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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】点火プラグ
(51)【国際特許分類】
   H01T 13/20 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
H01T13/20 C
H01T13/20 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020151264
(22)【出願日】2020-09-09
(65)【公開番号】P2022045593
(43)【公開日】2022-03-22
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】高田 健一朗
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-053175(JP,A)
【文献】特開昭52-125946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸孔(200)の形成された絶縁碍子(20)と、
前記軸孔の中心軸(CX)に沿った一方側端部となる位置において、前記絶縁碍子に保持された中心電極(30)と、
前記軸孔の中心軸に沿った他方側端部となる位置において、前記絶縁碍子に保持された端子金具(40)と、
前記軸孔のうち、前記中心電極と前記端子金具との間に配置された複数の抵抗体(310,320)と、を備え、
前記軸孔の内部に形成された空間のうち、複数の前記抵抗体が配置されている部分のことを保持空間(210)としたときに、
前記中心電極側となる位置における前記保持空間の内径は、前記端子金具側となる位置における前記保持空間の内径よりも小さくなっており、
複数の前記抵抗体には、前記中心電極側に配置された第1抵抗体(310)と、前記端子金具側に配置された第2抵抗体(320)と、が含まれており、
前記第1抵抗体の電気抵抗の値が、前記第2抵抗体の電気抵抗の値よりも大きく、
前記第1抵抗体と前記中心電極との間、前記第1抵抗体と前記第2抵抗体との間、及び、前記第2抵抗体と前記端子金具との間、のそれぞれには、いずれの前記抵抗体よりも電気抵抗の低い導電性シール層(410,420,430)が配置されている点火プラグ。
【請求項2】
前記保持空間には、
最も前記中心電極側となる位置に形成された第1保持空間(211)と、
前記第1保持空間よりも前記端子金具側となる位置に形成された第2保持空間(212)と、
前記第2保持空間よりも前記端子金具側となる位置に形成された第3保持空間(213)と、が含まれており、
前記第2保持空間の内径は、前記第3保持空間の内径よりも小さく、前記第1保持空間の内径は、前記第2保持空間の内径よりも小さい、請求項1に記載の点火プラグ。
【請求項3】
前記第1保持空間と前記第2保持空間との間、及び、前記第2保持空間と前記第3保持空間との間、のそれぞれには、前記軸孔の中心軸に沿って前記中心電極側に行くほど内径の小さくなる縮径部(214,215)が形成されている、請求項2に記載の点火プラグ。
【請求項4】
前記第1抵抗体と前記第2抵抗体との間にある前記導電性シール層は、その全体が前記第2保持空間に配置されている、請求項2又は3に記載の点火プラグ。
【請求項5】
前記第1抵抗体は、前記第1保持空間及び前記第2保持空間の両方に跨る位置に配置されており、
前記第2抵抗体は、前記第2保持空間及び前記第3保持空間の両方に跨る位置に配置されている、請求項4に記載の点火プラグ。
【請求項6】
前記第1抵抗体のうち前記第2保持空間に配置されている部分の、前記軸孔の中心軸に沿った長さ(L12)は、
前記第2抵抗体のうち前記第2保持空間に配置されている部分の、前記軸孔の中心軸に沿った長さ(L21)よりも長い、請求項5に記載の点火プラグ。
【請求項7】
前記第1抵抗体のうち前記第1保持空間に配置されている部分の、前記軸孔の中心軸に沿った長さ(L11)は、
前記第1抵抗体のうち前記第2保持空間に配置されている部分の、前記軸孔の中心軸に沿った長さ(L12)よりも長い、請求項5又は6に記載の点火プラグ。
【請求項8】
前記第2抵抗体のうち前記第2保持空間に配置されている部分の、前記軸孔の中心軸に沿った長さ(L21)は、
前記第2抵抗体のうち前記第3保持空間に配置されている部分の、前記軸孔の中心軸に沿った長さ(L22)よりも長い、請求項5乃至7のうちいずれか1項に記載の点火プラグ。
【請求項9】
前記第1抵抗体を構成する材料の比抵抗の値と、前記第2抵抗体を構成する材料の比抵抗の値と、が互いに異なる、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の点火プラグ。
【請求項10】
前記第1抵抗体を構成する材料の比抵抗の値が、前記第2抵抗体を構成する材料の比抵抗の値よりも大きい、請求項9に記載の点火プラグ。
【請求項11】
前記第2抵抗体と前記端子金具との間に配置された前記導電性シール層の、前記軸孔の中心軸に沿った長さ(L03)は、
前記第1抵抗体と前記中心電極との間に配置された前記導電性シール層の、前記軸孔の中心軸に沿った長さ(L01)よりも長い、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の点火プラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は点火プラグに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両に搭載される内燃機関には、燃料への点火を行うための点火プラグが設けられる。点火プラグは、中心電極と接地電極とを備えており、これらが互いに離間した状態で設けられている。燃料への点火が行われる際には、中心電極と接地電極との間に高電圧が印加され、両電極間において火花放電が生じる。
