(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】流通管
(51)【国際特許分類】
F16L 59/147 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
F16L59/147
(21)【出願番号】P 2020129084
(22)【出願日】2020-07-30
【審査請求日】2023-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】流郷 謙一
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 利幸
(72)【発明者】
【氏名】中井 基生
(72)【発明者】
【氏名】安藤 善昭
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-027168(JP,A)
【文献】国際公開第2010/104126(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/061311(WO,A1)
【文献】実開昭57-073494(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流通管であって、
開口部が形成された側壁を有する管本体と、
前記管本体の内周側に配置され、流体が流通する流路を形成する断熱体と、を備え、
断熱体は、前記側壁と向かい合う外周面を有し、
前記外周面は、前記断熱体と前記管本体との間に生じた水滴を前記開口部に導く流通路を形成する流路構造を有
し、
前記開口部は、前記管本体の長手方向の一端から他端に亘って形成されたスリットである、流通管。
【請求項2】
流通管であって、
流体が流通する流路を形成する管本体と、
前記管本体の外周側において前記管本体を周方向に取り巻くように配置された断熱体と、を備え、
前記断熱体は、開口部が形成された側壁であって、前記管本体と向かい合う内周面を形成する側壁を有し、
前記内周面は、前記断熱体と前記管本体との間に生じた水滴を前記開口部に導く流通路を形成する流路構造を有
し
前記流路構造は、前記断熱体の周方向に沿って形成され、前記流通管の長手方向に沿って一定の間隔をあけて複数設けられた第1溝と、前記流通管の長手方向に沿って延びる第2溝とを含む、流通管。
【請求項3】
請求項
1に記載の流通管であって、
前記流路構造は、前記断熱体の周方向に沿って形成された溝を含む、流通管。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の流通管であって、
前記流路構造は、前記管本体と接触する凸部を含む、流通管。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の流通管であって、
前記断熱体は、エアロゲルを含む、流通管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流通管の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配管(管本体)の外周に断熱体を配置する技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
管本体の外周に断熱体を配置した場合でも、管本体と断熱体との間に結露によって水滴が生じて滞留する場合がある。この場合、水滴によって流通管が汚れたり劣化したりする不具合が生じ得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、流通管が提供される。この流通管は、開口部が形成された側壁を有する管本体と、前記管本体の内周側に配置され、流体が流通する流路を形成する断熱体と、を備え、断熱体は、前記側壁と向かい合う外周面を有し、前記外周面は、前記断熱体と前記管本体との間に生じた水滴を前記開口部に導く流通路を形成する流路構造を有する。この形態によれば、断熱体の外周面は、水滴を開口部に導く流通路を形成する流路構造を有する。これにより、管本体と断熱体との間に水滴が生じた場合でも、開口部を介して水滴を外部に排出できる。よって、水滴が管本体と断熱体との間に滞留することを抑制できる。また、断熱体が管本体の内周側に配置されることで、管本体によって断熱体を保護できる。
