(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】媒体鑑別装置および媒体処理機
(51)【国際特許分類】
G07D 5/08 20060101AFI20240611BHJP
G07D 11/10 20190101ALI20240611BHJP
【FI】
G07D5/08 104
G07D11/10
(21)【出願番号】P 2020127115
(22)【出願日】2020-07-28
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【氏名又は名称】大山 夏子
(74)【代理人】
【識別番号】100190942
【氏名又は名称】風間 竜司
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 晃規
(72)【発明者】
【氏名】中村 茉友子
【審査官】中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-351138(JP,A)
【文献】特開2018-169725(JP,A)
【文献】特開2008-003666(JP,A)
【文献】特開昭61-080491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00-13/00
G07F 19/00
G01R 1/00-35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送面に沿って媒体が搬送される搬送路と、
前記搬送路の上方に配置され、前記搬送路上の媒体を搬送する搬送ベルトと、
前記搬送路の上方に配置される第一のコイルと前記搬送路の下方に配置される第二のコイルとを含んで構成されており、前記第一のコイルと前記第二のコイルとが一対となって前記媒体の特徴を検出する磁気センサと、
を備え、
前記第一のコイルは、前記搬送路の上方において前記搬送ベルトと干渉しない位置に配置され、
前記第二のコイルは、前記搬送路の下方において前記第一のコイルの真下の位置よりも前記搬送ベルト側の位置に配置され
、
前記第二のコイルと一対になって前記磁気センサを構成する第一のコイルとして、一個のコイルが存在し、前記第二のコイルと一対になって前記磁気センサを構成する第一のコイルとして、前記一個のコイル以外のコイルは存在せず、前記第一のコイルと前記第二のコイルとは同じ大きさである、
媒体鑑別装置。
【請求項2】
前記媒体鑑別装置は、
前記媒体をガイドする搬送基準面を有し、前記搬送基準面によって前記搬送路の幅方向における前記媒体の搬送位置を規制する搬送基準部材を備え、
前記搬送ベルトは、前記媒体に搬送力を与える位置に配置され、前記媒体を前記搬送基準面に当接させながら前記媒体を搬送する、
請求項1に記載の媒体鑑別装置。
【請求項3】
前記搬送ベルトは、前記媒体の外径の中央付近に前記搬送力を与える位置に配置される、
請求項2に記載の媒体鑑別装置。
【請求項4】
前記搬送ベルトには、突起が形成されており、前記突起によって前記媒体に搬送力が与えられる、
請求項
2または3に記載の媒体鑑別装置。
【請求項5】
前記第一のコイルおよび前記第二のコイルのうち、一方は、磁束を発生させる励磁コイルであり、他方は、前記磁束を検知する検知コイルである、
請求項
2~4のいずれか一項に記載の媒体鑑別装置。
【請求項6】
前記磁気センサは、前記検知コイルによって検知される前記磁束の変化に基づいて、前記媒体の特徴を検出する、
請求項5に記載の媒体鑑別装置。
【請求項7】
前記磁気センサは、前記媒体の特徴として前記媒体の外径を検出する外径センサを含む、
請求項
6に記載の媒体鑑別装置。
【請求項8】
前記外径センサに含まれる前記第一のコイルは、前記搬送ベルトを基準として前記搬送基準面とは反対側に配置される、
請求項
7に記載の媒体鑑別装置。
【請求項9】
前記媒体鑑別装置は、前記媒体をガイドする搬送基準面を基準とした前記媒体のずれ量を検出するずれ量検出センサを備え、
前記ずれ量は、外径センサによって検出された前記媒体の外径の補正に用いられる、
請求項
7または
8に記載の媒体鑑別装置。
【請求項10】
搬送面に沿って媒体が搬送される搬送路と、
前記搬送路の上方に配置され、前記搬送路上の媒体を搬送する搬送ベルトと、
前記搬送路の上方に配置される第一のコイルと前記搬送路の下方に配置される第二のコイルとを含んで構成されており、前記第一のコイルと前記第二のコイルとが一対となって前記媒体の特徴を検出する磁気センサと、
を備え、
前記第一のコイルは、前記搬送路の上方において前記搬送ベルトと干渉しない位置に配置され、
前記第二のコイルは、前記搬送路の下方において前記第一のコイルの真下の位置よりも前記搬送ベルト側の位置に配置され、
前記第一のコイルおよび前記第二のコイルのうち、一方は、磁束を発生させる励磁コイルであり、他方は、前記磁束を検知する検知コイルであり、
前記磁気センサは、前記検知コイルによって検知される前記磁束の変化に基づいて、前記媒体の特徴を検出し、
前記磁気センサは、前記媒体の特徴として前記媒体の材質を検出する材質センサを含み、
前記材質センサに含まれる前記第一のコイルは、前記搬送ベルトを基準として、前記媒体をガイドする搬送基準面側に配置される、
媒体鑑別装置。
【請求項11】
媒体が投入される投入口と、
搬送面に沿って前記媒体が搬送される搬送路と、
前記搬送路の上方に配置され、前記搬送路上の媒体を搬送する搬送ベルトと、
前記搬送路の上方に配置される第一のコイルと前記搬送路の下方に配置される第二のコイルとを含んで構成されており、前記第一のコイルと前記第二のコイルとが一対となって前記媒体の特徴を検出する磁気センサと、
を備え、
前記第一のコイルは、前記搬送路の上方において前記搬送ベルトと干渉しない位置に配置され、
前記第二のコイルは、前記搬送路の下方において前記第一のコイルの真下の位置よりも前記搬送ベルト側の位置に配置され
、
前記第二のコイルと一対になって前記磁気センサを構成する第一のコイルとして、一個のコイルが存在し、前記第二のコイルと一対になって前記磁気センサを構成する第一のコイルとして、前記一個のコイル以外のコイルは存在せず、前記第一のコイルと前記第二のコイルとは同じ大きさである、
媒体鑑別装置を備える、媒体処理機。
【請求項12】
媒体が投入される投入口と、
搬送面に沿って前記媒体が搬送される搬送路と、
前記搬送路の上方に配置され、前記搬送路上の媒体を搬送する搬送ベルトと、
