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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】内視鏡システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/045 20060101AFI20240611BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
A61B1/045 610
A61B1/045 618
A61B1/00 735
A61B1/00 630
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020156797
(22)【出願日】2020-09-17
(65)【公開番号】P2022050280
(43)【公開日】2022-03-30
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松岡 賢司
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-129618(JP,A)
【文献】特開2012-245161(JP,A)
【文献】特開2005-245561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
G02B 23/24 - 23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影画像を複数の領域に分割する領域分割部と、
前記領域分割部で分割された領域ごとの平均輝度値を算出する輝度値算出部と、
前記輝度値算出部で算出された平均輝度値が予め設定されたしきい値以上の領域を特定する領域特定部と、
前記領域特定部が特定した領域の平均輝度値が前記しきい値以上である期間が、第1所定時間以上第2所定時間未満の期間である場合には、前記領域特定部で特定された領域を新たな測光範囲として決定する測光範囲決定部と、
前記測光範囲決定部が決定した新たな測光範囲に対して撮像自動制御を行う信号処理部と、
を備える、撮像制御装置と、
前記撮像制御装置の制御に従って、患部を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置に設けられ、前記患部に光を照射する光源部と、を含み、
前記撮像制御装置は、施術器具により反射された前記光源部により照射された光の反射光による輝度値の変化に基づいて、新たな測光範囲を決定する、
内視鏡システム。
【請求項2】
前記撮像制御装置の前記測光範囲決定部は、前記領域特定部が特定した領域の平均輝度値が前記しきい値以上である期間が、第1所定時間未満または第2所定時間以上の期間である場合には、測光範囲を変更しない、
請求項1に記載の内視鏡システム
【請求項3】
前記撮像制御装置の前記測光範囲決定部は、前記領域特定部が特定した領域の平均輝度値が前記しきい値以上である期間が、第1所定時間以上第2所定時間未満の期間であって、前記しきい値以上である領域が複数存在する場合は、平均輝度値が最大の領域を新たな測光範囲として決定する、
請求項1または2に記載の内視鏡システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
硬性内視鏡を用いた腹腔鏡手術などにおいて、撮像装置のフォーカス位置として不適切な部位を除外して撮像装置のオートフォーカス制御をする技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-139760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、フォーカスに不適切な部位にオートフォーカス制御がされることを防止している。このため、不適切な部位にフォーカスされることは防止できるものの、除外されなかった複数の部位のいずれかにフォーカスされた場合、術者の所望の部位にフォーカスされていない可能性がある。この課題は、オートフォーカス制御に限らず、オートゲイン制御やオートホワイトバランス制御などの撮像自動制御全般について同様である。
【0005】
