(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】キャッチタンクの組付け構造
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20240611BHJP
【FI】
F16H57/04 P
F16H57/04 J
(21)【出願番号】P 2020173455
(22)【出願日】2020-10-14
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岐津 尚哉
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-185322(JP,A)
【文献】特開2017-116004(JP,A)
【文献】特開2011-027187(JP,A)
【文献】実開昭59-186554(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギヤ部材によって掻き上げられた潤滑油が貯留されるキャッチタンクが、動力伝達装置のケース部材に組付けられたキャッチタンクの組付け構造であって、
前記キャッチタンクは、前記ギヤ部材の回転中心軸方向に延びる底壁と、前記底壁の延びる方向の一端部から上方に延びる第1の側壁と、前記ギヤ部材の回転中心軸方向と直交する前記底壁の幅方向の一端部から上方に延び、かつ、前記第1の側壁に連絡される第2の側壁とを有し、
前記ケース部材は、開口端を有する第1のケース部材と、前記開口端側が第1のケースに連結される第2のケース部材とを有し、
前記第1のケース部材は、前記キャッチタンクの前記第2の側壁と対向する第1の壁部を有し、前記第1の壁部は、前記開口端よりも奥側に止め穴を有し、
前記第1の壁部の壁面は、前記止め穴から前記開口端に向かって前記ギヤ部材の回転中心軸に対して傾斜するように直線状に延びており、
前記キャッチタンクの前記第1の側壁に、前記止め穴に嵌合する止め具が設けられており、
前記キャッチタンクの前記第2の側壁に、前記第2の側壁から外方に延び、延びる方向の先端が前記第2の側壁に近接および離隔可能となるように弾性変形自在な第1の当て板が設けられており、
前記キャッチタンクが前記第1のケース部材に組付けられた状態において、前記第1の当て板の先端が前記第2の側壁に近接し、前記第1の当て板が前記第1の壁部に当接していることを特徴とするキャッチタンクの組付け構造。
【請求項2】
前記第1のケース部材は、前記第1の壁部に連絡され、上下方向で前記キャッチタンクの前記底壁に対向する支持壁部を有し、
前記支持壁部は、前記第1のケース部材の奥側から前記開口端に向かって下方に傾斜するように延びており、
前記キャッチタンクの前記底壁に、前記底壁から下方に突出し、前記支持壁部に当接する突起部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のキャッチタンクの組付け構造。
【請求項3】
前記キャッチタンクの前記第2の側壁に第1の嵌合部が設けられており、
前記第1の嵌合部は、前記第2の側壁から外方に突出する第1の押圧板部と、前記第1の押圧板部に設けられ、前記第1のケース部材に形成された第1の嵌合穴に嵌合される第1の嵌合突起とを有し、
前記キャッチタンクは、前記第1の嵌合突起が前記第1の嵌合穴に嵌合されることにより、前記第1のケース部材に取付けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のキャッチタンクの組付け構造。
【請求項4】
前記止め穴は、前記第1のケース部材の前記第1の壁部のうち、板厚が最も大きい肉厚部に形成されており、
前記肉厚部に所定の車載部品が取付けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のキャッチタンクの組付け構造。
【請求項5】
前記キャッチタンクは、前記ギヤ部材の回転中心軸方向と直交する前記底壁の幅方向の他端部から上方に延び、かつ、前記第1の側壁に連絡される第3の側壁を有し、
前記第3の側壁に第2の嵌合部が設けられており、
前記第2の嵌合部は、前記第3の側壁から外方に突出する第2の押圧板部と、前記第2の押圧板部に設けられ、前記第1のケース部材に形成された第2の嵌合穴に嵌合される第2の嵌合突起とを有し、
前記第2の嵌合部は、前記底壁の延びる方向の中間領域に設けられており、
前記キャッチタンクは、前記第2の嵌合突起が前記第2の嵌合穴に嵌合されることにより、前記第1のケース部材に取付けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のキャッチタンクの組付け構造。
【請求項6】
前記キャッチタンクは、前記底壁の延びる方向の他端部から上方に延び、かつ前記第2の側壁と前記第3の側壁に連絡される第4の側壁と、前記第
4の側壁から外方に延び、延びる方向の先端が前記第4の側壁に近接および離隔可能となるように弾性変形自在な第2の当て板と有し、
前記第2のケース部材は、前記第4の側壁に対向する第2の壁部を有し、
前記キャッチタンクが前記第1のケース部材と前記第2のケース部材に組付けられた状態において、前記第2の当て板の先端が前記第4の側壁に近接し、前記第2の当て板が前記第2の壁部に当接していることを特徴とする請求項5に記載のキャッチタンクの組付け構造。
【請求項7】
前記第2のケース部材の前記第2の壁部に、前記第2の壁部から前記キャッチタンク側に膨出する膨出部が形成されており、
前記キャッチタンクの前記底壁は、前記膨出部に対向する凹部と、前記底壁から下方に突出する第3の当て板とを有し、
前記膨出部と前記第3の当て板は、前記ギヤ部材の回転中心軸方向で対向していることを特徴とする請求項6に記載のキャッチタンクの組付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャッチタンクの組付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載された変速機等の動力伝達装置は、変速機ケースの底部に貯留されたオイルをディファレンシャル装置のファイナルドリブンギヤによって掻き上げ、掻き上げられたオイルをキャッチタンクに貯留してオイルの油面を調整してファイナルドリブンギヤの攪拌抵抗を低減させている。また、掻き上げられたオイルをオイルガターに導入してオイルガターから被潤滑部に供給して被潤滑部を潤滑している。
【0003】
例えば、特許文献1に記載される車両用パワートレインでは、ファイナルドリブンギヤによって掻き上げられたオイルが供給されるオイルガターを有し、オイルガターは、ケーシング内の潤滑油を受ける樋部と、樋部に溜まった潤滑油が流れ出る略円筒形状の吹き出し口と、樋部の端部に設けられた接続部とを備えている。
【0004】
オイルガターは、リヤケースに取付けられている。リヤケースは、開口端と、開口端よりも奥側の隔壁に設けられたオイルガター孔を有する。
【0005】
オイルガターは、オイルガター孔に吹き出し口を内嵌し、摺動支持部の上方に形成されたケーシングの内壁部にボルトを介して接続部を固定することにより、ケーシングに取付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の車両用パワートレインにあっては、ケーシングにオイルガターを組付ける際に、リヤケースの開口端よりも奥側に位置するオイルガター孔にオイルガターの吹き出し口を挿通して内嵌させた後、オイルガターの接続部を内壁部にボルト締めする必要がある。
【0008】
このため、レフトケースに対するオイルガターの姿勢(位置決め)が安定しない状態でオイルガターをレフトケースに組付けなければならず、オイルガターの組付け作業の作業性が悪化するおそれがある。
