(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】冷却装置、電子機器及び冷却方法
(51)【国際特許分類】
G06F 1/20 20060101AFI20240611BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G06F1/20 C
G06F1/20 A
H05K7/20 Q
(21)【出願番号】P 2020151428
(22)【出願日】2020-09-09
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉光 浩一
【審査官】松浦 かおり
(56)【参考文献】
【文献】特公昭48-006301(JP,B1)
【文献】特開2003-083644(JP,A)
【文献】国際公開第2008/117436(WO,A1)
【文献】特開2018-142184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/20
F25D 1/00 - 9/00
F28D 15/00 -15/06
H01L 23/29
H01L 23/34 -23/36
H01L 23/373-23/427
H01L 23/44
H01L 23/467-23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発熱部と熱的に接続される複数の蒸発器と、
前記複数の蒸発器と気相管を介して接続された凝縮器と、
前記凝縮器と液相管を介して接続され、冷媒を貯蔵する第一タンクと、
凹形状に形成され、底壁部と、前記底壁部の周囲に形成された周壁部とを有し、前記複数の蒸発器よりも高い位置に配置され、前記冷媒を貯蔵する第二タンクと、
前記第二タンクと前記複数の蒸発器の各々とを接続する複数の分配管と、
前記第一タンクと前記第二タンクとの間に接続管を介して接続されたポンプと、
前記第二タンクと前記第一タンク又は前記液相管とを接続するバイパス管と、
を備え、
前記第二タンクの前記バイパス管との第一接続口は、
前記周壁部に形成され、前記第二タンクの
前記周壁部の前記
複数の分配管
のそれぞれとの第二接続口、及び前記第二タンクの
前記周壁部の前記接続管との第三接続口よりも高い位置に形成され、
前記バイパス管の内径は、前記
複数の分配管の
いずれの内径よりも大きい、
冷却装置。
【請求項2】
前記凝縮器は、前記第二タンクと水平方向にずれて配置されている、
請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記第一タンク又は前記第二タンクの上部は、一部又は全部が開放されている、
請求項1又は請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
複数の発熱部が搭載された複数の電子ユニットと、
前記複数の発熱部を冷却する冷却装置と、
を備え、
前記冷却装置は、
複数の発熱部と熱的に接続された複数の蒸発器と、
前記複数の蒸発器と気相管を介して接続された凝縮器と、
前記凝縮器と液相管を介して接続され、冷媒を貯蔵する第一タンクと、
凹形状に形成され、底壁部と、前記底壁部の周囲に形成された周壁部とを有し、前記複数の蒸発器よりも高い位置に配置され、前記冷媒を貯蔵する第二タンクと、
前記第二タンクと前記複数の蒸発器の各々とを接続する複数の分配管と、
前記第一タンクと前記第二タンクとの間に接続管を介して接続されたポンプと、
前記第二タンクと前記第一タンク又は前記液相管とを接続するバイパス管と、
を備え、
前記第二タンクの前記バイパス管との第一接続口は、
前記周壁部に形成され、前記第二タンクの
前記周壁部の前記
複数の分配管
のそれぞれとの第二接続口、及び前記第二タンクの
前記周壁部の前記接続管との第三接続口よりも高い位置に形成され、
前記バイパス管の内径は、前記
複数の分配管の
いずれの内径よりも大きい、
電子機器。
【請求項5】
複数の発熱部と熱的に接続された複数の蒸発器で前記複数の発熱部の熱により冷媒を蒸発させ、
前記複数の蒸発器と気相管を介して接続された凝縮器で前記冷媒を凝縮し、
前記凝縮器と液相管を介して接続された第一タンクに前記冷媒を貯蔵し、
前記複数の蒸発器よりも高い位置に配置された第二タンクに前記第一タンクに貯蔵された前記冷媒をポンプによって移送して前記第二タンクに前記冷媒を貯蔵し、
前記第二タンクから複数の分配管を介して前記複数の蒸発器の各々に前記冷媒を分配する、
ことを含み、
前記第二タンクと前記第一タンク又は前記液相管とは、バイパス管によって接続されており、