本発明は、術者の所望の部位を測光範囲として設定して撮像自動制御することのできる内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の内視鏡システムは、撮影画像を複数の領域に分割する領域分割部と、前記領域分割部で分割された領域ごとの平均輝度値を算出する輝度値算出部と、前記輝度値算出部で算出された平均輝度値が予め設定されたしきい値以上の領域を特定する領域特定部と、前記領域特定部が特定した領域の平均輝度値が前記しきい値以上である期間が、第1所定時間以上第2所定時間未満の期間である場合には、前記領域特定部で特定された領域を新たな測光範囲として決定する測光範囲決定部と、前記測光範囲決定部が決定した新たな測光範囲に対して撮像自動制御を行う信号処理部と、を備える、撮像制御装置と、前記撮像制御装置の制御に従って、患部を撮像する撮像装置と、前記撮像装置に設けられ、前記患部に光を照射する光源部と、を含み、前記撮像制御装置は、施術器具により反射された前記光源部により照射された光の反射光による輝度値の変化に基づいて、新たな測光範囲を決定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、術者の所望の部位を測光範囲として設定して撮像自動制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る内視鏡システムの構成例を模式的に示す図である。
図2図2は、実施形態に係る撮像装置の構成例を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態に係るCCUの構成例を示すブロック図である。
図4図4は、撮像画像の領域を分割する処理を説明するための図である。
図5図5は、実施形態に係るCCUの制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6図6は、撮像画像の輝度値の平均値を視覚的に示す図である。
図7図7は、輝度値が予め定めた閾値以上となる状況を説明するための図である。
図8図8は、反射物体が存在している場合の撮像画像の輝度値の平均値を視覚的に示す図である。
図9図9は、測光範囲を変更する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含む。また、以下の実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0010】
[実施形態]
図1を用いて、実施形態に係る内視鏡システムについて説明する。図1は、実施形態に係る内視鏡システムの構成例を模式的に示す図である
【0011】
図1に示すように、内視鏡システム1は、硬性鏡10と、カメラヘッド12と、CCU(Camera Control Unit)14と、表示装置16と、を含む。内視鏡システム1は、硬性鏡10と、カメラヘッド12とにより生体内の画像を取得する。内視鏡システム1は、例えば、医師などの術者が、腹腔鏡手術を行う際に用いられるシステムである。
【0012】
硬性鏡10は、硬性の細長な筒形状を有する。硬性鏡10は、患者の生体内に挿入される。硬性鏡10は、例えば、患者の腹部に挿入される。硬性鏡10は、複数枚の光学レンズ22で構成されている。硬性鏡10は、図示しない光源装置から供給された光を照射する光源部24を先端に有する。光源部24は、患者の生体内に光を照射する。光源部24により照射された光は、光学レンズ22で集光され光学像が生成される。光学レンズ22で集光された光学像は、カメラヘッド12に出力される。なお、本実施形態では、内視鏡システム1は、硬性鏡10を備えるものとして説明するが、内視鏡システム1は、内視鏡として軟性の軟性鏡を備えるシステムであってもよい。
【0013】
カメラヘッド12は、硬性鏡10からの光学像を撮像して撮像結果を出力する。カメラヘッド12は、CCU14の制御に従って硬性鏡10で集光された光学像を撮像し、撮像信号を出力する。カメラヘッド12と、CCU14との間は、ケーブル26により接続されている。カメラヘッド12は、ケーブル26を介して、撮像信号をCCU14に出力する。カメラヘッド12は、撮像装置とも呼ばれ得る。カメラヘッド12の構成は後述する。
【0014】
CCU14は、カメラヘッド12と、表示装置16とを統括的に制御する。CCU14は、カメラヘッド12からケーブル26を介して入力された撮像信号を処理して画像信号を生成する。CCU14は、画像信号を表示装置16に出力して、表示装置16に画像を表示させる。CCU14と、表示装置16との間は、ケーブル28により接続されている。CCU14は、ケーブル28を介して、画像信号を表示装置16に出力する。CCU14は、撮像制御装置とも呼ばれ得る。CCU14の構成は後述する。
【0015】
表示装置16は、画像を表示する。表示装置16は、例えば、CCU14から入力された画像信号に基づいて、患者の生体の画像を表示する。表示装置16は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)または有機EL(Organic Electro-Luminescence)ディスプレイ等を含むディスプレイである。
【0016】