【0009】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、キャッチタンクの姿勢を安定させてケース部材に組付けることができ、キャッチタンクの組付け作業の作業性を向上できるキャッチタンクの組付け構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ギヤ部材によって掻き上げられた潤滑油が貯留されるキャッチタンクが、動力伝達装置のケース部材に組付けられたキャッチタンクの組付け構造であって、前記キャッチタンクは、前記ギヤ部材の回転中心軸方向に延びる底壁と、前記底壁の延びる方向の一端部から上方に延びる第1の側壁と、前記ギヤ部材の回転中心軸方向と直交する前記底壁の幅方向の一端部から上方に延び、かつ、前記第1の側壁に連絡される第2の側壁とを有し、前記ケース部材は、開口端を有する第1のケース部材と、前記開口端側が第1のケースに連結される第2のケース部材とを有し、前記第1のケース部材は、前記キャッチタンクの前記第2の側壁と対向する第1の壁部を有し、前記第1の壁部は、前記開口端よりも奥側に止め穴を有し、前記第1の壁部の壁面は、前記止め穴から前記開口端に向かって前記ギヤ部材の回転中心軸に対して傾斜するように直線状に延びており、前記キャッチタンクの前記第1の側壁に、前記止め穴に嵌合する止め具が設けられており、前記キャッチタンクの前記第2の側壁に、前記第2の側壁から外方に延び、延びる方向の先端が前記第2の側壁に近接および離隔可能となるように弾性変形自在な第1の当て板が設けられており、前記キャッチタンクが前記第1のケース部材に組付けられた状態において、前記第1の当て板の先端が前記第2の側壁に近接し、前記第1の当て板が前記第1の壁部に当接していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このように上記の本発明によれば、キャッチタンクの姿勢を安定させてケース部材に組付けることができ、キャッチタンクの組付け作業の作業性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係るキャッチタンクの組付け構造を備えた動力伝達装置の平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係るキャッチタンクの組付け構造を備えた動力伝達装置の平面図であり、変速機ケースを透過して要部のみを表示した動力伝達装置の平面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係るキャッチタンクの組付け構造を備えた動力伝達装置のレフトケースを右方から見た図である。
【
図5】
図5は、
図4のレフトケースをV-V方向で切った断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施例に係るキャッチタンクの組付け構造を備えた動力伝達装置のキャッチタンクの全体を、
図4のVI-VI方向で切ったときのキャッチタンクとレフトケースの後壁の断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施例に係るキャッチタンクの組付け構造を備えた動力伝達装置のキャッチタンクとその周辺のレフトケースを右方から見た図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施例に係る動力伝達装置に取付けられるキャッチタンクを後斜め左方から見た図である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施例に係る動力伝達装置に取付けられるキャッチタンクを左斜め上方から見た図である。
【
図10】
図10は、本発明の一実施例に係る動力伝達装置に取付けられるキャッチタンクを上方から見た図である。
【
図11】
図11は、本発明の一実施例に係る動力伝達装置に取付けられるキャッチタンクを前方から見た図である。
【
図12】
図12は、本発明の一実施例に係る動力伝達装置に取付けられるキャッチタンクを後方から見た図である。
【
図13】
図13は、本発明の一実施例に係る動力伝達装置に取付けられるキャッチタンクの下方から見た図である。
【
図14】
図14は、本発明の一実施例に係るキャッチタンクの組付け構造を備えた動力伝達装置に取付けられたキャッチタンクを左斜め前方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施の形態に係るキャッチタンクの組付け構造は、ギヤ部材によって掻き上げられた潤滑油が貯留されるキャッチタンクが、動力伝達装置のケース部材に組付けられたキャッチタンクの組付け構造であって、キャッチタンクは、ギヤ部材の回転中心軸方向に延びる底壁と、底壁の延びる方向の一端部から上方に延びる第1の側壁と、ギヤ部材の回転中心軸方向と直交する底壁の幅方向の一端部から上方に延び、かつ、第1の側壁に連絡される第2の側壁とを有し、ケース部材は、開口端を有する第1のケース部材と、開口端側が第1のケースに連結される第2のケース部材とを有し、第1のケース部材は、キャッチタンクの第2の側壁と対向する第1の壁部を有し、第1の壁部は、開口端よりも奥側に止め穴を有し、第1の壁部の壁面は、止め穴から開口端に向かって前記ギヤ部材の回転中心軸に対して傾斜するように直線状に延びており、キャッチタンクの第1の側壁に、止め穴に嵌合する止め具が設けられており、キャッチタンクの第2の側壁に、第2の側壁から外方に延び、延びる方向の先端が第2の側壁に近接および離隔可能となるように弾性変形自在な第1の当て板が設けられており、キャッチタンクが第1のケース部材に組付けられた状態において、第1の当て板の先端が第2の側壁に近接し、第1の当て板が第1の壁部に当接している。
【0014】
これにより、本発明の一実施の形態に係るキャッチタンクの組付け構造は、キャッチタンクの姿勢を安定させてケース部材に組付けることができ、キャッチタンクの組付け作業の作業性を向上できる。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の一実施例に係るキャッチタンクの組付け構造について、図面を用いて説明する。
図1から
図14は、本発明の一実施例に係るキャッチタンクの組付け構造を示す図である。
図1から
図14において、上下前後左右方向は、車両に設置された状態の動力伝達装置を基準とし、車両の前後方向を前後方向、車両の左右方向(車幅方向)を左右方向、車両の上下方向(車両の高さ方向)を上下方向とする。
【0016】
まず、構成を説明する。
図1において、車両には変速機1が設置されており、変速機1にはエンジン2が連結されている。変速機1とエンジン2は、車両の図示しないエンジンルームに設置されている。
【0017】
変速機1は、変速機ケース3を備えており、変速機ケース3は、レフトケース4およびライトケース5を有する。
【0018】
レフトケース4の右端部は開口されており、開口端4hを有する(
図3、
図4参照)。レフトケース4の右端部にはフランジ部4Tが設けられており、フランジ部4Tは、レフトケース4の右端部において周方向に設けられている。
【0019】
ライトケース5の左端部にはフランジ部5Tが設けられており、フランジ部5Tは、ライトケース5の左端部において周方向に設けられている。
【0020】
レフトケース4とライトケース5は、フランジ部4T、5Tがボルト41によって連結されることにより、一体化されている。
【0021】
ライトケース5の右端部は開口されており、ライトケース5の右端部には図示しないボルトによってエンジン2が連結されている。
【0022】
図2に示すように、レフトケース4には変速機構6が設置されている。変速機構6は、車幅方向に延びる入力軸7を有し、入力軸7にはエンジン2の動力が伝達される。本実施例の変速機1は、動力伝達装置を構成し、変速機ケース3は、ケース部材を構成する。レフトケース4は、第1のケース部材を構成し、ライトケース5は、第2のケース部材を構成する。
【0023】
変速機構6は、入力軸7と平行に延びるカウンタ軸8およびリバース軸9を有する。入力軸7には1速入力ギヤ7A、リバース入力ギヤ7R、2速入力ギヤ7B、3速入力ギヤ7C、4速入力ギヤ7D、5速入力ギヤ7Eおよび6速入力ギヤ7Fが設けられている。
【0024】
1速入力ギヤ7A、リバース入力ギヤ7Rおよび2速入力ギヤ7Bは、入力軸7と固定されて入力軸7と一体で回転し、入力ギヤ7C、7D、7E、7Fは、入力軸7と相対回転自在となっている。
【0025】
カウンタ軸8には1速カウンタギヤ8A、2速カウンタギヤ8B、3速カウンタギヤ8C、4速カウンタギヤ8D、5速カウンタギヤ8E、6速カウンタギヤ8F、リバースカウンタギヤ8Rおよびファイナルドライブギヤ8Gが設けられている。
【0026】
リバースカウンタギヤ8R、ファイナルドライブギヤ8Gおよび3速カウンタギヤ8Cから6速カウンタギヤ8Fは、カウンタ軸8に固定されてカウンタ軸8と一体で回転し、1速カウンタギヤ8Aおよび2速カウンタギヤ8Bは、カウンタ軸8と相対回転自在となっている。
【0027】
カウンタギヤ8Aからカウンタギヤ8Fは、入力ギヤ7Aから入力ギヤ7Fに噛み合っており、ファイナルドライブギヤ8Gは、ディファレンシャル装置10のファイナルドリブンギヤ12に噛み合っている。
【0028】
リバース軸9にリバースアイドラギヤ9A、9Bが設けられている。リバースアイドラギヤ9Aは、リバース軸9に固定されてリバース軸9と一体で回転し、リバースアイドラギヤ9Bは、リバース軸9と相対回転自在となっている。
【0029】
リバースアイドラギヤ9Aは、リバース入力ギヤ7Rに噛み合っており、リバースアイドラギヤ9Bは、リバースカウンタギヤ8Rに噛み合っている。
【0030】
