(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】電磁継電器
(51)【国際特許分類】
H01H 50/36 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
H01H50/36 K
(21)【出願番号】P 2020198098
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100206760
【氏名又は名称】黒川 惇
(72)【発明者】
【氏名】塚田 尭
(72)【発明者】
【氏名】岩坂 博之
(72)【発明者】
【氏名】箕輪 亮太
(72)【発明者】
【氏名】西田 剛
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】実公昭41-017946(JP,Y1)
【文献】特開平10-125200(JP,A)
【文献】実開平04-074831(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 45/00 - 45/14
H01H 50/00 - 50/92
H01F 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動鉄片と
筒状のスプールと、前記スプールに巻回されたコイルと、前記スプールの内側に配置された固定鉄心と、前記固定鉄心に連結され前記コイルの少なくとも一部を囲むヨークとを含み、電磁力によって前記可動鉄片を回動させる電磁石部と、
前記可動鉄片を前記ヨークから離れる方向に付勢する付勢部材と、
を備え、
前記固定鉄心は、前記可動鉄片の回動支点が設けられる第1磁極端部を含み、
前記ヨークは、前記電磁力によって前記可動鉄片を吸着する第2磁極端部を含み、
前記回動支点は、前記第1磁極端部において、前記第2磁極端部から遠い側に設けられ、
前記第2磁極端部は、前記可動鉄片に当接可能な当接部を含み、
前記当接部は、前記第2磁極端部において、前記第1磁極端部から遠い側に設けられており、前記可動鉄片に向かって突出する少なくとも1つの突起であり、前記可動鉄片との当接時において、前記可動鉄片と線接触又は点接触する、
電磁継電器。
【請求項2】
可動鉄片と
筒状のスプールと、前記スプールに巻回されたコイルと、前記スプールの内側に配置された固定鉄心と、前記固定鉄心に連結され前記コイルの少なくとも一部を囲むヨークとを含み、電磁力によって前記可動鉄片を回動させる電磁石部と、
前記可動鉄片を前記ヨークから離れる方向に付勢する付勢部材と、
を備え、
前記固定鉄心は、前記可動鉄片の回動支点が設けられる第1磁極端部を含み、
前記ヨークは、前記電磁力によって前記可動鉄片を吸着する第2磁極端部を含み、
前記回動支点は、前記第1磁極端部において、前記第2磁極端部から遠い側に設けられ、
前記第2磁極端部は、前記可動鉄片に当接可能な当接部を含み、
前記可動鉄片は、前記第
2磁極端部に向かって突出する少なくとも1つの突起を含み、
前記第2磁極端部の前記当接部は、前記第2磁極端部において、前記第1磁極端部から遠い側に設けられており、前記可動鉄片との当接時において、前記可動鉄片の突起と線接触又は点接触する、
電磁継電器。
【請求項3】
可動鉄片と
筒状のスプールと、前記スプールに巻回されたコイルと、前記スプールの内側に配置された固定鉄心と、前記固定鉄心に連結され前記コイルの少なくとも一部を囲むヨークとを含み、電磁力によって前記可動鉄片を回動させる電磁石部と、
前記可動鉄片を前記ヨークから離れる方向に付勢する付勢部材と、
を備え、
前記固定鉄心は、前記可動鉄片の回動支点が設けられる第1磁極端部を含み、
前記ヨークは、前記電磁力によって前記可動鉄片を吸着する第2磁極端部を含み、
前記回動支点は、前記第1磁極端部において、前記第2磁極端部から遠い側に設けられ、
前記第2磁極端部は、前記可動鉄片に当接可能な当接部と、前記当接部から前記第1磁極端部に近い側に向かって傾斜する斜面とを含み、
前記当接部は、前記第2磁極端部において、前記第1磁極端部から遠い側に設けられている、
電磁継電器。
【請求項4】
可動鉄片と