本実施形態では、施術中の撮像画像の輝度値の変化に基づいて、撮像自動制御を行う。例えば、施術器具(例えば、メス)などが動くと、その部分に変化が現れる。特に、金属製の施術器具などは、光源部24からの照明光を反射することで、輝度値が大きくなる。そこで、術者は、照明光と、施術器具を使用して一時的に意図的に光を反射させて、体内の特定領域に輝度値が予め定めた閾値以上となる場所を作り出すことで、施術中に着目したい箇所を指定することが可能となる。本実施形態では、このような輝度値がしきい値以上となる箇所を術者が着目したい領域であるとして判定して、その領域に対して最適な撮像自動制御処理を実行する。
【0017】
[撮像装置の構成]
図2を用いて、実施形態に係る撮像装置の構成例について説明する。図2は、実施形態に係る撮像装置の構成例を示すブロック図である。
【0018】
カメラヘッド12は、光学レンズ30と、撮像素子32と、駆動部34と、信号処理部36と、通信部38と、を備える。
【0019】
光学レンズ30は、1または複数のレンズを用いて構成され得る。光学レンズ22は、硬性鏡10の最終段のレンズでもあり得る。光学レンズ30は、光軸に沿って移動可能に構成されている。光学レンズ30は、光軸に沿って移動することで、画角を変化させるズーム機能、および焦点位置を変化させるフォーカス機能を有する。光学レンズ30を通過した光学像は、撮像素子32に入力される。
【0020】
撮像素子32は、駆動部34の制御に従って、被写体を撮像する。撮像素子32は、光学レンズ22が結像した光学像を受光することで、電気信号に変換する。撮像素子32は、例えば、受光した光学像を光電変換して電気信号(アナログ信号)に変換して信号処理部36に出力する。撮像素子32は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などで実現することができる。
【0021】
駆動部34は、図示しない操作部を介してユーザから入力された操作に応じた操作信号、及びCCU14からの駆動信号に応じて、カメラヘッド12の全体を制御する。駆動部34は、例えば、光学レンズ30のズーム機能及びファーカス機能を制御して、撮像素子32による撮像画像の倍率及び焦点を変更する。
【0022】
信号処理部36は、撮像素子32から受けた信号に対して各種の信号処理を実行する。信号処理部36は、例えば、撮像素子32から受けた信号に対してA/D(Analog/Digital)変換を行って撮像信号を生成する。信号処理部36は、生成した撮像信号を通信部38に出力する。
【0023】
駆動部34、および信号処理部36は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、図示しない記憶部などに記憶されたプログラムがRAM等を作業領域として実行されることにより実現される。駆動部34、および信号処理部36は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現されてもよい。駆動部34、及び信号処理部36は、ハードウェアと、ソフトウェアとの組み合わせで実現されてもよい。
【0024】
通信部38は、CCU14との間で各種の情報の送受信を行う。通信部38は、例えば、信号処理部36から受けた撮像信号をCCU14に出力するために所定の信号形式に変換する。信号処理部36は、所定の信号形式に変換した撮像信号をCCU14に出力する。通信部38は、例えば、CCU14から光学レンズ22のズーム機能、及びフォーカス機能などを制御するための駆動信号を受信する。
【0025】
[CCUの構成]
図3を用いて、実施形態に係るCCUの構成例について説明する。図3は、実施形態に係るCCUの構成例を示すブロック図である。
【0026】
CCU14は、第1通信部40と、第2通信部42と、制御部44と、を備える。CCU14は、カメラヘッド12と、表示装置16とを統括的に制御する制御装置である。
【0027】
第1通信部40は、カメラヘッド12との間で各種情報を送受信する。第1通信部40は、例えば、カメラヘッド12からケーブル26を介して入力された撮像信号を受信する。第1通信部40は、カメラヘッド12から受信した撮像信号を制御部44に出力する。第1通信部40は、カメラヘッド12の駆動を制御するための駆動信号を、ケーブル26を介して、カメラヘッド12に送信する。
【0028】
第2通信部42は、表示装置16との間で各種情報を送受信する。第2通信部42は、例えば、ケーブル28を介して、撮像信号を表示装置16に送信する。
【0029】
制御部44は、例えば、カメラヘッド12の撮像処理、及び表示装置16の表示処理に関する各種の処理を制御する。制御部44は、例えば、カメラヘッド12の駆動を制御するための駆動信号を生成する。本実施形態では、制御部44は、術者の所望の部位をフォーカスさせるための駆動信号を生成する。
【0030】