入力軸7、カウンタ軸8およびリバース軸9にはそれぞれ同期装置31A、31B、31C、31Dが設置されており、同期装置31A、31B、31C、31Dは、各軸7、8、9の軸方向に移動自在となっている。
【0031】
同期装置31Aは、3速入力ギヤ7Cと4速入力ギヤ7Dの間に設置されている。同期装置31Aは、図示しない内周スプラインを有し、入力軸7の軸方向に移動自在に設けられたスリーブ31aと、スリーブ31aの内方に位置して入力軸7と一体回転自在に設けられ、スリーブ31aの内周スプラインに嵌合する外周スプラインを有する図示しないハブとを有する。
【0032】
3速入力ギヤ7Cには外周スプラインが形成されたドグ7cが設けられており、ドグ7cは、3速入力ギヤ7Cと一体で回転する。4速入力ギヤ7Dには外周スプラインが形成されたドグ7dが設けられており、ドグ7dは、4速入力ギヤ7Dと一体で回転する。
【0033】
スリーブ31aにはシフト機構の3速-4速用のシフトフォーク34A(
図3参照)が嵌合されており、3速-4速用のシフトフォーク34Aによってスリーブ31aが3速入力ギヤ7C側に移動されると、スリーブ31aの内周スプラインがドグ7cの外周スプラインに嵌合する。
【0034】
これにより、3速入力ギヤ7Cがスリーブ31aを介して入力軸7に連結され、入力軸7の回転が3速入力ギヤ7Cから3速カウンタギヤ8Cを介してカウンタ軸8に伝達される。
【0035】
これにより、エンジン2の動力は、入力軸7、3速入力ギヤ7C、3速カウンタギヤ8Cからカウンタ軸8に伝達された後、ファイナルドライブギヤ8Gからファイナルドリブンギヤ12に伝達される。
【0036】
ディファレンシャル装置10に伝達されたエンジン2の動力は、左右の図示しないドライブシャフトを介して図示しない左右の駆動前輪に伝達される。
【0037】
なお、同期装置31B、31C、31Dは、同期装置31Aと同様の構成と機能を有しており、詳しい説明は省略する。
【0038】
また、
図3に示すように、同期装置31C、31Dのスリーブにはシフトフォーク34B、34Cが嵌合され、同期装置31Bのスリーブには図示しないシフトフォークが嵌合されている。
【0039】
そして、これらシフトフォーク34A、34B、34Cおよび図示しないシフトフォークは、複数のシフトヨーク群34Yの中でシフトフォーク34A、34B、34Cおよび図示しないシフトフォークに対応するシフトヨークを介してシフトアンドセレクト軸36(
図1参照)によって操作される。
【0040】
図2に示すように、ディファレンシャル装置10は、ライトケース5に設けられた膨出壁部5Aとレフトケース4に収容されている。膨出壁部5Aは、ライトケース5の隔壁5Wから右方に膨出している。
【0041】
すなわち、ライトケース5の隔壁5Wは、膨出壁部5Aの膨出方向の先端よりもレフトケース4側に位置している。隔壁5Wは、隔壁を構成しており、レフトケース4の内部とライトケース5の内部は、隔壁5Wによって仕切られている。
【0042】
レフトケース4は、縦壁4Wと、縦壁4Wの前端部から左方に延びる後壁4Rと、後壁4Rの左端部から前方に延びる左側壁4Lと、左側壁4Lの前端からライトケース5に向かって延びる前壁4Fとを有する。
図1に示すように、後壁4Rと左側壁4Lは、リブ42によって連結されている。
【0043】
図2に示すように、変速機構6は、後壁4Rと左側壁4Lと前壁4Fと隔壁5Wとによって囲まれる変速機構室4Mに収容されている。本実施例の後壁4Rは、第1の壁部を構成する。
【0044】
図4に示すように、ディファレンシャル装置10は、デフケース11と、デフケース11の外周部に取付けられ、デフケース11と一体で回転するファイナルドリブンギヤ12とを有する。
【0045】
デフケース11の内部には差動歯車機構13が収容されている。差動歯車機構13は、一対のピニオンギヤ14A、14Bと、ピニオンギヤ14A、14Bを回転可能に支持するピニオンシャフト15と、一対のサイドギヤ16Aとを備えている。なお、サイドギヤは、右側のサイドギヤ16Aのみを図示している。
【0046】
ピニオンギヤ14A、14Bは、ファイナルドリブンギヤ12の回転中心軸Cを挟んで互いに対向して設置されている。
【0047】
ファイナルドリブンギヤ12の回転中心軸Cとデフケース11の回転中心軸Cは、同一方向であり、回転中心軸Cの方向は、車幅方向である。ファイナルドリブンギヤ12の回転中心軸Cは、ギヤ部材の回転中心軸を構成する。
【0048】
ピニオンギヤ14A、14Bは、それぞれがデフケース11の回転時に、ファイナルドリブンギヤ12の回転中心軸Cを中心として公転するとともに、ピニオンシャフト15の軸線を中心として自転する。
【0049】
サイドギヤ16Aおよび図示しないサイドギヤは、ピニオンギヤ14A、14Bに噛合っている。サイドギヤ16Aおよび図示しないサイドギヤの内周部には、左右のドライブシャフトの基端部がそれぞれ嵌合しており、ドライブシャフトは、サイドギヤ16Aおよび図示しないサイドギヤと一体回転する。
【0050】
ドライブシャフトの先端部(左右両端部)には、左右の駆動前輪が設けられており、駆動前輪は、ドライブシャフトと一体回転する。本実施例の車両は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両である。
【0051】
ディファレンシャル装置10は、ファイナルドライブギヤ8Gからファイナルドリブンギヤ12に動力が伝達されると、デフケース11がファイナルドリブンギヤ12と一体で回転する。
【0052】
このとき、ピニオンギヤ14A、14Bを介してサイドギヤ16Aおよび図示しないサイドギヤが互いに差動回転可能に回転する。変速機構6に入力されたエンジン2の動力(回転速度)は、変速機構6で変速され、差動歯車機構13から左右のドライブシャフトおよび駆動前輪に差動回転可能に伝達される。
【0053】
ファイナルドリブンギヤ12は、差動歯車機構13に対してデフケース11の回転中心軸Cの方向の左端部11a側に設置されている。
【0054】
図2、
図3に示すように、レフトケース4の縦壁4Wには軸受支持部4aが形成されている。デフケース11の左端部11aは、軸受17Aを介して軸受支持部4aに回転自在に支持されている。
【0055】
また、縦壁4Wには図示しないオイルシールが設けられている。縦壁4Wには左側のドライブシャフトが貫通されるように図示しない開口が形成されており、オイルシールは、開口部と左側のドライブシャフトの間に設置されている。
【0056】
図2に示すように、ライトケース5の膨出壁部5Aには軸受支持部5aが形成されている。デフケース11の右端部11bは、軸受17Bを介して膨出壁部5Aの軸受支持部5aに回転自在に支持されている。
【0057】
このようにデフケース11は、レフトケース4とライトケース5に回転自在に支持されており、ファイナルドリブンギヤ12は、差動歯車機構13に対してレフトケース4の縦壁4W側に設置されている。
【0058】
図3に示すように、レフトケース4とライトケース5の底部、すなわち、変速機ケース3の底部には潤滑油Oが貯留されており、エンジン2が停止した状態で潤滑油Oの油面は、軸受支持部4aの下端と上端との間に位置している。
【0059】
レフトケース4とライトケース5の上部にはキャッチタンク19が設置されている。
図3に示すように、キャッチタンク19は、ファイナルドリブンギヤ12の回転中心軸Cに対してファイナルドリブンギヤ12から水平方向に離れ、かつ、ファイナルドリブンギヤ12の回転中心軸Cよりも上方に設置されている。
【0060】
すなわち、キャッチタンク19は、ファイナルドリブンギヤ12の回転中心軸Cに対して前方斜め上方に設置されている。
【0061】
図8から
図13に示すように、キャッチタンク19は、潤滑油貯留部20と、潤滑油貯留部よりも容積が小さい潤滑油導入部21とを有する。
【0062】
潤滑油貯留部20は、底壁20A、前壁20B、後壁20C、左側壁20Dおよび右側壁20Eを有する。
【0063】
図11から
図13に示すように、底壁20Aは、ファイナルドリブンギヤ12の回転中心軸Cの方向に延びている。
【0064】
図10、
図11に示すように、前壁20Bは、ファイナルドリブンギヤ12の回転中心軸Cの方向と直交する底壁20Aの幅方向の前端部20f(他端部)から上方に延びており、後壁20Cは、ファイナルドリブンギヤ12の回転中心軸Cの方向と直交する底壁20Aの幅方向の後端部20r(一端部)から上方に延びている。
【0065】
左側壁20Dは、底壁20Aの延びる方向の左端部20m(一端部)から上方に延びており、前壁20Bの左端部と後壁20Cの左端部とに連絡されている。
【0066】
右側壁20Eは、底壁20Aの延びる方向の右端部20n(他端部)から上方に延びており、前壁20Bの右端部と後壁20Cの右端部とに連絡されている。
【0067】
図8から
