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特許7501287共用ストレージ管理装置及び共用ストレージ管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】共用ストレージ管理装置及び共用ストレージ管理方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 12/02 20060101AFI20240611BHJP
   G06F 12/04 20060101ALI20240611BHJP
   B60R 16/023 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G06F12/02 510M
G06F12/02 530E
G06F12/04 530
B60R16/023 P
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020165366
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057227
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄介
(72)【発明者】
【氏名】伊東 由佳
(72)【発明者】
【氏名】野村 肇
(72)【発明者】
【氏名】宮田 大志
【審査官】田中 啓介
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-074163(JP,A)
【文献】特開2002-055874(JP,A)
【文献】特開2009-230513(JP,A)
【文献】特開2008-129678(JP,A)
【文献】特開2007-037044(JP,A)
【文献】特開2012-173884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R16/00-17/02
G06F3/06-3/08
G06F9/455-9/54
G06F12/00-12/128
06F13/10-13/18
G06F13/38-13/42
G06F15/16-15/177
G06F16/00-16/958
H03M3/00-9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉じたネットワーク(5)内に、外部との通信機能を備えたものを含む1つ以上のコンピュータ(2、3、4)を備え、前記各コンピュータ上の複数のアプリケーション(7、8、9)が相互に情報をやり取りすると共に、前記複数のアプリケーションがデータの書込み、読出しに利用する共用ストレージ(11)を有するシステム(1)に設けられるものであって、
前記各アプリケーションの要求に従って前記共用ストレージの記憶領域の確保及び解放を調整するストレージ管理部(10)を備え、
前記ストレージ管理部は、前記共用ストレージの空き容量が所定容量以下となったとき、或いは、前記アプリケーションからの確保の要求があった際に前記共用ストレージの確保すべき記憶領域が不足しているときに、当該共用ストレージに書込まれているデータの圧縮処理を実行する際に、
前記共用ストレージ内の各データに付与されている優先度が低いものから順に、圧縮対象として選択し、
前記共用ストレージに書込まれている圧縮対象データの圧縮後に要求量以上の空き容量が得られるか否かを予測し、要求量以上の空き容量が得られる見込みがない場合には、次の圧縮対象を選択して、選択された圧縮対象に対する圧縮処理を、前の圧縮対象の圧縮処理の完了を待たずに実行する共用ストレージ管理装置。
【請求項2】
前記ストレージ管理部は、前記共用ストレージに書込まれているデータのデータ形式に基づいて、当該データが圧縮可能かどうかを判定し、圧縮処理を実行する請求項1記載の共用ストレージ管理装置。
【請求項3】
前記ストレージ管理部は、複数種類の圧縮プログラムを記憶していると共に、前記共用ストレージの現在の利用状況を記録するストレージ管理テーブル(12)を備え、
前記ストレージ管理テーブルは、前記各データと前記圧縮プログラムとの対応表を含んでおり、
前記ストレージ管理部は、前記ストレージ管理テーブルを参照して、該当するデータに対応した圧縮プログラムを用いて、圧縮処理を実行する請求項1又は2記載の共用ストレージ管理装置。
【請求項4】