制御部44は、CPUやMPU等によって、図示しない記憶部などに記憶されたプログラムがRAM等を作業領域として実行されることにより実現される。制御部44は、例えば、ASICやFPGA等の集積回路により実現されてもよい。制御部44は、ハードウェアと、ソフトウェアとの組み合わせで実現されてもよい。
【0031】
制御部44は、領域分割部50と、輝度値算出部52と、領域特定部54と、測光範囲決定部56と、信号処理部58と、表示制御部60と、通信制御部62と、を備える。
【0032】
領域分割部50は、第1通信部40が受信した撮像画像に対して、分割処理を行う。領域分割部50は、例えば、第1通信部40が受信した撮像画像を複数の領域に分割する処理を行う。
【0033】
図4は、撮像画像の領域を分割する処理を説明するための図である。図4において、X軸に平行な方向は横方向、Y軸に平行な方向は縦方向である。図4には、撮像画像IMが示されている。領域分割部50は、撮像画像IMを複数の領域70に分割する。領域分割部50は、例えば、撮像画像IMの横方向及び縦方向をそれぞれ8分割にすることで、撮像画像IM1を64個の領域70に分割する。領域分割部50による撮像画像IMの分割数及び領域70の面積は任意であり、設計に応じて任意に変更し得る。
【0034】
図3に戻る。輝度値算出部52は、撮像画像IMの輝度値を算出する。輝度値算出部52は、例えば、撮像画像IMにおいて、領域分割部50が分割した領域ごとの輝度値を算出する。輝度値算出部52は、例えば、撮像画像IMにおいて、領域分割部50が分割した領域ごとの平均輝度値を算出する。
【0035】
領域特定部54は、輝度値算出部52の算出結果に基づいて、所定の領域を特定する。領域特定部54は、輝度値算出部52の算出結果に基づいて、輝度値が予め定めた所定のしきい値を超えている領域70を特定する。所定のしきい値とは、例えば、いわゆる白飛びが発生する程度の輝度値のことをいうが、これに限定されない。領域特定部54は、例えば、所定のしきい値を超えている領域70が複数ある場合には、そのうちの最大の輝度値の領域を特定してもよい。本実施形態では、領域特定部54は、例えば、患者の体内の術者が着目したい着目箇所において、術者が意図的に施術器具を用いて光を反射させることで、所定のしきい値以上の輝度値となった領域を特定する。
【0036】
測光範囲決定部56は、測光範囲を決定する。測光範囲は、術者が着目を所望する着目範囲であり得る。測光範囲決定部56は、領域特定部54が特定した輝度値が予め定めた所定のしきい値を超えている領域70に基づいて、測光範囲を決定する。測光範囲決定部56は、領域特定部54が特定した領域の平均輝度値がしきい値以上である期間が、第1所定時間以上第2所定時間未満の期間である場合には、領域特定部54が決定した領域を新たな測光範囲として決定する。第1所定時間は、例えば、数秒程度であるがこれに限定されない。第2所定時間は、例えば、十数秒程度であるが、これに限定されない。具体的には、第1所定時間以上第2所定時間未満の時間とは、術者が意図的に施術器具などで光を反射していると判定される程度の時間である。図4に示す例では、測光範囲決定部56は、例えば、測光範囲72を決定する。測光範囲72は、領域70が9個分の領域である。図4に示すように、測光範囲は、領域70が1個分のように最小単位とは限らず、測光範囲72のように最小単位の領域70を複数まとめた領域になり得る。測光範囲72は、横長及び縦長など検出物の特徴に合わせて適宜変更し得る。
【0037】
信号処理部58は、第1通信部40から受けた撮像信号に対して各種の処理を行う。信号処理部58は、例えば、オートフォーカス処理と、オートゲイン処理と、オートホワイトバランス処理などの撮像自動制御処理を行う。信号処理部58は、測光範囲決定部56が決定した測光範囲72に対して、その他の周知の処理を行ってもよい。
【0038】
信号処理部58は、オートフォーカス処理においては、例えば、撮像画像IMにおいて、領域70ごとに撮像信号の高域成分と、中域成分とを抽出する。信号処理部58は、例えば、測光範囲決定部56が決定した測光範囲72の撮像成分の高域成分及び中域成分の比率が最も大きくなるような光学レンズ30の最適な駆動状態を算出する。信号処理部58は、オートフォーカス処理において、光学レンズ30を最適な駆動状態に制御するための駆動信号を出力する。これより、光学レンズ30は、測光範囲決定部56が決定した測光範囲72に焦点(ピント)を合わせることができる。
【0039】
信号処理部58は、オートゲイン処理においては、例えば、撮像画像IMにおいて、領域70ごとの輝度値の平均値及び最大値に基づいて、ゲイン調整を行う。信号処理部58は、たとえば、測光範囲決定部56が決定した測光範囲72の輝度値が目標とする輝度値となるように撮像画像IMの撮像信号にゲインをかけることで、視覚的に見やすい映像レベルを実現する。