【0003】
下記特許文献1に記載されているように、点火プラグの内部には、火花放電に伴う電磁ノイズの発生を抑制するための抵抗体が配置されるのが一般的である。このような構成の点火プラグでは、火花放電が繰り返されることに伴って抵抗体の電気抵抗が大きくなり、短期間のうちに十分な着火性能が得られなくなってしまうことがある。抵抗体の電気抵抗の増加は、カーボンにより形成された抵抗体の温度が局所的に上昇し、当該部分を起点として、カーボンの酸化が周囲に進行してしまうためと考えられる。このような電気抵抗の増加は、抵抗体のうち先端側部分、すなわち中心電極側の部分において特に生じやすい。
【0004】
そこで、下記特許文献1では、抵抗体のうち先端側部分の電気抵抗が、他の部分の電気抵抗よりも小さくなるように、抵抗体の各部におけるカーボンの含有量を調整することが提案されている。下記特許文献1では、抵抗体の各部における電気抵抗の分布をこのように調整することで、先端側部分において生じるジュール熱を抑制し、当該部分における酸化を抑制することができる旨記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5795129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、抵抗体の局所的な温度上昇及び酸化が生じる原因について、鋭意研究を行った。その結果、抵抗体の局所的な温度上昇は、抵抗体を構成する材料の気孔率が大きい部分で最初に生じ、当該部分から周囲へと酸化が進行して行く、という知見が得られている。抵抗体は、カーボンやガラス等からなる粉体を、点火プラグの絶縁碍子内の空間に充填して加熱することにより形成されるのであるが、抵抗体のうち先端側部分、すなわち中心電極側の部分においては、材料の粉体を充填した際において気孔率が特に大きくなりやすい傾向がある。
【0007】
このため、上記特許文献1に記載されているように、抵抗体の各部におけるカーボンの含有量を調整したとしても、抵抗体のうち例えば先端側部分において気孔率が大きくなっている場合には、当該部分における温度上昇及び酸化を十分に抑制することは難しいと考えられる。
【0008】
本開示は、抵抗体の温度上昇及び酸化を抑制することのできる点火プラグ、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る点火プラグ(10)は、軸孔(200)の形成された絶縁碍子(20)と、軸孔の中心軸(CX)に沿った一方側端部となる位置において、絶縁碍子に保持された中心電極(30)と、軸孔の中心軸に沿った他方側端部となる位置において、絶縁碍子に保持された端子金具(40)と、軸孔のうち、中心電極と端子金具との間に配置された複数の抵抗体(310,320)と、を備える。軸孔の内部に形成された空間のうち、複数の抵抗体が配置されている部分のことを保持空間(210)としたときに、中心電極側となる位置における保持空間の内径は、端子金具側となる位置における保持空間の内径よりも小さくなっており、複数の抵抗体には、中心電極側に配置された第1抵抗体(310)と、端子金具側に配置された第2抵抗体(320)と、が含まれており、第1抵抗体と中心電極との間、第1抵抗体と第2抵抗体との間、及び、第2抵抗体と端子金具との間、のそれぞれには、いずれの抵抗体よりも電気抵抗の低い導電性シール層(410,420,430)が配置されている。
【0010】
このような構成の点火プラグでは、端子金具側よりも中心電極側の方が狭くなるように保持空間が形成されており、このような形状の保持空間に複数の抵抗体が配置されている。抵抗体の材料、すなわち、カーボンやガラス等からなる粉体が、上記形状の保持空間に充填され加圧されると、比較的狭くなっている中心電極側の部分では、端子電極側の部分に比べて、粉体に加えられる圧力が大きくなる。その結果、中心電極側の部分における抵抗体の気孔率が上記圧力により小さくなるので、従来に比べて、抵抗体の局所的な温度上昇及び酸化の発生を抑制することが可能となる。
【0011】
また、上記構成の点火プラグでは、抵抗体が、複数に分かれた状態で保持空間に配置されている。このような構成の点火プラグの製造時においては、抵抗体の材料である粉体の充填及び加圧が複数回に分けて行われることとなる。その結果、抵抗体の各部における気孔率を更に小さくすることができるので、上記のような保持空間の形状と併せて、抵抗体の温度上昇及び酸化の発生を更に抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、抵抗体の温度上昇及び酸化を抑制することのできる点火プラグ、が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、第1実施形態に係る点火プラグの内部構成を示す図である。
図2図2は、図1の一部の構成を拡大して模式的に示す図である。
図3図3は、導電性シール層等の「長さ」の定義について説明するための図である。
図4図4は、第1実施形態に係る点火プラグの製造工程を説明するためのフローチャートである。
図5図5は、第2実施形態に係る点火プラグの内部構成を示す図である。
図6図6は、第3実施形態に係る点火プラグの内部構成を示す図である。
図7図7は、第4実施形態に係る点火プラグの内部構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0015】
