(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】ロータリーアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02K 16/00 20060101AFI20240611BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
H02K16/00
H02K7/116
(21)【出願番号】P 2020202450
(22)【出願日】2020-12-07
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】角戸 弘輝
(72)【発明者】
【氏名】樋口 英也
(72)【発明者】
【氏名】片岡 隆
(72)【発明者】
【氏名】太田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 祐貴
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-194262(JP,A)
【文献】特開2006-304420(JP,A)
【文献】特開2019-187163(JP,A)
【文献】特開平08-229605(JP,A)
【文献】特開2014-075894(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0106168(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 16/00
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸が平行かつ異なる位置にある内軸ロータと外軸ロータとを有し、前記回転軸から径方向外側に向かって、前記内軸ロータ、内軸ステータ、外軸ステータ、前記外軸ロータが順に配置された偏芯二軸一体型モータを備え、
前記偏芯二軸一体型モータは、
前記内軸ロータと接続または一体化された第1の回転出力部と、
前記外軸ロータと接続または一体化された第2の回転出力部と、
前記内軸ステータと前記外軸ステータとの間に設けられて前記内軸ステータおよび前記外軸ステータが固定されたステータ固定部と、をさらに備え、
前記第1の回転出力部および前記第2の回転出力部のうち一方の回転出力部が動かないベースに対して回転不可能に固定され、他方の回転出力部が駆動対象物に接続または一体化されていることを特徴とするロータリーアクチュエータ。
【請求項2】
前記内軸ロータが前記ベースに対して回転不可能に固定されていることを特徴とする請求項1に記載のロータリーアクチュエータ。
【請求項3】
前記外軸ロータが前記ベースに対して回転不可能に固定されていることを特徴とする請求項1に記載のロータリーアクチュエータ。
【請求項4】
前記一方の回転出力部は、
前記一方の回転出力部のロータからの駆動力を減速して前記ステータ固定部に伝達する減速機構を備えることを特徴とする請求項1に記載のロータリーアクチュエータ。
【請求項5】
前記減速機構は、前記一方の回転出力部のロータと同軸上に配置された遊星歯車機構であることを特徴とする請求項4に記載のロータリーアクチュエータ。
【請求項6】
前記ステータ固定部の回転を停止するブレーキ機構をさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のロータリーアクチュエータ。
【請求項7】
前記ブレーキ機構は、前記一方の回転出力部のロータと前記ステータ固定部とを固定可能な永久磁石式電磁ブレーキであることを特徴とする請求項6に記載のロータリーアクチュエータ。
【請求項8】
前記一方の回転出力部のロータの軸方向両端部をそれぞれ支持する軸受をさらに備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のロータリーアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平行に配置した2つのロール間に材料を通し、2つのロールによって材料を挟み込んで送り出し、材料の成形や加工、搬送を行う装置がある。このような装置としては、例えば、押出し法による薄膜成形装置などが挙げられる。
薄膜成形装置では、一方のロールを可動ロール、もう一方を固定ロールとし、アクチュエータの推力によって可動ロールを動かすことで、固定ロールへの押付け力や固定ロールとの間の隙間を調整している。
例えば特許文献1には、油圧サーボをアクチュエータとして用いたロール隙間調整機構を備える薄膜部材成形装置が開示されている。このロール隙間調整機構では、アクチュエータは、ロール間の隙間を狭める方向の荷重を、可動ロールを支持する軸受部に付加している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の技術のように、ロールの軸受部分に推力を付加する構成である場合、アクチュエータをロール回転軸に対して直交するように配置しなければならない。そのため、アクチュエータが装置内で大きなスペースを占有してしまうという問題があった。
そこで、本発明は、装置上で省スペースとなるロータリーアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一つの態様のロータリーアクチュエータは、回転軸が平行かつ異なる位置にある内軸ロータと外軸ロータとを有し、前記回転軸から径方向外側に向かって、前記内軸ロータ、内軸ステータ、外軸ステータ、前記外軸ロータが順に配置された偏芯二軸一体型モータを備え、前記偏芯二軸一体型モータは、前記内軸ロータと接続または一体化された第1の回転出力部と、前記外軸ロータと接続または一体化された第2の回転出力部と、前記内軸ステータと前記外軸ステータとの間に設けられて前記内軸ステータおよび前記外軸ステータが固定されたステータ固定部と、をさらに備え、前記第1の回転出力部および前記第2の回転出力部のうち一方の回転出力部が動かないベースに対して回転不可能に固定され、他方の回転出力部が駆動対象物に接続または一体化されている。
【0006】
このように、一方の回転出力部を動かないベースに固定することで、当該一方の回転出力部のロータの回転力は、ステータ固定部を回転させる力となり、他方の回転出力部を偏芯回転させることができる。ここで、他方の回転出力部は、駆動対象物に接続または一体化されているので、上記の他方の回転出力部の偏芯回転により、駆動対象物を回転軸に直交する平面内で移動させ、駆動対象物と相手部材との隙間を調整することができる。また、上記の他方の回転出力部のロータを駆動することで、駆動対象物を、回転軸を中心として回転させることができる。つまり、駆動対象物の回転機能と隙間調整機能とを備えるアクチュエータとすることができる。さらに、アクチュエータを駆動対象物と同軸上に配置することが可能であるため、装置上でアクチュエータが占めるスペースを小さくすることができる。
