(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】ペダル装置
(51)【国際特許分類】
G05G 1/405 20080401AFI20240611BHJP
G05G 1/30 20080401ALI20240611BHJP
G05G 1/38 20080401ALI20240611BHJP
B60T 7/06 20060101ALI20240611BHJP
B60K 26/02 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G05G1/405
G05G1/30 E
G05G1/38
B60T7/06 A
B60K26/02
(21)【出願番号】P 2020148869
(22)【出願日】2020-09-04
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木野内 惣一
(72)【発明者】
【氏名】北 卓人
(72)【発明者】
【氏名】木村 純
(72)【発明者】
【氏名】針生 鉄男
(72)【発明者】
【氏名】吉田 優介
(72)【発明者】
【氏名】柳田 悦豪
(72)【発明者】
【氏名】北斗 大輔
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 豪宏
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-502042(JP,A)
【文献】特開2016-168972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05G 1/405
G05G 1/30
G05G 1/38
B60T 7/06
B60K 26/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(70)に搭載されるペダル装置であって、
乗員(72)に踏込み操作され、該踏込み操作の操作量(Qbr)が電気信号として伝達されるブレーキペダル(22)と、
前記乗員に踏込み操作され、該踏込み操作の操作量(Qac)が電気信号として伝達されるアクセルペダル(21)と、
前記ブレーキペダルと前記アクセルペダルとがそれぞれ連結し、該ブレーキペダルと該アクセルペダルとを前記乗員の踏込み操作に対し揺動可能に支持する支持体(23、42)と、
前記ブレーキペダルと前記アクセルペダルと前記支持体とを含んで構成されたペダルユニット(20)の位置または姿勢を調整する調整装置(30)とを備え
、
前記調整装置が行う前記ペダルユニットの位置または姿勢の調整には、前記車両の左右方向(D3)に沿った方向視における前記ペダルユニットの傾きを調整することが含まれる、ペダル装置。
【請求項2】
前記調整装置が行う前記ペダルユニットの位置または姿勢の調整には、前記車両の前後方向(D1)へ前記ペダルユニットの位置を調整することが含まれる、請求項1に記載のペダル装置。
【請求項3】
前記調整装置が行う前記ペダルユニットの位置または姿勢の調整には、前記車両の左右方向(D3)へ前記ペダルユニットの位置を調整することが含まれる、請求項1
または2に記載のペダル装置。
【請求項4】
前記調整装置が行う前記ペダルユニットの位置または姿勢の調整には、前記車両の上下方向(D2)へ前記ペダルユニットの位置を調整することが含まれる、請求項1ないし
3のいずれか1つに記載のペダル装置。
【請求項5】
車両(70)に搭載されるペダル装置であって、
乗員(72)に踏込み操作され、該踏込み操作の操作量(Qbr)が電気信号として伝達されるブレーキペダル(22)と、
前記乗員に踏込み操作され、該踏込み操作の操作量(Qac)が電気信号として伝達されるアクセルペダル(21)と、
前記ブレーキペダルと前記アクセルペダルとがそれぞれ連結し、該ブレーキペダルと該アクセルペダルとを前記乗員の踏込み操作に対し揺動可能に支持する支持体(23、42)と、
前記ブレーキペダルと前記アクセルペダルと前記支持体とを含んで構成されたペダルユニット(20)の位置または姿勢を調整する調整装置(30)とを備え
、
前記調整装置は、前記車両の前後方向(D1)における前記ペダルユニットの位置であるユニット前後位置と前記車両の左右方向(D3)に沿った方向視における前記ペダルユニットの傾きとの予め定められた関係に従って、前記ペダルユニットの傾きを前記ユニット前後位置に応じて定める、ペダル装置。
【請求項6】
前記アクセルペダルは、該アクセルペダルに対する前記乗員の踏込み操作の際に該乗員に踏まれるアクセルパッド面(21a)を有し、
前記アクセルパッド面は、前記アクセルペダルに対する前記踏込み操作が為されていないアクセル非踏込み操作時には前記車両での後側且つ斜め上側を向き、
前記調整装置は、前記ペダルユニットを前記車両での前側へ移動させるほど、前記アクセル非踏込み操作時の前記アクセルパッド面の向きを、前記車両の前後方向を法線方向とした平面(PL1)の向きに近づけるように、前記ペダルユニットの姿勢を変化させる、請求項
5に記載のペダル装置。
【請求項7】
前記ブレーキペダルは、該ブレーキペダルに対する前記乗員の踏込み操作の際に該乗員に踏まれるブレーキパッド面(22a)を有し、
前記ブレーキパッド面は、前記ブレーキペダルに対する前記踏込み操作が為されていないブレーキ非踏込み操作時には前記車両での後側且つ斜め上側を向き、
前記調整装置は、前記ペダルユニットを前記車両での前側へ移動させるほど、前記ブレーキ非踏込み操作時の前記ブレーキパッド面の向きを、前記車両の前後方向を法線方向とした平面(PL1)の向きに近づけるように、前記ペダルユニットの姿勢を変化させる、請求項
5に記載のペダル装置。
【請求項8】
車両(70)に搭載されるペダル装置であって、
乗員(72)に踏込み操作され、該踏込み操作の操作量(Qbr)が電気信号として伝達されるブレーキペダル(22)と、
前記乗員に踏込み操作され、該踏込み操作の操作量(Qac)が電気信号として伝達されるアクセルペダル(21)と、
前記ブレーキペダルと前記アクセルペダルとがそれぞれ連結し、該ブレーキペダルと該アクセルペダルとを前記乗員の踏込み操作に対し揺動可能に支持する支持体(23、42)と、
前記ブレーキペダルと前記アクセルペダルと前記支持体とを含んで構成されたペダルユニット(20)の位置または姿勢を調整する調整装置(30)とを備え
、
前記アクセルペダルは、該アクセルペダルに対する前記乗員の踏込み操作の際に該乗員に踏まれるアクセルパッド面(21a)を有し、
前記アクセルパッド面は、前記アクセルペダルに対する前記踏込み操作が為されていないアクセル非踏込み操作時には前記車両での後側且つ斜め上側を向き、
前記調整装置は、前記ペダルユニットを前記車両での前側へ移動させるほど、前記アクセル非踏込み操作時の前記アクセルパッド面の向きを、前記車両の前後方向を法線方向とした平面(PL1)の向きに近づけるように、前記ペダルユニットの姿勢を変化させる、ペダル装置。
【請求項9】
車両(70)に搭載されるペダル装置であって、
乗員(72)に踏込み操作され、該踏込み操作の操作量(Qbr)が電気信号として伝達されるブレーキペダル(22)と、
前記乗員に踏込み操作され、該踏込み操作の操作量(Qac)が電気信号として伝達されるアクセルペダル(21)と、
前記ブレーキペダルと前記アクセルペダルとがそれぞれ連結し、該ブレーキペダルと該アクセルペダルとを前記乗員の踏込み操作に対し揺動可能に支持する支持体(23、42)と、
前記ブレーキペダルと前記アクセルペダルと前記支持体とを含んで構成されたペダルユニット(20)の位置または姿勢を調整する調整装置(30)とを備え
、
前記ブレーキペダルは、該ブレーキペダルに対する前記乗員の踏込み操作の際に該乗員に踏まれるブレーキパッド面(22a)を有し、
前記ブレーキパッド面は、前記ブレーキペダルに対する前記踏込み操作が為されていないブレーキ非踏込み操作時には前記車両での後側且つ斜め上側を向き、
前記調整装置は、前記ペダルユニットを前記車両での前側へ移動させるほど、前記ブレーキ非踏込み操作時の前記ブレーキパッド面の向きを、前記車両の前後方向を法線方向とした平面(PL1)の向きに近づけるように、前記ペダルユニットの姿勢を変化させる、ペダル装置。
【請求項10】
前記調整装置は、前記ペダルユニットを前記車両の前後方向に移動させながら前記ペダルユニットの傾きを変化させる1つのアクチュエータ(34)を有している、請求項
5ないし
9のいずれか1つに記載のペダル装置。
【請求項11】
前記調整装置を制御する制御部(12)を備え、
前記車両には、該車両の自動運転を行うことが可能な自動運転制御装置(82)が設けられ、
前記自動運転とは、前記車両の加速と操舵と制動とを前記自動運転制御装置が行う車両運転であって、少なくとも前記自動運転の実施中には前記乗員による監視が不要とされるものであり、
前記制御部は、前記自動運転が開始される場合には、前記車両の前後方向における前記ペダルユニットの可動域のうち前側寄りの所定位置または最も前側の位置へ前記ペダルユニットを前記調整装置により移動させる、請求項
5ないし10のいずれか1つに記載のペダル装置。
【請求項12】
前記調整装置を制御する制御部(12)を備え、
前記制御部は、前記ペダルユニットの位置または姿勢の目標を目標設置状態として予め複数記憶し、複数のうちから選択された前記目標設置状態に前記ペダルユニットの位置または姿勢がなるように、前記調整装置に前記ペダルユニットの位置または姿勢を調整させる、請求項1ないし10のいずれか1つに記載のペダル装置。
【請求項13】
前記調整装置を制御する制御部(12)を備え、