第1実施形態に係る点火プラグ10の構成について、図1を参照しながら説明する。尚、図1においては、点火プラグ10を、後述の中心軸CXに沿って切断した場合の断面が左側部分に示されている。ただし、点火プラグ10を構成する部材のうち中心電極30及び端子金具40については、断面ではなくそれぞれの外観が示されている。
【0016】
点火プラグ10は、不図示の内燃機関の各気筒に設けられ、当該気筒の燃焼室において燃料への着火を行うための装置である。点火プラグ10は、絶縁碍子20と、中心電極30と、端子金具40と、ハウジング50と、接地電極60と、を備えている。
【0017】
絶縁碍子20は、例えばアルミナ等の絶縁材料により形成された筒状の部材である。絶縁碍子20には軸孔200が形成されている。軸孔200は、絶縁碍子20をその中心軸に沿って貫くように形成された貫通孔である。軸孔200の中心軸は、絶縁碍子20の中心軸と一致している。軸孔200の中心軸のことを、以下では「中心軸CX」とも表記する。
【0018】
絶縁碍子20を、中心軸CXに対し垂直に切断した場合の断面においては、軸孔200の形状は円形となっている。ただし、当該円の直径、すなわち軸孔200の内径の大きは、軸孔200の全体において一様とはなっておらず、中心軸CXに沿った位置により異なる大きさとなっている。軸孔200の具体的な形状については後に説明する。
【0019】
中心電極30は、軸孔200のうち、中心軸CXに沿った一方側の端部(図1では下方側の端部)となる位置において、絶縁碍子20により保持されている金属製の部材である。中心電極30は棒状の部材であり、その大部分が軸孔200の内側に配置されている。中心電極30の一部は、軸孔200から絶縁碍子20の外側へと突出しており、その突出している部分の先端には放電チップ31が取り付けられている。
【0020】
端子金具40は、軸孔200のうち、中心軸CXに沿った他方側の端部(図1では上方側の端部)となる位置において、絶縁碍子20により保持されている金属製の部材である。端子金具40は棒状の部材であり、その大部分が軸孔200の内側に配置されている。端子金具40の一部は、軸孔200から絶縁碍子20の外側へと突出している。この突出している部分は、不図示の外部電源から電圧が印加される電極端子となっている。軸孔200のうち、端子金具40と中心電極30との間には、両者を電気的に接続するための部材が配置されているのであるが、当該部材については後に説明する。
【0021】
尚、絶縁碍子20のうち、中心軸CXに沿って中心電極30が取り付けられている方のことを、以下では「先端側」とも表記する。また、絶縁碍子20のうち、中心軸CXに沿って端子金具40が取り付けられている方のことを、以下では「後端側」とも表記する。
【0022】
ハウジング50は、絶縁碍子20の一部を外周側から覆うように設けられた金属製の部材である。ハウジング50の外周面には雄螺子201が形成されている。点火プラグ10が内燃機関に取り付けられる際には、内燃機関に形成された雌螺子と、雄螺子201とが互いに螺合することとなる。点火プラグ10が内燃機関に取り付けられた状態においては、ハウジング50の電位は、内燃機関と共に接地電位となる。
【0023】
接地電極60は、ハウジング50のうち先端側の端部から、更に先端側へと伸びるように形成された金属製の部材である。接地電極60は屈曲しており、その一部が、中心軸CXに沿って中心電極30の放電チップ31と対向した状態となっている。接地電極60のうち放電チップ31と対向する部分には、接地側チップ61が取り付けられている。接地側チップ61と放電チップ31との間に形成された隙間が、放電ギャップとなっている。
【0024】
図1及び図2を参照しながら、軸孔200の内部における構成等について説明する。図2は、図1の一部、具体的には軸孔200の内部の構成を、拡大して模式的に描いた図となっている。軸孔200は、上記のように中心電極30と接地電極60とのそれぞれを保持する他、両電極を電気的につなぐ部材をも保持している。当該部材には、第1導電性シール層410と、第1抵抗体310と、第2導電性シール層420と、第2抵抗体320と、第3導電性シール層430と、が含まれている。尚、軸孔200の内部に形成された空間のうち、第1抵抗体310や第2抵抗体320を含む上記各部材が配置されている部分のことを、以下では「保持空間210」とも表記する。
【0025】
上記各部材のうち、第1抵抗体310及び第2抵抗体320は、接地電極60から中心電極30に至る電路の電気抵抗を調整するために配置された部材である。それぞれの抵抗体はいずれも、粉末状のガラス及びジルコニアに対し所定量のカーボン粉末を添加した材料、により形成されている。第1抵抗体310及び第2抵抗体320のそれぞれの電気抵抗は、上記のカーボン添加量によって調整されている。接地電極60から中心電極30に至る電路に、このような第1抵抗体310及び第2抵抗体320が配置されることで、点火プラグ10の火花放電に伴う電磁ノイズの発生が抑制される。このように、本実施形態に係る点火プラグ10では、電磁ノイズの発生を抑制するための抵抗体が複数配置されている。
【0026】
第1抵抗体310は、中心軸CXに沿って先端側となる位置に配置され、第2抵抗体320は、中心軸CXに沿って後端側となる位置に配置されている。このように、軸孔200のうち、中心電極30と端子金具40との間の保持空間210には、複数の抵抗体(第1抵抗体310、第2抵抗体320)が中心軸CXに沿って並ぶように配置されている。
【0027】
中心電極30と第1抵抗体310との間は離間しており、両者の間の隙間を埋めるように第1導電性シール層410が配置されている。また、第1抵抗体310と第2抵抗体320の間は離間しており、両者の間の隙間を埋めるように第2導電性シール層420が配置されている。更に、第2抵抗体320と端子金具40との間は離間しており、両者の間の隙間を埋めるように第3導電性シール層430が配置されている。
