(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】試験機、および、試験片回収装置
(51)【国際特許分類】
G01N 3/04 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
G01N3/04 N
G01N3/04 J
(21)【出願番号】P 2020195880
(22)【出願日】2020-11-26
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 俊介
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-213709(JP,A)
【文献】特開2000-039386(JP,A)
【文献】特開平08-226881(JP,A)
【文献】特開2017-139463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験装置から試験片を回収する試験片回収装置を備える試験機であって、
前記試験片回収装置は、支持機構と、前記支持機構に支持された回収機構と、を備え、
前記回収機構は、支持部材と、前記支持部材に支持されて試験片をつかむ一対のつかみ具と、前記つかみ具を開閉可能に駆動する駆動機構とを備え、
前記駆動機構が駆動する際に、いずれかの前記つかみ具が試験片の第1側から当接した後に、別の前記つかみ具
のみが試験片の第2側から
駆動する、
試験機。
【請求項2】
前記支持部材は、前記つかみ具の開閉方向に延びる支持ロッドを備え、
前記支持機構は、試験片回収アームを備え、
前記試験片回収アームの先端には、前記支持ロッドが支持され、
前記支持ロッドには、前記一対のつかみ具が摺動自在に支持され、
前記駆動機構は、前記一対のつかみ具を開閉するシリンダ装置を備え、
前記シリンダ装置は、シリンダ本体と、前記シリンダ本体に伸縮可能に支持されたピストンロッドとを備え、前記シリンダ本体は、第1のつかみ具に固定され、前記ピストンロッドは第2のつかみ具に固定される、
請求項1に記載の試験機。
【請求項3】
前記支持ロッドは一対であり、一対の支持ロッドは前記ピストンロッドの幅方向の両側に配置される、
請求項2に記載の試験機。
【請求項4】
前記シリンダ装置はエアシリンダである、
請求項2又は3に記載の試験機。
【請求項5】
試験装置から試験片を回収する試験片回収装置であって、
支持機構と、前記支持機構に支持された回収機構と、を備え、
前記回収機構は、支持部材と、前記支持部材に支持されて試験片をつかむ一対のつかみ具と、前記つかみ具を開閉可能に駆動する駆動機構とを備え、
前記駆動機構が駆動する際に、いずれかの前記つかみ具が試験片の第1側から当接した後に、別の前記つかみ具
のみが試験片の第2側から
駆動する、
試験片回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験機、および、試験片回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チャックにより試験片の両端を把持し、この試験片にチャックを介して試験荷重を加え、試験片の破断試験を行う試験機が知られている。この種の試験機では、試験片回収装置を備えている場合があり、試験片回収装置を用いて破断後の試験片をチャックから自動的に取り出すことがある(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の試験片回収装置では、チャックに把持された試験片を一対のフィンガーで挟んで回収している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、試験片の試験を行う試験機では、一体物である平板や丸棒などを試験片とすることが多く、試験片の大きさは様々であっても、試験片がチャックに把持された場合には、試験片の厚み方向の中心軸は、試験機に対して常に同一の位置に保持され易い。このため、従来の試験片回収装置では、試験機の所定の位置を基準として、試験片を挟むように構成していた。
しかしながら、例えば、試験片には、接着材のせん断力を測定する試験片がある。接着材の試験片では、一対の試験片材料の一端部どうしを接着材で接着し、一対の試験片材料の各他端部を、チャックにより把持し、チャックを介して試験荷重を加えることにより、接着材のせん断試験を行う。
