(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】円盤状切断刃の保護具及びその取付方法
(51)【国際特許分類】
B26D 1/14 20060101AFI20240611BHJP
B26D 7/22 20060101ALI20240611BHJP
B23Q 13/00 20060101ALI20240611BHJP
B24B 55/00 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
B26D1/14 D
B26D7/22 A
B23Q13/00
B24B55/00
(21)【出願番号】P 2020146248
(22)【出願日】2020-08-31
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】坂野 賀津士
(72)【発明者】
【氏名】水上 萌
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 修一
(72)【発明者】
【氏名】上倉 弘靖
【審査官】藤井 浩介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第07641047(US,B1)
【文献】特開昭63-156693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 1/00ー1/24
B26D 7/22
B23Q 13/00
B24B 55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状切断刃の刃先を含む刃先部分に、前記刃先部分の両面にそれぞれ対向するように配置して装着される一対の対向面を備えた刃先装着部材と、隣接する2つの前記刃先装着部材の端部にそれぞれ揺動可能に結合し、当該刃先装着部材を相互に連結する連結部材と、前記刃先装着部材の端縁部に形成された第1ピン穴と前記連結部材の端部に形成された第2ピン穴とに挿通されて前記刃先装着部材及び前記連結部材を互いにピン結合するピンとを、それぞれ複数備え、
前記刃先装着部材は、前記対向面と前記第1ピン穴とをそれぞれ備えた一対のプレート片が前記連結部材を挟んで前記ピンにより連結されて構成され、
前記刃先装着部材及び前記連結部材の何れかに、前記刃先部分への装着時に、前記刃先よりも前記円盤状切断刃の径方向の外側に位置する接触規制部を備え、
複数の前記刃先装着部材と複数の前記連結部材とが交互に連結されて有端チェーンの連結体として構成され、
前記連結体の一端側と他端側とを連結する連結機構が装備されている
ことを特徴とする円盤状切断刃の保護具。
【請求項2】
前記連結部材の前記刃先に対向する面は、前記刃先部分への装着時に、前記刃先に当接する
ことを特徴とする請求項
1に記載された円盤状切断刃の保護具。
【請求項3】
前記連結部材は、樹脂製である
ことを特徴とする請求項
1又は2に記載された円盤状切断刃の保護具。
【請求項4】
前記一対の対向面の前記径方向の内側部分は、前記径方向の内側ほど互いに離隔している
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載された円盤状切断刃の保護具。
【請求項5】
少なくとも一部の前記刃先装着部材の前記一対の対向面の一方に、磁石が埋設されている
ことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載された円盤状切断刃の保護具。
【請求項6】
前記連結機構は、前記連結体の一端側及び他端側にそれぞれ形成された係止部と、それぞれの前記係止部に係止される係止部材とを備えている
ことを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載された円盤状切断刃の保護具。
【請求項7】
前記連結体の一端側に形成された前記係止部は、連結方向に並んで複数備えられていることを特徴とする請求項6に記載された円盤状切断刃の保護具。
【請求項8】
前記円盤状切断刃は、両軸で支持されている
ことを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載された円盤状切断刃の保護具。
【請求項9】
前記刃先装着部材の前記一対の対向面は、前記刃先部分への装着時に、前記刃先部分の両面に圧接するように互いの間隔が設定されている
ことを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載された円盤状切断刃の保護具。
