電圧が所定範囲内であるか否かを判定し、前記電圧が所定範囲内でないと判定した場合、前記外部要因低下が発生すると判定する請求項1~3のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記モータは、車室内の空調を行うブロワモータであり、
前記所定時間は、前記ブロワモータが配置された雰囲気の気圧と前記回転速度とに相関する時間である請求項1~4のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
【請求項6】
前記異常判定部で前記モータが異常であると判定された場合、前記モータの異常を報知する報知部(S33)を備えている請求項1~5のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ制御装置の一例として、特許文献1に開示された車両用空気調和装置がある。この車両用空気調和装置は、ブラシモータであるブロワモータを制御するものである。車両用空気調和装置は、イグニッションスイッチがオフ状態からオン状態への変化直後、所定条件が成立した時点で、計測した通電開始時電流値に応じて通電電流値を補正するための補正係数を算出する。そして、車両用空気調和装置は、補正後通電電流値と、印加電圧値に応じて算出した基準電流値とを比較してブロワモータの異常を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-80928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両用空気調和装置は、ブラシモータであるブロワモータの異常を検出できる。しかしながら、車両用空気調和装置は、ブロワモータとしてブラシレスモータを用いた場合、異常を検出できないという課題がある。
【0005】
本開示は、上記問題点に鑑みなされたものであり、モータの種類にかかわらずモータの異常を検出可能なモータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本開示は、
モータの回転速度を取得する速度取得部(S23)と、
速度取得部における今回の取得処理で取得された回転速度の最新値と、前回の取得処理で取得された回転速度の前回値とから回転速度が低下したか否かを判定する低下判定部(S25)と、
回転速度が低下したと判定されると、低下判定部による判定に用いた最新値を保存値として保存する保存部(S26)と、
回転速度が低下したと判定された時点から所定時間経過した時点の回転速度である今回値と、保存値との差分値を取得する差分取得部(S29、S30)と、
モータとは異なる外部要因によって回転速度が低下する外部要因低下が発生するか否かを判定する低下発生判定部(S20~S22)と、
外部要因低下が発生すると判定されず、かつ、差分値が異常判定閾値に達すると、モータが異常であると判定する異常判定部(S31,S32)と、を備えているモータ制御装置である。
【0007】
このように、本開示は、外部要因低下が発生すると判定されず、かつ、差分値が異常判定閾値に達すると、モータが異常であると判定する。このため、本開示は、モータとは異なる外部要因によってモータの回転速度が低下した場合に、モータが異常であると誤判定することを抑制できる。また、本開示は、回転速度の差分値によってモータが異常であるか否かを判定する。したがって、本開示は、モータの種類にかかわらず、モータの異常を検出できる。
【0008】
なお、特許請求の範囲、および、この項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態におけるECUの概略構成を示すブロック図である。
図2】実施形態におけるECUの駆動処理を示すフローチャートである。
図3】実施形態におけるECUの異常判定処理を示すフローチャートである。
図4】実施形態におけるECUの目標回転速度一定の場合の動作を示すタイムチャートである。
図5】実施形態におけるECUの目標回転速度加速の場合の動作を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、図1図5を参照しながら、本開示を実施するための形態を説明する。本実施形態では、一例として、モータ制御装置を車両に搭載可能に構成されたECU1に適用した例を採用する。ECUは、Electronic Control Unitの略称である。また、本実施形態では、一例として、モータをブロワモータ2に適用した例を採用する。なお、図2図3では、ブロワモータ2をモータと省略して記載している。しかしながら、本開示は、これに限定されない。モータ制御装置は、ブロワモータ2とは異なるモータを制御するものであってもよい。
【0011】
<構成>
図1を用いて、ECU1の構成、およびECU1の周辺機器の構成に関して説明する。ECU1は、ブロワモータ2、回転角センサ3が電気的に接続されている。
【0012】