この場合、試験片材料の中心軸は試験片の中心軸からずれ、軸方向に沿った試験片の厚み方向の大きさは一様ではない。よって、試験機の所定の位置を基準として挟もうとしても、破断後の試験片を自動で安定して取り出し難い、という課題がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、様々な形状の試験片を、自動で安定して取り出すことができる試験機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様は、試験装置から試験片を回収する試験片回収装置を備える試験機であって、前記試験片回収装置は、支持機構と、前記支持機構に支持された回収機構と、を備え、前記回収機構は、支持部材と、前記支持部材に支持されて試験片をつかむ一対のつかみ具と、前記つかみ具を開閉可能に駆動する駆動機構とを備え、前記駆動機構が駆動する際に、いずれかの前記つかみ具が試験片の第1側から当接した後に、別の前記つかみ具のみが試験片の第2側から駆動する、試験機に関する。
【0006】
本発明の第2の態様は、試験装置から試験片を回収する試験片回収装置であって、支持機構と、前記支持機構に支持された回収機構と、を備え、前記回収機構は、支持部材と、前記支持部材に支持されて試験片をつかむ一対のつかみ具と、前記つかみ具を開閉可能に駆動する駆動機構とを備え、前記駆動機構が駆動する際に、いずれかの前記つかみ具が試験片の第1側から当接した後に、別の前記つかみ具のみが試験片の第2側から駆動する、試験片回収装置に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の第1の態様および第2の態様によれば、つかみ具が試験片をつかむ際に、試験片に対する当接位置に応じてつかみ具同士の中心を移動させながら、つかみ具でつかむことができ、様々な形状の試験片を、自動で安定して取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る自動材料試験機の概略正面図である。
【
図5】第1実施形態のつかみ具の作用説明図であり、
図5(A)は、つかみ具が開放位置に移動した状態を示す図、
図5(B)は、第1のつかみ具が試験片に接触した状態を示す図、
図5(C)は、つかみ具がつかみ位置に移動した状態を示す図である。
【
図6】チャックに把持された試験片の位置関係を説明する図であり、
図6(A)は、一様に延びる試験片の図、
図6(B)は、接着材の試験片の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0010】
[1.第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る自動材料試験機1の概略正面図である。
図2は、試験装置30の要部を示す
図1の拡大図である。
本実施形態の試験機の一例としての自動材料試験機1は、試験片Tに対して、せん断方向に試験荷重の試験力を付与することにより、試験片Tのせん断力を自動で測定する試験機である。
【0011】
自動材料試験機1は、試験片供給装置10と、試験装置30と、試験片回収装置50と、制御装置100と、備える。
【0012】
試験片供給装置10は、試験装置30に試験片Tを供給する。試験片供給装置10は、試験に供する複数の試験片Tを収容する収容機構11と、収容機構11から試験片Tを取り出す取出機構12とを備える。取出機構12は、例えば、吸着パッドなどを備えたロボットアームで構成される。取出機構12は、収容機構11に収容された試験片Tを吸着パッドなどにより一片ずつ取り出して保持し、試験装置30に搬送、供給する。取出機構12は、試験片Tを試験装置30の所定位置にセットする。
【0013】
試験装置30は、試験片供給装置10から供給された試験片Tに試験荷重を付与して試験片Tを試験する。
試験装置30は、台座31を有する。台座31の上部にはテーブル32が設けられている。テーブル32には、鉛直方向上方に延びる支柱33が立設されている。支柱33は、自動材料試験機1の幅方向に一対設けられている。支柱33の上部には、一対の支柱33の間に延びるクロスヨーク34が架け渡されている。支柱33の内部には、図示しないねじ棒が設けられている。ねじ棒はボールネジで構成されている。ねじ棒には、クロスヘッド35の両端が図示しないナットを介して連結されている。クロスヘッド35は、ねじ棒の回転によりテーブル32に対して昇降する。なお、ねじ棒は、図示しないモータにより回転駆動される。