前記ストレージ管理テーブルの対応表、及び、前記圧縮プログラムは、外部から書替え可能に構成されている請求項3記載の共用ストレージ管理装置。
【請求項5】
前記ストレージ管理部は、前記共用ストレージにデータを書込んだアプリケーションの種類に基づいて、当該データが圧縮可能かどうかを判定し、圧縮処理を実行する請求項1記載の共用ストレージ管理装置。
【請求項6】
前記ストレージ管理部は、前記共用ストレージ内の複数のデータに対する圧縮処理を同時に並行して実行する請求項1から5の何れか一項に記載の共用ストレージ管理装置。
【請求項7】
閉じたネットワーク(5)内に、外部との通信機能を備えたものを含む1つ以上のコンピュータ(2、3、4)を備え、前記各コンピュータ上の複数のアプリケーション(7、8、9)が相互に情報をやり取りすると共に、前記複数のアプリケーションがデータの書込み及び読出しに利用する共用ストレージ(11)を有するシステム(1)における、
前記各アプリケーションの要求に従って前記共用ストレージの記憶領域の確保を調整する方法であって、
前記システム(1)が備えるストレージ管理部(10)が、前記共用ストレージの空き容量が所定容量以下となったとき、或いは、前記アプリケーションからの確保の要求があった際に前記共用ストレージの確保すべき記憶領域が不足しているときに、当該共用ストレージに書込まれているデータの圧縮処理を実行する際に、
前記共用ストレージ内の各データに付与されている優先度が低いものから順に、圧縮対象として選択し、
前記共用ストレージに書込まれている圧縮対象データの圧縮後に要求量以上の空き容量が得られるか否かを予測し、要求量以上の空き容量が得られる見込みがない場合には、次の圧縮対象を選択して、選択された圧縮対象に対する圧縮処理を、前の圧縮対象の圧縮処理の完了を待たずに実行する共用ストレージ管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の車両に搭載されるシステムにおける共用ストレージ管理装置及び共用ストレージ管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の車両には、コンピュータを含んだ複数のECU(Electronic Control Unit)と称される各種の電子装置を、CANやイーサネット等によりネットワーク接続して構成されるシステムが設けられる。各ECUには、複数のアプリケーションが設けられ、それらアプリケーション間で相互に情報がやり取りされる。また、ECUのなかには、車外との通信可能な通信機器も含まれ、外部機器とのデータの送受信も行われる。例えば、ドライブレコーダのデータをクラウドにアップロードしたり、外部から更新プログラムや各種データをダウンロードしたりすることが行われる。
【0003】
このとき、各アプリケーションが、ダウンロードやアップロードを行う際には、一時的に記憶領域を使用するが、各ECUにおいて専用の記憶領域を用意することは無駄が多い事情がある。そこで、例えば一つのECUに共用ストレージを設け、複数のアプリケーションが任意のタイミングで共用ストレージに対するデータの書き込みや削除を行うようになっている。尚、特許文献1では、データをストレージに記録するに際し、システム内に設けられている複数のストレージから空き領域が存在するストレージを判定し、そのストレージに記録することで、複数のストレージをあたかも一つのストレージであるかのように利用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-206454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、各アプリケーションは、共用ストレージを用いたアップロード、ダウンロードの処理が終わった後には、そのデータが不要になったと判断し、共用ストレージの記憶領域から削除する処理を行う。上記のように、共用ストレージを複数のアプリケーションで共用して使用する場合、共用ストレージの利用が集中することがあると、別のアプリケーションが共用ストレージを利用しようとしても、記憶領域の空き容量が不足して利用できない事態が起こり得る。この場合、他のアプリケーションが共用ストレージの利用を終了するまで待てば領域が空き、共用ストレージの利用は可能となるが、共用ストレージの利用効率が悪化してしまう。