【0040】
信号処理部58は、オートホワイトバランス処理においては、例えば、撮像画像IMにおいて、領域70ごとのRGB成分を算出する。信号処理部58は、例えば、測光範囲決定部56が決定した測光範囲に含まれる無彩色の被写体に対して、RGB成分が同じレベルになるようにゲインを与えて最適なホワイトバランスを実現する。
【0041】
表示制御部60は、表示装置16を制御する。表示制御部60は、例えば、撮像画像IMを表示装置16に表示させる。表示制御部60は、例えば、撮像自動制御を行った撮像画像IMを表示装置16に表示させる。
【0042】
通信制御部62は、第1通信部40を制御して、カメラヘッド12と、CCU14との間の通信を制御する。通信制御部62は、例えば、第1通信部40を制御して、光学レンズ30の駆動状態を制御するための駆動信号をカメラヘッド12に送信する。
【0043】
通信制御部62は、第2通信部42を制御して、CCU14と、表示装置16との間の通信を制御する。通信制御部62は、例えば、第2通信部42を制御して、表示装置16に表示させる撮像画像に関する撮像信号を送信する。
【0044】
[制御処理]
図5を用いて、実施形態に係るCCUの制御処理について説明する。図5は、実施形態に係るCCUの制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0045】
制御部44は、撮像画像を複数の領域に分割する(ステップS10)。具体的には、領域分割部50は、図4に示したように、撮像画像IMを複数の領域70に分割する。そして、ステップS12に進む。
【0046】
制御部44は、領域ごとの輝度値を算出する(ステップS12)。具体的には、輝度値算出部52は、撮像画像IMにおいて、領域70ごとの輝度値の平均値を算出する。図6は、撮像画像IMの輝度値の平均値を視覚的に示す図である。図6には、領域ごとの輝度値が示されている。図6に示すように、輝度値算出部52は、領域70ごとの輝度値の平均値を算出することにより、輝度値を凹凸で視覚的に示した輝度値情報80を得ることができる。そして、ステップS14に進む。
【0047】
制御部44は、輝度値がしきい値以上の領域があるか否かを判定する(ステップS14)。具体的には、領域特定部54は、輝度値算出部52が算出した領域70ごとに算出した輝度値に基づいて、予め定めた輝度値以上の領域70があるか否かを判定する。
【0048】
図7を用いて、輝度値が予め定めたしきい値以上となる状況について説明する。図7は、輝度値が予め定めた閾値以上となる状況を説明するための図である。図7に示すように、撮像画像IMには、反射物体90が含まれている。本実施形態では、反射物体90は、術者により使用されるメスなどの施術器具である。図8は、反射物体が存在している場合の撮像画像IMの輝度値の平均値を視覚的に示す図である。図8には、領域ごとの輝度値を示す輝度値情報82が示されている。輝度値情報82は、反射物体90の反射によって輝度値が突出した高輝度領域82aを含む。領域特定部54は、例えば、輝度値情報82に基づいて、高輝度領域82aを検出することで、予め定めたしきい値以上の領域を特定する。輝度値がしきい値以上の領域があると判定された場合(ステップS14;Yes)、ステップS16に進む。輝度値がしきい値以上の領域がないと判定された場合(ステップS14;No)、ステップS28に進む。
【0049】
ステップS14でYesと判定された場合、制御部44は、特定された領域において、輝度値がしきい値以上であった継続時間は第1所定時間以上であるか否かを判定する(ステップS16)。具体的には、測光範囲決定部56は、図示しないカウンタなどを用いて輝度値がしきい値以上であった継続時間は第1所定時間以上であるか否かを判定する。輝度値がしきい値以上であった継続時間は第1所定時間以上であると判定された場合(ステップS16;Yes)、ステップS18に進む。輝度値がしきい値以上であった継続時間は第1所定時間以上でないと判定された場合(ステップS16;No)、ステップS28に進む。
【0050】
ステップS16でYesと判定された場合、制御部44は、特定された領域において、輝度値がしきい値以上であった継続時間は第2所定時間未満であるか否かを判定する(ステップS18)。具体的には、測光範囲決定部56は、図示しないカウンタなどを用いて輝度値がしきい値以上であった継続時間は第2所定時間未満であるか否かを判定する。輝度値がしきい値以上であった継続時間は第2所定時間未満であると判定された場合(ステップS18;Yes)、ステップS20に進む。輝度値がしきい値以上であった継続時間は第2所定時間未満でないと判定された場合(ステップS18;No)、ステップS28に進む。
【0051】
