(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】蓄電システム
(51)【国際特許分類】
H01M 50/204 20210101AFI20240611BHJP
H01M 50/251 20210101ALI20240611BHJP
H01M 50/289 20210101ALI20240611BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240611BHJP
H01M 10/627 20140101ALI20240611BHJP
H01M 10/653 20140101ALI20240611BHJP
H01M 10/6551 20140101ALI20240611BHJP
H01M 10/6554 20140101ALI20240611BHJP
【FI】
H01M50/204 401H
H01M50/204 101
H01M50/251
H01M50/289
H01M10/613
H01M10/627
H01M10/653
H01M10/6551
H01M10/6554
(21)【出願番号】P 2020150044
(22)【出願日】2020-09-07
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋田 哲男
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-129077(JP,A)
【文献】特開2017-179801(JP,A)
【文献】特開2019-176534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
H01M 10/52-10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面部と、前記底面部より面積が大きいパネル部とを含み、内部空間を形成する筐体と、
前記パネル部と熱的に接触した状態で前記内部空間に収容されている蓄電装置と、
前記蓄電装置を前記パネル部側へ押圧する押さえ部材と、
前記蓄電装置と電気的に接続して電力変換を行う電力変換装置と、
を備
え、
前記筐体は、
前記内部空間を天面側空間と底面側空間とに分割する第1隔離壁と、
前記底面側空間を正面側空間と背面側空間とに分割する第2隔離壁と、をさらに有し、
前記パネル部は、前記第2隔離壁と対向する背面パネルであり、
前記電力変換装置は、前記天面側空間に収容され、
前記蓄電装置は、前記背面パネルと熱的に接触した状態で前記背面側空間に収容され、
前記押さえ部材は、前記背面側空間において、前記蓄電装置と前記第2隔離壁との間に配置されて前記蓄電装置を前記背面パネル側へ押圧する、
蓄電システム。
【請求項2】
前記蓄電装置と前記パネル部との間に配される伝熱材をさらに備える、
請求項1に記載の蓄電システム。
【請求項3】
前記電力変換装置と電気的に接続
される複数の配
線をさらに備え、
前記複数
の配線の少なくとも一部は、前記正面側空間に収容され、
前記筐体の
前記底面部には、前記配線を前記筐体の外部に導出する貫通孔が形成されている、
請求項
1又は請求項2に記載の蓄電システム。
【請求項4】
前記蓄電装置及び前記電力変換装置は、それぞれ前記第1隔離壁から隙間を空けて設置されている、
請求項
1から請求項3のいずれか1項に記載の蓄電システム。
【請求項5】
前記筐体の外側に設けられ、前記電力変換装置からの熱を前記内部空間の外へ放出するヒートシンクをさらに備え、
前記電力変換装置は、前記筐体の内側において前記背面パネルに固定され、
前記ヒートシンクは、前記筐体の外側において前記背面パネルに固定されている、
請求項
1から請求項
4のいずれか1項に記載の蓄電システム。
【請求項6】
前記背面パネルの前記天面側空間に面する部分には、開口が形成され、
前記ヒートシンクは、前記開口を塞ぐように前記背面パネルに設置され、
前記ヒートシンクには、前記背面パネルと前記ヒートシンクとの隙間を埋めるコーキング材が、前記開口の周縁に塗布されており、
前記ヒートシンクにはさらに、前記コーキング材を塗布する塗布領域よりも内周側に位置する複数のネジ穴と、複数の前記ネジ穴と前記塗布領域との間にそれぞれ位置する複数の穴と、が形成されている、
請求項
5に記載の蓄電システム。
【請求項7】
前記ヒートシンクを覆うカバーをさらに備え、
前記カバーは、
前記筐体の側面にそれぞれ位置する2個の側面パネルをそれぞれ外側から覆う2個の側面領域を有し、
2個の前記側面領域には、正面側の縁から背面側へ延びる第1溝と、前記第1溝の背面側端部から天面側へ延びる第2溝と、がそれぞれ形成され、
前記カバーは、前記第2溝を介して挿入されているネジにより前記側面パネルに固定されている、
請求項
5又は請求項
6に記載の蓄電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電システムに関する。
【0002】
近年、太陽光発電装置等の発電装置により、家庭においてエネルギーを創る取り組みが広く行われている。また、発電装置の発電時間以外にも電力を使えるように、電力を貯める蓄電システムが発電装置と併せて設置されることがある。蓄電システムは、例えば家屋の裏手や、出窓の下、屋内の階段下等に設置される。蓄電システムは、例えば特許文献1、2に開示されているように、蓄電装置と、当該蓄電装置を収容する筐体とを備える。
【0003】