ブロワモータ2は、車室内の空調を行うためのモータである。ブロワモータ2は、ECU1からの制御信号に応じて回転駆動する。ブロワモータ2は、回転駆動することで、回転軸に取り付けられた羽根車を回転させる。ブロワモータ2は、ブラシレスモータであってもブラシ付きモータであっても採用できる。回転角センサ3は、ブロワモータ2の回転に応じた回転パルス信号をECU1に出力する。
【0013】
また、ECU1は、ADC5を介してバッテリ4が接続されている。ADCは、analog to digital converterの略称である。ECU1は、バッテリ4からの電圧がADC5でAD変換されて供給される。なお、この電圧は、電源電圧ともいえる。さらに、バッテリ4は、ブロワモータ2に電力を供給する。バッテリは、電源に相当する。
【0014】
ECU1は、通信線8に接続されている。通信線8には、上位ECU6が接続されている。ECU1は、通信線8を介して上位ECU6と通信可能に構成されている。上位ECU6は、後ほど説明するECU1と同様、CPU、ROM、RAMなどを備えてる。また、上位ECU6は、指示装置61を備えている。
【0015】
上位ECU6は、温度信号などに基づいて、ブロワモータ2の風量(回転速度)を制御するための目標回転速度を決定する。上位ECU6は、この目標回転速度の指令信号(指令値)を出力する。また、指示装置61は、乗員によって操作される装置である。指示装置61は、乗員によって操作されることで、例えば、ブロワモータ2の動作の開始を示す開始信号、動作の停止を示す停止信号を出力する。これらの信号は、上位ECU6から通信線8を介してECU1へと送信される。ブロワモータ2の動作開始は、空調の開始ともいえる。一方、ブロワモータ2の動作停止は、空調の停止ともいえる。
【0016】
また、上位ECU6は、報知装置7が電気的に接続されている。報知装置7は、上位ECU6からの指示に応じて、車室内などに報知情報を出力することで、ブロワモータ2の異常を報知する。上位ECU6は、ECU1からの指示信号に応じて、報知装置7に対して報知の指示を行う。また、報知装置7は、乗員などが認識可能な報知情報を出力する。よって、報知装置7は、音と表示の少なくとも一方によって報知情報を出力する。このため、報知装置7は、スピーカやディスプレイや警告ランプなどを含むものである。
【0017】
なお、本開示は、これに限定されず、指示装置61および報知装置7の少なくとも一方がECU1に直接接続されていてもよい。また、異常を報知する方法は、報知装置7による報知情報の出力に限定されない。例えば、ECU1は、外部機器で読み取り可能な報知情報をROM12に記憶しておく。そして、ECU1は、報知情報が外部機器で読み取られた際に、作業者に異常を報知するものであってもよい。外部機器は、ディーラーや工場などで作業者が操作する装置である。さらに、ECU1は、インターネット網などを用いた無線通信によって、センターの作業者に異常を報知するものであってもよい。
【0018】
ECU1は、CPU11、ROM12やRAM13を含むメモリ装置、タイマ14などの周辺機器を備えている。また、ECU1は、少なくともひとつの演算処理装置(CPU)と、プログラムとデータとを記憶する記憶媒体としての少なくともひとつのメモリ装置(MMR)とを有するものであってもよい。ECU1は、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータによって提供される。記憶媒体は、コンピュータによって読み取り可能なプログラムを非一時的に格納している。記憶媒体は、半導体メモリまたは磁気ディスクなどによって提供されうる。ECU1は、ひとつのコンピュータ、またはデータ通信装置によってリンクされた一組のコンピュータ資源によって提供されうる。プログラムは、制御装置によって実行されることによって、ECU1をこの明細書に記載される装置として機能させ、この明細書に記載される方法を実行するように制御装置を機能させる。ECU1は、多様な要素を提供する。それらの要素の少なくとも一部は、機能を実行するための手段と呼ぶことができ、別の観点では、それらの要素の少なくとも一部は、構成的なブロック、またはモジュールと呼ぶことができる。
【0019】
なお、ECU1が提供する手段および/または機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組み合わせによって提供することができる。例えば、ECU1がハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、またはアナログ回路によって提供することができる。
【0020】
ECU1は、回転パルス信号、開始信号、停止信号、指令信号などを取得可能に構成されている。ECU1は、ADC5を介してバッテリ4から供給された電圧で動作する。ECU1は、供給された電圧の値(電圧値)を所定時間ごとに、RAM13などに一時的に記憶する。
