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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20240611BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20240611BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
B41J2/175 171
B41J2/175 153
B41J2/175 121
B41J2/18
B41J2/01 401
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020137936
(22)【出願日】2020-08-18
(65)【公開番号】P2022034235
(43)【公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大澤 悟
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-044823(JP,A)
【文献】特開2007-125825(JP,A)
【文献】特開2001-334681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドに接続され、インクを貯留する複数のインク貯留部と、
前記複数のインク貯留部と前記インクジェットヘッドとの間でインクの流通が行われるように、前記複数のインク貯留部の間に内部圧力差を発生させる圧力発生部と、
前記内部圧力差が減少するように前記複数のインク貯留部を連通させる貯留連通部と、
を備え
前記貯留連通部は、
前記複数のインク貯留部の間に設けられた空気流路と、
前記空気流路を開くことによって前記複数のインク貯留部を連通させる連通弁と、
を有し、
前記連通弁は、前記画像形成装置が停止した場合、非常用電源からの電力の供給を受けて前記空気流路を開く、画像形成装置。
【請求項2】
インクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドに接続され、インクを貯留する複数のインク貯留部と、
前記複数のインク貯留部と前記インクジェットヘッドとの間でインクの流通が行われるように、前記複数のインク貯留部の間に内部圧力差を発生させる圧力発生部と、
前記内部圧力差が減少するように前記複数のインク貯留部を連通させる貯留連通部と、
を備え、
前記貯留連通部は、
前記複数のインク貯留部の間に設けられ、前記圧力発生部に接続された空気流路と、
前記空気流路を開くことによって前記複数のインク貯留部を連通させる連通弁と、
を有する、画像形成装置。
【請求項3】
前記連通弁は、前記画像形成装置が停止した場合に、前記空気流路を開く、
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記連通弁は、前記画像形成装置が有する装置電源からの電力の供給を受けた場合、前記空気流路を閉じる一方、前記装置電源からの電力の供給を受けない場合、前記空気流路を開く、
請求項1または3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記連通弁は、前記画像形成装置が停止した場合、非常用電源からの電力の供給を受けて前記空気流路を開く、
請求項1または3に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記空気流路は、前記圧力発生部に接続されている、
請求項1、請求項1を引用する請求項4および5の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記貯留連通部は、前記インク貯留部に貯留されるインク量が所定量以上である場合、前記複数のインク貯留部を連通させる、
請求項1~6の何れか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送装置により搬送される記録媒体に対し、インクジェットヘッドに設けられた複数のノズルからインクを吐出することにより記録媒体に画像を形成(記録)するインクジェット画像形成装置(以下、画像形成装置という)が知られている。
【0003】
画像形成装置の中には、インクを供給する供給タンクと、インクジェットヘッドと、インクを回収する回収タンクとの間でインクを循環させつつ、インクジェットヘッドに対してインクを供給するインク供給機構を備えるものがある(例えば、特許文献1,2を参照)。
【0004】
上記インク供給機構においては、インクジェットヘッドに対してインクを供給する供給タンクとインクジェットヘッドとは、インク供給路を介して接続されている。供給タンクには背圧(メニスカス用負圧)がかけられており、この背圧によって、インクジェットヘッドの吐出口に適切なメニスカス圧が形成される。メニスカス圧を適切に制御することによって、インクジェットヘッドの吐出口に適切な形状のメニスカスを形成することができる。