図13に示すように、潤滑油導入部21は、底壁21A、前壁21B、後壁21Cおよび右側壁21Dを有する。
【0068】
図11、
図12に示すように、底壁21Aは、ファイナルドリブンギヤ12の回転中心軸Cの方向に延びている。底壁21Aは、底壁20Aよりも上方に位置しており、潤滑油貯留部20の右側壁20Eによって底壁20Aの右端部20nに連絡されている。
【0069】
図9、
図11に示すように、前壁21Bは、ファイナルドリブンギヤ12の回転中心軸Cの方向と直交する底壁21Aの幅方向の前端部21f(他端部)から上方に延びており、潤滑油貯留部20の前壁20Bに連絡されている。
【0070】
図8、
図10に示すように後壁21Cは、ファイナルドリブンギヤ12の回転中心軸Cの方向と直交する底壁21Aの幅方向の後端部21r(一端部)から上方に延びており、潤滑油貯留部20の後壁20Cに連絡されている。
【0071】
右側壁21Dは、底壁21Aの延びる方向の右端部21n(他端部)から上方に延びており、前壁21Bの右端部と後壁21Cの右端部とに連絡されている。
【0072】
図3に示すように、前壁20B(および前壁21B)は、後壁20C(および後壁21C)に対してファイナルドリブンギヤ12の回転中心軸Cと反対側に位置し、デフケース11の回転中心軸Cと直交する方向で後壁20C(および後壁21C)に対向している。
【0073】
図8に示すように、前壁20B、21B、後壁20C、21C、左側壁20Dおよび右側壁21Dの上端には開口部19aが形成されている。
【0074】
すなわち、本実施例のキャッチタンク19は、ファイナルドリブンギヤ12の回転中心軸Cの方向に延びる底壁20A、21Aと、底壁20A、21Aの延びる方向の左端部20m(一端部)から上方に延びる左側壁20Dを有する。
【0075】
また、キャッチタンク19は、ファイナルドリブンギヤ12の回転中心軸Cの方向と直交する底壁20A、21Aの幅方向の後端部20r、21r(一端部)から上方に延び、かつ、左側壁20Dの後端部に連絡される後壁20C、21Cを有する。
【0076】
また、キャッチタンク19は、ファイナルドリブンギヤ12の回転中心軸Cの方向と直交する底壁21Aの短手幅方向の前端部20f、21f(他端部)から上方に延び、かつ、左側壁20Dの前端部に連絡される前壁20B、21Bを有する。
【0077】
さらに、キャッチタンク19は、底壁20A、21Aの延びる方向の右端部21n(他端部)から上方に延び、かつ後壁20Cの右端部と前壁20Bの右端部とに連絡される右側壁21Dを有する。
【0078】
本実施例の左側壁20Dは、第1の側壁を構成し、後壁20C、21Cは、第2の側壁を構成する。前壁20B、21Bは、第3の側壁を構成し、右側壁21Dは、第4の側壁を構成する。
【0079】
図10に示すように、潤滑油貯留部20の底壁20Aと潤滑油導入部21の底壁21Aは、前後方向の長さに対してファイナルドリブンギヤ12の回転中心軸Cの長さが大きく形成されている。
【0080】
図2、
図11、
図12に示すように、キャッチタンク19の潤滑油導入部21は、ファイナルドリブンギヤ12の上方を覆うようにファイナルドリブンギヤ12の回転中心軸Cの方向に延びている。
【0081】
キャッチタンク19の潤滑油貯留部20は、潤滑油導入部21からファイナルドリブンギヤ12の回転中心軸Cの方向に延び、かつ、ファイナルドリブンギヤ12の回転中心軸Cの方向の左側面12bに対向するように潤滑油導入部21から下方に延びている(
図11、
図12参照)。
【0082】
具体的には、潤滑油貯留部20の底壁20Aは、潤滑油導入部21の底壁21Aよりも下方に位置しており、潤滑油貯留部20の底壁20Aと潤滑油導入部21の底壁21Aが潤滑油貯留部20の右側壁20Eによって連絡されている。
【0083】
これにより、ファイナルドリブンギヤ12の左側面12b側に空間を利用して潤滑油貯留部20を設置でき、潤滑油貯留部20の容積を大きくして、多くの潤滑油をキャッチタンク19に貯留できる。
【0084】
ファイナルドリブンギヤ12によって掻き上げられた潤滑油は、潤滑油導入部21に導入された後、潤滑油導入部21から潤滑油貯留部20に導かれて潤滑油貯留部20に貯留される。本実施例のファイナルドリブンギヤ12は、ギヤ部材を構成する。
【0085】
キャッチタンク19に貯留される潤滑油の油面が潤滑油貯留部20の底壁20Aよりも高くなると、潤滑油導入部21に潤滑油が貯留される。
【0086】
図8、
図12に示すように潤滑油導入部21の後壁21Cには切り欠き21aが形成されており、切り欠き21aは、後壁21Cの上端21bから下方に窪んでいる。
【0087】
図8、
図11、
図12に示すように、潤滑油導入部21の前壁21Bには潤滑油衝突壁部21cが形成されており、潤滑油衝突壁部21cは、前壁21Bの上端21dから後壁21Cの上端21bよりも上方に延びている。
【0088】
図2、
図12、
図13に示すように、キャッチタンク19は、切り欠き21aと潤滑油衝突壁部21cとファイナルドリブンギヤ12とが上下方向で対向するように設置されている。換言すれば、キャッチタンク19は、切り欠き21aと潤滑油衝突壁部21cとファイナルドリブンギヤ12とがファイナルドリブンギヤ12の回転中心軸Cの方向で重なるように設置されている。
【0089】
ファイナルドリブンギヤ12の回転速度は、車両の走行速度に比例して速くなり、ファイナルドリブンギヤ12によって掻き上げられる潤滑油量と飛距離はファイナルドリブンギヤ12の回転速度が速くなるにつれて増大する。
【0090】
本実施例のキャッチタンク19は、ファイナルドリブンギヤ12の回転域が中速回転域にある場合、すなわち、車両が中速走行域にある場合に最も多くの潤滑油が貯留可能な位置に設置されている。
【0091】
図5に示すように、キャッチタンク19の後壁20Cは、ファイナルドリブンギヤ12の回転中心軸Cの方向(前後方向)でレフトケース4の後壁4Rに対向している。
【0092】
後壁4Rは、開口端4hよりも奥側に止め穴4bを有し、止め穴4bは、後壁4Rと左側壁4Lの連絡部に設けられている。なお、開口端4hは、後壁4Rの右端側も含まれており、開口端4hは、レフトケース4のフランジ部4Tの内方と後壁4Rの右端から構成される。
【0093】
後壁4Rと左側壁4Lの連絡部には肉厚部4nが形成されており、肉厚部4nは、後壁4Rのうち最も板厚が大きい部位である。
【0094】
ここで、開口端4hよりも奥側とは開口端4hよりも左側であり、換言すれば、開口端4hよりもライトケース5から離れる側である。
【0095】
肉厚部4nには所定の車載部品としてシフト機構のガイドピン35が取付けられている。
図4、
図5に示すように、レフトケース4にはシフト機構のシフトアンドセレクト軸36が設置されている。
【0096】
シフトアンドセレクト軸36は、図示しないシフトアクチュエータによって軸線方向に移動自在、かつ、軸線周りに回転自在となるようにレフトケース4に支持されている。
【0097】
シフトアンドセレクト軸36にはガイド部材37が設けられており、ガイド部材37にはシフトゲートパターンを構成するガイド溝37aが形成されている。
【0098】
図5に示すように、ガイド部材37にフィンガー部37Aが設けられている。フィンガー部37Aは、複数のシフトヨーク群34Yの中でシフトフォーク34A、34B、34Cおよび図示しないシフトヨークに対応するシフトヨーク群に選択的に嵌合される。
【0099】
例えば、シフトアンドセレクト軸36が軸線方向に移動し、フィンガー部37Aが複数のシフトヨーク群34Yのうちの3速-4速用のシフトヨーク34sに嵌合され、シフトアンドセレクト軸36が一方向に回転されると、3速-4速用のシフトヨーク34sに連結されるシフタ軸39が入力軸7の軸線方向の一方に移動する。
【0100】
シフタ軸39が軸線方向の一方に移動すると、シフタ軸39が連結される3速-4速用のシフトフォーク34Aが入力軸7の軸線方向の一方向に移動し、3速-4速用のシフトフォーク34Aがスリーブ31aを3速入力ギヤ7C側に移動させる。
【0101】
ガイドピン35の先端は、ガイド溝37aに挿入されており、シフトアンドセレクト軸36が軸線方向に移動し、かつ軸線周りに回転するときに、ガイド溝37aがガイドピン35に沿って移動する。
【0102】
そして、シフトアンドセレクト軸36によって任意の変速段が成立されたときに、ガイド溝37aの壁面にガイドピン35が当接することにより、シフトアンドセレクト軸36の軸方向および回転方向への移動が規制され、シフトアンドセレクト軸36のがたつきが防止される。
【0103】
図5に示すように、後壁4Rの壁面4rは、止め穴4bから開口端4hに向かってファイナルドリブンギヤ12の回転中心軸Cに対して角度θだけ傾斜するように直線状に延びている。
【0104】