前記ポンプは、前記第一タンクと前記第二タンクとの間に接続管を介して接続されており、
前記第二タンクは、凹形状に形成され、底壁部と、前記底壁部の周囲に形成された周壁部とを有し、
前記第二タンクの前記バイパス管との第一接続口は、前記周壁部に形成され、前記第二タンクの前記周壁部の前記複数の分配管のそれぞれとの第二接続口、及び前記第二タンクの前記周壁部の前記接続管との第三接続口よりも高い位置に形成され、
前記バイパス管の内径は、前記複数の分配管のいずれの内径よりも大きく、
前記第二タンクから前記複数の分配管を介して前記複数の蒸発器の各々に前記冷媒を分配する際に、前記第二タンクに貯蔵された前記冷媒の一部を
前記バイパス管を介して前記第一タンクに戻すことで、前記ポンプの圧力を前記バイパス管側に逃して前記ポンプの圧力が前記複数の分配管側に作用することを抑制し、前記複数の発熱部の発熱量に応じて前記第二タンクから前記複数の蒸発器の各々へ前記冷媒が自重で流れ込むようにする、
冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の開示する技術は、冷却装置、電子機器及び冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のデバイスを冷却する冷却装置としては、次の技術が公知である。
【0003】
第一の公知技術は、半導体素子にそれぞれ取り付けられた複数のモジュールと、複数のモジュールにそれぞれ接続されたアウトレットヘッダ及びインテークヘッダと、アウトレットヘッダ及びインテークヘッダを介して複数のモジュールと接続された凝縮器を備える。複数のモジュールと熱交換器との間には、ポンプが設けられており、このポンプが作動することによって複数のモジュールと熱交換器との間で冷媒が循環する。
【0004】
第二の公知技術は、素子にそれぞれ接続された複数の熱交換器と、複数の熱交換器にそれぞれ接続された吸込マニホールド及び排出マニホールドを備える。複数の熱交換器には、吸込マニホールドを介して冷媒が供給され、複数の熱交換器で素子と熱交換した冷媒は、排出マニホールドを介して排出される。
【0005】
第三の公知技術は、半導体素子にそれぞれ取り付けられた複数の水冷ユニットと、複数の水冷ユニットに接続された冷却水循環装置を備える。複数の水冷ユニットと冷却水循環装置とは、帰還パイプ及び供給パイプを介して接続されており、帰還パイプと供給パイプとの間には、バイパス路が設けられている。
【0006】
第四の公知技術は、電子機器にそれぞれ設けられた複数の蒸発器と、複数の蒸発器へ接続される複数の枝管を備え、蒸発器に冷却液を供給する給水管と、複数の蒸発器へ接続される複数の枝管を備え、蒸発器を通過した冷却液が排出される排水管を備える。給水管と排水管とは、循環配管によって接続されており、循環配管には、ポンプ及び熱交換器が設けられている。給水管の上端部には、バイパス経路が接続されている。バイパス経路は、複数の蒸発器を迂回して排水管又は循環配管に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-228216号公報
【文献】特表2008-509542号公報
【文献】実開平1-160894号公報
【文献】特開2018-142184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
複数のデバイスを冷却する冷却装置において、冷媒を移送するポンプを備える場合には、冷却装置を備える電子機器の小型化及び構造の簡素化を実現できることが望まれる。
【0009】
本願の開示する技術は、一つの側面として、冷却装置を備える電子機器の小型化及び構造の簡素化を実現できる冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本願の開示する技術の一観点によれば、複数の蒸発器と、凝縮器と、第一タンクと、第二タンクと、ポンプと、複数の分配管と、バイパス管とを備える冷却装置が提供される。複数の蒸発器は、複数の発熱部と熱的に接続される。凝縮器は、複数の蒸発器と気相管を介して接続されている。第一タンクは、凝縮器と液相管を介して接続され、冷媒を貯蔵する。第二タンクは、複数の蒸発器よりも高い位置に配置され、冷媒を貯蔵する。複数の分配管は、第二タンクと複数の蒸発器の各々とを接続している。ポンプは、第一タンクと第二タンクとの間に接続管を介して接続されている。バイパス管は、第二タンクと第一タンク又は液相管とを接続している。第二タンクのバイパス管との第一接続口は、周壁部に形成され、第二タンクの周壁部の複数の分配管のそれぞれとの第二接続口、及び第二タンクの周壁部の接続管との第三接続口よりも高い位置に形成されている。バイパス管の内径は、複数の分配管のいずれの内径よりも大きい。