【0007】
また、上記のロータリーアクチュエータにおいて、前記内軸ロータが前記ベースに対して回転不可能に固定されていてもよい。
この場合、内軸ロータの回転力がステータ固定部を回転させる力となり、アクチュエータ全体を偏芯回転させることができる。したがって、アクチュエータ全体を偏芯カムのように用いることができる。
【0008】
さらに、上記のロータリーアクチュエータにおいて、前記外軸ロータが前記ベースに対して回転不可能に固定されていてもよい。
この場合、外軸ロータの回転力がステータ固定部を回転させる力となり、内軸ロータを偏芯回転させることができる。したがって、内軸ロータを偏芯カムのように動かすことができる。
【0009】
また、上記のロータリーアクチュエータにおいて、前記一方の回転出力部は、前記一方の回転出力部のロータからの駆動力を減速して前記ステータ固定部に伝達する減速機構を備えていてもよい。
この場合、一方の回転出力部のロータを駆動してステータ固定部が回転する際のトルクを増大させることができる。例えば、駆動対象物が押付け対象である場合、駆動対象物を物体に押し付ける力を増大させることができる。
【0010】
さらにまた、上記のロータリーアクチュエータにおいて、前記減速機構は、前記一方の回転出力部のロータと同軸上に配置された遊星歯車機構であってもよい。
この場合、比較的簡易な構成で、一方の回転出力部のロータからの駆動力を適切に減速してステータ固定部に伝達することができる。また、減速機構をコンパクトに配置することができる。
【0011】
また、上記のロータリーアクチュエータは、前記ステータ固定部の回転を停止するブレーキ機構をさらに備えていてもよい。この場合、上記他方の回転出力部の位置固定が可能となる。
さらにまた、上記のロータリーアクチュエータにおいて、前記ブレーキ機構は、前記一方の回転出力部のロータと前記ステータ固定部とを固定可能な永久磁石式電磁ブレーキであってもよい。この場合、比較的簡易な構成で、上記他方の回転出力部の位置を固定することができる。
【0012】
また、上記のロータリーアクチュエータは、前記一方の回転出力部のロータの軸方向両端部をそれぞれ支持する軸受をさらに備えていてもよい。
この場合、一方の回転出力部のロータを駆動してステータ固定部を回転させる際の剛性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一つの態様によれば、装置上で省スペースとなるロータリーアクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本実施形態におけるロータリーアクチュエータの適用例である。
【
図2】
図2は、第一の実施形態のロータリーアクチュエータの断面図である。
【
図3】
図3は、偏芯による押付け機構の動作イメージ図である。
【
図4】
図4は、第二の実施形態のロータリーアクチュエータの断面図である。
【
図5】
図5は、第三の実施形態のロータリーアクチュエータの断面図である。
【
図6】
図6は、第四の実施形態のロータリーアクチュエータの断面図である。
【
図7】
図7は、第五の実施形態のロータリーアクチュエータの断面図である。
【
図8】
図8は、第六の実施形態のロータリーアクチュエータの断面図である。
【
図9】
図9は、第七の実施形態のロータリーアクチュエータの断面図である。
【
図10】
図10は、第八の実施形態のロータリーアクチュエータの断面図である。
【
図11】
図11は、第九の実施形態のロータリーアクチュエータの断面図である。
【
図12】
図12は、第九の実施形態のロータリーアクチュエータの別の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0016】
(第一の実施形態)
図1は、本実施形態におけるロータリーアクチュエータの適用例を示す図である。
本実施形態では、ロータリーアクチュエータを、薄膜成形装置1に適用する場合について説明する。
図1に示すように、薄膜成形装置1は、固定ロール2と可動ロール3とを備え、これら2つのロールでTダイ4から吐出された材料を挟み込んで送り出し、薄膜部材を成形するフィルム押出成形機である。ここで、成形される薄膜部材は、例えば樹脂製の薄膜状の部材とすることができる。固定ロール2および可動ロール3は、回転可能な状態で固定配置されている。また、可動ロール3は、固定配置された状態で、固定ロール2に対して近づく方向や離れる方向に移動可能に構成されている。可動ロール3を固定ロール2に対して移動させることで、2つのロール2、3間の隙間を調整することができる。
本実施形態におけるロータリーアクチュエータは、固定ロール2に対する可動ロール3の移動と、材料の送り出しのための回転駆動とを実現するアクチュエータとして用いることができる。
【0017】
図2は、本実施形態におけるロータリーアクチュエータ100Aの主要構成を示す断面図である。
本実施形態におけるロータリーアクチュエータ100Aは、駆動対象物を回転させる回転機能に加えて、駆動対象物を移動させ、駆動対象物と相手部材との隙間を調整する隙間調整機能を有する。
図2に示すように、ロータリーアクチュエータ100Aは、二つのロータが偏心している偏芯二軸一体型モータ110と、ベース200と、を備える。偏芯二軸一体型モータ110は、回転軸P1を回転中心とするインナモータ120と、回転軸P1と平行で、かつ回転軸P1とは異なる位置にある回転軸P2を回転中心とするアウタモータ130と、を有する。
【0018】
インナモータ120およびアウタモータ130はそれぞれ、円筒状のロータと、当該ロータに設けられたマグネット(永久磁石)と、モータステータと、を有する。
具体的には、インナモータ120は、円筒状のインナロータ(内軸ロータ)121と、インナロータ121の外周面に沿って環状に配置されたマグネット122と、モータステータ(内軸ステータ)123と、を有する。モータステータ123は、ステータコア123aと、ステータコア123aに巻回されたコイル123bと、を有する。
また、アウタモータ130は、円筒状のアウタロータ(外軸ロータ)131と、アウタロータ131の内周面に沿って環状に配置されたマグネット132と、モータステータ133(外軸ステータ)と、を有する。モータステータ133は、ステータコア133aと、ステータコア133aに巻回されたコイル133bと、を有する。