【0005】
また、上記インク供給機構においては、インクジェットヘッドからインクを回収する回収タンクにも、供給タンクと異なる大きさの背圧(負圧)がかけられており、供給タンクと回収タンクとの内部圧力差(背圧差)によって、インクジェットヘッドに供給されたインクがインク回収路を介して回収タンクへ導かれる。インクジェットヘッドに流れるインクの流量は、供給タンクと回収タンクとの間の内部圧力差によって調整される。
【0006】
ここで、供給タンクおよび回収タンクに背圧をかける構成について説明する。供給タンクおよび回収タンクの各々には、空気流路を介して背圧ポンプが接続される。そして、背圧ポンプの駆動制御によって、供給タンクおよび回収タンクにそれぞれ異なる大きさの背圧がかけられる結果、供給タンクと回収タンクとの間に内部圧力差が発生し、供給タンクからインクジェットヘッドを介して回収タンクへインクが流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-962号公報
【文献】特開2009-285845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記インク供給機構においては、画像形成装置の緊急停止や瞬停(短い時間の停電)等、予期しない画像形成装置の停止が発生した場合(すなわち、背圧ポンプの駆動制御が停止した場合)、供給タンクと回収タンクとの間に内部圧力差が残る。その結果、この内部圧力差に起因して例えば供給タンク(または回収タンク)から空気流路にインクが流出したり、インクジェットヘッドに設けられたノズルからインクが漏れたりするといった不具合を招いてしまうおそれがあるという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、予期しない画像形成装置の停止に起因する不具合の発生を防止することが可能な画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る画像形成装置は、
インクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドに接続され、インクを貯留する複数のインク貯留部と、
前記複数のインク貯留部と前記インクジェットヘッドとの間でインクの流通が行われるように、前記複数のインク貯留部の間に内部圧力差を発生させる圧力発生部と、
前記内部圧力差が減少するように前記複数のインク貯留部を連通させる貯留連通部と、
を備え
前記貯留連通部は、
前記複数のインク貯留部の間に設けられた空気流路と、
前記空気流路を開くことによって前記複数のインク貯留部を連通させる連通弁と、
を有し、
前記連通弁は、前記画像形成装置が停止した場合、非常用電源からの電力の供給を受けて前記空気流路を開く。
また、本発明に係る画像形成装置は、
インクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドに接続され、インクを貯留する複数のインク貯留部と、
前記複数のインク貯留部と前記インクジェットヘッドとの間でインクの流通が行われるように、前記複数のインク貯留部の間に内部圧力差を発生させる圧力発生部と、
前記内部圧力差が減少するように前記複数のインク貯留部を連通させる貯留連通部と、
を備え、
前記貯留連通部は、
前記複数のインク貯留部の間に設けられ、前記圧力発生部に接続された空気流路と、
前記空気流路を開くことによって前記複数のインク貯留部を連通させる連通弁と、
を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、予期しない画像形成装置の停止に起因する不具合の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】インクジェット画像形成装置の概略構成を示す図である。
図2】ヘッドユニットの構成を示す模式図である。
図3】インクジェット画像形成装置の主要な機能構成を示すブロック図である。
図4】インクジェットヘッドにインクを供給するインク供給機構の構成を示す図である。
図5】インクジェット画像形成装置の制御動作例を示すフローチャートである。
図6】インクジェット画像形成装置の制御動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、インクジェット画像形成装置1の概略構成を示す図である。インクジェット画像形成装置1は、給紙部10と、画像形成部20と、排紙部30と、制御部40(図3を参照)とを備える。
【0014】
インクジェット画像形成装置1(本発明の「画像形成装置」として機能)は、制御部40による制御下で、給紙部10に格納された記録媒体Pを画像形成部20に搬送し、画像形成部20で記録媒体Pに画像を形成し、画像が形成された記録媒体Pを排紙部30に搬送する。記録媒体Pとしては、普通紙や塗工紙といった紙のほか、布帛またはシート状の樹脂等、表面に着弾したインクを定着させることが可能な種々の媒体を用いることができる。