すなわち、ファイナルドリブンギヤ12の回転中心軸Cを基準とした場合に、後壁4Rの壁面4rは、止め穴4bから開口端4hに向かってファイナルドリブンギヤ12の回転中心軸Cに対して角度θだけ傾斜するように直線状に延びている。
【0105】
なお、
図5で説明の便宜上、ファイナルドリブンギヤ12の回転中心軸Cを仮想線で後壁4Rの近くに設定している。
【0106】
具体的には、後壁4Rの壁面4rは、開口端4hよりも前側に位置する止め穴4bから止め穴4bに向かって後方に広がるように直線状に傾斜している。なお、止め穴4bを開口端4hよりも後方に形成し、後壁4Rの壁面4rが止め穴4bから開口端4hに向かって前方に狭まるように直線状に傾斜してもよい。
【0107】
図8から
図13に示すように、潤滑油貯留部20の左側壁20Dにはピン22が設けられている。
図5に示すように、ピン22は、左側壁20Dからレフトケース4側に突出しており、止め穴4bに嵌合される。ピン22は、左側壁20Dから先端に向かうに従って先細り形状に形成されており、止め穴4bは、上下方向に延びる縦長に形成されている。
【0108】
ピン22は、先細り形状に形成されているので、ピン22を止め穴4bに容易に嵌合できるとともに、ピン22を止め穴4bに嵌合したときに、ピン22が止め穴4bに沿って上下方向に移動自在となる。本実施例のピン22は、止め具を構成する。
【0109】
潤滑油貯留部20の前壁20Bには突出片20Jが設けられており、突出片20Jは、前壁20Bの上端21dから上方に延びている。
【0110】
突出片21Jには押圧板部23aが設けられており、押圧板部23aは、突出片20Jから前方に突出している。押圧板部23aにはブラッシュクリップ23bが設けられており、ブラッシュクリップ23bは、押圧板部23aから左方に突出している。
【0111】
本実施例の押圧板部23aおよびブラッシュクリップ23bは、第2の嵌合部を構成する。押圧板部23aは、第2の押圧板部を構成し、ブラッシュクリップ23bは、第2の嵌合突起を構成する。
【0112】
図8から
図10に示すように、潤滑油貯留部20の後壁20Cには押圧板部24aが設けられており、押圧板部24aは、後壁20Cから後方に突出している。押圧板部24aにはブラッシュクリップ24bが設けられており、ブラッシュクリップ24bは、押圧板部24aから左方に突出している。
【0113】
本実施例の押圧板部24aおよびブラッシュクリップ24bは、第1の嵌合部を構成する。押圧板部24aは、第1の押圧板部を構成し、ブラッシュクリップ24bは、第1の嵌合突起を構成する。
【0114】
押圧板部23aとブラッシュクリップ23bは、底壁20A、21Aの延びる方向、すなわち、キャッチタンク19の車幅方向の中間領域に設けられており、押圧板部24aとブラッシュクリップ24bと前後方向に離れて設置されている。
【0115】
また、押圧板部23aおよびブラッシュクリップ23bと、押圧板部24aおよびブラッシュクリップ24bとは、車幅方向に近づいて設置されている。
【0116】
図7に示すように、レフトケース4の縦壁4Wと後壁4Rの連絡部には嵌合穴4kが形成されており、ブラッシュクリップ24bは、嵌合穴4kに嵌合される。嵌合穴4kは、第1の嵌合穴を構成する。
【0117】
レフトケース4の左側壁4Lには膨出部4vが形成されており、膨出部4vは、左側壁4Lからライトケース5側に膨出している。膨出部4vには嵌合穴4sが形成されており、ブラッシュクリップ23bは、嵌合穴4sに嵌合される。本実施例の嵌合穴4sは、第2の嵌合穴を構成する。
【0118】
図8、
図10、
図12に示すように、キャッチタンク19の潤滑油貯留部20の後壁20Cの左端部で、かつ、ピン22の近傍には当て板25が設けられており、当て板25は、後壁20Cの左端部から右斜め後方に延びている。
【0119】
当て板25は、延びる方向の先端25aが後壁20Cに近接および離隔可能となるように弾性変形自在となっている。
【0120】
キャッチタンク19がレフトケース4に組付けられた状態において、当て板25の先端25aが後壁20Cに近接し、当て板25が後壁4Rに当接している。本実施例の当て板25は、第1の当て板を構成する。
【0121】
図10から
図12に示すように、キャッチタンク19の潤滑油導入部21の右側壁21Dには当て板26が設けられており、当て板26は、右側壁21Dから前斜め右方に延びている。
【0122】
当て板26は、延びる方向の先端26aが右側壁21Dに近接および離隔可能となるように弾性変形自在となっている。
【0123】
キャッチタンク19をレフトケース4に取付けるときには、レフトケース4とライトケース5が分割された状態で作業者がキャッチタンク19をレフトケース4に挿入し、ピン22を止め穴4bに嵌合してキャッチタンク19の位置決めを行う。
【0124】
ピン22を止め穴4bに嵌合されたときに、当て板25は、レフトケース4の後壁4Rと後壁20Cの間で撓んだ状態(すなわち、当て板25の先端25aが後壁20Cに近接した状態)に弾性変形される。
【0125】
キャッチタンク19がレフトケース4とライトケース5に組付けられた状態において、当て板26の先端26aが右側壁21Dに近接し、当て板26が隔壁5Wに当接している。本実施例の隔壁5Wは、第2の壁部を構成し、当て板26は、第2の当て板を構成する。
【0126】
図14に示すように、ライトケース5の隔壁5Wには膨出部5Bが設けられており、膨出部5Bは、隔壁5Wからキャッチタンク19側に膨出している。膨出部5Bの膨出方向の先端には面取りが施されている。
【0127】
図7、
図11、
図13に示すように、キャッチタンク19の潤滑油導入部21の底壁21Aには凹部21gが形成されている。凹部21gは、ファイナルドリブンギヤ12の回転中心軸Cの方向で膨出部5Bに対向している(
図14参照)。
【0128】
潤滑油導入部21の底壁21Aには当て板30が設けられている。当て板30は、底壁20Aから下方に突出しており、ファイナルドリブンギヤ12の回転中心軸Cの方向で膨出部5Bと対向している(
図14参照)。本実施例の当て板30は、本発明の第3の当て板を構成する。
【0129】
図9、
図10、
図13に示すように、潤滑油貯留部20の底壁20Aには排出孔20aが形成されており、潤滑油貯留部20に貯留された潤滑油は、排出孔20aから排出される。
【0130】
図6、
図8、
図9に示すように、潤滑油貯留部20の前壁20Bは、湾曲壁部20cと垂直壁部20dとを有する。
【0131】
湾曲壁部20cは、底壁20Aの前端部20fから上方に向かうに従って後壁20Cから離れるように広がっている。垂直壁部20dは、湾曲壁部20cの上端から上方に直線状に延びている。
【0132】
図10、
図11に示すように、前壁20Bには排出孔20bが形成されている。排出孔20bは、湾曲壁部20cの延びる方向の中央部よりも上方に設けられており、排出孔20aよりも上方に位置している。
【0133】
湾曲壁部20cは、排出孔20bよりも上方において後壁20Cからさらに離れるように広がっている。これにより、排出孔20bを3速カウンタギヤ8Cに向かって開口できる。
図6において、排出孔20bの位置を仮想線で示す。
【0134】
図6に示すように、潤滑油貯留部20の後壁20Cは、上側垂直壁部20eと、湾曲壁部20gと、下側垂直壁部20tとを有する。
【0135】
上側垂直壁部20eは、上下方向に直線状に延びており、湾曲壁部20gは、上側垂直壁部20eの下端から下方に向かうに従って前壁20Bに近づくように湾曲している。下側垂直壁部20tは、湾曲壁部20gの下端から下方に直線状に延び、底壁20Aの後端部20rに連絡されている。
【0136】
排出孔20bは、排出孔20aよりも上方に設けられているので、潤滑油貯留部20に貯留される潤滑油量が増加すると、排出孔20aに加えて、排出孔20bから潤滑油が排出される。
【0137】
排出孔20aと排出孔20bは、いずれも丸穴から構成されており、排出孔20bの開口面積は、排出孔20aの開口面積よりも大きく形成されている。なお、排出孔20bは、潤滑油貯留部20の後壁20C、左側壁20D、右側壁20Eのうちの1つ以上に形成されてもよい。
【0138】
図3に示すように,排出孔20bは、3速カウンタギヤ8Cの後斜め上方に位置している。換言すれば、3速カウンタギヤ8Cは、排出孔20bの前斜め下方に位置しており、排出孔20bから排出された潤滑油は、3速カウンタギヤ8Cに供給される。
【0139】
すなわち、3速カウンタギヤ8Cは、排出孔20bから排出される潤滑油が供給可能な位置に設置されている。なお、3速カウンタギヤ8Cは、排出孔20bの真下に設置されてもよい。
【0140】
図4、
図6に示すように、レフトケース4は支持壁部4Bを有する。支持壁部4Bは、横壁部4Cおよび縦壁部4Dを介して後壁4Rに連絡されている。