前記搬送路の上方に配置される第一のコイルと前記搬送路の下方に配置される第二のコイルとを含んで構成されており、前記第一のコイルと前記第二のコイルとが一対となって前記媒体の特徴を検出する磁気センサと、
を備え、
前記第一のコイルは、前記搬送路の上方において前記搬送ベルトと干渉しない位置に配置され、
前記第二のコイルは、前記搬送路の下方において前記第一のコイルの真下の位置よりも前記搬送ベルト側の位置に配置され、
前記第一のコイルおよび前記第二のコイルのうち、一方は、磁束を発生させる励磁コイルであり、他方は、前記磁束を検知する検知コイルであり、
前記磁気センサは、前記検知コイルによって検知される前記磁束の変化に基づいて、前記媒体の特徴を検出し、
前記磁気センサは、前記媒体の特徴として前記媒体の材質を検出する材質センサを含み、
前記材質センサに含まれる前記第一のコイルは、前記搬送ベルトを基準として、前記媒体をガイドする搬送基準面側に配置される、
媒体鑑別装置を備える、媒体処理機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体鑑別装置および媒体処理機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、従来の硬貨鑑別装置では、硬貨(媒体)の特徴(例えば、硬貨の外径、材質または厚さなど)を検出するための主な技術として、磁気センサを用いる技術と、光学センサを用いる技術とがある。磁気センサとしては、棒状、E型またはU型のフェライトコアにコイルを巻いた形状の磁気センサが用いられることが多い。磁気センサが用いられる場合には、磁気センサのコイルに電流を流すことによって磁界を発生させ、硬貨の搬送前(以下、「無媒体状態」とも言う。)と搬送中(以下、「有媒体状態」とも言う。)との間の磁界の変化に基づいて、硬貨の特徴を検出する技術がよく用いられる。
【0003】
磁気センサの方式には、透過型と反射型とがある。透過型は2つのコイルを1組として用いる。そして、2つのコイルのうちのいずれか一方のコイルが搬送路の下方に配置され、他方のコイルが搬送路の上方に配置される。すなわち、2つのコイルは、搬送路を挟んで上下に対向する位置に配置される。このとき、一方のコイルが磁束を発生させる発信側として機能し、他方のコイルが磁束を検知する受信側として機能する。これによって、2つのコイルに挟まれた区間の磁界の変化が検知される。それに対して反射型は、1つのコイルが発信側および受信側として機能する。
【0004】
反射型は、硬貨浮きによる影響を大きく受ける方式であるため、硬貨の材質または厚さの検出には、透過型の磁気センサが用いられることが多い。しかし、上記したように、透過型の磁気センサは、搬送路を挟んで配置されるため、硬貨を搬送する搬送ベルトと干渉しない位置に磁気センサが配置されるように工夫する必要がある。
【0005】
一方、磁気センサによる検知範囲を広くしたいという要求もある。一例として、硬貨の材質を検出する磁気センサによる検知範囲を広くしたいという要求が特に強い。磁気センサによる検知範囲を広くするためには、硬貨の搬送路の幅方向の中央付近に磁気センサが配置されるのが望ましい。そのため、搬送路の幅方向における硬貨の搬送位置を規制する搬送基準面に硬貨を当接させる幅寄せ機構を採用するとともに、搬送基準面側に搬送ベルトを配置する技術が提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0006】
かかる技術によれば、磁気センサが搬送路の幅方向の中央付近に配置されても、搬送ベルトと磁気センサとの干渉が避けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2019-46410号公報
【文献】特開2019-61463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、かかる技術では、磁気センサが搬送路の幅方向の中央付近に配置される代わりに、搬送ベルトが搬送基準面側に配置される。そのため、搬送される硬貨の中央付近よりも搬送基準面側に大きく寄った位置に対して搬送力が与えられるため、硬貨の搬送性能が向上しないという事情がある。
【0009】
硬貨の搬送性能を向上させるために、搬送ベルトによって硬貨の中央付近に搬送力が与えられるように、搬送ベルトを搬送路の幅方向の中央付近に寄せようとすると、搬送ベルトと干渉しないように磁気センサを搬送基準面から離れる方向に移動させる必要が生じる。そのため、磁気センサによって発生される磁束に硬貨が掛からなくなり、硬貨の特徴が磁気センサによって検出されなくなってしまうという事情が生じる。
【0010】
そこで、搬送ベルトと磁気センサとの干渉を避けることと、搬送ベルトによる媒体の搬送性能の低下を抑制することとを両立させることが可能な技術が提供されることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題を解決するために、本発明のある観点によれば、搬送面に沿って媒体が搬送される搬送路と、前記搬送路の上方に配置され、前記搬送路上の媒体を搬送する搬送ベルトと、前記搬送路の上方に配置される第一のコイルと前記搬送路の下方に配置される第二のコイルとを含んで構成されており、前記第一のコイルと前記第二のコイルとが一対となって前記媒体の特徴を検出する磁気センサと、を備え、前記第一のコイルは、前記搬送路の上方において前記搬送ベルトと干渉しない位置に配置され、前記第二のコイルは、前記搬送路の下方において前記第一のコイルの真下の位置よりも前記搬送ベルト側の位置に配置され、前記第二のコイルと一対になって前記磁気センサを構成する第一のコイルとして、一個のコイルが存在し、前記第二のコイルと一対になって前記磁気センサを構成する第一のコイルとして、前記一個のコイル以外のコイルは存在せず、前記第一のコイルと前記第二のコイルとは同じ大きさである、媒体鑑別装置が提供される。
【0012】
前記媒体鑑別装置は、前記媒体をガイドする搬送基準面を有し、前記搬送基準面によって前記搬送路の幅方向における前記媒体の搬送位置を規制する搬送基準部材を備え、前記搬送ベルトは、前記媒体に搬送力を与える位置に配置され、前記媒体を前記搬送基準面に当接させながら前記媒体を搬送してもよい。
【0013】
前記搬送ベルトは、前記媒体の外径の中央付近に前記搬送力を与える位置に配置されてもよい。
【0014】
前記搬送ベルトには、突起が形成されており、前記突起によって前記媒体に搬送力が与えられてもよい。
【0015】