【0015】
給紙部10は、記録媒体Pを格納する給紙トレイ11と、給紙トレイ11から画像形成部20に記録媒体Pを搬送して供給する媒体供給部12とを有する。媒体供給部12は、内側が2本のローラーにより支持された輪状のベルトを備え、このベルト上に記録媒体Pを載置した状態でローラーを回転させることで記録媒体Pを給紙トレイ11から画像形成部20へ搬送する。
【0016】
画像形成部20は、搬送部21と、受け渡しユニット22と、加熱部23と、ヘッドユニット24と、定着部25と、デリバリー部28などを有する。
【0017】
搬送部21は、円筒状の搬送ドラム211の搬送面211a(載置面)の上に載置された記録媒体Pを保持し、搬送ドラム211がX方向(図1の紙面垂直方向)に延びた回転軸(円筒軸)を中心に回転して周回移動することで当該搬送ドラム211上の記録媒体Pを搬送方向(Y方向)に搬送する搬送動作を行う。
【0018】
搬送ドラム211は、その搬送面211a上で記録媒体Pを保持するための図示しない爪部および吸気部を備える。記録媒体Pは、爪部により端部が押さえられ、かつ吸気部により搬送面211aに吸い寄せられることで搬送面211aに保持される。搬送部21は、搬送ドラム211を回転させるための搬送ドラムモーター(図示せず)に接続されている。搬送ドラム211は、搬送ドラムモーターの回転量に比例した角度だけ回転する。
【0019】
受け渡しユニット22は、給紙部10の媒体供給部12により搬送された記録媒体Pを搬送部21に引き渡す。受け渡しユニット22は、給紙部10の媒体供給部12と搬送部21との間の位置に設けられ、媒体供給部12から搬送された記録媒体Pの一端をスイングアーム部221で保持して取り上げ、受け渡しドラム222を介して搬送部21に引き渡す。
【0020】
加熱部23は、受け渡しドラム222の配置位置とヘッドユニット24の配置位置との間に設けられ、搬送部21により搬送される記録媒体Pが所定の温度範囲内の温度となるように当該記録媒体Pを加熱する。加熱部23は、例えば、赤外線ヒーター等を有し、制御部40(図3を参照)から供給される制御信号に基づいて赤外線ヒーターに通電して当該赤外線ヒーターを発熱させる。
【0021】
ヘッドユニット24は、記録媒体Pが保持された搬送ドラム211の回転に応じた適切なタイミングで、搬送ドラム211の搬送面211aに対向するインク吐出面に設けられたノズル開口部から記録媒体Pに対してインクを吐出して画像を形成する。ヘッドユニット24は、インク吐出面と搬送面211aとが所定の距離だけ離隔されるように配置される。
【0022】
本実施の形態におけるインクジェット画像形成装置1では、ホワイト(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクにそれぞれ対応する4つのヘッドユニット24が記録媒体Pの搬送方向上流側からW,Y,M,C,Kの色の順に所定の間隔で並ぶように配列されている。
【0023】
図2は、ヘッドユニット24の構成を示す模式図である。ここでは、ヘッドユニット24のうち搬送ドラム211の搬送面211aと対向する面が示されている。
【0024】
ヘッドユニット24は、取り付け部材244に取り付けられた4つのインクジェットヘッド242を備える。インクジェットヘッド242の各々には、インクを貯留する圧力室と、圧力室の壁面に設けられた圧電素子と、ノズル243とを各々有する複数の画像形成素子(記録素子)が設けられている。この画像形成素子は、圧電素子を変形動作させる駆動信号が入力されると、圧電素子の変形により圧力室が変形して圧力室内の圧力が変化し、圧力室に連通するノズルからインクを吐出する。
【0025】
インクジェットヘッド242では、記録媒体Pの搬送方向と交差する方向(本実施の形態では、搬送方向と直交する方向、すなわちX方向)に等間隔に配列されたノズル243からなる2つのノズル列が形成されている。これら2つのノズル列は、ノズル243の配置位置が、各ノズル列におけるノズル243の配置間隔の2分の1だけX方向について互いにずれるように設けられている。
【0026】
4つのインクジェットヘッド242は、ノズル列のX方向についての配置範囲が切れ目なく繋がるように千鳥格子状に配置されている。ヘッドユニット24に含まれるノズル243のX方向についての配置範囲は、搬送部21により搬送される記録媒体Pのうち画像が形成される領域のX方向の幅をカバーしており、ヘッドユニット24の位置は、画像の形成時には搬送ドラム211の回転軸に対して固定されて用いられる。すなわち、ヘッドユニット24は、記録媒体Pに対するX方向についての画像形成可能幅に亘ってインクを吐出可能なラインヘッドを有しており、インクジェット画像形成装置1は、シングルパス形式のインクジェット画像形成装置である。
