(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】磁性体シートおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 1/03 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
H01F1/03 104
(21)【出願番号】P 2020162202
(22)【出願日】2020-09-28
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】小穴 壮太郎
(72)【発明者】
【氏名】大村 眞
(72)【発明者】
【氏名】山上 利昭
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-97802(JP,A)
【文献】国際公開第2020/110899(WO,A1)
【文献】特開2012-229507(JP,A)
【文献】特表2003-512658(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0072697(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/00-1/44
D04H 1/00-18/04
D21B 1/00-1/38
D21C 1/00-11/14
D21D 1/00-99/00
D21F 1/00-13/12
D21G 1/00-9/00
D21H 11/00-27/42
D21J 1/00-7/00
G06K 7/00-7/14、19/00-19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートと、
前記シートに配置され、磁性を有する線状のN本の第1磁性体と、
前記シートに配置され、磁性を有する線状のN本の第2磁性体と、
を含み、
N本の前記第1磁性体のうち1本の前記第1磁性体は、前記シートの主面と直交する第1軸方向からみて、第2軸に沿って配置され、
N本の前記第1磁性体のうち、前記第2軸に沿って配置された前記第1磁性体以外の前記第1磁性体は、前記第1軸方向からみて、前記第2軸を(M±5)°ずつ回転させた(N-1)本の第3軸に沿って配置され、
N本の前記第2磁性体は、前記第1軸を中心として、前記第2軸を回転角度θで回転させた第4軸および前記第3軸を前記回転角度θで回転させた第5軸に沿って配置されている、磁性体シート。
ただし、Nは、3以上の奇数であり、
M=(360/N)°の関係を満たし、
θは、(M/2)°でない。
【請求項2】
請求項1において、
θ=(M/4)°の関係を満たす、磁性体シート。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第1軸方向からみて、
N本の前記第1磁性体は、互いに重なっておらず、
N本の前記第2磁性体は、互いに重なっておらず、
前記第1磁性体および前記第2磁性体は、互いに重なっていない、磁性体シート。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記第1磁性体および前記第2磁性体は、大バルクハウゼン効果を有する、磁性体シート。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、
前記第1軸方向からみて、N本の前記第1磁性体の延長線は、1点で交わっていない、磁性体シート。
【請求項6】
シートに、磁性を有する線状のN本の第1磁性体、および磁性を有する線状のN本の第2磁性体を配置する工程を含み、
前記第1磁性体および前記第2磁性体を配置する工程は、
N本の前記第1磁性体のうち1本の前記第1磁性体を、前記シートの主面と直交する第1軸方向からみて、第2軸に沿って配置し、
N本の前記第1磁性体のうち、前記第2軸に沿って配置された前記第1磁性体以外の前記第1磁性体を、前記第1軸方向からみて、前記第2軸を(M±5)°ずつ回転させた(N-1)本の第3軸に沿って配置し、
N本の前記第2磁性体を、前記第1軸を中心として、前記第2軸を回転角度θで回転させた第4軸および前記第3軸を前記回転角度θで回転させた第5軸に沿って配置する、磁性体シートの製造方法。
ただし、Nは、3以上の奇数であり、
M=(360/N)°の関係を満たし、
θは、(M/2)°でない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体シートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セキュリティーの強化を図る一つの手法として、セキュリティーペーパーと呼ばれる紙の利用が提案されている。セキュリティーペーパーは、例えば、磁性ワイヤーが漉き込まれて構成され、所定周波数の交番磁界が与えられた場合、紙に漉き込まれた磁性ワイヤーが磁化反転時に急峻なパルス信号を発する。このパルス信号を検知装置で検出することにより、磁性ワイヤーを含む紙の存在を検知することができる。
【0003】
例えば特許文献1には、セキュリティーペーパーとして、9本の磁性ワイヤーが3つの方向を向くように配置された記録用シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなセキュリティーペーパーでは、検知装置における感度を高めるために、発生されるパルス信号の強度を高めることが望まれている。しかしながら、パルス信号の強度を高めるために磁性ワイヤーの本数を増やすと、コストが高くなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る磁性体シートの一態様は、
シートと、
前記シートに配置され、磁性を有する線状のN本の第1磁性体と、
前記シートに配置され、磁性を有する線状のN本の第2磁性体と、
を含み、
N本の前記第1磁性体のうち1本の前記第1磁性体は、前記シートの主面と直交する第1軸方向からみて、第2軸に沿って配置され、
N本の前記第1磁性体のうち、前記第2軸に沿って配置された前記第1磁性体以外の前記第1磁性体は、前記第1軸方向からみて、前記第2軸を(M±5)°ずつ回転させた(N-1)本の第3軸に沿って配置され、
N本の前記第2磁性体は、前記第1軸を中心として、前記第2軸を回転角度θで回転させた第4軸および前記第3軸を前記回転角度θで回転させた第5軸に沿って配置されている、磁性体シート。
ただし、Nは、3以上の奇数であり、
M=(360/N)°の関係を満たし、
θは、(M/2)°でない。
【0007】
本発明に係る磁性体シートの製造方法の一態様は、
シートに、磁性を有する線状のN本の第1磁性体、および磁性を有する線状のN本の第2磁性体を配置する工程を含み、
前記第1磁性体および前記第2磁性体を配置する工程は、
N本の前記第1磁性体のうち1本の前記第1磁性体を、前記シートの主面と直交する第1軸方向からみて、第2軸に沿って配置し、
N本の前記第1磁性体のうち、前記第2軸に沿って配置された前記第1磁性体以外の前記第1磁性体を、前記第1軸方向からみて、前記第2軸を(M±5)°ずつ回転させた(N-1)本の第3軸に沿って配置し、
N本の前記第2磁性体を、前記第1軸を中心として、前記第2軸を回転角度θで回転させた第4軸および前記第3軸を前記回転角度θで回転させた第5軸に沿って配置する、磁性体シートの製造方法。
ただし、Nは、3以上の奇数であり、
M=(360/N)°の関係を満たし、
θは、(M/2)°でない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る繊維体製造装置を模式的に示す図。
【
図2】第1実施形態に係る繊維体製造装置の排出部を模式的に示す図。
【
図3】第1実施形態に係る繊維体製造装置の排出部を模式的に示す図。
【
図4】第1実施形態に係るシートを模式的に示す平面図。
【
図5】第1実施形態に係るシートを模式的に示す断面図。
【
図6】第1実施形態に係るシートを模式的に示す平面図。
【
図7】第1実施形態に係るシートを模式的に示す平面図。
【
図8】第1実施形態に係る繊維体の製造方法を説明するためのフローチャート。
【
図9】第2実施形態に係る繊維体製造装置を模式的に示す図。
【