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、複数のアプリケーションが共用する共用ストレージを備えるシステムにおける、共用ストレージの記憶領域の効率の良い使用を可能とする共用ストレージ管理装置及び共用ストレージ管理方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の共用ストレージ管理装置(2)は、 閉じたネットワーク(5)内に、外部との通信機能を備えたものを含む1つ以上のコンピュータ(2、3、4)を備え、前記各コンピュータ上の複数のアプリケーション(7、8、9)が相互に情報をやり取りすると共に、前記複数のアプリケーションがデータの書込み、読出しに利用する共用ストレージ(11)を有するシステム(1)に設けられるものであって、前記各アプリケーションの要求に従って前記共用ストレージの記憶領域の確保及び解放を調整するストレージ管理部(10)を備え、前記ストレージ管理部は、前記共用ストレージの空き容量が所定容量以下となったとき、或いは、前記アプリケーションからの確保の要求があった際に前記共用ストレージの確保すべき記憶領域が不足しているときに、当該共用ストレージに書込まれているデータの圧縮処理を実行する。
【0008】
上記構成によれば、ストレージ管理部は、各アプリケーションの要求に従って共用ストレージの記憶領域の確保及び解放を調整する。このとき、例えば複数のアプリケーションにおいて共用ストレージの利用が集中しているようなことがあると、別のアプリケーションからの確保の要求があったときに、共用ストレージの確保すべき記憶領域が不足する場合が生ずる虞がある。ここで、記憶領域が不足していると判断された場合でも、仮に、共用ストレージ内の既存のデータを圧縮することにより、既存データが占有する記憶容量を削減して、空き容量を増やすことができ、新規データを保存する領域を確保することが可能となるケースが考えられる。
【0009】
従って、共用ストレージ管理部は、共用ストレージの既存データの圧縮処理を行うことにより、アプリケーションから領域確保の要求があったときに、空き容量の不足の発生を抑えることができる。これにより、他のアプリケーションの処理の終了による共用ストレージの記憶領域の空きが生ずることを待たずに、アプリケーションの要求に応じて、速やかに新規データの記憶領域を確保することが可能となる。この結果、複数のアプリケーションが共用する共用ストレージを備えるシステムにおける、共用ストレージの記憶領域の効率の良い使用を可能とするという優れた効果を奏する。
また、ストレージ管理部は、共用ストレージ内の各データに付与されている優先度が低いものから順に圧縮対象として選択する。更に、ストレージ管理部は、共用ストレージに書込まれている圧縮対象データの圧縮後に要求量以上の空き容量が得られるか否かを予測し、要求量以上の空き容量が得られる見込みがない場合には、次の圧縮対象を選択して、選択された圧縮対象に対する圧縮処理を、前の圧縮対象の圧縮処理の完了を待たずに実行する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態を示すもので、車載システムの電気的構成を模式的に示すブロック図
図2】ストレージ管理部が実行する記憶領域の確保の処理手順を示すフローチャート
図3図2のステップS3の詳細な処理手順を示すフローチャート
図4】共用ストレージ管理テーブルを模式的に示す図
図5】第2の実施形態を示すもので、ストレージ管理部が実行する既存領域の圧縮要求の処理手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)第1の実施形態
以下、自動車等の車両に搭載される車載システムにおける共用ストレージ管理装置に適用した第1の実施形態について、図1から図4を参照しながら説明する。図1は、本実施形態における車載システム1の構成を概略的に示している。ここで、車載システム1は、複数のECU(Electronic Control Unit)2、3、4を、例えばCAN(登録商標)やイーサネット(登録商標)等のネットワーク5により相互に接続して構成される。前記ECU2、3、4は、コンピュータを含んで構成される。尚、図1では、便宜上、3つのECU2、3、4のみを図示している。
【0012】