【0019】
インナロータ121とアウタロータ131とは、ステータ固定部111を挟んでそれぞれステータ固定部111の内周側と外周側とで回転可能に設けられている。ここで、ステータ固定部111は、インナロータ121の外径よりも大きく、アウタロータ131の内径よりも小さい径を有する円筒状の部材である。具体的には、ステータ固定部111の内周の中心が中心軸P1に一致され、ステータ固定部111の外周の中心が中心軸P2に一致されている。
インナモータ120のモータステータ123は、ステータ固定部111の内周面に固定されており、アウタモータ130のモータステータ133は、ステータ固定部111の外周面に固定されている。つまり、回転軸P1、P2から径方向外側に向かって、インナロータ121、モータステータ123、モータステータ133、アウタロータ131の順に配置されている。
このような構成により、コイル123bに対する電力供給に応じてインナロータ121が回転する。同様に、コイル133bに対する電力供給に応じてアウタロータ131が回転する。
【0020】
さらに、偏芯二軸一体型モータ110は、ステータ固定部111の一端側から順に設けられた検出部と、軸受部と、を有する。なお、以下の説明では、回転軸P1、P2に沿った方向における
図2の上側を「一端側」、
図2の下側を「他端側」という。
また、特に図示しないが、ステータ固定部111の側面(内周面、外周面)および端面には、ステータ固定部111に固定される検出部、軸受部、モータステータ等の各部構成に応じた段差、突起、陥没部、穴等が設けられていてよい。
【0021】
検出部は、第1検出部112と、第2検出部113と、を有する。
第1検出部112は、インナロータ121の回転角度を検出する。具体的には、第1検出部112は、インナロータ121に固定されてインナロータ121とともに回転する第1回転部と、ステータ固定部111に固定されて第1回転部の回転角度を検出する第1固定部と、を有する。第1検出部112は、例えばレゾルバである。
第2検出部113は、アウタロータ131の回転角度を検出する。具体的には、第2検出部113は、アウタロータ131に固定されてアウタロータ131とともに回転する第2回転部と、ステータ固定部111に固定されて第2回転部の回転角度を検出する第2固定部と、を有する。第2検出部113は、例えばレゾルバである。
【0022】
なお、本実施形態では、第1検出部112および第2検出部113がレゾルバである場合について説明するが、上記に限定されるものではなく、第1検出部112および第2検出部113は、例えば光学式のエンコーダであってもよい。
また、第1検出部112および第2検出部113の配置位置は、
図2に示す位置に限定されない。第1検出部112および第2検出部113は、
図2に示す位置よりもステータ固定部111の他端側、例えば、軸受部とモータステータとの間やモータステータよりも他端側に配置してもよい。
【0023】
また、軸受部は、第1軸受114と、第2軸受115と、を有する。
第1軸受114は、インナロータ121と連動して回転する。第2軸受115は、アウタロータ131と連動して回転する。
具体的には、第1軸受114は、ステータ固定部111に対して内周側かつインナロータ121に対して外周側である位置に設けられている。このように第1軸受114がステータ固定部111とインナロータ121との間に介在していることで、インナロータ121はステータ固定部111に対して回転可能に軸支されている。第2軸受115は、ステータ固定部111に対して外周側かつアウタロータ131に対して内周側に設けられている。このように第2軸受115がステータ固定部111とアウタロータ131との間に介在していることで、アウタロータ131はステータ固定部111に対して回転可能に軸支されている。
【0024】
このように、偏芯二軸一体型モータ110は、2つのダイレクトドライブモータ(DDモータ)を備えて構成されている。ここで、2つのDDモータ(インナモータ120、アウタモータ130)は、互いに平行で異なる軸上に配置され、尚且つ、インナモータ120はアウタモータ130の内側に配置されている。
そして、本実施形態では、
図2に示すように、インナロータ121を動かないベース200に固定し、アウタロータ131を駆動対象物である可動ロール3(
図1参照)に接続する。なお、アウタロータ131は駆動対象物である可動ロール3と一体であってもよい。
【0025】
動かないベース200にインナロータ121を固定することで、インナロータ121の回転力はステータ固定部111を回転させる力となる。つまり、インナモータ120を駆動してステータ固定部111をインナモータ120の回転軸P1を中心に回転させると、モータ全体が回転軸P1を中心に偏心カムのように回転され、アウタロータ131に接続された可動ロール3が回転軸P1、P2に直交する平面内で移動する(隙間調整機能)。
また、アウタモータ130を駆動してアウタロータ131を回転させれば、可動ロール3を回転駆動することができる(回転機能)。したがって、上記隙間調整機能により可動ロール3を移動して固定ロール2と可動ロール3との間の隙間を調整した状態で、アウタモータ130を駆動してアウタロータ131を回転させれば、2つのロール2、3によって材料を挟み込んで送り出し、材料の成形を行うことができる。
【0026】
以下、本実施形態のロータリーアクチュエータ100Aの動作について具体的に説明する。
図3(a)に示すように、固定ロール2と可動ロール3とが離隔されている状態から、
図3(b)に示すように、インナモータ120を駆動してインナロータ121を、回転軸P1を中心に回転させる。なお、
図3(b)に示す回転方向は、偏芯二軸一体型モータ110を出力側から見た回転方向であってもよいし、反出力側から見た回転方向であってもよい。
図3(b)に示すようにインナロータ121を時計回り方向に回転させると、ステータ固定部111及びアウタロータ131が回転軸P1を中心に一体となって偏芯回転し、可動ロール3が接線方向に変位する。これにより、可動ロール3が固定ロール2に近づく方向に移動し、可動ロール3を固定ロール2に押付ける力が発生する。このとき、可動ロール3の変位量をコントロールすれば、固定ロール2への押付け力および固定ロール2との間の隙間をコントロールすることができる。
【0027】
この状態で、アウタモータ130を駆動してアウタロータ131を回転させる。例えば
図3(b)に示すように、固定ロール2が時計回り方向に回転している場合、アウタロータ131を、回転軸P2を中心に反時計回り方向に回転させ、可動ロール3を反時計回り方向に回転させる。これにより、材料5の送り出しを行うことができる。