前記第一のコイルおよび前記第二のコイルのうち、一方は、磁束を発生させる励磁コイルであり、他方は、前記磁束を検知する検知コイルであってもよい。
【0016】
前記磁気センサは、前記検知コイルによって検知される前記磁束の変化に基づいて、前記媒体の特徴を検出してもよい。
【0019】
前記磁気センサは、前記媒体の特徴として前記媒体の外径を検出する外径センサを含んでもよい。
【0020】
前記外径センサに含まれる前記第一のコイルは、前記搬送ベルトを基準として前記搬送基準面とは反対側に配置されてもよい。
【0021】
前記媒体鑑別装置は、前記媒体をガイドする搬送基準面を基準とした前記媒体のずれ量を検出するずれ量検出センサを備え、前記ずれ量は、外径センサによって検出された前記媒体の外径の補正に用いられてもよい。
【0022】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、搬送面に沿って媒体が搬送される搬送路と、前記搬送路の上方に配置され、前記搬送路上の媒体を搬送する搬送ベルトと、前記搬送路の上方に配置される第一のコイルと前記搬送路の下方に配置される第二のコイルとを含んで構成されており、前記第一のコイルと前記第二のコイルとが一対となって前記媒体の特徴を検出する磁気センサと、を備え、前記第一のコイルは、前記搬送路の上方において前記搬送ベルトと干渉しない位置に配置され、前記第二のコイルは、前記搬送路の下方において前記第一のコイルの真下の位置よりも前記搬送ベルト側の位置に配置され、前記第一のコイルおよび前記第二のコイルのうち、一方は、磁束を発生させる励磁コイルであり、他方は、前記磁束を検知する検知コイルであり、前記磁気センサは、前記検知コイルによって検知される前記磁束の変化に基づいて、前記媒体の特徴を検出し、前記磁気センサは、前記媒体の特徴として前記媒体の材質を検出する材質センサを含み、前記材質センサに含まれる前記第一のコイルは、前記搬送ベルトを基準として、前記媒体をガイドする搬送基準面側に配置される、媒体鑑別装置が提供される。
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、媒体が投入される投入口と、搬送面に沿って前記媒体が搬送される搬送路と、前記搬送路の上方に配置され、前記搬送路上の媒体を搬送する搬送ベルトと、前記搬送路の上方に配置される第一のコイルと前記搬送路の下方に配置される第二のコイルとを含んで構成されており、前記第一のコイルと前記第二のコイルとが一対となって前記媒体の特徴を検出する磁気センサと、を備え、前記第一のコイルは、前記搬送路の上方において前記搬送ベルトと干渉しない位置に配置され、前記第二のコイルは、前記搬送路の下方において前記第一のコイルの真下の位置よりも前記搬送ベルト側の位置に配置され、前記第二のコイルと一対になって前記磁気センサを構成する第一のコイルとして、一個のコイルが存在し、前記第二のコイルと一対になって前記磁気センサを構成する第一のコイルとして、前記一個のコイル以外のコイルは存在せず、前記第一のコイルと前記第二のコイルとは同じ大きさである、媒体鑑別装置を備える、媒体処理機が提供される。
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、媒体が投入される投入口と、搬送面に沿って前記媒体が搬送される搬送路と、前記搬送路の上方に配置され、前記搬送路上の媒体を搬送する搬送ベルトと、前記搬送路の上方に配置される第一のコイルと前記搬送路の下方に配置される第二のコイルとを含んで構成されており、前記第一のコイルと前記第二のコイルとが一対となって前記媒体の特徴を検出する磁気センサと、を備え、前記第一のコイルは、前記搬送路の上方において前記搬送ベルトと干渉しない位置に配置され、前記第二のコイルは、前記搬送路の下方において前記第一のコイルの真下の位置よりも前記搬送ベルト側の位置に配置され、前記第一のコイルおよび前記第二のコイルのうち、一方は、磁束を発生させる励磁コイルであり、他方は、前記磁束を検知する検知コイルであり、前記磁気センサは、前記検知コイルによって検知される前記磁束の変化に基づいて、前記媒体の特徴を検出し、前記磁気センサは、前記媒体の特徴として前記媒体の材質を検出する材質センサを含み、前記材質センサに含まれる前記第一のコイルは、前記搬送ベルトを基準として、前記媒体をガイドする搬送基準面側に配置される、媒体鑑別装置を備える、媒体処理機が提供される。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように本発明によれば、搬送ベルトと磁気センサとの干渉を避けることと、搬送ベルトによる媒体の搬送性能の低下を抑制することとを両立させることが可能な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施形態に係る釣銭機の外観構成を示した説明図である。
【
図3】釣銭機が有する硬貨鑑別装置の外観を示す斜視図である。
【
図4】センサ固定部を外した状態における硬貨鑑別装置の上面図である。
【
図5】
図3のB-B線に沿った硬貨鑑別装置の断面図である。
【
図6】本実施形態に係る受信側外径センサおよび発信側外径センサの配置例を示す図である。
【
図7】受信側外径センサおよび発信側外径センサの一般的な配置例を示す図である。
【
図8】上下に対向する位置関係を維持したまま搬送基準面とは反対側に移動した受信側外径センサおよび発信側外径センサの例を示す図である。
【
図9】本実施形態に係る受信側材質センサおよび発信側材質センサの配置例を示す図である。
【
図10】受信側材質センサおよび発信側材質センサの一般的な配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0026】
また、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素を、同一の符号の後に異なる数字を付して区別する場合がある。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素等の各々を特に区別する必要がない場合、同一符号のみを付する。また、異なる実施形態の類似する構成要素については、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する場合がある。ただし、異なる実施形態の類似する構成要素等の各々を特に区別する必要がない場合、同一符号のみを付する。
【0027】
<<1.基本構成>>