そのうちECU3は、車両外部との間の通信制御用のECUであり、DCM(Data Communication Module)と称される車外通信機6を備えると共に、アプリケーション7を搭載している。前記ECU4は、各種車載機器の制御用のECUであり、例えばエンジン制御等の走行制御系ECU、ボディ系制御用ECU、ナビゲーション制御用ECU、ETC制御用ECU、オーディオ制御用ECU、ドライブレコーダ制御用ECU等が含まれる。このECU4は、アプリケーション8を搭載している。
【0013】
前記ECU2は、例えばセントラルゲートウェイ用のECUであり、車載システム1のネットワークにおけるハブとしての機能を有する。このECU2は、アプリケーション9を搭載している。各ECU2、3、4に、夫々複数のアプリケーションが設けられていても良い。詳しくは後述するように、本実施形態では、このECU2が共用ストレージ管理装置として機能するようになっている。尚、上記アプリケーション7、8、9を、必要に応じて単に「アプリ」と略称することがある。図1では、アプリケーション7を「アプリA」、アプリケーション8を「アプリB」、アプリケーション9を「アプリC」と表記している。
【0014】
本実施形態の車載システム1においては、前記各ECU2、3、4の複数のアプリケーション9、7、8が相互に情報をやり取りすると共に、詳しく図示はしないが、車外通信機6により通信ネットワークを介して外部のサービス会社のセンタ装置等との間で通信を行う。この場合、各ECU2、3、4の複数のアプリケーション9、7、8は、センタ装置に対し、アップロードやダウンロード等の処理を行う。
【0015】
具体的には、センタ装置に送信する情報としては、車内の各種センサが検出したダイアグデータや、ドライブレコーダのデータ等がある。また、センタ装置から受信する情報としては、各車載機器のソフトウエアの更新プログラムや、各車載機器が参照する情報のうち任意のタイミングで更新されるナビゲーション用の地図データや、オーディオ機器が再生する楽曲データ等がある。
【0016】
このとき、各アプリケーション7、8、9が、データのダウンロードやアップロードを行う際には、一時的に記憶領域を使用するが、各ECU2、3、4において専用の記憶領域を用意することは無駄が多い事情がある。そこで、例えば一つのECUこの場合セントラルゲートウェイ用のECU2に共用ストレージ11が設けられる。複数のアプリケーション7、8、9は、任意のタイミングで共用ストレージ11に対するデータの書き込みや削除を行う。
【0017】
さて、前記ECU2における、共用ストレージ管理装置として機能について述べる。上記したように、ECU2には、共用ストレージ11が設けられている。これと共に、ECU2には、各アプリケーション7、8、9の要求に従って前記共用ストレージ11の記憶領域の確保及び解放を調整するストレージ管理部10が設けられる。前記ストレージ管理部10は、共用ストレージ11の現在の利用状況を記録するストレージ管理テーブル12を備える。
【0018】
図4に、このストレージ管理テーブル12の記憶内容を例示している。本実施形態では、このストレージ管理テーブル12には、確保の要求順序即ち古いものから1、2、…、共用ストレージ11の確保を要求したアプリ、確保した記憶領域の容量、保存されるデータの形式、領域確保優先度の情報を含む等からなる管理情報が記憶される。ここでは、アプリ側或いはストレージ管理部10において、共用ストレージ11内の各データに関する領域確保優先度が設定されるようになっている。
【0019】
この領域確保優先度は、保存されている既存データの重要度に応じて、例えば高、中、低の3段階のいずれかに設定される。例えば、データ形式を変換した後に元に戻せない等、後述するデータ圧縮をしたくないものについては、優先度が高く設定される。また、データの性質例えばアップロードの場合はダウンロードの場合よりも優先度を高くする、データ容量が多い場合に、少ない場合よりも優先度を低くすることなどが考えられる。尚、詳しく図示はしないが、ストレージ管理部10は、上記各データのデータ形式に対応した複数種類の圧縮プログラムを記憶しており、ストレージ管理テーブル12には、前記データ形式と圧縮プログラムとの対応関係を表にした対応表も含まれている。
【0020】
これと共に、前記ストレージ管理部10は、そのハードウエア及びソフトウエア構成により、要求受付部13、領域確保処理部14、領域管理部15、データ圧縮処理部16、優先度判定部17としての機能を実現する。詳しくは後の作用説明でも述べるように、前記要求受付部13は、前記各アプリ7、8、9から、共用ストレージ11の記憶領域の確保や解放の要求を受付ける処理を実行する。また、前記領域確保処理部14は、前記要求受付部13が受付けた新規データに対する記憶領域の確保要求に従って、共用ストレージ11の記憶領域の確保を行う。