【請求項10】
前記刃先装着部材は、樹脂製である
ことを特徴とする請求項1~9の何れか1項に記載された円盤状切断刃の保護具。
【請求項11】
前記刃先装着部材は、前記対向面を備えた一対の装着用板状部と、前記一対の装着用板状部の前記径方向の外側部分を互いに連結する前記接触規制部とを備えている
ことを特徴とする請求項1~10の何れか1項に記載された円盤状切断刃の保護具。
【請求項12】
前記円盤状切断刃は、紙製品を製造する製造ラインに設けられている
ことを特徴とする請求項1~11の何れか1項に記載された円盤状切断刃の保護具。
【請求項13】
請求項1~12の何れか1項に記載された円盤状切断刃の保護具を前記円盤状切断刃の刃先部分に取り付ける、保護具の円盤状切断刃への取付方法であって、
前記円盤状切断刃の刃先部分に、前記対向面で前記刃先部分の両面を挟むようにして複数の前記刃先装着部材を順次装着する刃先装着部材装着工程と、
前記円盤状切断刃の刃先部分の全周にわたって前記刃先装着部材を装着したら、前記連結機構により前記連結体の一端側と他端側とを連結して固定する固定工程と、を備えている
ことを特徴とする保護具の円盤状切断刃への取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円盤状切断刃の刃先を覆って保護する、円盤状切断刃の保護具及びその取付方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ティシュペーパーやトイレットペーパーなどの紙製品をはじめとした様々な製品を製造する際に、円盤状のカッターブレードが用いられる。このような円盤状のカッターブレード等の円盤状切断刃をはじめとし、回転しながら加工する機器では、作業者等が機器の要所(例えば、円盤状切断刃の刃先)に接触しないように、安全カバー等の保護具を装備する場合がある。例えば、特許文献1には、研磨機の刃を覆う安全カバーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、円盤状切断刃が製造ラインに配置される場合、一般に、作動時には円盤状切断刃に作業者が接近することはないが、メンテナンス時等には作業者が停止した円盤状切断刃に接近する場合がある。このため、メンテナンス時等に作業者が円盤状切断刃に接触することがないように円盤状切断刃の刃先等を覆って保護する保護具が必要とされる。
【0005】
そこで、特許文献1に記載された安全カバーの発明を利用することが考えられるが、特許文献1の安全カバーは、研磨機の刃に沿って固定されたもので、研磨機の刃を常時覆うものの、刃の全体ではなく一部のみを覆うものであり、刃が安全カバーで覆われていない部分に作業者が接触するおそれがある。
特に、紙製品の製造ラインに装備される円盤状切断刃の場合、作業者が刃先に触れて出血してしまうと、刃先に血液が付着して適正な紙製品が製造できなくなるので、作業者の円盤状切断刃の刃先への接触を確実に防止できる保護具が必要となる。
【0006】
本件は、このような課題に着目して創案されたもので、メンテナンス時等に円盤状切断刃の必要箇所を覆うように装着可能な円盤状切断刃の保護具及びその取付方法を提供することを目的の一つとする。なお、本目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用および効果であって、従来の技術では得られない作用および効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本件にかかる円盤状切断刃の保護具は、円盤状切断刃の刃先を含む刃先部分に、前記刃先部分の両面にそれぞれ対向するように配置して装着される一対の対向面を備えた刃先装着部材と、隣接する2つの前記刃先装着部材の端部にそれぞれ揺動可能に結合し、当該刃先装着部材を相互に連結する連結部材とを、それぞれ複数備え、前記刃先装着部材及び前記連結部材の何れかに、前記刃先部分への装着時に、前記刃先よりも前記円盤状切断刃の径方向の外側に位置する接触規制部を備え、複数の前記刃先装着部材と複数の前記連結部材とが交互に連結されて有端チェーンの連結体として構成され、前記連結体の一端側と他端側とを連結する連結機構が装備されていることを特徴としている。
【0008】
前記連結部材の前記刃先に対向する面は、前記刃先部分への装着時に、前記刃先に当接することが好ましい。
前記連結部材は、樹脂製であることが好ましい。
前記一対の対向面の前記径方向の内側部分は、前記径方向の内側ほど互いに離隔していることが好ましい。