筒状のスプールと、前記スプールに巻回されたコイルと、前記スプールの内側に配置された固定鉄心と、前記固定鉄心に連結され前記コイルの少なくとも一部を囲むヨークとを含み、電磁力によって前記可動鉄片を回動させる電磁石部と、
前記可動鉄片を前記ヨークから離れる方向に付勢する付勢部材と、
を備え、
前記固定鉄心は、前記可動鉄片の回動支点が設けられる第1磁極端部を含み、
前記ヨークは、前記電磁力によって前記可動鉄片を吸着する第2磁極端部を含み、
前記回動支点は、前記スプールから第1方向に突出した位置に配置され、前記第1磁極端部において、前記第2磁極端部から遠い側に設けられ、
前記第2磁極端部は、前記可動鉄片に当接可能な当接部を含み、
前記当接部は、前記スプールに対して前記可動鉄片の前記回動支点よりも前記第1方向に突出した位置に配置され、前記第2磁極端部において、前記第1磁極端部から遠い側に設けられている、
電磁継電器。
【請求項5】
可動鉄片と
筒状のスプールと、前記スプールに巻回されたコイルと、前記スプールの内側に配置された固定鉄心と、前記固定鉄心に連結され前記コイルの少なくとも一部を囲むヨークとを含み、電磁力によって前記可動鉄片を回動させる電磁石部と、
前記可動鉄片を前記ヨークから離れる方向に付勢する付勢部材と、
を備え、
前記固定鉄心は、前記可動鉄片の回動支点が設けられる第1磁極端部を含み、
前記ヨークは、前記電磁力によって前記可動鉄片を吸着する第2磁極端部を含み、
前記回動支点は、前記第1磁極端部において、前記第2磁極端部から遠い側に設けられるとともに前記スプールから最も突出しており、
前記第2磁極端部は、前記可動鉄片に当接可能な当接部を含み、
前記当接部は、前記第2磁極端部において、前記第1磁極端部から遠い側に設けられており、
前記第1磁極端部は、前記回動支点から前記第2磁極端部に近い側に向かって傾斜する斜面を含む、
電磁継電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒンジ型の電磁継電器において、2つの磁極端部を有するU字型のヨークを備えた電磁継電器が知られている(特許文献1参照)。ヨークは、固定鉄心を兼ねた構成であり、2つの磁極端部のうち、一方は、可動鉄片のヒンジ支点として、他方は可動鉄片の吸着面として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
引用文献1に開示された電磁継電器では、可動鉄片の吸着面として機能する磁極端部に可動鉄片が吸着されたときに、ヨークの磁極端部と可動鉄片とが面接触するため、ヨークの磁極端部と可動鉄片との箇所が安定しない。
【0005】
本発明の課題は、可動鉄片を吸着する磁極端部がヨークに設けられる電磁継電器において、ヨークと可動鉄片との当接箇所の安定化を図ることにある。
【0006】
本発明の一態様に係る電磁継電器は、可動鉄片と、電磁石部と、付勢部材とを備える。電磁石部は、電磁力によって可動鉄片を回動させる。電磁石部は、スプールと、コイルと、固定鉄心と、ヨークとを含む。スプールは、筒状である。コイルは、スプールに巻回されている。固定鉄心は、スプールの内側に配置されている。ヨークは、固定鉄心に連結されコイルの少なくとも一部を囲む。付勢部材は、可動鉄片をヨークから離れる方向に付勢する。固定鉄心は、可動鉄片の回動支点が設けられる第1磁極端部を含む。ヨークは、電磁力によって可動鉄片を吸着する第2磁極端部を含む。可動鉄片の回動支点は、第1磁極端部において、第2磁極端部から遠い側に設けられる。第2磁極端部は、可動鉄片に当接可能な当接部を含む。当接部は、第2磁極端部において、第1磁極端部から遠い側に設けられている。
【0007】
この電磁継電器では、可動鉄片に当接可能な当接部が、第2磁極端部において第1磁極端部から遠い側に設けられるので、可動鉄片と当接部との当接箇所の安定化を図ることができる。また、第2磁極端部において可動鉄片の回動支点から近い側に当接部が設けられる場合に比べて、小さな吸着力で接点部に大きな荷重をかけることができる。また、可動鉄片と当接部との接触面積が減少するので、電磁継電器の復帰時において可動鉄片が当接部から離反し易くなる。また、可動鉄片の回動支点は、第1磁極端部において、第2磁極端部から遠い側に設けられるので、第1磁極端部が可動鉄片を吸着する吸着力は、可動鉄片がヨークに近づく方向に作用し、電磁継電器の動作に有利に働く。