【0021】
ECU1は、ブロワモータ2への制御信号、上位ECU6への報知情報の出力を示す指示信号などを出力可能に構成されている。ECU1は、PWM制御でブロワモータ2を駆動制御する。さらに、ECU1は、例えば、PI制御することでフィードバックをかけてブロワモータ2を駆動制御する。PWMは、Pulse Width Modulationの略称である。PIは、Proportional-Integral Controllerの略称である。
【0022】
CPU11は、ROM12に記憶されているプログラムを実行することで、取得した信号などを用いて各種演算処理を行う。また、CPU11は、演算結果を一時的にRAM13に格納しつつ、各種演算処理を行う。
【0023】
例えば、CPU11は、回転角センサ3からの回転パルス信号に基づいて、ブロワモータ2の回転速度を所定時間ごとに算出し、算出した回転速度をRAM13などに一時的に記憶する。CPU11は、目標回転速度の指令信号に対応する制御信号をブロワモータ2へ出力する。さらに、CPU11は、ADC5を介して供給された電力値に基づいて、バッテリ4の電圧が低下しているか否かを判定する。なお、ECU1(CPU11)の処理動作に関しては、後ほど詳しく説明する。
【0024】
タイマ14は、例えばCPU11からの指示に応じて経時を開始する。CPU11は、タイマ14で経時された経過時間を参照可能に構成されている。CPU11は、経過時間とマスク時間mtとを比較して、経過時間がマスク時間mtに達したか否かを判定する。マスク時間mtは、例えばROM12に記憶されている。マスク時間mtは、後ほど説明する差分値と閾値との比較を行わない時間である。マスク時間mtに関しては、後ほど詳しく説明する。
【0025】
なお、CPU11は、車速や、車室の窓の開閉状態などを参照可能に構成されていてもよい。車速は、上位ECU6や車速センサからECU1に入力される。開閉状態は、全閉位置と全開位置との間における窓の位置である。窓の位置を示す位置信号は、上位ECU6などからECU1に入力される。これによって、CPU11は、開閉状態を取得することができる。また、CPU11は、車速と窓の開閉状態から、車室内が気圧変化を推定する。CPU11は、例えば、車速が所定値を超えた高速走行中と判定し、かつ、窓が全開状態であると判定した場合、車室内の気圧が高圧となっていると推定する。
【0026】
<処理動作>
ここで、図2図5を用いて、ECU1の処理動作に関して説明する。ECU1は、開始信号を受信すると、図2図3のフローチャートを開始する。まず、図2の駆動処理に関して説明する。なお、図2図3は、主に、CPU11が行う処理である。
【0027】
ステップS10では、回転速度を取得する。CPU11は、回転パルス信号に基づいて、ブロワモータ2の回転速度を算出する。つまり、CPU11は、回転速度を算出することで、回転速度を取得する。算出した回転速度は、実際の回転速度であるため実回転速度ともいえる。
【0028】
ステップS11では、フェールセーフが必要か否かを判定する。CPU11は、フェールセーフが必要か否かを判定する。フェールセーフは、ブロワモータ2の回転速度を減速させて、ブロワモータ2を保護する機能である。CPU11は、ブロワモータ2にフェールセーフが必要な異常が生じているか否かによって、フェールセーフが必要であるか否かを判定する。CPU11は、フェールセーフが必要と判定した場合はステップS12へ進み、フェールセーフが必要と判定しなかった場合はステップS13へ進む。なお、CPU11は、フェールセーフが必要と判定した場合、フェールセーフを発生中であることを示すフェール情報を一時的に保存しておく。
【0029】
ステップS12では、減速制御を行う。CPU11は、ブロワモータ2を減速制御するために、目標回転速度を変更する。つまり、CPU11は、上位ECU6から受信した指令信号が示す目標回転速度を変更する。
【0030】
ステップS13では、制御指示を行う。CPU11は、ステップS12で変更した目標回転速度に沿うように制御信号を出力する。そして、CPU11は、制御信号をブロワモータ2に出力することで、ブロワモータ2を駆動制御する。
【0031】
ステップS14では、モータ停止か否かを判定する。CPU11は、停止信号を受信したか否かに基づいて、ブロワモータ2を停止させるか否かを判定する。CPU11は、停止信号を受信した場合、ブロワモータ2を停止させると判定して図2のフローチャートを終了する。CPU11は、停止信号を受信してない場合、ブロワモータ2を停止させると判定せずにステップS10に戻る。
【0032】
次に、図3の異常判定処理に関して説明する。CPU11は、ステップS20~S22を行うことで、外部要因低下が発生するか否かを判定する(低下発生判定部)。外部要因低下とは、ブロワモータ2とは異なる外部要因によってブロワモータ2の回転速度が低下することである。また、CPU11は、外部要因低下が発生する可能性がない状況でのみ、ブロワモータ2の異常を検出するためにステップS20~S22を行うともいえる。したがって、CPU11は、ブロワモータ2の回転速度の低下が、ブロワモータ2自体の異常であるか否か判定するものである。
