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特許7501273内燃機関の制御方法及び内燃機関の制御装置
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  • 特許-内燃機関の制御方法及び内燃機関の制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】内燃機関の制御方法及び内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/02 20060101AFI20240611BHJP
   F02D 17/00 20060101ALI20240611BHJP
   F02D 41/06 20060101ALI20240611BHJP
   F02N 11/08 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
F02D29/02 321A
F02D29/02 321B
F02D17/00 Q
F02D41/06
F02N11/08 K
F02N11/08 M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020159258
(22)【出願日】2020-09-24
(65)【公開番号】P2022052806
(43)【公開日】2022-04-05
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】岩本 匡史
(72)【発明者】
【氏名】濱根 将太
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-221059(JP,A)
【文献】特開2007-040263(JP,A)
【文献】特開2013-189988(JP,A)
【文献】特開2013-036471(JP,A)
【文献】特開2011-157946(JP,A)
【文献】特開2010-255548(JP,A)
【文献】特開2006-242082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 13/00 - 45/00
F02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の自動停止条件が成立すると燃料噴射を停止して内燃機関を自動停止し、この自動停止による内燃機関の機関回転速度低下中に内燃機関の再始動要求があった場合、内燃機関の機関回転速度が燃料噴射のみで再始動可能となる所定の回転速度閾値以上であれば燃料噴射の再開により内燃機関を始動し、内燃機関の機関回転速度が上記回転速度閾値よりも低ければ電動機を用いて内燃機関を回転させて始動し、
上記回転速度閾値は、燃料噴射を停止してから内燃機関のクランクシャフトが所定角度以上回転すると機関回転の減速度に応じて設定されるとともに、燃料噴射を停止してから内燃機関のクランクシャフトが所定角度以上回転するまでは内燃機関のフリクションに応じて設定されることを特徴とする内燃機関の制御方法。
【請求項2】
上記所定角度は、少なくとも燃料噴射の停止が許可される前に燃料噴射された気筒の燃焼が終了する角度であることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御方法。
【請求項3】
機関回転速度の減速度が大きくなるほど、上記回転速度閾値は大きくなるよう設定されることを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の制御方法。
【請求項4】
上記フリクションの代用特性として内燃機関の補機負荷あるいは冷却水温度を用いて上記回転速度閾値が設定されることを特徴とする請求項に記載の内燃機関の制御方法。
【請求項5】
上記補機負荷が大きくなるほど、あるいは上記冷却水温度が低くなるほど、上記回転速度閾値は大きくなるよう設定されることを特徴とする請求項に記載の内燃機関の制御方法。
【請求項6】
内燃機関を始動させることが可能な電動機と、
所定の自動停止条件が成立すると燃料噴射を停止して内燃機関を自動停止する第1制御部と、