【0021】
このとき、領域確保処理部14は、新規データの記憶領域を確保するにあたり、前記領域管理部15に共用ストレージ11の空き領域を問い合わせる。領域管理部15は、ストレージ管理テーブル12を参照し、前記共用ストレージ11の必要な記憶領域の確保が可能かを判断する。そして、共用ストレージ11の記憶容量が十分ある場合には、領域確保処理部14は、そのまま記憶領域の確保の処理を行う。ところが、例えば複数のアプリケーション7、8、9において共用ストレージ11の利用が集中しているような場合には、別のアプリケーション7、8、9からの確保の要求があったときに、共用ストレージ11の確保すべき記憶領域が不足してしまうケースが生ずる虞がある。
【0022】
そこで、本実施形態では、領域管理部15が、共用ストレージ11の必要な記憶領域が不足していると判断した場合には、データ圧縮処理部16に対し、共用ストレージ11において使用されている記憶領域の既存データに対する圧縮処理を要求する。データ圧縮処理部16は、データの圧縮処理の要求に従って、既存データのデータ圧縮の処理を実行する。ここでいうデータ圧縮の処理とは、一般的なデータ圧縮処理(可逆圧縮)に加え、データの間引き、データ形式の変更例えばビットマップデータをJPEGに変換する処理等(非可逆圧縮)も含まれ、データ量の削減を図ることができる処理全般を意味している。
【0023】
また、本実施形態では、前記データ圧縮処理部16は、ストレージ管理テーブル12に記憶されている既存データのデータ形式、例えばデータの拡張子で示されるデータ形式に基づいて、当該既存のデータが圧縮可能かどうかを判定し、圧縮処理を実行する。この場合、ストレージ管理テーブル12を参照して、該当する既存データのデータ形式に対応した圧縮プログラムを用いて、圧縮処理を実行する。尚、本実施形態では、ストレージ管理テーブル12の対応表及び複数の圧縮プログラムは、外部から書替え可能に構成されており、新規に開発された或いはバージョンアップされたデータ形式や圧縮プログラムに関し、外部から書替え、追加が行われることにより、容易に対応することが可能となる。
【0024】
さらに本実施形態では、データ圧縮処理部16が既存データの圧縮を行うにあたっては、優先度判定部17に各既存データの領域確保優先度を問い合わせ、各既存データに付与されている優先度が低いものから順に、圧縮処理を実行する。データ圧縮処理部16が既存データの圧縮処理を行った後にも、新規データの保存に関する共用ストレージ11の空き容量が不足している場合には、他のアプリケーション7、8、9の使用が終了して記憶領域が解放されるのを待って処理が行われる。尚、領域管理部15は、記憶領域の確保や解放の処理が完了したら、前記ストレージ管理テーブル12の管理情報を書替える。
【0025】
次に、上記構成のストレージ管理部10の実行する処理について、図2図3も参照して述べる。そのうち図2のフローチャートは、ストレージ管理部10が実行する記憶領域の確保の処理手順を示している。また、図3のフローチャートは、図2のステップS3の既存データの圧縮処理の詳細な処理手順を示している。これらの処理により、本実施形態に係る共用ストレージ管理方法が実行される。
【0026】
即ち、まず、図2において、ステップS1では、アプリ7、8、9から新規データの確保の要求及びその要求データ量が受付けられる。ステップS2では、アプリ7、8、9が要求する記憶領域の容量に対し、共用ストレージ11に要求量以上の空き容量があるかどうかが判断される。共用ストレージ11にアプリが要求する記憶領域の容量を確保するために必要な空き容量があると判断された場合には(ステップS2にてYes)、次のステップS6にて、共用ストレージ11の必要な記憶容量が確保され、アプリ7、8、9によるデータの保存が行われる。これと共に、ステップS7にて、ストレージ管理テーブル12の管理情報の登録がなされる。
【0027】