(2)本開示の他の形態によれば、流通管が提供される。この流通管は、流体が流通する流路を形成する管本体と、前記管本体の外周側において前記管本体を周方向に取り巻くように配置された断熱体と、を備え、前記断熱体は、開口部が形成された側壁であって、前記管本体と向かい合う内周面を形成する側壁を有し、前記内周面は、前記断熱体と前記管本体との間に生じた水滴を前記開口部に導く流通路を形成する流路構造を有する。この形態によれば、断熱体の内周面は、水滴を開口部に導く流通路を形成する流路構造を有する。これにより、管本体と断熱体との間に水滴が生じた場合でも、開口部を介して水滴を外部に排出できる。よって、水滴が管本体と断熱体との間に滞留することを抑制できる。
(3)上記形態において、前記流路構造は、前記断熱体の周方向に沿って形成された溝を含んでいてもよい。この形態によれば、溝によって断熱体と管本体との間に隙間を生じさせることで流通路を容易に形成できる。
(4)上記形態において、前記流路構造は、前記管本体と接触する凸部を含んでもよい。この形態によれば、凸部によって断熱体の凸部以外の部分と管本体との間に隙間を生じさせることで流通路を容易に形成できる。
(5)上記形態において、前記断熱体は、エアロゲルを含んでいてもよい。この形態によれば、エアロゲルによって高い断熱性能を流通管に有させることができる。
本開示は、種々の形態で実現することが可能であり、上記の流通管の他に、例えば流通管の製造方法、上記流通管を有する研削盤などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の第1実施形態ないし第3実施形態の流通管を有する研削盤を示す図。
【
図2】第1実施形態の流通管の横断面を模式的に示す図。
【
図4】第2実施形態の流通管の横断面を模式的に示す図。
【
図6】第3実施形態の流通管の横断面を模式的に示す図。
【
図8】他の実施形態3の一例を示す断熱体の模式図。
【
図9】他の実施形態3の一例を示す流通管の断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本開示の第1実施形態ないし第3実施形態の流通管16を有する研削盤100を示す図である。
図1には、代表して第1実施形態の流通管16を図示している。
図1に示すZ方向は重力方向に沿った方向であり、-Z方向が重力方向(下方向)であり、+Z方向が反重力方向(上方向)である。
図2以降の図においても、必要に応じてZ方向、-Z方向、+Z方向を図示する。
【0009】
研削盤100は、ベッド1と、スライドベース2と、砥石台3と、砥石車4と、電動機7と、テーブル6とを備える。ベッド1は、研削盤100のベースとなる部材であり、鋳鉄などの金属によって形成されている。ベッド1の上面には、クーラント受け13が形成されている。クーラント受け13は、研削盤100によって研削される工作物の研削箇所に供給され飛散したクーラントを受ける。クーラント受け13は断面形状が凹形状である。クーラント受け13は、
図1に示す左右方向の両側に設けられている。右側に位置するクーラント受け13を第1クーラント受け13aとも呼び、左側に位置するクーラント受け13を第2クーラント受け13bとも呼ぶ。
【0010】
スライドベース2は、ベッド1上に配置され、砥石台3を支持する。スライドベース2は、砥石車4の軸方向に沿って水平に直線往復移動するように構成されている。砥石車4と電動機7とは、砥石台3に配置されている。砥石車4は、電動機7によって砥石軸20とともに砥石軸20の軸線回りに回転する。砥石台3は、スライドベース2の移動方向と直交する水平方向に直線往復移動するように構成されている。サーボモータ5は、図示しないボールねじを介して砥石台3を移動させるための動力を発生する。なお、ベッド1にはスライドベース2を移動させるための動力を発生させる図示しないサーボモータが配置されている。テーブル6は、ベッド1上に固定され、テーブル6上の図示しない主軸台と心押台が載置されている。主軸台と心押台によって研削対象である工作物を着脱可能に保持する。
【0011】
研削盤100は、さらに、第1流通管17と、第2流通管18と、クーラント供給装置28とを備える。第1流通管17は、第1クーラント受け13aと連通し、第1クーラント受け13aのクーラントを流通させる。第1流通管17は水平方向に延びる。第1流通管17は、図示しないブラケットなどの固定部材によってベッド1に固定されている。なお、第1流通管17は、流体であるクーラントをクーラント供給装置28に円滑に流通させるために、第1クーラント受け13側(上流側)が下流側よりも上側になるように傾斜していてもよい。