【0027】
なお、インクジェットヘッド242が有するノズル列の数は、2つではなく、1つまたは3つ以上であっても良い。また、ヘッドユニット24が有するインクジェットヘッド242の数は、4つでなく、3つ以下または5つ以上であっても良い。
【0028】
画像形成素子のノズル243から吐出されるインクとしては、顔料を含有するインクであって、例えば二酸化チタンなどを顔料として含有させた白インクが用いられる。また、画像形成素子のノズル243から吐出されるインクとしては、ゲル化剤を含有して、温度によってゲル状またはゾル状に相変化し、紫外線等のエネルギー線を照射することにより硬化する性質を有するゲルインクが用いられる。本実施の形態では、画像形成素子のノズル243から吐出されるインクとして、ゲルインクが用いられる。
【0029】
ヘッドユニット24は、ヘッドユニット24内に貯留されるインクを加熱するインク加熱部(図示せず)を備える。インク加熱部は、制御部40による制御下で動作し、ゾル状となる温度にインクを加熱する。
【0030】
インクジェットヘッド242は、加熱されてゾル状となったインクを吐出する。このゾル状のインクが記録媒体Pに吐出されると、インク滴が記録媒体Pに着弾した後、自然冷却されることで速やかにインクがゲル状となって記録媒体P上で凝固する。
【0031】
定着部25は、搬送部21のX方向の幅に亘って配置された発光部を有し、搬送部21に載置された記録媒体Pに対して当該発光部から紫外線等のエネルギー線を照射して記録媒体P上に吐出されたインク(ゲルインク)を硬化させて定着させる。定着部25の発光部は、搬送方向についてヘッドユニット24の配置位置からデリバリー部28の受け渡しドラム281の配置位置までの間において搬送面211aと対向して配置される。
【0032】
デリバリー部28は、記録媒体Pを搬送部21からベルトループ282に受け渡す円筒状の受け渡しドラム281と、内側が2本のローラーにより支持された輪状のベルトを有するベルトループ282とを有し、受け渡しドラム281により搬送部21からベルトループ282上に受け渡された記録媒体Pをベルトループ282により搬送して排紙部30に送出する。
【0033】
排紙部30は、デリバリー部28により画像形成部20から送り出された記録媒体Pが載置される板状の排紙トレイ31を有する。
【0034】
図3は、インクジェット画像形成装置1の主要な機能構成を示すブロック図である。インクジェット画像形成装置1は、加熱部23と、ヘッド駆動部241およびインクジェットヘッド242と、定着部25と、制御部40と、搬送駆動部51と、操作表示部52と、入出力インターフェース53などを備える。
【0035】
ヘッド駆動部241は、インクジェットヘッド242の画像形成素子に対して適切なタイミングで画像データに応じて圧電素子を変形動作させる駆動信号を供給することにより、インクジェットヘッド242のノズル243から画像データの画素値に応じた量のインクを吐出させる。
【0036】
制御部40は、CPU41(Central Processing Unit)、RAM42(Random Access Memory)、ROM43(Read Only Memory)および記憶部44を有する。
【0037】
CPU41は、ROM43に記憶された各種制御用のプログラムや設定データを読み出してRAM42に記憶させ、当該プログラムを実行して各種演算処理を行う。また、CPU41は、インクジェット画像形成装置1の全体動作を統括制御する。
【0038】
RAM42は、CPU41に作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。RAM42は、不揮発性メモリーを含んでも良い。
【0039】
ROM43は、CPU41により実行される各種制御用のプログラムや設定データ等を格納する。なお、ROM43に代えてEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリー等の書き換え可能な不揮発性メモリーが用いられても良い。
【0040】
記憶部44には、入出力インターフェース53を介して外部装置2から入力された印刷ジョブ(画像形成命令)および当該印刷ジョブに係る画像データなどが記憶される。このうち印刷ジョブには、形成する画像に係る画像データを指定する情報の他、画像を形成する記録媒体Pの種別に係る情報(例えば、記録媒体Pの大きさおよび厚さ)が含まれる。記憶部44としては、例えばHDD(Hard Disk Drive)が用いられ、また、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などが併用されても良い。
【0041】
搬送駆動部51は、制御部40から供給される制御信号に基づいて搬送ドラム211の搬送ドラムモーターに駆動信号を供給して搬送ドラム211を所定の速度およびタイミングで回転させる。