このように、インナロータ121の回転で可動ロール3を固定ロール2に押付け、アウタロータ131の回転で材料5の送り出しを行う。
なお、
図3(b)に示す状態で、インナロータ121を反時計回り方向に回転させると、アウタロータ131が回転軸P1を中心に偏芯回転し、可動ロール3が固定ロール2から離れる方向に移動する。これにより、
図3(a)に示す状態に戻すことが可能である。
【0028】
以上説明したように、本実施形態におけるロータリーアクチュエータ100Aは、偏芯二軸一体型モータ110を備える。ここで、偏芯二軸一体型モータ110は、回転軸が互いに平行かつ異なる位置にあるインナロータ(内軸ロータ)121とアウタロータ(外軸ロータ)131とを有し、回転軸P1、P2から径方向外側に向かって、インナロータ121、モータステータ(内軸ステータ)123、モータステータ(外軸ステータ)133、アウタロータ131が順に配置された構成を有する。
また、偏芯二軸一体型モータ110は、インナロータ121と接続または一体化された第1の回転出力部と、アウタロータ131と接続または一体化された第2の回転出力部と、モータステータ123とモータステータ133との間に設けられてモータステータ123およびモータステータ133が固定されたステータ固定部111と、をさらに備える。
【0029】
そして、2つの回転出力部のうち一方の回転出力部、具体的にはインナロータ121を動かないベース200に対して回転不可能に固定し、他方の回転出力部、具体的にはアウタロータ131を駆動対象物に接続または一体化させる。
このように、インナロータ121を動かないベース200に固定することで、インナモータ120を駆動した際のインナロータ121の回転力は、ステータ固定部111を回転させる力となり、アクチュエータ全体を偏芯カムのように動かすことができる。また、アウタモータ130を駆動することで、駆動対象物を回転駆動させることができる。
つまり、本実施形態におけるロータリーアクチュエータ100Aは、回転軸P1を偏芯カムの回転軸とした隙間調整機能と、回転軸P2を中心とした回転機能とを実現することができる。具体的には、駆動対象物を薄膜成形装置1が備える可動ロール3とすれば、可動ロール3の固定ロール2への押付け機能と、可動ロール3の材料の送り出し機能とを実現することができる。
【0030】
また、ロータリーアクチュエータ100Aは、偏芯回転によって接線方向に発生する変位を利用して、可動ロール3の固定ロール2への押付け機能を実現する。そのため、ロータリーアクチュエータ100Aを可動ロール3の回転軸と同軸上に配置することができる。したがって、アクチュエータをロール回転軸に対して直交するように配置する従来の構成と比べて、装置上でアクチュエータが占めるスペースを小さくすることができる。また、ロータリーアクチュエータ100Aは、インナモータ120をアウタモータ130の内側に配置した偏芯二軸一体型モータ110を有する構成であるため、アクチュエータの省スペース化を実現することができる。
さらに、ロータリーアクチュエータ100Aは、油圧駆動機構を備えないため、装置のクリーン性も向上する。さらにまた、ロールを可動とするための直動スライダなども不要になるほか、一つのアクチュエータでロールの押付けと材料の送り出しとが可能になるため、装置全体の部品点数の削減を図れる。
【0031】
また、インナロータ121は、回転軸P1に沿って貫通する中空穴を有することができる。したがって、配線や配管(エアチューブ等)が容易となる。
なお、インナロータ121は、中空構造を有していなくてもよい。つまり、インナモータ120は中実モータであってもよい。
【0032】
(第二の実施形態)
次に、本発明における第二の実施形態について説明する。
この第二の実施形態では、上述した第一の実施形態におけるロータリーアクチュエータ100Aのインナロータ121に減速機構を配した場合について説明する。
図4は、第二の実施形態のロータリーアクチュエータ100Bの主要構成を示す断面図である。なお、この
図4において、
図2に示すロータリーアクチュエータ100Aと同様の構成を有する部分には、
図2と同一符号を付し、ここでは具体的な説明は省略する。
【0033】
図4に示すように、ロータリーアクチュエータ100Bは、偏芯二軸一体型モータ110と、減速機構140Aと、を備える。偏芯二軸一体型モータ110は、上述した第一の実施形態におけるロータリーアクチュエータ100Aが備える偏芯二軸一体型モータ110と同一構成を有する。
減速機構140Aは、インナロータ121からの駆動力を減速してステータ固定部111に伝達する。
【0034】
本実施形態において、減速機構140Aは、偏芯二軸一体型モータ110のインナモータ120と同軸上に配置された遊星歯車機構である。
図4に示すように、減速機構140Aは、外歯車(サンギヤ)141aと、複数の遊星歯車(プラネタリギヤ)142aと、キャリア143aと、キャリア軸(プラネタリギヤ支持軸)144aと、内歯車(リングギヤ)145aと、を備える。
外歯車141aは、内歯車145aの内側においてインナロータ121と同軸上に配置されており、複数の遊星歯車142aは、外歯車141aと内歯車145aとに噛合している。また、複数の遊星歯車142aは、キャリア143aに一端が固定されたキャリア軸144aにより回転自在に支持されている。なお、遊星歯車142aの数は特に限定されない。
【0035】
そして、
図4に示すように、外歯車141aの他端側(
図4の下側)は、インナロータ121の一端側(
図4の上側)に連結されている。また、キャリア軸144aの一端側は、ベース200に連結されている。さらに、内歯車145aの他端側は、キャリア固定部111の一端側に連結されている。
外歯車141aは、回転軸P1を中心軸として貫通する中空穴を有しており、当該中空穴は、外歯車141aが円筒状のインナロータ121に連結された状態において、インナロータ121の中空穴と連通する。
本実施形態における減速機構140Aは、キャリア143aがキャリア軸144aを介してベース200に連結されて固定されているため、外歯車141aと内歯車145aとの間で複数の遊星歯車142aが自転のみで公転しない、所謂スター型の遊星歯車機構である。
【0036】