前記制御部は、前記乗員の体格をセンシング機器(81)にセンシングさせ、該センシングで得られた情報に基づいて、前記調整装置に前記ペダルユニットの位置または姿勢を調整させる、請求項1ないし10のいずれか1つに記載のペダル装置。
【請求項14】
前記ブレーキペダルと前記アクセルペダルはオルガン式のペダルである、請求項1ないし13のいずれか1つに記載のペダル装置。
【請求項15】
前記ペダルユニットに含まれ、前記ブレーキペダルに対し前記車両での左側に配置され、前記支持体に固定されたフットレスト(29)を備えている、請求項1ないし14のいずれか1つに記載のペダル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるペダル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、運転姿勢調整装置が記載されている。その運転姿勢調整装置はペダル位置調整手段を備えており、そのペダル位置調整手段は、乗員の脚部によって操作されるアクセルペダルとブレーキペダルとのそれぞれの操作角度を調整する。
【0003】
また、アクセルペダルとブレーキペダルはそれぞれ、ダッシュロアパネルに固定されたブラケットに対し吊り下がるように連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、ブレーキペダルがマスタシリンダに機械的に連結された車両が多く見受けられる。そのような車両において、例えば特許文献1に示されたようにアクセルペダルとブレーキペダルとの位置調整を行おうとした場合、その位置調整は、マスタシリンダなどブレーキペダルに機械的に連結した部材等によって大幅な制約を受けることになる。発明者らの詳細な検討の結果、以上のようなことが見出された。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、ブレーキペダルとアクセルペダルとを含むペダルユニットの位置または姿勢の調整幅を容易に拡大することが可能なペダル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載のペダル装置は、
車両(70)に搭載されるペダル装置であって、
乗員(72)に踏込み操作され、その踏込み操作の操作量(Qbr)が電気信号として伝達されるブレーキペダル(22)と、
乗員に踏込み操作され、その踏込み操作の操作量(Qac)が電気信号として伝達されるアクセルペダル(21)と、
ブレーキペダルとアクセルペダルとがそれぞれ連結し、そのブレーキペダルとそのアクセルペダルとを乗員の踏込み操作に対し揺動可能に支持する支持体(23、42)と、
ブレーキペダルとアクセルペダルと支持体とを含んで構成されたペダルユニット(20)の位置または姿勢を調整する調整装置(30)とを備え、
調整装置が行うペダルユニットの位置または姿勢の調整には、車両の左右方向(D3)に沿った方向視におけるペダルユニットの傾きを調整することが含まれる。
【0008】
このようにすれば、例えばブレーキペダルの操作量がマスタシリンダへ機械的に伝達される構成と比較して、ペダルユニットの位置または姿勢の変化に対する機械的な制約が少ない。従って、ペダルユニットの位置または姿勢の調整幅を容易に拡大することが可能である。
【0009】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態において、ペダル装置が搭載される車両のうちの前側部分を抜粋して模式的に示した図である。
【
図2】第1実施形態において、ペダル装置が有するペダルユニットと調整装置とを車両上側から車両下側へ向かう方向視で模式的に示した上面図である。
【
図3】第1実施形態において、ペダルユニットを抜粋して示した斜視図である。
【
図4】第1実施形態において、車両に搭載されたアクセルバイワイヤシステムとブレーキバイワイヤシステムとの概略構成を模式的に示したブロック図と共に、ペダルユニットの概略構成を模式的に示した図である。
【
図5】第1実施形態の調整装置の制御に関するブロック図である。
【
図8】
図2のVIII-VIII断面を示した断面図である。
【
図9】
図8と同じ断面における断面図であって、
図8に示されたペダルユニットの位置に対しペダルユニットが車両前側へ移動させられた状態を示した図である。
【
図10】第1実施形態の制御部が行う制御処理を示したフローチャートである。
【
図11】第2実施形態において、ペダル装置が有するペダルユニットと調整装置とを車両上側から車両下側へ向かう方向視で模式的に示した上面図であって、
図2に相当する図である。
【
図13】第2実施形態の調整装置の制御に関するブロック図であって、
図5に相当する図である。
【
図14】第3実施形態において、
図2のVIII-VIII断面に相当する断面を示した断面図であって、ペダルユニットとその周辺とを抜粋して示した図である。
【
図15】第3実施形態の調整装置の制御に関するブロック図であって、
図5に相当する図である。
【
図16】第4実施形態の調整装置の制御に関するブロック図であって、
図5に相当する図である。
【
図17】第4実施形態の制御部が行う制御処理を示したフローチャートである。
【
図18】
図1の相当する模式図において、車両の自動運転の開始時にペダルユニットが退避される様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、各実施形態を説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0012】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態のペダル装置10は、車両70に搭載される。本実施形態の車両70は、走行用駆動源としてエンジンのみを備えたエンジン車両であるが、例えば、電気自動車またはハイブリッド車両であってもよい。
【0013】
図1では、実線で示された高身長の乗員72aに比して身長が低い低身長の乗員72bと、その低身長の乗員72bが握るステアリングホイールとが破線で示されている。また、破線Lbhは、実線で示されたアクセルペダル21が車両後側へ移動させられたものを示している。例えば、実線で示された高身長の乗員72aは身長170cm程度であり、破線で示された低身長の乗員72bは身長150cm程度である。以下の説明で、乗員72a、72bの身長を特に区別しない場合には、単に乗員72と称する。
【0014】
なお、
図1および
図2の両端矢印はそれぞれ、ペダル装置10が搭載される車両70の向きを示す。すなわち、
図1では、車両70の前後方向である車両前後方向D1と車両70の上下方向である車両上下方向D2とが両端矢印で示され、
図2では、車両前後方向D1と車両70の左右方向である車両左右方向D3とが両端矢印で示されている。これらの方向D1、D2、D3は互いに交差する方向、厳密に言えば互いに垂直な方向である。
【0015】
また、本実施形態の説明では、車両前後方向D1における前側は車両前側とも称され、車両前後方向D1における後側は車両後側とも称され、車両上下方向D2における上側は車両上側とも称され、車両上下方向D2における下側は車両下側とも称される。また、車両左右方向D3における左側は車両左側とも称され、車両左右方向D3における右側は車両右側とも称される。また、車両左右方向D3は車両幅方向D3と称されても差し支えない。
【0016】
図1~
図5に示すように、ペダル装置10は、ペダルユニット20と、調整装置30と、その調整装置30を制御する制御部12とを備えている。車両70において、そのペダルユニット20と調整装置30は、運転者としての乗員72の足元辺りに配置される。
【0017】
また、
図2~
図4に示すように、ペダルユニット20は、アクセルペダル21とブレーキペダル22と支持体23とアクセル反力装置25とブレーキ反力装置26とアクセル操作量センサ27とブレーキ操作量センサ28とフットレスト29とを有している。
【0018】
図1、
図3、
図4に示すように、アクセルペダル21は、運転者である乗員72に踏込み操作されるペダルである。そのアクセルペダル21に対する踏込み操作の操作量Qacすなわちアクセルペダル操作量Qacが大きいほど、例えば車両70の走行用駆動源の出力が増大される。
【0019】
具体的には
図3および
図4に示すように、アクセルペダル21は、そのアクセルペダル21の下端部211で支持体23に連結し、その支持体23は、アクセルペダル21を乗員72の踏込み操作に対し揺動可能に支持している。
【0020】
詳細には、本実施形態のアクセルペダル21は、そのアクセルペダル21の下端部211を回転中心としてアクセルペダル21の上端部212が車両前後方向D1へ移動するように、支持体23に対し回転可能となっている。要するに、アクセルペダル21は、
図4の矢印Amで示されるように揺動可能なオルガン式のペダルである。
【0021】
そして、本実施形態のアクセルペダル操作量Qacは、アクセルペダル21の回転角度で表される。例えば、そのアクセルペダル操作量Qacは、アクセルペダル21に対する踏込み操作が為されていないアクセル非踏込み操作時の回転位置(言い換えると、非操作位置)を基準としてその非操作位置からアクセルペダル21が回転した回転角度で表される。要するに、アクセルペダル操作量Qacとは、アクセルペダル21の非操作位置から操作された操作量である。
【0022】
また、アクセルペダル21は、そのアクセルペダル21に対する乗員72の踏込み操作の際にその乗員72に踏まれるアクセルパッド面21aを有している。そのアクセルパッド面21aは、アクセル非踏込み操作時には車両後側かつ斜め車両上側を向いている。
【0023】
また、