【0042】
また、搬送駆動部51は、制御部40から供給される制御信号に基づいて媒体供給部12、受け渡しユニット22およびデリバリー部28を動作させるためのモーターに駆動信号を供給して、記録媒体Pの搬送部21への供給および搬送部21からの排出を行わせる。
【0043】
操作表示部52は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイといった表示装置と、操作キーや、表示装置の画面に重ねられて配置されたタッチパネルといった入力装置とを備える。操作表示部52は、表示装置において各種情報を表示させ、また入力装置に対するユーザーの入力操作を操作信号に変換して制御部40に出力する。
【0044】
入出力インターフェース53は、外部装置2と制御部40との間のデータの送受信を媒介する。入出力インターフェース53は、例えば各種シリアルインターフェース、各種パラレルインターフェースの何れかまたはこれらの組み合わせで構成される。
【0045】
外部装置2は、例えばパーソナルコンピューターであり、入出力インターフェース53を介してプリントジョブおよび画像データ等を制御部40に供給する。
【0046】
次に、図4を参照して、インクジェット画像形成装置1においてインクジェットヘッド242にインクを供給するインク供給機構60の構成を説明する。インク供給機構60は、インクを供給する供給タンクと、インクジェットヘッドと、インクを回収する回収タンクとの間でインクを循環させつつ、インクジェットヘッドに対してインクを供給する。なお、図4において、細線は、インクが流れるインク流路を示し、太線は、空気が流れる空気流路を示す。
【0047】
図4に示すように、インク供給機構60は、メインタンク61、サブタンク62,63,64、インク流路70,72,74,76,78、空気流路80,82,84、供給ポンプ90,92,94、背圧ポンプ96,98、脱気モジュール100、液面検出部102,104、背圧弁110,112、電磁弁114等を備える。なお、供給ポンプ90,92,94としては、逆流防止機能を備えるポンプが用いられる。
【0048】
なお、サブタンク63,64は、本発明の「インク貯留部」として機能する。また、背圧ポンプ96,98および背圧弁110,112は、本発明の「圧力発生部」として機能する。また、空気流路84および電磁弁114は、本発明の「貯留連通部」として機能する。また、電磁弁114は、本発明の「連通弁」として機能する。
【0049】
メインタンク61は、ヘッドユニット24の外部に設けられ、ヘッドユニット24に対応する色(イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)またはブラック(K))のインクを貯留する。メインタンク61に貯留されたインクは、制御部40から供給される制御信号に基づいて動作する供給ポンプ90により汲み出され、インク流路70を介してサブタンク62に供給される。
【0050】
サブタンク62は、メインタンク61とサブタンク63,64との間におけるインク流路70,72,78に接続され、メインタンク61から汲み出されて供給されたインクを貯留する。サブタンク62に貯留されたインクは、制御部40から供給される制御信号に基づいて動作する供給ポンプ92により汲み出され、インク流路72を介してサブタンク63に供給される。
【0051】
インク流路72の途中には脱気モジュール100が設けられている。脱気モジュール100は、サブタンク62からサブタンク63へ供給されるインクから気泡や溶存気体を除去する脱気処理を行う。
【0052】
サブタンク63(供給タンク)は、サブタンク62とインクジェットヘッド242との間におけるインク流路72,74に接続され、サブタンク62から汲み出されて供給されたインクを貯留する。本実施の形態では、サブタンク63として約40リットルの容量を有した金属製の容器が用いられる。
【0053】
サブタンク63には、サブタンク63内のインク液面を検出する液面検出部102(液面検知センサー)が設けられている。液面検出部102は、サブタンク63内のインク液面を検出し、検出したインク液面を制御部40に出力する。
【0054】
液面検出部102により検出されたインク液面が所定値を下回った場合、サブタンク62に貯留されたインクは、制御部40から供給される制御信号に基づいて動作する供給ポンプ92により汲み出され、インク流路72を介してサブタンク63に供給される。
【0055】
サブタンク63には所定の負圧がかけられている。そして、サブタンク63に貯留されたインクは、記録媒体Pに画像が形成される際、インク流路74を介してインクジェットヘッド242に供給される。インクジェットヘッド242は、サブタンク63から供給されたインクを吐出する。
【0056】