【発明の効果】
【0011】
本願の開示する技術によれば、一例として、冷却装置を備える電子機器の小型化及び構造の簡素化を実現できる冷却装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本願の開示する技術の一実施形態に係る電子機器の斜視図である。
【
図2】本願の開示する技術の一実施形態に係る冷却装置を模式的に示す図である。
【
図3】
図2に示される第二タンク及びその周辺部の一部断面を含む側面図である。
【
図4】
図2に示される冷却装置の変形例を示す図である。
【
図5】第一比較例に係る冷却装置を模式的に示す図である。
【
図6】第二比較例に係る冷却装置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
はじめに、本願の開示する技術の一実施形態に係る電子機器10を説明する。
【0014】
図1は、本願の開示する技術の一実施形態に係る電子機器10の斜視図である。
図1に示される電子機器10は、一例として、ネットワーク装置である。矢印X方向は、電子機器10の左右方向を示し、矢印Y方向は、電子機器10の前後方向を示し、矢印Z方向は、電子機器10の上下方向を示している。
【0015】
電子機器10は、筐体12と、複数の電子ユニット14とを備える。筐体12は、箱形に形成されている。この筐体12は、電子機器10の前後方向に開口する開口部16を有する。複数の電子ユニット14は、電子機器10の左右方向に並んだ状態で、筐体12の内部に収容される。この複数の電子ユニット14は、筐体12に対して開口部16を通じて挿抜される。複数の電子ユニット14は、それぞれプラグインカードと称されてもよい。
【0016】
各電子ユニット14は、概略平盤状を成している。各電子ユニット14は、電子機器10の左右方向を厚さ方向とした状態で筐体12の内部に配置される。各電子ユニット14には、デバイス18が搭載されている。デバイス18は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の発熱体である。デバイス18は、「発熱部」の一例である。電子機器10には、複数のデバイス18を冷却する沸騰冷却方式の冷却装置20が備えられている。
【0017】
図2は、本願の開示する技術の一実施形態に係る冷却装置20を模式的に示す図である。冷却装置20は、冷媒22と、複数の蒸発器24と、気相管26と、凝縮器28と、液相管30と、第一タンク32と、第二タンク34と、複数の分配管36と、接続管38と、ポンプ40と、バイパス管42とを備える。
【0018】
複数の蒸発器24、気相管26、凝縮器28、液相管30、第一タンク32、第二タンク34、複数の分配管36、接続管38、ポンプ40、及びバイパス管42は、循環回路44を形成している。この循環回路44には、冷媒22が封入されている。
【0019】
冷媒22は、例えば水であるが、水以外でもよい。冷媒22の量が少ない場合は、後述する蒸発器24において冷媒22が足りなくなるドライアウトに繋がり、冷媒22が多過ぎる場合は、蒸発器24で冷媒22が沸騰できず潜熱による冷却効果が得られなくなる。蒸発器24でのドライアウトを抑制しつつ潜熱による冷却効果を持続できるように、適切な量の冷媒22が循環回路44に封入される。
【0020】
複数の蒸発器24は、それぞれデバイス18と熱的に接続されている。各蒸発器24は、デバイス18と直接的に接続されてもよく、また、例えばヒートスプレッダ等の伝熱部材を介してデバイス18と間接的に接続されていてもよい。すなわち、各蒸発器24は、冷却対象とするデバイス18と伝熱可能に接続されていれば、蒸発器24とデバイス18の接続構成はどのようなものでもよい。
【0021】
各蒸発器24は、内部空間を有する中空体である。各蒸発器24は、蒸発器24に送られてきた液相の冷媒22とデバイス18との間で熱交換し、冷媒22を蒸発させて気相に変化させる構造を有する。各蒸発器24は、コールドプレートと称されてもよい。
【0022】
気相管26は、複数の枝管26Aと、幹管26Bとを有する。複数の枝管26Aは、蒸発器24の出口部とそれぞれ接続されている。複数の枝管26Aは、後述する接続部材46を介して幹管26Bと接続されており、幹管26Bは、凝縮器28の入口部と接続されている。
【0023】