特許文献1には、電池モジュールと、パワーコンディショナと、これらを収容する収容空間を形成するラックと、収容空間を覆う断熱材とを備える2次電池システムが開示されている。特許文献1のラックは、収容空間を上下に仕切る第1仕切板を備え、電池モジュールは第1仕切板より上方の空間に収容され、パワーコンディショナは第1仕切板よりも下方の空間に収容されている。
【0004】
特許文献2には、蓄電池モジュール、充放電装置と、インターフェース装置と、これらが取付けられる筐体とを備える蓄電システムが開示されている。特許文献2において、蓄電池モジュール及び充放電装置は筐体の内側に収納され、インターフェース装置は筐体の外側に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-37749号公報
【文献】特開2016-219284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
蓄電システムを屋外に設置する場合、蓄電装置を収容する筐体には高い防水性が求められる。高い防水性を実現するためには、筐体の密閉性を高くすることで、筐体の外側からの水の浸入を防ぐ必要がある。
【0007】
一方、蓄電装置は動作中に発熱するため、通常、発熱した蓄電装置を冷却するための手段が設けられる。そのような手段として、ファンを用いた強制空冷が一般的に採用されている。しかしながら、強制空冷では、ファンにより積極的に筐体の外側から空気を取り込むために筐体に開口部を設ける必要がある。そのため、筐体の密閉性が低下し、防水性も低下する。
【0008】
かかる課題に鑑み、本開示は、筐体の密閉性を高くした場合でも、筐体の内部を良好に冷却することができる蓄電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の蓄電システムは、底面部と、前記底面部より面積が大きいパネル部とを含み、内部空間を形成する筐体と、前記パネル部と熱的に接触した状態で前記内部空間に収容されている蓄電装置と、を備える、蓄電システムである。
【発明の効果】
【0010】
本開示の蓄電システムによれば、筐体の密閉性を高くした場合でも、筐体の内部を良好に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る蓄電システムを前方から見下ろした斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る蓄電システムを後方から見下ろした斜視図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る正面パネルを外した状態の筐体を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1の矢印IVの切断線により切断した蓄電システムの断面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係るカバーの側面図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る背面パネルに未装着の状態におけるヒートシンクの斜視図である。
【
図7】
図7は、
図4のヒートシンクを含む部分を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
本開示の実施形態には、その要旨として、少なくとも以下のものが含まれる。
【0013】
(1)本開示に係る蓄電システムは、底面部と、前記底面部より面積が大きいパネル部とを含み、内部空間を形成する筐体と、前記パネル部と熱的に接触した状態で前記内部空間に収容されている蓄電装置と、を備える、蓄電システムである。
【0014】
パネル部は、蓄電装置と熱的に接触することで、蓄電装置から熱を吸収し、当該熱を筐体の外部へ放出することができる。このような構成によれば、筐体の密閉性を高くした場合でも、より良好に蓄電装置を冷却することができる。
【0015】
(2)好ましくは、前記蓄電装置と前記パネル部との間に配される伝熱材をさらに備える。
【0016】
このように構成することで、パネル部は、伝熱材を介して蓄電装置からより効率的に熱を取り込み、筐体の外部へ当該熱を放出することができる。このような構成によれば、筐体の密閉性を高くした場合でも、より良好に蓄電装置を冷却することができる。
【0017】
(3)好ましくは、前記筐体は、前記内部空間を天面側空間と底面側空間とに分割する第1隔離壁と、前記底面側空間を正面側空間と背面側空間とに分割する第2隔離壁と、をさらに有し、前記パネル部は、前記第2隔離壁と対向する背面パネルであり、前記蓄電装置は、前記背面側空間において、前記背面パネルと熱的に接触した状態で収容されている。
【0018】
筐体は背面側を壁に面する状態で設置される場合が多く、背面側には直射日光が当たりにくい。蓄電装置を背面側空間に収容して背面パネル(パネル部)と熱的に接触させ、第2隔離壁により正面側空間と空間を分割することにより、蓄電装置が日光により熱せられることを防止することができる。これにより、蓄電装置の使用温度範囲内での動作をより良好に維持することができる。
【0019】
(4)好ましくは、前記蓄電装置と電気的に接続して電力変換を行う電力変換装置と、前記電力変換装置と電気的に接続する複数の配線と、をさらに備え、前記電力変換装置は、前記天面側空間に収容され、複数の前記配線の少なくとも一部は、前記正面側空間に収容され、前記正面側空間に面する前記筐体のパネルには、前記配線を前記筐体の外部に導出する貫通孔が形成されている。