図10】第3実施形態に係る磁性体シートを模式的に示す平面図。
【
図11】第3実施形態の第1変形例に係る磁性体シートを模式的に示す平面図。
【
図12】第3実施形態の第1変形例に係る磁性体シートを模式的に示す平面図。
【
図13】第3実施形態の第2変形例に係る磁性体シートを模式的に示す平面図。
【
図14】第3実施形態の第3変形例に係る磁性体シートを模式的に示す平面図。
【
図15】第3実施形態の第4変形例に係る磁性体シートを模式的に示す平面図。
【
図19】実施例1~6および比較例1~3におけるパルス信号の強度を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0010】
1. 第1実施形態
1.1. 繊維体製造装置
1.1.1. 全体の構成
まず、第1実施形態に係る繊維体製造装置について、図面を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態に係る繊維体製造装置100を模式的に示す図である。
【0011】
繊維体製造装置100は、
図1に示すように、例えば、供給部10と、粗砕部12と、解繊部20と、選別部40と、第1ウェブ形成部45と、回転体49と、混合部50と、堆積部60と、第2ウェブ形成部70と、シート形成部80と、切断部90と、を含む。
【0012】
供給部10は、粗砕部12に原料を供給する。供給部10は、例えば、粗砕部12に原料を連続的に投入するための自動投入部である。供給部10によって供給される原料は、
例えば、古紙やパルプシートなどの繊維を含むものである。
【0013】
粗砕部12は、供給部10によって供給された原料を、大気中等の気中で裁断して細片にする。細片の形状や大きさは、例えば、数cm角の細片である。図示の例では、粗砕部12は、粗砕刃14を有し、粗砕刃14によって、投入された原料を裁断することができる。粗砕部12としては、例えば、シュレッダーを用いる。粗砕部12によって裁断された原料は、ホッパー1で受けてから管2を介して、解繊部20に移送される。
【0014】
解繊部20は、粗砕部12によって裁断された原料を解繊する。ここで、「解繊する」とは、複数の繊維が結着されてなる原料を、繊維1本1本に解きほぐすことをいう。解繊部20は、原料に付着した樹脂粒やインク、トナー、にじみ防止剤等の物質を、繊維から分離させる機能をも有する。
【0015】
解繊部20を通過したものを「解繊物」という。「解繊物」には、解きほぐされた解繊物繊維の他に、繊維を解きほぐす際に繊維から分離した樹脂粒や、インク、トナーなどの色剤や、にじみ防止材、紙力増強剤等の添加剤を含んでいる場合もある。解きほぐされた解繊物の形状は、ひも状である。解きほぐされた解繊物は、他の解きほぐされた繊維と絡み合っていない状態、すなわち独立した状態で存在してもよいし、他の解きほぐされた解繊物と絡み合って塊状となった状態、すなわちダマを形成している状態で存在してもよい。
【0016】
解繊部20は、乾式で解繊を行う。ここで、液体中ではなく、大気中等の気中において、解繊等の処理を行うことを乾式と称する。解繊部20としては、例えば、インペラーミルを用いる。解繊部20は、原料を吸引し、解繊物を排出するような気流を発生させる機能を有している。これにより、解繊部20は、自ら発生する気流によって、導入口22から原料を気流と共に吸引し、解繊処理して、解繊物を排出口24へと搬送することができる。解繊部20を通過した解繊物は、管3を介して、選別部40に移送される。なお、解繊部20から選別部40に解繊物を搬送させるための気流は、解繊部20が発生させる気流を利用してもよいし、ブロアー等の気流発生装置を設け、その気流を利用してもよい。
【0017】
選別部40は、解繊部20により解繊された解繊物を導入口42から導入し、繊維の長さによって選別する。選別部40は、例えば、ドラム部41と、ドラム部41を収容するハウジング部43と、を有している。ドラム部41としては、例えば、篩を用いる。ドラム部41は、網を有し、網の目開きの大きさより小さい繊維または粒子、すなわち網を通過する第1選別物と、網の目開きの大きさより大きい繊維や未解繊片やダマ、すなわち網を通過しない第2選別物と、を分けることができる。例えば、第1選別物は、管7を介して、堆積部60に移送される。第2選別物は、排出口44から管8を介して、解繊部20に戻される。具体的には、ドラム部41は、モーターによって回転駆動される円筒の篩である。ドラム部41の網としては、例えば、金網、切れ目が入った金属板を引き延ばしたエキスパンドメタル、金属板にプレス機等で穴を形成したパンチングメタルを用いる。
【0018】
第1ウェブ形成部45は、選別部40を通過した第1選別物を、管7に搬送する。第1ウェブ形成部45は、例えば、メッシュベルト46と、張架ローラー47と、サクション機構48と、を有している。
【0019】
サクション機構48は、選別部40の開口を通過して空気中に分散された第1選別物をメッシュベルト46上に吸引することができる。第1選別物は、移動するメッシュベルト46上に堆積し、ウェブVを形成する。メッシュベルト46、張架ローラー47、およびサクション機構48の基本的な構成は、後述する第2ウェブ形成部70のメッシュベルト72、張架ローラー74、およびサクション機構76と同様である。
【0020】
ウェブVは、選別部40および第1ウェブ形成部45を経ることにより、空気を多く含み柔らかくふくらんだ状態に形成される。メッシュベルト46に堆積されたウェブVは、管7へ投入され、堆積部60へと搬送される。
【0021】
回転体49は、ウェブVを切断することができる。図示の例では、回転体49は、基部49aと、基部49aから突出している突部49bと、を有している。突部49bは、例えば、板状の形状を有している。図示の例では、突部49bは4つ設けられ、4つの突部49bが等間隔に設けられている。基部49aが方向Rに回転することにより、突部49bは、基部49aを軸として回転することができる。回転体49によってウェブVを切断することにより、例えば、堆積部60に供給される単位時間当たりの解繊物の量の変動を小さくすることができる。
【0022】
回転体49は、第1ウェブ形成部45の近傍に設けられている。図示の例では、回転体49は、ウェブVの経路において下流側に位置する張架ローラー47aの近傍に設けられている。回転体49は、突部49bがウェブVと接触可能な位置であって、ウェブVが堆積されるメッシュベルト46と接触しない位置に設けられている。これにより、メッシュベルト46が突部49bによって磨耗することを抑制することができる。突部49bとメッシュベルト46との間の最短距離は、例えば、0.05mm以上0.5mm以下である。これは、メッシュベルト46が損傷を受けずにウェブVを切断することが可能な距離である。
【0023】
混合部50は、選別部40を通過した第1選別物と、樹脂を含む添加物と、を混合する。混合部50は、例えば、添加物を供給する添加物供給部52と、第1選別物と添加物とを搬送する管54と、ブロアー56と、を有している。図示の例では、添加物は、添加物供給部52からホッパー9を介して管54に供給される。管54は、管7と連続している。
【0024】
混合部50では、ブロアー56によって気流を発生させ、管54中において、第1選別物と添加物とを混合させながら、搬送することができる。なお、第1選別物と添加物とを混合させる機構は、特に限定されず、高速回転する羽根により攪拌するものであってもよいし、内側に羽のある配管が回転をするものであってもよい。
【0025】
添加物供給部52としては、
図1に示すようなスクリューフィーダーや、図示せぬディスクフィーダーなどを用いる。添加物供給部52から供給される添加物は、複数の繊維を結着させるための樹脂を含む。樹脂が供給された時点では、複数の繊維は結着されていない。樹脂は、シート形成部80を通過する際に溶融して、複数の繊維を結着させる。
【0026】
添加物供給部52から供給される樹脂は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂であり、例えば、AS(Acrylonitrile Styrene)樹脂、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、などである。これらの樹脂は、単独または適宜混合して用いてもよい。添加物供給部52から供給される添加物は、繊維状であってもよく、粉末状であってもよい。