少なくとも一部の前記刃先装着部材の前記一対の対向面の一方に、磁石が埋設されていることが好ましい。
前記連結機構は、前記連結体の一端側及び他端側にそれぞれ形成された係止部と、それぞれの前記係止部に係止される係止部材とを備えていることが好ましい。
前記連結体の一端側に形成された前記係止部は、連結方向に並んで複数備えられていることが好ましい。
前記円盤状切断刃は、両軸で支持されていることが好ましい。
前記刃先装着部材の前記一対の対向面は、前記刃先部分への装着時に、前記刃先部分の両面に圧接するように互いの間隔が設定されていることが好ましい。
前記刃先装着部材は、樹脂製であることが好ましい。
前記刃先装着部材は、前記対向面を備えた一対の装着用板状部と、前記一対の装着用板状部の前記径方向の外側部分を互いに連結する前記接触規制部とを備えていることが好ましい。
前記円盤状切断刃は、紙製品を製造する製造ラインに設けられていることが好ましい。
【0009】
本件にかかる保護具の円盤状切断刃への取付方法は、上記の円盤状切断刃の保護具を前記円盤状切断刃の刃先部分に取り付ける、保護具の円盤状切断刃への取付方法であって、前記円盤状切断刃の刃先部分に、前記対向面で前記刃先部分の両面を挟むようにして複数の前記刃先装着部材を順次装着する刃先装着部材装着工程と、前記円盤状切断刃の刃先部分の全周にわたって前記刃先装着部材を装着したら、前記連結機構により前記チェーンの一端側と他端側とを連結して固定する固定工程と、を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本件によれば、円盤状切断刃の停止時に、円盤状切断刃の刃先部分に対向面が刃先部分の両面に対応するように配置して刃先装着部材をそれぞれ装着して、連結機構により連結体の一端側と他端側とを連結することで、保護具を円盤状切断刃の刃先部分の全周にわたって取り付けることができ、作業者等の円盤状切断刃の刃先への接触を確実に防止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係る円盤状切断刃の保護具を円盤状切断刃に装着した状態で示す斜視図である。
【
図2】一実施形態に係る円盤状切断刃の保護具の連結体を直線状に引き延ばした状態で示す要部側面図である。
【
図3】一実施形態に係る円盤状切断刃の保護具の一つの刃先装着部材及びその両端部の連結部材を示す斜視図である。
【
図4】一実施形態に係る円盤状切断刃の保護具の連結体の要部縦断面図(
図2のA-A矢視断面)である。
【
図5】一実施形態に係る円盤状切断刃の保護具の連結体の一端側及び他端側の係止部(ピン穴,ピン係止用スリット)及び係止部材(係止ピン)を示す図であり、(a)は連結前の状態を示す側面図、(b)は連結後の状態を示す側面図、(c)は連結直前の状態を示す斜視図、(d)は連結後の状態を示す断面図(
図5(b)のB-B矢視断面)である。
【
図6】一実施形態に係る円盤状切断刃の保護具の連結体の変形例を示す図であり、
図5(b)と対応し、連結後の状態を示す側面図である。
【
図7】一実施形態に係る円盤状切断刃の保護具の連結体の一端側及び他端側の係止部(ピン係止用スリット)の変形例を示す図であり、(a)は第1変形例を示し、(b)は第2変形例を示し、(c)は第3変形例を示し、(d)は第4変形例を示し、(e)は第5変形例を示し、(f)は第5変形例における係止部材(係止ピン)の係止操作を示す。
【
図8】一実施形態に係る円盤状切断刃の保護具の装着工程を(a)~(c)の順に示す円盤状切断刃の斜視図である。
【
図9】一実施形態に係る円盤状切断刃による切断状態を示す斜視図である。
【
図10】一実施形態の変形例に係る円盤状切断刃の保護具の連結体の要部縦断面図(
図3のA-A矢視断に相当する面)である。
【
図11】一実施形態の変形例に係る円盤状切断刃の保護具の連結体の要部斜視図(
図3に相当する面)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、一実施形態としての円盤状切断刃の保護具を説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0013】
〔円盤状切断刃〕
まず、保護具の装着対象である円盤状切断刃を説明する。
本実施形態では、
図9に示すように、ティシュペーパーやトイレットペーパーなどの紙製品を製造する際に、製造途中の長尺な製品材料1を製品長さに応じて切断する円盤状のカッターブレード10を、円盤状切断刃の一例として挙げて説明する。なお、円盤状切断刃は、刃先がナイフ状のものであってもよく、鋸刃状のものであってもよい。