【0020】
第1隔離壁と第2隔離壁とを設けることで、外部との接続が必要な配線設備が設けられる正面側空間と、高い防水性が必要な蓄電装置及び電力変換装置が設けられる背面側空間及び天面側空間とを隔離することができる。これにより、蓄電装置及び電力変換装置の防水性を維持しつつ、外部との接続を行うことができる。
【0021】
(5)好ましくは、前記蓄電装置及び前記電力変換装置は、それぞれ前記第1隔離壁から隙間を空けて設置されている。
【0022】
このような構成によれば、電力変換装置及び蓄電装置と、第1隔離壁との間には、熱伝導率の比較的低い空気が存在する。このため、電力変換装置及び蓄電装置の一方の排熱が、他方に影響することをより確実に防止することができる。
【0023】
(6)好ましくは、前記筐体の外側に設けられ、前記電力変換装置からの熱を前記内部空間の外へ放出するヒートシンクをさらに備え、前記電力変換装置は、前記筐体の内側において前記背面パネルに固定され、前記ヒートシンクは、前記筐体の外側において前記背面パネルに固定されている。
【0024】
このような構成によれば、ヒートシンクを介して、電力変換装置の熱を筐体の外部へ放出することができる。
【0025】
(7)好ましくは、前記背面パネルの前記天面側空間に面する部分には、開口が形成され、前記ヒートシンクは、前記開口を塞ぐように前記背面パネルに設置され、前記ヒートシンクには、前記背面パネルと前記ヒートシンクとの隙間を埋めるコーキング材が、前記開口の周縁に塗布されており、前記ヒートシンクはさらに、前記コーキング材を塗布する塗布領域よりも内周側に位置する複数のネジ穴と、複数の前記ネジ穴と前記塗布領域との間にそれぞれ位置する複数の穴と、が形成されている。
【0026】
コーキング材をヒートシンクに塗布する際、コーキング材が塗布領域からはみ出す場合がある。この場合において、ネジ穴にコーキング材が浸入すると、ネジ穴へネジを完全に挿入できず、ヒートシンクと背面パネルとの間にコーキング材では埋められない隙間が生じるおそれがある。このような隙間が生じると、当該隙間から水が筐体の内部へ浸入するなどして、筐体の防水性が低下するおそれがある。本開示の構成によれば、ネジ穴と塗布領域との間に穴が形成されているため、塗布領域をはみ出したコーキング材は、穴へ浸入し、ネジ穴まで到達しなくなる。これにより、ネジ穴へのコーキング材の浸入を防止することができ、筐体の防水性を維持することができる。
【0027】
(8)好ましくは、前記ヒートシンクを覆うカバーをさらに備え、前記カバーは、前記筐体の側面にそれぞれ位置する2個の側面パネルをそれぞれ外側から覆う2個の側面領域を有し、2個の前記側面領域には、正面側の縁から背面側へ延びる第1溝と、前記第1溝の背面側端部から天面側へ延びる第2溝と、がそれぞれ形成され、前記カバーは、前記第2溝に挿入されているネジにより前記側面パネルに固定されている。
【0028】
カバーを筐体に取り付ける際、ネジをカバーの側面領域に形成されている第2溝に挿入した後は、作業員がカバーを手放しても、ネジによりカバーが支持される状態が維持される。これにより、作業員は、カバーから手を離し、両手を用いてネジを締結することができる。このように、本開示に係るカバーには、第1溝及び第2溝が形成されているため、カバーを筐体に固定する際の作業性を向上することができる。
【0029】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の蓄電システムの具体例について、図面を参照して説明する。
【0030】
《蓄電システムの全体構成》
図1は、本実施形態に係る蓄電システム1を前方から見下ろした斜視図である。
図2は、本実施形態に係る蓄電システム1を後方から見下ろした斜視図である。蓄電システム1は、筐体2と、蓄電装置71(
図4)と、電力変換装置8(
図4)と、放熱部3と、を備える。筐体2は、
図1に示すように、壁WL1と所定の間隔(例えば、50mm)を空けている状態で、壁WL1に隣接する位置に設置される。本実施形態において、壁WL1は、例えば建物(住宅等)の外壁である。すなわち、本実施形態において、蓄電システム1は屋外に設置される。
【0031】
筐体2は、略直方体状を有し、蓄電装置71、電力変換装置8及びこれらの装置に関する配線設備を収容している。筐体2は六面のパネルにより構成されている。筐体2の六面のパネルのうち、壁WL1側に面するパネルを「背面パネル21」、背面パネル21の反対側のパネルを「正面パネル22」、鉛直方向上側に向くパネルを「天面パネル23」、鉛直方向下側に向くパネルを「底面パネル24」、背面パネル21及び天面パネル23に直交し、
図1中の紙面手前側に位置するパネルを「側面パネル25」、側面パネル25の反対側のパネルを「側面パネル26」と称する。
【0032】
筐体2は、転倒防止のため及び収容される各種装置に強い振動が加えられることを防止するために、複数の固定具4により壁WL1に固定されている。固定具4は、例えば、L字金具である。複数の固定具4は、側面パネル25、26に、それぞれ複数のネジ52により固定されている。また、複数の固定具4は、壁WL1に、それぞれ図示省略するネジにより固定されている。
【0033】