【0012】
第2流通管18は、第2クーラント受け13bと連通し、第2クーラント受け13bのクーラントを流通させる。第2流通管18は、水平方向に延びる部分18aを有する。この部分18aは、ベッド1内を沿うように紙面に垂直な方向に延びるように配置されている。第2流通管18の図示しない下流側端部は、クーラント供給装置28に接続されている。第2流通管18は、図示しないブラケットなどの固定部材によってベッド1に固定されている。なお、第2流通管18は、クーラントをクーラント供給装置28に円滑に流通させるために、第2クーラント受け13b側(上流側)が下流側よりも上側になるように傾斜していてもよい。第1流通管17と第2流通管18とを区別することなく用いる場合は、単に流通管16と呼ぶ。
【0013】
クーラント供給装置28は、第1流通管17と第2流通管18からのクーラントを回収して貯留するクーラントタンク28aと、クーラントタンク28a上に設置され、クーラントタンク28a内のクーラントから研削屑を分離する分離装置28bと、クーラントタンク28a上に設置され、クーラントタンク28a内のクーラントを、例えば図示しない可撓性を有する管によって工作物の研削箇所に供給する供給部28cとを有する。
【0014】
A.第1実施形態:
図2は、第1実施形態の流通管16の横断面を模式的に示す図である。
図3は、
図2の3-3断面を模式的に示す図である。
図3は、長手方向に延びる流通管16の一部を示している。なお、以下に説明する流通管16の構造を第2流通管18に用いる場合には、水平方向に延びる部分18aに用いる。流通管16は、二重構造であり、管本体80と、断熱体90とを備える。管本体80および断熱体90の長手方向は、流通管16の長手方向と同じ方向である。
図2に示すように、管本体30は、円筒形状であり、鋳鉄やステンレス鋼などの金属によって形成されている。なお、他の実施形態では、管本体80は合成樹脂によって形成されていてもよい。管本体80は、断熱体90の外周を取り巻くように配置されることで、断熱体90を保護する。管本体80は、開口部88が形成された側壁81を有する。側壁81は、管本体80の長手方向に延び、管本体80の外周面82および内周面83を形成する。開口部88は、管本体80の内側と外側とを連通させる。開口部88は、管本体80の長手方向に沿って形成されている。本実施形態では、開口部88は、管本体80の長手方向の一端から他端に亘って形成されたスリットである。流通管16が研削盤100に組付けられた状態では、開口部88は、管本体80の側壁81のうちで重力方向(-Z方向)側に位置する部分に位置する。管本体80の内周面83は、水滴50を開口部88に円滑に導くために、フッ素コーティングなどの撥水処理が施されていてもよい。
【0015】
断熱体90は、管本体80の内周側(径方向内側)に配置される。本実施形態では、断熱体90は、管本体80に圧入されることで、管本体80の内周側に配置される。断熱体90は、流体であるクーラントが流通する流路60を形成する。断熱体90は、円筒形状である。
【0016】
図3に示すように、断熱体90は、側壁81の内周面83と向かい合う外周面92と、流路60を区画する内周面93と、を形成する側壁91を有する。外周面92は、側壁81の内周面83に接触している。外周面92は、流通路99を形成する流路構造94を有する。流路構造94は、断熱体90の周方向に沿って外周面92に形成された溝96である。溝96は、流通管16の長手方向に沿って一定の間隔をあけて複数形成されている。流通路99は、溝96によって形成された、管本体80と断熱体90との隙間である。流通路99は、開口部88と連通し、断熱体90と管本体80との間に結露によって生じた水滴50を開口部88に導く。つまり、水滴50は重力によって流通路99を流通して開口部88に導かれる。これにより、水滴50が流通管16の外部に排出される。
【0017】
上記第1実施形態によれば、
図3に示すように断熱体90の外周面92は、水滴50を開口部88に導く流通路99を形成する流路構造94を有する。これにより、流通管16は、断熱体90によって高い断熱性能を有すると共に、管本体80と断熱体90との間に水滴50が生じた場合でも、開口部88を介して水滴50を外部に排出できるので、水滴50が管本体80と断熱体90との間に滞留することを抑制できる。よって、管本体80が水滴50によって劣化(例えば、腐食)したり汚れたりする不具合の発生を抑制できる。また、断熱体90が管本体80の内周側に配置されることで、管本体80によって断熱体90を保護できる。