【0014】
クロスヘッド35には、ロードセル36が設置されている。ロードセル36には、継手37が取り付けられる。継手37は、下方に延びている。継手37の下端には、上チャック38が接続されている。上チャック38には、不図示のシリンダ装置が配置されている。不図示のシリンダ装置が作動することにより、上チャック38は開閉される。上チャック38には、試験片Tの上端が把持される(
図2参照)。なお、
図2では、区別がつき易いように、試験片Tにハッチングを付して図示している。
【0015】
上チャック38の下方には、下チャック39が配置される。下チャック39は、接手40を介してテーブル32の上面に固定される。下チャック39は、上下対称な点以外は、上チャック38と同様に構成される。下チャック39には、試験片Tの下端が把持される(
図2参照)。試験片Tは、上チャック38と下チャック39の把持位置に基づく仮想的な基準位置線L上に配置される。
【0016】
上チャック38及び下チャック39により試験片Tが把持された状態で、上チャック38がクロスヘッド35と共に昇降する。これにより、上チャック38と下チャック39との間に把持された試験片Tには、引張荷重又は圧縮荷重の試験力が付与される。この際に、ロードセル36は、継手37を介して、上チャック38が付与する試験力を計測する。ロードセル36の計測信号は制御装置100に入力される。
【0017】
上チャック38および下チャック39の右側には、試験片回収装置50が配置されている。試験片回収装置50は、試験装置30から試験片Tを回収する。
試験片回収装置50は、上チャック38に対応して設けられた上部回収装置51と、下チャック39に対応して設けられた下部回収装置81とを備える。
【0018】
図3は、上部回収装置51を示す
図1の拡大図である。
図4は、上部回収装置51の底面図である。
上部回収装置51は、試験片Tを回収する回収機構52と、回収機構52を上チャック38が把持した試験片Tに対向可能に支持する支持機構53とを備える。
支持機構53は、上下方向に延びる固定部材54を備える。固定部材54は、クロスヘッド35に固定されている。固定部材54はクロスヘッド35と共に昇降可能であり、上チャック38に対する相対的な高さが一定に保持される。固定部材54の下端には、電動モータ(駆動源)55が支持される。電動モータ55は、上下方向に延びる駆動軸55Aを備える。駆動軸55Aには、水平方向に延びる板状の試験片回収アーム56が支持される。
【0019】
電動モータ55は、正逆駆動可能に構成されている。電動モータ55が正逆駆動することにより、試験片回収アーム56が駆動軸55Aを回動中心として正逆回動する。これにより、支持機構53では回収機構52が上チャック38に対向する回収位置(
図4の実線)と、回収機構52が上チャック38から退避する退避位置(
図4の破線)との間を移動する。
固定部材54と、電動モータ55と、試験片回収アーム56とにより、本実施形態の支持機構53が構成される。
なお、本実施形態では、電動モータ55が駆動源の構成を説明するが、これに代えて、駆動源としては、図示しないエア供給装置で駆動する回転式のエアシリンダでもよい。そして、固定部材54と、回転式のエアシリンダと、試験片回収アーム56とにより、支持機構が構成されてもよい。
【0020】
試験片回収アーム56の先端には、回収機構52が支持される。回収機構52は、つかみ具71、72を開閉可能に支持する摺動支持部材(支持部材)60を有する。
摺動支持部材60は、試験片回収アーム56の下面に固定される。摺動支持部材60は、回収位置において左右方向(開閉方向)に延びる柱状の支持ロッド61、62を有する。支持ロッド61、62は、前後一対配置されている。後側(試験片T側)の支持ロッド62は、前側(試験片Tから離間した側)の支持ロッド61よりも長く形成されている。一対の支持ロッド61、62は、左右方向中央部(長手方向中央部)でブリッジ63に接続されている。ブリッジ63は前後方向に延びている。ブリッジ63は、回収位置に移動した場合に、正面視で試験装置30の基準位置線Lに重なるように配置されている。ブリッジ63の前後両端には、試験片回収アーム56に向かって延びる柱状の脚部64、65が形成されている。脚部64、65は、試験片回収アーム56に固定されている。よって、摺動支持部材60は、試験片回収アーム56に吊り下がったように固定されている。