【0028】
第1導電性シール層410、第2導電性シール層420、及び第3導電性シール層430は、いずれも、粉末状のガラスに対し銅粉末を添加した材料、により形成されている。各導電性シール層の電気抵抗は、第1抵抗体310及び第2抵抗体320のいずれの電気抵抗よりも十分に低くなっている。第1導電性シール層410、第2導電性シール層420、及び第3導電性シール層430は、その両側にある各部材を電気的に接続するための部材として配置されている。
【0029】
保持空間210が形成されている部分においては、軸孔200の内径は全体において一様とはなっておらず、後端側から先端側に行くに従って段階的に小さくなって行く。保持空間210のうち最も先端側(つまり、最も中心電極30側)の部分においては、軸孔200の内径は最も小さくなっている。保持空間210のうち当該部分のことを、以下では「第1保持空間211」とも表記する。第1保持空間211においては、軸孔200の内径は各部で等しくなっている。第1保持空間211における軸孔200の内径のことを、以下では「D1」とも表記する。
【0030】
保持空間210のうち、第1保持空間211よりも後端側(つまり、端子金具40側)となる部分においては、軸孔200の内径は、第1保持空間211における内径D1よりも大きくなっている。保持空間210のうち当該部分のことを、以下では「第2保持空間212」とも表記する。第2保持空間212においては、軸孔200の内径は各部で等しくなっている。第2保持空間212における軸孔200の内径のことを、以下では「D2」とも表記する。
【0031】
保持空間210のうち、第2保持空間212よりも更に後端側となる部分においては、軸孔200の内径は、第2保持空間212における内径D2よりも更に大きくなっている。保持空間210のうち当該部分のことを、以下では「第3保持空間213」とも表記する。第3保持空間213においては、軸孔200の内径は各部で等しくなっている。第3保持空間213における軸孔200の内径のことを、以下では「D3」とも表記する。
【0032】
保持空間210のうち、互いに内径の異なる第1保持空間211と第2保持空間212との間は、縮径部214により接続されている。同様に、互いに内径の異なる第2保持空間212と第3保持空間213との間は、縮径部215により接続されている。縮径部214及び縮径部215のそれぞれにおいては、中心軸CXに沿って先端側(つまり中心電極30側)に行くほど、軸孔200の内径が次第に小さくなっている。
【0033】
以上のように、本実施形態における保持空間210には、最も中心電極30側となる位置に形成された第1保持空間211と、第1保持空間211よりも端子金具40側となる位置に形成された第2保持空間212と、第2保持空間212よりも端子金具40側となる位置に形成された第3保持空間213と、が含まれている。また、中心電極30側となる位置における保持空間210の内径は、端子金具40側となる位置における保持空間210の内径よりも小さくなっている。具体的には、第2保持空間212の内径D2は、第3保持空間213の内径D3よりも小さくなっており、第1保持空間211の内径D1は、第2保持空間212の内径D2よりも小さくなっている。
【0034】
第1導電性シール層410は、その全体が第1保持空間211に配置されている。第2導電性シール層420は、その全体が第2保持空間212に配置されている。第3導電性シール層430は、その全体が第3保持空間213に配置されている。
【0035】
第1抵抗体310は、第1保持空間211及び第2保持空間212の両方に跨る位置に配置されている。つまり、第1抵抗体310の先端側の端部は第1保持空間211に配置されており、第1抵抗体310の後端側の端部は第2保持空間212に配置されている。同様に、第2抵抗体320は、第2保持空間212及び第3保持空間213の両方に跨る位置に配置されている。つまり、第2抵抗体320の先端側の端部は第2保持空間212に配置されており、第2抵抗体320の後端側の端部は第3保持空間213に配置されている。
【0036】
ここで、保持空間210に設けられた第1導電性シール層410や第1抵抗体310等の各層の、中心軸CXに沿った長さについて説明する。例えば、第2導電性シール層420のうち先端側の端部は、その全体が平坦面となっているのではなく、その外周側の端部が後端側へと突出するような形状となっている。第2導電性シール層420のうち後端側の端部も同様である。その理由については後述するが、このような形状の第2導電性シール層420については、「中心軸CXに沿った長さ」を以下のように定義することとする。
【0037】
図3(A)には、上記形状の第2導電性シール層420のみが模式的に描かれている。同図に示される点線DL1は、保持空間210を中心軸CXに対し垂直な面で切断した場合において、当該断面の全体が第2導電性シール層420で満たされるような切断位置のうち、最も後端側となるような切断位置を示すものである。また、図3(A)に示される点線DL2は、保持空間210を中心軸CXに対し垂直な面で切断した場合において、当該断面の全体が第2導電性シール層420で満たされるような切断位置のうち、最も先端側となるような切断位置を示すものである。以下においては、上記のような点線DL1の位置から点線DL2の位置までの距離(図3(A)の「L02」)のことを、第2導電性シール層420の「中心軸CXに沿った長さ」として定義する。このような長さの定義は、第2導電性シール層420のみならず、第1導電性シール層410、第3導電性シール層430、第1抵抗体310、及び第2抵抗体320のそれぞれについても適用することとする。
【0038】