【0014】
カッターブレード10は、回転軸12を図示しない支持体によって両軸で支持され、矢印Aで示すように回転中心CLの周りに回転しながら、矢印Bで示すように移動して製品材料1内に進入していき製品材料1を切断する。
カッターブレード10の作動中には、カッターブレード10に作業者が接近することはないが、メンテナンス時等には作業者が停止したカッターブレード10に接近する場合がある。このため、カッターブレード10の刃先等を覆って保護する保護具が必要となる。
【0015】
〔保護具の構成〕
本実施形態に係る保護具20は、
図1,
図2に示すように、複数の刃先装着部材30と複数の連結部材40とが交互に連結されて有端チェーンの連結体50として構成される。刃先装着部材30及び連結部材40には、保護具20をカッターブレード10の刃先部分(刃先110及び刃先110に隣接する両面部を含む部分)11に装着したときに、刃先110よりもカッターブレード10の径方向の外側に位置する接触規制部21,22が備えられる。また、保護具20は、連結体50の一端側と他端側とを連結する連結機構60を備えている。なお、本実施形態では、刃先装着部材30及び連結部材40は、何れも樹脂製である。
【0016】
刃先装着部材30は、
図3,
図4に示すように、正面視でほぼ矩形の一対のプレート片(装着用板状部)31,31から構成される。各プレート片31は、正面視がほぼ矩形であり、角部が正面視で曲線状に形成された板状片である。各プレート片31は、略長方形の形状に形成される。ここでは、各プレート片31の長辺が延びる方向(長手方向)をab方向とし、短辺が延びる方向(短手方向)をcd方向として説明する。
【0017】
各プレート片31の短手方向(cd方向)の一縁側(
図3,
図4中で下縁側、即ちc方向の側)からカッターブレード10の刃先部分11に装着される。各プレート片31の短辺方向(cd方向)の他縁側(
図3,
図4中で上縁側、即ちd方向の側)の両端縁部(a方向の角部及びb方向の角部)には、ピン穴33が形成されている。一対のプレート片31は、連結部材40を挟んで、ピン71で連結される。ピン71の軸心は、刃先装着部材30及び連結部材40の板厚方向に沿って配置されている。
【0018】
刃先装着部材30の一対のプレート片31は、それぞれ、刃先部分11の各面111,111に対向するように配置して装着される対向面32を備えている。一対の対向面32,32自体も互いに対向し、一対の対向面32,32の一縁側の部分(カッターブレード10の径方向の内側部分)は、径方向の内側ほど互いに離隔するように形成されている。即ち、対向面32,32の一縁側の部分は、カッターブレード10の刃先部分11に装着される開口側に向けて互いに間隔が広がっている。
【0019】
また、少なくとも一部の刃先装着部材30の一対の対向面32,32の一方には、磁石80が埋設されている。なお、
図4では磁石80にハッチングを付けて示している。刃先装着部材30の全てにおいて、一対の対向面32の一方に磁石80を埋設してもよいが、直列状に並んで配置される複数の刃先装着部材30に対して、例えば刃先装着部材30の一つ置きに磁石80を埋設するなど、断続的に磁石80を埋設してもよい。磁石80を埋設するのは、各刃先装着部材30において、一対の対向面32の一方(同一の側)が好ましいが、一対の対向面32の何れかであればどちら側であってもよく、もちろん、一対の対向面32の両側にそれぞれ磁石80を埋設してもよい。
【0020】
連結部材40は、
図2~
図4に示すように、隣接する2つの刃先装着部材30の他縁側(上縁側)の両端縁部(角部)を相互に連結する。連結部材40は、細長い棒状のプレートであり、連結部材40の両端部には、ピン穴43が形成される。各ピン穴43と、これに対応する刃先装着部材30の両プレート片31のピン穴33とに、ピン71が挿通されて互いにピン結合され、隣接する2つの刃先装着部材30を連結する。これにより、各ピン71において、先装着部材30及び連結部材40がフレキシブルに連結された有端チェーンの連結体50が構成される。
【0021】
図4に示すように、刃先装着部材30の一対の対向面32と、連結部材40の刃先110に対向する面42とによって、刃先部分11が進入する凹所23が形成される。刃先装着部材30の一対の対向面32の互いの間隔は、凹所23内に進入した刃先部分11が凹所23内において厚み方向に余裕がある大きさに設定されている。これにより、連結部材22の刃先110に対向する面42は、刃先部分11への装着時に、刃先110に当接するようになっている。