自動停止による内燃機関の機関回転速度低下中に内燃機関の再始動要求があった場合に、内燃機関の機関回転速度が燃料噴射のみで再始動可能となる所定の回転速度閾値以上であれば燃料噴射の再開により内燃機関を始動し、内燃機関の機関回転速度が上記回転速度閾値よりも低ければ上記電動機を用いて内燃機関を始動する第2制御部と、
燃料噴射を停止してから内燃機関のクランクシャフトが所定角度以上回転すると機関回転の減速度に応じて上記回転速度閾値を設定する回転速度閾値設定部と、を有し、
上記回転速度閾値設定部は、燃料噴射を停止してから内燃機関のクランクシャフトが所定角度以上回転するまでは内燃機関のフリクションに応じて上記回転速度閾値を設定することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御方法及び内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アイドル運転中に所定の自動停止条件が成立すると内燃機関を自動停止し、自動停止中に所定の自動再始動条件が成立すると内燃機関を自動再始動する内燃機関のアイドルストップ制御が従来から知られている。
【0003】
例えば特許文献1においては、内燃機関を自動停止するために燃料噴射を停止して機関回転数が低下中に内燃機関の再始動要求があった場合、機関回転速度の降下速度を考慮し、再始動要求の発生タイミングから最初の燃焼を発生させる点火タイミングにおける予測機関回転速度を推定し、予測機関回転速度が予め設定された基準判閾値以上であるか否かで自立復帰可能(燃料噴射の再開により始動可能)か判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-157946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、自動停止条件が成立し燃料噴射停止の判断(許可)がされても、この燃料噴射停止の判断までに燃料噴射した気筒の燃焼が燃料噴射停止の判断後に発生するため、機関回転速度は燃料噴射停止の判断後もすぐには低下しない。
【0006】
従って、燃料噴射停止と判断した直後は、内燃機関に燃焼トルクが未だに残っている。そのため燃料噴射停止と判断した直後の機関回転速度の降下速度からでは、機関回転速度からどのように低下するか精度良く予測できない虞がある。
【0007】
つまり、自動停止により機関回転速度が低下中の内燃機関を再始動する際に、燃料噴射の再開のみで再始動可能か否かを判定するにあたっては、更なる改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の内燃機関は、内燃機関の自動停止による機関回転速度低下中に内燃機関の再始動要求があった場合、機関回転速度が燃料噴射のみで再始動可能となる所定の回転速度閾値以上であれば燃料噴射の再開により内燃機関を始動し、内燃機関の機関回転速度が上記回転速度閾値よりも低ければ電動機を用いて内燃機関のクランクシャフトを回転させて始動する。そして、上記回転速度閾値は、燃料噴射を停止してから内燃機関のクランクシャフトが所定角度以上回転すると、機関回転の減速度に応じて設定される。また、上記回転速度閾値は、燃料噴射を停止してから内燃機関のクランクシャフトが所定角度以上回転するまでは内燃機関のフリクションに応じて設定される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回転速度閾値は、燃料噴射の停止が許可された直後の機関回転の減速度に基づくことはないので、自動停止した内燃機関をどのように再始動するか精度よく判断(判定)することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明が適用される内燃機関のシステム構成の概略を模式的に示した説明図。
図2】目標発電電圧及び冷却水温度から燃焼リカバー可能回転速度閾値を算出する際に用いるマップの一例を模式的に示した説明図。
図3】自動停止条件の成立後の内燃機関の制御状態を示すタイミングチャート