本発明の一実施形態に係る媒体処理機の一例は、媒体として硬貨を取り扱う釣銭機である。釣銭機は、例えば、百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンスストアなどといった小売業の店舗のレジ精算場に設置され、POS(Point Of Sales)レジスタなどに接続されて入出金処理を行う。しかし、釣銭機が設置される場所は限定されない。以下では、まずこのような本発明の一実施形態に係る釣銭機の基本構成について、
図1および
図2を参照して説明する。
【0028】
図1は、本実施形態に係る釣銭機1の外観構成を示した説明図である。本実施形態に係る釣銭機1は、
図1に示すように、紙幣釣銭機2と硬貨釣銭機3とを含んで構成され、POSレジスタ4と接続される。また、
図1に示すように、釣銭機1は、装置正面左側に入金口5、出金口6、リジェクト部7が設けられ、装置正面右側に、操作表示部9、回収カセット部19、紙幣入出金口20が設けられている。
【0029】
入金口5は、レジ担当の係員が顧客から受け取った硬貨が投入される投入口である。出金口6は、顧客へ釣銭として支払う硬貨を払い出す受取口である。
【0030】
リジェクト部7は、受け入れ不能と判別された(リジェクトされた)硬貨を収納する。リジェクト部7は、
図1に示すようにリジェクト扉33を有し、リジェクト扉33を開くと、リジェクトされた硬貨を保管するリジェクト収納部(不図示)が開放される構造になっている。また、リジェクト扉33の上部には錠34が設けられ、錠34を施錠することで、リジェクト扉33が開かないように設定することができる。
【0031】
操作表示部9は、レジ担当の係員が入力に用いるキーなどの操作部91と、係員が入力した内容や装置の情報などを表示する表示部92を有する。
【0032】
回収カセット部19は、紙幣釣銭機2の内部に収納された紙幣を回収し、収納するための紙幣カセットである。紙幣入出金口20は、顧客から受け取った紙幣を入金し、顧客へ釣銭として支払う紙幣を払い出す入出金口である。
【0033】
図2は、硬貨釣銭機3の機構を示す概略側面図である。
図2に示すように、硬貨釣銭機3は、顧客から受け取った入金硬貨を入金する入金口5と、入金口5に設けられたセンサ31と、釣銭硬貨を出金するための出金口6と、入金した硬貨を金種毎に収納する1円ホッパー21、50円ホッパー22、5円ホッパー23、100円ホッパー24、10円ホッパー25、500円ホッパー26と、入金した硬貨の金種、真偽などを判別する硬貨鑑別装置100と、硬貨鑑別装置100を配置した入金搬送路28と、リジェクト収納部29、出金搬送路30と、を有する。また、入金搬送路28と出金搬送路30はモータ32により駆動される。
【0034】
以上、本発明の一実施形態に係る釣銭機1(媒体処理機の一例)について説明した。続いて、釣銭機1が有する硬貨鑑別装置100(媒体鑑別装置の一例)について説明する。
【0035】
<<2.硬貨鑑別装置の構成>>
図3は、釣銭機1が有する硬貨鑑別装置100の外観を示す斜視図である。
図4は、センサ固定部130を外した状態における硬貨鑑別装置100の上面図である。
図5は、
図3のB-B線に沿った硬貨鑑別装置100の断面図である。
図3に示すように、硬貨鑑別装置100は、搬送路102と、搬送部材の一例である搬送ベルト104と、搬送基準部材112とを備える。
【0036】
搬送路102は、硬貨Cが搬送方向に搬送される搬送面103を有する。すなわち、硬貨Cは、搬送面103に沿って搬送方向に搬送される。
【0037】
搬送ベルト104は、搬送路102の上方に配置されており、搬送路102上の硬貨Cを搬送方向に搬送する。なお、本実施形態では、後に説明するように、搬送ベルト104を硬貨Cの中央付近の上方を通すことが可能となる。したがって、搬送ベルト104がピンベルトによって構成され得る。ピンベルトには、搬送路102側の面にピン105(突起)が形成されており、硬貨Cにピン105が接触した状態において搬送ベルト104が搬送方向に回転することによって、ピン105によって硬貨C(搬送ベルト104が硬貨Cの中央付近の上方を通る場合には、硬貨Cの外径の中央付近に)搬送方向への力(搬送力)が与えられる。これによって、硬貨Cの搬送性能がより高まる。
【0038】
しかし、搬送ベルト104にはピン105が形成されていなくてもよい。すなわち、搬送ベルト104は、搬送面103との間に硬貨Cを挟んだ状態において搬送方向に回転することによって、摩擦力を搬送力として硬貨Cに与えてもよい。
【0039】
搬送基準部材112は、搬送ベルト104に沿って搬送路102の一端側に形成されており、搬送路102の幅方向(
図3~
図5に示したX方向)における硬貨Cの搬送位置を規制するガイド部である。搬送基準部材112は、搬送ベルト104により搬送される硬貨Cをガイドする搬送基準面113(ガイド面)を有する。すなわち、硬貨Cは、搬送ベルト104によって与えられる搬送力によって搬送基準面113に当接されながら、搬送基準面113に沿って搬送方向に搬送される。
【0040】
さらに、本実施形態において、硬貨鑑別装置100は、磁気センサを備える。磁気センサは、搬送路102の上方に配置される第一のコイルと搬送路102の下方に配置される第二のコイルとを含んで構成される。そして、磁気センサは、第一のコイルと第二のコイルとが一対となって硬貨Cの特徴を検出する。第一のコイルは、搬送路102の上方において搬送ベルト104と干渉しない位置に配置される。また、第二のコイルは、搬送路102の下方において第一のコイルの真下の位置よりも搬送ベルト104側の位置に配置される。
【0041】
かかる構成によれば、後に詳細に説明するように、搬送ベルト104と磁気センサとの干渉を避けることと、搬送ベルト104による硬貨Cの搬送性能の低下を抑制することとを両立させることが可能となる。
【0042】
以下では、かかる磁気センサとして、透過型の磁気センサを例に挙げて説明する。すなわち、第一のコイルおよび第二のコイルのうち、いずれか一方が磁束を発生させる励磁コイル(以下、「発信側センサ」とも言う。)であり、他方が磁束を検知する検知コイル(以下、「受信側センサ」とも言う。)である場合について主に説明する。透過型の磁気センサが用いられることによって、硬貨浮きによる影響を抑制しつつ、硬貨Cの特徴を検出することが可能である。なお、磁気センサにおける第一のコイルと第二のコイルの制御、(一方のコイルによる発信と他方のコイルによる受信)および硬貨Cの特徴検出は図示しない制御部により制御される。