凝縮器28は、複数の蒸発器24と気相管26を介して接続されている。この凝縮器28には、図示しない冷却機構から冷却流体が供給される。凝縮器28は、気相の冷媒22と冷却流体との間で熱交換し、冷媒22を凝縮して液相に変化させる構造を有する。凝縮器28は、冷却流体として液体を用いる水冷式及び冷却流体として気体を用いる空冷式のどちらでもよい。凝縮器28は、一例として、第一タンク32よりも高い位置に配置されている。また、この凝縮器28は、一例として、第二タンク34と水平方向にずれて配置されている。
【0024】
第一タンク32は、凝縮器28と液相管30を介して接続されている。この第一タンク32には、冷媒22が貯蔵される。第一タンク32は、一例として、複数の蒸発器24及び第二タンク34よりも低い位置に配置されている。この第一タンク32は、一例として、電子機器10(
図1参照)の下部に配置されている。
【0025】
第二タンク34は、一例として、複数の蒸発器24よりも高い位置に配置されている。この第二タンク34は、一例として、電子機器10の上部に配置されている(
図1参照)。この第二タンク34には、冷媒22が貯蔵される。
【0026】
ポンプ40は、第一タンク32と第二タンク34との間に接続管38を介して接続されている。接続管38は、より具体的には、第一タンク32とポンプ40とを接続する第一接続管38Aと、ポンプ40と第二タンク34とを接続する第二接続管38Bとを有する。ポンプ40は、第一タンク32に貯蔵された冷媒22を第二タンク34に移送するように作動する。
【0027】
このポンプ40は、好ましくは、交換を容易に行える位置に配置される。このポンプ40は、電子機器10のどの位置に配置されてもよいが、本実施形態では、一例として、ポンプ40は、複数の蒸発器24及び第二タンク34よりも低い位置に配置されている。このポンプ40は、一例として、電子機器10の下部に配置されている。ポンプ40は、筐体12(
図1参照)の内部に配置されてもよく、また、筐体12の外部に配置されてもよい。
【0028】
複数の分配管36は、第二タンク34と複数の蒸発器24の各々の入口部とを接続している。バイパス管42は、複数の蒸発器24及び凝縮器28を迂回して、第二タンク34と第一タンク32とを接続している。
【0029】
図3は、
図2に示される第二タンク34及びその周辺部の一部断面を含む側面図である。第二タンク34は、複数の分配管36、接続管38、及びバイパス管42を相互に接続している。この第二タンク34の下側には、接続部材46が配置されている。第二タンク34及び接続部材46は、一体でも別体でもどちらでもよい。接続部材46は、気相管26を形成する複数の枝管26Aと幹管26Bとを接続している。
【0030】
なお、
図3では、複数の分配管36のうちの1本が示されている。複数の分配管36は、矢印X方向に並んで配置されている。同様に、
図3では、気相管26の一部を形成する複数の枝管26Aのうちの1本が示されている。複数の枝管26Aは、矢印X方向に並んで配置されている。複数の分配管36の内径は、一例として、同一である。同様に、複数の枝管26Aの内径は、一例として、同一である。
【0031】
第二タンク34は、凹形状に形成されており、底壁部48と、底壁部48の周囲に形成された周壁部50とを有する。第二タンク34の上部52は、上方に一部又は全部が開放されている。第二タンク34は、バイパス管42との第一接続口54、各分配管36との第二接続口56、及び接続管38との第三接続口58を有する。
【0032】
第一接続口54、第二接続口56、及び第三接続口58は、いずれも周壁部50に形成されている。周壁部50は、水平方向に対向する第一縦壁部50A及び第二縦壁部50Bを有している。第一接続口54及び第三接続口58は、第一縦壁部50Aに形成されており、第二接続口56は、第二縦壁部50Bに形成されている。第一接続口54、第二接続口56、及び第三接続口58は、例えば円形、四角形、及び長方形等、どのような形状でもよい。
【0033】
第一接続口54は、第二接続口56及び第三接続口58よりも高い位置に形成されている。また、一例として、第二接続口56は、第三接続口58よりも低い位置に形成されている。複数の第二接続口56の内径は、一例として、同一である。
【0034】
バイパス管42の内径は、各分配管36の内径よりも大きい。バイパス管42の内径は、バイパス管42の圧力損失が複数の分配管36の合計圧力損失よりも十分に小さくなるように設定される。このようにバイパス管42の内径が設定されることで、第二タンク34における冷媒22の水位が第一接続口54の下端の位置よりも高い場合には、ポンプ40の圧力がバイパス管42側に逃げ、ポンプ40の圧力が複数の分配管36側に作用することが抑制される。