図4】本発明に係る内燃機関の制御の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明が適用される内燃機関1のシステム構成の概略を模式的に示した説明図である。
【0012】
内燃機関1は、例えば多気筒の火花点火式ガソリン機関であり、自動車等の車両に駆動源として搭載されるものである。なお、内燃機関1は、ディーゼル機関であってもよい。
【0013】
内燃機関1は、燃料噴射弁(図示せず)を有するものである。燃料噴射弁の燃料噴射量、燃料噴射弁の燃料噴射時期、燃料噴射弁に供給される燃料の圧力等は、後述するコントロールユニット21によって最適に制御される。
【0014】
また、内燃機関1は、電動機としてのスタータモータ2を有している。スタータモータ2は、停止状態の内燃機関1のクランクシャフト(図示せず)を回転させて内燃機関1を始動(クランキング始動)させるものである。スタータモータ2は、後述するコントロールユニット21によって制御される。
【0015】
内燃機関1の駆動力は、トルクコンバータ3及びクラッチ4を介して変速機としてのCVT(連続無段可変変速機)5に伝達され、このCVT5に伝達された駆動力はファイナルギヤ6を介して車両の駆動輪7に伝達されている。
【0016】
つまり、内燃機関1は、例えば、図示せぬクランクシャフトの回転を駆動力として車両の駆動輪7に伝達するものである。
【0017】
クラッチ4は、トルクコンバータ3とCVT5との間に位置し、内燃機関1からの駆動トルクが駆動輪7に伝達可能となる場合に締結されるものである。つまり、クラッチ4は、内燃機関1の駆動力を駆動輪7に伝達する動力伝達経路上に配置されている。なお、クラッチ4の締結/解放の動作は、後述するコントロールユニット21からの制御指令に基づいて行われている。クラッチ4は、例えば、後述するコーストストップ等の際に解放される。
【0018】
CVT5は、入力側のプライマリプーリ8と、出力側のセカンダリプーリ9と、プライマリプーリ8の回転をセカンダリプーリ9に伝達するベルト10と、を有している。
【0019】
CVT5は、例えば、ベルト10が巻き掛けられるプライマリプーリ8及びセカンダリプーリ9のV溝(図示せず)の幅を油圧を利用して変化させ、ベルト10とプライマリプーリ8、セカンダリプーリ9との接触半径を変化させ、変速比を無段階に変化させるものである。
【0020】
なお、変速機としてCVT5が用いられているが、CVT5の代わりに有段自動変速機を用いることも可能である。この場合、クラッチ4は有段自動変速機内の複数の摩擦締結要素を流用して構成されることになる。
【0021】
コントロールユニット21には、クランクシャフトのクランク角を検出するクランク角センサ22、アクセルペダル(図示せず)の踏込量を検出するアクセル開度センサ23、車両の車速を検出する車速センサ24、ブレーキペダル(図示せず)の踏み込み量を検出するブレーキセンサ(ブレーキスイッチ)25、内燃機関1の排気通路(図示せず)に設けられた排気浄化用触媒(図示せず)の触媒温度を検出する触媒温度センサ26、内燃機関1の冷却水温度(水温)を検出する水温センサ27等の各種センサ類の検出信号が入力されている。
【0022】
コントロールユニット21は、アクセル開度センサ23の検出値を用いて、内燃機関1の要求負荷(エンジン負荷)を算出する。
【0023】
コントロールユニット21は、車載バッテリ(図示せず)の充電容量に対する充電残量の比率であるSOC(State Of Charge)を検出可能となっている。つまり、コントロールユニット21は、バッテリSOC検出部に相当する。
【0024】
コントロールユニット21は、上記車載バッテリへの充電等のために発電するオルタネータ(図示せず)の目標発電電圧を上記車載バッテリのSOC等の運転状態に応じて算出している。上記オルタネータは、内燃機関1の補機である。
【0025】
クランク角センサ22は、内燃機関1の機関回転速度(機関回転数)を検出可能なものである。
【0026】
内燃機関1は、車両の走行時もしくは車両の停止時に、所定の自動停止条件が成立すると、燃料供給を停止して自動停止する。そして、内燃機関1は、自動停止中に所定の自動再始動条件が成立すると再始動する。つまり、コントロールユニット21は、所定の自動停止条件が成立すると内燃機関1を自動停止し、所定の自動再始動条件が成立すると内燃機関1を自動再始動する。