可動ロール3を固定ロール2に押し付ける、または、可動ロール3を固定ロール2から引き離す場合には、上述した第一の実施形態と同様に、インナモータ120を駆動する。すると、本実施形態では、インナロータ121が回転し、インナロータ121とともに減速機構140Aの外歯車141aが回転する。このとき、外歯車141aに噛み合う遊星歯車142aが自転し、遊星歯車142aに噛み合う内歯車145aを回転させる。そして、内歯車145aがステータ固定部111を回転させる。つまり、ステータ固定部111の発生トルクは、インナロータ121から減速機構140Aを介して発生されたトルクとなり、可動ロール3の固定ロール2に対する押付けトルクの増大が可能となる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態におけるロータリーアクチュエータ100Bは、偏芯二軸一体型モータ110と、減速機構140Aと、を備える。具体的には、偏芯二軸一体型モータ110が備える2つの回転出力部のうちインナロータ121と接続された第1の回転出力部が、インナロータ121からの駆動力を減速してステータ固定部111に伝達する減速機構140Aを備える。
これにより、上述した第一の実施形態と同様に、1つのアクチュエータで可動ロール3の固定ロール2への押付け機能と、可動ロール3の材料の送り出し機能とを実現することができる。また、減速機構140Aを配することで、ロータを駆動してステータ固定部111を回転させる際のトルクを増大させることができる。つまり、可動ロール3の固定ロール2への押付けトルクを増大することができる。また、両ロール間の隙間を微調整できる。
【0038】
ここで、減速機能140Aとしては、遊星歯車機構を採用することができる。具体的には、外歯車141aをインナロータ121に連結し、キャリア143aを動かないベース200に固定し、内歯車145aをステータ固定部111に連結することができる。
これにより、インナモータ120を駆動させた場合に、インナロータ121(外歯車141a)が遊星歯車142aを駆動し、ステータ固定部111(内歯車145a)に高トルクを発生させることができる。このように、比較的簡易な構成で、可動ロール3の押付け力を増大させることができる。
【0039】
なお、本実施形態において、減速機構として採用する遊星歯車機構は、内歯車を固定し、外歯車を駆動軸、キャリアを出力軸とする、所謂プラネタリ型の遊星歯車機構であってもよい。
また、本実施形態においては、2段以上の減速機構を用いることもできる。この場合、より大きな減速比を得ることができ、より大きなトルクを得ることができる。
さらに、本実施形態においては、減速機構として遊星歯車機構を用いる場合について説明したが、インナロータ121からの駆動力を減速してキャリア固定部111に伝達することができればよく、他の減速機構、例えばトラクションドライブ減速機などの機構を用いることもできる。
【0040】
(第三の実施形態)
次に、本発明における第三の実施形態について説明する。
この第三の実施形態では、上述した第一の実施形態におけるロータリーアクチュエータ100Aのインナロータ121にブレーキ機構を配した場合について説明する。
図5は、第三の実施形態のロータリーアクチュエータ100Cの主要構成を示す断面図である。なお、この
図5において、
図2に示すロータリーアクチュエータ100Aと同様の構成を有する部分には、
図2と同一符号を付し、ここでは具体的な説明は省略する。
【0041】
図5に示すように、ロータリーアクチュエータ100Cは、偏芯二軸一体型モータ110と、ブレーキ機構150Aと、を備える。偏芯二軸一体型モータ110は、上述した第一の実施形態におけるロータリーアクチュエータ100Aが備える偏芯二軸一体型モータ110と同一構成を有する。
ブレーキ機構150Aは、ステータ固定部111の回転を停止する機能を有する。
【0042】
ブレーキ機構150Aは、例えば、永久磁石式電磁ブレーキとすることができる。
図5に示すように、ブレーキ機構150Aは、フランジ151aと、スプリング152aと、アーマチュア153aと、マグネットヨーク154aと、を備える。
フランジ151aは、インナロータ121の他端側(
図5の下側)端部から径方向外側に突出して設けられている。フランジ151aには、スプリング152aを介してアーマチュア153aが取り付けられている。スプリング152aは、アーマチュア153aをフランジ151a側に付勢している。また、マグネットヨーク154aは、アーマチュア153aに対向するようにステータ固定部111に取り付けられている。
【0043】
第一の実施形態において詳述したように、インナモータ120を駆動してステータ固定部111をインナモータ120の回転軸P1を中心に回転させることで、モータ全体が回転軸P1を中心に偏心カムのように動き、アウタロータ131に接続または一体化された可動ロール3を移動することができる。これにより、固定ロール2と可動ロール3との間の隙間を所望の隙間に調整することができる。
この隙間調整後に、ブレーキ機構150Aを作動すると、アーマチュア153aとマグネットヨーク154aとが吸着され、インナロータ121とステータ固定部111とが固定される。これにより、ステータ固定部111の位置、すなわち、可動ロール3の位置を固定することができ、両ロール間の隙間を所望値に維持できる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態におけるロータリーアクチュエータ100Cは、偏芯二軸一体型モータ110と、ブレーキ機構150Aと、を備える。
これにより、上述した第一の実施形態と同様に、1つのアクチュエータで可動ロール3の固定ロール2への押付け機能と、可動ロール3の材料の送り出し機能とを実現することができる。また、ブレーキ機構150Aを配することで、固定ロール2と可動ロール3との隙間調整後の可動ロール3の位置固定が可能となる。
【0045】
したがって、例えばロータリーアクチュエータ100Cの偏芯カムの動きで可動ロール3の固定ロール2に対する押付け動作を行っている場合に、何らかの理由により電源が一時的に遮断された場合であっても、可動ロール3の位置が変動してしまうことを防止することができる。つまり、非常用のブレーキとして機能させることができる。
また、可動ロール3の位置を固定することができるので、薄膜成形装置1による材料成形中に固定ロール2と可動ロール3との間の隙間を一定に保つための制御が不要になる。つまり、無駄な電力を削減することができる。
【0046】
なお、本実施形態においては、フランジ151aをインナロータ121に取り付け、マグネットヨーク154aをステータ固定部111に取り付ける場合について説明したが、フランジ151aをステータ固定部111に取り付け、マグネットヨーク154aをインナロータ121に取り付ける構成であってもよい。
