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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】解体用具及び解体用具セット
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/08 20060101AFI20240611BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
E04G23/08 Z
E04H9/02 331Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020203575
(22)【出願日】2020-12-08
(65)【公開番号】P2022090954
(43)【公開日】2022-06-20
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】橋本 知慈
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 勝重
(72)【発明者】
【氏名】大軒 健太
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-217046(JP,A)
【文献】特開平10-238163(JP,A)
【文献】米国特許第04554767(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G21/14-21/22
23/00-23/08
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤上に形成された外周基礎で囲われた領域に配置される免震装置と、前記免震装置に接続される免震土台梁と、前記外周基礎に対して上下方向の上方側に対向して配置される外周土台梁と、前記免震土台梁及び前記外周土台梁により下方側から支持される建築物本体と、を有する免震建築物の解体時に用いられる解体用具であって、
前記外周基礎と前記外周土台梁との間隙に、当該外周基礎の厚みに沿った挿通方向に挿通され、前記外周基礎の上面に載置される挿通部と、
前記挿通部の一端から延びて前記外周基礎の側面に対向する第1基礎対向部と、
前記挿通部の他端から前記第1基礎対向部とは反対側に延びて前記外周土台梁の側面に対向する第1梁対向部と、を備え、
前記第1基礎対向部が前記外周基礎の側面に接するとともに前記第1梁対向部が前記外周土台梁の側面に接する状態において、前記外周基礎に対する前記外周土台梁の水平方向の変位を規制する、解体用具。
【請求項2】
前記挿通部の他端から前記第1基礎対向部と同一方向に延びて前記外周基礎の側面に対向する第2基礎対向部と、
前記挿通部の一端から前記第1梁対向部と同一方向に延びて前記外周土台梁の側面に対向する第2梁対向部と、を更に備え、
前記第2基礎対向部が前記外周基礎の側面に接するとともに前記第2梁対向部が前記外周土台梁の側面に接する状態において、前記外周基礎に対する前記外周土台梁の水平方向の変位を規制する、請求項1に記載の解体用具。
【請求項3】
前記第1基礎対向部と前記第2梁対向部とは、一体に形成されるものであって、前記挿通部の一端に接続固定されており、
前記第2基礎対向部と前記第1梁対向部とは、一体に形成されるものであって、前記挿通部の他端に接続固定されている、請求項2に記載の解体用具。
【請求項4】
前記第1基礎対向部と前記第1梁対向部との間の前記挿通方向に沿った離間距離は、下記式(1)を満たすように設定される、請求項1~3のいずれか1項に記載の解体用具。
{(D-T1)+(D-T2)}<A ・・・(1)
[式(1)中、「D」は第1基礎対向部と第1梁対向部との間の挿通方向に沿った離間距離を示し、「T1」は外周基礎の厚みを示し、「T2」は外周土台梁の挿通方向に沿った厚みを示し、「A」は免震装置による建築物本体の水平方向における移動許容量を示す。]
【請求項5】
前記挿通部と、前記第1基礎対向部及び前記第1梁対向部のうち前記外周基礎の内側に配置される側の対向部とは、前記上下方向及び前記挿通方向と直交する方向において、前記外周基礎と前記外周土台梁との前記間隙の寸法よりも短い幅寸法を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の解体用具。
【請求項6】
前記挿通部は、前記第1基礎対向部が前記外周基礎の側面に対向し、且つ前記第1梁対向部が前記外周土台梁の側面に対向した状態において、前記外周基礎の上面に対して平行に広がる面を有する載置部を有して構成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の解体用具。
【請求項7】
地盤上に形成された外周基礎で囲われた領域に配置される免震装置と、前記免震装置に接続される免震土台梁と、前記外周基礎に対して上下方向の上方側に対向して配置される外周土台梁と、前記免震土台梁及び前記外周土台梁により下方側から支持される建築物本体と、を有する免震建築物の解体時に用いられる解体用具セットであって、
