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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】ステータ、及びモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/02 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
H02K3/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020157279
(22)【出願日】2020-09-18
(65)【公開番号】P2022051033
(43)【公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 史典
(72)【発明者】
【氏名】軸丸 武弘
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩二
(72)【発明者】
【氏名】赤松 陽介
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-183741(JP,A)
【文献】特開2004-153874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石を有するロータと組み合わされてモータを構成するステータであって、
円筒状のヨークと、前記ヨークの内周面から突出したティースと、を有するステータコアと、
前記ティースに装着されたコイルと、を備え、
前記コイルは、前記ヨーク側の外周部と、前記外周部に対して前記ヨークとは反対側の内周部と、を有し、
前記外周部は、第1部分を含み、
前記内周部は、第2部分を含み、
前記第2部分の電気抵抗値は、前記第1部分の電気抵抗値よりも大きく、
前記内周部は、前記ロータの回転方向における上流側の内周上流部と、前記ロータの回転方向における下流側の内周下流部と、を有し、
前記内周上流部は、前記第2部分を含み、
前記内周下流部は、第3部分を含み、
前記第2部分の電気抵抗値は、前記第3部分の電気抵抗値よりも大きい、ステータ。
【請求項2】
前記第1部分は、第1抵抗率を有する第1材料によって構成され、
前記第2部分は、第2抵抗率を有する第2材料によって構成され、
前記第2抵抗率は、前記第1抵抗率よりも大きい、請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のステータと、
前記ステータの内側に配置され、前記ステータの軸線を中心として回転可能なロータと、を備える、モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ステータ、及びモータに関する。
【背景技術】
【0002】
ステータとロータとを備えるモータに関する技術が知られている(例えば、特許文献1等を参照)。このようなモータのステータは、複数のティースを有するステータコアと、ティースのそれぞれに装着されたコイルとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭62‐203527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなモータでは、小型化かつ大出力化が求められている。そのため、モータのエネルギー効率を高めることが重要である。しかしながら、このようなモータでは、ロータが回転したときに永久磁石等からの磁束がコイルを通過すると、平角コイルでの渦電流損が大きくなり、モータのエネルギー効率が低下するおそれがある。
【0005】
本開示は、エネルギー効率の低下を抑制することができるステータ、及びモータを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様であるステータは、磁石を有するロータと組み合わされてモータを構成するステータであって、円筒状のヨークと、ヨークの内周面から突出したティースと、を有するステータコアと、ティースに装着されたコイルと、を備え、コイルは、ヨーク側の外周部と、外周部に対してヨークとは反対側の内周部と、を有し、外周部は、第1部分を含み、内周部は、第2部分を含み、第2部分の電気抵抗値は、第1部分の電気抵抗値よりも大きい。
【0007】
このステータにおいては、ロータが回転した場合、ロータの磁石からの磁束がティースを通過する。ティースにおいては、磁束が飽和した結果、磁束漏れが発生する場合がある。当該磁束漏れは、ティースにおける内周側に生じやすい。つまり、磁束漏れは、コイルの外周部よりも内周部を通過しやすい。その結果、内周部においては、磁束漏れに起因する渦電流が発生するおそれがある。そこで、内周部の第2部分の電気抵抗値は、外周部の第1部分の電気抵抗値よりも大きい。電気抵抗値が大きい部分では、電流が流れ難くなる。そのため、内周部において渦電流が発生し難くなる。これにより、渦電流損を抑制することができる。また、渦電流の発生を抑制するために、例えば、コイル全体の電気抵抗値を大きくする場合に比べて、銅損の増加を抑制することができる。したがって、このステータによれば、エネルギー効率の低下を抑制することができる。