尚、第2導電性シール層420等の「中心軸CXに沿った長さ」としては、上記とは異なる定義を用いることも可能である。図3(B)に示される点線DL3は、図3(A)に示される点線DL1と同じ位置を示すものである。また、図3(B)に示される点線DL4は、保持空間210を中心軸CXに対し垂直な面で切断した場合において、当該断面の少なくとも一部に第2導電性シール層420が含まれるような切断位置のうち、最も先端側となるような切断位置を示すものである。上記のような点線DL3の位置から点線DL4の位置までの距離(図3(B)の「L02」)のことを、第2導電性シール層420等の「中心軸CXに沿った長さ」として定義してもよい。このように定義される第2導電性シール層420の長さは、中心軸CXの位置における第2導電性シール層420の長さ、ということもできる。
【0039】
図3(C)に示される点線DL5は、保持空間210を中心軸CXに対し垂直な面で切断した場合において、当該断面の少なくとも一部に第2導電性シール層420が含まれるような切断位置のうち、最も後端側となるような切断位置を示すものである。また、図3(C)に示される点線DL6は、図3(B)に示される点線DL4と同じ位置を示すものである。上記のような点線DL5の位置から点線DL6の位置までの距離(図3(C)の「L02」)のことを、第2導電性シール層420等の「中心軸CXに沿った長さ」として定義してもよい。
【0040】
図2に示される「L01」は、第1導電性シール層410の中心軸CXに沿った長さである。尚、第1導電性シール層410を構成する材料の一部は、中心電極30の後端側端部よりも先端側となる位置にまで入り込んでいるのであるが、この部分は第1導電性シール層410には含めないこととする。
【0041】
図2に示される「L02」は、第2導電性シール層420の中心軸CXに沿った長さである。「L03」は、第3導電性シール層430の中心軸CXに沿った長さである。尚、第3導電性シール層430を構成する材料の一部は、端子金具40の先端側端部よりも後端側となる位置にまで入り込んでいるのであるが、この部分は第3導電性シール層430には含めないこととする。
【0042】
図2に示される「L11」は、第1抵抗体310のうち第1保持空間211に配置されている部分の、中心軸CXに沿った長さである。「L12」は、第1抵抗体310のうち第2保持空間212に配置されている部分の、中心軸CXに沿った長さである。「L21」は、第2抵抗体320のうち第2保持空間212に配置されている部分の、中心軸CXに沿った長さである。「L22」は、第2抵抗体320のうち第3保持空間213に配置されている部分の、中心軸CXに沿った長さである。
【0043】
本実施形態では、L12がL21よりも長くなっている。つまり、第2保持空間212に配置されている部分のみについて比較すると、先端側の第1保持空間211に配置されている第1抵抗体310の方が、後端側の第2保持空間212に配置されている第2抵抗体320よりも長くなっており、これによりその電気抵抗値が大きくなっている。
【0044】
また、本実施形態では、L11がL12よりも長くなっている。つまり、第1抵抗体310のみについて着目すると、先端側に配置されている部分の方が、後端側に配置されている部分よりも長くなっており、これによりその電気抵抗が大きくなっている。
【0045】
更に、本実施形態では、L21がL22よりも長くなっている。つまり、第2抵抗体320のみについて着目すると、先端側の第2保持空間212に配置されている部分の方が、後端側の第3保持空間213に配置されている部分よりも長くなっており、これによりその電気抵抗が大きくなっている。
【0046】
以上のように、本実施形態では、L12>L21、L11>L12、L21>L22となるように各部の寸法が設定されており、これにより、各部の電気抵抗の値は、後端側から先端側に行くに従って、次第に大きくなっている。
【0047】
その利点について説明する。点火プラグ10では、中心電極30と接地電極60との間で火花放電を生じさせるために、接地電極60が接地電位となり、中心電極30側がマイナス電位となるように、電圧が印加される。このため、火花放電時においては、端子金具40から供給される電子が、後端側から先端側に向かって、第2抵抗体320や第1抵抗体310を通ることとなる。
【0048】
本実施形態では、上記のように、後端側から先端側に行くに従って各部の電気抵抗が次第に大きくなっている。先に電子の通過する後端側部分では電気抵抗が小さく、その後に電子の通過する先端側部分では電気抵抗が大きくなっているので、各部で生じるジュール熱の分布を一様な分布に近づけることができる。その結果、端子金具40から中心電極30に至る電路の全体において、局所的な温度上昇が生じることを防止することができる。
【0049】
尚、本実施形態では、第1抵抗体310を構成する材料における、単位体積当たりのカーボンの含有量と、第2抵抗体320を構成する材料における、単位体積当たりのカーボンの含有量と、が互いに等しくなっている。その結果、第1抵抗体310を構成する材料の比抵抗の値と、第2抵抗体320を構成する材料の比抵抗の値と、が互いに同じとなっている。ただし、第1抵抗体310及び第2抵抗体320はそれぞれの形状において互いに異なっているので、第1抵抗体310の全体の電気抵抗の値は、第2抵抗体320の全体の電気抵抗よりも大きくなっている。これにより、上記のように、局所的な温度上昇が生じることが防止されている。
【0050】
本実施形態では、第1抵抗体310が、縮径部214を間に挟んで、互いに径の異なる2つの部分を有している。また、第2抵抗体320も、縮径部215を間に挟んで、互いに径の異なる2つの部分を有している。このように、本実施形態では抵抗体として機能する部分が計4つあり、それぞれの電気抵抗の値が、先端側に行く程次第に大きくなっている。このため、電気抵抗の値が一部で大きく変化するような構成に比べると、各部分の間における電気抵抗の変化が緩やかとなるので、局所的な温度上昇を更に防止することが可能となっている。