さらに、本実施形態においては、ブレーキ機構150Aがインナロータ121とステータ固定部111とを固定する構成である場合について説明した。しかしながら、ブレーキ機構150Aは、ステータ固定部111の回転を止められる構成であればよく、ステータ固定部111を、インナロータ121とは別の固定部材(例えば、ベース200等)に固定する構成であってもよい。
また、本実施形態においては、ブレーキ機構が永久磁石式電磁ブレーキである場合について説明したが、ブレーキ機構は上記に限定されるものではない。
【0047】
(第四の実施形態)
次に、本発明における第四の実施形態について説明する。
この第四の実施形態では、上述した第二の実施形態におけるロータリーアクチュエータ100Bのインナロータ121にブレーキ機構を配した場合について説明する。
図6は、第四の実施形態のロータリーアクチュエータ100Dの主要構成を示す断面図である。なお、この
図6において、
図4に示すロータリーアクチュエータ100Bと同様の構成を有する部分には、
図4と同一符号を付し、ここでは具体的な説明は省略する。
【0048】
図6に示すように、ロータリーアクチュエータ100Dは、偏芯二軸一体型モータ110と、減速機構140Aと、ブレーキ機構150Aと、を備える。
偏芯二軸一体型モータ110は、上述した第二の実施形態におけるロータリーアクチュエータ100Bが備える偏芯二軸一体型モータ110と同一構成を有する。減速機構140Aは、上述した第二の実施形態におけるロータリーアクチュエータ100Bが備える減速機構140Aと同一構成を有する。ブレーキ機構150Aは、上述した第三の実施形態におけるロータリーアクチュエータ100Cが備えるブレーキ機構150Aと同一構成を有する。
【0049】
これにより、上述した第二の実施形態と同様に、1つのアクチュエータで可動ロール3の固定ロール2への押付け機能と、可動ロール3の材料の送り出し機能とを実現することができる。また、減速機構140Aを配することで、ロータを駆動してステータ固定部111が回転させる際のトルクを増大させることができる。つまり、可動ロール3の固定ロール2への押付けトルクを増大することができる。さらに、ブレーキ機構150Aを配することで、上述した第三の実施形態と同様に、固定ロール2と可動ロール3との隙間調整後の可動ロール3の位置固定が可能となる。
【0050】
(第五の実施形態)
次に、本発明における第五の実施形態について説明する。
上述した第一の実施形態~第四の実施形態では、インナロータ121をベース200に固定し、インナモータ120の回転軸P1を偏芯カムの回転軸として用いる場合について説明した。この第五の実施形態では、アウタロータ131をベース200に固定し、アウタモータ130の回転軸P2を偏芯カムの回転軸として用いる場合について説明する。
図7は、第五の実施形態のロータリーアクチュエータ100Eの主要構成を示す断面図である。なお、この
図7において、
図2に示すロータリーアクチュエータ100Aと同様の構成を有する部分には、
図2と同一符号を付し、ここでは具体的な説明は省略する。
【0051】
図7に示すように、ロータリーアクチュエータ100Eは、偏芯二軸一体型モータ110を備える。ここで、偏芯二軸一体型モータ110は、上述した第一の実施形態におけるロータリーアクチュエータ100Aが備える偏芯二軸一体型モータ110と同一構成を有する。
本実施形態では、偏芯二軸一体型モータ110のアウタロータ131が、動かないベース200に固定され、インナロータ121が駆動対象物である可動ロール3(
図1参照)に接続されている。
【0052】
動かないベース200にアウタロータ131を固定することで、アウタロータ131の回転力はステータ固定部111を回転させる力となる。つまり、アウタモータ130を駆動してステータ固定部111をアウタモータ130の回転軸P2を中心に回転させると、インナロータ121が回転軸P2を中心に偏心カムのように回転され、インナロータ121に接続された可動ロール3が移動する(隙間調整機能)。
また、インナモータ120を駆動してインナロータ121を回転させれば、可動ロール3を回転駆動することができる(回転機能)。したがって、上記隙間調整機能により可動ロール3を移動して固定ロール2と可動ロール3との間の隙間を調整した状態で、インナモータ120を駆動してインナロータ121を回転させれば、2つのロール2、3によって材料を挟み込んで送り出し、材料の成形を行うことができる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態におけるロータリーアクチュエータ100Eは、偏芯二軸一体型モータ110の2つの回転出力部のうち一方の回転出力部、具体的にはアウタロータ131を動かないベース200に対して回転不可能に固定し、他方の回転出力部、具体的にはインナロータ121を駆動対象物に接続または一体化させる。
このように、アウタロータ131を動かないベース200に固定することで、アウタモータ130を駆動した際のアウタロータ131の回転力は、ステータ固定部111を回転させる力となり、インナロータ121を偏芯カムのように動かすことができる。また、インナモータ120を駆動することで、駆動対象物を回転駆動させることができる。
つまり、本実施形態におけるロータリーアクチュエータ100Eは、回転軸P2を偏芯カムの回転軸とした隙間調整機能と、回転軸P1を中心とした回転機能とを実現することができる。つまり、上述した第一の実施形態~第四の実施形態と同様に、可動ロール3の固定ロール2への押付け機能と、可動ロール3の材料の送り出し機能とを実現することができる。
【0054】
(第六の実施形態)
次に、本発明における第六の実施形態について説明する。
この第六の実施形態では、上述した第五の実施形態におけるロータリーアクチュエータ100Eのアウタロータ131に減速機構を配した場合について説明する。
図8は、第六の実施形態のロータリーアクチュエータ100Fの主要構成を示す断面図である。なお、この
図8において、
図7に示すロータリーアクチュエータ100Eと同様の構成を有する部分には、
図7と同一符号を付し、ここでは具体的な説明は省略する。
【0055】
図8に示すように、ロータリーアクチュエータ100Fは、偏芯二軸一体型モータ110と、減速機構140Bと、を備える。偏芯二軸一体型モータ110は、上述した第五の実施形態におけるロータリーアクチュエータ100Eが備える偏芯二軸一体型モータ110と同一構成を有する。
減速機構140Bは、アウタロータ131からの駆動力を減速してステータ固定部111に伝達する。
【0056】
本実施形態において、減速機構140Bは、偏芯二軸一体型モータ110のアウタモータ130と同軸上に配置された遊星歯車機構である。