【0008】
上記の形態において、内周部は、ロータの回転方向における上流側の内周上流部と、ロータの回転方向における下流側の内周下流部と、を有し、内周上流部及び内周下流部は、第2部分によって構成されていてもよい。この構成によれば、例えば、内周上流部及び内周下流部のいずれか一方のみが第2部分を含んでいる場合に比べて、コイルを製造し易くなる。その結果、製造コストの上昇を抑制することができる。
【0009】
上記の形態において、内周部は、ロータの回転方向における上流側の内周上流部と、ロータの回転方向における下流側の内周下流部と、を有し、内周上流部は、第2部分を含み、内周下流部は、第3部分を含み、第2部分の電気抵抗値は、第3部分の電気抵抗値よりも大きくてもよい。ロータが、コイルの内周上流部及び内周下流部をこの順に経過するように回転した場合、ティースにおける内周上流部の近傍において磁束漏れが発生しやすい。その結果、内周上流部においては、渦電流が発生するおそれがある。そこで、内周上流部の第2部分の電気抵抗値は、内周下流部の第3部分の電気抵抗値よりも大きい。そのため、内周上流部において渦電流が発生し難くなる。また、渦電流の発生を抑制するために、例えば、内周部全体の電気抵抗値を大きくする場合に比べて、銅損が大きくなることを抑制することができる。したがって、エネルギー効率の低下をより一層抑制することができる。
【0010】
上記の形態において、第1部分は、第1抵抗率を有する第1材料によって構成され、第2部分は、第2抵抗率を有する第2材料によって構成され、第2抵抗率は、第1抵抗率よりも大きくてもよい。この構成によれば、抵抗率が大きい材料を選択することによって、第2部分の電気抵抗値を第1部分の電気抵抗値よりも容易に大きくすることができる。
【0011】
本開示の一態様であるモータは、上記のステータと、ステータの内側に配置され、ステータの軸線を中心として回転可能なロータと、を備える。
【0012】
このモータにおいては、ロータが回転した場合、ロータの磁石からの磁束がティースを通過する。ティースにおいては、磁束が飽和した結果、磁束漏れが発生する場合がある。当該磁束漏れは、ティースにおける内周側に生じやすい。つまり、磁束漏れは、コイルの外周部よりも内周部を通過しやすい。その結果、コイルの内周部においては、渦電流が発生するおそれがある。そこで、内周部の第2部分の電気抵抗値が、外周部の第1部分の電気抵抗値よりも大きい。電気抵抗値が大きい部分では、電流が流れ難くなる。そのため、内周部において渦電流が発生し難くなる。これにより、渦電流損が大きくなることを抑制することができる。また、渦電流の発生を抑制するために、例えば、コイル全体の電気抵抗値を大きくする場合に比べて、銅損が大きくなることを抑制することができる。したがって、このモータによれば、エネルギー効率の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示のステータ、及びモータによれば、エネルギー効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本開示のモータの構成を示す図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿っての断面の一部を拡大して示す図である。
図3図3は、図2の部分拡大図である。
図4図4は、図3のIV-IV線に沿っての断面図である。
図5図5は、図3の径方向から見た場合におけるコイルの底面図である。
図6図6は、変形例のコイルの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1に示されるように、モータ1は、燃料ポンプのインペラ(不図示)が連結されたシャフト2と、ロータ3と、ステータ4と、ケース5と、を備えている。モータ1は、例えば自動車等の分野や航空宇宙の分野に適用される。
【0017】
シャフト2は、モータ1の回転軸線(以下、「軸線Ax」という。)に沿って延在している。シャフト2は、一対の軸受6によって軸線Axまわりに回転可能に保持されている。ロータ3は、円筒状を呈している。ロータ3の内周面は、一対の軸受6の間においてシャフト2の外周面に固定されている。ロータ3は、シャフト2とともに軸線Axを中心として回転可能である。ロータ3は、永久磁石を有している。
【0018】