【0043】
また、以下では、かかる受信側センサと発信側センサとの組み合わせの第1の例として、受信側外径センサ141と発信側外径センサ142との組み合わせを挙げる。受信側外径センサ141と発信側外径センサ142との組み合わせによれば、硬貨Cの特徴として硬貨Cの外径(例えば、直径または半径)が検出され得る。また、かかる受信側センサと発信側センサとの組み合わせの第2の例として、受信側材質センサ161と発信側材質センサ162との組み合わせを挙げる。受信側材質センサ161と発信側材質センサ162との組み合わせによれば、硬貨Cの特徴として硬貨Cの材質が検出され得る。
【0044】
しかし、受信側センサと発信側センサとの組み合わせによって検出される硬貨Cの特徴は、かかる例に限定されない。例えば、受信側センサと発信側センサとの組み合わせによって硬貨Cの厚さが検出されてもよい。あるいは、受信側センサと発信側センサとの組み合わせによって硬貨Cの表面の凹凸が検出されてもよい。あるいは、受信側センサと発信側センサとの組み合わせによって硬貨Cの孔の有無が検出されてもよい。
【0045】
なお、以下では、受信側センサが搬送路102の上方に配置され、発信側センサが搬送路102の下方に配置される場合を主に想定する。しかし、受信側センサの位置と発信側センサの位置とは、逆であってもよい。すなわち、受信側センサが搬送路102の下方に配置され、受信側センサが搬送路102の上方に配置されてもよい。
【0046】
例えば、
図4および
図5に示した例では、受信側外径センサ141が搬送路102の上方に配置され、発信側外径センサ142が搬送路102の下方に配置されている。しかし、受信側外径センサ141が搬送路102の下方に配置され、発信側外径センサ142が搬送路102の上方に配置されてもよい。かかる場合には、搬送路102の上方に配置される発信側外径センサ142が、搬送ベルト104と干渉しない位置に配置され、搬送路102の下方に配置される受信側外径センサ141が発信側外径センサ142の真下の位置よりも搬送ベルト104側の位置に配置される。
【0047】
同様に、
図4および
図5に示した例では、受信側材質センサ161が搬送路102の上方に配置され、発信側材質センサ162が搬送路102の下方に配置されている。しかし、受信側材質センサ161が搬送路102の下方に配置され、発信側材質センサ162が搬送路102の上方に配置されてもよい。かかる場合には、搬送路102の上方に配置される発信側材質センサ162が、搬送ベルト104と干渉しない位置に配置され、搬送路102の下方に配置される受信側材質センサ161が発信側材質センサ162の真下の位置よりも搬送ベルト104側の位置に配置される。
【0048】
硬貨鑑別装置100は、これらの磁気センサ(すなわち、受信側外径センサ141と発信側外径センサ142との組み合わせ、および、受信側材質センサ161と発信側材質センサ162との組み合わせ)を備える他、幅寄せセンサ(ずれ量検出センサ)を備える。幅寄せセンサは、受信側幅寄せセンサ181と、発信側幅寄せセンサ182とを備える。受信側幅寄せセンサ181と発信側幅寄せセンサ182との組み合わせも透過型の磁気センサを構成し得る。しかし、幅寄せセンサの構成は透過型の磁気センサに限定されない。
【0049】
受信側幅寄せセンサ181と発信側幅寄せセンサ182との組み合わせは、搬送基準面113を基準とした硬貨Cのずれ量を検出する。搬送基準面113を基準とした硬貨Cのずれ量は、受信側外径センサ141と発信側外径センサ142との組み合わせによって検出される硬貨Cの外径の補正に用いられ得る。
【0050】
なお、搬送基準面113を基準とした硬貨Cのずれ量を検出するためには、受信側幅寄せセンサ181と発信側幅寄せセンサ182との組み合わせは、搬送基準面113の付近の磁界を検知可能な位置(すなわち、搬送ベルト104から大きく離れた位置)に配置されればよい。そのため、本発明の実施形態においては、
図4および
図5に示すように、受信側幅寄せセンサ181と発信側幅寄せセンサ182とは、上下に対向する位置に配置される場合が想定されている。
【0051】
図5に示すように、受信側外径センサ141と発信側外径センサ142との組み合わせ、受信側材質センサ161と発信側材質センサ162との組み合わせ、および、受信側幅寄せセンサ181と発信側幅寄せセンサ182との組み合わせは、センサ固定部130に内蔵される。搬送方向の上流側から見た場合のセンサ固定部130の形状は、
図5に示すように逆コの字形状であってよい。すなわち、センサ固定部130は、搬送路102を上下から挟むように設けられている。
【0052】
また、
図4に示された例では、受信側材質センサ161と発信側材質センサ162との組み合わせが、受信側外径センサ141と発信側外径センサ142との組み合わせ、および、受信側幅寄せセンサ181と発信側幅寄せセンサ182との組み合わせよりも、搬送方向の上流側に配置されている。しかし、受信側材質センサ161と発信側材質センサ162との組み合わせが、受信側外径センサ141と発信側外径センサ142との組み合わせ、および、受信側幅寄せセンサ181と発信側幅寄せセンサ182との組み合わせよりも、搬送方向の下流側に配置されていてもよい。
【0053】
(第1の例:外径センサ)
まず、受信側外径センサ141と発信側外径センサ142との組み合わせについて詳細に説明する。
図6は、本実施形態に係る受信側外径センサ141および発信側外径センサ142の配置例を示す図である。
図6を参照すると、本実施形態に係る受信側外径センサ141と発信側外径センサ142の上面図(
図6の上図)と、この上面図のA1-A1線に沿った断面図(
図6の下図)とが示されている。受信側外径センサ141は、ボビン141aとコア141bとが接着されて構成されている。例えば、ボビン141aには、銅線が巻かれている。一方、コア141bは、フェライトなどといった透磁率の高い材料で形成される。発信側外径センサ142によって発生され、受信側外径センサ141によって検知される磁束M1も示されている。同様に、発信側外径センサ142は、ボビン142aとコア142bとが接着されて構成されている。
【0054】
なお、外径センサによって硬貨Cの外径が高精度に検出されるためには、搬送路102を搬送される硬貨Cの外径に応じて磁束M1に対する硬貨Cの掛かり度合いが変化するのが望ましい。硬貨Cが搬送基準面113に当接されながら搬送されることを考慮すると、硬貨Cのエッジ部分のうち、搬送基準面113から遠いほうのエッジ部分が磁束M1に掛かるように外径センサが配置されるのが望ましい。そのため、