【0033】
なお、ブロワモータ2の異常は、ブロワモータ2の故障や劣化である。また、ブロワモータ2の異常は、例えば、ブロワモータ2の巻き線の断線などをあげることができる。CPU11は、後ほど説明するが回転速度の差分値dsから異常を検出するため、ブロワモータ2が動作しなくなる前に異常を検出することができる。よって、ブロワモータ2の異常は、ブロワモータ2の故障の予兆ともいえる。
【0034】
ステップS20では、一定速度または加速中であるか否かを判定する(低下発生判定部)。CPU11は、回転速度を一定速度となるようにブロワモータ2を駆動制御しているか、または、回転速度を加速させるようにブロワモータ2を駆動制御しているかを判定する。言い換えると、CPU11は、回転速度を減速させるようにブロワモータ2を駆動制御しているか否かを判定する。つまり、CPU11は、ブロワモータ2を減速制御しているか否かを判定する。また、CPU11は、回転速度を減速させてブロワモータ2を駆動制御する必要がある目標回転速度であるか否かを判定するともいえる。
【0035】
減速制御中は、ブロワモータ2に異常が発生していなくても、回転速度の低下が起こりうる。このため、CPU11は、減速制御中の場合、差分値dsを用いた異常判定を行わない。
【0036】
CPU11は、一定速度または加速中であると判定した場合、すなわち、減速制御していないと判定した場合、ステップS21へ進む。CPU11は、一定速度または加速中であると判定しなかった場合、外部要因低下が発生するとみなしてステップS34へ進む。例えば、CPU11は、最新値≧前回値である場合、一定速度または加速中であると判定する。CPU11は、最新値<前回値である場合、一定速度または加速中であると判定しない。
【0037】
また、CPU11は、回転速度の最新値と目標回転速度に基づいて、一定速度または加速中であるか否かを判定してもよい。この場合、CPU11は、最新値≦目標回転速度である場合、一定速度または加速中であると判定する。CPU11は、最新値>目標回転速度である場合、一定速度または加速中であると判定しない、すなわち、減速制御中と判定する。
【0038】
ステップS21では、フェールセーフ未発生か否かを判定する(低下発生判定部)。フェールセーフ発生中は、ブロワモータ2に異常が発生していなくても、回転速度の低下が起こりうる。このため、CPU11は、フェールセーフ発生中の場合、差分値dsを用いた異常判定を行わない。
【0039】
CPU11は、フェール情報が記憶されていない場合、フェールセーフが未発生と判定し、ステップS22へ進む。CPU11は、フェール情報が記憶されている場合、フェールセーフが未発生と判定せず、外部要因低下が発生するとみなしてステップS34へ進む。
【0040】
ステップS22では、電圧が一定であるか否かを判定する(低下発生判定部)。バッテリ4から供給された電圧が一定でない場合は、ブロワモータ2に異常が発生していなくても、回転速度の低下が起こりうる。このため、CPU11は、電圧が一定でない場合、差分値dsを用いた異常判定を行わない。
【0041】
CPU11は、電圧が一定であると判定した場合、ステップS23へ進む。CPU11は、電圧が一定であると判定しなかった場合、外部要因低下が発生するとみなしてステップS34へ進む。
【0042】
なお、バッテリ4から供給された電圧は、通常、所定範囲内で変動することがある。しかしながら、電圧は、所定範囲内で変動したとしてもブロワモータ2の駆動制御には影響しない。よって、CPU11は、電圧が所定範囲内の場合は電圧が一定であると判定し、電圧が所定範囲内でない場合は電圧が一定であると判定しない。
【0043】
CPU11は、ステップS22でYES判定した場合、ステップS23以降の処理を実行する。つまり、CPU11は、外部要因低下が発生しない状態でのみ、ステップS23以降の処理を実行する。
【0044】
なお、本実施形態では、ステップS20~S22のすべてを行う例を採用している。しかしながら、本開示は、ステップS20~S22の少なくともひとつを行うものであっても採用できる。
【0045】
ステップS23では、回転速度を取得する(速度取得部)。CPU11は、回転パルス信号からブロワモータ2の回転速度を取得(算出)する。この回転速度は、この時点における最新値である。
【0046】
ステップS24では、回転速度を記憶する。CPU11は、ステップS23で取得した回転速度をRAM13に一時的に記憶する。
【0047】