【0018】
また上記第1実施形態によれば、流通管16は、断熱体90によって高い断熱性能を有することで、流路60を流れるクーラントの熱が研削盤100の本体(例えば、ベッド1)に伝達することを抑制できる。これにより、研削盤100が熱によって膨張したりする熱変形を抑制できるので、研削盤100による工作物の加工精度が低下することを抑制できる。また、断熱体90によって高い断熱性能を有するため、熱の伝達を抑制するための流通管16と研削盤100本体(例えば、ベッド1)との間に大きな空隙を設ける必要がないため、研削盤100を小型化できる。ここで、断熱体90を用いることなく鋳鉄などの金属によって流通管16を形成した場合、流通管16から研削盤100の本体への熱伝導を抑えるために、流通管16を固定するブラケットなどの固定部材についても必要最小限の大きさとする必要がある。これにより、研削盤100の振動によって、流通管16のうち固定部材によって支持された部分には応力が集中しやすくなり、流通管16が劣化(例えば、損傷)する可能性が生じる。また、固定部材自体も、振動によって劣化(例えば、損傷)する可能性が生じる。一方で、上記第1実施形態によれば、流通管16は断熱体40によって高い断熱性能を有するので、熱伝導を抑えるために固定部材を必要最小限の大きさにする必要がなく設計の自由度を向上できる。このため、流通管16と固定部材との耐久性を向上できる。
【0019】
B.第2実施形態:
図4は、第2実施形態の流通管19の横断面を模式的に示す図である。
図5は、
図4の5-5断面を模式的に示す図である。
図5は、長手方向に延びる流通管19の一部を示している。研削盤100は、上記第1実施形態の流通管16に代えて第2実施形態の流通管19を備えていてもよい。なお、第1実施形態と同様の構成については同一符号を付すと共に適宜説明を省略する。
【0020】
流通管19は、二重構造であり、管本体30と、断熱体40とを備える。管本体30および断熱体40の長手方向は、流通管19の長手方向と同じ方向である。
図4に示すように、管本体30は、流体であるクーラントが流通する流路61を形成する。この流路61は、管本体30の内周面33によって区画される。管本体30は、円筒形状であり、第1実施形態と同様に鋳鉄やステンレス鋼などの金属によって形成されている。なお、他の実施形態では、管本体30は合成樹脂によって形成されていてもよい。管本体30の外周面32は、フッ素コーティングなどの撥水処理が施されていてもよい。
【0021】
断熱体40は、管本体30の外周側(径方向外側)において管本体30を周方向に取り巻くように配置されている。断熱体40の材料は、上記第1実施形態と同様の材料を用いることができる。流通管19は、開口部48を形成したシート状の断熱体40を管本体30の外周面32を取り巻くように円筒形状に成形することで作成される。断熱体40は、開口部48が形成された側壁41を有する。側壁41は、断熱体40の長手方向に延び、断熱体40の外周面42および内周面43を形成する。
図5に示すように、開口部48は、一定の間隔をあけて複数形成された孔である。開口部48は、断熱体40の内側と外側とを連通させる。開口部48は、断熱体40の側壁41のうちで重力方向(-Z方向)側に位置する部分に位置する。開口部48が間隔をあけて配置されることで、断熱体40の開口部48のトータルの開口面積が大きくなることを抑制できる。これにより、断熱体40の断熱性能が低下することを抑制できる。
【0022】
内周面43は、管本体30の外周面32と向かい合う。内周面43は、管本体30の外周面32と接触している。内周面43は、流通路49を形成する流路構造44を有する。流通路49は、開口部48と連通し、断熱体40と管本体30との間に結露によって生じた水滴50を開口部48に導く。流路構造44は、内周面43に形成された、第1溝46aと第2溝46bである。第1溝46aは、断熱体40の周方向に沿って形成されている。第1溝46aは、周方向のうちで開口部48の近傍を除く第1領域Ra(