【0022】
こうして、連結体50を刃先部分11へ装着すると、刃先装着部材30の他縁側の縁部及び連結部材40が、刃先110よりもカッターブレード10の径方向外側に位置して、外方から刃先110への接触を規制する接触規制部21,22として機能する。なお、接触規制部21として機能する刃先装着部材30の一対のプレート片31の相互のうち、連結部材40が存在しない部分には、
図3に示すように隙間Gが存在するが、この隙間Gは作業者が指を差し込めない程度の大きさに設定されている。
【0023】
連結機構60は、
図5(a)~(d)に示すように、連結体50の一端側に位置する刃先装着部材30(他の刃先装着部材30と区別するために符号30Aで示す)の一対のプレート片31Aのそれぞれに形成された係止部としてのピン係止用スリット61と、連結体50の他端側に位置する連結部材40Aに形成された係止部としてのピン穴62と、ピン穴61に固定された係止部材としての係止ピン63とを備えている。ピン穴62は、
連結体50の長手方向に並んで複数(ここでは、3個)設けられている。
【0024】
ピン係止用スリット61は、刃先部分11への装着時にカッターブレード10の回転中心側となる刃先装着部材30Aの一縁側(c方向側)から他縁側(d方向側)に向けて延びるように形成され、該一縁側に開口している。このようなピン係止用スリット61は、連結体50の長手方向(即ち、プレート片31の長手方向であるab方向)に並んで複数(ここでは、3本)形成される。連結部材40Aの何れかのピン穴62に固定された係止ピン63を、複数のピン係止用スリット61の一つに嵌入させることで、連結部材40Aと刃先装着部材30Aとを互いに係止することができる。なお、
図5では、係止ピン63の固定されたピン穴62を他のピン穴と区別するため黒色で記載している。
【0025】
なお、本実施形態では、
図5(a)~(c)に示すように、ピン係止用スリット61を備えた刃先装着部材30Aを、連結体50の最も一端側に位置する1つの刃先装着部材30のみとしているが、
図6に示すように、連結体50の一端側に位置する連続する複数の刃先装着部材30を、ピン係止用スリット61を備えた刃先装着部材30Aとしてもよい。
【0026】
また、本実施形態のピン係止用スリット61は、
図5(a)~(c)に示すように、略長方形の刃先装着部材30Aの短手方向と平行に延びる直線状に形成されているが、ピン係止用スリット61には、様々な形状や配置のものを採用しうる。例えば、係止ピン63の離脱防止を考慮して、
図7(a)~(e)に示すプレート片31A1~31A5のように、形状や配向を工夫したピン係止用スリット61A~61Eを採用してもよい。
【0027】
図7(a)に示すように、プレート片31A1のピン係止用スリット61Aは、スリットの奥部の係止ピン63が挿入される部位に、連結部材40Aの位置する方向(a方向、連結体50の他端側の位置する方向)に向けて窪んだ凹部64が形成されている。凹部64内に係止された係止ピン63がピン係止用スリット61Aから離脱するには、係止ピン63にb方向の力が作用するか、ピン係止用スリット61Aを有する刃先装着部材30Aにa方向の力が作用することが必要となり、係止ピン63がピン係止用スリット61Aから離脱し難くなっている。
【0028】
また、
図7(b)に示すように、プレート片31A2のピン係止用スリット61Bは、短辺方向(cd方向)の中間部からスリットの奥(d方向)に行くほど連結部材40Aの位置する方向(a方向)に向かうように、短辺方向(cd方向)に対して傾斜した第1傾斜部65aと、短辺方向(cd方向)の中間部からスリットの開口側に行くほど連結部材40Aの位置する方向(a方向)に向かうように、短辺方向(cd方向)に対して傾斜した第2傾斜部65aとからなるL字状に形成されている。
【0029】
第2傾斜部65bによりスリットの開口が係止ピン63を有する連結部材40Aの位置する側に傾斜しているので、ピン係止用スリット61B内への係止ピン63の進入が容易に行えるようになっている。また、ピン係止用スリット61Bの奥部に係合している場合には、第1傾斜部65aにより開口側が係止ピン63を有する連結部材40Aの位置する側とは逆に傾斜しているので、凹部66内に係止された係止ピン63が、凹部66内或いはピン係止用スリット61B内から離脱し難くなっている。
【0030】
さらに、