【0051】
尚、電路における各部の電気抵抗を調整するにあたっては、第1抵抗体310を構成する材料の比抵抗の値と、第2抵抗体320を構成する材料の比抵抗の値と、が互いに異なることとしてもよい。例えば、先端側の第1抵抗体310を構成する材料の比抵抗の値が、後端側の第2抵抗体320を構成する材料の比抵抗の値よりも大きくなるように、各材料のカーボン含有量を調整してもよい。
【0052】
尚、第2導電性シール層420等の「中心軸CXに沿った長さ」の定義を、図3(B)を参照しながら説明した定義とした場合や、図3(C)を参照しながら説明した定義とした場合のいずれにおいても、それぞれ、L12>L21、L11>L12、L21>L22となるように各部の寸法を調整することが好ましい。
【0053】
点火プラグ10を製造する方法について説明する。図4に示されるフローチャートは、点火プラグ10を製造する際の工程の流れを模式的に表すものである。尚、以下においては、上記のように構成された点火プラグ10特有の製造工程について主に説明し、従来と同様の製造工程については適宜説明を省略することとする。
【0054】
先ず、絶縁碍子20が用意される(S01)。この時点における絶縁碍子20には、先に述べた形状の軸孔200が形成されている。ただし、軸孔200の内側は全体において中空の状態であり、第1導電性シール層410等は充填されていない。
【0055】
続いて、絶縁碍子20に中心電極30が取り付けられる(S02)。中心電極30は、絶縁碍子20の後端側から軸孔200に挿入された後、先端側へと移動し、放電チップ31が絶縁碍子20の先端側から突出した状態とされる。
【0056】
続いて、上記のように中心電極30が取り付けられた絶縁碍子20に、第1導電性シール層410の材料が充填される(S03)。当該材料としては、先に述べたように、粉末状のガラスに対し銅粉末を添加したものが用いられる。当該材料は、絶縁碍子20の後端側から、軸孔200の内部へと充填される。その際の充填量は、第1導電性シール層410の長さ(L01)が後に説明する条件を満たす長さとなるように、予め設定された充填量とされる。
【0057】
続いて、上記のように充填された第1導電性シール層410の材料を加圧する処理が行われる(S04)。ここでは、絶縁碍子20の後端側から押さえ棒(不図示)が軸孔200へと挿入され、当該押さえ棒の先端面によって上記材料の略全体が加圧される。ここで用いられる押さえ棒は、略円柱形状の棒であり、その外径は、第1保持空間211の内径よりも僅かに小さい。押さえ棒による材料の加圧は、予め設定された圧力で、予め設定された時間だけ行われる。
【0058】
続いて、絶縁碍子20に、第1抵抗体310の材料が充填される(S05)。当該材料としては、先に述べたように、粉末状のガラス及びジルコニアに対し所定量のカーボン粉末を添加したものが用いられる。当該材料は、絶縁碍子20の後端側から、軸孔200の内部へと充填される。その際の充填量は、第1抵抗体310の各部の長さ(L11及びL12)が、先に説明した条件を満たす長さとなるように、予め設定された充填量とされる。
【0059】
続いて、上記のように充填された第1抵抗体310の材料を加圧する処理が行われる(S06)。ここでは、絶縁碍子20の後端側から押さえ棒が軸孔200へと挿入され、当該押さえ棒の先端面によって上記材料の略全体が加圧される。ここで用いられる押さえ棒は、略円柱形状の棒であり、その外径は、第2保持空間212の内径よりも僅かに小さく、且つ、第1保持空間211の内径よりも僅かに大きい。この押さえ棒によって、第1抵抗体310の材料のみならず、先に充填されていた第1導電性シール層410の材料も同時に加圧される。押さえ棒による材料の加圧は、予め設定された圧力で、予め設定された時間だけ行われる。
【0060】
続いて、絶縁碍子20に、第2導電性シール層420の材料が充填される(S07)。当該材料としては、第1導電性シール層410と同じものが用いられる。当該材料は、絶縁碍子20の後端側から、軸孔200の内部へと充填される。その際の充填量は予め設定された充填量とされる。
【0061】
続いて、上記のように充填された第2導電性シール層420の材料を加圧する処理が行われる(S08)。ここでは、絶縁碍子20の後端側から押さえ棒が軸孔200へと挿入され、当該押さえ棒の先端面によって上記材料の略全体が加圧される。ここで用いられる押さえ棒は、略円柱形状の棒であり、その外径は、第2保持空間212の内径よりも僅かに小さく、且つ、第1保持空間211の内径よりも僅かに大きい。この押さえ棒によって、第2導電性シール層420の材料のみならず、先に充填されていた第1導電性シール層410、及び第1抵抗体310の材料も同時に加圧される。押さえ棒による材料の加圧は、予め設定された圧力で、予め設定された時間だけ行われる。
【0062】
続いて、絶縁碍子20に、第2抵抗体320の材料が充填される(S09)。当該材料としては、先に述べたように、第1抵抗体310の材料と同じものが用いられる。当該材料は、絶縁碍子20の後端側から、軸孔200の内部へと充填される。その際の充填量は、第2抵抗体320の各部の長さ(L21及びL22)が、先に説明した条件を満たす長さとなるように、予め設定された充填量とされる。
【0063】
続いて、上記のように充填された第2抵抗体320の材料を加圧する処理が行われる(S10)。ここでは、絶縁碍子20の後端側から押さえ棒が軸孔200へと挿入され、当該押さえ棒の先端面によって上記材料の略全体が加圧される。ここで用いられる押さえ棒は、略円柱形状の棒であり、その外径は、第3保持空間213の内径よりも僅かに小さく、且つ、第2保持空間212の内径よりも僅かに大きい。この押さえ棒によって、第2抵抗体320の材料のみならず、先に充填されていた第1導電性シール層410、第1抵抗体310、及び第2導電性シール層420の材料も同時に加圧される。押さえ棒による材料の加圧は、予め設定された圧力で、予め設定された時間だけ行われる。