【0035】
また、ポンプ40の圧力が複数の分配管36側に作用することが抑制されることにより、重力を利用して第二タンク34から複数の分配管36を通じて複数の蒸発器24(
図2参照)に冷媒22が供給される。ポンプ40の圧力が複数の分配管36側に加わることを効果的に抑制するために、一例として、第二タンク34の上部52は、一部又は全部が開放されている。なお、第一タンク32の上部も、一部又は全部が開放されていてもよい。
【0036】
各デバイス18の消費電力、蒸発による冷媒22の消費量、及び冷媒22の粘性係数といった特性に応じて、各デバイス18に冷媒22が供給可能な分配管36の圧力損失になるように、分配管36の内径は設定される。
【0037】
なお、複数の分配管36の内径は、一例として、同一であるが、複数の分配管36の内径は、異なっていてもよい。複数の分配管36の内径が異なる場合には、バイパス管42の内径は、複数の分配管36のいずれの内径よりも大とされる。
【0038】
また、バイパス管42の内径が、各分配管36の内径よりも大きいことに対応して、第一接続口54の開口面積は、各第二接続口56の開口面積よりも大きい。
【0039】
第二タンク34に貯蔵された冷媒22がバイパス管42側に流れるように、第二タンク34における冷媒22の水位は、第一接続口54の下端よりも高い位置に設定される。この第二タンク34における冷媒22の水位は、例えば、冷却装置20が作動されていないとき、すなわち、複数の蒸発器24が常温であるときの水位である。
【0040】
第二タンク34に貯蔵される冷媒22の最大量は、バイパス管42の第二タンク34との接続口である第一接続口54の高さにより決定される。第二タンク34に貯蔵される冷媒22の最大量は、デバイス18の最大電力を加味し、複数のデバイス18で消費され得る冷媒22の最大消費量を上回る量に設定される。
【0041】
次に、本願の開示する技術の一実施形態に係る冷却方法を説明する。
【0042】
本実施形態に係る冷却方法は、
図1に示される複数のデバイス18の発熱量に応じて各デバイス18を冷却する方法であり、上述の冷却装置20を用いて実行される。この冷却方法は、蒸発ステップと、凝縮ステップと、第一貯蔵ステップと、第二貯蔵ステップと、分配ステップとを備える。
【0043】
蒸発ステップでは、複数のデバイス18と熱的に接続された複数の蒸発器24で複数のデバイス18の熱により冷媒22を蒸発させる。これにより、冷媒22が蒸発する際の潜熱を利用して各デバイス18が冷却される。複数の蒸発器24で蒸発して気相になった冷媒22は、気相管26を介して凝縮器28に移送される。
【0044】
凝縮ステップでは、凝縮器28において気相の冷媒22と冷却流体との間で熱交換が行われ、冷媒22が凝縮されて液相に変化する。凝縮器28で凝縮されて液相になった冷媒22は、液相管30を介して第一タンク32に移送される。
【0045】
第一貯蔵ステップでは、液相管30を介して第一タンク32に移送された冷媒22が第一タンク32に貯蔵される。第一タンク32に貯蔵された冷媒22は、複数の蒸発器24よりも高い位置に配置された第二タンク34にポンプ40によって移送される。このとき、第二タンク34における冷媒22の水位が第一接続口54の下端よりも高い位置に維持されるように、ポンプ40の回転数が制御される。
【0046】
第二貯蔵ステップでは、ポンプ40によって第二タンク34に移送された冷媒22が第二タンク34に貯蔵される。
【0047】
分配ステップでは、第二タンク34に貯蔵された冷媒22が、複数のデバイス18の発熱量に応じて複数の蒸発器24の各々に分配される。
【0048】
ここで、第二タンク34と第一タンク32とは、バイパス管42によって接続されている。また、第二タンク34のバイパス管42との第一接続口54は、第二タンク34の各分配管36との第二接続口56、及び第二タンク34の接続管38との第三接続口58よりも高い位置に形成されている。さらに、バイパス管42の内径は、各分配管36の内径よりも大きい。
【0049】
したがって、第二タンク34から複数の分配管36を介して複数の蒸発器24の各々に冷媒22が分配される際に、第二タンク34に貯蔵された冷媒22の一部は、バイパス管42を介して第一タンク32に戻される。これにより、ポンプ40の圧力がバイパス管42側に逃げるので、ポンプ40の圧力が複数の分配管36側に作用することが抑制される。また、第二タンク34の上部52の一部又は全部が開放されているので、ポンプ40の圧力が複数の分配管36側に作用することがより一層効果的に抑制される。なお、第一タンク32の上部の一部又は全部が開放されていていても、同様の効果が得られる。