図6に示したように、外径センサ(すなわち、受信側外径センサ141および発信側外径センサ142)は、硬貨Cの中央付近(搬送ベルト104が通る位置)よりも搬送基準面113とは反対側(
図6に示した左方向)に配置されるのがよい。
【0055】
ここで、本実施形態に係る受信側外径センサ141および発信側外径センサ142の配置例との比較のために、受信側外径センサ141および発信側外径センサ142の一般的な配置例について説明する。
【0056】
図7は、受信側外径センサ141および発信側外径センサ142の一般的な配置例を示す図である。
図7を参照すると、一般的な配置例における受信側外径センサ141と発信側外径センサ142の上面図(
図7の上図)と、この上面図のA2-A2線に沿った断面図(
図7の下図)とが示されている。発信側外径センサ142によって発生され、受信側外径センサ141によって検知される磁束M2も示されている。一般的な配置例においては、硬貨Cのエッジ部分が磁束M2に掛かっている。領域G2は、磁束M2が硬貨Cを貫通する部分である。
【0057】
しかし、受信側外径センサ141と発信側外径センサ142とが上下に対向する位置に配置されているため、搬送路102の上方に配置される受信側外径センサ141が硬貨Cの中央付近に寄ってしまっている。搬送ベルト104は受信側外径センサ141と同じように搬送路102の上方に配置され、かつ、受信側外径センサ141と干渉しない位置に配置される必要があるが、搬送路102の上方に配置される受信側外径センサ141が硬貨Cの中央付近に寄ってしまっているため、搬送ベルト104を硬貨Cの中央付近の上方を通すのが難しくなってしまっている。
【0058】
図8は、上下に対向する位置関係を維持したまま搬送基準面113とは反対側に移動した受信側外径センサ141および発信側外径センサ142の例を示す図である。
図8を参照すると、搬送基準面113とは反対側(
図8に示した左方向)に移動した受信側外径センサ141と発信側外径センサ142の上面図(
図8の上図)と、この上面図のA3-A3線に沿った断面図(
図8の下図)とが示されている。発信側外径センサ142によって発生され、受信側外径センサ141によって検知される磁束M3も示されている。
【0059】
図8に示した例では、受信側外径センサ141と搬送ベルト104(硬貨Cの中央付近)との干渉を避けることが可能である。しかし、受信側外径センサ141と発信側外径センサ142とが共に搬送基準面113とは反対側に移動してしまっているため、硬貨Cのエッジ部分が磁束M3に掛からなくなってしまっている。そのため、
図8に示した例では、硬貨Cの外径が検出され得ない。
【0060】
図6に戻って、本実施形態に係る外径センサについての説明をさらに続ける。
図6に示したように、本実施形態においても、
図8に示した例と同様に、受信側外径センサ141は、搬送ベルト104(硬貨Cの中央付近)と干渉しない位置に配置される。一方、発信側外径センサ142は、受信側外径センサ141の真下よりも搬送ベルト104(硬貨Cの中央付近)側の位置(すなわち、受信側外径センサ141の真下よりも搬送基準面113側)に配置される。
【0061】
これによって、硬貨Cのエッジ部分が磁束M1に掛かるため、硬貨Cの外径が検出可能になる。領域G1は、磁束M1が硬貨Cを貫通する部分である。すなわち、
図8に示した例では、受信側外径センサ141と搬送ベルト104(硬貨Cの中央付近)との干渉を避けることと、搬送ベルト104による硬貨Cの搬送性能の低下を抑制することとが両立され得る。なお硬貨Cの中央付近に搬送ベルト104を通すことが可能になるため、搬送ベルト104による硬貨Cの搬送性能の低下が抑制される。
【0062】
ここで、本実施形態に係る受信側外径センサ141によっても(
図6)、一般的な配置例(
図7)における受信側外径センサ141によって検出される磁束と同程度の磁束が検知されるように、受信側外径センサ141と発信側外径センサ142とのずれ量bが決定されるとよい。一般的な配置例における磁束M2(
図7)への硬貨Cの掛かり度合い(長さ)をx1とし、本実施形態における磁束M1(
図6)への硬貨Cの掛かり度合い(長さ)をx2とすると、磁束が硬貨Cを貫通する部分(領域G2と領域G1)の面積比は、x1
2:x2
2である。
【0063】
長さx1と長さx2とは、以下のように計算され得る。すなわち、一般的な配置例(
図7)において、搬送基準面113から受信側外径センサ141のコア141bの搬送基準面113側の端(
図7では右端)までの距離をL1とし、硬貨Cの直径をrとすると、x1=r-L1である。
【0064】
一方、本実施形態(
図6)において、搬送基準面113から受信側外径センサ141の搬送基準面113側の端(
図6では右端)までの距離をL2とし、コア142bからボビン142aまでの距離をaとし、搬送路102から発信側外径センサ142までの距離(高さ)をh2とし(搬送路102から受信側外径センサ141までの距離(高さ)はh1)、搬送路102と発信側外径センサ142から受信側外径センサ141への方向との角度をθとすると、x2=b-a-h2/tanθ+r-L2である。
【0065】
また、磁束は距離の二乗に反比例するように低下するため、b
2=x1
2/x2
2となるようにbが決められてよい。しかし、受信側外径センサ141と発信側外径センサ142とのずれ量bを調整する代わりに、コイルに電流を流す信号処理基板の増幅率を変更することによっても、本実施形態に係る受信側外径センサ141によって(
図6)、一般的な配置例(
図7)における受信側外径センサ141によって検出される磁束と同程度の磁束が検知可能となる。
【0066】
以上、受信側外径センサ141と発信側外径センサ142との組み合わせについて詳細に説明した。
【0067】
(第2の例:材質センサ)
続いて、受信側材質センサ161と発信側材質センサ162との組み合わせについて詳細に説明する。
図9は、本実施形態に係る受信側材質センサ161および発信側材質センサ162の配置例を示す図である。
図9を参照すると、本実施形態に係る受信側材質センサ161と発信側材質センサ162の上面図(
図9の上図)と、この上面図のA4-A4線に沿った断面図(