ステータ4は、ロータ3と組み合わされてモータ1を構成する。ステータ4は、ロータ3の外周面を囲んでいる。つまり、ロータ3は、ステータ4の内側に配置されている。ステータ4は、ロータ3を回転させるための回転磁界を発生する。具体的には、モータ1において、ステータ4に交流電流が提供されると、ステータ4による回転磁界によってロータ3にトルクが発生し、ロータ3とともにシャフト2が回転する。なお、ステータ4の詳細については後述する。
【0019】
ケース5は、ロータ3及びステータ4等を内部に収容する。ケース5は、例えば円筒状を呈している。ケース5の内周面には、ステータ4が固定されている。ケース5の軸線Axに沿う方向の両端には、上記軸受6が取り付けられている。ケース5は、軸受6を介してシャフト2を外部に突出させている。なお、ケース5の内部には、ステータ4を冷却するための冷却ジャケット(不図示)等がさらに収容されていてもよい。この場合、冷却ジャケットがステータ4を囲む円筒状を呈し、ケース5の内周面には、冷却ジャケットが固定されていてもよい。
【0020】
ケース5は、モータ1の外形を構成する。本実施形態において、モータ1は、円柱状を呈している。以下の説明においては、モータ1の中心軸線(すなわち、軸線Ax)に沿う軸方向Da、モータ1の径方向Db、及びモータ1の周方向Dc(図2参照)を用いる。
【0021】
以降、ステータ4について、詳細に説明する。図2に示されるように、ステータ4は、ステータコア41と、コイル42と、を備えている。ステータコア41は、円筒状を呈している。ステータコア41の中心軸線は、軸線Axと一致する。また、ステータコア41の軸方向、径方向及び周方向は、軸方向Da、径方向Db、周方向Dcとそれぞれ一致する。したがって、以下では、ステータコア41の中心軸線を「軸線Ax」、ステータコア41の中心軸線に沿った方向を「軸方向Da」、ステータコア41の径方向を「径方向Db」、ステータコア41の周方向を「周方向Dc」という場合がある。
【0022】
ステータコア41は、ロータ3を囲んで軸方向Daに沿って延びる円筒状のヨーク41aと、周方向Dcに沿って並ぶ複数(例えば9個)のティース41bと、を有している。各ティース41bは、ヨーク41aの内周面から径方向Dbに突出している。周方向Dcに沿って互いに隣り合うティース41bの間には、スロット41cが形成されている。
【0023】
ステータコア41は、軟磁性材料であり、例えば積層鉄心もしくは圧粉鉄心等を用いる。また、ステータコア41は、一体的に形成されていてもよいが、各部ごとに分割されて形成されていてもよい。本実施形態では、ヨーク41a及びティース41bが分割されて互いに別体として形成されている。具体的には、ティース41bに、コイル42等が装着された後、ヨーク41aとティース41bとが互いに組み付けられて、ステータコア41が形成されている(所謂、あり溝分割方式)。なお、ステータコア41の分割方式としては、公知の種々の方式を採用してよい。
【0024】
コイル42は、ステータコア41に装着されている。コイル42は、ティース41bを囲んでいる。コイル42は、各ティース41bに巻回されてスロット41cに配置されている。コイル42は、巻回されたコイル導体によって構成されている。コイル導体には、巻回された状態で表面に絶縁塗膜が施されている。なお、各図においては、絶縁塗膜の図示を省略している。コイル42は、複数のコイル導体が積層されつつ端部同士が接合されて形成されている。コイル42は、例えば、特開2015-135955号公報に記載された製造方法によって形成されてもよい。
【0025】
コイル導体としては、例えば平角線状のものが挙げられる。コイル導体は、長尺状を呈する。コイル導体は、平面視で矩形環状を呈する。また、コイル導体の材軸方向に交差(例えば直交)する断面は矩形状を呈する。本実施形態におけるコイル導体は、その厚みよりも幅が大きい平板状を呈する。ただし、コイル導体は、角線状のものであってもよい。換言すると、コイル導体は、コイル導体の材軸方向に交差(例えば直交)する断面がスクエア状を呈するものであってもよい。コイル42は、平角コイルとも呼ばれ、一例としてエッジワイズコイルであってもよい。このような平角コイルは、いわゆる占積率を高めることができるので、回転電機であるモータ1のエネルギー効率の向上に寄与する。
【0026】
図3に示されるように、コイル42は、外周部43と、内周部44と、を有している。外周部43は、コイル42のうちヨーク41a側の部分である。内周部44は、コイル42のうちロータ3側の部分である。内周部44は、コイル42のうち外周部43に対してヨーク41aとは反対側の部分である。すなわち、外周部43は、コイル42のうち内周部44に比べてヨーク41aと接近している部分であり、内周部44は、コイル42のうち外周部43に比べてヨーク41aと離れている部分(ロータ3と接近した部分)である。内周部44は、外周部43に比べて、後述する磁束漏れが発生する位置と近い部分である。内周部44は、外周部43に比べて、当該磁束漏れの影響を受けやすい。