図4)に形成されている。第1溝46aは、水滴50を周方向に沿って重力によって下側に導く。第1溝46aは、流通管19の長手方向に沿って一定の間隔をあけて複数形成されている。第2溝46bは、開口部48の周囲の第2領域Rbに形成されている。第2溝46bは、第2領域Rbの全域に形成されており、複数の開口部48に接続されている。このように、流通路49は、第1溝46aと第2溝46bとによって形成された管本体30と断熱体40との隙間である。第1溝46aを流れた水滴50は、重力などによって第2溝46bを流れることで長手方向に移動して開口部48に至る。これにより、水滴50が流通管19の外部に排出される。なお、第2溝46bの底面は、開口部48に向かって傾斜するように形成してもよい。こうすることで、より円滑に水滴50を開口部48に導くことができる。
【0023】
上記第2実施形態によれば、断熱体40の内周面43は、水滴50を開口部48に導く流通路49を形成する流路構造44を有する。これにより、流通管19は、断熱体40によって高い断熱性能を有すると共に、管本体30と断熱体40との間に水滴が生じた場合でも、開口部48を介して水滴50を外部に排出できるので、水滴50が管本体30と断熱体40との間に滞留することを抑制できる。よって、管本体30が水滴50によって劣化(例えば、腐食)したり汚れたりする不具合の発生を抑制できる。また第2実施形態によれば、二重構造の流通管19は、外側に断熱体40を有する(
図4)。これにより、断熱体40として透明度の高い構造体(例えば、シリカエアロゲル)を用いた場合、外部から管本体30を視認できるため、管本体30の点検作業を容易に行うことができる。
【0024】
また上記第1実施形態と同様に、第2実施形態においても、流通管19は断熱体40によって高い断熱性能を有することで、流路61を流れるクーラントの熱が研削盤100の本体(例えば、ベッド1)に伝達することを抑制できる。これにより、研削盤100が熱によって膨張したりする熱変形を抑制できるので、研削盤100による工作物の加工精度が低下することを抑制できる。また上記第1実施形態と同様に、熱伝導を抑えるために流通管19の固定部材を必要最小限の大きさにする必要がなく設計の自由度を向上できるので、流通管19と固定部材との耐久性を向上できる。
【0025】
C.第3実施形態:
図6は、第3実施形態の流通管15の横断面を模式的に示す図である。
図7は、
図6の7-7断面を模式的に示す図である。
図7は、長手方向に延びる流通管15の一部を示している。研削盤100は、上記第1実施形態の流通管16に代えて第3実施形態の流通管15を備えていてもよい。なお、第1実施形態や第2実施形態と同様の構成については同一符号を付すと共に適宜説明を省略する。
【0026】
流通管15は、第2実施形態の流通管19(
図4)の断熱体40の構造を一部変更した二重構造体の外側に外側流通管70を配置した構成である。流通管15は、三重構造であり、管本体30と、断熱体110と、外側流通管70とを備える。管本体30と断熱体110と外側流通管70のそれぞれの長手方向は、流通管15の長手方向と同じ方向である。断熱体110は、第2実施形態の断熱体40(
図4,
図5)に対して外周側にも流通路45(
図7)を設けた点で異なる。
【0027】
断熱体110の外周面116は、外側流通管70の内周面73と向かい合う。外周面116は、外側流通管70の内周面73と接触している。断熱体110は、管本体30との間および外側流通管70との間に結露によって生じた水滴を開口部48,78に導く流通路45,49を形成する流路構造112を有する。この流路構造112の詳細は後述する。
【0028】
外側流通管70の内周面73は、断熱体110の外周面116と向かい合う。外側流通管70は、円筒形状であり、鋳鉄やステンレス鋼などの金属によって形成されている。なお、他の実施形態では、外側流通管70は合成樹脂によって形成されていてもよい。外側流通管70は、断熱体110の外周側において断熱体110を取り巻くように配置されることで、断熱体110を保護する。外側流通管70は、開口部78が形成された側壁71を有する。側壁71は、外側流通管70の長手方向に延び、外側流通管70の外周面72および内周面73を形成する。開口部78は、外側流通管70の内側と外側とを連通させる。開口部78は、外側流通管70の長手方向の一端から他端に亘って、外側流通管70の長手方向に沿って形成されたスリットである。流通管15が研削盤100に組付けられた状態では、開口部78は、外側流通管70の側壁71のうちで重力方向(-Z方向)側に位置する部分に位置する。外側流通管70の内周面73は、フッ素コーティングなどの撥水処理が施されていてもよい。なお、他の実施形態では、開口部78は、外側流通管70の長手方向に間隔をあけて複数形成された孔であってもよい。この場合、水滴50を外側に円滑に排出するために、各開口部78は、開口部48の真下に配置されることが好ましい。