【0027】
内燃機関1の自動停止条件は、例えば、アクセルペダルが踏み込まれていない状態であること、車載バッテリのバッテリSOCが所定のバッテリ閾値SOCthよりも大きいこと、排気浄化用触媒の触媒温度が所定の第1触媒温度閾値T1よりも高いこと等である。
【0028】
内燃機関1は、これらの自動停止条件が全て成立した場合に自動停止する。換言すれば、コントロールユニット21は、内燃機関1の運転中にこれらの自動停止条件が全て成立すると内燃機関1を自動停止させる。つまり、コントロールユニット21は、所定の自動停止条件が成立すると燃料噴射を停止して内燃機関1を自動停止する第1制御部に相当する。コントロールユニット21は、内燃機関1の運転中にこれらの自動停止条件が全て成立すると燃料噴射の停止を許可し、燃料噴射を停止する。
【0029】
内燃機関1の自動再始動条件は、例えば、アクセルペダルが踏み込まれた状態であること、車載バッテリのバッテリSOCが所定のバッテリ閾値SOCth以下であること、排気浄化用触媒の触媒温度が所定の第1触媒温度閾値T1以下であること等である。
【0030】
内燃機関1は、自動停止中に再始動要求があると再始動する。換言すれば、コントロールユニット21は、内燃機関1の自動停止中に上述した自動再始動条件のいずれかが成立すると内燃機関1を再始動させる。例えば、自動停止中の内燃機関1は、車載バッテリのバッテリSOCが所定値としてのバッテリ閾値SOCth以下になると再始動する。
【0031】
内燃機関1の自動停止として、例えば、アイドルストップ、コーストストップ及びセーリングストップがある。
【0032】
アイドルストップは、車両の一時停止時に、例えば上記のような自動停止条件が成立した場合に実施される。また、アイドルストップは、例えば上記のような自動再始動条件のいずれかが成立すると解除される。
【0033】
コーストストップは、車両の走行中に、例えば上記のような自動停止条件が成立した場合に実施される。また、コーストストップは、例えば上記のような自動再始動条件のいずれかが成立すると解除される。なお、コーストストップとは、例えば、低車速でブレーキペダルが踏み込まれた状態の減速中に内燃機関1を自動停止することである。
【0034】
セーリングストップは、車両の走行中に、例えば上記のような自動停止条件が成立した場合に実施される。また、セーリングストップは、例えば上記のような自動再始動条件のいずれかが成立した場合に解除される。なお、セーリングストップとは、例えば中高車速でブレーキペダルが踏まれていない惰性走行中に内燃機関1を自動停止することである。
【0035】
コントロールユニット21は、自動停止による内燃機関1の機関回転速度低下中に内燃機関1の再始動要求があった場合、内燃機関1の機関回転速度が燃料噴射のみで再始動可能となる所定の燃焼リカバー可能回転速度閾値(回転速度閾値)以上であれば燃料噴射の再開により内燃機関1を始動(燃焼始動)し、内燃機関1の機関回転速度が燃焼リカバー可能回転速度閾値よりも低ければスタータモータ2を用いてクランクシャフトを回転駆動して内燃機関1を始動(クランキング)する。つまり、コントロールユニット21は、第2制御部に相当する。
【0036】
燃焼リカバー可能回転速度閾値は、燃料噴射の停止が許可されてから(燃料噴射を停止してから)内燃機関1のクランクシャフトが所定角度以上回転すると、機関回転の減速度に応じて設定される。また、燃焼リカバー可能回転速度閾値は、燃料噴射の停止が許可されてから(燃料噴射を停止してから)内燃機関1のクランクシャフトが所定角度以上回転するまでは、内燃機関1のフリクションに応じて設定される。
【0037】
燃焼リカバー可能回転速度閾値は、コントロールユニット21によって設定される。つまり、コントロールユニット21は、回転速度閾値設定部に相当する。
【0038】
内燃機関1の燃料噴射の停止が許可された直後は、燃料噴射の停止が許可された直前に燃料噴射された気筒の燃焼が発生するため、機関回転速度がすぐには降下(低下)しない。
【0039】