【0027】
より詳細には、図3に示すようなセミオープンスロットの分割コアティースでは、ティース本体41b1と接続されているティース先端41b2の基端41b3において磁束の飽和が生じ易い。そこで、基端41b3の近傍に配置されているコイル42の一部である内周上流部44aにおいて、渦電流を抑制するために電気抵抗値を高める。
【0028】
電気抵抗値を高めることは、いわゆる銅損の増加を招く。しかし、モータ1のエネルギー効率は、渦電流損と銅損とを加味して評価される。電気抵抗値を高めた場合に、銅損の増加よりも、渦電流損の低下が大きければ、全体としてモータ1のエネルギー効率は、向上する。
【0029】
図4に示されるように、外周部43は、第1部分51を含んでいる。第1部分51は、外周部43のコイル辺である。外周部43のコイル導体は、第1抵抗率を有する第1材料によって構成されている。つまり、第1部分51は、第1材料によって構成されている。第1材料は、例えば銅である。
【0030】
図5に示されるように、コイル42の内周部44は、内周上流部44aと、内周下流部44bと、を有している。内周上流部44aは、径方向Dbから見た場合に、内周部44のうち、軸方向Daに沿った仮想線Xに対してロータ3の回転方向R(周方向Dcに沿った方向、図3参照)における上流側(図示右側)の部分である。内周下流部44bは、径方向Dbから見た場合に、内周部44のうち、仮想線Xに対してロータ3の回転方向Rにおける下流側(図示左側)の部分である。つまり、ロータ3が軸線Axを中心軸として回転方向Rに回転するとき、ロータ3の外周面における点は、内周上流部44a及び内周下流部44bをこの順に経過する。
【0031】
内周上流部44aは、第2部分52を含んでいる。第2部分52は、内周上流部44aにおけるコイル辺である。第2部分52は、内周部44のうちティース41bに対して回転方向Rにおける上流側の部分である。第2部分52の電気抵抗値は、第1部分51の電気抵抗値よりも大きい。第2部分52は、第2抵抗率を有する第2材料によって構成されている。第2抵抗率は、第1抵抗率よりも大きい。第2材料は、例えばアルミニウムである。
【0032】
内周下流部44bは、第3部分53を含んでいる。第3部分53は、内周下流部44bにおけるコイル辺である。第3部分53は、内周部44のうちティース41bに対して回転方向Rにおける下流側の部分である。第2部分52の電気抵抗値は、第3部分53の電気抵抗値よりも大きい。第3部分53は、第3抵抗率を有する第3材料によって構成されている。第2抵抗率は、第3抵抗率よりも大きい。第3材料は、例えば銅である。
【0033】
つまり、コイル42は、銅及びアルミニウムという異種金属によって構成されている。銅と、銅とは異なる種類の金属との接合に、溶接やボルト締結を採用してよい。
【0034】
なお、コイル辺とは、コイル導体のうち、スロット41cに挿入している部分を指し。一方、コイルエンドとは、コイル導体のうち、スロット41c外にある部分を指す。
【0035】
ところで、平角コイルを用いた電動機では、平角コイルの表面積が大きい。そのため、ロータ3が回転したときに永久磁石等からの磁束が直接に平角コイルを通過する場合があり得る。その結果、鎖交した個所で渦電流が発生し、渦電流損よって電動機のエネルギー効率を低下させる場合がある。
【0036】
そこで、渦電流損を低減させるために、セミオープンスロット型のコアを用いることがある。セミオープンスロット型のコアは、ティース先端41b2を磁路とすることで平角コイルを通過する磁束を抑制できる。しかしながら、ティース41bの先端部が磁束飽和を起こすと漏れ磁束が発生し、この磁束がコイルを通過することで渦電流損が発生する。当該漏れた磁束は、コイル42の外周部43よりも内周部44を通過しやすい。その結果、内周部44においては、渦電流が発生するおそれがある。
【0037】
以上のように構成されたステータ4においては、内周部44の第2部分52の電気抵抗値は、外周部43の第1部分51の電気抵抗値よりも大きい。電気抵抗値が大きい部分では、電流が流れ難くなる。そのため、内周部44において渦電流が発生し難くなる。これにより、渦電流損が大きくなることを抑制することができる。また、渦電流の発生を抑制するために、例えば、コイル42全体の電気抵抗値を大きくする場合に比べて、銅損が大きくなることを抑制することができる。したがって、ステータ4によれば、エネルギー効率の低下を抑制することができる。
【0038】
つまり、ティース41bの先端部の磁束飽和によって生じる漏れ磁束は、ティース41bの先端側に近いほど磁束密度が高い。従って、コイル42においてティース41bの先端側に近い部分ほど渦電流による損失が大きくなる。その結果、渦電流が発生しやすい部分(内周上流部44a)を銅材以外の電気抵抗の高い材料(例えばアルミニウム)で構成することにより渦電流の発生を抑制できる。