【0021】
ブリッジ63を境界にして、支持ロッド61、62は二分される。すなわち、支持ロッド61、62には、ブリッジ63よりも開閉方向第一側の一端部(第一部)61A、62Aと、開閉方向第二側の他端部(第二部)61B、62Bとが形成される。
【0022】
支持ロッド61、62には、試験片Tを把持する一対のつかみ具71、72が摺動可能に支持される。支持ロッド61、62の一端部61A、62Aには、第1のつかみ具71が配置される。支持ロッド61、62の他端部61B、62Bには、第2のつかみ具72が配置される。
【0023】
各つかみ具71、72はブリッジ63を挟んで対称に形成されている。つかみ具71、72は屈曲した板状である。つかみ具71、72は、互いに並行に配置される基部71A、72Aと、基部71A、72Aの後端に形成され後方に進むに連れて互いに接近するように傾斜する接続部71B、72Bと、接続部71B、72Bの後端に形成され直線状に延びる先端部71C、72Cとを備える。
【0024】
つかみ具71、72の基部71A、72Aには、厚み方向に貫通する前後一対の貫通孔71D、72D、71E、72Eが形成されている。前側の貫通孔71D、72Dには、前側の支持ロッド61が挿通される。また、後側の貫通孔71E、72Eには、後側の支持ロッド62が挿通される。
【0025】
後側の支持ロッド62の左右外端には、抜け止め66、67が形成されている。抜け止め66、67は、例えば、フランジ付きナットであり、支持ロッド62の外端に形成された螺子山に螺子止めすることにより形成可能である。これにより、つかみ具71、72を支持ロッド62に装着した後に、ナットを螺子止めして、抜け止め66、67を形成可能である。
支持ロッド61、62、ブリッジ63、脚部64、65、抜け止め66、67により、本実施形態の摺動支持部材60が構成されている。
【0026】
つかみ具71、72の基部71A、72Aには、後側の支持ロッド62に対応して左右方向外側に突出する突出部71F、72Fが形成されている。突出部71F、72Fが抜け止め66、67に接触することにより、つかみ具71、72が支持ロッド61、62に対して抜け止めされる。また、突出部71F、72Fが抜け止め66、67に接触することにより、つかみ具71、72同士が所定の間隔だけ離間した状態となる。所定の間隔は、つかみ具71、72が回収位置に移動する際に試験片Tに接触しない間隔であり、例えば、試験片Tの左右方向の厚みW0(
図2参照)にマージンを加えた間隔に設定される。
【0027】
回収機構52は、シリンダ装置の一例としてのエアシリンダ73を備える。エアシリンダ73は、シリンダ本体(シリンダ装置本体)74と、シリンダ本体74に伸縮可能に支持されたピストンロッド75とを備える。エアシリンダ73は、摺動支持部材60と、試験片回収アーム56とに囲まれた空間に配置される。すなわち、エアシリンダ73は、摺動支持部材60のブリッジ63と、脚部64、65と、試験片回収アーム56とに囲まれた空間を貫通した状態で配置される。シリンダ本体74は、第1のつかみ具71に固定される。また、ピストンロッド75は、第2のつかみ具72に固定される。これにより、エアシリンダ73は、つかみ具71、72上に固定され、つかみ具71、72を介して支持ロッド61、62に摺動可能に支持される。つかみ具71、72には、支持ロッド61、62の間でエアシリンダ73から力が作用するため、つかみ具71、72の摺動時の姿勢を安定させることができる。
【0028】
エアシリンダ73のシリンダ本体74は第1のつかみ具71と共に支持ロッド61、62に沿って左右方向に移動可能である。また、ピストンロッド75は第2のつかみ具72と共に支持ロッド61、62に沿って左右方向に移動可能である。本実施形態では、エアシリンダ73により駆動機構76が構成される。よって、駆動機構76は、つかみ具71、72が開閉する左右方向に、つかみ具71、72を介して試験片回収アーム56に対して移動可能に支持される。駆動機構76はシリンダ装置73で構成されるため、試験片回収アーム56に支持される駆動機構76を小型化し易くできる。特に、シリンダ装置73は、エアシリンダ73であるため、油圧シリンダよりも軽量化することができる。
【0029】
図示しないエア供給装置が駆動してエアシリンダ73が作動することにより、第1のつかみ具71と第2のつかみ具72とは、試験片Tをつかむつかみ位置と、互いに離間して抜け止め66、67に接触する開放位置との間を移動可能である。