【0050】
そして、この状態では、ポンプレスの沸騰式冷却装置と同様に、複数のデバイス18の発熱量に応じて第二タンク34から複数の蒸発器24の各々へ冷媒22が自重で流れ込む。すなわち、複数の蒸発器24の各々には、蒸発して減った分の冷媒22が供給される。これにより、消費電力の異なる複数のデバイス18が複数の蒸発器24によって持続的に適切に冷却される。
【0051】
次に、本実施形態の作用及び効果を説明する。
【0052】
先ず、本実施形態の作用及び効果を明確にするために、第一比較例及び第二比較例を説明する。
【0053】
図5は、第一比較例に係る冷却装置120を模式的に示す図である。第一比較例に係る冷却装置120は、ポンプレスの沸騰式冷却装置である。この第一比較例に係る冷却装置120では、第一タンク32及び第二タンク34(
図2参照)の代わりに、タンク132が用いられている。
【0054】
タンク132には、複数の分配管36を介して複数の蒸発器24が接続されており、複数の蒸発器24には、気相管26を介して凝縮器28が接続されている。凝縮器28とタンク132とは、液相管30を介して接続されている。タンク132は、複数の蒸発器24よりも高い位置に配置されており、凝縮器28は、タンク132よりもさらに高い位置に配置されている。
【0055】
この第一比較例に係る冷却装置120では、凝縮器28で凝縮されて液相に変化した冷媒22が、液相管30を介してタンク132に移送され、タンク132に貯蔵される。また、複数のデバイス18の発熱量に応じてタンク132から複数の蒸発器24の各々へ冷媒22が自重で流れ込む。すなわち、複数の蒸発器24の各々には、蒸発して減った分の冷媒22が供給される。これにより、消費電力の異なる複数のデバイス18が複数の蒸発器24によって持続的に適切に冷却される。
【0056】
この第一比較例に係る冷却装置120では、ポンプレスであるので、ポンプが不要な分、冷却装置120の構成を簡素化することが可能であり、また、寿命部品であるポンプの交換も不要にできる。
【0057】
しかしながら、この第一比較例に係る冷却装置120では、タンク132を複数の蒸発器24よりも高い位置に配置し、凝縮器28をタンク132よりもさらに高い位置に配置する必要がある。したがって、凝縮器28及びタンク132を電子機器の上部に配置する必要があるため、この第一比較例に係る冷却装置120を備える電子機器が高さ方向に大型化する。
【0058】
図6は、第二比較例に係る冷却装置220を模式的に示す図である。第二比較例に係る冷却装置220は、複数のポンプ40を有する沸騰式冷却装置である。この第二比較例に係る冷却装置220では、第一タンク32及び第二タンク34(
図2参照)の代わりに、タンク232が用いられている。
【0059】
タンク232には、複数の第一接続管38Aを介して複数のポンプ40が接続されており、この複数のポンプ40には、複数の第二接続管38Bを介して複数の蒸発器24が接続されている。また、複数の蒸発器24には、気相管26を介して凝縮器28が接続されており、凝縮器28とタンク232とは、液相管30を介して接続されている。タンク232及び凝縮器28は、複数の蒸発器24の側方に配置されており、複数のポンプ40は、複数の蒸発器24よりも低い位置に配置されている。
【0060】
この第二比較例に係る冷却装置220では、凝縮器28で凝縮されて液相に変化した冷媒22が、液相管30を介してタンク232に移送され、タンク232に貯蔵される。また、複数のデバイス18の消費電力又は発熱量に応じて複数のポンプ40の回転数が制御され、複数の蒸発器24の各々には、蒸発して減った分の冷媒22が供給される。これにより、消費電力の異なる複数のデバイス18が複数の蒸発器24によって持続的に適切に冷却される。
【0061】
この第二比較例に係る冷却装置220では、タンク232及び凝縮器28が複数の蒸発器24の側方に配置されているので、この第二比較例に係る冷却装置220を備える電子機器を高さ方向に小型化できる。
【0062】
しかしながら、この第二比較例に係る冷却装置220では、複数の蒸発器24毎にポンプ40が必要となり、電子機器が大型化する。また、寿命部品である複数のポンプ40を交換容易な位置に配置する場合には、電子機器の構造が複雑化する。
【0063】
これに対し、
図2に示される本実施形態に係る冷却装置20によれば、複数の蒸発器24よりも高い位置には、冷媒22を貯蔵する第二タンク34が配置されており、第二タンク34と第一タンク32とは、バイパス管42によって接続されている。また、