図4に示すように、アクセルペダル21は、アクセルバイワイヤシステム74の一部を構成している。そのため、アクセルペダル21にはアクセル操作量センサ27が連結されている。アクセルバイワイヤシステム74とは、電気信号として得られたアクセルペダル操作量Qacに基づいて電子スロットル弁742を駆動するシステムである。
【0024】
アクセルバイワイヤシステム74においてアクセル操作量センサ27は、アクセルペダル操作量Qacを検出し、そのアクセルペダル操作量Qacを示す電気信号を、アクセルバイワイヤシステム74に含まれるスロットル制御装置741へ出力する。すなわち、アクセルペダル操作量Qacは、アクセル操作量センサ27からスロットル制御装置741へ電気信号として伝達される。
【0025】
スロットル制御装置741は、不図示のCPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータで構成されており、非遷移的実体的記憶媒体であるROM、RAMなどの半導体メモリに格納されたコンピュータプログラムを実行する。すなわち、スロットル制御装置741は、そのコンピュータプログラムに従って種々の制御処理を実行する。このような制御装置の構成は、後述するブレーキ制御装置751、制御部12、および自動運転制御装置82でも同様である。
【0026】
また、スロットル制御装置741は、アクセル操作量センサ27から得られたアクセルペダル操作量Qacに従って電子スロットル弁742の弁開度を増減する。例えば、スロットル制御装置741は、予め設定された関係に従って、アクセルペダル操作量Qacが大きいほど電子スロットル弁742の弁開度を増加させる。
【0027】
電子スロットル弁742は、エンジンの吸気系に設けられた電動のバルブ装置である。そして、電子スロットル弁742の弁開度が増加するほどエンジンの吸入空気量が増加する。
【0028】
図2~
図4に示すように、ブレーキペダル22は、乗員72に踏込み操作されるペダルであり、アクセルペダル21に対し車両左側に並んで配置されている。そのブレーキペダル22に対する踏込み操作の操作量Qbrすなわちブレーキペダル操作量Qbrが大きいほど、車両70の各車輪に対応して設けられたホイールシリンダ781~784へ供給されるブレーキ液圧が増大される。すなわち、ブレーキペダル操作量Qbrが大きいほど、車両70の各車輪を制動する制動力が増大される。
【0029】
具体的には
図3および
図4に示すように、ブレーキペダル22は、そのブレーキペダル22の下端部221で支持体23に連結し、その支持体23は、ブレーキペダル22を乗員72の踏込み操作に対し揺動可能に支持している。
【0030】
詳細には、本実施形態のブレーキペダル22は、そのブレーキペダル22の下端部221を回転中心としてブレーキペダル22の上端部222が車両前後方向D1へ移動するように、支持体23に対し回転可能となっている。要するに、ブレーキペダル22は、
図4の矢印Bmで示されるように揺動可能なオルガン式のペダルである。
【0031】
そして、本実施形態のブレーキペダル操作量Qbrは、ブレーキペダル22の回転角度で表される。例えば、そのブレーキペダル操作量Qbrは、ブレーキペダル22に対する踏込み操作が為されていないブレーキ非踏込み操作時の回転位置(言い換えると、非操作位置)を基準としてその非操作位置からブレーキペダル22が回転した回転角度で表される。要するに、ブレーキペダル操作量Qbrとは、ブレーキペダル22の非操作位置から操作された操作量である。
【0032】
また、ブレーキペダル22は、そのブレーキペダル22に対する乗員72の踏込み操作の際にその乗員72に踏まれるブレーキパッド面22aを有している。そのブレーキパッド面22aは、ブレーキ非踏込み操作時には車両後側かつ斜め車両上側を向いている。
【0033】
また、
図4に示すように、ブレーキペダル22は、ブレーキバイワイヤシステム75の一部を構成している。そのため、ブレーキペダル22にはブレーキ操作量センサ28が連結されている。ブレーキバイワイヤシステム75とは、電気信号として得られたブレーキペダル操作量Qbrに基づいて、各車輪を制動するブレーキ液圧を調整するシステムである。
【0034】
ブレーキバイワイヤシステム75においてブレーキ操作量センサ28は、ブレーキペダル操作量Qbrを検出し、そのブレーキペダル操作量Qbrを示す電気信号を、ブレーキバイワイヤシステム75に含まれるブレーキ制御装置751へ出力する。すなわち、ブレーキペダル操作量Qbrは、ブレーキ操作量センサ28からブレーキ制御装置751へ電気信号として伝達される。
【0035】
例えば、ブレーキ制御装置751は、電気信号として得られたブレーキペダル操作量Qbrに基づいて、第1アクチュエータ76と第2アクチュエータ77とを制御することにより、各ホイールシリンダ781~784へ供給されるブレーキ液圧を調整する。
【0036】
左前輪用ホイールシリンダ781は左前輪FLに配置され、右前輪用ホイールシリンダ782は右前輪FRに配置されている。左後輪用ホイールシリンダ783は左後輪RLに配置され、右後輪用ホイールシリンダ784は右後輪RRに配置されている。
【0037】
また、左前輪用ホイールシリンダ781、右前輪用ホイールシリンダ782、左後輪用ホイールシリンダ783、および右後輪用ホイールシリンダ784は、車両70の図示しない各ブレーキパッドにそれぞれ接続されている。各ホイールシリンダ781~784に供給されるブレーキ液圧が増加するほど、各車輪FL、FR、RL、RRでは、その車輪に対応するブレーキディスクにブレーキパッドが強く押し付けられブレーキディスクとブレーキパッドとの間の摩擦力が大きくなる。これにより、各車輪FL、FR、RL、RRの回転を止める制動力が発生する。
【0038】
第1アクチュエータ76はブレーキ液圧を発生させる。そして、第1アクチュエータ76は、そのブレーキ液圧を増加させることにより、4つのホイールシリンダ781~784のそれぞれへ供給されるブレーキ液圧を増加させる。具体的には、第1アクチュエータ76は、リザーバ761、液圧ポンプ762、ポンプ用モータ763、および圧力センサ764を有している。
【0039】
リザーバ761は、油等のブレーキ液を貯蔵しつつ、液圧ポンプ762にブレーキ液を供給する。
【0040】
液圧ポンプ762は、電動のポンプ用モータ763によって駆動される。これにより、液圧ポンプ762は、リザーバ761からのブレーキ液の圧力を増加させる。この液圧が増加したブレーキ液は、第1アクチュエータ76から第2アクチュエータ77へ流動する。
【0041】
圧力センサ764は、第2アクチュエータ77へ流動するブレーキ液の液圧に応じた電気信号をブレーキ制御装置751へ出力する。
【0042】
第2アクチュエータ77は、例えば、図示しない差圧制御弁、増圧制御弁、減圧制御弁、ポンプ、モータ、および圧力センサ等を有しており、ブレーキ液圧を発生させる。また、第2アクチュエータ77は、第1アクチュエータ76から流動してきたブレーキ液を左前輪用ホイールシリンダ781、右前輪用ホイールシリンダ782、左後輪用ホイールシリンダ783、および右後輪用ホイールシリンダ784のそれぞれへ流動させる。
【0043】
また、第1および第2アクチュエータ76、77を含み各ホイールシリンダ781~784へブレーキ液圧を供給するブレーキ液圧回路には、マスタシリンダは含まれていない。従って、ブレーキペダル22は、マスタシリンダに機械的に連結されていない。すなわち、ブレーキペダル22に機械的に連動するマスタシリンダは一切設けられていない。そのマスタシリンダとは、各ホイールシリンダ781~784へ供給されるマスター圧としてのブレーキ液圧をブレーキペダル操作量Qbrに応じて発生させる液圧シリンダである。
【0044】
図2および
図3に示すように、フットレスト29は、着座した乗員72の足が置かれる構造物である。フットレスト29は、ブレーキペダル22に対し車両左側に並んで配置されている。フットレスト29は、そのフットレスト29の下端部291で支持体23に対し連結し固定されている。
【0045】
支持体23は、アクセルペダル21とブレーキペダル22とフットレスト29とのそれぞれに対し車両下側に設けられている。支持体23は、アクセルペダル21とブレーキペダル22とフットレスト29とを支持する基盤として機能する。
【0046】
図4に示すように、アクセル反力装置25およびブレーキ反力装置26は、例えばコイルバネなど弾性体で構成されている。アクセル反力装置25およびブレーキ反力装置26はそれぞれ、例えば支持体23に連結され、支持体23によって支持されている。アクセル反力装置25は、アクセルペダル21に対し踏込み操作を行う乗員72の踏力に対抗する反力を発生する。また、ブレーキ反力装置26は、ブレーキペダル22に対し踏込み操作を行う乗員72の踏力に対抗する反力を発生する。なお、確認的に述べるが、ブレーキ反力装置26は、マスタシリンダではない。
【0047】
図2、
図3、
図5に示すように、調整装置30は、電子制御装置である制御部12からの指令信号に従ってペダルユニット20の位置または姿勢を調整する装置である。本実施形態において調整装置30は、
図3の矢印M1のようにペダルユニット20を車両前後方向D1へ移動させる位置調整を行うことができる。すなわち、調整装置30が行うペダルユニット20の位置または姿勢の調整には、車両前後方向D1へペダルユニット20の位置を調整することが含まれる。例えば、ペダルユニット20は、車両後側へ移動するほど、着座した乗員72に近づく。
【0048】
そして、調整装置30は、