サブタンク64(回収タンク)は、サブタンク62とインクジェットヘッド242との間におけるインク流路76,78に接続され、インク流路76を介してインクジェットヘッド242から供給されるインクを貯留する。本実施の形態では、サブタンク64として約40リットルの容量を有した金属製の容器が用いられる。
【0057】
サブタンク64には、サブタンク64内のインク液面を検出する液面検出部104(液面検知センサー)が設けられている。液面検出部104は、サブタンク64内のインク液面を検出し、検出したインク液面を制御部40に出力する。
【0058】
液面検出部104により検出されたインク液面が所定値を超えた場合、サブタンク64に貯留されたインクは、制御部40から供給される制御信号に基づいて動作する供給ポンプ94により汲み出され、インク流路78を介してサブタンク62に供給される。
【0059】
サブタンク64には所定の負圧がかけられている。そして、記録媒体Pに画像が形成される際、サブタンク63からインクジェットヘッド242に供給されたインクのうちインクジェットヘッド242から吐出されなかったインクは、インク流路76を介してサブタンク64に供給(回収)される。
【0060】
サブタンク63,64のそれぞれにかけられる負圧の差(サブタンク63,64の間に発生する内部圧力差)によって、サブタンク63からインクジェットヘッド242に供給されたインクがサブタンク64へ導かれる。インクジェットヘッド242に流れるインクの流量は、サブタンク63,64のそれぞれにかけられる負圧の差によって調整される。
【0061】
次に、サブタンク63,64に負圧をかける具体的な構成について説明する。
【0062】
サブタンク63は、空気流路80を介して、背圧ポンプ96に接続されている。空気流路80には、制御部40から供給される制御信号に基づいて、空気流路80の開閉量を調整する背圧弁110が設けられている。
【0063】
背圧ポンプ96(例えば、真空ポンプ)は、制御部40の制御を受け、空気流路80を介してサブタンク63内の空気を吸引してサブタンク63内の圧力(気圧)を減圧させる。背圧弁110は、制御部40の制御下において、サブタンク63内の圧力が所定圧力となるように、空気流路80の圧力を検出する圧力検出部(図示せず)の検出結果に応じて空気流路80を開閉して背圧ポンプ96に吸入される空気量を調整する。
【0064】
サブタンク64は、空気流路82を介して、背圧ポンプ98に接続されている。空気流路82には、制御部40から供給される制御信号に基づいて、空気流路82の開閉量を調整する背圧弁112が設けられている。
【0065】
背圧ポンプ98(例えば、真空ポンプ)は、制御部40の制御を受け、空気流路82を介してサブタンク64内の空気を吸引してサブタンク64内の圧力(気圧)を減圧させる。背圧弁112は、制御部40の制御下において、サブタンク64内の圧力が所定圧力となるように、空気流路82の圧力を検出する圧力検出部(図示せず)の検出結果に応じて空気流路82を開閉して背圧ポンプ98に吸入される空気量を調整する。
【0066】
以上のように、背圧ポンプ96,98の駆動制御によって、サブタンク63,64にそれぞれ異なる大きさの背圧がかけられる結果、サブタンク63,64の間に内部圧力差が発生し、サブタンク63からインクジェットヘッド242を介してサブタンク64へインクが流れる。
【0067】
しかしながら、上記インク供給機構60においては、インクジェット画像形成装置1の緊急停止や瞬停(短い時間の停電)等、予期しないインクジェット画像形成装置1の停止が発生した場合(すなわち、背圧ポンプ96,98の駆動制御が停止した場合)、サブタンク63とサブタンク64との間に内部圧力差が残る。その結果、この内部圧力差に起因して例えばサブタンク63(またはサブタンク64)から空気流路80(または空気流路82)にインクが流出したり、インクジェットヘッド242に設けられたノズルからインクが漏れたりするといった不具合を招いてしまうおそれがある。
【0068】
そこで本実施の形態では、予期しないインクジェット画像形成装置1の停止に起因する不具合の発生を防止することを可能とする構成をインク供給機構60に採用している。
【0069】
すなわち、インク供給機構60は、サブタンク63,64(より具体的には、空気流路80,82)の間に設けられた空気流路84と、空気流路84を開くことによってサブタンク63,64を連通させる電磁弁114とを備えている。
【0070】
電磁弁114は、空気流路84に設けられ、インクジェット画像形成装置1が有する装置電源120(図3を参照)からの電力の供給を受けていない場合(すなわち、インクジェット画像形成装置1が停止した場合)、常時開状態とされている。そして、電磁弁114は、装置電源120からの電力の供給を受けている場合(すなわち、インクジェット画像形成装置1が稼働している場合)、制御部40から供給される制御信号に基づいて、空気流路84を開状態から閉状態に切り替える。
【0071】