これに対し、ステップS2にて、共用ストレージ11にアプリが要求する記憶領域の容量を確保するために必要な空き容量がないと判断された場合には(ステップS2にてNo)、ステップS3にて、データ圧縮処理部16に対し既存データの圧縮の処理が要求される。このステップS3の圧縮の処理の詳細については、後に図3の説明にて詳述する。このデータ圧縮の処理により、既存データのデータ量を削減することができ、共用ストレージ11の空き容量を増やすことができる。尚、例えばドライブレコーダの画像データのような場合、フレームを半分に間引くことで、データ容量を50%程度に圧縮することができる。
【0028】
既存データの圧縮の処理が終了すると、ステップS4にて、共用ストレージ11にアプリが要求する記憶領域の容量を確保するために必要な空き容量があるかどうかが再度判断される。共用ストレージ11にアプリが要求する記憶領域の容量を確保するために必要な空き容量があると判断された場合には(ステップS4にてYes)、上記したステップS6に進み、共用ストレージ11の必要な記憶容量が確保され、アプリ7、8、9による保存が行われる。既存データの圧縮処理を行ったにも関わらず、共用ストレージ11にアプリが要求する記憶領域の容量を確保するために必要な空き容量がないと判断された場合には(ステップS4にてNo)、ステップS5に進み、他のアプリ7、8、9による共用ストレージ11の使用が終了して記憶領域が解放されることを待ち、その後ステップS6に進む。
【0029】
図3のフローチャートは、図2のステップS3の処理、つまりストレージ管理部10において既存データの圧縮処理を行う場合の処理手順の詳細を示している。即ち、ステップS11では、ストレージ管理テーブル12を参照し、既存データの中から、それらのデータ形式に基づき、圧縮処理が可能な領域が抽出される。ステップS12では、ストレージ管理テーブル12の各既存データの領域確保優先度を参照して優先度が最も低い領域が選択される。この場合、領域確保優先度に加えて、他の情報例えば領域の確保順序の古さ、データ容量の大小などを参照して、圧縮すべき既存データを選ぶようにしても良い。
【0030】
次のステップS13にて、選択された既存データの圧縮方法即ち圧縮プログラムが選択され、ステップS14では、データ圧縮処理が実行される。ステップS15では、データ圧縮処理後の共用ストレージ11に、新規データに関する要求量以上の空き容量があるかどうかが判断される。アプリが要求する記憶領域の容量を確保するために必要な空き容量があると判断された場合は(ステップS15にてYes)、リターンされる。リターンの後は、ステップS6にて共用ストレージ11に要求された記憶領域が確保される。
【0031】
これに対し、ステップS15で、未だ共用ストレージ11の空き領域が不足すると判断された場合には(ステップS15にてNo)、ステップS16にて、共用ストレージ11に圧縮可能な既存データを保存する領域が残っているかどうかが判断される。圧縮可能な既存データが残っている場合には(ステップS16にてYes)、次のステップ17にて、優先度が次に低い既存データの領域が、次の圧縮対象として選択され、ステップS13に戻り、ステップS13からの処理が繰返される。一方、圧縮可能な既存データが残っていない場合には(ステップS16にてNo)、リターンされる。
【0032】
このような本実施形態の共用ストレージ管理装置及び共用ストレージ管理方法によれば、次のような作用、効果を得ることができる。即ち、ストレージ管理部10は、各アプリケーション7、8、9の要求に従って共用ストレージ11の記憶領域の確保及び解放を調整する。このとき、例えば複数のアプリケーション7、8、9において共用ストレージ11の利用が集中することがあると、別のアプリケーション7、8、9からの確保の要求があったときに、新規データに関する共用ストレージ11の確保すべき記憶領域が不足する場合が生ずる虞がある。ここで、記憶領域が不足していると判断された場合でも、仮に、共用ストレージ11内の既存のデータを圧縮することにより、既存データが占有する記憶容量を削減して、空き容量を増やすことができ、新規データを保存する領域を確保することが可能となるケースが考えられる。
【0033】
従って、共用ストレージ管理部10は、共用ストレージ11の既存データの圧縮処理を行うことにより、アプリケーション7、8、9から領域確保の要求があったときに、空き容量の不足の発生を抑えることができる。これにより、他のアプリケーション7、8、9の処理の終了による共用ストレージ11の記憶領域の空きが生ずることを待たずに、アプリケーション7、8、9の要求に応じて、速やかに新規データの記憶領域を確保することが可能となる。この結果、複数のアプリケーション7、8、9が共用する共用ストレージ11を備える車載システム1における、共用ストレージ11の記憶領域の効率の良い使用を可能とするという優れた効果を奏する。