【0030】
図1において、下部回収装置81は、上部回収装置51に対応して、回収機構52に対応する回収機構82と、支持機構53に対応する支持機構83とを備える。下部回収装置81は、上部回収装置51と上下逆に配置され、支持機構83の固定部材84がテーブル32の上面に固定されている点以外は、上部回収装置51と同様に構成される。下部回収装置81は、下チャック39に対する相対的な高さが一定に保持される。
【0031】
自動材料試験機1には、自動材料試験機1の各部を制御する制御装置100が並置されている。制御装置100は、自動材料試験機1を中枢的に制御する装置であり、自動材料試験機1との間で信号を送受信可能に接続される。
制御装置100が自動材料試験機1から受信する信号は、ロードセル36が出力する計測信号や、制御や試験に要する適宜の信号である。
制御装置100が自動材料試験機1へ送信する信号は、チャック38、39の図示しないシリンダ装置の制御信号や、図示しないネジ棒のモータの制御信号、試験片供給装置10の制御信号、つかみ具71、72のエアシリンダ73の制御信号、回収機構52、82の電動モータ55の制御信号、その他の制御や試験に要する適宜の信号である。
【0032】
制御装置100はコンピュータを備え、このコンピュータは、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)などのプロセッサと、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリデバイスと、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などのストレージ装置と、制御装置100や各種の周辺機器などを接続するためのインターフェース回路と、を備える。そして、プロセッサがメモリデバイス又はストレージ装置に記憶されたコンピュータプログラムを実行することで、自動材料試験機1の各種の機能を実現する。
【0033】
本実施形態では、制御装置100は、試験片回収装置50の上部回収装置51を制御する。制御装置100は、つかみ具71、72を開放位置に移動させた状態で、回収機構52を退避位置に保持する。制御装置100は、試験装置30により試験片Tの試験が終了した場合に、上部回収装置51の回収機構52を回収位置に移動させる。制御装置100は、回収機構52を回収位置に移動させると、つかみ具71、72をつかみ位置に移動させる。制御装置100は、つかみ具71、72をつかみ位置に移動させると、上チャック38を開放させる。制御装置100は、上チャック38を開放させると、上部回収装置51の回収機構52を退避位置に移動させて、上チャック38に把持された破断後の試験片Tを回収させる。制御装置100は、回収機構52を退避位置に移動させると、つかみ具71、72を開放位置に移動させて、破断後の試験片Tを図示しない容器に落下させて破棄させる。
制御装置100は、試験片回収装置50の下部回収装置81を同様に制御して、下チャック39に把持された試験片Tを回収、破棄させる。
【0034】
次に、本実施形態の作用を説明する。
自動材料試験機1において、接着材T0のせん断力を測定する試験片Tをセットする場合について説明する。すなわち、本実施形態の自動材料試験機1では、接着材T0で接着された一対の試験片材料T1、T2を試験片Tとし、この試験片Tに対して接着面のせん断方向に引張荷重の試験力を付与して、接着材T0にかかるせん断力を一対の試験片材料T1、T2の反力として計測する。接着材T0は、例えば、接着剤、両面テープなどの接着材で構成される。試験片材料T1、T2は、板状であり、例えば、金属、樹脂などの試験片材料で構成される。
【0035】
自動材料試験機1では、試験開始の入力があると、試験片供給装置10から試験片Tが試験装置30に供給される。試験装置30では、不図示のシリンダ装置が駆動されてチャック38、39が開閉され、供給された試験片Tが試験装置30のチャック38、39にセットされる。
【0036】
すなわち、上チャック38で第1の試験片材料T1(
図2参照)の上端が把持され、下チャック39で第2の試験片材料T2(
図2参照)の下端が把持される。上チャック38と下チャック39で把持された試験片Tの中心軸L0は、試験装置30の基準位置線Lに保持される。試験装置30では、試験片Tがセットされると、クロスヘッド35が一定速度で上昇し、上チャック38と下チャック39との間の試験片Tに対して引張荷重が作用する。