図7(c)に示すように、プレート片31A3のピン係止用スリット61Cは、スリットの開口側(c方向)から奥部側(d方向)に行くほど連結部材40Aの位置する方向(a方向)に向かうようにcd方向に対して傾斜した方向に形成され、スリットの奥部に、連結部材40Aの位置する方向(a方向)に向けて窪んだ凹部66が形成されている。したがって、凹部66及びピン係止用スリット61Cの配向により、凹部66内に係止された係止ピン63が、凹部66内或いはピン係止用スリット61C内から離脱し難くなっている。
【0031】
図7(d)に示すように、プレート片31A4のピン係止用スリット61Dは、スリット61Dの幅Wがスリット61Dの開口側(c方向)から奥部側(d方向)に行くにしたがって徐々に狭められている。したがって、係止ピン63をピン係止用スリット61Dの奥部に差し込むことにより、係止ピン63をピン係止用スリット61Dの互いに対向する壁部間に嵌合させることができ、これにより、係止ピン63がピン係止用スリット61Dから離脱し難くなる。
【0032】
図7(e)に示すように、プレート片31A5は、複数のピン係止用スリット61E(各ピン係止用スリット61Eを区別する場合、符号61E1~61E4で示す)のうち、隣り合うスリット61Eの間隔が開口側(c方向)から奥部側(d方向)に行くにしたがって徐々に減少している。また、連結部材40Aの複数のピン穴62には同時に複数(ここでは、2つ)の係止ピン63が固定されている。そして、隣り合うスリット61Eのそれぞれに、係止ピン63を係止させる。
【0033】
この例では、プレート片31A5は、4本のピン係止用スリット61E1~61E4を備え、何れのピン係止用スリット61E1~61E4も、同一又は左右対称形状であって、スリット幅Wは係止ピン63の外径よりも大きく開口側(c方向)から奥部側(d方向)に向けて一定幅である。また、ピン係止用スリット61E1,61E3は、開口側(c方向)から奥部側(d方向)に行くにしたがって連結部材40Aの位置する方向(a方向、連結体50の他端側の位置する方向)に向けて傾斜し、ピン係止用スリット61E2,61E4は、開口側(c方向)から奥部側(d方向)に行くにしたがって連結部材40Aの位置するのとは逆方向(b方向)に向けて傾斜している。
【0034】
したがって、隣り合うピン係止用スリット61E1,61E2も、隣り合うピン係止用スリット61E3,61E4も、開口側(c方向)から奥部側(d方向)に行くにしたがって間隔が徐々に小さくなっている。隣り合うピン係止用スリット61E1,61E2のそれぞれの互いに離隔する方の一対の内壁、或いは、隣り合うピン係止用スリット61E3,61E3のそれぞれの互いに離隔し互いに対向する一対の内壁が、係止ピン63を係止する係止壁面となっている。これらの一対の係止壁面61の間隔Sは、開口側(c方向)から奥部側(d方向)に行くにしたがって間隔が徐々に小さくなっている。
【0035】
連結部材40Aに固定された2つの係止ピン63は一定の距離D(中心距離)だけ離隔しているので、
図7(e)に示すように、2つの係止ピン63が、ピン係止用スリット61E1,61E2(又は、61E3,61E4)の開口側(c方向)から奥部側(d方向)に進んで、一対の係止壁面61Ew1,61Ew2(又は、61Ew3,61Ew4)の間隔Sが、距離Dと係止ピン63の直径ddの和(=D+d)と一致した箇所に到達すると、一対の係止壁面61Ew1,61Ew2(又は、61Ew3,61Ew4)に圧接して係止される。こうして2つの係止ピン63を係止させると、第4変形例と同様に係止ピン63がピン係止用スリット61E,61Eから離脱し難くなる。
【0036】
〔作用及び効果〕
本実施形態に係る保護具20は、上述のように構成されているので、例えば、
図8(a)~(c)に示すように、刃先装着部材装着工程及び固定工程を順次行って、保護具20をカッターブレード10の刃先部分11に取り付けることができる。
【0037】
まず、刃先部分に、カッターブレード10の刃先部分11の両面を挟むようにして複数の刃先装着部材30を順次装着する刃先装着部材装着工程を実施する。
つまり、刃先装着部材装着工程の第1工程として、
図8(a)に示すように、連結体50の一端側に位置する刃先装着部材30Aをカッターブレード10の刃先部分11に装着する。
【0038】
このとき、刃先装着部材30A或いはこの刃先装着部材30Aの近くの刃先装着部材30の対向面32に埋設された磁石80がカッターブレード10の刃先部分11に磁気的に吸引されるので、連結体50の一端側をカッターブレード10の刃先部分11に容易に係止させることができる。また、一対の対向面32,32の一縁側の部分は、カッターブレード10の刃先部分11に装着される開口側に向けて互いに間隔が広がっているので、刃先装着部材30,30Aを刃先部分11に極めて簡単に装着できる。