図3の矢印MRのように、車両左右方向D3に延伸するユニット回転軸線CLまわりにペダルユニット20を回転させるようにして傾ける姿勢調整も行うことができる。すなわち、調整装置30が行うペダルユニット20の位置または姿勢の調整には、車両左右方向D3に沿った方向視におけるペダルユニット20の傾きを調整することも含まれる。そのペダルユニット20の傾きの調整とは、詳細に言えば、ペダルユニット20の所定の基準姿勢に対してペダルユニット20の傾きを調整することである。そのペダルユニット20の基準姿勢とは、ペダルユニット20が採りうる或る定まった姿勢であればよく、特に限定はない。
【0049】
なお、ユニット回転軸線CLとペダルユニット20との相対的な位置関係は一定であるので、ペダルユニット20が車両前後方向D1へ移動すれば、それと共にユニット回転軸線CLも車両前後方向D1へ移動する。また、車両左右方向D3に沿った方向視におけるペダルユニット20の傾きとは、言い換えれば、後述の
図8または
図9に表れるペダルユニット20の傾きである。
【0050】
図2、
図6、
図7に示すように、調整装置30は、下部ケース32と前後送りネジ33と前後モータ34と前後移動部材35と一対の案内部36、37とを有している。また、支持体23はペダルユニット20の一部を構成しているが、調整装置30にも含まれる。すなわち、支持体23は、ペダルユニット20と調整装置30とに共有されている。
【0051】
図2、
図6~
図8に示すように、下部ケース32は、ペダルユニット20の車両下側に設けられている。下部ケース32は、支持体23に対する車両下側に、下部ケース32の内部空間であるケース空間32aを形成している。そのケース空間32aは車両前後方向D1へ延伸しており、ケース空間32a内には、前後送りネジ33が配置されている。
【0052】
例えばアクセルペダル21の下端部211およびブレーキペダル22の下端部221(
図3参照)の位置を車室70aの床面701(
図1参照)に合わせるために、調整装置30は、下部ケース32が床面701に対する車両下側へ入り込むように配置されている。また、下部ケース32は、車両70のボディーに対して固定されている。
【0053】
前後送りネジ33は、車両前後方向D1に沿って延伸しており、下部ケース32に回転可能に支持されている。
【0054】
前後モータ34は、例えばステッピングモータやエンコーダ付きのDCモータなどの電動モータである。前後モータ34は下部ケース32に対し車両前側に設けられ、前後送りネジ33のうち車両前側に配置された一端331に連結されている。前後モータ34は、制御部12からの指令信号に従って前後送りネジ33を回転させ、その指令信号に従った回転角度で前後送りネジ33の回転を止める。
【0055】
前後移動部材35は支持体23に対し車両後側に配置されている。前後移動部材35は、下部ケース32に車両前後方向D1へ移動可能に支持されている。すなわち、前後移動部材35は、下部ケース32によって車両前後方向D1へ案内されるように構成されている。
【0056】
また、前後移動部材35は、前後送りネジ33に螺合されたナット部351と、前後移動部材35のうち車両前側に設けられた前端部である前側連結部352とを含んでいる。そのナット部351はケース空間32aに配置されている。
【0057】
一対の案内部36、37はそれぞれ下部ケース32に対し車両上側に設けられ、その案内部36、37の下端にて下部ケース32に固定されている。この一対の案内部36、37は、支持体23を挟んで車両左右方向D3に対称形状となっている。
【0058】
一対の案内部36、37のうち右側案内部36は、支持体23、前後送りネジ33、および前後移動部材35に対し車両右側に配置されている。また、一対の案内部36、37のうち左側案内部37は、支持体23、前後送りネジ33、および前後移動部材35に対し車両左側に配置されている。
【0059】
右側案内部36には、その右側案内部36を車両左右方向D3に貫通した右側案内穴36aが形成されている。これと同様に、左側案内部37には、その左側案内部37を車両左右方向D3に貫通した左側案内穴37aが形成されている。
【0060】
右側案内穴36aと左側案内穴37aはそれぞれ、車両前後方向D1へ延伸するように形成されているが、車両前後方向D1に対し僅かに傾斜して延伸している。詳細には、右側案内穴36aと左側案内穴37aはそれぞれ、車両前側ほど車両上側に位置するように車両前後方向D1に対し傾斜して延伸している。例えば、右側案内穴36aの穴幅は右側案内穴36aの全長にわたって一定であり、左側案内穴37aの穴幅も左側案内穴37aの全長にわたって一定である。
【0061】
また、支持体23は、基盤部231と、その基盤部231の車両右側に連結された右側被案内軸232と、基盤部231の車両左側に連結された左側被案内軸233とを有している。基盤部231は、車両上下方向D2を厚み方向とした平板状である。上述したアクセルペダル21とブレーキペダル22とアクセル反力装置25とブレーキ反力装置26とフットレスト29は、支持体23のうち基盤部231に連結されている。
【0062】
右側被案内軸232と左側被案内軸233はそれぞれ、車両左右方向D3に延びる軸線を中心とした円柱形状を成している。右側被案内軸232は右側案内穴36aに嵌め込まれており、右側案内穴36aの長手方向(言い換えれば、延伸方向)へ右側案内穴36aに沿って移動可能に右側案内部36によって拘束されている。従って、車両上下方向D2における右側被案内軸232の位置(すなわち、右側被案内軸232の上下位置)は、右側案内穴36aによって定められる。
【0063】
また、左側被案内軸233は左側案内穴37aに嵌め込まれており、左側案内穴37aの長手方向(言い換えれば、延伸方向)へ左側案内穴37aに沿って移動可能に左側案内部37によって拘束されている。従って、車両上下方向D2における左側被案内軸233の位置(すなわち、左側被案内軸233の上下位置)は、左側案内穴37aによって定められる。
【0064】
また、支持体23は、ユニット回転軸線CLを中心とした回転軸234を有している。そして、支持体23の基盤部231は、その回転軸234を介して前後移動部材35の前側連結部352に連結されている。すなわち、支持体23は、支持体連結部としての前側連結部352に対し、ユニット回転軸線CLまわりに回転可能に連結されている。
【0065】
そのユニット回転軸線CLは、支持体23の右側被案内軸232および左側被案内軸233よりも車両後側に位置している。また、ユニット回転軸線CLは、右側案内穴36aに対しその右側案内穴36aの全長にわたって車両下側に位置し、左側案内穴37aに対してもその左側案内穴37aの全長にわたって車両下側に位置している。
【0066】
このように構成された調整装置30では、前後モータ34によって前後送りネジ33が回転させられると、その回転方向に応じて、前後移動部材35とペダルユニット20とが、
図8および
図9の矢印M1で示すように車両前側または車両後側へ移動させられる。このとき、
図8および
図9に示すように、車両左右方向D3に沿った方向視で得られるユニット回転軸線CLと右側被案内軸232との間の直線距離DL、およびユニット回転軸線CLと左側被案内軸233との間の直線距離は変化しない。
【0067】
そして、上記したように右側案内穴36aと左側案内穴37aはそれぞれ、車両前側ほど車両上側に位置するように車両前後方向D1に対し傾斜している。そのため、右側被案内軸232と左側被案内軸233は、ペダルユニット20が車両前側へ移動するほど車両上側へ変位させられる。
【0068】
その結果、ペダルユニット20は、そのペダルユニット20が車両前側へ移動するほど、支持体23の車両前側が車両後側に対し車両上側へ移動するように傾く。すなわち、調整装置30は、ペダルユニット20を車両前側へ移動させるほど、車両前後方向D1を法線方向とした平面PL1の向きに、ブレーキ非踏込み操作時のブレーキパッド面22aの向きを近づけるように、ペダルユニット20の姿勢を変化させる。別言すれば、調整装置30は、ペダルユニット20を車両前側へ移動させるほど、車両70での水平面Phに対してブレーキ非踏込み操作時のブレーキパッド面22aが成す挟角Anbが拡大するように、ペダルユニット20の姿勢を変化させる。なお、上記平面PL1は仮想の平面である。
【0069】
このとき、アクセルパッド面21a(
図3参照)の向きもブレーキパッド面22aの向きと同様に変化する。従って、調整装置30は、ペダルユニット20を車両前側へ移動させるほど、アクセル非踏込み操作時のアクセルパッド面21aの向きを上記平面PL1の向きに近づけるようにも、ペダルユニット20の姿勢を変化させる。別言すれば、調整装置30は、ペダルユニット20を車両前側へ移動させるほど、車両70での水平面Phに対してアクセル非踏込み操作時のアクセルパッド面21aが成す挟角Ana(
図6参照)が拡大するように、ペダルユニット20の姿勢を変化させる。
【0070】
そして、調整装置30の前後モータ34は、ペダルユニット20を車両前後方向D1に移動させながら車両左右方向D3に沿った方向視におけるペダルユニット20の傾きを変化させる1つのアクチュエータとして機能する。
【0071】
なお、
図2および
図6~
図8は、車両前後方向D1におけるペダルユニット20の可動域のうち最も車両後側にペダルユニット20が位置した状態を示している。別言すると、
図2および
図6~
図8は、車両前後方向D1へのペダルユニット20の移動において車両後側のストローク端にペダルユニット20が位置した状態を示している。また、
図9は、
図8に示されたペダルユニット20の位置に対しペダルユニット20が車両前側へ移動させられた状態を示している。また、
図8および