【0037】
引張荷重はロードセル36により計測されており、接着材T0のせん断力が計測され、計測信号が制御装置100に送信される。引張荷重により試験片Tが破断すると、クロスヘッド35の上昇が停止して、試験片Tに対する試験が終了する。
【0038】
クロスヘッド35の上昇が停止すると、試験片回収装置50が作動する。試験片回収装置50では、つかみ具71、72が開放位置に保持された状態で、試験片回収アーム56が退避位置から回収位置に移動する。
【0039】
図5は、第1実施形態のつかみ具71、72の作用説明図であり、
図5(A)は、つかみ具71、72が開放位置に移動した状態を示す図、
図5(B)は、第1のつかみ具71が試験片Tに接触した状態を示す図、
図5(C)は、つかみ具71、72がつかみ位置に移動した状態を示す図である。
回収機構52が回収位置に移動する際に、つかみ具71、72は開放位置に移動しているため、つかみ具71、72は試験片Tに接触せずに試験片Tの左右両側に進入する。よって、
図5(A)に示すように、つかみ具71、72は、破断した試験片Tの両側に配置される。
【0040】
この状態でエアシリンダ73が作動すると、シリンダ本体74に対してピストンロッド75がひきつけられ、第1のつかみ具71および第2のつかみ具72が互いに接近する。この際に、
図5(B)に示すように、第1のつかみ具71が試験片Tの左面(第1側の面)に当接すると、第1のつかみ具71の移動が規制されて、第2のつかみ具72のみが移動可能となる。よって、第2のつかみ具72のみが、第1のつかみ具71に接近、移動して、つかみ具71、72のつかみ中心Laを試験片Tの位置に合わせるように、第2のつかみ具72が第1のつかみ具71に相対的に接近する。
【0041】
そして、
図4(C)に示すように、第2のつかみ具72が試験片Tの右面(第2側の面)に当接すると、第1のつかみ具71と第2のつかみ具72とにより試験片Tがつかみ中心Laで挟まれてつかまれる。なお、つかみ具71、72と支持ロッド61,62の摺動抵抗や試験片Tの形状によっては、第2のつかみ具72が試験片Tの右面(第1側の面)に当接した後に、第1のつかみ具71が試験片Tの左面(第2側の面)に当接して、つかみ具71、72により試験片Tが挟まれてつかまれる場合もある。
【0042】
そして、チャック38、39が開放された後に、試験片回収装置50では、つかみ具71、72がつかみ位置に保持された状態で、試験片回収アーム56が回収位置から退避位置に移動し、つかみ具71、72が開放位置に移動する。よって、試験片Tがチャック38、39より自動で取り出され、破棄される。
【0043】
図6は、チャック38、39に把持された試験片Tの位置関係を説明する図であり、
図6(A)は、一様に延びる試験片Tの図、
図6(B)は、接着材T0の試験片Tの図である。
一般に、材料試験機では、一体物である平板や丸棒などを試験片とすることが多い。このため、試験片Tの厚さや径などの大きさは様々であっても、
図6(A)に示すように、軸方向に沿った試験片Tの中心軸L0の位置は変わらず、試験片Tは、破断前後で、材料試験機の基準位置線L上に保持される。また、試験片Tの厚みWも一様である。
本実施形態では、つかみ具71、72が開放位置に移動すると抜け止め66、67に接触して、つかみ中心Laがブリッジ63上に再設定される。よって、試験片回収アーム56が回収位置に移動する場合に、つかみ具71、72のつかみ中心Laが基準位置線Lに対応する位置に移動するため、本実施形態のつかみ具71、72でも、
図6(A)に示す試験片Tをつかむことができる。
【0044】
また、接着材T0のせん断力を測定する試験片Tでは、
図6(B)に示すように、試験片材料T1、T2のそれぞれの中心軸L1、L2は、試験片の中心軸L0からずれており、基準位置線Lからずれている。
本実施形態では、つかみ具71、72が回収位置に移動すると、つかみ中心Laが基準位置線Lに対応する位置に移動する一方で、試験片材料T1、T2の中心軸L1、L2からはずれている。しかしながら、つかみ具71、72がつかみ位置に移動する際に、一方のつかみ具71、72が試験片Tに当接することにより、つかみ中心Laを試験片材料T1、T2の位置に合わせながら、つかみ具71、72が相対的に、接近、移動可能である。よって、試験片Tの形状に応じて、つかみ中心Laの位置を変えることができるため、破断後の試験片T、すなわち、試験片材料T1、T2をつかむことができる。