【0008】
第2磁極端部の当接部は、可動鉄片に向かって突出する少なくとも1つの突起であり、可動鉄片との当接時において、可動鉄片と線接触又は点接触してもよい。この場合は、この場合は、可動鉄片とヨークとの当接箇所がより安定する。
【0009】
可動鉄片は、第2磁極端部に向かって突出する少なくとも1つの突起を含んでもよい。第2磁極端部の当接部は、可動鉄片との当接時において、可動鉄片の突起と線接触又は点接触してもよい。この場合は、可動鉄片とヨークとの当接箇所がより安定する。
【0010】
第2磁極端部は、当接部から第1磁極端部に近い側に向かって傾斜する斜面を含んでもよい。この場合は、当接部を簡単な構成で形成することができる。
【0011】
可動鉄片の回動支点は、スプールから第1方向に突出した位置に配置されてもよい。第2磁極端部の当接部は、スプールに対して可動鉄片の回動支点よりも第1方向に突出した位置に配置されてもよい。この場合は、例えば、第1磁極端部を平坦面で構成することができるので、電磁継電器の動作において、第1磁極端部が可動鉄片を吸着する吸着力が高くなる。
【0012】
回動支点は、第1磁極端部において前記スプールから最も突出してもよい。第1磁極端部は、回動支点から第2磁極端部に近い側に向かって傾斜する斜面を含んでもよい。この場合は、例えば、回動支点を当接部よりも高い位置に配置することが可能になるので、可動鉄片の回動によって可動鉄片が他の部材を押圧するときにおいて、可動鉄片の押圧位置がずれることを抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、可動鉄片を吸着する磁極端部がヨークに設けられる電磁継電器において、ヨークと可動鉄片との当接箇所の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図10】変形例に係る電磁石部の断面模式図である。
【
図11】変形例に係る電磁石部の断面模式図である。
【
図12】変形例に係る電磁石部の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一態様に係る電磁継電器の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面を参照するときにおいて、説明を分かり易くするために
図1における上側を「上」、下側を「下」、左側を「左」、右側を「右」、紙面の手前側を「前」、紙面の奥側を「後」として説明する。
図1は電磁継電器100の内部を前方から見た模式図である。
【0016】
図1は、電磁継電器100の断面模式図である。電磁継電器100は、いわゆるヒンジ型の電磁継電器である。電磁継電器100は、ベース2と、接点装置3と、電磁石部4と、ヒンジバネ5と、可動鉄片11とを備えている。ベース2は、樹脂などの絶縁性を有する材料で形成されている。ベース2は、接点装置3及び電磁石部4を支持している。接点装置3及び電磁石部4は、ベース2に取り付けられる図示しないケースに収容される。
【0017】
図2は、接点装置3周辺の断面を右方から見た断面模式図である。接点装置3は、第1固定端子6と、第2固定端子7と、可動接触片8と、可動部材9と、復帰バネ10とを含む。第1固定端子6、第2固定端子7及び可動接触片8は、板状の端子であり、銅などの導電性を有する材料で形成されている。
【0018】
第1固定端子6は、略L字形状の端子である(
図1参照)。第1固定端子6は、略U字形状の端子であってもよい。第1固定端子6は、ベース2に支持されている。
【0019】
第1固定端子6は、第1接点支持部6aと、第1固定接点6bと、外部接続部6cとを含む。第1接点支持部6aは、左右方向に延びている。第1固定接点6bは、第1接点支持部6aに配置されている。本実施形態では、第1固定接点6bは、第1固定端子6と別体であるが、第1固定端子6と一体であってもよい。外部接続部6cは、ベース2から下方向に突出しており、図示しない外部機器と電気的に接続される。
【0020】