【0034】
特に本実施形態では、ストレージ管理部10は、ストレージ管理テーブル12を参照し、共用ストレージ11に書込まれている既存データのデータ形式に基づいて、当該既存データが圧縮可能かどうかを容易かつ確実に判定することができ、既存データのデータ圧縮の処理を効率的に行うことができる。ストレージ管理部10は、ストレージ管理テーブル12を参照して、該当する既存データに対応した圧縮プログラムを用いて圧縮処理を実行するので、圧縮プログラムを複数の中から確実に選択し、容易に圧縮処理を実行することができる。ストレージ管理テーブル12の対応表、及び、圧縮プログラムは、外部から書替え可能に構成されているので、新規に開発された或いはバージョンアップされたデータ形式や圧縮プログラムに関し、外部から書き換えることにより、容易に対応することが可能となり、利便性を高めることができる。
【0035】
更に本実施形態では、ストレージ管理部10は、共用ストレージ11内の各既存データに付与されている優先度が低いものから順に、圧縮処理を実行する構成とした。これによれば、優先度が低いものから順にデータ圧縮の処理を行うことにより、新規データに関する記憶領域の確保を行うことができる。この場合、データ圧縮により、既存データの品質の低下やデータの復元が不可能となる等の不都合を招くケースがあるが、データ品質を高い状態で確保しておきたいものについては、優先度を高くしておくことができる。これにより、優先度の高い既存データに関しては、後回しにされることになり、データ圧縮を極力行わずに済ませることが期待できる。
【0036】
(2)第2の実施形態、その他の実施形態
次に、図5を参照して、第2の実施形態について述べる。この第2の実施形態においては、ストレージ管理部10の実行する共用ストレージ1の記憶領域の確保の処理が、上記第1の実施形態と異なっている。図5のフローチャートは、本実施形態におけるストレージ管理部10が実行する既存データの圧縮処理手順、つまり図2のステップS3の処理の詳細を示している。この実施形態では、ストレージ管理部10は、圧縮処理を施す既存データの範囲を、アプリが要求する記憶領域の容量を確保するために必要な最小限の範囲に留めながら、共用ストレージ11内の複数の既存データに対する圧縮処理を同時に並行して実行するようになっている。
【0037】
図5において、ステップS21では、ストレージ管理テーブル12を参照し、既存データの中から、それらのデータ形式に基づき、圧縮処理が可能な領域が抽出される。ステップS22では、ストレージ管理テーブル12の各既存データの領域確保優先度を参照して優先度が最も低い領域が選択される。ステップS23にて、選択された既存データの圧縮方法即ち圧縮プログラムが選択される。ステップS24では、該当する既存データに対するデータ圧縮処理の指示が行われる。
【0038】
そして、ステップS25では、該当する既存データのデータ圧縮によって、共用ストレージ11の空き領域が、新規データの記憶領域確保の要求容量以上となりそうかどうかが判断される。この場合、実際の圧縮処理が完了しないと、圧縮後の容量は確定しないため、見込み容量で判断することが行われる。見込み容量の推定は、一律で圧縮率を一定値、例えば50%に仮定しておく、データ形式毎或いはアプリ毎に見込み圧縮率を何%と仮定しておくといった方法が用いられる。
【0039】
データ圧縮後に、新規データに関する要求量以上の空き容量が得られる見込みである場合には(ステップS25にてYes)、ステップS26に進み、データ圧縮の処理が完了するまで待ち、データ圧縮の処理完了後、ステップS27にて、共用ストレージ11の空き領域が、新規データの記憶領域確保の要求容量以上となったかどうかが判断され、アプリが要求する記憶領域の容量を確保するために必要な空き容量があると判断された場合は(ステップS27にてYes)、リターンされる。リターンの後は、ステップS6にて共用ストレージ11に要求された記憶領域が確保される。
【0040】
上記ステップS25にて、要求量以上の空き容量が得られる見込みがない場合には(ステップS25にてNo)、ステップS28に進む。また、上記ステップS27にて、要求容量以上の空き容量が得られなかった場合にも(ステップS27にてNo)、ステップS28に進む。ステップS28では、共用ストレージ11に圧縮可能な既存データを保存する領域が残っているかどうかが判断される。