【0039】
その後、刃先装着部材装着工程の第2工程として、刃先装着部材30をカッターブレード10の刃先部分11に順次装着して、
図8(b)に矢印で示すようにカッターブレード10を微速で回転させながら、連結体50を刃先部分11に巻き付けていく。このとき、より安全に作業を行うには、カッターブレード10を作動させる電源切って、手動でカッターブレード10の軸部分を回しながらの作業が好ましい。もちろん、安全性を考慮しつつ、カッターブレード10を電動で微速回転させながら作業することも考えられる。連結体50はフレキシブルなので、上記作業により連結体50を刃先部分11に容易に巻き付けることができる。この巻き付け途中にも、要所の刃先装着部材30の対向面32に埋設された磁石80がカッターブレード10の刃先部分11に磁気的に吸引されるので、連結体50を刃先部分11から離脱させることなく容易に巻き付けていくことができる。
【0040】
そして、刃先部分11の全周にわたって刃先装着部材30を装着したら、連結機構60により連結体50の一端側と他端側とを連結して固定する固定工程を実施する。
つまり、
図8(c)に示すように、連結体50の他端側まで刃先装着部材30を刃先部分11に巻き付けることで、連結体50を刃先部分11の全周に巻き付けたら、複数のピン係止用スリット61の中から最適なもの(つまり、嵌入可能で且つ連結体50の遊びが最も少なくなるスリット61)に、連結部材40Aのピン穴62に固定された係止ピン63を、複数のピン係止用スリット61の一つに嵌入させて装着を完了する。
【0041】
このようにして、本保護具20によれば、連結体50をカッターブレード10の刃先部分11の全周にわたって容易に取り付けることができ、メンテナンス時等において作業者等のカッターブレード10の刃先110への接触を確実に防止できるようになる。また、連結体50をカッターブレード10の刃先110の外側から刃先部分11に巻き付けて装着するので、本実施形態のカッターブレード10のように両軸支持されていても、支持部分と干渉することなく保護具20を取り付けることができる。
【0042】
また、連結体50の刃先部分11への装着時に、連結部材40の刃先部分11に対向する面42は、刃先110に当接する(或いは、当接に近い状態に接近する)ので、カッターブレード10の刃先110への接触をより確実に防止できる。
【0043】
また、連結部材40は樹脂製なので、刃先110に当接しても刃先110を傷付け難い。
刃先装着部材30も樹脂製なので、連結体50を刃先部分11へ装着する際に、刃先110に接触しても刃先110を傷付け難い。ただし、連結部材40や刃先装着部材30の材料は樹脂に限定されるものではない。
【0044】
連結機構60は、刃先装着部材30の一部を変更した刃先装着部材30Aと、連結部材40の一部を変更した結部材40Aと、係止ピン63とからなるシンプルな構成なので、扱いやすい。
連結機構60は、複数のピン係止用スリット61を選択的に利用するので、径の異なるカッターブレード10に対して1つの保護具を適正に装着することができる。
【0045】
また、
図7(a)~(c)に示すプレート片31A1~31A3のように、ピン係止用スリット61A~61Cの少なくとも係止ピン63が係止されるスリット奥部を、開口側が連結部材40Aの位置する方向(a方向)と逆向きになるように配向することで、ピン係止用スリット61A~61Cの奥部に係止した係止ピン63がピン係止用スリット61Aから離脱し難くなる効果が得られる。
【0046】
また、
図7(b)に示すプレート片31A2のピン係止用スリット61Bの第2傾斜部65bのように、スリットの開口側を、係止ピン63を有する連結部材40Aの位置する側に傾斜させることで、ピン係止用スリット61B内への係止ピン63の進入が容易に行えるようになる。
【0047】
また、
図7(d)に示すプレート片31A4のピン係止用スリット61Dのように、スリット61Dの幅Wがスリット61Dの開口側(c方向)から奥部側(d方向)に行くにしたがって徐々に狭められている場合、係止ピン63をピン係止用スリット61Dの互いに対向する壁部間に嵌合させることができ、係止ピン63がピン係止用スリット61Dから離脱し難くなる効果が得られる。
【0048】
また、