本実施形態において、天面パネル23、底面パネル24及び側面パネル25、26は、1枚の金属板を折り曲げて形成されている枠体20である。背面パネル21と正面パネル22は、それぞれ枠体20とは別体の金属板により構成されており、枠体20にネジにより固定されている。枠体20に、背面パネル21と正面パネル22が固定されている状態で、筐体2は内部空間を形成する。背面パネル21(本開示の「パネル部」の一例)の面積は、底面パネル24(本開示の「底面部」の一例)の面積よりも大きい。
【0034】
《蓄電システムの内部構成》
図3は、正面パネル22を外した状態の筐体2を示す斜視図である。
図3において、筐体2に収容されている蓄電装置71、電力変換装置8及びこれらの装置に関する配線設備は、図示省略している。枠体20の正面側には、内側に延びる「つば27」が形成されている。つば27の正面側には、複数の(例えば、4個の)ネジ受け27aが形成されている。
図1に示すように、正面パネル22を枠体20に装着し、複数の(例えば、4個の)ネジ51を、正面パネル22を介して複数のネジ受け27aへそれぞれ締結することで、正面パネル22が枠体20に固定される。
【0035】
筐体2は、第1隔離壁61と、第2隔離壁62とを有する。第1隔離壁61及び第2隔離壁62は、例えば金属製の板状部材である。第1隔離壁61は、筐体2の内部空間を天面側空間S10と底面側空間S20とに分割する機能を有する。第2隔離壁62は、底面側空間S20を正面側空間S21と背面側空間S22とに分割する機能を有する。
【0036】
天面側空間S10は、正面パネル22が
図1及び
図2に示すように枠体20に固定されている状態(以下、「正面パネル固定状態」と称する。)において、第1隔離壁61と、背面パネル21と、正面パネル22と、天面パネル23と、側面パネル25、26とにより囲まれている空間である。背面パネル21のうち天面側空間S10に面する部分には、
図4に示すように、第1開口21aが設けられている。第1開口21aは、後述のヒートシンク37により筐体2の外側から塞がれている。このため、天面側空間S10の背面側は、背面パネル21及びヒートシンク37によって囲まれている。
【0037】
背面側空間S22は、正面パネル固定状態において、第1隔離壁61と、第2隔離壁62と、背面パネル21と、底面パネル24と、側面パネル25、26とにより囲まれている空間である。正面パネル固定状態において、天面側空間S10及び背面側空間S22は、密閉された領域となる。ここで、「密閉された領域」とは、完全に密閉された領域に限られず、他の空間に対し多少の隙間を有する領域も含む。例えば、第1隔離壁61と背面パネル21との間に多少の隙間があってもよい。
【0038】
正面側空間S21は、正面パネル固定状態において、第1隔離壁61と、第2隔離壁62と、正面パネル22と、底面パネル24と、側面パネル25、26とにより囲まれている空間である。
図3に示すように、底面パネル24のうち第2隔離壁62よりも正面側には、貫通孔24aが形成されている。貫通孔24aは、後述する配線を筐体2の外部から筐体2の内部空間に導くための孔である。このため、正面側空間S21は、密閉された領域とはならない。
【0039】
本実施形態に係る蓄電システム1では、第1隔離壁61と第2隔離壁62とを設けることで、外部との接続が必要な配線設備が設けられる空間(正面側空間S21)と、高い防水性が必要な電気設備(後述の蓄電装置71及び電力変換装置8)が設けられる空間(背面側空間S22及び天面側空間S10)とに分離されている。このため、電気設備が設けられる空間の防水性を維持しつつ、配線設備による外部との接続を行うことができる。
【0040】
図4は、
図1の矢印IVの切断線により切断した蓄電システム1の断面図である。筐体2には、蓄電装置71、電力変換装置8及びこれらの装置に関する配線設備W1~W4、E1が収容されている。
【0041】
《背面側空間の構成》
背面側空間S22には、蓄電装置71と、伝熱材72と、押さえ部材73と、配線W4とが収容されている。蓄電装置71は、充電・放電が可能な2次電池を含む。2次電池は、例えばリチウムイオン電池、溶融塩電解液電池、又は鉛蓄電池等である。この蓄電装置71は、底面(下面)、天面(上面)、正面、背面、及び2つの側面を持つ略直方体状を有する。蓄電装置71の正面及び背面は、底面(下面)、天面(上面)及び側面に比べて、その面積が大きい。蓄電装置71は、面積が相対的に大きい正面又は背面を背面パネル21に対向させた状態で筐体2内に収容される。
【0042】
配線W4は、蓄電装置71と電力変換装置8とを接続する配線のうち第1隔離壁61よりも下方に延びる配線である。第1隔離壁61は、配線W4と後述の配線W2とを電気的に接続する一方で、天面側空間S10と背面側空間S22との水分及び空気の移動を遮断する。例えば、第1隔離壁61には、配線W4を通す孔が設けられている。当該孔に配線W4を通した状態で、当該孔の隙間がコーキング剤によって埋められている。これにより、配線W4を通す孔を介した水分及び空気の移動が遮断される。
【0043】
伝熱材72は、空気よりも高い熱伝導率と、背面パネル21よりも高い弾性(クッション性)を有するシート状の部材であるのが好ましい。伝熱材72の押し込み硬度は、背面パネル21の押し込み硬度よりも低い。このような伝熱材72として、例えばシリコーン樹脂製の放熱用シートを用いることができる。ただし、伝熱材72は、シリコーン樹脂製のシートに限定されず、例えば、非シリコーン樹脂製の放熱用シートであってもよいし、それ以外の放熱用シートであってもよい。伝熱材72はさらに、シート状以外の伝熱部材であってもよい。例えば、伝熱材72の摂氏25度における熱伝導率は、空気の熱伝導率(約0.02W/m・K)の5倍以上の大きさである0.1W/m・K以上であるのが好ましい。伝熱材72は、1枚の放熱用シートで構成されてもよいし、複数枚の放熱用シートで構成されてもよい。