第2固定端子7は、第1固定端子6と同様の形状である。第2固定端子7は、第1固定端子6と前後方向に離れた位置でベース2に支持されている。第2固定端子7は、第2接点支持部7aと、第2固定接点7bと、外部接続部7cとを含む。第2固定端子7の各構成は、第1固定端子6の各構成と同様であるため説明を省略する。
【0021】
可動接触片8は、前後方向に延びている。可動接触片8は、可動部材9に固定されている。可動接触片8は、第1固定端子6及び第2固定端子7の上方に配置されている。可動接触片8は、第1可動接点8aと、第2可動接点8bとを含む。第1可動接点8aは、第1固定接点6bと向かい合って配置されており、第1固定接点6bに接触可能である。第2可動接点8bは、第2固定接点7bと向かい合って配置されており、第2固定接点7bに接触可能である。本実施形態では、第1可動接点8a及び第2可動接点8bは、可動接触片8と別体であるが、可動接触片8と一体であってもよい。
【0022】
可動部材9は、上下方向に延びている。可動部材9は、上下方向に移動可能に設けられる。可動部材9の上下方向の移動は、ベース2に形成された凹部2aによって案内される。可動部材9は、樹脂などの絶縁性を有する材料で形成されている。本実施形態では、インサート成形によって可動部材9に可動接触片8が固定されている。したがって、可動部材9の上下方向の移動に伴い、可動接触片8は、可動部材9と一体的に移動する。
【0023】
復帰バネ10は、ベース2と可動部材9の間に配置され、可動部材9を上方に向けて付勢する。復帰バネ10は、可動部材9を介して、可動鉄片11を後述するヨーク44から離れる方向に付勢する。復帰バネ10は、ベース2の凹部2aに配置されている。
【0024】
図3は、電磁石部4の断面模式図である。電磁石部4は、電磁力によって可動鉄片11を回動させる。電磁石部4は、スプール41と、コイル42と、固定鉄心43と、ヨーク44とを含む。スプール41は、筒状である。スプール41は、ボビン41aと、1対のフランジ部41b,41cとを含む。ボビン41aは、上下方向に延びている。1対のフランジ部41b,41cは、外径がボビン41aの外径よりも大径である。フランジ部41bは、ボビン41aの上端に配置されている。フランジ部41cは、ボビン41aの下端に配置されている。コイル42は、スプール41のボビン41aの外周に巻回されている。
【0025】
固定鉄心43は、ボビン41aの内側に配置されている。本実施形態における固定鉄心43は、複数の板部材を積層して形成されている。固定鉄心43は、第1磁極端部43aを含む。第1磁極端部43aは、スプール41のフランジ部41bよりも上方に突出している。第1磁極端部43aは、固定鉄心43の上端部に形成されている。第1磁極端部43aは、平坦面43bと、角部43cとを含む。平坦面43bは、上方を向いており、可動鉄片11と向かい合っている。平坦面43bは、前方から見て左右方向に延びており、左端部を除いて可動鉄片11と上下方向に離れている。角部43cは、平坦面43bの左端に位置している。角部43cは、前後方向に延びており、可動鉄片11と線接触している。角部43cは、可動鉄片11の回動支点Pである。
【0026】
ヨーク44は、固定鉄心43に連結されている。ヨーク44は、コイル42の少なくとも一部を囲む。ヨーク44は、L字状に屈曲した形状を有している。詳細には、ヨーク44は、連結部44aと、起立部44bと、第2磁極端部44cとを含む。連結部44aは、ベース2に接触して配置されている。連結部44aには、固定鉄心43が固定されている。 起立部44bは、連結部44aの右端から上方に延びている。起立部44bは、コイル42の右方を覆う。
【0027】
第2磁極端部44cは、起立部44bの上端に形成されている。第2磁極端部44cは、電磁石部4の電磁力によって可動鉄片11を吸着する。第2磁極端部44cは、可動鉄片11の下方に配置されている。
【0028】
第2磁極端部44cは、可動鉄片11に当接可能な当接部44dと、斜面44eとを含む。当接部44dは、第2磁極端部44cにおいて、第1磁極端部43aから遠い側に設けられている。詳細には、当接部44dは、第2磁極端部44cにおいて第1磁極端部43aに最も近い内側角部44fよりも第1磁極端部43aから離れた外側に設けられている。当接部44dは、第2磁極端部44cの内側角部44fよりも右方に設けられている。本実施形態では、当接部44dは、第2磁極端部44cにおいて、第1磁極端部43aから左右方向に最も離れた位置に設けられている。