【0027】
なお、添加物供給部52から供給される添加物には、繊維を結着させる樹脂の他、製造されるシートの種類に応じて、繊維を着色するための着色剤や、繊維の凝集や樹脂の凝集を抑制するための凝集抑制剤、繊維等を燃え難くするための難燃剤が含まれていてもよい
。混合部50を通過した混合物は、管54を介して、堆積部60に移送される。
【0028】
堆積部60は、混合部50を通過した混合物を導入口62から導入し、絡み合った解繊物をほぐして、空気中で分散させながら降らせる。さらに、堆積部60は、添加物供給部52から供給される添加物の樹脂が繊維状である場合、絡み合った樹脂をほぐす。これにより、堆積部60は、第2ウェブ形成部70に、混合物を均一性よく堆積させることができる。
【0029】
堆積部60は、例えば、ドラム部61と、ドラム部61を収容するハウジング部63と、を有している。ドラム部61としては、回転する円筒の篩を用いる。ドラム部61は、網を有し、混合部50を通過した混合物に含まれる、網の目開きの大きさより小さい繊維または粒子を降らせる。ドラム部61の構成は、例えば、ドラム部41の構成と同じである。
【0030】
なお、ドラム部61の「篩」は、特定の対象物を選別する機能を有していなくてもよい。すなわち、ドラム部61として用いられる「篩」とは、網を備えたもの、という意味であり、ドラム部61は、ドラム部61に導入された混合物の全てを降らしてもよい。
【0031】
第2ウェブ形成部70は、堆積部60を通過した通過物を堆積して、ウェブWを形成する。第2ウェブ形成部70は、例えば、メッシュベルト72と、張架ローラー74と、サクション機構76と、を有している。
【0032】
メッシュベルト72には、堆積部60の開口を通過した通過物が堆積される。メッシュベルト72は、張架ローラー74によって張架され、通過物を通し難く空気を通す構成となっている。メッシュベルト72は、張架ローラー74が自転することによって移動する。メッシュベルト72が連続的に移動しながら、堆積部60を通過した通過物が連続的に降り積もることにより、メッシュベルト72上にウェブWが形成される。
【0033】
サクション機構76は、メッシュベルト72の下方に設けられている。サクション機構76は、下方に向く気流を発生させることができる。サクション機構76によって、堆積部60により空気中に分散された混合物をメッシュベルト72上に吸引することができる。これにより、堆積部60からの排出速度を大きくすることができる。さらに、サクション機構76によって、混合物の落下経路にダウンフローを形成することができ、落下中に解繊物や添加物が絡み合うことを防ぐことができる。
【0034】
以上のように、堆積部60および第2ウェブ形成部70を経ることにより、空気を多く含み柔らかくふくらんだ状態のウェブWが形成される。メッシュベルト72に堆積されたウェブWは、シート形成部80へと搬送される。
【0035】
なお、図示の例では、ウェブWを調湿する調湿部78が設けられている。調湿部78は、ウェブWに対して水や水蒸気、ミストを添加して、環境湿度や、ウェブWと水との量比を調節することができる。
【0036】
シート形成部80は、メッシュベルト72に堆積したウェブWを加圧加熱してシートSを成形する。シート形成部80では、ウェブWにおいて混ぜ合された解繊物および添加物の混合物に、熱を加えることにより、混合物中の複数の繊維を、互いに添加物を介して結着することができる。
【0037】
シート形成部80は、ウェブWを加圧する加圧部82と、加圧部82により加圧されたウェブWを加熱する加熱部84と、を有している。加圧部82は、一対のローラー85で
構成され、ウェブWに対して圧力を加える。ウェブWは、加圧されることによりその厚さが小さくなり、ウェブWのかさ密度が高められる。加熱部84としては、例えば、加熱ローラー、熱プレス成形機、ホットプレート、温風ブロワー、赤外線加熱器、フラッシュ定着器を用いる。図示の例では、加熱部84は、一対の加熱ローラー86を有している。加熱部84を加熱ローラー86として構成することにより、加熱部84を板状のプレス装置として構成する場合に比べて、ウェブWを連続的に搬送しながらシートSを成形することができる。ローラー85と加熱ローラー86とは、例えば、それらの回転軸が平行になるように配置される。ここで、ローラー85は、加熱ローラー86によってウェブWに印加される圧力よりも高い圧力をウェブWに印加することができる。なお、ローラー85や加熱ローラー86の数は、特に限定されない。
【0038】
切断部90は、シート形成部80によって成形されたシートSを切断する。図示の例では、切断部90は、シートSの搬送方向と交差する方向にシートSを切断する第1切断部92と、搬送方向に平行な方向にシートSを切断する第2切断部94と、を有している。第2切断部94は、例えば、第1切断部92を通過したシートSを切断する。
【0039】
以上により、所定のサイズの単票のシートSが成形される。切断された単票のシートSは、排出受け部96に排出される。
【0040】
1.1.2. 排出部
繊維体製造装置100は、排出部110を含む。ここで、
図2および
図3は、繊維体製造装置100の排出部110を模式的に示す図である。なお、便宜上、
図1では、排出部110を簡略化して図示している。また、
図3は、
図2に示す状態から所定時間経過した状態を示している。
【0041】
排出部110は、
図1~
図3に示すように、例えば、第1供給ロール120と、第1配置部130と、第2配置部140と、を有している。排出部110は、メッシュベルト72上に下地シート150を排出する。メッシュベルト72は、排出された下地シート150を搬送する搬送部である。
【0042】
第1供給ロール120は、基材シート152がロール状に巻かれたものである。第1供給ロール120は、図示せぬ駆動機構によって方向Q1に回転する。これにより、第1供給ロール120を構成する基材シート152は、メッシュベルト72側に進行する。
図2および
図3に示す例では、第1供給ロール120は、架台122上に配置される。
図1では、架台122の図示を省略している。基材シート152は、一方の面152aと、一方の面152aと反対の他方の面152bと、を有している。他方の面152bは、メッシュベルト72と接触する。なお、基材シート152の材質については、後述する。
【0043】
第1配置部130は、基材シート152の一方の面152aに機能材154を配置する。第1配置部130は、例えば、第2供給ロール132と、ローラー134と、ガイド136と、カッター138と、を有している。
【0044】
第2供給ロール132は、シート状の機能材154がロール状に巻かれたものである。第2供給ロール132は、図示せぬ駆動機構によって方向Q2に回転する。図示の例では、方向Q2は、方向Q1と反対の方向である。第2供給ロール132を構成する機能材154は、
図2に示すように、ローラー134およびガイド136を通って、基材シート152の一方の面152aに配置される。そして、
図3に示すように、機能材154は、カッター138によって所定の位置で切断される。なお、機能材154の材質については、後述する。
【0045】
第2配置部140は、基材シート152の一方の面152aに粘着テープ156を配置する。これにより、第2配置部140は、基材シート152に機能材154の一部を仮止めする。第2配置部140は、例えば、第3供給ロール142と、カッター144と、基材回収ロール146と、を有している。
【0046】
第3供給ロール142は、シート状の粘着テープ156がロール状に巻かれたものである。粘着テープ156は、基材156aと粘着部156bとを含む層構造を有している。第3供給ロール142は、粘着テープ156の粘着部156bを基材シート152の一方の面152aに押し付けた状態で方向Q3に回転する。これにより、粘着テープ156が所定の長さまで引き出され、カッター144により基材156aと粘着部156bとは分離し、基材156aは基材回収ロール146へと巻き取られる。図示の例では、方向Q3は、方向Q1と反対の方向である。第3供給ロール142を構成する粘着テープ156の粘着部156bは、基材シート152の一方の面152aに機能材154を仮固定しながら配置される。そして、粘着テープ156は、カッター144によって所定の位置で切断される。なお、粘着テープ156の材質については、後述する。