【0044】
伝熱材72の背面側は、背面パネル21と密に接触しており、伝熱材72の正面側は、蓄電装置71と密に接触している。すなわち、蓄電装置71は、伝熱材72を介して背面パネル21と広面積で接触(熱的に接触)している。言い換えると、蓄電装置71と背面パネル21との間の空間には、伝熱材72が敷き詰められている。本実施形態において、伝熱材72と背面パネル21とを含む領域を「放熱領域9」と称する。放熱領域9は、蓄電装置71と熱的に接触し、蓄電装置71の熱を筐体2の外部へ放出する領域である。なお、伝熱材72がシート状の部材である場合、その大きさ(面積)は、蓄電装置71の正面又は背面より若干小さいか同程度以上であるのが好ましい。伝熱材72の厚みは、特に限定されないが、背面パネル21及び蓄電装置71と密に接触可能な範囲内で極力小さいのが好ましい。
【0045】
押さえ部材73は、一方の端部が第2隔離壁62に固定されている状態で、他方の端部により蓄電装置71を背面側へ押さえつける部材である。押さえ部材73は、金属製の板状部材又は棒状部材であってもよいし、板ばね、コイルばね等の弾性変形により蓄電装置71を背面側へ付勢する部材であってもよい。押さえ部材73により、蓄電装置71は、底面パネル24上に据え置かれている状態で、伝熱材72に押し付けられている。伝熱材72は、背面パネル21よりも低い押し込み硬度を有するため、伝熱材72のうち蓄電装置71と接触している部分は、蓄電装置71の表面形状に応じて変形する。特に、伝熱材72は、背面パネル21よりも高い弾性を有するため、蓄電装置71の表面形状により詳細に応じて変形する。これにより、蓄電装置71と伝熱材72は隙間なく接触している。
【0046】
また、伝熱材72は、蓄電装置71により背面パネル21に押し付けられている。このため、伝熱材72のうち背面パネル21と接触している部分は、背面パネル21の形状に応じて変形する。これにより、伝熱材72と背面パネル21は隙間なく、かつ、広い接触面積で接触している。そして、伝熱材72は、空気の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有し、かつ蓄電装置71と隙間なく接触しているため、蓄電装置71の熱をより多く取り込むことができる。また、伝熱材72は、背面パネル21と隙間なく接触しているため、伝熱材72が蓄電装置71から取り込んだ熱を背面パネル21を介して筐体2の外部へ放出することができる。
【0047】
すなわち、蓄電装置71及び背面パネル21の表面に凹凸がある場合であっても、伝熱材72を介すことで、蓄電装置71及び背面パネル21の間に生じる隙間をより少なくすることができる。これにより、背面パネル21は、伝熱材72を介して蓄電装置71からより効率的に熱を取り込み、筐体2の外部へ当該熱を放出することができる。このような構成によれば、背面側空間S22における密閉性を高くした場合でも、密閉された背面側空間S22に載置される蓄電装置71を良好に冷却することができる。
【0048】
なお、蓄電装置71と伝熱材72との間の熱伝導率を向上するために、伝熱材72の正面側にグリスを塗布し、蓄電装置71との密着性を高めるように構成してもよい。また、伝熱材72として、グリスを用いてもよい。すなわち、上記のように蓄電装置71と背面パネル21との間にシートを設置する構成に代えて、蓄電装置71と背面パネル21との間にグリスを充填する構成としてもよい。
【0049】
また、伝熱材72を用いず、蓄電装置71を直接、背面パネル21へ接触させる構成であってもよい。このように構成する場合、蓄電装置71の熱は空気を介さずに直接、背面パネル21に伝導する。そして、背面パネル21は、蓄電装置71から吸収した熱を外部に放出する。この場合、背面パネル21のみが、本開示に係る「放熱領域9」を構成する。背面パネル21は金属製であり、空気よりも高い熱伝導率を有するため、より良好に蓄電装置71を冷却することができる。
【0050】
すなわち、蓄電装置71は、背面パネル21と熱的に接触している。換言すれば、蓄電装置71は、背面パネル21と、空気を介するよりも熱交換率が高い状態で、直接又は間接的に(例えば、伝熱材72を間に介して)接触している。本実施形態では、蓄電装置71の正面又は背面が、背面パネル21と熱的に接触している。
【0051】
《正面側空間の構成》
正面側空間S21には、配線W3と、端子E1とが収容されている。配線W3の一方側の端部は、端子E1と電気的に接続している。配線W3の他方側の端部は、底面パネル24の貫通孔24aから筐体2の外部に導出され、図示省略する太陽光発電装置及び家庭用負荷分電盤と接続している。
【0052】
端子E1は、配線W3と後述の配線W1とを電気的に接続する端子であり、第1隔離壁61の底面側に設けられている。第1隔離壁61は、端子E1と後述の配線W1とを電気的に接続する一方で、天面側空間S10と正面側空間S21との水分及び空気の移動を遮断している。
【0053】
《天面側空間の構成》