【0039】
要するに、コイル42を部分的に異種金属で構成する。その結果、電気抵抗値が比較的高い部分では、銅損が増加するものの、渦電流損は、低減される。そうすると、銅損と渦電流損とを含んで評価されるモータ1のエネルギー効率は、全体として向上する。
【0040】
さらに、渦電流の発生が抑制されると、渦電流に起因する損失も抑制される。渦電流の発生が抑制される部分は、ステータコア41から遠く冷却がし難い内周部44である。従って、冷却がし難い部分において、損失が抑制されるので、モータ1の寿命の低下を抑制することができる。
【0041】
また、内周部44は、ロータ3の回転方向Rにおける上流側の内周上流部44aと、ロータ3の回転方向Rにおける下流側の内周下流部44bと、を有している。内周上流部44aは、第2部分52を含んでいる。内周下流部44bは、第3部分53を含んでいる。第2部分52の電気抵抗値は、第3部分53の電気抵抗値よりも大きい。ロータ3が軸線Axを中心として、コイル42の内周上流部44a及び内周下流部44bをこの順に経過するように回転した場合、ティース41bにおける内周上流部44aの近傍において磁束漏れが発生しやすい。その結果、内周上流部44aにおいては、渦電流が発生するおそれがある。そこで、内周上流部44aの第2部分52の電気抵抗値は、内周下流部44bの第3部分53の電気抵抗値よりも大きい。そのため、内周上流部44aにおいて渦電流が発生し難くなる。また、渦電流の発生を抑制するために、例えば、内周部44全体の電気抵抗値を大きくする場合に比べて、銅損が大きくなることを抑制することができる。したがって、エネルギー効率の低下をより一層抑制することができる。
【0042】
また、第1部分51は、第1抵抗率を有する銅によって構成され、第2部分52は、第2抵抗率を有するアルミニウムによって構成されている。第2抵抗率は、第1抵抗率よりも大きい。この構成によれば、抵抗率が大きい材料を選択することによって、第2部分52の電気抵抗値を第1部分51の電気抵抗値よりも容易に大きくすることができる。
【0043】
また、モータ1によれば、ステータ4と同様に、エネルギー効率の低下を抑制することができる。
【0044】
以上、本開示のモータ及びステータについて説明したが、本開示のモータ及びステータは上記に限定されない。
【0045】
外周部43は、コイル42のうちヨーク41a側の一部であって、内周部44は、コイル42のうち外周部43に対してヨーク41aとは反対側の一部であればよい。例えば、外周部43と内周部44とは、互いに離れていてもよい。また、例えば、コイル42の電気抵抗値は、径方向Dbにおいてヨーク41aとは離れている側からヨーク41aと接近する側に向かって漸減していてもよい。
【0046】
また、内周上流部44aは、内周部44のうち、仮想線Xに対して回転方向Rにおける上流側の一部であって、内周下流部44bは、内周部44のうち、仮想線Xに対して回転方向Rにおける下流側の一部であればよい。例えば、内周上流部44aと内周下流部44bとは、互いに離れていてもよい。また、例えば、内周部44の電気抵抗値は、回転方向Rにおける上流側から下流側に向かって漸減していてもよい。
【0047】
また、第1部分51は、外周部43の一部であればよく、第2部分52は、内周上流部44aの一部であればよく、また、第3部分53は、内周下流部44bの一部であればよい。第1部分51、第2部分52、及び第3部分53のそれぞれは、例えば、コイル辺に加え、コイルエンドの一部(例えば軸方向Daにおいて辺部と重なっている部分)を含んでいてもよい。また、第1部分51、第2部分52、及び第3部分53のそれぞれは、コイル辺の一部であってもよい。
【0048】
また、図6に示されるように、内周上流部44a及び内周下流部44bは、ともに第2部分52によって構成されていてもよい。つまり、内周部44は、第2部分52によって構成されていてもよい。内周部44は、全体が第2材料によって構成されていてもよい。この構成によれば、例えば、内周上流部44a及び内周下流部44bのいずれか一方のみが第2部分52を含んでいる場合に比べて、コイル42を製造し易くなる。その結果、製造コストの上昇を抑制することができる。この点は、モータ1が、コストの抑制が求められている自動車の分野に適用される場合に、特に重要である。なお、この場合、外周部43と内周部44とは、溶接又はボルト締結によって互いに接合されている。
【符号の説明】
【0049】
1 モータ
3 ロータ
4 ステータ
41 ステータコア
41a ヨーク
41b ティース
42 コイル
43 外周部
44 内周部
44a 内周上流部
44b 内周下流部
51 第1部分
52 第2部分
53 第3部分
Ax 軸線
R 回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6