図3に示されるように、第二タンク34のバイパス管42との第一接続口54は、第二タンク34の各分配管36との第二接続口56、及び第二タンク34の接続管38との第三接続口58よりも高い位置に形成されている。さらに、バイパス管42の内径は、各分配管36の内径よりも大きい。
【0064】
したがって、第二タンク34から複数の分配管36を介して複数の蒸発器24に冷媒22を分配する際に、第二タンク34に貯蔵された冷媒22の一部は、バイパス管42を介して第一タンク32に戻される。これにより、ポンプ40の圧力がバイパス管42側に逃げるので、ポンプ40の圧力が複数の分配管36側に作用することが抑制される。
【0065】
そして、この状態では、ポンプレスの沸騰式冷却装置と同様に、複数のデバイス18の発熱量に応じて第二タンク34から複数の蒸発器24の各々へ冷媒22が自重で流れ込む。すなわち、複数の蒸発器24の各々には、蒸発して減った分の冷媒22が供給される。これにより、消費電力の異なる複数のデバイス18が複数の蒸発器24によって持続的に適切に冷却できる。
【0066】
また、本実施形態に係る冷却装置20では、第二タンク34が、一例として電子機器10の上部に配置されているが、凝縮器28は、第二タンク34と水平方向にずれて配置されている。したがって、ポンプレスである第一比較例に係る冷却装置120(
図5参照)のように、凝縮器28がタンク132よりもさらに高い位置に配置される場合に比して、電子機器10を高さ方向に小型化できる。これにより、電子機器10をラックに搭載する場合には、ラックに搭載できる電子機器10の数を増加させることができる。
【0067】
また、本実施形態に係る冷却装置20では、ポンプ40が一つで足りる。したがって、複数のポンプ40を備える第二比較例に係る冷却装置220(
図6参照)に比して、電子機器10を小型化できる。また、寿命部品であるポンプ40を交換容易な位置に配置する場合でも、電子機器10の構造が複雑化することを抑制できるので、電子機器10の構造を簡素化できる。なお、冷却装置20は、複数のポンプ40を用いた所謂冗長構成でもよい。
【0068】
さらに、本実施形態に係る冷却装置20では、第一タンク32及びポンプ40が、複数の蒸発器24よりも低い位置に配置されている。したがって、電子機器10の下部のスペースを第一タンク32及びポンプ40の配置のために有効に活用できると共に、重量物である第一タンク32及びポンプ40を電子機器10の下部に配置することにより、電子機器10の重心を下げることができる。
【0069】
次に、本実施形態の変形例を説明する。
【0070】
上記実施形態において、バイパス管42は、第二タンク34と第一タンク32とを接続しているが、
図4に示されるように、バイパス管42は、第二タンク34と液相管30とを接続していてもよい。このように構成されていても、第二タンク34に貯蔵された冷媒22の一部がバイパス管42及び液相管30を介して第一タンク32に戻されるので、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0071】
また、上記実施形態において、複数の蒸発器24は、複数の枝管26Aと幹管26Bとを有する気相管26によって凝縮器28と接続されているが、複数の蒸発器24は、互いに独立した複数の気相管26によって凝縮器28と接続されてもよい。
【0072】
また、上記実施形態において、第二接続口56は、第三接続口58よりも低い位置に形成されている。しかしながら、第一接続口54が第二接続口56及び第三接続口58よりも高い位置に形成されていれば、第二接続口56は、第三接続口58と同じ高さ、又は第三接続口58よりも高い位置に形成されていてもよい。
【0073】
また、上記実施形態において、冷却装置20は、ネットワーク装置である電子機器10に搭載されているが、ネットワーク装置以外の電子機器に搭載されてもよい。
【0074】
また、上記実施形態において、蒸発器24は、デバイス18と熱的に接続されているが、デバイス18以外の発熱部と熱的に接続されていてもよい。
【0075】
以上、本願の開示する技術の一実施形態について説明したが、本願の開示する技術は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0076】
なお、上述の本願の開示する技術の一実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0077】
(付記1)
複数の発熱部と熱的に接続される複数の蒸発器と、
前記複数の蒸発器と気相管を介して接続された凝縮器と、
前記凝縮器と液相管を介して接続され、冷媒を貯蔵する第一タンクと、