【0047】
以上の構成により、排出部110は、基材シート152の一方の面152aに機能材154が配置された下地シート150を、メッシュベルト72に排出する。
図1に示すように、メッシュベルト72は、排出された下地シート150を搬送し、堆積部60は、搬送された下地シート150の一方の面150aに、繊維および結着材を含む混合物を堆積させてウェブWを形成する。下地シート150の他方の面150b側には、吸引部としてのサクション機構76が設けられている。シート形成部80は、ウェブWを加圧および加熱する加圧加熱部である。下地シート150の一方の面150aと、基材シート152の一方の面152aとは、同じ方向を向く面である。
【0048】
1.2. シート
次に、上述した繊維体製造装置100によって製造されるシートSについて、図面を参照しながら説明する。
図4は、第1実施形態に係るシートSを模式的に示す平面図である。
図5は、第1実施形態に係るシートSを模式的に示す
図4のV-V線断面図である。
【0049】
シートSは、切断部90によって、例えばA4サイズに切断された矩形の繊維体である。シートSは、普通紙等の紙と同様に、印刷用紙として、プリンターによって印刷される。シートSの厚さは、例えば、50μm以上200μm以下であり、好ましくは90μm以上150μm以下である。
【0050】
シートSは、
図4および
図5に示すように、下地シート150と、表層シート160と、を含む。下地シート150は、基材シート152と、機能材154と、粘着部156bと、を有している。シートSは、機能材154を含む機能性シートである。なお、便宜上、
図4では、表層シート160を透視して図示している。
【0051】
基材シート152は、例えば、不織布である。基材シート152を構成する不織布は、堆積部60から放出される繊維と、同じ分子構造を有する繊維で構成されていることが好ましい。基材シート152に含まれる繊維としては、例えば、セルロース繊維、レーヨン、綿、リンター、カボック、亜麻、大麻、ラミー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。基材シート152に含まれる繊維としては、セルロース繊維を用いることが好ましい。セルロース繊維は、入手が容易で、成形性に優れる。セルロース繊維としては、木質系パルプに由来するものが好ましい。木質系パルプとしては、バージンパルプ、クラフトパルプ、晒ケミサーモメカニカルパルプ、合成パルプ、古紙や再生紙に由来するパルプ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
基材シート152は、通気性を有している。「通気性」とは、複数の気孔を通して空気が通過する性質のことをいう。基材シート152は、ガーレー試験機法において、透気度を表すガーレー秒数が、30秒未満であることが好ましく、15秒未満であることがより好ましい。
【0053】
機能材154は、基材シート152の一方の面152aに配置されている。具体的には、機能材154は、接着層157によって、基材シート152の一方の面152aに接着されている。機能材154は、例えば、磁性材料で構成された磁性を有する磁性体である。具体的には、機能材154は、磁性材料を、長さが数ミリ以上の磁性ワイヤーである。シートSは、例えば、複数の機能材154を有している。
図4に示す例では、シートSは、6本の機能材154を有している。複数の機能材154は、平面視において、放射状に配置されている。複数の機能材154は、平面視において、互いに重なっていない。
図4に示す例では、6本の機能材154のうち、機能材154a,154bは、第1方向に長手方向を有し、機能材154c,154dは、第1方向に対して60°傾いた第2方向に長手方向を有し、機能材154e,154fは、第1方向および第2方向に対して60°傾いた第3方向に長手方向を有している。機能材154aと他の機能材154bとは、平面視において、重なっていない。例えば、基材シート152に対して、図示せぬ移動機構により第1配置部130および第2配置部140を移動させることにより、複数の機能材154を所定の位置に配置させることができる。
【0054】
シートSは、磁性ワイヤーである機能材154を有することで、セキュリティーペーパーとして利用される。セキュリティーペーパーとは、励磁コイルと検知コイルとを備える検知システムによって検出可能な紙の形状で実現したものである。励磁コイルに交番電流を流して数kHzの交番磁界を発生させ、その交番磁界中にシートSを置くと、磁化反転時に、シートSの存在を検知することができる。そのため、人や車両が通行可能なゲートに励磁コイルと検知コイルとを配置することにより、ゲートを通過するシートSを検知することができる。したがって、シートSの持ち出しを検知することができる。例えば、シートSに機密情報等が印刷されている場合に、機密情報の漏洩を防止することができる。
【0055】
機能材154は、大バルクハウゼン効果を有することが好ましい。具体的には、機能材154の材質は、FeCr系、FeCo系、FeNi、FeSiB、FeCoCrSiB系合金である。これらの材料は、後加工によってひずみを加えなくても大バルクハウゼン効果を発現するので、好適に用いることができる。なお、後加工によってひずみを加えることにより大バルクハウゼン効果を与えてもよい。また、機能材154は、アモルファスリボンが切断されたワイヤーであってもよいし、同金属を溶融状態からガラスと一緒に引いて冷却されたガラス被覆ワイヤーであってもよい。
【0056】
機能材154の形状は、ワイヤー状やリボン状など、縦長の線状であることが好ましい。断面積に対して所定の長さがあることよって、大バルクハウゼン効果を発現し易くすることができる。
【0057】
機能材154の形状がワイヤー状である場合、機能材154の直径は、10μm以上100μm以下であることが好ましい。機能材154の直径が10μm以上であれば、大バルクハウゼン効果を発現し易い。機能材154の直径が100μm以下であれば、シートSから機能材154が露出しない。さらに、機能材154の直径が100μm以下であれば、カッター138によって機能材154を容易に切断することができる。
【0058】
機能材154の形状がリボン状である場合、機能材154の厚さは、10μm以上100μm以下であることが好ましい。機能材154の厚さが10μm以上であれば、大バル
クハウゼン効果を発現し易い。機能材154の厚さが100μm以下であれば、シートSから機能材154が露出しない。さらに、機能材154の厚さが100μm以下であれば、カッター138によって機能材154を容易に切断することができる。機能材154の形状がリボン状である場合、機能材154の幅は、例えば、50μm以上1000μm以下が好ましい。
【0059】
機能材154の形状がワイヤー状またはリボン状である場合、機能材154の長さは、好ましくは10mm以上であり、より好ましくは50mm以上である。機能材154の長さが10mm以上であれば、形状異方性効果も相まってNS反転の効果も発現し易い。さらに、機能材154の長さが10mm以上であれば、機能材154を所望の位置に配置し易い。機能材154の長さの上限は、切断されたシートSのサイズを超えなければ、特に限定されないが、例えば、200mm以下である。
【0060】
なお、機能材154の直径や長さは、シートSに含まれる全ての機能材154の直径や長さが上述した範囲を満たすことが好ましいが、値に分布がある場合には、平均値として上述した範囲を満たすことが好ましい。また、機能材154が屈曲している場合は、機能材154の両端を結んだ最短距離を機能材154の長さとする。
【0061】
機能材154の数量は、例えば、切断部90で切断されたシートSにおける重量により規定される。例えば、シートSの重量を100重量部とした場合に、機能材154の重量が1.0重量部未満であることが好ましい。換言すれば、繊維体製造装置100は、切断部90により、シートSの重量を100重量部とした場合の機能材154の重量が1.0重量部未満となる位置で切断し、シートSを製造する。