次に、図5のフローチャートを参照して、インクジェット画像形成装置1の制御動作例について説明する。なお、図5に示す処理は、インクジェット画像形成装置1の電源がオンされた後、印刷ジョブに係る画像データが制御部40に供給されてインクジェットヘッド242のノズルから画像データの画素値に応じた量のインク液滴が吐出される前(すなわち印刷ジョブの実行前)に実行される。
【0072】
まず、制御部40は、サブタンク63,64に所定の負圧をかける前準備の処理として、空気流路80,82の圧力を検出する圧力検出部のキャリブレーション処理を実行する(ステップS100)。
【0073】
次に、制御部40は、インクジェット画像形成装置1が有する装置電源120からの電力の供給を受けている電磁弁114に制御信号を供給して、空気流路84を開状態から閉状態に切り替える(ステップS120)。
【0074】
最後に、制御部40は、サブタンク63,64に所定の負圧をかける制御を行う(ステップS140)。具体的には、制御部40は、背圧弁110を制御し、サブタンク63内の圧力が所定圧力となるように、空気流路80の圧力を検出する圧力検出部の検出結果に応じて空気流路80を開閉して背圧ポンプ96に吸入される空気量を調整させる。また、制御部40は、背圧弁112を制御し、サブタンク64内の圧力が所定圧力となるように、空気流路82の圧力を検出する圧力検出部の検出結果に応じて空気流路82を開閉して背圧ポンプ98に吸入される空気量を調整させる。その結果、サブタンク63,64にそれぞれ異なる大きさの背圧がかけられ、サブタンク63,64の間に内部圧力差が発生し、サブタンク63からインクジェットヘッド242を介してサブタンク64へインクが流れる。ステップS140の処理が完了することによって、インクジェット画像形成装置1は図5における処理を終了する。
【0075】
その後、印刷ジョブの実行中に予期しないインクジェット画像形成装置1の停止が発生した場合(すなわち、背圧ポンプ96,98の駆動制御が停止した場合)、電磁弁114は、インクジェット画像形成装置1が有する装置電源120からの電力の供給が停止し、空気流路84を閉状態から開状態に自動的に切り替える。これにより、空気流路80,82間ひいてはサブタンク63,64間が連通し、サブタンク63とサブタンク64との間における内部圧力差が減少する。その結果、サブタンク63の内部圧力とサブタンク64の内部圧力が均一になり(つまり、サブタンク63とサブタンク64との間に内部圧力差が残らず)、内部圧力差が残ることに起因して例えばサブタンク63(またはサブタンク64)から空気流路80(または空気流路82)にインクが流出したり、インクジェットヘッド242に設けられたノズルからインクが漏れたりするといった不具合の発生を防止することができる。
【0076】
以上詳しく説明したように、画像形成装置(インクジェット画像形成装置1)は、インクジェットヘッド242と、インクジェットヘッド242に接続され、インクを貯留する複数のインク貯留部(サブタンク63,64)と、複数のインク貯留部とインクジェットヘッド242との間でインクの流通が行われるように、複数のインク貯留部の間に内部圧力差を発生させる圧力発生部(背圧ポンプ96,98および背圧弁110,112)と、内部圧力差が減少するように複数のインク貯留部を連通させる貯留連通部(空気流路84および電磁弁114)と、を備える。
【0077】
このように構成した本実施の形態によれば、予期しないインクジェット画像形成装置1の停止が発生した場合、貯留連通部(空気流路84および電磁弁114)により、複数のインク貯留部(サブタンク63,64)の間における内部圧力差が減少するように複数のインク貯留部を連通させることができる。そのため、サブタンク63の内部圧力とサブタンク64の内部圧力が均一になり(つまり、サブタンク63とサブタンク64との間に内部圧力差が残らず)、内部圧力差が残ることに起因して例えばサブタンク63(またはサブタンク64)から空気流路80(または空気流路82)にインクが流出したり、インクジェットヘッド242に設けられたノズルからインクが漏れたりするといった不具合の発生を防止することができる。
【0078】
なお、上記実施の形態では、電磁弁114は、インクジェット画像形成装置1が有する装置電源120からの電力の供給を受けていない場合(すなわち、インクジェット画像形成装置1が停止した場合)、常時開状態とされている例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、電磁弁114は、インクジェット画像形成装置1が有する装置電源120からの電力の供給を受けていない場合、常時閉状態とされても良い。この場合、予期しないインクジェット画像形成装置1の停止が発生したとき、電磁弁114は、装置電源120とは別の非常用電源122(図3を参照)からの電力の供給を受け、制御部40から供給される制御信号に基づいて、空気流路84を閉状態から開状態に切り替える。
【0079】