【0064】
続いて、絶縁碍子20に、第3導電性シール層430の材料が充填される(S11)。当該材料としては、第1導電性シール層410や第2導電性シール層420と同じものが用いられる。当該材料は、絶縁碍子20の後端側から、軸孔200の内部へと充填される。その際の充填量は、第3導電性シール層430の長さ(L03)が後に説明する条件を満たす長さとなるように、予め設定された充填量とされる。
【0065】
続いて、絶縁碍子20に端子金具40が取り付けられる(S12)。このとき、端子金具40は、軸孔200に対し所定位置まで挿入され、固定される。これにより、軸孔200内に充填されている第3導電性シール層430の材料は、他の材料と共に加圧された状態となる(S13)。
【0066】
つまり、S13では、端子金具40の先端側部分が、第3導電性シール層430の材料を加圧するための押さえ棒として用いられることとなる。端子金具40の先端側部分によって、上記材料の略全体が加圧される。端子金具40の先端側部分(つまり押さえ棒)は、略円柱形状の棒であり、その外径は、第3保持空間213の内径よりも僅かに小さい。端子金具40によって、第3導電性シール層430の材料のみならず、先に充填されていた第1導電性シール層410、第1抵抗体310、第2導電性シール層420、及び第2抵抗体320の材料も同時に加圧される。
【0067】
続いて、上記のように端子金具40が取り付けられた絶縁碍子20を、加熱炉に投入して加熱する処理が行われる(S14)。これにより、各材料に含まれるガラスが溶解し、S03以降において充填された各材料が接続され一体となる。
【0068】
加熱が完了すると、絶縁碍子20は加熱炉から取り出される。その後、端子金具40は、先端側に向かって止まる位置まで押し込まれる。端子金具40が押し込まれて、その一部が第3導電性シール層430の内側に入り込むと、第3導電性シール層430の材料の一部は、端子金具40の外周面に沿って後端側へと移動する。このような材料の流れに伴って、第3導電性シール層430と第2抵抗体320との境界面(つまり、第3導電性シール層430のうち先端側の端部)は、その外周側の端部が後端側へと突出した状態となるように変形して行く。このような変形は、第2抵抗体320と第2導電性シール層420との間の境界面、第2導電性シール層420と第1抵抗体310との間の境界面、及び、第1抵抗体310と第1導電性シール層410との間の境界面のそれぞれにおいても同様に生じる。
【0069】
端子金具40が上記のように押込まれた状態で、絶縁碍子20の全体が冷却される。冷却が完了した後、絶縁碍子20に対するハウジング50の取り付けなどが行われて、点火プラグ10が完成する。
【0070】
ところで、上記のように粉末状の各材料が軸孔200に充填されて行く過程においては、材料の一部において、気孔率が局所的に大きくなってしまうことがある。本発明者らが行った実験等によれば、気孔率が大きい部分が残ってしまった場合には、点火プラグ10の動作中において、当該部分の温度が上昇し、これを起点として抵抗体の酸化が進行して抵抗値が増加してしまう、という知見が得られている。
【0071】
このような現象は、気孔率の大きな部分では、導電媒体であるカーボンの密度が低く、通電時においてより大きなジュール熱が生じやすいことに起因している。大きなジュール熱が生じると、当該部分では、気孔部分に存在する酸素や、ガラス中の酸素がカーボンと反応し、更なる電気抵抗の増加及び発熱量の増大が生じるので、抵抗体の寿命が短くなってしまうものと考えられる。また、上記のような気孔率の局所的な増大、及びそれに伴う電気抵抗の増加は、抵抗体のうち先端側部分、すなわち中心電極30側の端部近傍において特に生じやすいことも確認されている。
【0072】
これを防止するために、本実施形態に係る点火プラグ10では、中心電極30側となる位置における保持空間210の内径が、端子金具40側となる位置における保持空間210の内径よりも小さい、という構成を採用している。具体的には、端子金具40側から中心電極30側に行くに従って、保持空間210の内径が段階的に小さくなっていく構成を採用している。
【0073】
このような構成においては、例えば、図4のS12で材料の加圧が行われる際に、直径がD1となっている第1抵抗体310の材料が、D1よりも大きな直径を有する押さえ棒によって加圧されることとなる。粉体材料の加圧がこのように行われた場合には、内径の小さな部分に配置された第1抵抗体310の材料は、押さえ棒で直接押されている部分に比べて、より大きな面圧で加圧されることとなる。尚、図4のS14における加圧も、上記と同じ理由により、従来よりも高い面圧で行われる。
【0074】
これにより、第1抵抗体310の材料において気孔率が局所的に大きくなっていたとしても、加えられる高い面圧により材料の気孔率は低下するので、加熱前における材料の均一性が高められることとなる。
【0075】
また、本実施形態では、第1保持空間211と第2保持空間212との間に縮径部214が形成されており、第2保持空間212と第3保持空間213との間に縮径部215が形成されている。このような構成においては、保持空間210の内径が、中心軸CXに沿って急激に変化することが無いので、材料において局所的に気孔率の高い部分が更に生じにくくなる。
【0076】