図9には、ペダルユニット20の移動に伴って支持体23の右側被案内軸232が辿る軌跡を示すために、その右側被案内軸232と右側案内穴36aとが二点鎖線で示されている。
【0072】
また、上記したように、調整装置30において、車両前後方向D1におけるペダルユニット20の位置であるユニット前後位置が決まれば、車両左右方向D3に沿った方向視におけるペダルユニット20の傾きも決まる。すなわち、調整装置30は、そのユニット前後位置とそのペダルユニット20の傾きとの予め定められた関係に従って、ペダルユニット20の傾きをユニット前後位置に応じて定めると言える。そして、調整装置30の右側案内穴36aと左側案内穴37aとが、ユニット前後位置とペダルユニット20の傾きとの関係を予め定めている。
【0073】
図5に示すように、ペダル装置10が有する制御部12は、調整装置30を制御するために、調整装置30の前後モータ34へ、例えば前後モータ34の作動または停止を指令する電気信号を出力する。また、制御部12には、乗員72に操作される操作パネル部80と、センシング機器81とが電気的に接続されている。
【0074】
操作パネル部80は、乗員72に入力操作される入力装置であり、例えば車室70a内に設けられている。操作パネル部80は、乗員72に押される前方ボタン801と後方ボタン802と第1ボタン803と第2ボタン804とセンシングボタン805とを備えている。
【0075】
例えば前方ボタン801が乗員72に押されると、その前方ボタン801が押されなくなるまで、操作パネル部80は、前方ボタン801が押されていることを示す電気信号を制御部12へ継続的に出力する。そして、前方ボタン801が押されなくなると、操作パネル部80は、前方ボタン801が押されていることを示す電気信号を出力しなくなる。制御部12は、前方ボタン801が押されていることを示す電気信号が得られている間、前後モータ34を作動させ、ペダルユニット20の可動域内でペダルユニット20を車両前側へ移動させる。
【0076】
また、後方ボタン802が乗員72に押されると、その後方ボタン802が押されなくなるまで、操作パネル部80は、後方ボタン802が押されていることを示す電気信号を制御部12へ継続的に出力する。そして、後方ボタン802が押されなくなると、操作パネル部80は、後方ボタン802が押されていることを示す電気信号を出力しなくなる。制御部12は、後方ボタン802が押されていることを示す電気信号が得られている間、前後モータ34を作動させ、ペダルユニット20の可動域内でペダルユニット20を車両後側へ移動させる。
【0077】
なお、第1ボタン803、第2ボタン804、またはセンシングボタン805が押された場合の制御部12の処理については、
図10を用いて後述する。
【0078】
センシング機器81は、例えば、着座した乗員72を撮影するカメラ、光センサ、座席シートに設けられ乗員72の体重を計測可能な圧力センサなど、1または2以上の機器で構成されている。センシング機器81は、乗員72の体格をセンシングして、乗員72の体格に関しそのセンシングで得られた情報すなわちセンシング情報を示す電気信号を制御部12へ出力する。そのセンシング情報には、例えば乗員72の身長および体重などを推定することが可能な情報が含まれる。
【0079】
図10は、本実施形態の制御部12が行う制御処理を示したフローチャートである。この
図10の制御処理は、周期的に繰り返し実行される。
【0080】
図10に示すように、制御部12は、まず、ステップS101にて、操作パネル部80の第1ボタン803が乗員72により押されたか否かを判定する。例えば第1ボタン803が乗員72に押されると、操作パネル部80は、第1ボタン803が押されたことを示す電気信号を制御部12へ出力する。そして、制御部12は、その第1ボタン803が押されたことを示す電気信号を得た場合には、第1ボタン803が乗員72により押されたと判定する。
【0081】
ステップS101において、第1ボタン803が押されたと判定された場合には、ステップS102へ進む。その一方で、第1ボタン803が押されていないと判定された場合には、ステップS103へ進む。
【0082】
ステップS102では、制御部12は、調整装置30の前後モータ34を作動させ、ペダルユニット20のユニット前後位置が予め設定された第1目標位置になるようにペダルユニット20を移動させる。
【0083】
ここで、制御部12は、ペダルユニット20の位置または姿勢の目標を目標設置状態として予め複数記憶ており、その複数の目標設置状態は、例えば操作パネル部80の第1および第2ボタン803、804など複数のスイッチに関連付けられている。上記の第1目標位置は、複数の目標設置状態のうちの1つであり、第1ボタン803に関連付けられて制御部12に記憶されている。また、後述の第2目標位置も複数の目標設置状態のうちの1つであり、第2ボタン804に関連付けられて制御部12に記憶されている。
【0084】
なお、本実施形態では、ユニット前後位置が決まれば、ペダルユニット20の傾きすなわちペダルユニット20の姿勢も決まるので、複数の目標設置状態は、ユニット前後位置の目標である第1目標位置と第2目標位置とにより構成されている。そして、目標設置状態とは、ペダルユニット20の位置の目標であり、ペダルユニット20の姿勢の目標でもある。
【0085】
ステップS103では、制御部12は、操作パネル部80の第2ボタン804が乗員72により押されたか否かを判定する。例えば第2ボタン804が乗員72に押されると、操作パネル部80は、第2ボタン804が押されたことを示す電気信号を制御部12へ出力する。そして、制御部12は、その第2ボタン804が押されたことを示す電気信号を得た場合には、第2ボタン804が乗員72により押されたと判定する。
【0086】
ステップS103において、第2ボタン804が押されたと判定された場合には、ステップS104へ進む。その一方で、第2ボタン804が押されていないと判定された場合には、ステップS105へ進む。
【0087】
ステップS104では、制御部12は、調整装置30の前後モータ34を作動させ、ペダルユニット20のユニット前後位置が予め設定された第2目標位置になるようにペダルユニット20を移動させる。
【0088】
上記のステップS101~S104から判るように、乗員72は、第1ボタン803または第2ボタン804を押すことにより、第1目標位置と第2目標位置とである複数の目標設置状態の中から任意の目標設置状態を選択することができる。そして、その選択が為されると、制御部12は、複数のうちから選択された目標設置状態にペダルユニット20の位置または姿勢がなるように、調整装置30にペダルユニット20の位置または姿勢を調整させる。
【0089】
図10のステップS105では、制御部12は、操作パネル部80のセンシングボタン805が乗員72により押されたか否かを判定する。例えばセンシングボタン805が乗員72に押されると、操作パネル部80は、センシングボタン805が押されたことを示す電気信号を制御部12へ出力する。そして、制御部12は、そのセンシングボタン805が押されたことを示す電気信号を得た場合には、センシングボタン805が乗員72により押されたと判定する。
【0090】
ステップS105において、センシングボタン805が押されたと判定された場合には、ステップS106へ進む。その一方で、センシングボタン805が押されていないと判定された場合には、
図10のフローチャートは終了し、再びステップS101から開始する。
【0091】
ステップS106では、制御部12は、乗員72の体格をセンシング機器81にセンシングさせ、そのセンシングで得られたセンシング情報をセンシング機器81から取得する。ステップS106の次はステップS107へ進む。
【0092】
ステップS107では、制御部12は、ステップS106で得たセンシング情報に基づいて、例えば乗員72の身長や体重など乗員72の体格を推定する。その乗員72の体格の推定は、例えば、センシング機器81から得られるセンシング情報と乗員72の体格との関係を予め実験的に定めた体格推定マップを用いて行われる。
【0093】
そして、制御部12は、乗員72の体格を推定すると、例えば乗員72の体格とペダルユニット20のユニット前後位置との関係として予め定められた前後位置マップを用いて、乗員72の体格に基づき、センシング時目標位置を決定する。そのセンシング時目標位置とは、乗員72の体格をセンシングした際に決定されるユニット前後位置の目標である。例えば前後位置マップによれば、乗員72の身長が低いほど、センシング時目標位置は、
図1の矢印A1で示されるように車両後側の位置にされる。
図10のステップS107の次はステップS108へ進む。
【0094】
ステップS108では、制御部12は、調整装置30の前後モータ34を作動させ、ペダルユニット20のユニット前後位置がセンシング時目標位置になるようにペダルユニット20を移動させる。要するに、制御部12は、センシング情報に基づいて、調整装置30にペダルユニット20の位置または姿勢を調整させる。
【0095】
ステップS102、S104、S108の処理が終わると
図10のフローチャートは終了し、再びステップS101から開始する。
【0096】
なお、上述した
図10の各ステップでの処理は、それぞれの機能を実現する機能部を構成している。このことは、後述する他のフローチャートでも同様である。
【0097】
本実施形態によれば、
図4に示すように、ペダルユニット20は、ブレーキペダル操作量Qbrが電気信号として伝達されるブレーキペダル22と、アクセルペダル操作量Qacが電気信号として伝達されるアクセルペダル21とを含んで構成されている。そして、