【0141】
横壁部4Cは、後壁4Rから前側に直線状に伸び、縦壁部4Dは、横壁部4Cの前端から下方に直線状に延び、延びる方向の下端が支持壁部4Bに連絡されている。
【0142】
支持壁部4Bは、上下方向でキャッチタンク19の底壁20Aに対向している。
図4に示すように、レフトケース4の奥側から後壁4Rの開口端4h(レフトケース4の開口端4h)に向かって下方に傾斜するように延びている。
【0143】
換言すれば、支持壁部4Bは、レフトケース4の開口端4hから奥側に向かって(ライトケース5から離れる方向に向かって)上方に傾斜するように延びている。
【0144】
図6に示すように、潤滑油貯留部20の湾曲壁部20gは、横壁部4Cと縦壁部4Dに沿って湾曲しており、キャッチタンク19が支持壁部4Bに沿って移動するときに、湾曲壁部20gが横壁部4Cと縦壁部4Dに案内される。
【0145】
キャッチタンク19の底壁20Aには突起部20pが設けられており(
図12、
図13参照)、突起部20pは、底壁20Aから下方に突出し、支持壁部4Bに当接している。
【0146】
図3に示すように、レフトケース4の縦壁4Wには溝部4dが形成されている。溝部4dは、軸受支持部4aに連通する連通部4jからキャッチタンク19に向かって延び、延びる方向の先端に開口端4pを有する。
【0147】
ファイナルドリブンギヤ12は、回転中心軸Cの方向で縦壁4Wに近接して設置されており、レフトケース4には溝部4dとファイナルドリブンギヤ12とによって囲まれるオイル通路が形成されている。
【0148】
キャッチタンク19の排出孔20aは、溝部4dの開口端4pの近傍に設置されており、開口端4pに対向している。排出孔20aから排出される潤滑油は、溝部4dに導入される。
【0149】
これにより、溝部4dを通して軸受支持部4aに潤滑油が導入され、軸受17Aが潤滑油によって潤滑される。また、軸受支持部4aの内部に導入された潤滑油によってオイルシールが潤滑される。
【0150】
このため、軸受17Bやオイルシールの潤滑性能を向上でき、軸受17Aに焼き付けが発生することを防止できるとともに、オイルシールが摩耗することを防止でき、変速機1の信頼性を向上できる。
【0151】
図2に示すように、レフトケース4にはオイルガター27が収容されている。オイルガター27は、入力軸7よりも前方において、リバースアイドラギヤ9Aの上方に位置している。
【0152】
オイルガター27は、リバースアイドラギヤ9Aの上方から左方に延びるオイルガター本体27Aと、オイルガター本体27Aの左端部から後方に折れ曲がり、軸受17Cまで延びる潤滑油導入部27Bとを有する。
【0153】
入力軸7の左端部は、軸受17Cを介してレフトケース4の左側壁4Lに形成された図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。
【0154】
カウンタ軸8の左端部は、軸受17Dを介してレフトケース4の左側壁4Lに形成された軸受支持部4cに回転自在に支持されている(
図2参照)。
【0155】
レフトケース4の左側壁4Lには、入力軸7の左端部を支持する軸受支持部とカウンタ軸8の左端部を支持する軸受支持部を連通する図示しない溝部が形成されている。
【0156】
オイルガター27のオイルガター本体27Aには、リバースアイドラギヤ9Aによって掻き上げられた潤滑油が導入される。オイルガター本体27Aに導入された潤滑油は、オイルガター本体27Aから潤滑油導入部27Bに流れ、潤滑油導入部27Bから軸受17Cを支持する軸受支持部に潤滑油が導入される。これにより、軸受17Cが潤滑油によって潤滑される。
【0157】
また、軸受17Cを支持する軸受支持部から溝部を介して軸受17Dを支持する軸受支持部4cに潤滑油が導入される。これにより、軸受17Dが潤滑油によって潤滑される。
【0158】
次に、変速機1の作用を説明する。
変速機1は、ファイナルドリブンギヤ12によって掻き上げられた潤滑油が貯留されるキャッチタンク19を有し、キャッチタンク19は、潤滑油貯留部20と潤滑油導入部21とを備えている。
【0159】
潤滑油導入部21は、前壁21Bと、前壁21Bよりも後方に位置する後壁21Cとを有する。
【0160】
潤滑油導入部21の後壁21Cには切り欠き21aが形成されており、切り欠き21aは、後壁21Cの上端21bから下方に窪んでいる。
【0161】
潤滑油導入部21の前壁21Bには潤滑油衝突壁部21cが形成されており、潤滑油衝突壁部21cは、前壁21Bの上端21dから後壁21Cの上端21bよりも上方に延びている。
【0162】
ファイナルドリブンギヤ12によって掻き上げられた潤滑油は、潤滑油導入部21に導入された後、潤滑油導入部21から潤滑油貯留部20に導かれて潤滑油貯留部20に貯留される。
【0163】
ファイナルドリブンギヤ12の低速回転域では、ファイナルドリブンギヤ12によって掻き上げられた潤滑油の勢いは弱く、その飛距離も短い。
【0164】
このため、ファイナルドリブンギヤ12の低速回転域ではファイナルドリブンギヤ12によって掻き上げられた潤滑油は、後壁21Cの上端21bよりも低い位置に形成される切り欠き21aから開口部19aを通して潤滑油導入部21に導入され、潤滑油導入部21から潤滑油貯留部20に貯留される。
【0165】
ファイナルドリブンギヤ12の中速回転域では、ファイナルドリブンギヤ12の回転速度がファイナルドリブンギヤ12の低速回転域よりも速くなり、ファイナルドリブンギヤ12によって掻き上げられた潤滑油の勢いは、ファイナルドリブンギヤ12の低速回転域よりも強く、その飛距離も長い。
【0166】
また、キャッチタンク19は、ファイナルドリブンギヤ12が中速回転域にある場合に最も多くの潤滑油が貯留可能な位置に設置されている。
【0167】
ファイナルドリブンギヤ12の中速回転域では、ファイナルドリブンギヤ12によって掻き上げられた潤滑油が開口部19aを通して潤滑油導入部21に導入される。また、潤滑油導入部21の開口部19aの上方を通過しようとする潤滑油は、潤滑油衝突壁部21cに衝突して潤滑油導入部21に戻される。
【0168】
このため、潤滑油導入部21に多くの潤滑油が捕捉され、より多くの潤滑油が潤滑油貯留部20に貯留される。
【0169】
また、潤滑油導入部21に捕捉できなかった潤滑油は、キャッチタンク19よりも前方のリバース軸9側に飛散し、入力ギヤ7Aから入力ギヤ7Fの噛み合い部、カウンタギヤ8Aからカウンタギヤ8Fとの噛み合い部、リバースアイドラギヤ9Aとリバース入力ギヤ7Rの噛み合い部、リバースアイドラギヤ9Bとリバースカウンタギヤ8Rの噛み合い部等の被潤滑部に供給される。これにより、被潤滑部が潤滑される。
【0170】
ファイナルドリブンギヤ12の高速回転域では、ファイナルドリブンギヤ12の回転速度がファイナルドリブンギヤ12の中速回転域よりも速くなり、ファイナルドリブンギヤ12によって掻き上げられた潤滑油の勢いは、ファイナルドリブンギヤ12の中速回転域よりさらに強く、その飛距離もさらに長い。
【0171】
ファイナルドリブンギヤ12の高速回転域ではファイナルドリブンギヤ12によって掻き上げられた潤滑油が開口部19aを通して潤滑油導入部21に導入される。また、潤滑油導入部21の開口部19aの上方を通過しようとする潤滑油は、潤滑油衝突壁部21cに衝突して潤滑油導入部21に戻される。
【0172】
このため、潤滑油導入部21に多くの潤滑油が捕捉され、より多くの潤滑油が潤滑油貯留部20に貯留される。
【0173】
また、潤滑油導入部21に捕捉できなかった潤滑油は、キャッチタンク19よりも前方のリバース軸9側に飛散し、入力ギヤ7Aから入力ギヤ7Fの噛み合い部等の被潤滑部に供給される。
【0174】
以上のことから、ファイナルドリブンギヤ12の中速回転域および高速回転域で多くの潤滑油をキャッチタンク19に貯留して、ファイナルドリブンギヤ12の攪拌抵抗や潤滑油に浸かるカウンタギヤの攪拌抵抗を低減でき、変速機1の動力伝達効率が低下することを防止できる。
【0175】
また、ファイナルドリブンギヤ12の中速回転域および高速回転域では、リバースアイドラギヤ9Aによって掻き上げられた潤滑油に加えて、ファイナルドリブンギヤ12によってリバース軸9側に飛散された潤滑油がオイルガター27に供給される。
【0176】
これにより、オイルガター27から軸受17C、17Dに供給される潤滑油量を増大でき、軸受17C、17Dを潤滑油によって潤滑できる。
【0177】
一方、潤滑油貯留部20の底壁20Aには排出孔20aが形成されており、排出孔20aよりも上方において、潤滑油貯留部20の前壁20Bには排出孔20bが形成されている。
【0178】
これにより、車両の低速走行域においてファイナルドリブンギヤ12が低速回転域にある場合には、排出孔20aのみから潤滑油を排出することにより、潤滑油貯留部20に一定量の潤滑油を貯留できる。このため、潤滑油の油面を低くして、ファイナルドリブンギヤ12等の攪拌抵抗を低減できる。