【0029】
断熱体110の流路構造112は、管本体30と断熱体110との隙間としての流通路49と、断熱体110と外側流通管70との隙間としての流通路45とを形成する。流路構造112は、内周面43に形成された第1溝46aおよび第2溝46bと、外周面116に形成された第3溝114である。第3溝114の構成は、上記第1実施形態の溝46(
図3)と同様の構成である。つまり、第3溝114は、外周面116の周方向に沿って形成され、また外側流通管70の長手方向に沿って一定の間隔をあけて複数設けられている。
【0030】
外側流通管70と断熱体110との間に結露によって生じた水滴50は、第3溝114を流通して開口部78を介して外部に排出される。また、断熱体110と管本体30との間に結露によって生じた水滴50は、第1溝46aおよび第2溝46bを流通して、開口部48および開口部78を介して外部に排出される。
【0031】
上記第3実施形態によれば、流通管15において、断熱体110の外周面116および内周面43は、水滴を開口部48,78に導く流路構造112を有する。これにより、流通管15は、断熱体110によって高い断熱性能を有すると共に、管本体30と断熱体110との間や、断熱体110と外側流通管70との間に水滴が生じた場合でも、開口部48,78を介して生じた水滴50を外部に排出できる。これにより、水滴50が管本体30と断熱体110との間や、断熱体110と外側流通管70との間に滞留することを抑制できる。よって、管本体30や外側流通管70が水滴50によって劣化(例えば、腐食)したり汚れたりする不具合の発生を抑制できる。また、流通管15は外側流通管70を有することで、断熱体110を保護できる。さらに、上記第1実施形態や上記第2実施形態と同様に、流通管15は断熱体110によって高い断熱性能を有することで、流路61を流れるクーラントの熱が研削盤100の本体(例えば、ベッド1)に伝達することを抑制できる。これにより、研削盤100が熱によって膨張したりする熱変形を抑制できるので、研削盤100による工作物の加工精度が低下することを抑制できる。また上記第1実施形態や上記第2実施形態と同様に、熱伝導を抑えるために流通管15の固定部材を必要最小限の大きさにする必要がなく設計の自由度を向上できるので、流通管15と固定部材との耐久性を向上できる。
【0032】
D.断熱体の材質:
断熱体40,90,110は、例えば、エアロゲル、グラスウールなどの断熱材を用いることができる。エアロゲルとして、ガラスや合成樹脂、またはこれらの複合材からなる繊維構造物を基材として形成され、例えばシリカエアロゲルやカーボンエアロゲルやアルミナエアロゲルが用いられる。また、エアロゲルとして、強度の向上を図った、有機物とシリカ骨格などの無機物が分子レベルで混ざり合った有機-無機ハイブリッドエアロゲル、例えば、ポリメチルシルセスキオキサンエアロゲルが用いられてもよい。上記各実施形態の断熱体40,90,110は、シリカエアロゲルを炭素繊維や合成樹脂によって形成された繊維に担持させて生成した断熱シートを、円筒形状に成形することで作成される。円筒形状に成形する場合における端部同士が合わさった合わせ部47,97(
図2,
図4)は、エポキシ樹脂などの接着剤を用いて接着される。なお、断熱体40,90,110は、円筒状に形成されたガラスファイバーなどの樹脂シートや不織布シートにエアロゲルを含浸させることで作成してもよい。断熱体40,90,110がエアロゲルを含むことで、高い断熱性能を容易に流通管15,16,19に有させることができる。また、シリカエアロゲルなどのエアロゲルは一般に高い撥水性を有する。よって、断熱体40,90,110がエアロゲルを含むことで、水滴50を円滑に開口部48,88まで導くことができる。また、上記第1実施形態のごとく、高い撥水性を有するエアロゲルを含む断熱体90によってクーラントが流れる流路60を形成することで、クーラントをより円滑に下流側のクーラント供給装置28に流通させることができる。
【0033】
E.他の実施形態:
E-1.他の実施形態1:
上記各実施形態では、流通管15,16,19は、工作物の研削箇所に供給されたクーラントを流通させるために設けられていたが、他の流体を流通させるために用いてもよい。例えば、研削盤100が、砥石軸20と、砥石軸20の軸受け(図示せず)との間に供給される流体としての軸受油を回収する回収機構を備える場合に、本開示の流通管15,16,19の構成は回収機構に適用できる。
【0034】
E-2.他の実施形態2:
上記各実施形態における溝96,第1溝46a、第3溝114は周方向に延びる必要はなく、他の方向に延びていてもよし、蛇行していてもよい。
【0035】
E-3.他の実施形態3:
上記各実施形態における流路構造44,94,112は、上記形状に限定されるものではない。以下に他の形状の具体例について説明する。
【0036】
図8は、他の実施形態3の一例を示す断熱体130の模式図である。
図9は、他の実施形態3の一例を示す流通管160の断面模式図である。
図8および
図9は、第1実施形態の変形例としての図である。
図8に示す断熱体130は、外周面92に流路構造140を形成する複数の凸部56を有する。複数の凸部56は、周方向および長手方向に亘ってランダムに形成されている。
図9に示すように、複数の凸部56のうちで、開口部88と対向する以外の凸部56は、管本体80の内周面83と接触している。これにより、断熱体130と管本体80との間には隙間として流通路149が形成される。つまり、凸部56によって、断熱体130の外周面42のうち、凸部56以外の部分と管本体80との間に隙間を生じさせることで流通路149が形成される。流通路149は、開口部88と連通し、水滴50を開口部88に導く。このように、凸部56によって隙間を生じさせることで流通路149を容易に形成できる。また他の実施形態3は、上記第1実施形態と同様の効果を奏する。例えば、流通管160は、断熱体130によって高い断熱性能を有すると共に、管本体80と断熱体130との間に水滴50が生じた場合でも、開口部88を介して生じた水滴50を外部に排出できるので、水滴50が管本体80と断熱体130との間に滞留することを抑制できる。また、流路構造140は、凸部56と第1実施形態の溝96(
図2)とを有していてもよい。なお、上記で説明した凸部56を有する流路構造140は第2実施形態や第3実施形態にも同様に適用できる。
【0037】
E-4.他の実施形態4:
上記第2実施形態や上記第3実施形態では、開口部48(
図5,
図7)は、間隔をあけて配置された孔であったが、長手方向に沿って形成されたスリットであってもよい。
【0038】
E-5.他の実施形態5:
上記各実施形態において、断熱体40,90,110の形成方法は上記に限定されるものではない。例えば、2枚の断熱シートを半円筒形状に形成した後に、断熱シーツのそれぞれが有する2つの端部同士をそれぞれ接着することで断熱体40,90,110を形成してもよい。この場合、接着された2つの合わせ部は、重力方向に沿った方向であるZ方向において、断熱体40,90,110の最上部以外、例えば中央付近に位置するように配置することが好ましい。こうすることで、合わせ部から水滴が断熱体40,90,110の内部に侵入することを抑制できる。
【0039】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1…ベッド、2…スライドベース、3…砥石台、4…砥石車、5…サーボモータ、6…テーブル、7…電動機、15,16,19…流通管、17…第1流通管、18…第2流通管、18a…部分、20…砥石軸、28…クーラント供給装置、28a…クーラントタンク、28b…分離装置、28c…供給部、30…管本体、32…外周面、33…内周面、40…断熱体、41…側壁、42…外周面、43…内周面、44…流路構造、45…流通路、46a…第1溝、46b…第2溝、47…合わせ部、48…開口部、49…流通路、50…水滴、56…凸部、60,61…流路、70…外側流通管、71…側壁、72…外周面、73…内周面、78…開口部、80…管本体、81…側壁、82…外周面、83…内周面、88…開口部、90…断熱体、91…側壁、92…外周面、93…内周面、94…流路構造、96…溝、99…流通路、100…研削盤、110…断熱体、112…流路構造、114…第3溝、116…外周面、130…断熱体、140…流路構造、149…流通路、160…流通管、Ra…第1領域、Rb…第2領域