図2、
図6~
図9に示すように、ペダル装置10は、ペダルユニット20の位置または姿勢を調整する調整装置30を備えている。
【0098】
従って、本実施形態のペダル装置10では、例えばブレーキペダル操作量Qbrがマスタシリンダへ機械的に伝達される構成と比較して、ペダルユニット20の位置または姿勢の変化に対する機械的な制約が少ない。従って、ペダルユニット20の位置または姿勢の調整幅を容易に拡大することが可能である。
【0099】
また、そのようにペダルユニット20の位置または姿勢の調整幅が十分に拡大できれば、ペダルユニット20の位置または姿勢を、運転者としての乗員72の体格に合わせた最適なものにすることが可能である。
【0100】
(1)また、本実施形態によれば、調整装置30が行うペダルユニット20の位置または姿勢の調整には、車両前後方向D1へペダルユニット20の位置を調整することが含まれる。従って、例えば車両前後方向D1へのペダルユニット20の位置調整ができない車両と比較して、車両前後方向D1におけるアクセルペダル21およびブレーキペダル22の位置を乗員72の体格に合わせやすいというメリットがある。
【0101】
(2)また、本実施形態によれば、調整装置30が行うペダルユニット20の位置または姿勢の調整には、車両左右方向D3に沿った方向視におけるペダルユニット20の傾きを調整することが含まれる。従って、例えばペダルユニット20の傾き調整ができない車両と比較して、アクセルペダル21およびブレーキペダル22の向きを乗員72の体格に合わせやすいというメリットがある。
【0102】
(3)ここで、ペダルユニット20は乗員72の足元辺りに配置されるので、ペダルユニット20周りにはペダルユニット20に近接して配置される車両ボディーの構成部品等が多い。これに対し、本実施形態によれば、調整装置30は、ペダルユニット20のユニット前後位置とペダルユニット20の傾きとの予め定められた関係に従って、ペダルユニット20の傾きをユニット前後位置に応じて定める。従って、ペダルユニット20が配置されるスペースの関係上、ペダルユニット20の周囲にある車両ボディーの構成部品等とペダルユニット20との干渉を避けながら、ペダルユニット20の位置または姿勢の調整幅を大きく確保できる。
【0103】
(4)また、本実施形態によれば、調整装置30は、ペダルユニット20を車両前側へ移動させるほど、アクセル非踏込み操作時のアクセルパッド面21aの向きを、車両前後方向D1を法線方向とした平面PL1の向きに近づける。また、ブレーキペダル22に着目すれば、調整装置30は、ペダルユニット20を車両前側へ移動させるほど、ブレーキ非踏込み操作時のブレーキパッド面22aの向きを上記平面PL1の向きに近づける。このように調整装置30は、ペダルユニット20の姿勢を変化させる。
従って、ペダルユニット20の位置と姿勢との一方を定めることで、乗員72の体格に合ったペダルユニット20の最適な位置と姿勢とを実現することが可能である。延いては、調整装置30の機械的構造の簡略化につながる。
【0104】
(5)また、本実施形態によれば、調整装置30は、ペダルユニット20を車両前後方向D1に移動させながらペダルユニット20の傾きを変化させる1つのアクチュエータである前後モータ34を有している。従って、例えばペダルユニット20の位置調整を行うモータとペダルユニット20の傾き調整を行うモータとをそれぞれ設ける場合と比較して、調整装置30の構造の簡略化を図ることが可能である。このことは、ペダル装置10のコスト低減につながる。
【0105】
(6)また、本実施形態によれば、調整装置30において右側案内穴36aと左側案内穴37aはそれぞれ、車両前側ほど車両上側に位置するように車両前後方向D1に対し傾斜して延伸している。また、支持体23は、右側案内穴36aに嵌め込まれた右側被案内軸232と、左側案内穴37aに嵌め込まれた左側被案内軸233とを有している。また、支持体23は、前後移動部材35の前側連結部352に対し、ユニット回転軸線CLまわりに回転可能に連結されている。更に、右側被案内軸232の上下位置は右側案内穴36aによって定められ、左側被案内軸233の上下位置は左側案内穴37aによって定められる。
【0106】
従って、ペダルユニット20の姿勢調整を行う専用のモータを必要とせずに、ペダルユニット20を車両前後方向D1へ移動させる前後モータ34を1つ設けることで、ペダルユニット20の位置と姿勢との両方を調整することができる。
【0107】
(7)また、本実施形態によれば、
図5および
図10に示すように、制御部12は、ペダルユニット20の位置または姿勢の目標を目標設置状態として予め複数記憶ている。そして、制御部12は、複数のうちから選択された目標設置状態にペダルユニット20の位置または姿勢がなるように、調整装置30にペダルユニット20の位置または姿勢を調整させる。従って、ペダルユニット20の位置または姿勢の調整を効率的に行うことが可能である。
【0108】
(8)また、本実施形態によれば、制御部12は、乗員72の体格をセンシング機器81にセンシングさせ、そのセンシングで得られたセンシング情報に基づいて、調整装置30にペダルユニット20の位置または姿勢を調整させる。これにより、ペダルユニット20の位置または姿勢の調整の自動化を図ることが可能である。
【0109】
(9)また、本実施形態によれば、
図2、
図3、
図8に示すように、アクセルペダル21とブレーキペダル22はオルガン式のペダルである。従って、調整装置30を構成する構成部品の殆どをアクセルペダル21およびブレーキペダル22に対する車両下側に配置する機械的構造を採用しやすい。そのため、ペダルユニット20と調整装置30とをコンパクトにユニット化しやすくなる。
【0110】
(10)また、本実施形態によれば、
図2および
図3に示すように、ペダルユニット20にはフットレスト29が含まれている。従って、そのフットレスト29が無い場合と比較して乗員72の快適性を向上させることができる。そして、アクセルペダル21とブレーキペダル22との位置および姿勢の調整と同時に、フットレスト29の位置および姿勢の調整も行うことができる。
【0111】
また、本実施形態によれば、
図2および
図8に示すように、調整装置30は、車両左右方向D3に延伸するユニット回転軸線CLまわりに支持体23を回転させることでペダルユニット20の傾きを変化させる。そして、車両前後方向D1へペダルユニット20が調整装置30に移動させられることに伴って、そのユニット回転軸線CLは、支持体23と共に車両前後方向D1に沿って直線的に移動する。従って、支持体23が車室70aの床面701(
図1参照)から車両上側へ離れることを回避しつつ、ペダルユニット20の傾きを変化させることが可能である。
【0112】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。また、前述の実施形態と同一または均等な部分については省略または簡略化して説明する。このことは後述の実施形態の説明においても同様である。
【0113】
図11および
図12に示すように、本実施形態の調整装置30は、第1実施形態と同様に、ペダルユニット20を車両前後方向D1へ移動させる機能と、ペダルユニット20を傾ける機能とを備えている。これに加え、第1実施形態とは異なり、本実施形態の調整装置30は、ペダルユニット20を車両左右方向D3へ移動させる機能を備えている。すなわち、本実施形態の調整装置30が行うペダルユニット20の位置または姿勢の調整には、車両左右方向D3へペダルユニット20の位置を調整することも含まれる。
【0114】
具体的に本実施形態において、調整装置30は、下部ケース32と前後送りネジ33と前後モータ34と前後移動部材35と一対の案内部36、37とに加え、揺動部材38と左右送りネジ39と左右モータ40とを有している。
【0115】
また、本実施形態のペダルユニット20は、第1実施形態の支持体23に替えて本実施形態の支持体42を有している。本実施形態の支持体42は、第1実施形態の支持体23とは異なり、右側被案内軸232と左側被案内軸233と回転軸234(
図8参照)とを有していない。本実施形態の支持体42は、本実施形態の説明で述べることを除き、第1実施形態の支持体23と同様である。従って、例えば、アクセルペダル21は、そのアクセルペダル21の下端部211で支持体42に連結し、ブレーキペダル22は、そのブレーキペダル22の下端部221で支持体42に連結している。そして、フットレスト29は、そのフットレスト29の下端部291で支持体42に連結している。
【0116】
また、本実施形態の支持体42は、揺動部材38に対し車両上側に積層されるように配置されている。支持体42は、揺動部材38に車両左右方向D3へ移動可能に支持されている。すなわち、支持体42は、揺動部材38によって車両左右方向D3へ案内されるように構成されている。従って、ペダルユニット20は、ユニット回転軸線CL(
図8参照)を中心に揺動部材38と一体的に揺動する。
【0117】
また、支持体42は、左右送りネジ39に螺合されたナット部421を、支持体42のうち車両下側に有している。支持体42のナット部421は、揺動部材38に設けられた貫通孔内に入り込むように配置されている。
【0118】
一方、本実施形態において揺動部材38は、右側被案内軸232と左側被案内軸233と回転軸234とを、第1実施形態の支持体23と同様に有している。従って、第1実施形態の支持体23と同様に、揺動部材38は、例えば、前後移動部材35の前側連結部352に対し、ユニット回転軸線CL(
図8参照)まわりに回転可能に連結されている。また、ペダルユニット20の支持体42の傾き(別言すれば、支持体42の姿勢)は一対の案内部36、37(