ここで、図6のフローチャートを参照して、上記変形例におけるインクジェット画像形成装置1の制御動作例について説明する。なお、図6に示す処理は、インクジェット画像形成装置1の電源がオンされた後、印刷ジョブに係る画像データが制御部40に供給されてインクジェットヘッド242のノズルから画像データの画素値に応じた量のインク液滴が吐出されている場合(すなわち印刷ジョブの実行中)に実行される。
【0080】
まず、制御部40は、インクジェット画像形成装置1が有する装置電源120が停止したか(すなわち、インクジェット画像形成装置1が停止したか)否かについて判定する(ステップS200)。
【0081】
判定の結果、装置電源120が停止していない場合(ステップS200、NO)、処理はステップS200の前に戻る。一方、装置電源120が停止した場合(ステップS200、YES)、制御部40は、非常用電源122から電磁弁114に電力を供給させるとともに、電磁弁114に制御信号を供給して空気流路84を閉状態から開状態に切り替える(ステップS220)。
【0082】
次に、制御部40は、空気流路84を閉状態から開状態に切り替えてから所定時間(例えば5秒、サブタンク63,64間が連通してサブタンク63の内部圧力とサブタンク64の内部圧力が均一になると推定される時間)が経過したか否かについて判定する(ステップS240)。
【0083】
判定の結果、所定時間が経過していない場合(ステップS240、NO)、処理はステップS240の前に戻る。一方、所定時間が経過した場合(ステップS240、YES)、制御部40は、非常用電源122から電磁弁114に電力を供給させるとともに、電磁弁114に制御信号を供給して空気流路84を開状態から閉状態に切り替える(ステップS260)。ステップS260の処理が完了することによって、インクジェット画像形成装置1は図6における処理を終了する。
【0084】
上記変形例においても、予期しないインクジェット画像形成装置1の停止が発生した場合、貯留連通部(空気流路84および電磁弁114)により、複数のインク貯留部(サブタンク63,64)の間における内部圧力差が減少するように複数のインク貯留部を連通させることができる。そのため、サブタンク63の内部圧力とサブタンク64の内部圧力が均一になり(つまり、サブタンク63とサブタンク64との間に内部圧力差が残らず)、内部圧力差が残ることに起因して例えばサブタンク63(またはサブタンク64)から空気流路80(または空気流路82)にインクが流出したり、インクジェットヘッド242に設けられたノズルからインクが漏れたりするといった不具合の発生を防止することができる。
【0085】
また、上記実施の形態において、インクジェット画像形成装置1が停止していない場合でも、液面検出部102,104の検出結果に基づいて、サブタンク63(またはサブタンク64)に貯留されるインク量が所定量(具体的には、サブタンク63,64内から空気流路80,82にインクが溢れ出す可能性があるインク液面の高さに相当するインク量)以上であるときには、サブタンク63とサブタンク64とを連通させても良い。これにより、例えば圧力検出部の故障によりサブタンク63,64に正しい背圧をかけられず、サブタンク63とサブタンク64との間に内部圧力差が残ってしまう場合でも、サブタンク63(またはサブタンク64)から空気流路80(または空気流路82)にインクが流出するといった不具合の発生を防止することができる。
【0086】
また、上記実施の形態では、シングルパス形式のインクジェット画像形成装置1を例に挙げて説明したが、ヘッドユニットを走査させながら画像の記録を行うインクジェット画像形成装置に本発明を適用しても良い。また、ヘッドユニットに単一のノズルが設けられたインクジェット画像形成装置に本発明を適用しても良い。
【0087】
また、上記実施の形態では、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 インクジェット画像形成装置
2 外部装置
10 給紙部
11 給紙トレイ
12 媒体供給部
20 画像形成部
21 搬送部
211 搬送ドラム
211a 搬送面
22 受け渡しユニット
23 加熱部
24 ヘッドユニット
241 ヘッド駆動部
242 インクジェットヘッド
243 ノズル
244 取り付け部材
25 定着部
28 デリバリー部
30 排紙部
31 排紙トレイ
40 制御部
41 CPU
42 RAM
43 ROM
44 記憶部
51 搬送駆動部
52 操作表示部
53 入出力インターフェース
60 インク供給機構
61 メインタンク
62,63,64 サブタンク
70,72,74,76,78 インク流路
80,82,84 空気流路
90,92,94 供給ポンプ
96,98 背圧ポンプ
100 脱気モジュール
102,104 液面検出部
110,112 背圧弁
114 電磁弁
P 記録媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6