【0062】
粘着部156bは、機能材154に設けられている。図示の例では、粘着部156bは、1本の機能材154に対して、2つ設けられている。粘着部156bは、機能材154の一方の端部と他方の端部とに設けられている。なお、機能材154に対する粘着部156bの数は、特に限定されないが、機能材154の一方の端部と他方の端部とに粘着部156bを設けることで基材シート152の伸びに対して柔軟に対応することできる。粘着部156bは、粘着テープ156から基材156aが剥がされたものである。粘着テープ156は、例えば、いわゆる修正テープである。粘着部156bは、接着層157と、隠ぺい層158と、を有している。
【0063】
接着層157は、機能材154を基材シート152に接着させる。接着層157は、隠ぺい層158と機能材154とを基材シート152の一方の面152aに接着する。接着層157の材質は、例えば、天然ゴム系粘着剤であり、具体的には、天然ゴムに、タッキファイヤーおよび酸化防止剤を添加したものである。
【0064】
隠ぺい層158は、接着層157の表面157aに設けられている。隠ぺい層158は、接着層157を隠ぺいする。すなわち、隠ぺい層158は、下地シート150の一方の面150a側から、接着層157を視認され難くする。隠ぺい層158の材質は、例えば、溶剤としてのメチルシクロヘキサンと、固着剤としてのアクリル系樹脂と、顔料としての酸化チタンと、を混合塗布したものである。隠ぺい層158は、白色顔料である酸化チタンを含むため、白色である。したがって、基材シート152および表層シート160が白色の場合に、隠ぺい層158を視認され難くすることができる。隠ぺい層158は、接着性を有していない。
【0065】
なお、隠ぺい層158に含まれる顔料は、基材シート152および表層シート160の色に合わせて、適宜選択可能である。また、隠ぺい層158に含まれる溶剤および固着剤は、隠ぺい層158に含まれる顔料に合わせて、適宜選択可能である。
【0066】
隠ぺい層158および接着層157は、通気性を有していることが好ましい。隠ぺい層158および接着層157は、複数の気孔を通して空気を通過させることができる。隠ぺい層158および接着層157が通気性を有していれば、サクション機構76によって、堆積部60からの繊維および結着材を吸引し易い。
【0067】
なお、
図2に示すように、粘着テープ156をロール状にする場合には、粘着テープ156と、図示せぬ基材テープと、を重ねた状態でロール状にすることが好ましい。そして、粘着テープ156で機能材154を仮止めする際には、図示せぬ基材テープを粘着テープ156から剥がすことが好ましい。これにより、ロール状にされた粘着テープ156を基材シート152に容易に送り出すことができる。
【0068】
表層シート160は、下地シート150の一方の面150aに設けられている。表層シート160は、基材シート152、機能材154、および粘着テープ156を覆っている。表層シート160は、供給部10によって供給される原料の繊維と、添加物供給部52から供給される樹脂である結着材と、を含む。表層シート160に含まれる繊維および結着材は、堆積部60から放出されたものである。結着材は、加熱部84の加熱により、堆積部60からの繊維同士を接着させる他、堆積部60からの繊維と基材シート152とを結着させる。さらに、結着材は、機能材154と基材シート152とを結着させる。さらに、結着材は、機能材154と堆積部60からの繊維とを結着させる。
【0069】
なお、
図4に示す例では、複数の機能材154は、放射状に配置されていたが、複数の機能材154の配置は、互いに重ならなければ、特に限定されない。例えば、機能材154a,154bが第1方向に長手方向を有し、機能材154c,154dが第2方向に長手方向を有し、機能材154e,154fが第3方向に長手方向を有した状態において、
図6に示すように複数の機能材154が基材シート152の中心を取り囲むように配置されてもよいし、
図7に示すように複数の機能材154がランダムに配置されていてもよい。このように、複数の機能材154が異なる方向に長手方向を有することにより、例えば複数の機能材の長手方向が全て同じ方向である場合に比べて、機能材154を検知され易くすることができる。
【0070】
また、上記では、機能材154が磁性体である場合について説明したが、シートSの機能材154を、外部から非接触で検知することができれば、機能材154は、磁性体でなくてもよい。例えば、機能材154は、金属検知機で検知される金属線であってもよいし、REID(Radio Frequency Identification)リーダーで検知されるRF(Radio Frequency)タグでもよいし、IC(Integrated Circuit)チップでもよい。
【0071】
また、シートSは、表層シート160の表面に、図示しない不織布からなるシートが設けられた構造を有していてもよい。換言すると、基材シート152と不織布からなるシートとの間に、表層シート160が位置していてもよい。ただし、低コスト化を考慮すると、不織布からなるシートは、設けられていないことが好ましい。
【0072】
1.3. シートの製造方法
次に、第1実施形態に係るシートSの製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図8は、第1実施形態に係るシートSの製造方法を説明するためのフローチャートである。シートSの製造は、例えば、上述した繊維体製造装置100を用いて行われる。
【0073】
シートSの製造方法は、
図8に示すように、基材シート152の一方の面152aに機能材154が配置された下地シート150を排出する排出工程(ステップS1)と、排出された下地シート150を搬送する搬送工程(ステップS2)と、搬送された下地シート
150の一方の面150aに、繊維および結着材を堆積させてウェブWを形成する堆積工程(ステップS3)と、ウェブWを加圧および加熱する加圧加熱工程(ステップS4)と、を含む。
【0074】
排出工程(ステップS1)は、繊維体製造装置100の排出部110によって行われる。搬送工程(ステップS2)は、メッシュベルト72によって行われる。堆積工程(ステップS3)は、堆積部60によって行われる。加圧加熱工程(ステップS4)は、加圧部82および加熱部84を有するシート形成部80によって行われる。
【0075】
上記の工程の他に、シートSの製造方法は、上述した繊維体製造装置100の各部によって行われる工程を含んでもよい。
【0076】
1.4. 作用効果
繊維体製造装置100では、基材シート152の一方の面152aに機能材154が配置された下地シート150を排出する排出部110と、排出された下地シート150を搬送するメッシュベルト72と、搬送された下地シート150の一方の面150aに、繊維および結着材を堆積させてウェブWを形成する堆積部60と、ウェブWを加圧および加熱するシート形成部80と、を含む。このように、繊維体製造装置100では、基材シート152と加圧および加熱されたウェブW(表層シート160)とで機能材154を挟んでシートSを製造する。そのため、繊維体製造装置100では、例えば折り曲げられたとしても、表面に機能材154が露出する可能性の小さいシートSを製造することができる。したがって、繊維体製造装置100で製造されたシートSは、高い印刷性能を有することができる。
【0077】
さらに、繊維体製造装置100で製造されたシートSは、繊維を含む表層シート160に印刷された場合に、例えば機能材の露出を防ぐためにシートの表面に設けられたコート層(繊維を含まないコート層)に印刷された場合と比べて、高い印刷性能を有することができる。
【0078】
繊維体製造装置100では、下地シート150の他方の面150b側に設けられたサクション機構76を含み、基材シート152は、通気性を有する。そのため、繊維体製造装置100では、基材シートが通気性を有していない場合に比べて、サクション機構76によって、堆積部60からの繊維および結着材を吸引し易い。
【0079】