図8に示すように、減速機構140Bは、外歯車(サンギヤ)141bと、複数の遊星歯車(プラネタリギヤ)142bと、キャリア143bと、キャリア軸(プラネタリギヤ支持軸)144bと、内歯車(リングギヤ)145bと、を備える。
外歯車141bは、内歯車145bの内側においてアウタロータ131と同軸上に配置されており、複数の遊星歯車142bは、外歯車141bと内歯車145bとに噛合している。また、複数の遊星歯車142bは、キャリア143bに一端が固定されたキャリア軸144bにより回転自在に支持されている。なお、遊星歯車142bの数は特に限定されない。
【0057】
そして、
図8に示すように、外歯車141bの一端側(
図8の上側)は、ベース200に連結されている。また、キャリア軸144bの他端側(
図8の下側)は、キャリア143bを介してキャリア固定部111の一端側に連結されている。さらに、内歯車145bの他端側は、アウタロータ131の一端側に連結されている。
外歯車141bは、回転軸P2を中心軸として貫通する中空穴を有しており、当該中空穴は、外歯車141bがベース200に連結された状態において、インナロータ121の中空穴と連通する。
本実施形態における減速機構140Bは、外歯車141bがベース200に連結されて固定されているため、外歯車141bと内歯車145bとの間で複数の遊星歯車142bが自転しながら公転する、所謂ソーラー型の遊星歯車機構である。
【0058】
可動ロール3を固定ロール2に押し付ける、または、可動ロール3を固定ロール2から引き離す場合には、上述した第五の実施形態と同様に、アウタモータ130を駆動する。すると、本実施形態では、アウタロータ131が回転し、アウタロータ131とともに減速機構140Bの内歯車145bが回転する。このとき、内歯車145bに噛み合う遊星歯車142bが自転しながら公転し、遊星歯車142bの公転によってステータ固定部111が回転する。つまり、ステータ固定部111の発生トルクは、アウタロータ131から減速機構140Bを介して発生されたトルクとなり、可動ロール3の固定ロール2に対する押付けトルクの増大が可能となる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態におけるロータリーアクチュエータ100Fは、偏芯二軸一体型モータ110と、減速機構140Bと、を備える。具体的には、偏芯二軸一体型モータ110が備える2つの回転出力部のうちアウタロータ131と接続された第2の回転出力部が、アウタロータ131からの駆動力を減速してステータ固定部111に伝達する減速機構140Bを備える。
これにより、上述した第五の実施形態と同様に、1つのアクチュエータで可動ロール3の固定ロール2への押付け機能と、可動ロール3の材料の送り出し機能とを実現することができる。また、減速機構140Bを配することで、上述した第二の実施形態と同様に、ロータを駆動してステータ固定部が回転する際のトルクを増大させることができる。つまり、可動ロール3の固定ロール2への押付けトルクを増大することができる。また、両ロール間の隙間を微調整できる。
【0060】
(第七の実施形態)
次に、本発明における第七の実施形態について説明する。
この第七の実施形態では、上述した第五の実施形態におけるロータリーアクチュエータ100Eのアウタロータ131にブレーキ機構を配した場合について説明する。
図9は、第七の実施形態のロータリーアクチュエータ100Gの主要構成を示す断面図である。なお、この
図9において、
図7に示すロータリーアクチュエータ100Eと同様の構成を有する部分には、
図7と同一符号を付し、ここでは具体的な説明は省略する。
【0061】
図9に示すように、ロータリーアクチュエータ100Gは、偏芯二軸一体型モータ110と、ブレーキ機構150Bと、を備える。偏芯二軸一体型モータ110は、上述した第五の実施形態におけるロータリーアクチュエータ100Eが備える偏芯二軸一体型モータ110と同一構成を有する。
ブレーキ機構150Bは、ステータ固定部111の回転を停止する機能を有する。
【0062】
ブレーキ機構150Bは、例えば、永久磁石式電磁ブレーキとすることができる。
図9に示すように、ブレーキ機構150Bは、フランジ151bと、スプリング152bと、アーマチュア153bと、マグネットヨーク154bと、を備える。
フランジ151bは、ステータ固定部111の他端側(
図9の下側)端部から径方向外側に突出して設けられている。フランジ151bには、スプリング152bを介してアーマチュア153bが取り付けられている。スプリング152bは、アーマチュア153bをフランジ151b側に付勢している。また、マグネットヨーク154bは、アーマチュア153bに対向するようにアウタロータ131に取り付けられている。
【0063】
第五の実施形態において詳述したように、アウタモータ130を駆動してステータ固定部111をアウタモータ130の回転軸P2を中心に回転させることで、モータ全体が回転軸P2を中心に偏心カムのように動き、インナロータ121に接続または一体化された可動ロール3を移動することができる。これにより、固定ロール2と可動ロール3との間の隙間を所望の隙間に調整することができる。
この隙間調整後に、ブレーキ機構150Bを作動すると、アーマチュア153bとマグネットヨーク154bとが吸着され、アウタロータ131とステータ固定部111とが固定される。これにより、ステータ固定部111の位置、すなわち、可動ロール3の位置を固定することができ、両ロール間の隙間を所望値に維持できる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態におけるロータリーアクチュエータ100Gは、偏芯二軸一体型モータ110と、ブレーキ機構150Bと、を備える。
これにより、上述した第五の実施形態と同様に、1つのアクチュエータで可動ロール3の固定ロール2への押付け機能と、可動ロール3の材料の送り出し機能とを実現することができる。また、ブレーキ機構150Bを配することで、上述した第三の実施形態と同様に、固定ロール2と可動ロール3との隙間調整後の可動ロール3の位置固定が可能となる。
【0065】
なお、本実施形態においては、フランジ151bをステータ固定部111に取り付け、マグネットヨーク154bをアウタロータ131に取り付ける場合について説明したが、フランジ151bをアウタロータ131に取り付け、マグネットヨーク154bをステータ固定部111に取り付ける構成であってもよい。