天面側空間S10には、電力変換装置8と、配線W1、W2とが収容されている。電力変換装置8は、いわゆるパワーコンディショナであり、直流と交流とを相互に変換する装置である。また、電力変換装置8は、電圧を昇圧又は降圧する機能を有していてもよい。電力変換装置8は、背面パネル21にネジ等により固定されている。電力変換装置8には、配線W1、W2がそれぞれ電気的に接続されている。
【0054】
図示省略する太陽光発電装置が発電を行う際、電力変換装置8には、太陽光発電装置により発電された電力が配線W3、端子E1及び配線W1を介して入力される。そして、電力変換装置8は、当該電力を適宜変換したうえで、変換後の電力を配線W2及び配線W4を介して蓄電装置71に出力する。蓄電装置71は、電力変換装置8から入力される電力により、充電を行う。また、蓄電装置71に蓄電された電力を使用する際、電力変換装置8は配線W4及び配線W2を介して蓄電装置71から入力される直流電流を交流電流に変換して、配線W1、端子E1及び配線W3を介して家庭用負荷分電盤へ交流電流を供給する。
【0055】
ここで、電力変換装置8と、蓄電装置71は、それぞれ使用に適する温度範囲があり、当該温度範囲を超えると、装置の動作効率の低下や、停止、故障が生じるおそれがある。このため、電力変換装置8及び蓄電装置71の一方の排熱が、他方に影響することを防止する必要がある。例えば、蓄電装置71が溶融塩電解液電池である場合、塩を溶融状態に保つために、動作に必要な温度範囲は当該塩の融点以上の範囲となる(例えば、摂氏50度以上)。これに対し、電力変換装置8の使用に適する温度範囲は、例えば摂氏0度から摂氏40度であり、摂氏50度を超えると電力変換装置8に内蔵されている保護機能(温度抑制機能)が発生し、電力変換装置8が停止する場合がある。このため、蓄電装置71の熱が電力変換装置8に伝わることを防止する必要がある。
【0056】
本実施形態に係る蓄電システム1では、
図4に示すように、電力変換装置8は天面側空間S10に収容され、蓄電装置71は背面側空間S22に収容されている。天面側空間S10及び背面側空間S22は、いずれも密閉された空間であり、第1隔離壁61により隔離されているため、互いに空気がほとんど行き来しない。このような構成により、電力変換装置8及び蓄電装置71の排熱が、互いに影響することを防止することができる。さらに、電力変換装置8及び蓄電装置71は、それぞれ第1隔離壁61と隙間を空けて配置されている。すなわち、電力変換装置8及び蓄電装置71と、第1隔離壁61との間には、熱伝導率の比較的低い空気が存在する。例えば、空気の熱伝導率は、金属板により構成されている第1隔離壁61の熱伝導率よりも低い。このため、電力変換装置8及び蓄電装置71の一方の排熱が、他方に影響することをより確実に防止することができる。
【0057】
さらに、電力変換装置8及び蓄電装置71は、いずれも筐体2の背面側に設けられている。
図1に示すように、筐体2は背面側を壁WL1に面する状態で設置されているため、筐体2の正面・側面側又は壁WL1により日光が遮られることで、背面側に直射日光が当たりにくい。これにより、電力変換装置8及び蓄電装置71が日光により熱せられることを防止することができ、電力変換装置8及び蓄電装置71の使用温度範囲内での動作をより良好に維持することができる。
【0058】
特に、正面側空間S21は、直射日光により温められやすい。蓄電装置71を背面側空間S22に収容し、第2隔離壁62により正面側空間S21と空間を分割することにより、蓄電装置71が日光により熱せられることを防止することができる。これにより、蓄電装置71の使用温度範囲内での動作をより良好に維持することができる。
【0059】
《放熱部の構成》
図4を参照する。放熱部3は、電力変換装置8の熱を筐体2の外部へ放熱するための装置である。放熱部3は、カバー30と、ヒートシンク37とを有する。ヒートシンク37は、背面パネル21に後述のネジ55(
図7)により取付けられている。カバー30は、ヒートシンク37が砂塵等で汚染されるのを防止するための部材であり、ヒートシンク37を背面、天面、底面及び両側面側から覆っている。カバー30は、例えば表面が防錆塗装された金属(例えば、鉄)により形成されている。
【0060】
図5は、カバー30の側面図である。カバー30は、天面領域31と、天面側傾斜領域32と、第1背面領域33と、底面側傾斜領域34と、第2背面領域35と、2個の側面領域36、36とを有する。これらの領域31~36は、1枚の板状部材を折り曲げることで形成されてもよいし、複数の板状部材を例えば溶接等により繋ぎ合わせることで形成されてもよい。
【0061】
天面領域31は、天面パネル23に沿う方向に延びる領域である。天面領域31は、天面パネル23に外側から接触している。天面側傾斜領域32は、天面側から背面側へ傾斜する方向(例えば、天面及び背面との角度がそれぞれ45度となる方向)に延びる領域である。天面側傾斜領域32は、天面側の端部が天面領域31と接続し、底面側の端部が第1背面領域33と接続している。第1背面領域33は、背面パネル21に平行な方向に延びる領域である。背面パネル21と第1背面領域33との隙間は、ヒートシンク37の正面側から背面側に向かう方向(以下、「前後方向」と称する。)の幅よりも大きい。
【0062】