図9の下図)とが示されている。受信側材質センサ161は、ボビン161aとコア161bとが接着されて構成されている。例えば、ボビン161aには、銅線が巻かれている。一方、コア161bは、フェライトなどといった透磁率の高い材料で形成される。発信側材質センサ162によって発生され、受信側材質センサ161によって検知される磁束M4も示されている。同様に、発信側材質センサ162は、ボビン162aとコア162bとが接着されて構成されている。
【0068】
なお、材質センサによって硬貨Cの材質が検出されるためには、搬送路102を搬送される硬貨Cの中央付近が磁束M4に掛かるのが望ましい。硬貨Cの中央よりも搬送基準面113とは反対側にやや寄った位置に対して搬送ベルト104が搬送力を与えることによって、硬貨Cが搬送基準面113に当接されながら搬送されることを考慮すると、硬貨Cの中央は、搬送ベルト104よりもやや搬送基準面113側に位置することになる。そのため、硬貨Cの中央付近が磁束M4に入るようにするには、材質センサ(すなわち、受信側材質センサ161および発信側材質センサ162)は、硬貨Cの中央付近(搬送ベルト104が通る位置)よりも搬送基準面113側(
図9に示した右方向)に配置されるのがよい。
【0069】
ここで、本実施形態に係る受信側材質センサ161および発信側材質センサ162の配置例との比較のために、受信側材質センサ161および発信側材質センサ162の一般的な配置例について説明する。
【0070】
図10は、受信側材質センサ161および発信側材質センサ162の一般的な配置例を示す図である。
図10を参照すると、一般的な配置例における受信側材質センサ161と発信側材質センサ162の上面図(
図10の上図)と、この上面図のA5-A5線に沿った断面図(
図10の下図)とが示されている。発信側材質センサ162によって発生され、受信側材質センサ161によって検知される磁束M5も示されている。一般的な配置例においては、硬貨Cの中央部よりやや外側が磁束M5に掛かっている。領域G4は、磁束M5が硬貨Cを貫通する部分である。
図10では搬送基準面113から受信側材質センサ161の中央までの距離がL3として示されている。
【0071】
しかし、受信側材質センサ161と発信側材質センサ162とが上下に対向する位置に配置されているため、搬送路102の上方に配置される受信側材質センサ161が硬貨Cの中央付近に寄ってしまっている。搬送ベルト104は受信側材質センサ161と同じように搬送路102の上方に配置され、かつ、受信側材質センサ161と干渉しない位置に配置される必要があるが、搬送路102の上方に配置される受信側材質センサ161が硬貨Cの中央付近に寄ってしまっているため、搬送ベルト104を硬貨Cの中央付近の上方を通すのが難しくなってしまっている。
【0072】
図9に戻って、本実施形態に係る材質センサについての説明をさらに続ける。
図9に示したように、本実施形態においては、受信側材質センサ161は、搬送ベルト104(硬貨Cの中央付近)と干渉しない位置に配置される。
図9では搬送基準面113から受信側材質センサ161のコア161bの搬送基準面113側とは反対側の端(
図9では左端)までの距離がL4として示されている。一方、発信側材質センサ162は、受信側材質センサ161の真下よりも搬送ベルト104(硬貨Cの中央付近)側の位置(すなわち、受信側材質センサ161の真下よりも搬送基準面113とは反対側)に配置される。
図9では搬送基準面113から発信側材質センサ162の中央までの距離がL5として示されている。
【0073】
これによって、搬送路102を搬送される硬貨Cの中央付近が磁束M4に掛かるため、硬貨Cの材質が高精度に検出可能になる。すなわち、
図9に示した例では、受信側材質センサ161と搬送ベルト104(硬貨Cの中央付近)との干渉を避けることと、搬送ベルト104による硬貨Cの搬送性能の低下を抑制することとが両立され得る。なお硬貨Cの中央付近に搬送ベルト104を通すことが可能になるため、搬送ベルト104による硬貨Cの搬送性能の低下が抑制される。
【0074】
搬送路102を搬送される硬貨の外径に関わらず、磁束M4に対する硬貨の掛かり度合いが同じであれば、材質センサによって硬貨の材質が高精度に検出され得る。一例として、
図9に示したように、発信側材質センサ162のコア162bの上方に位置する領域が、搬送路102を搬送される硬貨のうち外径が最小の硬貨(
図9に示した硬貨C)の内側に入っていれば、搬送路102を搬送される硬貨の外径に関わらず、磁束M4に対する硬貨の掛かり度合いが同じになる。
【0075】
このようにして、受信側材質センサ161と発信側材質センサ162とのずれ量が決められてよい。また、外径センサが用いられる場合と同様に、磁束は距離の二乗に反比例するように低下することを考慮して、受信側材質センサ161と発信側材質センサ162とのずれ量が決められてよい。しかし、受信側材質センサ161と発信側材質センサ162とのずれ量を調整する代わりに、コイルに電流を流す信号処理基板の増幅率を変更することによっても、本実施形態に係る受信側材質センサ161によって(
図9)、一般的な配置例(
図10)における受信側材質センサ161によって検出される磁束と同程度の磁束が検知可能となる。
【0076】
以上、受信側材質センサ161と発信側材質センサ162との組み合わせについて詳細に説明した。
【0077】
<<3.硬貨鑑別装置の動作>>
続いて、本実施形態に係る硬貨鑑別装置100の動作について説明する。釣銭機1の動作は、硬貨鑑別に係る動作以外において一般的な釣銭機の動作と同様であるため省略し、上述した構成の硬貨鑑別装置100の硬貨鑑別に係る動作について、
図6および
図9を参照しながら説明する。
【0078】
まず、釣銭機1の電源がONにされると、硬貨鑑別装置100において、図示しない信号処理基板から発信側材質センサ162(コイル)に電流が流され、発信側材質センサ162によって磁束が発生される。発信側材質センサ162によって発生された磁束によって受信側材質センサ161(コイル)に誘導起電力が発生し、受信側材質センサ161に電流が流れる。このときの受信側材質センサ161の電流変化は、電圧変化に変換され、変換によって得られる電圧に対して、増幅、ノイズ除去および平滑化といった処理が行われる。
【0079】
このようにして得られる処理後の電圧が、硬貨が搬送路102を搬送されていない状態(無媒体状態)における材質センサ(受信側材質センサ161および発信側材質センサ162)の出力電圧として検知される。外径センサ(受信側外径センサ141および発信側外径センサ142)および幅寄せセンサ(受信側幅寄せセンサ181および発信側幅寄せセンサ182)それぞれの無媒体状態における出力電圧も、同様の手法によって検知される。