【0029】
当接部44dは、第2磁極端部44cにおいて、最も上方に突出している。当接部44dは、第1磁極端部43aよりも上方に位置する。当接部44dは、スプール41に対して回動支点Pよりも上方に突出した位置に配置されている。当接部44dは、R形状を有している。当接部44dは、前後方向に延びている。当接部44dは、当接部44dが可動鉄片11に当接した状態において、可動鉄片11と線接触する。
【0030】
斜面44eは、可動鉄片11の回動支点Pから第2磁極端部44cに近い側に向かって傾斜する。斜面44eの上端は、当接部44dに接続されている。本実施形態では、斜面44eは、前方から見て当接部44dから左下がりに傾斜している。
【0031】
回動支点Pは、第1磁極端部43aにおいて、第2磁極端部44cから遠い側に設けられている。回動支点Pは、第1磁極端部43aにおいて第2磁極端部44cに最も近い内側角部43dよりも外側に設けられている。本実施形態では、回動支点Pは、第1磁極端部43aにおいて、第2磁極端部44cから左右方向に最も離れた位置に設けられている。回動支点Pは、スプール41から上方に突出した位置に配置されている。
【0032】
図1に示すように、ヒンジバネ5は、可動鉄片11を回動可能に保持している。ヒンジバネ5は、可動鉄片11をヨーク44の第2磁極端部44cから離れる方向に付勢する。ヒンジバネ5の一部は、スプール41と固定鉄心43とで挟まれている。本実施形態におけるヒンジバネ5は、付勢部材の一例である。
【0033】
図1に示すように、可動鉄片11は、第1端11aがヒンジバネ5に連結されている。可動鉄片11は、第1端11aと反対側の第2端11bが可動部材9に連結されている。第1端11aは、第2端11bよりも下方に位置する。可動鉄片11は、前方から見たときに第1端11aから第2端11bに向かって右上がりに傾斜している。可動鉄片11は、板状の部材で構成されており、一部が第2磁極端部44cの上方に配置されている。可動鉄片11は、電磁力に応じて回動するときに固定鉄心43の角部43cを回動支点Pとして回動する。詳細には、
図3に示すように、可動鉄片11は、コイル42に電圧が印加されていない状態において、角部43cに接触している。可動鉄片11は、電磁力によって第2磁極端部44cに吸着されると、角部43cを支点として第2磁極端部44cに近づく方向に回動する。
図3では、可動鉄片11が第2磁極端部44cに吸着されて可動鉄片11が当接部44dに当接したときの状態を2点鎖線で示している。
【0034】
次に、電磁継電器100の動作について説明する。コイル42に電圧が印加されていない状態では、ヒンジバネ5及び復帰バネ10の弾性力によって可動接点8a,8bが固定接点6b,7bから開離している。コイル42に電圧が印加されて励磁されると、電磁力によって可動鉄片11が第2磁極端部44cに吸着される。これにより、ヒンジバネ5及び復帰バネ10の弾性力に抗して、可動鉄片11が角部43cを回動支点Pとして第2磁極端部44cに近づく方向に回動する。これにより、可動接触片8が可動部材9を介して固定接点6b,7bに近づく方向に移動して、可動接点8a,8bが固定接点6b,7bに接触する。コイル42の電圧の印加が停止されると、ヒンジバネ5及び復帰バネ10の弾性力によって可動接触片8が可動部材9を介して固定接点6b,7bから離れる方向に移動し、可動接点8a,8bが固定接点6b,7bから開離する。
【0035】
上述した電磁継電器100では、可動鉄片11に当接可能な当接部44dが、第2磁極端部44cにおいて第1磁極端部43aから遠い側に設けられるので、可動鉄片11と当接部44dとの当接箇所の安定化を図ることができる。また、第2磁極端部44cにおいて可動鉄片11の回動支点Pから遠い側で当接部44dが可動鉄片11を吸着することになるので、当接部44dが第2磁極端部44cにおいて可動鉄片11の回動支点Pから近い側に設けられる場合に比べて、小さな吸着力で可動鉄片11を吸着することができる。また、可動鉄片11と当接部44dとの接触面積が減少するので、電磁継電器100の復帰時において可動鉄片11が当接部44dから離反し易くなる。また、可動鉄片11の回動支点Pは、第1磁極端部43aにおいて、第2磁極端部44cから遠い側に設けられるので、第1磁極端部43aが可動鉄片11を吸着する吸着力は、可動鉄片11がヨーク44に近づく方向に作用し、電磁継電器100の動作に有利に働く。