底面側傾斜領域34は、背面側から底面側へ傾斜する方向(例えば、背面及び底面との角度がそれぞれ45度となる方向)に延びる領域である。底面側傾斜領域34は、天面側の端部が第1背面領域33と接続し、底面側の端部が第2背面領域35と接続している。第2背面領域35は、背面パネル21に平行な方向に延びる領域である。第2背面領域35は、第1背面領域33よりも底面側に位置する。背面パネル21と第2背面領域35との隙間G1は、ヒートシンク37の前後方向の幅よりも小さい。隙間G1は、例えば1mmである。天面領域31、天面側傾斜領域32、第1背面領域33、底面側傾斜領域34及び第2背面領域35は、それぞれ側面パネル25から側面パネル26までの幅を有している。
【0063】
2個の側面領域36、36は、それぞれ側面パネル25、26に沿う方向に延びる領域である。一方の側面領域36は、側面パネル25に外側から接触している。また、他方の側面領域36は、側面パネル26に外側から接触している。すなわち、2個の側面領域36、36は、側面パネル25、26をそれぞれ外側から覆っている。
【0064】
側面領域36には、L字状の溝部360が形成されている。溝部360は、側面領域36の正面側の縁から背面側へ延びる第1溝361と、第1溝361の背面側端部から天面側へ延びる第2溝362とを有する。第1溝361及び第2溝362の幅は、それぞれネジ53の呼び径よりも大きい。また、側面領域36には、溝部360よりも底面側にネジ穴363が形成されている。
【0065】
図2を参照する。天面側傾斜領域32には、複数の第2開口32aが形成されている。また、第1背面領域33には、複数の第3開口33aが形成されている。また、上記したように第2背面領域35と背面パネル21との間には隙間G1が形成されている。カバー30は、ヒートシンク37を覆うことでヒートシンク37の汚染を防止する。一方で、カバー30は、第2開口32a、第3開口33a及び隙間G1からカバー30の内部へ自然に空気を取り込み、ヒートシンク37により熱せられた空気を第2開口32a、第3開口33a及び隙間G1からカバー30の外部へ自然に排出する。
【0066】
ここで、天面側の開口として第2開口32a、第3開口33aが設けられ、底面側の開口として隙間G1が設けられており、空気が上下に流れることでヒートシンク37は良好に冷却される。第2開口32a、第3開口33aの両方が塞がれると、空気の流れを形成できず、ヒートシンク37の冷却が阻害されるおそれがある。また、蓄電システム1を設置する場所によっては、カバー30の背面側及び天面側のいずれか一方が、壁WL1に覆われる場合がある。
【0067】
本実施形態では、天面側傾斜領域32及び第1背面領域33の両方にそれぞれ第2開口32a、第3開口33aを設けている。このような構成によれば、カバー30の背面側及び天面側のいずれか一方が壁WL1に覆われることで、第2開口32a及び第3開口33aのいずれか一方が塞がれる場合であっても、他方の開口により空気の流れを維持することができる。これにより、ヒートシンク37を良好に冷却することができる。
【0068】
また、カバー30に浸入した水は、隙間G1から下方に流れることで排出される。このため、背面パネル21と第2背面領域35との隙間G1は、空気を流す通気孔としての機能のほか、浸入した水を排出する水抜き孔としての機能も有する。特に、隙間G1はカバー30の底面側の幅方向の全面にわたって形成されているため、水がカバー30の底面側に貯まることを防止でき、良好にカバー30から水を抜くことができる。
【0069】
図6は、背面パネル21に未装着の状態におけるヒートシンク37の斜視図である。
図7は、
図4のヒートシンク37を含む部分を拡大して示す断面図である。ヒートシンク37は、金属板(例えば、アルミ板)により構成されている本体371を有する。本体371のうち背面パネル21に固定される際に背面パネル21側を向く面には、複数のネジ穴372が形成されている。また、本体371と背面パネル21との隙間を埋めるために、本体371の背面パネル21側の周縁部には、全周にわたってコーキング材S1が塗布されている。コーキング材S1を塗布する塗布領域は、ネジ穴372よりも外周側である。なお、当該周縁部の一部において、コーキング材S1が塗布されない領域があってもよい。例えば、ヒートシンク37を背面パネル21に固定した際、当該周縁部のうち鉛直方向下側(底面側)に位置する部分からは、水が浸入しにくいため、当該部分についてコーキング材S1の塗布を省略してもよい。
【0070】
さらに、本体371には、ネジ穴372よりも外周側で、かつ塗布領域の内周側に位置する複数の逃がし穴373が形成されている。逃がし穴373は、コーキング材S1がネジ穴372に浸入することを防止するための穴である。ネジ穴372及び逃がし穴373は、いずれも本体371を貫通しない溝状の穴(非貫通の穴)である。また、本実施形態において、逃がし穴373の深さは、ネジ穴372よりも浅い。
【0071】
図7に示すように、コーキング材S1が塗布された状態の本体371は、背面パネル21の第1開口21aを外側から塞ぐように設置される。そして、ネジ55を、背面パネル21のネジ穴21bを介して、ネジ穴372へ挿入することで、本体371にネジ55を締結する。これにより、本体371は背面パネル21に固定される。
【0072】
コーキング材S1を本体371に塗布する際、コーキング材S1が塗布領域からはみ出す場合がある。この場合において、ネジ穴372にコーキング材S1が浸入すると、ネジ穴372へネジ55を完全に挿入できず、本体371と背面パネル21との間にコーキング材S1では埋められない隙間が生じるおそれがある。このような隙間が生じると、当該隙間から水が筐体2の内部(具体的には、天面側空間S10)へ浸入するなどして、筐体2の防水性が低下するおそれがある。