さらに、本実施形態においては、ブレーキ機構150Bがアウタロータ131とステータ固定部111とを固定する構成である場合について説明した。しかしながら、ブレーキ機構は、ステータ固定部111の回転を止められる構成であればよく、ステータ固定部111を、アウタロータ131とは別の固定部材(例えば、ベース200等)に固定する構成であってもよい。
また、本実施形態においては、ブレーキ機構が永久磁石式電磁ブレーキである場合について説明したが、ブレーキ機構は上記に限定されるものではない。
【0066】
(第八の実施形態)
次に、本発明における第八の実施形態について説明する。
この第八の実施形態では、上述した第六の実施形態におけるロータリーアクチュエータ100Fのアウタロータ131にブレーキ機構を配した場合について説明する。
図10は、第八の実施形態のロータリーアクチュエータ100Hの主要構成を示す断面図である。なお、この
図10において、
図8に示すロータリーアクチュエータ100Fと同様の構成を有する部分には、
図8と同一符号を付し、ここでは具体的な説明は省略する。
【0067】
図10に示すように、ロータリーアクチュエータ100Hは、偏芯二軸一体型モータ110と、減速機構140Bと、ブレーキ機構150Bと、を備える。
偏芯二軸一体型モータ110は、上述した第六の実施形態におけるロータリーアクチュエータ100Fが備える偏芯二軸一体型モータ110と同一構成を有する。減速機構140Bは、上述した第六の実施形態におけるロータリーアクチュエータ100Fが備える減速機構140Bと同一構成を有する。ブレーキ機構150Bは、上述した第七の実施形態におけるロータリーアクチュエータ100Gが備えるブレーキ機構150Bと同一構成を有する。
【0068】
これにより、上述した第六の実施形態と同様に、1つのアクチュエータで可動ロール3の固定ロール2への押付け機能と、可動ロール3の材料の送り出し機能とを実現することができる。また、減速機構140Bを配することで、可動ロール3の固定ロール2への押付けトルクを増大することができる。さらに、ブレーキ機構150Bを配することで、上述した第七の実施形態と同様に、固定ロール2と可動ロール3との隙間調整後の可動ロール3の位置固定が可能となる。
【0069】
(第九の実施形態)
次に、本発明における第九の実施形態について説明する。
この第九の実施形態では、上述した第一の実施形態におけるロータリーアクチュエータ100Aのインナロータ121の他端側にも軸受を配した場合について説明する。
図11は、第九の実施形態のロータリーアクチュエータ100Iの主要構成を示す断面図である。なお、この
図11において、
図2に示すロータリーアクチュエータ100Aと同様の構成を有する部分には、
図2と同一符号を付し、ここでは具体的な説明は省略する。
【0070】
図11に示すように、ロータリーアクチュエータ100Iは、偏芯二軸一体型モータ110Aを備える。偏芯二軸一体型モータ110Aは、インナロータ121の他端側(
図11の下側)に第3軸受116が追加されていることを除いては、上述した第一の実施形態におけるロータリーアクチュエータ100Aが備える偏芯二軸一体型モータ110と同一構成を有する。
第3軸受116は、ステータ固定部111に対して内周側かつインナロータ121に対して外周側である位置に設けられている。
【0071】
このように、インナロータ121の他端側に第3軸受116を配置することで、アクチュエータの剛性を向上させることができる。
なお、本実施形態では、上述した第一の実施形態におけるロータリーアクチュエータ100Aのインナロータ121の他端側に第3軸受116を配する場合について説明したが、上述した第二の実施形態~第四の実施形態におけるロータリーアクチュエータ100B~100Dについても、同様にインナロータ121の他端側に第3軸受116を配することができる。
【0072】
また、上述した第五の実施形態~第八の実施形態におけるロータリーアクチュエータ100E~100Hについては、ステータ固定部111に対して外周側かつアウタロータ131に対して内周側である位置に、第3軸受116を配することができる。
図12は、第五の実施形態におけるロータリーアクチュエータ100Eのアウタロータ131の他端側に第3軸受116を配する場合の構成例である。
このように、ベース200に固定された回転出力部のロータ(第一の実施形態~第四の実施形態ではインナロータ121、第五の実施形態~第八の実施形態ではアウタロータ131)の軸方向両端部をそれぞれ軸受によって支持することで、当該ロータを駆動してステータ固定部111を回転させる際の剛性を向上させることができる。
【0073】
(変形例)
上記各実施形態においては、検出部(第1検出部112、第2検出部113)に近い側のロータ回転出力面をベース200との固定面とする場合について説明したが、その反対側(検出部から遠い側)のロータ回転出力面をベース200との固定面としてもよい。
また、上記各実施形態におけるロータリーアクチュエータは、駆動対象物に対して複数設けてもよい。例えば、薄膜成形装置1の可動ロール3の場合、上記各実施形態におけるロータリーアクチュエータは、可動ロール3の軸方向両端に配置してもよい。ただし、この場合、両端に配置したアクチュエータの同期が必要となる。
【0074】
さらに、上記各実施形態においては、ロータリーアクチュエータを薄膜成形装置の可動ロールの駆動に適用する場合について説明したが、上記に限定されるものではない。例えば、薄膜成形装置のテンションロールの駆動に適用することもできる。また、薄膜成形装置が備えるロール以外にも、例えばフィルムの巻取機などの薄膜搬送装置が備えるロールの駆動にも適用可能である。要は、駆動対象物は、回転駆動と位置調整とを要する部材であればよい。
また、上記各実施形態においては、2つのDDモータ(インナモータ120、アウタモータ130)は、互いに平行で異なる軸上に配置され、尚且つ、インナモータ120がアウタモータ130の内側に配置されている場合について説明した。しかしながら、2つのDDモータは直列に接続されていても実現可能である。
【符号の説明】
【0075】
1…薄膜成形装置、2…固定ロール、3…可動ロール、100A~100I…ロータリーアクチュエータ、110…偏芯二軸一体型モータ、111…ステータ固定部、120…インナモータ、121…インナロータ(内軸ロータ)、122…マグネット、123…モータステータ(内軸ステータ)、123a…ステータコア、123b…コイル、130…アウタモータ、131…アウタロータ(外軸ロータ)、132…マグネット、133…モータステータ(外軸ステータ)、133a…ステータコア、133b…コイル、140A,140B…減速機構、150A,150B…ブレーキ機構、200…ベース