更に、本実施形態では、抵抗体が第1抵抗体310と第2抵抗体320の2つに分けられており、これらが中心軸CXに沿って並ぶように配置された構成となっている。このような構成においては、図4を参照しながら説明したように、従来において最も気孔率の高くなりやすい位置にある第1抵抗体310の加圧が、S04、S06、S08、S10、及びS12の複数回に亘って繰り返し行われることとなる。このため、第1抵抗体310における局所的な気孔率の増加が更に生じにくくなっている。また、本実施形態では、粉末状の材料の投入が少量ずつ行われ、当該材料の加圧が都度行われることとなるので、これによっても気孔率の増加が抑えられている。
【0077】
点火プラグ10におけるその他の構成、及びその利点について説明する。本実施形態では、第2抵抗体320と端子金具40との間に配置された第3導電性シール層430の、中心軸CXに沿った長さ(L03)が、第1抵抗体310と中心電極30との間に配置された第1導電性シール層410の、中心軸CXに沿った長さ(L01)よりも長くなっている。
【0078】
先に述べたように、図4のS14において絶縁碍子20に端子金具40が取り付けられる際には、端子金具40の一部が第3導電性シール層430の内側に入り込んでいく。その際、第3導電性シール層430は比較的高い粘度を有しているので、端子金具40からの圧縮力が、先端側にある第2抵抗体320や第1抵抗体310に対して均等に伝達されることとなる。
【0079】
ところが、仮に、第3導電性シール層430の厚さが予め十分に確保されていなかった場合には、端子金具40の先端が第3導電性シール層430に直接当たってしまう可能性がある。その場合、端子金具40からの圧縮力が、第2抵抗体320や第1抵抗体310に対して偏って加えられてしまい、第1抵抗体310等における気孔率が局所的に高くなってしまう恐れがある。
【0080】
これに対し、本実施形態では、上記のようにL03>L01の条件を満たすように構成されているので、第3導電性シール層430の厚さが十分に確保されている。これにより、端子金具40の先端が第3導電性シール層430に直接当たってしまうことがなくなるので、気孔率の局所的な上昇を確実に防止することができる。
【0081】
尚、第3導電性シール層430等の「中心軸CXに沿った長さ」の定義を、図3(B)を参照しながら説明した定義とした場合や、図3(C)を参照しながら説明した定義とした場合のいずれにおいても、それぞれ、L03>L01となるように各部の寸法を調整することが好ましい。
【0082】
第2実施形態について、図5を参照しながら説明する。本実施形態では、軸孔200の形状において第1実施形態と異なっている。
【0083】
本実施形態に係る点火プラグ10の軸孔200には、第2保持空間212が形成されていない。本実施形態では、第3保持空間213と第1保持空間211とが、縮径部214を介して隣り合うように構成されている。本実施形態では、第3導電性シール層430、第2抵抗体320、及び第2導電性シール層420の全体と、第1抵抗体310のうち後端側の部分とが、第3保持空間213に配置されている。また、第1抵抗体310のうち先端側の部分は、第1実施形態と同様に第1保持空間211に配置されている。
【0084】
このように、軸孔200における保持空間210が、その内径を3段階ではなく2段階に変化させているような構成においても、第1実施形態で説明したものと同様の効果を奏する。
【0085】
第3実施形態について、図6を参照しながら説明する。本実施形態でも、軸孔200の形状において第1実施形態と異なっている。
【0086】
本実施形態に係る点火プラグ10では、軸孔200のうち保持空間210の部分における内径が、後端側から先端側に行くに従って次第に小さくように構成されている。このように、「中心電極30側となる位置における保持空間210の内径が、端子金具40側となる位置における保持空間210の内径よりも小さくなっている構成」としては、第1実施形態のように内径が段階的に変化する構成のみならず、本実施形態のように内径が滑らかに変化するような構成をも採用することができる。このような構成においても、第1実施形態で説明したものと同様の効果を奏する。
【0087】
第4実施形態について、図7を参照しながら説明する。本実施形態でも、軸孔200の形状において第1実施形態と異なっている。
【0088】
本実施形態に係る点火プラグ10では、保持空間210のうち第1導電性シール層410よりも更に先端側となる位置に、抵抗体310Aが配置されている。抵抗体310Aは、第1抵抗体310や第2抵抗体320と同じ材料により形成された抵抗体である。
【0089】
抵抗体310Aと中心電極30との間には、導電性シール層410Aが配置されている。導電性シール層410Aは、第1導電性シール層410等と同じ材料により形成された導電性の層である。
【0090】
このように、本実施形態では、保持空間210に配置された抵抗体が3つに分かれており、これらが中心軸CXに沿って並ぶように配置されている。このように、保持空間210に配置された抵抗体の数は2つに限定されず、3つもしくはそれ以上であってもよい。保持空間210に配置される複数の抵抗体には、中心電極30側に配置された第1抵抗体310と、端子金具40側に配置された第2抵抗体320と、が少なくとも含まれていればよい。本実施形態のような構成においても、第1実施形態で説明したものと同様の効果を奏する。
【0091】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0092】
10:点火プラグ
20:絶縁碍子
30:中心電極
40:端子金具
200:軸孔
210:保持空間
310:第1抵抗体
320:第2抵抗体
410:第1導電性シール層
420:第2導電性シール層
430:第3導電性シール層
CX:中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7