繊維体製造装置100では、機能材154は、接着層157によって基材シート152に接着され、接着層157の表面157aには、接着層157を隠ぺいする隠ぺい層158が設けられている。そのため、繊維体製造装置100では、隠ぺい層が設けられていない場合に比べて、下地シート150の一方の面150a側から、接着層157を視認され難くすることができる。さらに、下地シート150の移動中に、機能材154が基材シート152に対して動く可能性を小さくすることができる。
【0080】
例えば、液体の接着剤によって機能材を接着する場合には、接着剤が基材シートに染み込んで広がり、シミになる。このようなシミは、印刷の支障となる。また、ワックスによって機能材を接着する場合には、加熱部による加熱でワックスが溶け、液体の接着剤と同様にシミになる。繊維体製造装置100では、接着層157で接着するため、上記のような問題を回避することができる。
【0081】
繊維体製造装置100では、原料を解繊して繊維を含む解繊物を形成する解繊部20と、解繊物と結着材とを混合して混合物を形成する混合部50と、を含み、堆積部60は、混合物を堆積させる。そのため、繊維体製造装置100では、解繊物と結着材とを含む混
合物を、メッシュベルト72に堆積させることができる。
【0082】
繊維体製造装置100では、基材シート152の一方の面152aには、他の機能材154bが配置され、機能材154aと他の機能材154bとは重なっていない。そのため、繊維体製造装置100では、機能材と他の機能材とが重なっている場合に比べて、平坦性の高いシートSを製造することができる。
【0083】
繊維体製造装置100では、排出部110は、基材シート152に機能材154を配置する第1配置部130を有する。そのため、繊維体製造装置100では、下地シート150を製造することができる。
【0084】
2. 第2実施形態
次に、第2実施形態に係る繊維体製造装置について、図面を参照しながら説明する。
図9は、第2実施形態に係る繊維体製造装置200を模式的に示す図である。
【0085】
以下、第2実施形態に係る繊維体製造装置200において、上述した第1実施形態に係る繊維体製造装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0086】
上述した繊維体製造装置100では、
図1に示すように、排出部110は、第1配置部130および第2配置部140を有していた。これに対し、繊維体製造装置200では、
図9に示すように、排出部110は、第1配置部130および第2配置部140を有していない。
【0087】
繊維体製造装置200では、排出部110は、下地シート150を収容する収容部210を有している。下地シート150は、ロール状に収容されている。収容部210に収容されている第1供給ロール120は、下地シート150がロール状に巻かれたものである。収容部210は、下地シート150ごと交換可能に設けられている。そのため、ユーザーは、所望の下地シート150を選択して、収容部210を繊維体製造装置200に設置することができる。繊維体製造装置200では、排出部110は、下地シート150を収容する収容部210を有し、下地シート150は、ロール状に収容されているため、配置部130,140を設ける必要がなく、装置のコンパクト化を図ることができる。
【0088】
3. 第3実施形態
3.1. 磁性体シート
次に、第3実施形態に係る磁性体シートについて、図面を参照しながら説明する。
図10は、第3実施形態に係る磁性体シート300を模式的に示す平面図である。なお、便宜上、
図10では、粘着部156bの図示を省略している。
【0089】
以下、第3実施形態に係る磁性体シート300において、上述した第1実施形態に係るシートSの構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0090】
磁性体シート300は、
図10に示すように、上述したシートSと機能材154の配置が異なる。以下では、機能材154を磁性体として説明する。
【0091】
磁性体シート300では、
図10に示すように、複数の磁性体154のうちN本の第1磁性体254は、第1群302を構成している。複数の磁性体154のうちN本の第2磁性体354は、第2群304を構成している。Nは、3以上の奇数であり、好ましくは3以上11以下の奇数、より好ましくは3以上7以下の奇数である。図示の例では、Nは5
である。
【0092】
N本の第1磁性体254のうち1本の第1磁性体254aは、基材シート152の一方の面152aと直交する第1軸A1方向からみて、第2軸A2に沿って配置されている。図示の例では、第1磁性体254aの長手方向は、第2軸A2方向である。第1軸A1は、基材シート152の中心を通っている。第1軸A1は、基材シート152の一方の面152aの垂線と平行である。一方の面152aは、基材シート152の主面である。図示の例では、第1磁性体254aは、屈曲せず一直線状に配置されている。なお、図示はしないが、第1磁性体254aが屈曲している場合は、第1磁性体254aの両端を結んだ仮想線が、第2軸A2に沿って配置される。
【0093】
N本の第1磁性体254のうち(N-1)本の第1磁性体254b,254c,254d,254eは、第2軸A2を(M±5)°ずつ回転させた(N-1)本の第3軸A3に沿って配置されている。第1磁性体254b,254c,254d,254eは、N本の第1磁性体254のうち、第2軸A2に沿って配置された第1磁性体254a以外の第1磁性体254である。第1磁性体254b,254c,254d,254eは、第2軸A2を好ましくは(M±3)°ずつ、より好ましくは(M±1)°ずつ、さらにより好ましくは(M)°ずつ回転させた(N-1)本の第3軸A3に沿って配置されている。Mは、M=(360/N)°の関係を満たす。図示の例では、Mは72°である。
【0094】
図示の例では、第1磁性体254bは、第1磁性体254aが沿う第2軸A2を時計回りに72°回転させた第3軸A3に沿って配置されている。第1磁性体254cは、第1磁性体254bが沿う第3軸A3を時計回りに72°回転させた第3軸A3に沿って配置されている。第1磁性体254dは、第1磁性体254cが沿う第3軸A3を時計回りに72°回転させた第3軸A3に沿って配置されている。第1磁性体254eは、第1磁性体254dが沿う第3軸A3を時計回りに72°回転させた第3軸A3に沿って配置されている。第1磁性体254aは、第2軸A2と重なっている。第1磁性体254a,254b,254c,254d,254eは、第3軸A3と重なっている。
【0095】
N本の第1磁性体254の延長線は、第1軸A1方向からみて、1点で交わっている。図示の例では、N本の第1磁性体254の延長線は、第1軸A1において交わっている。N本の第1磁性体254は、放射状に配置されている。N本の第1磁性体254の長さは、互いに同じである。図示の例では、5本の第1磁性体254によって構成されている第1群302の形状は、5回回転対称である。
【0096】
N本の第2磁性体354は、第1軸A1を中心として、第2軸A2を回転角度θで回転させた第4軸A4および第3軸A3を回転角度θで回転させた第5軸A5に沿って配置されている。θは、M/2°ではない。図示の例では、M=72°であるので、θは、36°ではない。θは、θ=M/4°の関係を満たすことが好ましい。
【0097】
図示の例では、第2磁性体354aは、第1軸A1を中心として、第2軸A2を18°回転させた第4軸A4に沿って配置されている。第2磁性体354bは、第1軸A1を中心として、第1磁性体254bが沿う第3軸A3を18°回転させた第5軸A5に沿って配置されている。第2磁性体354cは、第1軸A1を中心として、第1磁性体254cが沿う第3軸A3を18°回転させた第5軸A5に沿って配置されている。第2磁性体354dは、第1軸A1を中心として、第1磁性体254dが沿う第3軸A3を18°回転させた第5軸A5に沿って配置されている。第2磁性体354eは、第1軸A1を中心として、第1磁性体254eが沿う第3軸A3を18°回転させた第5軸A5に沿って配置されている。
【0098】
N本の第2磁性体354で構成されている第2群304は、第1軸A1を中心として、N本の第1磁性体254で構成されている第1群302を回転角度θで回転させた形状を有している。複数の磁性体154は、第1軸A1方向からみて、長手方向が互いに異なっている。
【0099】