前記複数の蒸発器よりも高い位置に配置され、前記冷媒を貯蔵する第二タンクと、
前記第二タンクと前記複数の蒸発器の各々とを接続する複数の分配管と、
前記第一タンクと前記第二タンクとの間に接続管を介して接続されたポンプと、
前記第二タンクと前記第一タンク又は前記液相管とを接続するバイパス管と、
を備え、
前記第二タンクの前記バイパス管との第一接続口は、前記第二タンクの各前記分配管との第二接続口、及び前記第二タンクの前記接続管との第三接続口よりも高い位置に形成され、
前記バイパス管の内径は、各前記分配管の内径よりも大きい、
冷却装置。
(付記2)
前記凝縮器は、前記第二タンクと水平方向にずれて配置されている、
付記1に記載の冷却装置。
(付記3)
前記第一タンクは、前記複数の蒸発器よりも低い位置に配置されている、
付記1又は付記2に記載の冷却装置。
(付記4)
前記ポンプは、前記複数の蒸発器よりも低い位置に配置されている、
付記1~付記3のいずれか一項に記載の冷却装置。
(付記5)
前記第一タンクは、前記第二タンクよりも低い位置に配置されている、
付記1~付記4のいずれか一項に記載の冷却装置。
(付記6)
前記ポンプは、前記第二タンクよりも低い位置に配置されている、
付記1~付記5のいずれか一項に記載の冷却装置。
(付記7)
前記凝縮器は、前記第一タンクよりも高い位置に配置されている、
付記1~付記6のいずれか一項に記載の冷却装置。
(付記8)
前記第一タンク又は前記第二タンクの上部は、一部又は全部が開放されている、
付記1~付記7のいずれか一項に記載の冷却装置。
(付記9)
前記第一接続口の開口面積は、各前記第二接続口の開口面積よりも大きい、
付記1~付記8のいずれか一項に記載の冷却装置。
(付記10)
前記第二タンクは、底壁部と、前記底壁部の周囲に形成された周壁部とを有し、
前記第一接続口、前記第二接続口、及び前記第三接続口は、いずれも前記周壁部に形成されている、
付記1~付記9のいずれか一項に記載の冷却装置。
(付記11)
前記第二タンクにおける前記冷媒の水位は、前記第一接続口の下端よりも高い位置に設定されている、
付記1~付記10のいずれか一項に記載の冷却装置。
(付記12)
複数のデバイスが搭載された複数の電子ユニットと、
前記複数のデバイスを冷却する冷却装置と、
を備え、
前記冷却装置は、
複数の発熱部と熱的に接続された複数の蒸発器と、
前記複数の蒸発器と気相管を介して接続された凝縮器と、
前記凝縮器と液相管を介して接続され、冷媒を貯蔵する第一タンクと、
前記複数の蒸発器よりも高い位置に配置され、前記冷媒を貯蔵する第二タンクと、
前記第二タンクと前記複数の蒸発器の各々とを接続する複数の分配管と、
前記第一タンクと前記第二タンクとの間に接続管を介して接続されたポンプと、
前記第二タンクと前記第一タンク又は前記液相管とを接続するバイパス管と、
を備え、
前記第二タンクの前記バイパス管との第一接続口は、前記第二タンクの各前記分配管との第二接続口、及び前記第二タンクの前記接続管との第三接続口よりも高い位置に形成され、
前記バイパス管の内径は、各前記分配管の内径よりも大きい、
電子機器。
(付記13)
複数の発熱部と熱的に接続された複数の蒸発器で前記複数のデバイスの熱により冷媒を蒸発させ、
前記複数の蒸発器と気相管を介して接続された凝縮器で前記冷媒を凝縮し、
前記凝縮器と液相管を介して接続された第一タンクに前記冷媒を貯蔵し、
前記複数の蒸発器よりも高い位置に配置された第二タンクに前記第一タンクに貯蔵された前記冷媒をポンプによって移送して前記第二タンクに前記冷媒を貯蔵し、
前記第二タンクから複数の分配管を介して前記複数の蒸発器の各々に前記冷媒を分配する、
ことを含み、
前記第二タンクから前記複数の分配管を介して前記複数の蒸発器の各々に前記冷媒を分配する際に、前記第二タンクに貯蔵された前記冷媒の一部をバイパス管を介して前記第一タンクに戻すことで、前記ポンプの圧力を前記バイパス管側に逃して前記ポンプの圧力が前記複数の分配管側に作用することを抑制し、前記複数のデバイスの発熱量に応じて前記第二タンクから前記複数の蒸発器の各々へ前記冷媒が自重で流れ込むようにする、
冷却方法。
【符号の説明】
【0078】
10 電子機器
14 電子ユニット
18 デバイス(発熱部の一例)
20 冷却装置
22 冷媒
24 蒸発器
26 気相管
26A 枝管
26B 幹管
28 凝縮器
30 液相管
32 第一タンク
34 第二タンク
36 分配管
38 接続管
38A 第一接続管
38B 第二接続管
40 ポンプ
42 バイパス管
54 第一接続口
56 第二接続口
58 第三接続口