【0073】
本実施形態に係る蓄電システム1によれば、ヒートシンク37に逃がし穴373が形成されているため、塗布領域をはみ出したコーキング材S1は、逃がし穴373へ浸入し、ネジ穴372まで到達しなくなる。これにより、ネジ穴372へのコーキング材S1の浸入を防止することができ、筐体2の防水性を維持することができる。
【0074】
また、ヒートシンク37の大型化を抑制するため、ネジ穴372、逃がし穴373及び塗布領域は、互いに近接して設けられる。このため、本体371のうちネジ穴372と逃がし穴373の間に位置する部分の強度(例えば、剛性)が、他の部分と比べて弱くなるおそれがある。本実施形態では、逃がし穴373の深さをネジ穴372よりも浅く設けることで、ヒートシンク37の強度低下を抑制することができる。
【0075】
本実施形態において、逃がし穴373は、平面視するとネジ穴372を外周側から覆う円弧形状を有する。また、逃がし穴373は、ネジ穴372とは異なりネジ等を挿入する必要はなく、ネジ穴372と塗布領域との間の狭い領域に形成されるため、一方の幅(例えば、
図7の上下方向の幅)がネジ穴372の直径よりも短く、他方の幅(例えば、
図7の紙面方向の幅)がネジ穴372の直径よりも長い形状とされる。このように構成することで、塗布領域とネジ穴372との距離を短く保ちつつ(すなわち、ヒートシンク37の大型化を抑制しつつ)、ネジ穴372にコーキング材S1が浸入することを防止することができる。
【0076】
なお、逃がし穴373は、円弧形状のほか、長穴形状であってもよいし、1個のネジ穴372に対して複数個設けられる丸穴形状であってもよい。
【0077】
《カバーの装着方法》
次に、筐体2へのカバー30の装着方法について、
図2及び
図5を適宜参照しながら説明する。カバー30は、作業員の手作業により、筐体2へ装着される。カバー30を筐体2に装着する際、作業員は、はじめに2個のネジ53、53を側面パネル25、26へそれぞれ緩く締結する。このとき、ネジ53、53の胴部が側面パネル25、26の外側に見えており、ネジ53、53の頭部が側面パネル25、26と接しない程度に緩く締結する。
【0078】
次に、作業員はカバー30を両手で持ち、カバー30を筐体2の背面の斜め上側から筐体2へ被せる。そして、作業員は、側面パネル25、26においてそれぞれ突出しているネジ53、53の胴部に、カバー30の溝部360、360を挿入する。この際、ネジ53の胴部は、まず第1溝361を通過して、第2溝362に至る。続いて、作業員は、ネジ53、53を完全に締結し、さらにネジ54、54をネジ穴363、363に締結する。
【0079】
ここで、ネジ53を溝部360の第2溝362に挿入した後は、作業員がカバー30を手放しても、ネジ53によりカバー30が支持される状態が維持される。これにより、作業員は、カバー30から手を離し、両手を用いてネジ53、54を締結することができる。このように、本実施形態に係るカバー30には、L字状の溝部360が形成されているため、カバー30を筐体2に固定する際の作業性を向上することができる。
【0080】
《その他》
上記の実施形態では、屋外に筐体2を設置する。しかしながら、筐体2は屋内に設置されてもよい。上記の実施形態では、筐体2から取り外し可能な正面パネル22が設けられているが、正面パネル22ではなく側面パネル25、26のいずれか一方が筐体2から取り外し可能に設けられていてもよい。
【0081】
上記の実施形態では、蓄電装置71を、その正面又は背面が背面パネル21と熱的に接触させた状態で筐体2内に収納する例について示した。しかしながら、本開示はこのような実施形態には限定されない。蓄電装置71と熱的に接触する筐体2のパネルは背面パネル21以外であってもよい。また、蓄電装置71は、正面又は背面以外の面(例えば側面)を筐体2と熱的に接触させてもよい。ただし、放熱性の観点からは、筐体21の相対的に面積が大きいパネル部分と、蓄電装置71の相対的に面積が大きい面とを熱的に接触させるのが好ましい。加えて、蓄電装置71の複数の面が筐体2と熱的に接触されていてもよい。これにより、放熱性をより高めることができる。
【0082】
《補記》
なお、上述の実施形態については、その少なくとも一部を、相互に任意に組み合わせてもよい。また、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0083】
1 蓄電システム
2 筐体
20 枠体
21 背面パネル(パネル部)
21a 第1開口
21b ネジ穴
22 正面パネル
23 天面パネル
24 底面パネル(底面部)
24a 貫通孔
25、26 側面パネル
27 つば
27a ネジ受け
3 放熱部
30 カバー
31 天面領域
32 天面側傾斜領域
32a 第2開口
33 第1背面領域
33a 第3開口
34 底面側傾斜領域
35 第2背面領域
36、36 側面領域
360 溝部
361 第1溝
362 第2溝
363 ネジ穴
37 ヒートシンク
371 本体
372 ネジ穴
373 逃がし穴
4 固定具
51、52、53、54、55 ネジ
61 第1隔離壁
62 第2隔離壁
71 蓄電装置
72 伝熱材
73 押さえ部材
8 電力変換装置
9 放熱領域
WL1 壁
S10 天面側空間
S20 底面側空間
S21 正面側空間
S22 背面側空間
W1、W2、W3、W4 配線
E1 端子
G1 隙間
S1 コーキング材