N本の第1磁性体254は、第1軸方向からみて、互いに重なっていない。N本の第2磁性体354は、第1軸方向からみて、互いに重なっていない。第1磁性体254および第2磁性体354は、第1軸方向からみて、互いに重なっていない。
【0100】
磁性体シート300は、基材シート152に、N本の第1磁性体254およびN本の第2磁性体354を配置する工程を含んで製造される。
【0101】
3.2. 作用効果
磁性体シート300では、基材シート152と、基材シート152に配置され、磁性を有する線状のN本の第1磁性体254と、基材シート152に配置され、磁性を有する線状のN本の第2磁性体354と、を含む。N本の第1磁性体254のうち1本の第1磁性体254は、基材シート152の一方の面152aと直交する第1軸A1方向からみて、第2軸A2に沿って配置されている。N本の第1磁性体254のうち、第2軸A2に沿って配置された第1磁性体254以外の第1磁性体254は、第1軸A1方向からみて、第2軸A2を(M±5)°ずつ回転させた(N-1)本の第3軸A3に沿って配置されている。N本の第2磁性体354は、第1軸A1を中心として、第2軸A2を回転角度θで回転させた第4軸A4および第3軸A3を回転角度θで回転させた第5軸A5に沿って配置されている。ただし、Nは、3以上の奇数であり、M=(360/N)°の関係を満たし、θは、(M/2)°でない。
【0102】
そのため、磁性体シート300では、第1軸A1方向からみて、複数の磁性体154を互いの長手方向が異なるように配置させることができる。これにより、磁性体シート300では、複数の磁性体の長手方向が同じである場合に比べて、パルス信号の強度を高めることができる。ここで、検知装置で磁性体シートを検知する際に、磁性体の長手方向によってパルス信号が検知されないキャンセル方向が存在する。そのため、複数の磁性体の長手方向が同じであると、複数の磁性体の長手方向がキャンセル方向となって複数の磁性体から発生されるパルス信号が検知されず、磁性体シート全体として、パルス信号の強度が低下する場合がある。磁性体シート300では、上記のように、複数の磁性体154は、互いの長手方向が異なるように配置されているので、キャンセル方向が長手方向となる磁性体154は、1本のみとなる。したがって、複数の磁性体の長手方向が同じである場合に比べて、磁性体154の本数を抑えつつ、パルス信号の強度を高めることができる。
【0103】
磁性体シート300では、θ=(M/4)°の関係を満たす。そのため、磁性体シート300では、後述する「4. 実施例および比較例」に示すように、θ=(M/4)°の関係を満たさない場合に比べて、パルス信号の強度を高めることができる。
【0104】
磁性体シート300では、第1軸A1方向からみて、N本の第1磁性体254は、互いに重なっておらず、N本の第2磁性体354は、互いに重なっておらず、第1磁性体254および第2磁性体354は、互いに重なっていない。そのため、磁性体シート300では、複数の磁性体が重なっている場合に比べて、高い平坦性を有することができる。
【0105】
磁性体シート300では、第1磁性体254および第2磁性体354は、大バルクハウゼン効果を有する。そのため、検知装置によって、磁性体シート300を検知することができる。
【0106】
3.3. 変形例
3.3.1. 第1変形例
次に、第3実施形態の第1変形例に係る磁性体シートについて、図面を参照しながら説明する。
図11は、第3実施形態の第1変形例に係る磁性体シート310を模式的に示す平面図である。
【0107】
以下、第3実施形態の第1変形例に係る磁性体シート310において、上述した第3実施形態に係る磁性体シート300の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。このことは、以下に示す第3実施形態の第2~第4変形例に係る磁性体シートにおいて同様である。
【0108】
上述した磁性体シート300では、
図10に示すように、N=5であった。すなわち、第1磁性体254は、5本設けられ、第2磁性体354は、5本設けられていた。
【0109】
これに対し、磁性体シート310では、
図11に示すように、N=3である。すなわち、第1磁性体254は、3本設けられ、第2磁性体354は、3本設けられている。N=3である磁性体シート310では、例えばN=5である磁性体シート300に比べて、低コスト化を図ることができる。
【0110】
なお、第1磁性体254および第2磁性体354の本数は、特に限定されず、
図12に示すように、N=7であってもよい。すなわち、第1磁性体254は、7本設けられ、第2磁性体354は、7本設けられていてもよい。N=7である磁性体シート310では、例えばN=5である磁性体シート300に比べて、パルス信号の強度を高めることができる。
【0111】
3.3.2. 第2変形例
次に、第3実施形態の第2変形例に係る磁性体シートについて、図面を参照しながら説明する。
図13は、第3実施形態の第2変形例に係る磁性体シート320を模式的に示す平面図である。
【0112】
上述した磁性体シート300では、
図10に示すように、第1軸A1方向からみて、5本の第1磁性体254の延長線は、第1軸A1において1点で交わっていた。
【0113】
これに対し、磁性体シート320では、
図13に示すように、第1軸A1方向からみて、5本の第1磁性体254の延長線は、1点で交わっていない。5本の第1磁性体254によって構成されている第1群302の形状は、1回回転対称である。5本の第1磁性体254は、
図13に示すように、離散された状態で配置されている。第2磁性体354aは、第4軸A4と重なっていない。第2磁性体354b,354c,354dは、第5軸と重なっていない。
【0114】
磁性体シート320では、第1軸A1方向からみて、N本の第1磁性体254の延長線は、1点で交わっていないため、後述する「4. 実施例および比較例」に示すように、N本の第1磁性体の延長線が1点で交わっている場合に比べて、パルス信号の強度を高めることができる。
【0115】
3.3.3. 第3変形例
次に、第3実施形態の第3変形例に係る磁性体シートについて、図面を参照しながら説明する。
図14は、第3実施形態の第3変形例に係る磁性体シート330を模式的に示す平面図である。
【0116】
上述した磁性体シート300では、
図10に示すように、θ=(M/4)°の関係を満たし、具体的には、θ=18°であった。
【0117】
これに対し、磁性体シート330では、
図14に示すように、θ=(M/4)°の関係を満たしておらず、具体的には、θ=25°である。
【0118】
3.3.4. 第4変形例
次に、第3実施形態の第4変形例に係る磁性体シートについて、図面を参照しながら説明する。
図15は、第3実施形態の第4変形例に係る磁性体シート340を模式的に示す平面図である。
【0119】
上述した磁性体シート300では、
図10に示すように、N本の第1磁性体254の長さは、互いに同じであった。
【0120】
これに対し、磁性体シート340では、
図15に示すように、N本の第1磁性体254の長さは、互いに同じでない。図示の例では、第1磁性体254a,254c,254dの長さは、第1磁性体254b,254eの長さよりも小さい。
【0121】
4. 実施例および比較例
4.1. 試料の作製
4.1.1. 実施例1
不織布に磁性ワイヤーを配置し、修正テープによって磁性ワイヤーを仮止めした。
図11に示すように、第1磁性体としての第1磁性ワイヤーの本数、および第2磁性体としての第2磁性ワイヤーの本数を、それぞれ3本とした。すなわち、N=3、M=120°とした。θ=(M/4)°、具体的にはθ=30°とした。第1磁性ワイヤーおよび第2磁性ワイヤーの長さを等しくした。N本の第1磁性ワイヤーの延長線が1点で交わるようにした。
【0122】
次に、磁性ワイヤーが配置された不織布に、セイコーエプソン社製の乾式オフィス製紙機「PaperLab A-8000」によって表層シートを形成して、A4サイズの磁性体シートを作製した。
【0123】
4.1.2. 実施例2
実施例2では、
図10に示すように、第1磁性ワイヤーの本数および第2磁性ワイヤーの本数をそれぞれ5本としたこと以外は、実施例1と同様に作製した。すなわち、N=5、M=72°、θ=18°とした。