【0041】
圧縮可能な既存データが残っている場合には(ステップS28にてYes)、次のステップ29にて、優先度が次に低い既存データの領域が、次の圧縮対象として選択され、ステップS23に戻る。この場合には、ステップS23にて、選択された既存データの圧縮方法即ち圧縮プログラムが選択され、ステップS24にて、該当する既存データに対するデータ圧縮処理の指示が行われる。これにより、前の既存データの圧縮処理の完了を待たずに、次の既存データに対する圧縮処理の指示がなされ、複数の既存データに対する圧縮処理が並行して実行される。この後、ステップS25からの処理が繰返される。一方、上記ステップS28にて、圧縮可能な既存データが残っていない場合には(ステップS28にてNo)、ステップS30にて、全てのデータ圧縮処理の完了を待った後、リターンされる。
【0042】
このような第2の実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様に、複数のアプリケーション7、8、9が共用する共用ストレージ11を備えるシステムにおける、共用ストレージ11の記憶領域の効率の良い使用を可能とするという効果が得られる。これに加えて、ストレージ管理部10は、新規データに関する要求量以上の空き容量が得られることが見込まれる必要最小限の、共用ストレージ11内の複数の既存データに対する圧縮処理を同時に並行して実行する構成とした。
【0043】
これにより、複数の既存データの圧縮処理を並行して行うことにより、短時間でより多くの空き容量の確保を行うことが可能となり、より効率的な処理を行うことができる。このとき、各既存データに関する、データ圧縮処理により、共用ストレージ11にどれくらいの空き容量を確保できるかを予測計算する構成としたので、データ圧縮による必要な記憶容量の確保を、必要最小限のデータ以外のデータに対する余分な処理を行うことなく確実に行うことができる。これにより、非可逆圧縮によって生じるデータの欠落を最小限にとどめることができるといった利点も得ることができる。
【0044】
尚、上記各実施形態では、新規データの確保の要求があったときに、空き容量があるかの判断を行うように構成し、その判断に基づいて、既存データの圧縮の処理を行うように構成した。これに対し、共用ストレージ11の空き容量を常に監視し、空き容量が所定容量例えば200MB未満になった場合に、上記と同様なデータの圧縮処理を実行するように構成しても良い。この構成によれば、いわば先回りしてデータ圧縮を行うことにより、共用ストレージ11の空き容量を確保することができ、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0045】
そして、上記実施形態では、既存データのデータ形式に基づいて、圧縮可能かどうかを判定するようにしたが、データを書込んだアプリケーションの種類に基づいて、圧縮可能かどうかを判定するように構成してもよい。これによれば、例えばA社製のハードウエアで得られたデータをA社のアプリによって書込んだ場合と、B社製のハードウエアで得られたデータをB社のアプリによって書込んだ場合とが混在するような場合でも、それらアプリの種類によりデータを区別し、圧縮可能かどうかの判定を行うことが可能となる。
【0046】
また、上記実施形態では、車載システム1を構成するECUのうち、セントラルゲートウェイ用のECU2に、共用ストレージ11を設けると共に、ストレージ管理部10の機能を設けるようにしたが、別のECUにそれらの機能を設けることも可能である。上記実施形態では、複数のECUをネットワーク接続した車載システム1に本発明を適用するようにしたが、閉じたネットワークに1以上のコンピュータを備える様々な用途、種類のシステム全般に適用することが可能である。
【0047】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0048】
図面中、1は車載システム(システム)、2はECU(コンピュータ、共用ストレージ管理装置)、3、4はECU(コンピュータ)、5はネットワーク、6は車載通信機、7、8、9はアプリケーション、10はストレージ管理部、11は共用ストレージ、12はストレージ管理テーブル、13は要求受付部、14は領域確保処理部、15は領域管理部、16はデータ圧縮処理部、17は優先度判定部を示す。
図1
図2
図3
図4
図5