【0045】
したがって、本実施形態では、試験片Tの厚み方向の形状に関わらずつかみ易く、様々な形状の試験片を、自動で安定して取り出し易くなっている。
【0046】
本実施形態によれば、次のような効果を奏する。
【0047】
本実施形態の自動材料試験機1は、試験装置30から試験片Tを回収する試験片回収装置50を備える自動材料試験機1であって、試験片回収装置50は、支持機構53、83と、支持機構53、83に支持された回収機構52、82と、を備え、回収機構52、82は、摺動支持部材60と、摺動支持部材60に支持されて試験片Tをつかむ一対のつかみ具71、72と、つかみ具71、72を開閉可能に駆動する駆動機構76とを備え、駆動機構76が駆動する際に、いずれかのつかみ具71、72が試験片Tの第1側から当接した後に、別のつかみ具72、71が試験片Tの第2側から当接可能に構成されている。
したがって、つかみ具71、72が試験片Tをつかむ際に、試験片Tに対する当接位置に応じてつかみ具71、72同士の中心(つかみ中心)Laを移動させながら、つかみ具71、72でつかむことができ、様々な形状の試験片Tを、自動で安定して取り出すことができる。
【0048】
本実施形態では、摺動支持部材60は、つかみ具71、72が開閉移動する開閉方向に延びる支持ロッド61、62を備え、支持機構53、83は、試験片回収アーム56を備え、試験片回収アーム56の先端には、支持ロッド61、62が支持され、支持ロッド61、62には、一対のつかみ具71、72が摺動自在に支持され、駆動機構76は、一対のつかみ具71、72を開閉するシリンダ装置73を備え、シリンダ装置73は、シリンダ本体74と、シリンダ本体74に伸縮可能に支持されたピストンロッド75とを備え、シリンダ本体74は、第1のつかみ具71、72に固定され、ピストンロッド75は第2のつかみ具72、71に固定されている。
したがって、駆動機構76をシリンダ装置73で構成して、試験片回収アーム56に支持される駆動機構を小型化し易くできる。
【0049】
また、本実施形態では、支持ロッド61、62は一対であり、一対の支持ロッド61、62はピストンロッド75の幅方向の両側に配置されている。
したがって、一対の支持ロッド61、62によりつかみ具71、72を安定して摺動可能に支持することができると共に、一対の支持ロッド61、62の間でシリンダ装置73からつかみ具71、72に力を作用させることができるため、つかみ具71、72の摺動時の姿勢を安定させることができる。
【0050】
また、本実施形態では、シリンダ装置73はエアシリンダ73である。
したがって、シリンダ装置73をエアシリンダ73で構成して、試験片回収アーム56に支持される回収機構52を軽量化し易くできる。
【0051】
また、本実施形態の試験片回収装置50は、試験装置30から試験片Tを回収する試験片回収装置50であって、支持機構53、83と、支持機構53、83に支持された回収機構52、82と、を備え、回収機構52、82は、摺動支持部材60と、摺動支持部材60に支持されて試験片Tをつかむ一対のつかみ具71、72と、つかみ具71、72を開閉可能に駆動する駆動機構76とを備え、駆動機構76が駆動する際に、いずれかのつかみ具71、72が試験片Tの第1側から当接した後に、別のつかみ具72、71が試験片Tの第2側から当接可能に構成されている。
したがって、つかみ具71、72が試験片Tをつかむ際に、試験片Tに対する当接位置に応じてつかみ具71、72同士の中心Laを移動させながら、つかみ具71、72でつかむことができ、様々な形状の試験片Tを、自動で安定して取り出すことができる。
【0052】
[2.変形例]
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を例示するものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形、および応用が可能である。
【0053】
上述した第1実施形態において、シリンダ装置としてエアシリンダ73を説明したが油圧シリンダでもよい。
上述した第1実施形態において、駆動機構76として、エアシリンダ73を説明したが、駆動機構76としてはソレノイドでもよい。また、駆動機構76としてはラックアンドピニオンと電動モータでもよい。