【0036】
以上、本発明の一態様に係る電磁継電器の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0037】
前記実施形態では、固定鉄心43が複数の板部材を積層して形成されていたが、固定鉄心43は、単一の部材で構成されていてもよい。或いは、
図4に示すように、固定鉄心43は、ヨーク44と一体であってもよい。
【0038】
図5及び
図6に示すように、第2磁極端部44cの当接部44d及び斜面44eは、第2磁極端部44cをシェービングして形成されてもよい。
【0039】
第2磁極端部44cの形状は変更されてもよい。例えば、
図6に示すように、第2磁極端部44cは、起立部44bよりも外側に延びていてもよいし、
図7に示すように、起立部44bよりも内側及び外側に延びていてもよい。また、
図8及び
図9に示すように、当接部44dは、第2磁極端部44cにおいて、可動鉄片11に向かって突出する少なくとも1つの突起51であってもよい。
図8及び
図9に示す例では、第2磁極端部44cは、平坦面と、平坦面から突出する少なくとも1つの突起51によって構成されている。少なくとも1つの突起51は、第2磁極端部44cの内側角部44fよりも右方に設けられている。少なくとも1つの突起51は、可動鉄片11との当接時において、可動鉄片11と線接触するように、前後方向に延びていてもよい。或いは、少なくとも1つの突起51は、可動鉄片11との当接時において、可動鉄片11と点接触するようにしてもよい。
【0040】
図10及び
図11に示すように、可動鉄片11は、第2磁極端部44cに向かって突出する少なくとも1つの突起54を含んでもよい。少なくとも1つの突起54は、第2磁極端部44cの内側角部44fよりも右方で第2磁極端部44cと接触する。少なくとも1つの突起54は、可動鉄片11との当接時において、第2磁極端部44cの当接部44dと接触する。なお、
図10では、第2磁極端部44cが平坦面で構成された例を示しており、
図11では、第2磁極端部44cが斜面44eを含む構成を示している。
【0041】
前記実施形態では、第2磁極端部44cの当接部44dが第1磁極端部43aよりも上方に位置していたが、
図12に示すように、第2磁極端部44cの当接部44dが第1磁極端部43aよりも下方に位置してもよい。この場合、可動鉄片11の回動が平坦面43bに干渉されないように、第1磁極端部43aにおいて可動鉄片11の回動支点Pから第2磁極端部44cに向かって傾斜する斜面60を設けてもよい。斜面60は、前方から見て回動支点Pから右下がりに傾斜している。このような構成では、可動鉄片11が第2磁極端部44cの当接部44dに接触した状態において、可動鉄片11が第1端11aから第2端11bに向かって右下がりに傾斜する。
【0042】
前記実施形態では、可動鉄片11がヒンジバネ5に回動可能に保持されていたが、可動鉄片11は、スプール41、固定鉄心43、或いは別の保持部材に回動可能に保持されてもよい。この場合、復帰バネ10を付勢部材として機能させてもよいし、可動鉄片11をヨーク44から離れる方向に付勢する別の付勢部材を配置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、可動鉄片を吸着する磁極端部がヨークに設けられる電磁継電器において、ヨークと可動鉄片との当接箇所の安定化を図ることができる。
【符号の説明】
【0044】
4 電磁石部
5 ヒンジバネ(付勢部材の一例)
11 可動鉄片
41 スプール
42 コイル
43 固定鉄心
43a 第1磁極端部
44 ヨーク
44c 第2磁極端部
44d 当接部
44e 斜面
51 突起
54 突起
60 斜面
100 電磁継電器