ステップS25では、回転速度が低下したか否かを判定する(低下判定部)。CPU11は、RAM13に記憶されている回転速度の前回値と最新値とから、回転速度が低下したか否かを判定する。CPU11は、回転速度が低下していると判定した場合はステップS26へ進み、回転速度が低下していると判定しなかった場合はステップS34へ進む。図4図5では、タイミングt1で異常が発生して、回転速度が低下したものとする。
【0048】
ステップS26では、回転速度を保存値として保存する(保存部)。CPU11は、回転速度が低下したと判定された時点の回転速度を保存値として保存する。これは、回転速度の差分値dsを算出するためである。
【0049】
ステップS27では、タイマをスタートする(差分取得部)。CPU11は、タイマ14による経過時間の経時をスタートする。CPU11は、タイマ14を用いて、回転速度が低下したと判定した時点からの経過時間を経時する。
【0050】
ステップS28では、マスク時間経過したか否かを判定する(差分取得部)。CPU11は、ステップS27で開示をスタートしてからの経過時間がマスク時間mtだけ経過したか否かを判定する。つまり、CPU11は、経過時間とマスク時間mtとを比較して、経過時間がマスク時間mtに達した場合はマスク時間mt経過したと判定してステップS29へ進む。CPU11は、経過時間とマスク時間mtとを比較して、経過時間がマスク時間mtに達してない場合はマスク時間mt経過したと判定せずにステップS28を繰り返す。
【0051】
マスク時間mtは、所定時間に相当する。本実施形態では、一例として、ブロワモータ2が配置された雰囲気の気圧と回転速度とに相関する時間をマスク時間mtとして採用する。ブロワモータ2は、ブロワモータ2が配置されている雰囲気(車室内など)における気圧が高圧化することで回転速度が一時的に低下してもとに戻ることがある。また、その雰囲気の気圧は、車両が比較的高速で走行しており、かつ、車両の窓が開状態の場合に高圧化する。さらに、雰囲気の気圧は、回転速度が低下したとき高圧化している可能性がある。
【0052】
そこで、CPU11は、回転速度が気圧によって低下する状況において、異常判定を行わないようするために、ステップS27、S28を行う。言い換えると、CPU11は、回転速度が低下してから所定時間は異常判定の実行をマスクするために、ステップS27、S28を行う。なお、異常判定に関しては、後ほど説明する。
【0053】
マスク時間mtは、予め決められた一定時間を採用することができる。この場合、マスク時間mtとしては、高圧化によって回転速度が一時的に低下してからもとに戻るまでの時間を実験やシミュレーションなどによって推定した時間を採用できる。
【0054】
また、マスク時間mtは、車速と窓の開閉状態に応じて可変としてもよい。この場合、例えば、車速と開閉状態とマスク時間mtとが関連付けられたマップをROM12に保存しておく。マップは、車速と開閉状態のそれぞれを可変させて、その都度、回転速度が一時的に低下してもとに戻る時間を推定または測定することで作成することができる。そして、CPU11は、マップを参照して、取得した車速と開閉状態とからマスク時間mtを決定する。
【0055】
CPU11は、上記のように車室内の気圧が高圧となっていると推定した場合にステップS27、S28を実行するものであってもよい。また、マスク時間mt(所定時間)は、ブロワモータ2が配置された雰囲気の気圧と回転速度とに相関する時間でなくても採用できる。
【0056】
ステップS29では、回転速度を取得する。CPU11は、ステップS23と同様に、ブロワモータ2の回転速度を今回値として取得する。これは、保存値と今回値との差分値dsを算出するためである。
【0057】
ステップS30では、今回値と保存値との差分値dsを算出する(差分取得部)。CPU11は、回転速度が低下したと判定された時点からマスク時間mtの分だけ経過した時点の回転速度である今回値と、ステップS26で保存した保存値との差分値dsを取得する。これは、差分値dsを用いて、ブロワモータ2の異常を判定するためである。なお、差分値dsは、回転速度低下の差分である。
【0058】
ステップS31では、差分値ds≧閾値であるか否かを判定する。CPU11は、差分値dsが閾値に達したと判定した場合、ブロワモータ2に異常が生じているとみなしてステップS32へ進む。CPU11は、差分値dsが閾値に達したと判定しなかった場合、ブロワモータ2に異常が生じていないとみなしてステップS34へ進む。
【0059】
閾値は、例えば、公差範囲を示す値を採用することができる。よって、CPU11は、差分値dsが公差範囲内であるか否かを判定するともいえる。そして、CPU11は、差分値dsが公差範囲内であると判定しなかった場合はステップS32へ進む。CPU11は、差分値dsが公差範囲内であると判定した場合はステップS34へ進む。ここでいう公差は、目標回転速度に対してブロワモータ2の性能上変動してしまう範囲値のことである。なお、閾値は、異常判定閾値に相当する。
【0060】