つまり、燃料噴射の停止と判断した直後は、内燃機関1に燃焼トルクが未だ残っているため、機関回転(エンジン回転)の降下速度(減速度)から内燃機関1のフリクションにより機関回転(エンジン回転)がどのように降下するかを予測できない。
【0040】
そこで、機関回転の減速度に応じて燃焼リカバー可能回転速度閾値が設定される場合は、燃料噴射の停止が許可されてから内燃機関1のクランクシャフトが所定角度以上回転した状態となっている。
【0041】
これによって、燃焼リカバー可能回転速度閾値は、燃料噴射の停止が許可された直後の機関回転の減速度に基づくことはないので、自動停止した内燃機関1をどのように再始動するか精度よく判断(判定)することができる。換言すると、燃料噴射の停止が許可された直後は、機関回転の減速度に応じて設定された回転速度閾値を用いて燃料噴射のみで再始動可能か否かの判定が行われないので、自動停止した内燃機関1をどのように再始動するか精度よく判断(判定)することができる。
【0042】
また、上記所定回転角度は、少なくとも燃料噴射の停止が許可される前に燃料噴射された気筒の燃焼が終了する角度である。
【0043】
これによって、機関回転の減速度に応じた燃焼リカバー可能回転速度閾値に可及的速やかに切り換えることが可能となり、自動停止した内燃機関1を燃料噴射の再開により始動する領域を広く(拡大)することが可能となる。
【0044】
燃焼リカバー可能回転速度閾値は、機関回転の減速度に応じて設定する場合、機関回転の減速度が大きくなるほど大きくなるよう設定される。
【0045】
機関回転の減速度が大きくなるほど燃焼リカバー可能回転速度閾値を大きく設定することで、自動停止した内燃機関1を燃料噴射の再開により確実に始動することができる。
【0046】
また、燃焼リカバー可能回転速度閾値は、燃料噴射の停止が許可されてから内燃機関1のクランクシャフトが所定角度以上回転するまでは内燃機関1のフリクションに応じて設定される。
【0047】
これによって、内燃機関1は、機関回転の減速度に応じて燃焼リカバー可能回転速度閾値を設定できるようになるまでの間でも、燃料噴射の再開により始動することが可能となる。
【0048】
ここで、燃焼リカバー可能回転速度閾値を内燃機関1のフリクションに応じて設定する場合、例えば内燃機関1の補機負荷あるいは冷却水温度をフリクションの代用特性として使用してもよい。つまり、燃焼リカバー可能回転速度閾値を内燃機関1のフリクションに応じて設定する場合、内燃機関1の補機負荷あるいは冷却水温度に応じて設定してもよい。補機負荷は、例えば上記オルタネータの目標発電電圧である。
【0049】
フリクションの代用特性として補機負荷あるいは冷却水温度を使用することによって、フリクションに応じた燃焼リカバー可能回転速度閾値をきめ細やかに設定することができる。
【0050】
燃焼リカバー可能回転速度閾値は、例えば上記オルタネータの目標発電電圧と冷却水温度を用いて、コントロールユニット21に記憶された図2に示すようなマップを用いて算出してもよい。図2は、目標発電電圧及び冷却水温度から燃焼リカバー可能回転速度閾値を算出する際に用いるマップの一例を模式的に示した説明図である。
【0051】
燃焼リカバー可能回転速度閾値は、上記オルタネータの目標発電電圧(補機負荷)が大きくなるほど、あるいは冷却水温度が低くなるほど、大きくなるよう設定される。内燃機関1のフリクションは、上記オルタネータの目標発電電圧(補機負荷)が大きくなるほど、あるいは上記冷却水温度が低くなるほど大きくなる。
【0052】
フリクションが大きくなるほど燃焼リカバー可能回転速度閾値を大きく設定することで、自動停止した内燃機関1を燃料噴射の再開により確実に始動することができる。
【0053】
なお、燃焼リカバー可能回転速度閾値は、内燃機関1の補機負荷(上記オルタネータの目標発電電圧)のみを用いて設定してもよい。この場合、燃焼リカバー可能回転速度閾値は、補機負荷(上記オルタネータの目標発電電圧)が大きくなるほど大きくなるよう設定される。また、燃焼リカバー可能回転速度閾値は、冷却水温度のみを用いて設定してもよい。この場合、燃焼リカバー可能回転速度閾値は、冷却水温度が低くなるほど大きくなるよう設定される。