【0124】
4.1.3. 実施例3
実施例3では、
図12に示すように、第1磁性ワイヤーの本数および第2磁性ワイヤーの本数をそれぞれ7本としたこと以外は、実施例1と同様に作製した。すなわち、N=7、M=51.4°、θ=12.9°とした。
【0125】
4.1.4. 実施例4
実施例4では、
図13に示すように、第1磁性ワイヤーを、第1磁性ワイヤーの延長線が1点で交わらないように配置されたこと以外は、実施例2と同様に作製した。
【0126】
4.1.5. 実施例5
実施例5では、
図14に示すように、θ=25°としたこと以外は、実施例2と同様に作製した。
【0127】
4.1.6. 実施例6
実施例6では、
図15に示すように、5本の第1磁性ワイヤーのうち3本の第1磁性ワイヤーを短くしたこと以外は、実施例2と同様に作製した。
【0128】
4.1.7. 比較例1
比較例1では、
図16に示すように、θ=(M/2)°、具体的にはθ=60°としたこと以外は、実施例1と同様に作製した。
【0129】
4.1.8. 比較例2
比較例2では、
図17に示すように、θ=(M/2)°、具体的にはθ=36°としたこと以外は、実施例2と同様に作製した。
【0130】
4.1.9. 比較例3
比較例3では、
図18に示すように、θ=(M/2)°、具体的にはθ=25.7°としたこと以外は、実施例3と同様に作製した。
【0131】
なお、
図16~
図18は、それぞれ、比較例1~3を模式的に示す平面図である。
図16~
図18では、第1磁性ワイヤーを「MW1」と表記し、第2磁性ワイヤーを「MW2」と表記している。
【0132】
4.2. パルス信号の強度の評価
実施例1~6および比較例1~3のパルス信号の強度を評価した。A4サイズよりも大きい励起コイル(巻き数150)へ1kHzの振動電流を流し、励起コイルから800mm離れた検知コイル(巻き数150)で磁性ワイヤーの磁化反転に因るスパイクノイズをパルス信号の強度、すなわちゲート感度として検出した。
【0133】
図19は、実施例1~6および比較例1~3におけるパルス信号の強度を示すグラフである。
【0134】
図19に示すように、実施例1と比較例1との比較により、2本の磁性ワイヤーの長手方向が同じであると、ゲート感度が低下することがわかった。実施例2と比較例2との比較、および実施例3と比較例3との比較からも同様のことがいえる。
【0135】
実施例2と実施例4との比較により、N本の第1磁性ワイヤーの延長線が1点で交わっていない場合は、N本の第1磁性ワイヤーの延長線が1点で交わっている場合に比べて、ゲート感度が高いことがわかった。
【0136】
実施例2と実施例5との比較により、θ=(M/4)°の関係を満たす場合は、θ=(M/4)°の関係を満たさない場合に比べて、ゲート感度が高いことがわかった。
【0137】
実施例2と実施例6との比較により、磁性ワイヤーが短いと、ゲート感度が低下することがわかった。
【0138】
実施例1~3の比較により、磁性ワイヤーの本数が多いほど、ゲート感度が高くなる傾向にあることがわかった。
【0139】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0140】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び
結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0141】
上述した実施形態から以下の内容が導き出される。
【0142】
磁性体シートの一態様は、
シートと、
前記シートに配置され、磁性を有する線状のN本の第1磁性体と、
前記シートに配置され、磁性を有する線状のN本の第2磁性体と、
を含み、
N本の前記第1磁性体のうち1本の前記第1磁性体は、前記シートと直交する第1軸方向からみて、第2軸に沿って配置され、
N本の前記第1磁性体のうち、前記第2軸に沿って配置された前記第1磁性体以外の前記第1磁性体は、前記第1軸方向からみて、前記第2軸を(M±5)°ずつ回転させた(N-1)本の第3軸に沿って配置され、
N本の前記第2磁性体は、前記第1軸を中心として、前記第2軸を回転角度θで回転させた第4軸および前記第3軸を前記回転角度θで回転させた第5軸に沿って配置されている。
ただし、Nは、3以上の奇数であり、
M=(360/N)°の関係を満たし、
θは、(M/2)°でない。
【0143】
この磁性体シートによれば、磁性体の本数を抑えつつ、パルス信号の強度を高めることができる。
【0144】
前記磁性体シートの一態様において、
θ=(M/4)°の関係を満たしてもよい。
【0145】
この磁性体シートによれば、パルス信号の強度を高めることができる。
【0146】
前記磁性体シートの一態様において、
前記第1軸方向からみて、
N本の前記第1磁性体は、互いに重なっておらず、
N本の前記第2磁性体は、互いに重なっておらず、
前記第1磁性体および前記第2磁性体は、互いに重なっていなくてもよい。
【0147】
この磁性体シートによれば、高い平坦性を有することができる。
【0148】
前記磁性体シートの一態様において、
前記第1磁性体および前記第2磁性体は、大バルクハウゼン効果を有してもよい。
【0149】
この磁性体シートによれば、検知装置によって、磁性体シートを検知することができる。
【0150】
前記磁性体シートの一態様において、
前記第1軸方向からみて、N本の前記第1磁性体の延長線は、1点で交わっていなくてもよい。
【0151】
この磁性体シートによれば、パルス信号の強度を高めることができる。
【0152】
磁性体シートの製造方法の一態様は、
シートに、磁性を有する線状のN本の第1磁性体、および磁性を有する線状のN本の第2磁性体を配置する工程を含み、
前記第1磁性体および前記第2磁性体を配置する工程は、
N本の前記第1磁性体のうち1本の前記第1磁性体を、前記シートと直交する第1軸方向からみて、第2軸に沿って配置し、
N本の前記第1磁性体のうち、前記第2軸に沿って配置された前記第1磁性体以外の前記第1磁性体を、前記第1軸方向からみて、前記第2軸を(M±5)°ずつ回転させた(N-1)本の第3軸に沿って配置し、
N本の前記第2磁性体を、前記第1軸を中心として、前記第2軸を回転角度θで回転させた第4軸および前記第3軸を前記回転角度θで回転させた第5軸に沿って配置する。
ただし、Nは、3以上の奇数であり、
M=(360/N)°の関係を満たし、
θは、(M/2)°でない。
【符号の説明】
【0153】
1…ホッパー、2,3,7,8…管、9…ホッパー、10…供給部、12…粗砕部、14…粗砕刃、20…解繊部、22…導入口、24…排出口、40…選別部、41…ドラム部、42…導入口、43…ハウジング部、44…排出口、45…第1ウェブ形成部、46…メッシュベルト、47,47a…張架ローラー、48…サクション機構、49…回転体、49a…基部、49b…突部、50…混合部、52…添加物供給部、54…管、56…ブロアー、60…堆積部、61…ドラム部、62…導入口、63…ハウジング部、70…第2ウェブ形成部、72…メッシュベルト、74…張架ローラー、76…サクション機構、78…調湿部、80…シート形成部、82…加圧部、84…加熱部、85…ローラー、86…加熱ローラー、90…切断部、92…第1切断部、94…第2切断部、96…排出受け部、100…繊維体製造装置、110…排出部、120…第1供給ロール、122…架台、130…第1配置部、132…第2供給ロール、134…ローラー、136…ガイド、138…カッター、140…第2配置部、142…第3供給ロール、144…カッター、146…基材回収ロール、150…下地シート、150a…一方の面、150b…他方の面、152…基材シート、152a…一方の面、152b…他方の面、154,154a,154b,154c,154d,154e,154f…機能材、156…粘着テープ、156a…基材、156b…粘着部、157…接着層、157a…表面、158…隠ぺい層、160…表層シート、200…繊維体製造装置、210…収容部、254,254a,254b,254c,254d,254e…第1磁性体、300,310,320,330,340…磁性体シート、302…第1群、304…第2群、354,354a,354b,354c,354d,354e…第2磁性体