図4図5に示すように、CPU11は、回転速度の低下からマスク時間mtの分だけ時間が経過するまでは、差分値dsを算出しない。つまり、CPU11は、異常判定を行わない。
【0061】
ステップS32では、異常と判定する(異常判定部)。CPU11は、外部要因低下が発生しないと判定され、かつ、差分値dsが閾値に達すると、ブロワモータ2が異常であると判定する。
【0062】
CPU11は、図4に示すように、目標回転速度が一定速度の場合であっても、図5に示すように、目標回転速度が加速を示す場合であっても異常判定を行うことができる。図4図5の上段は、デューティ100%であっても実際の回転速度が目標回転速度に達していない状態を示している。図4図5の中段は、デューティ80%から100%に変更しても実際の回転速度が目標回転速度に達していない状態を示している。図4図5の下段は、デューティ60%から80%に変更しても実際の回転速度が目標回転速度に達していない状態を示している。なお、ここで用いているデューティは一例である。
【0063】
ステップS33では、異常を報知する(報知部)。CPU11は、ステップS32でブロワモータ2が異常であると判定した場合、ブロワモータ2の異常を報知する。CPU11は、上位ECU6に対して指示信号を出力することで、報知装置7から異常を報知する。
【0064】
ECU1は、車両の所有者やディーラーなどの作業者に異常を報知することで、ブロワモータ2の交換タイミングを知らせることができる。よって、ECU1は、ブロワモータ2が故障する前に、ブロワモータ2の交換できるようになる。その結果、ECU1は、冷暖房が使えなくなる、もしくは悪天候時にデフロスターが使用できないといった状況を未然に防ぐことができる。しかしながら、本開示は、異常を報知しないものであってもよい。
【0065】
ステップS34では、モータ停止か否かを判定する。CPU11は、ステップS14と同様に、モータ停止か否かを判定する。CPU11は、ブロワモータ2を停止させると判定するとして図3のフローチャートを終了する。CPU11は、ブロワモータ2を停止しないと判定すると、ステップS20に戻る。
【0066】
<効果>
このように、ECU1は、外部要因低下が発生すると判定されず、かつ、差分値dsが閾値に達すると、ブロワモータ2が異常であると判定する。このため、ECU1は、ブロワモータ2とは異なる外部要因によってブロワモータ2の回転速度が低下した場合に、ブロワモータ2が異常であると誤判定することを抑制できる。また、ECU1は、回転速度の差分値dsによってブロワモータ2が異常であるか否かを判定する。したがって、ECU1は、ブロワモータ2の種類にかかわらず、ブロワモータ2の異常を検出できる。
【0067】
ECU1は、一定速度または加速中であると判定しなかった場合、外部要因低下が発生するとみなして異常判定を行わない。これによって、ECU1は、少なくとも減速制御に伴う回転速度の低下をブロワモータ2の異常と判定することを抑制できる。
【0068】
ECU1は、フェールセーフが未発生と判定しなかった場合、外部要因低下が発生するとみなして異常判定を行わない。これによって、ECU1は、少なくともフェールセーフに伴う回転速度の低下をブロワモータ2の異常と判定することを抑制できる。
【0069】
ECU1は、バッテリ4から供給された電圧が一定でないと判定した場合、外部要因低下が発生するとみなして異常判定を行わない。これによって、ECU1は、少なくとも電圧が一定でないことに伴う回転速度の低下をブロワモータ2の異常と判定することを抑制できる。
【0070】
特に、ECU1は、一定速度または加速中であると判定せず、フェールセーフが未発生と判定せず、かつ、バッテリ4から供給された電圧が一定でないと判定した場合、外部要因低下が発生するとみなして異常判定を行わない。これよって、ECU1は、確実に、ブロワモータ2とは異なる外部要因によってブロワモータ2の回転速度が低下した場合に、ブロワモータ2が異常であると誤判定することをより一層抑制できる。
【0071】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本開示は、上記実施形態に何ら制限されることはなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変形が可能である。
【0072】
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態が本開示に示されているが、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範畴や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0073】
1…ECU、11…CPU、12…ROM、13…RAM、14…タイマ、2…ブロワモータ、3…回転角センサ、4…バッテリ、5…ADC、6…上位ECU、61…指示装置、7…報知装置、8…通信線、
図1
図2
図3
図4
図5