【0054】
図3は、自動停止条件の成立後の内燃機関1の制御状態を示すタイミングチャートである。
【0055】
図3においては、内燃機関1の自動停止条件が時刻t1において成立している。つまり、時刻t1のタイミングで燃料噴射の停止が許可されている。図3における時刻t2は、燃料噴射の停止が許可されてから内燃機関1のクランクシャフトが所定角度回転したタイミングである。図3における時刻t3は、内燃機関1の機関回転速度が燃焼リカバー可能回転速度閾値以下となるタイミングである。図3における時刻t4は、機関回転速度が「0」となるタイミングである。
【0056】
図3中に破線で示す特性線Aは、燃焼リカバー可能回転速度閾値の変化を示している。
【0057】
機関回転の減速度は、時刻t2のタイミングから内燃機関1の機関回転速度が「0」となる時刻t4のタイミングまで算出される。そのため、燃焼リカバー可能回転速度閾値は、時刻t1から時刻t2の間は、例えば、上記オルタネータの目標発電電圧と冷却水温度に応じて割り付けられたマップ(図2を参照)から算出される。
【0058】
燃焼リカバー可能回転速度閾値は、時刻t2から時刻t4の間は、機関回転の減速度に応じて算出される。時刻t2からt4の間の燃焼リカバー可能回転速度閾値は、機関回転の減速度が大きいほど大きくなるよう設定されている。
そのため、図3における特性線A(燃焼リカバー可能回転速度閾値)は、図3にける機関回転の減速度が全体として上に向かって凸となるような曲線となっていることから、全体として図3において下に向かって凸となるような曲線となっている。
【0059】
図3において機関回転速度が燃焼リカバー可能回転速度閾値以上となる時刻t1から時刻t3までの期間が燃料噴射のみで再始動可能となる領域である。図3において機関回転速度が燃焼リカバー可能回転速度閾値未満となる時刻t3以降の期間がスタータモータ2を用いて内燃機関1を回転させて始動する領域である。
【0060】
図4は、上述した実施例における内燃機関1の制御の流れを示すフローチャートである。
【0061】
ステップS1では、内燃機関1の自動停止による燃料噴射停止中であるか否かを判定する。ステップS1において内燃機関1の自動停止による燃料噴射停止中である場合は、ステップS4へ進む。ステップS1において内燃機関1の自動停止による燃料噴射停止中でない場合は、ステップS2へ進む。
【0062】
ステップS2では、内燃機関1の自動停止が開始されたか否かを判定する。つまり、燃料噴射中に内燃機関1の自動停止条件が成立したか否かを判定する。ステップS2において内燃機関1の自動停止が開始された場合は、ステップS3へ進む。ステップS2において内燃機関1の自動停止が開始されない場合は、今回のルーチンを終了する。
【0063】
ステップS3では、内燃機関1の燃料噴射を停止する。
【0064】
ステップS4では、燃料噴射停止後に内燃機関1のクランクシャフトが所定角度以上回転したか否かを判定する。
【0065】
ステップS4において燃料噴射停止後に内燃機関1のクランクシャフトが所定角度以上回転している場合は、ステップS5へ進む。ステップS4において燃料噴射停止後に内燃機関1のクランクシャフトが所定角度以上回転していない場合は、ステップS6へ進む。
【0066】
ステップS5では、燃焼リカバー可能回転速度閾値を機関回転の減速度に応じて設定する。
【0067】
ステップS6では、燃焼リカバー可能回転速度閾値を内燃機関1のフリクションに応じて設定する。
【0068】
以上、本発明の実施例を説明してきたが、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0069】
なお、上述した実施例は、内燃機関の制御方法及び内燃機関の制御装置に関するものである。
【符号の説明】
【0070】
1…内燃機関
2…スタータモータ
3…トルクコンバータ
4…クラッチ
5…CVT
6…ファイナルギヤ
7…駆動輪
8…プライマリプーリ
9…セカンダリプーリ
10…ベルト
21…コントロールユニット
22…クランク角センサ
23…アクセル開度センサ
24…車速センサ
25…ブレーキセンサ
26…触媒温度センサ
27…水温センサ
図1
図2
図3
図4