【0179】
また、車両の中速走行域においてファイナルドリブンギヤ12が中速回転域にある場合、または、車両の高速走行域においてファイナルドリブンギヤ12が高速回転域にある場合には、排出孔20aと排出孔20bの両方から潤滑油を排出することにより、潤滑油貯留部20に貯留される潤滑油量が過剰になることを防止できる。
【0180】
このため、被潤滑部を潤滑することができる充分な量の潤滑油を確保でき、被潤滑部の潤滑性能が低下することを防止できる。
【0181】
このように本実施例の変速機1は、キャッチタンク19に貯留される潤滑油量の車両の走行速度域に応じて調整でき、ファイナルドリブンギヤ12やカウンタギヤの攪拌抵抗の低減を図りつつ、被潤滑部の潤滑性能が低下することを防止できる。
【0182】
また、排出孔20aは、潤滑油貯留部20の底壁20Aに形成されているので、潤滑油貯留部20に貯留される潤滑油の油面が高くなると、潤滑油の圧力によって排出孔20aから排出される潤滑油量が多くなるとともに、排出速度が速くなる。
【0183】
潤滑油貯留部20に貯留される潤滑油の油面が低くなると、油面が高い場合よりも排出孔20aから排出される潤滑油量が少なくなるとともに、排出速度が遅くなる。このように潤滑油貯留部20の底壁20Aに排出孔20aを形成することにより、排出孔20aから排出される潤滑油量と排出速度を制御できる。
【0184】
排出孔20bから排出された潤滑油は、3速カウンタギヤ8C側に排出される。これにより、3速カウンタギヤ8Cと3速入力ギヤ7Cの噛み合い部が潤滑される。
【0185】
排出孔20bの開口面積は、排出孔20aの開口面積よりも大きく形成されているので、排出孔20bよりも上方において潤滑油の油面が低い場合でも排出孔20bから潤滑油を確実に排出できる。
【0186】
また、3速カウンタギヤ8Cと3速入力ギヤ7Cの噛み合い部を潤滑する潤滑油は、3速入力ギヤ7Cに隣接するドグ7cの回転によってドグ7cからオイルガター27に供給される。これにより、オイルガター27に供給される潤滑油量が増大する。
【0187】
次に、本実施例の変速機1の効果を説明する。
本実施例の変速機1によれば、ファイナルドリブンギヤ12によって掻き上げられた潤滑油が貯留されるキャッチタンク19が変速機1の変速機ケース3に組付けられている。
【0188】
キャッチタンク19は、ファイナルドリブンギヤ12の回転中心軸Cの方向に延びる底壁20A、21Aと、底壁20A、21Aの延びる方向の左端部20mから上方に延びる左側壁20Dと、ファイナルドリブンギヤ12の回転中心軸Cの方向と直交する底壁20A、21Aの幅方向の後端部20r、21rから上方に延び、かつ、左側壁20Dに連絡される後壁20C、21Cとを有する。
【0189】
変速機ケース3は、レフトケース4とライトケース5を有する。レフトケース4は、キャッチタンク19の左側壁20Dと対向する後壁4Rを有し、後壁4Rは、レフトケース4の開口端4hよりも奥側に止め穴4bを有する。
【0190】
後壁4Rの壁面4rは、止め穴4bから開口端4hに向かってファイナルドリブンギヤ12の回転中心軸Cに対して傾斜するように直線状に延びている。これに加えて、キャッチタンク19の左側壁20Dに、止め穴4bに嵌合するピン22が設けられている。
【0191】
このように構成されるキャッチタンク19は、レフトケース4にライトケース5が取付けられる前に、レフトケース4に組付けられる。
【0192】
キャッチタンク19をレフトケース4に組付ける作業において、作業者は、レフトケース4の開口端4hからレフトケース4にキャッチタンク19を挿入する。このとき、キャッチタンク19の後壁21Cをレフトケース4の後壁4Rの壁面4rに押し当てながら、止め穴4bに向かって移動させる。
【0193】
後壁4Rには開口端4hよりも奥側に止め穴4bが設けられているので、キャッチタンク19がレフトケース4の奥まで移動したときにピン22が止め穴4bに嵌合される。
【0194】
すなわち、キャッチタンク19の後壁20Cをレフトケース4の後壁4Rの壁面4rに押し当てた状態でピン22と止め穴4bの位置合わせを行うことができる。ピン22は、先細りに形成されているので、キャッチタンク19を奥側に移動させたときに、ピン22を止め穴4bに容易に嵌合できる。
【0195】
これに加えて、止め穴4bは、縦長に形成されているので、ピン22が止め穴4bに対して上下方向に位置ずれしている場合でもピン22を止め穴4bに容易に嵌合できる。
【0196】
このように、本実施例の変速機1は、キャッチタンク19の姿勢を安定させてレフトケース4に組付けることができ、キャッチタンク19の組付け作業の作業性を向上できる。
【0197】
また、本実施例の変速機1は、キャッチタンク19の後壁20Cの左端部に当て板25が設けられている。
【0198】
当て板25は、後壁20Cの左端部から右斜め後方に延びており、延びる方向の先端25aが後壁20Cに近接および離隔可能となるように弾性変形自在となっている。
【0199】
キャッチタンク19がレフトケース4に組付けられた状態において、当て板25の先端25aが後壁20Cに近接し、当て板25がレフトケース4の後壁4Rに当接する。
【0200】
これにより、ピン22が止め穴4bに嵌合された状態において、当て板25をレフトケース4の後壁4Rと後壁20Cの間で撓ませることができる。
【0201】
このため、当て板25の弾性力によってキャッチタンク19をレフトケース4の後壁4Rから離れる前方に付勢できる。このため、ピン22を止め穴4bに強く押し付けることができ、キャッチタンク19の姿勢を安定させることができる。
【0202】
また、本実施例の変速機1によれば、レフトケース4は、後壁4Rに連絡され、上下方向でキャッチタンク19の底壁20Aに対向する支持壁部4Bを有する。
【0203】
支持壁部4Bは、レフトケース4の奥側から後壁4Rの開口端4hに向かって下方に傾斜するように延びている。これに加えて、キャッチタンク19の底壁20Aに、底壁20Aから下方に突出し、支持壁部4Bに当接する突起部20pが設けられている。
【0204】
これにより、キャッチタンク19が止め穴4bに向かって移動し、ピン22が止め穴4bに嵌合される手前で突起部20pが支持壁部4Bに接触した状態において、ピン22と止め穴4bの位置決めを行うことができる。このため、キャッチタンク19の姿勢を安定させて、ピン22を止め穴4bに容易に嵌合できる。
【0205】
また、キャッチタンク19と支持壁部4Bは、上下方向に対向するため、キャッチタンク19の自重によってキャッチタンク19が下方に移動することを防止できる。
【0206】
このため、キャッチタンク19の組付け時にレフトケース4の後壁4Rと支持壁部4Bによってキャッチタンク19の姿勢をより安定させることができ、キャッチタンク19の組付け作業の作業性をより効果的に向上できる。
【0207】
また、本実施例の変速機1によれば、キャッチタンク19の左側壁20Dに第1の嵌合部が設けられており、第1の嵌合部は、左側壁20Dから外方に突出する押圧板部24aと、押圧板部24aに設けられ、レフトケース4の縦壁4Wと左側壁4Lの連絡部に形成された嵌合穴4kが嵌合されるブラッシュクリップ24bとを有する。
【0208】
これにより、ピン22が止め穴4bに嵌合された状態で、作業者は、押圧板部24aを把持し、ブラッシュクリップ24bを嵌合穴4kに嵌合することにより、キャッチタンク19をレフトケース4に安定して組付けることができる。
【0209】
また、押圧板部24aは、左側壁20Dから外方に突出しているので、作業者は、押圧板部24aを容易に把持することができ、ブラッシュクリップ24bを嵌合穴4kに容易に嵌合できる。
【0210】
また、指で把持する押圧板部24aと、嵌合穴4kに嵌合されるブラッシュクリップ24bとを一体で成形することにより、第1の嵌合部の部品点数を低減でき、キャッチタンク19の製造コストを低減できる。
【0211】
また、ピン22の軸長は、ブラッシュクリップ24bの軸長よりも長いので、ピン22が止め穴4bに嵌合された状態で、ブラッシュクリップ24bを嵌合穴4kに容易に嵌合できる。
【0212】
また、止め穴4bは、縦長に形成されているので、ブラッシュクリップ24bを嵌合穴4kに嵌合する際に、ピン22を止め穴4bに沿って上下方向に移動させることができ、キャッチタンク19の姿勢を容易に調整できる。
【0213】
これに加えて、ブラッシュクリップ24bを嵌合穴4kに嵌合するときに、ピン22が止め穴4bの奥まで嵌合されることにより、ブラッシュクリップ24bを嵌合穴4kに嵌合するときのキャッチタンク19の位置決めを行うことができる。この結果、キャッチタンク19の組付け作業の作業性をより効果的に向上できる。