図6、
図7参照)によって直接拘束されるのではなく、揺動部材38を介して間接的に拘束される。
【0119】
左右送りネジ39は、車両左右方向D3に沿って延伸しており、揺動部材38に回転可能に支持されている。
【0120】
左右モータ40は、前後モータ34と同様の電動モータである。左右モータ40は、揺動部材38に固定されており、左右モータ40には左右送りネジ39の一端が連結されている。左右モータ40は、
図13の制御部12からの指令信号に従って左右送りネジ39を回転させ、その指令信号に従った回転角度で左右送りネジ39の回転を止める。
【0121】
そして、本実施形態の調整装置30では、左右モータ40によって左右送りネジ39が回転させられると、その回転方向に応じて、支持体42を含むペダルユニット20が、矢印M2で示すように揺動部材38に対し車両右側または車両左側へ移動させられる。
【0122】
例えば
図13に示すように、本実施形態の操作パネル部80は、前方ボタン801と後方ボタン802と第1ボタン803と第2ボタン804とセンシングボタン805に加え、右方ボタン806aと左方ボタン806bとを備えている。これらの右方ボタン806aと左方ボタン806bは、ペダルユニット20の左右位置を乗員72が調整する際に乗員72に押される操作ボタンである。制御部12は、右方ボタン806aまたは左方ボタン806bに対する乗員72の操作に従って、左右モータ40を作動させる。
【0123】
例えば、制御部12は、上述した前方ボタン801または後方ボタン802に対する乗員操作に従って前後モータ34を作動させることと同様に、右方ボタン806aまたは左方ボタン806bに対する乗員操作に従って左右モータ40を作動させる。すなわち、制御部12は、右方ボタン806aが押されている間、左右モータ40を作動させ、ペダルユニット20の可動域内でペダルユニット20を車両右側へ移動させる。また、制御部12は、左方ボタン806bが押されている間、左右モータ40を作動させ、ペダルユニット20の可動域内でペダルユニット20を車両左側へ移動させる。
【0124】
このような構成により、本実施形態の調整装置30は、ペダルユニット20を車両左右方向D3へ移動させる機能を備えている。
【0125】
(1)上述したように、本実施形態によれば、調整装置30が行うペダルユニット20の位置または姿勢の調整には、車両左右方向D3へペダルユニット20の位置を調整することが含まれる。従って、例えば車両左右方向D3へのペダルユニット20の位置調整ができない車両と比較して、車両左右方向D3におけるアクセルペダル21およびブレーキペダル22の位置を乗員72の体格に合わせやすいというメリットがある。
【0126】
以上説明したことを除き、本実施形態は第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0127】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。
【0128】
図14に示すように、本実施形態の調整装置30は、第1実施形態と同様に、ペダルユニット20を車両前後方向D1へ移動させる機能と、ペダルユニット20を傾ける機能とを備えている。これに加え、第1実施形態とは異なり、本実施形態の調整装置30は、ペダルユニット20を車両上下方向D2へ移動させる機能を備えている。すなわち、本実施形態の調整装置30が行うペダルユニット20の位置または姿勢の調整には、車両上下方向D2へペダルユニット20の位置を調整することも含まれる。
【0129】
具体的に本実施形態において、調整装置30は、下部ケース32と前後送りネジ33と前後モータ34と前後移動部材35と一対の案内部36、37とに加え、揺動部材38と上下送りネジ43と上下モータ44とを有している。
【0130】
また、本実施形態のペダルユニット20は、第1実施形態の支持体23に替えて本実施形態の支持体42を有している。本実施形態の支持体42は、第1実施形態の支持体23とは異なり、右側被案内軸232と左側被案内軸233と回転軸234(
図8参照)とを有していない。本実施形態の支持体42は、本実施形態の説明で述べることを除き、第1実施形態の支持体23と同様である。従って、例えば、アクセルペダル21は、そのアクセルペダル21の下端部211で支持体42に連結し、ブレーキペダル22は、そのブレーキペダル22の下端部221で支持体42に連結している。そして、フットレスト29は、そのフットレスト29の下端部291で支持体42に連結している。
【0131】
上下送りネジ43は、車両上下方向D2に延伸しており、揺動部材38に回転可能に支持されている。本実施形態の揺動部材38はユニット回転軸線CLを中心に揺動するので、上下送りネジ43も揺動部材38と共にユニット回転軸線CLを中心に揺動する。例えば、車両前後方向D1におけるペダルユニット20の可動域のうち最も車両後側にペダルユニット20が位置した状態において、上下送りネジ43は、その上下送りネジ43の延伸方向が車両上下方向D2に沿った向きになるように揺動部材38に支持されている。なお、本実施形態の調整装置30において、揺動部材38の揺動により、上下送りネジ43の延伸方向が車両上下方向D2に対し多少傾くことはあるが、上下送りネジ43が車両上下方向D2に延伸していることに変わりはない。
【0132】
また、本実施形態の支持体42は、揺動部材38に対し車両上側に積層されるように配置されている。支持体42は、上下送りネジ43の延伸方向へ移動可能に揺動部材38に支持されている。すなわち、支持体42は、揺動部材38によって上下送りネジ43の延伸方向へ案内されるように構成されている。従って、ペダルユニット20は、ユニット回転軸線CL(
図8参照)を中心に揺動部材38と一体的に揺動する。
【0133】
また、支持体42は、上下送りネジ43に螺合されたナット部422を有している。
【0134】
本実施形態において揺動部材38は、右側被案内軸232と左側被案内軸233と回転軸234とを、第1実施形態の支持体23と同様に有している。従って、第1実施形態の支持体23と同様に、揺動部材38は、例えば、前後移動部材35の前側連結部352に対し、ユニット回転軸線CL(
図8参照)まわりに回転可能に連結されている。また、ペダルユニット20の支持体42の傾き(別言すれば、支持体42の姿勢)は一対の案内部36、37(
図6、
図7参照)によって直接拘束されるのではなく、揺動部材38を介して間接的に拘束される。
【0135】
上下モータ44は、前後モータ34と同様の電動モータである。上下モータ44は、揺動部材38に固定されており、上下モータ44には上下送りネジ43の一端が連結されている。上下モータ44は、
図15の制御部12からの指令信号に従って上下送りネジ43を回転させ、その指令信号に従った回転角度で上下送りネジ43の回転を止める。
【0136】
そして、本実施形態の調整装置30では、上下モータ44によって上下送りネジ43が回転させられると、その回転方向に応じて、支持体42を含むペダルユニット20が、矢印M3で示すように揺動部材38に対し車両上側または車両下側へ移動させられる。
【0137】
例えば
図15に示すように、本実施形態の操作パネル部80は、前方ボタン801と後方ボタン802と第1ボタン803と第2ボタン804とセンシングボタン805に加え、上方ボタン807aと下方ボタン807bとを備えている。これらの上方ボタン807aと下方ボタン807bは、ペダルユニット20の上下位置を乗員72が調整する際に乗員72に押される操作ボタンである。制御部12は、上方ボタン807aまたは下方ボタン807bに対する乗員72の操作に従って、上下モータ44を作動させる。
【0138】
例えば、制御部12は、上述した前方ボタン801または後方ボタン802に対する乗員操作に従って前後モータ34を作動させることと同様に、上方ボタン807aまたは下方ボタン807bに対する乗員操作に従って上下モータ44を作動させる。すなわち、制御部12は、上方ボタン807aが押されている間、上下モータ44を作動させ、ペダルユニット20の可動域内でペダルユニット20を車両上側へ移動させる。また、制御部12は、下方ボタン807bが押されている間、上下モータ44を作動させ、ペダルユニット20の可動域内でペダルユニット20を車両下側へ移動させる。
【0139】
このような構成により、本実施形態の調整装置30は、ペダルユニット20を車両上下方向D2へ移動させる機能を備えている。
【0140】
(1)上述したように、本実施形態によれば、調整装置30が行うペダルユニット20の位置または姿勢の調整には、車両上下方向D2へペダルユニット20の位置を調整することが含まれる。従って、例えば車両上下方向D2へのペダルユニット20の位置調整ができない車両と比較して、車両上下方向D2におけるアクセルペダル21およびブレーキペダル22の位置を乗員72の体格に合わせやすいというメリットがある。
【0141】
以上説明したことを除き、本実施形態は第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0142】
なお、本実施形態は第1実施形態に基づいた変形例であるが、本実施形態を前述の第2実施形態と組み合わせることも可能である。
【0143】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。
【0144】
図16に示すように、本実施形態の車両70(
図1参照)には、その車両70の自動運転を行うことが可能な自動運転制御装置82が設けられている。すなわち、本実施形態の車両70は、自動運転と通常運転とのそれぞれで走行可能な車両となっている。