図7(e)に示すプレート片31A5のように、隣り合うスリット61Eの間隔Sが開口側(c方向)から奥部側(d方向)に行くにしたがって徐々に減少していて、これらのスリット61Eに連結部材40Aに固定された2つの係止ピン63同時に係止させるようにしても、2つの係止ピン63,63を一組のピン係止用スリット61E,61Eの互いに対向する壁部間に嵌合させることができ、係止ピン63が各ピン係止用スリット61Eから離脱し難くなる効果が得られる。
【0049】
なお、
図7(e)に示す例では、2本の係止ピン63を同時に係止させているが、2本よりも多くのピン係止用スリット61Eにそれぞれ係止ピン63を同時に係止させてもよい。また、隣接するピン係止用スリット61Eに限らず、離隔したピン係止用スリット61Eにおいて、互いに対向する壁部の間隔Sが開口側(c方向)から奥部側(d方向)に行くにしたがって徐々に減少している複数のピン係止用スリット61Eに対してそれぞれ係止ピン63を同時に係止させても、同様の作用及び効果を得ることができる。
【0050】
〔その他〕
本発明は、上述した実施形態や随所に述べた変形例等に限られることなく、本発明の技術的思想から逸脱しない範囲で、適宜の変更や変形が可能である。
【0051】
例えば、上記実施形態では、先装着部材30の一対の対向面32の互いの間隔は、凹所23内に進入した刃先部分11が凹所23内において厚み方向に余裕がある大きさに設定されているので、種々の刃先形状(刃先110の角度等)の切断刃に適用できるが、
図10に示すように、凹所23内に進入した刃先部分11の両面が一対の対向面32を微小に弾性変形させつつ圧接するように一対の対向面32の間隔を設定してもよい。
この場合、それぞれの刃先装着部材30について、一対の対向面32を刃先部分11の両面に圧接させて係止させながら順次装着することができ、装着性が向上する。また、磁石を省略することも考えられる。
【0052】
また、上記実施形態では、一対のプレート片31の径方向の外側の接触規制部21として機能する部分の相互の連結部材40が存在しない部分には隙間G(
図3参照)が存在するが、
図11に示すようにこの隙間Gに、一対のプレート片31を互いに連結する接触規制部21Aを設けてもよい。これにより、作業者が誤って指を差し込むようなことをより確実に防ぐことができる。
【0053】
また、上記実施形態では、連結体50の一端側に位置する1つの刃先装着部材30のみを、ピン係止用スリット61を有する刃先装着部材30Aとしているが、連結体50の一端側に位置する複数の刃先装着部材30を、ピン係止用スリット61を有する刃先装着部材30Aとすれば、より径の異なる円盤状切断刃に対して1つの保護具を適正に装着することができ、汎用性が向上する。
【0054】
もちろん、ピン係止用スリット61のサイズや数を変更して、より精度よく径の異なる円盤状切断刃に対応D切るようにすることもできる。
また、ピン係止用スリット61には、
図7(a)~(e)に示すように様々な形状や形状の組み合わせが考えられるが、
図7(a)~(e)に示す例に限らず、様々な形状や形状の組み合わせを適用することができる。
【0055】
また、保護具の円盤状切断刃への取付方法の一例として、
図8を参照して、連結体50の一端側に位置する刃先装着部材30Aをはじめにカッターブレード10の刃先部分11に装着する方法を説明したが、連結体50の他端側に位置する連結部材40Aが連結された刃先装着部材30をはじめにカッターブレード10の刃先部分11に装着して連結体50の巻き付けを開始してもよい。
更に、本保護具の適用は、紙製品の円盤状切断刃に限るものではなく、ナイフ状の刃先や鋸刃を有する種々の円盤状切断刃に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 製品材料
10 カッターブレード(円盤状切断刃)
11 カッターブレード10の刃先部分
110 カッターブレード10の刃先
12 カッターブレード10の回転軸
20 保護具
21,21A,22 接触規制部
23 凹所
30,30A 刃先装着部材
31,31A,31A1,61A2,61A3 プレート片(装着用板状部)
32 対向面
33,43 ピン穴
40,40A 連結部材
42 連結部材40の刃先110に対向する面
50 連結体(有端チェーン)
60 連結機構
61,61A,61B,61C,61D,61E ピン係止用スリット
62 ピン穴
63 係止ピン
64,66 凹部
65a 第1傾斜部
65b 第2傾斜部 71 ピン
80 磁石
CL カッターブレード10の回転中心
D 2つの係止ピン63は一定の距離
S 隣り合うスリット61Eの間隔
W スリット61Dの幅