ステップS18でYesと判定された場合、制御部44は、測光範囲を決定する(ステップS20)。具体的には、測光範囲決定部56は、ステップS14で領域特定部54が特定した領域を新たな測光範囲として決定する。そして、ステップS22に進む。
【0052】
制御部44は、測光範囲を変更する(ステップS22)。具体的には、測光範囲決定部56は、現在の測光範囲からステップS20で決定された新たな測光範囲に変更する。
【0053】
図9を用いて、測光範囲を変更する方法について説明する。図9は、測光範囲を変更する方法を説明するための図である。通常のオードゲイン制御は、瞬間的な信号の変化に追従すると画面の明るさが激しく変化してしまい見づらい映像となるため、数秒から数十秒の時定数を持たせて変化させている。本実施形態では、輝度値がしきい値以上の領域を測光範囲の目標座標の指標として使用する。具体的には、図9に示すように、測光範囲決定部56は、現在の測光範囲72から反射物体90を中心とする新たな測光範囲74に変更する。このような制御により、施術者または施術補助者のための測光範囲の移動を、施術者の施術器具の小さな動作で容易に行うことができる。そして、ステップS24に進む。
【0054】
制御部44は、撮像自動制御処理を行う(ステップS24)。具体的には、信号処理部58は、ステップS22で変更された測光範囲に対して、オートフォーカス処理、オートゲイン処理、オートホワイトバランス処理を含む撮像自動制御処理を行う。そして、ステップS26に進む。
【0055】
制御部44は、表示装置16に画像を表示させる(ステップS26)。具体的には、表示制御部60は、ステップS24で信号処理部58が撮像自動制御処理を行った撮像画像を表示装置16に表示させる。そして、ステップS30に進む。
【0056】
ステップS14でNo、ステップS16でNo、又はステップS18でNoと判定された場合、制御部44は、現在の測光範囲を維持する(ステップS28)。具体的には、測光範囲決定部56は、測光範囲を変更せずに、現在の測光範囲を維持する。より具体的には、ステップS16でNoと判定された場合、測光範囲決定部56は、輝度値がしきい値以上であった継続時間が第1所定時間未満である場合には、術者が意図して反射させたものでないと想定されるので、現在の測光範囲を維持する。ステップS18でNoと判定された場合、測光範囲決定部56は、輝度値がしきい値以上であった継続時間が第2所定時間以上である場合には、術者の意図とは関係なく元々存在しているものと想定されるので、現在の測光範囲を維持する。そして、ステップS24に進む。
【0057】
制御部44は、制御処理を終了するか否かを判定する(ステップS30)。具体的には、制御部44は、制御処理を終了する旨の操作を受け付けた場合、及び電源をオフする操作を受け付けた場合に、制御処理を終了すると判定する。制御処理を終了すると判定された場合(ステップS30;Yes)、図6の処理を終了する。制御処理を終了しないと判定された場合(ステップS30;No)、ステップS10に進む。
【0058】
上述のとおり、本実施形態では、撮像画像において、輝度値がしきい値以上の領域を中心に一定の範囲を撮像自動制御処理の対象とする測光範囲として設定する。これにより、本実施形態は、術者が着目する箇所に対して最適な画像処理を行うことができる。本実施形態は、術者が施術器具を動かして光を反射させることで、容易に測光範囲を移動させることができる。
【0059】
また、本実施形態では、施術が終了した際には施術器具に光が反射しないようにすることで、測光範囲を維持させることができる。これにより、本実施形態は、施術箇所に測光範囲を固定することで、施術後の様子が観察しやすくなる。
【0060】
本実施形態は、硬性内視鏡による腹腔鏡手術の撮影状況の特徴を利用することができる。これにより、本実施形態は、硬性内視鏡による腹腔鏡手術において、術者の着目箇所に測光範囲を設定し、最適な撮像自動制御処理を行うことができる。
【0061】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これら実施形態の内容により本発明が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0062】
1 内視鏡システム
10 硬性鏡
12 カメラヘッド
14 CCU
16 表示装置
22,30 光学レンズ
24 光源部
26,28 ケーブル
32 撮像素子
34 駆動部
36 信号処理部
38 通信部
40 第1通信部
42 第2通信部
44 制御部
50 領域分割部
52 輝度値算出部
54 領域特定部
56 測光範囲決定部
58 信号処理部
60 表示制御部
62 通信制御部
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9