【0214】
また、本実施例の変速機1によれば、止め穴4bは、レフトケース4の後壁4Rのうち、板厚が最も大きい肉厚部4nに形成されており、肉厚部4nにシフト機構のガイドピン35が取付けられている。
【0215】
これにより、止め穴4bの径を大きくして、ピン22の径を大きくできる。このため、レフトケース4に対するキャッチタンク19の支持剛性を高くしてキャッチタンク19をレフトケース4に安定して組付けることができる。なお、所定の車載部品は、ガイドピン35に限定されるものではない。
【0216】
また、肉厚部4nにガイドピン35を取付けることにより、ガイドピン35を取付けるための専用のスペースや部材を不要にでき、変速機1の小型化および軽量化を図ることができる。
【0217】
また、本実施例の変速機1によれば、キャッチタンク19は、ファイナルドリブンギヤ12の回転中心軸Cの方向と直交する底壁20Aの幅方向の前端部20fから上方に延び、かつ、左側壁20Dに連絡される前壁20Bを有する。
【0218】
前壁20Bに第2の嵌合部が設けられており、第2の嵌合部は、前壁20Bから外方に突出する押圧板部23aと、押圧板部23aに設けられ、レフトケース4の膨出部4vに形成された嵌合穴4sに嵌合されるブラッシュクリップ23bとを有する。
【0219】
押圧板部23aおよびブラッシュクリップ23bは、底壁20A、21Aの延びる方向の中間領域に設けられており、キャッチタンク19は、ブラッシュクリップ23bが嵌合穴4sに嵌合されることにより、レフトケース4に取付けられている。
【0220】
これにより、ピン22が止め穴4bに嵌合された状態で、作業者は、押圧板部23aを把持し、ブラッシュクリップ23bを嵌合穴4sに嵌合することにより、キャッチタンク19をレフトケース4に安定して組付けることができる。
【0221】
また、押圧板部23aは、左側壁20Dから外方に突出しているので、作業者は、押圧板部23aを容易に把持することができ、ブラッシュクリップ23bを嵌合穴4sに容易に嵌合できる。
【0222】
また、指で把持する押圧板部23aと、嵌合穴4sに嵌合されるブラッシュクリップ23bとを一体で成形することにより、第2の嵌合部の部品点数を低減でき、キャッチタンク19の製造コストを低減できる。
【0223】
また、ピン22の軸長は、ブラッシュクリップ23bの軸長よりも長いので、ピン22が止め穴4bに嵌合された状態で、ブラッシュクリップ23bを嵌合穴4sに容易に嵌合できる。
【0224】
また、止め穴4bは、縦長に形成されているので、ブラッシュクリップ23bを嵌合穴4sに嵌合する際に、ピン22を止め穴4bに上下方向に移動させることができ、キャッチタンク19の姿勢を容易に調整できる。
【0225】
これに加えて、ブラッシュクリップ23bを嵌合穴4sに嵌合するときに、ピン22が止め穴4bの奥まで嵌合されることにより、ブラッシュクリップ23bを嵌合穴4sに嵌合するときのキャッチタンク19の位置決めを行うことができる。この結果、キャッチタンク19の組付け作業の作業性をより効果的に向上できる。
【0226】
また、本実施例の変速機1によれば、キャッチタンク19は、底壁21Aの延びる方向の右端部21nから上方に延び、かつ後壁20Cの右端部と前壁20Bの右端部とに連絡される右側壁21Dを有する。
【0227】
キャッチタンク19の右側壁21Dには当て板26が設けられている。当て板26は、右側壁21Dから前斜め右方に延びており、延びる方向の先端26aが右側壁20Eに近接および離隔可能となるように弾性変形自在となっている。
【0228】
ライトケース5は、キャッチタンク19の右側壁21Dに対向する隔壁5Wを有し、キャッチタンク19がレフトケース4とライトケース5に組付けられた状態において、当て板26の先端26aが隔壁5Wに近接し、当て板が隔壁5Wに当接している。
【0229】
これにより、レフトケース4とライトケース5とをボルト41によって連結したときに、当て板26の先端26aが右側壁21Dに近接した状態で、当て板26がレフトケース4の後壁4Rに当接する。
【0230】
これにより、ピン22が止め穴4bに嵌合された状態において、当て板26をレフトケース4の後壁4Rと後壁20Cの間で撓ませることができる。
【0231】
これにより、当て板26の弾性力によってキャッチタンク19をライトケース5の隔壁5Wから離れる前方に付勢できる。このため、ピン22を止め穴4bに強く押し付けることができ、キャッチタンク19の姿勢をより効果的に安定させることができる。
【0232】
また、ブラッシュクリップ23b、24bが嵌合穴に嵌合された状態で、当て板25、26の弾性力によってブラッシュクリップ23b、24bを嵌合穴4k、4sに強く押し付け、キャッチタンク19の姿勢をより効果的に安定させることができる。
【0233】
また、押圧板部23aとブラッシュクリップ23bは、底壁20A、21Aの延びる方向の中間領域に設けられており、押圧板部23aおよびブラッシュクリップ23bと、押圧板部24aおよびブラッシュクリップ24bとは、車幅方向に近づいて設置されている。
【0234】
これに加えて、押圧板部23aとブラッシュクリップ23bがキャッチタンク19の車幅方向の中間領域に設けられることにより、組付け時のキャッチタンク19の前後方向の撓みを吸収する。これらの構成により、キャッチタンク19をレフトケース4およびライトケース5に強固に取付けることができ、キャッチタンク19の姿勢をより一層安定させることができる。
【0235】
また、本実施例の変速機1によれば、ライトケース5の隔壁5Wに、隔壁5Wからキャッチタンク19側に膨出する膨出部5Bが形成されている。
【0236】
キャッチタンク19の底壁21Aは、膨出部5Bに対向する凹部21gと、底壁21Aから下方に突出する当て板30とを有し、膨出部5Bと当て板30は、ファイナルドリブンギヤ12の回転中心軸Cの方向で対向している。
【0237】
これにより、車両の走行時の振動等によってキャッチタンク19が隔壁5W側に変位した場合に、当て板30を膨出部5Bに当接させることにより、キャッチタンク19が変位することを防止できる。
【0238】
このため、キャッチタンク19の姿勢を維持させることができ、ファイナルドリブンギヤ12によって掻き上げられた潤滑油をキャッチタンク19に効率よく貯留できる。
【0239】
また、ボルト41によってライトケース5をレフトケース4に連結するときに、膨出部5Bが膨出部5Bに干渉しようにする場合には、膨出部5Bを凹部21gの下方に潜り込ませることにより、膨出部5Bとキャッチタンク19が干渉することを防止でき、キャッチタンク19の組付け作業の作業性を向上できる。
【0240】
本実施例の変速機1は、FF車両に適用されているが、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)車両に適用されてもよい。
【0241】
また、本実施例の動力伝達装置は、変速機に適用されているが、ギヤ部材とキャッチタンクを備えた動力伝達装置であれば、変速機に限定されるものではない。
【0242】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0243】
1...変速機(動力伝達装置)、3...変速機ケース、4...レフトケース(第1のケース部材)、4B...支持壁部、4b...止め穴、4h...開口端(第1のケース部材の開口端)、4n...肉厚部、4R...後壁(第1の壁部)、4r...壁面(壁部の壁面)、5...ライトケース(第2のケース部材)、5B...膨出部、5W...隔壁(第2の壁部)、19...キャッチタンク、20A...底壁(キャッチタンクの底壁)、20B...前壁(キャッチタンクの第3の側壁)、20C...後壁(キャッチタンクの第2の側壁)、20D...左側壁(キャッチタンクの第1の側壁)、20f,21f...前端部(底壁の幅方向の他端部)、20m...左端部(底壁の延びる方向の一端部)、20r,21r...後端部(底壁の幅方向の一端部)、20p...突起部、21A...底壁(キャッチタンクの底壁)、21B...前壁(キャッチタンクの第3の側壁)、21C...後壁(キャッチタンクの第2の側壁)、21D...右側壁(キャッチタンクの第4の側壁)、21g...凹部、21n...右端部(底壁の延びる方向の他端部)、22...ピン(止め具)、23a...押圧板部(第2の嵌合部、第2の押圧板部)、23b...ブラッシュクリップ(第2の嵌合部、第2の嵌合突起)、24a...押圧板部(第1の嵌合部、第1の押圧板部)、24b...ブラッシュクリップ(第1の嵌合部、第1の嵌合突起)、25...当て板(第1の当て板)、26...当て板(第2の当て板)、30...当て板(第3の当て板)、35...ガイドピン(所定の車載部品)、C...ギヤ部材の回転中心軸