【0054】
上述した第1実施形態において、摺動支持部材60は、つかみ具71、72を摺動可能に支持し、駆動機構76がつかみ具71、72に支持される構成を説明した。しかし、摺動支持部材60が、駆動機構76を摺動可能に支持し、駆動機構76につかみ具71、72が支持されてもよく、摺動支持部材60が駆動機構76を介してつかみ具、71、72を支持する構成でもよい。
【0055】
摺動支持部材60が支持ロッド61、62を備える構成を説明したが、レール上を摺動可能に移動して支持する部材でもよい。
【0056】
上述した第1実施形態において、支持ロッド61、62が一対設けられた構成を説明したが、一つでもよいし、また、三つ以上でもよい。
【0057】
上述した例示的な実施形態、及び変形例は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0058】
(第1項)
一態様に係る試験機は、試験装置から試験片を回収する試験片回収装置を備える試験機であって、前記試験片回収装置は、支持機構と、前記支持機構に支持された回収機構と、を備え、前記回収機構は、支持部材と、前記支持部材に支持されて試験片をつかむ一対のつかみ具と、前記つかみ具を開閉可能に駆動する駆動機構とを備え、前記駆動機構が駆動する際に、いずれかの前記つかみ具が試験片の第1側から当接した後に、別の前記つかみ具が試験片の第2側から当接可能に構成されていてもよい。
【0059】
第1項に記載の試験機によれば、つかみ具が試験片をつかむ際に、試験片に対する当接位置に応じてつかみ具同士の中心を移動させながら、つかみ具でつかむことができ、様々な形状の試験片を、自動で安定して取り出すことができる。
【0060】
(第2項)
第1項に記載の試験機において、前記支持部材は、前記つかみ具の開閉方向に延びる支持ロッドを備え、前記支持機構は、試験片回収アームを備え、前記試験片回収アームの先端には、前記支持ロッドが支持され、前記支持ロッドには、前記一対のつかみ具が摺動自在に支持され、前記駆動機構は、前記一対のつかみ具を開閉するシリンダ装置を備え、前記シリンダ装置は、シリンダ本体と、前記シリンダ本体に伸縮可能に支持されたピストンロッドとを備え、前記シリンダ本体は、第1のつかみ具に固定され、前記ピストンロッドは第2のつかみ具に固定されてもよい。
【0061】
第2項に記載の試験機によれば、駆動機構をシリンダ装置で構成して、試験片回収アームに支持される駆動機構を小型化し易くできる。
【0062】
(第3項)
第2項に記載の試験機において、前記支持ロッドは一対であり、一対の支持ロッドは前記ピストンロッドの幅方向の両側に配置されてもよい。
【0063】
第3項に記載の試験機によれば、一対の支持ロッドによりつかみ具を安定して摺動可能に支持することができると共に、一対の支持ロッドの間でシリンダ装置からつかみ具に力を作用させることができるため、つかみ具の摺動時の姿勢を安定させることができる。
【0064】
(第4項)
第2項又は第3項に記載の試験機において、前記シリンダ装置はエアシリンダであってもよい。
【0065】
第4項に記載の試験機によれば、シリンダ装置をエアシリンダで構成して、試験片回収アームに支持される回収機構を軽量化し易くできる。
【0066】
(第5項)
一態様に係る試験片回収装置は、試験装置から試験片を回収する試験片回収装置であって、支持機構と、前記支持機構に支持された回収機構と、を備え、前記回収機構は、支持部材と、前記支持部材に支持されて試験片をつかむ一対のつかみ具と、前記つかみ具を開閉可能に駆動する駆動機構とを備え、前記駆動機構が駆動する際に、いずれかの前記つかみ具が試験片の第1側から当接した後に、別の前記つかみ具が試験片の第2側から当接可能に構成されていてもよい。
【0067】
第5項に記載の試験片回収装置によれば、つかみ具が試験片をつかむ際に、試験片に対する当接位置に応じてつかみ具同士の中心を移動させながら、つかみ具でつかむことができ、様々な形状の試験片を、自動で安定して取り出すことができる。
【符号の説明】
【0068】
1 自動材料試験機(試験機)
30 試験装置
50 試験片回収装置
52、82 回収機構
53、83 支持機構
56 試験片回収アーム
60 摺動支持部材(支持部材)
61、62 支持ロッド
71、72 つかみ具
73 エアシリンダ(シリンダ装置)
74 シリンダ本体
75 ピストンロッド
76 駆動機構
T 試験片