【0080】
釣銭機1において所定の取引が開始されると、搬送路102を搬送された硬貨Cは、搬送ベルト104により搬送方向に搬送され、材質センサ(受信側材質センサ161および発信側材質センサ162)の磁束M4(
図9)に掛かると、発信側材質センサ162が発生させている磁束の影響を受け、硬貨Cの表面に渦電流が発生する。その渦電流が、発信側材質センサ162が発生させている磁束の方向と逆向きに磁束を発生させる。
【0081】
そのため、受信側材質センサ161と発信側材質センサ162との間の区間の磁界が無媒体状態から変化する。その磁界の変化が、受信側材質センサ161によって無媒体状態と有媒体状態との出力電圧の変化として捉えられる。無媒体状態と有媒体状態との出力電圧の変化は、硬貨Cの材質によって異なるため、受信側材質センサ161によって捉えられた出力電圧の変化に基づいて、硬貨Cの材質が検出され得る。硬貨の材質は、硬貨Cの鑑別に用いられ得る。
【0082】
続いて、硬貨Cが搬送ベルト104により搬送方向にさらに搬送され、外径センサ(受信側外径センサ141および発信側外径センサ142)の磁束M1(
図6)に掛かると、その磁界の変化が、受信側外径センサ141によって、(受信側材質センサ161による出力電圧の変化の捉え方と同様にして)無媒体状態と有媒体状態との出力電圧の変化として捉えられる。幅寄せセンサ(受信側幅寄せセンサ181および発信側幅寄せセンサ182)の磁束にも硬貨Cが掛かり、磁界の変化が受信側幅寄せセンサ181によって、(受信側材質センサ161による出力電圧の変化の捉え方と同様にして)無媒体状態と有媒体状態との出力電圧の変化として捉えられる。
【0083】
磁束M1への硬貨Cの掛かり度合いは、硬貨の外径(すなわち、硬貨の金種)によって異なるため、受信側外径センサ141によって捉えられた出力電圧の変化に基づいて硬貨Cの外径が検出され得る。このとき、受信側外径センサ141によって捉えられた出力電圧の変化は、搬送基準面113から硬貨Cがどの程度離れているかにも依存し得る。そのため、幅寄せセンサ(受信側幅寄せセンサ181および発信側幅寄せセンサ182)によって捉えられた出力電圧の変化に応じた補正値が、図示しない補正部によって硬貨の外径に掛けられることによって、硬貨Cの外径の検出精度がさらに向上する。硬貨の外径は、硬貨の鑑別に用いられ得る。
【0084】
以上、本実施形態に係る硬貨鑑別装置100の動作について説明した。
【0085】
<<4.まとめ>>
本発明の実施形態によれば、搬送面103に沿って硬貨が搬送される搬送路102と、搬送路102の上方に配置され、搬送路102上の硬貨を搬送する搬送ベルト104と、搬送路102の上方に配置される第一のコイルと搬送路102の下方に配置される第二のコイルとを含んで構成されており、第一のコイルと第二のコイルとが一対となって硬貨の特徴を検出する磁気センサと、を備える、硬貨鑑別装置100が提供される。
【0086】
第一のコイルは、搬送路102の上方において搬送ベルト104と干渉しない位置に配置され、第二のコイルは、搬送路102の下方において第一のコイルの真下の位置よりも搬送ベルト104側の位置に配置される。かかる構成によれば、搬送ベルト104と磁気センサとの干渉を避けることと、搬送ベルト104による硬貨の搬送性能の低下を抑制することとを両立させることが可能となる。
【0087】
<5.変形例>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0088】
例えば、上記では、硬貨鑑別装置100が備える(受信側と発信側とで搬送路102の幅方向の位置がずれた)磁気センサとして、外形センサ(受信側外径センサ141と発信側外径センサ142との組み合わせ)、および、材質センサ(受信側材質センサ161と発信側材質センサ162との組み合わせ)を主に説明した。しかし、上記したように、硬貨鑑別装置100が備える磁気センサは、外径センサおよび材質センサに限定されない。硬貨鑑別装置100が備える磁気センサは、硬貨の厚さを検出するセンサ、硬貨表面の凹凸を検出するセンサ、硬貨の孔を検出するセンサであってもよい。さらに、硬貨鑑別装置100は、外径センサと材質センサのうち、いずれか一方を備え、他方を備えなくてもよい。
【0089】
さらに、硬貨鑑別装置100は、外径センサと材質センサとの双方を備えている場合であっても、外径センサと材質センサのうち、いずれか一方は、受信側と発信側とで搬送路102の幅方向の位置がずれており、他方は受信側と発信側とで搬送路102の幅方向の位置がずれていなくてもよい。
【0090】
また、上記では、硬貨鑑別装置100が、外径センサとともに、外径センサによって検出された硬貨の外径を補正するための幅寄せセンサ(受信側幅寄せセンサ181および発信側幅寄せセンサ182)を備える場合を主に説明した。しかし、硬貨鑑別装置100が、外径センサを備える場合であっても、幅寄せセンサを備えなくてもよい。その場合には、幅寄せセンサの代わりに、搬送路102の幅方向へのずれ(横ずれ)を防ぐための何らかの機構を有しているのが望ましい。
【0091】
また、搬送路102の上方に配置されるコイル(受信側または発信側)は、搬送ベルト104を基準として搬送基準面113側に配置されてもよいし、搬送ベルト104を基準として搬送基準面113と反対側に配置されていてもよい。ただし、上記したように、外径センサが配置される場合、搬送路102の上方に配置されるコイルは、硬貨の中央付近(搬送ベルト104が通る位置)よりも搬送基準面113とは反対側に配置されるのがよい。一方、材質センサが配置される場合、搬送路102の上方に配置されるコイルは、硬貨の中央付近(搬送ベルト104が通る位置)よりも搬送基準面113側に配置されるのがよい。
【0092】
また、上記では媒体の一例として硬貨を挙げ、媒体処理機の一例として釣銭機1、および媒体鑑別装置の一例として硬貨鑑別装置100を説明した。しかし媒体は硬貨の他、貨幣として用いられない円盤状の媒体(例えばメダル)であってもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 釣銭機(媒体処理機)
5 入金口
100 硬貨鑑別装置
102 搬送路
103 搬送面
104 搬送ベルト
105 ピン
112 搬送基準部材
113 搬送基準面
141 受信側外径センサ
142 発信側外径センサ
161 受信側材質センサ
162 発信側材質センサ
181 受信側幅寄せセンサ
182 発信側幅寄せセンサ