【0145】
本実施形態の自動運転制御装置82が行う自動運転は、具体的には、自動運転レベルがレベル3またはレベル4の自動運転のことである。なお、レベル3の自動運転とは、「特定条件下で加速・操舵・制動を全てシステムが行い、システムが要請したときは運転者が対応する状態」と定義されている。また、レベル4の自動運転とは、「特定条件下で加速・操舵・制動を全て運転者以外が行い、運転者が全く関与しない状態」と定義されている。
【0146】
例えば、自動運転中においては、自動運転制御装置82は、種々のセンサやカメラなどから車両70の周囲の状況を認識し、スロットル制御装置741(
図4参照)およびブレーキ制御装置751へ指令することで車速を制御する。それと共に、自動運転制御装置82は、車両70の操舵装置に連結したアクチュエータを作動させることで車両70の操舵を制御する。
【0147】
一方で、上記した車両70の通常運転とは、レベル3、4の自動運転ではない車両70の運転であり、例えば、車両70の加速と操舵と制動との何れかまたは全部を運転者である乗員72が行う必要がある車両運転である。
【0148】
例えば自動運転が実施されていないときに所定のスイッチが乗員72に操作されると、自動運転制御装置82は、自動運転を実施するための所定の前提条件が満たされていることを条件に、自動運転を開始する。自動運転制御装置82は、車両運転が通常運転から自動運転に切り替えられた場合、すなわち、自動運転が開始された場合には、自動運転が開始されたことを示す電気信号を制御部12へ出力する。また、自動運転制御装置82は、車両運転が自動運転から通常運転に切り替えられた場合、すなわち、自動運転が解除された場合には、自動運転が解除されたことを示す電気信号を制御部12へ出力する。
【0149】
図17は、本実施形態の制御部12が行う制御処理を示したフローチャートである。この
図17の制御処理は、周期的に繰り返し実行される。また、
図17の制御処理は、上述した
図10の制御処理と並列に実行される。
【0150】
図17に示すように、制御部12は、まず、ステップS201にて、車両70の自動運転が開始されたか否かを判定する。例えば、制御部12は、自動運転が開始されたことを示す電気信号を自動運転制御装置82から得た場合には、車両70の自動運転が開始されたと判定する。
【0151】
このステップS201で判定される自動運転は、自動運転レベルがレベル3またはレベル4の自動運転である。従って、ステップS201で判定される自動運転とは、車両70の加速と操舵と制動とを自動運転制御装置82が行う車両運転であって、少なくとも自動運転の実施中には乗員72による監視が不要とされるものである。
【0152】
ステップS201において、車両70の自動運転が開始されたと判定された場合には、ステップS202へ進む。その一方で、車両70の自動運転が開始されてはいないと判定された場合には、
図17のフローチャートは終了し、再びステップS201から開始する。
【0153】
ステップS202では、制御部12は、調整装置30の前後モータ34を作動させ、
図18の矢印M4で示されるようにペダルユニット20を車両前側へ移動させる。すなわち、制御部12は、ペダルユニット20のユニット前後位置が予め設定された退避位置になるように、ペダルユニット20を調整装置30により移動させる。その退避位置は、着座した乗員72の足からペダルユニット20が車両前側へ離れることができる位置とされている。例えば本実施形態の退避位置は、車両前後方向D1におけるペダルユニット20の可動域のうち最も前側の位置とされている。
図18の破線Laは、ペダルユニット20が退避位置へ移動させられる前のアクセルペダル21を示している。
【0154】
ステップS202の処理が終わると
図17のフローチャートは終了し、再びステップS201から開始する。
【0155】
(1)上述したように、本実施形態によれば、制御部12は、自動運転が開始される場合には、車両前後方向D1におけるペダルユニット20の可動域のうち最も前側の位置へペダルユニット20を調整装置30により移動させる。すなわち、ペダルユニット20が乗員72の足元から車両前側へ退避するように離れる。従って、自動運転が開始されてもペダルユニット20が乗員72の足元から退避しない場合と比較して、自動運転の実施中に、乗員72の足がペダルユニット20に干渉しにくくなる。そのため、自動運転の実施中における乗員72の快適性を向上させることができる。
【0156】
以上説明したことを除き、本実施形態は第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0157】
なお、本実施形態は第1実施形態に基づいた変形例であるが、本実施形態を前述の第2実施形態または第3実施形態と組み合わせることも可能である。
【0158】
(他の実施形態)
(1)上述の各実施形態では、
図4に示すように、アクセルペダル操作量Qacはアクセルペダル21の回転角度で表されるが、回転角度以外の物理量で表されても差し支えない。このことは、ブレーキペダル操作量Qbrについても同様である。アクセルペダル21とブレーキペダル22とが、乗員72に踏込み操作に対し車両前後方向D1へ平行移動する動作を行う構成も想定できるからである。
【0159】
(2)上述の各実施形態では、
図4に示すように、アクセルペダル21とブレーキペダル22はオルガン式のペダルであるが、これは一例である。例えば、アクセルペダル21とブレーキペダル22は、ペダル回転軸に吊り下げ支持されたペダルであっても差し支えない。
【0160】
(3)上述の各実施形態では、
図4に示すように、各ホイールシリンダ781~784へブレーキ液圧を供給するブレーキ液圧回路にマスタシリンダは含まれていないが、これは一例である。例えば、
図4の液圧ポンプ762およびポンプ用モータ763が電動のマスタシリンダに置き換えられていても差し支えない。この場合、ブレーキ液圧回路は電動のマスタシリンダを備えるが、ブレーキペダル22がマスタシリンダに機械的に一切連結されていないということに変わりはない。
【0161】
(4)上述の各実施形態では、
図6および
図7に示すように、右側案内穴36aと左側案内穴37aはそれぞれ、貫通穴として形成されているが、これは一例である。例えば、右側案内穴36aと左側案内穴37aとに右側被案内軸232と左側被案内軸233とをそれぞれ嵌め込むことが可能であれば、その右側案内穴36aと左側案内穴37aは貫通せずに窪んだ止まり穴であっても差し支えない。
【0162】
(5)上述の各実施形態では、
図8および
図9に示すように、調整装置30は、ペダルユニット20の位置および姿勢を調整することが可能な構成であるが、これは一例である。調整装置30は、ペダルユニット20の位置と姿勢との一方を維持したまま他方だけを調整するように構成されていても差し支えない。
【0163】
(6)上述の各実施形態では、
図8および
図9に示すように、調整装置30は、ペダルユニット20を車両前後方向D1へ移動させる前後モータ34を1つ有することで、ペダルユニット20の位置と姿勢との両方を調整することが可能な構成になっている。すなわち、調整装置30は、ペダルユニット20の姿勢調整を行う専用のモータを必要としない。しかしながら、これは一例である。例えば、ペダルユニット20の姿勢調整を行う専用のモータを調整装置30に設け、調整装置30は、前後モータ34がペダルユニット20を車両前後方向D1へ移動させることだけを行う構成になっていても差し支えない。
【0164】
(7)上述の第4実施形態では、
図17のステップS202で用いられるペダルユニット20の退避位置は、車両前後方向D1におけるペダルユニット20の可動域のうち最も前側の位置とされているが、これは一例である。例えば、その退避位置は、着座した乗員72の足から十分離れた位置であれば、車両前後方向D1におけるペダルユニット20の可動域のうち最も前側の位置に対し車両後側へ多少ずれた位置とされていてもよい。すなわち、その退避位置は、車両前後方向D1におけるペダルユニット20の可動域のうち前側寄りの所定位置とされていてもよい。
【0165】
(8)上述の各実施形態では、
図4、
図5等に示すように、制御部12とスロットル制御装置741とブレーキ制御装置751と自動運転制御装置82は各々別個の制御装置として構成されているが、これは一例である。例えば、その制御部12とスロットル制御装置741とブレーキ制御装置751と自動運転制御装置82とが一体として1つの制御装置を構成していても差し支えない。
【0166】
(9)なお、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。
【0167】
また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。
【0168】
また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0169】
また、本開示に記載の制御部12及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部12及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部12及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0170】
10 ペダル装置
20 ペダルユニット
21 アクセルペダル
22 ブレーキペダル
23、42 支持体
30 調整装置
70 車両
72 乗員
Qac アクセルペダル操作量
Qbr ブレーキペダル操作量