請求項1~6のいずれか1項に記載の解体用具と、
複数の前記解体用具が前記外周基礎及び前記外周土台梁に沿った配列方向に間隔をあけて配列されるように、複数の前記解体用具を連結する連結部材と、を備える、解体用具セット。
【請求項8】
前記連結部材は、複数の前記解体用具における前記外周基礎及び前記外周土台梁の外側に位置する部分同士を連結することが可能である、請求項7に記載の解体用具セット。
【請求項9】
前記連結部材は、複数の前記解体用具の各々を、前記上下方向及び前記配列方向と直交する方向に延びる回転軸回りの回転による姿勢変更が可能に連結する、請求項7又は8に記載の解体用具セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震建築物の解体時に用いられる解体用具及び解体用具セットに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物本体を地盤から絶縁するように支持する免震装置を備え、地震等による地盤の揺れを建築物本体に伝わり難くした免震建築物が知られている。このような免震建築物において用いられる免震装置が、例えば特許文献1~6に開示されている。
【0003】
免震装置は、地盤の震動エネルギーを吸収し、建築物本体の揺れを緩やかな横揺れに変えることにより、建築物の倒壊や損傷を抑制するとともに、建築物内部の家具等の転倒なども抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-189143号公報
【文献】特開2001-55842号公報
【文献】特開2007-277810号公報
【文献】特許第5339521号公報
【文献】特許第6567207号公報
【文献】特公平7-35700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、免震建築物を解体する解体工事においては、重機によって建築物本体に過大な荷重をかけて、建築物本体の切断や引っ張り破壊、押し込み破壊などの作業が行われる。このような解体工事において建築物本体に過大な荷重がかけられると、免震装置に支持された状態の建築物本体が想定外の横揺れを起こす虞がある。この場合、建築物本体の想定外の部分が倒壊する可能性もあり、解体工事の安全性の低下が生じ得る。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、免震建築物の解体時において、解体工事の安全性を確保することが可能な解体用具及び解体用具セットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面に係る解体用具は、地盤上に形成された外周基礎で囲われた領域に配置される免震装置と、前記免震装置に接続される免震土台梁と、前記外周基礎に対して上下方向の上方側に対向して配置される外周土台梁と、前記免震土台梁及び前記外周土台梁により下方側から支持される建築物本体と、を有する免震建築物の解体時に用いられる用具である。この解体用具は、前記外周基礎と前記外周土台梁との間隙に、当該外周基礎の厚みに沿った挿通方向に挿通され、前記外周基礎の上面に載置される挿通部と、前記挿通部の一端から延びて前記外周基礎の側面に対向する第1基礎対向部と、前記挿通部の他端から前記第1基礎対向部とは反対側に延びて前記外周土台梁の側面に対向する第1梁対向部と、を備える。そして、前記第1基礎対向部が前記外周基礎の側面に接するとともに前記第1梁対向部が前記外周土台梁の側面に接する状態において、前記外周基礎に対する前記外周土台梁の水平方向の変位を規制する。
【0008】
この解体用具によれば、挿通部が外周基礎と外周土台梁との間隙に挿通されて外周基礎の上面に載置された状態において、第1基礎対向部が外周基礎の側面に対向し、且つ、第1梁対向部が外周土台梁の側面に対向する。このような構成では、第1基礎対向部が外周基礎の側面に接するとともに第1梁対向部が外周土台梁の側面に接する状態において、外周基礎に対する外周土台梁の水平方向の変位を規制することができる。この外周土台梁の変位の規制によって、当該外周土台梁と免震土台梁とにより支持される建築物本体の水平方向の変位も規制される。これにより、免震建築物を解体する解体工事において、免震装置に接続される免震土台梁に支持された状態の建築物本体が想定外の横揺れを起こすことを抑制することができる。このため、解体工事において建築物本体の想定外の部分の倒壊を防止できるので、解体工事の安全性を確保することが可能となる。
【0009】
上記の解体用具は、前記挿通部の他端から前記第1基礎対向部と同一方向に延びて前記外周基礎の側面に対向する第2基礎対向部と、前記挿通部の一端から前記第1梁対向部と同一方向に延びて前記外周土台梁の側面に対向する第2梁対向部と、を更に備える。そして、前記第2基礎対向部が前記外周基礎の側面に接するとともに前記第2梁対向部が前記外周土台梁の側面に接する状態において、前記外周基礎に対する前記外周土台梁の水平方向の変位を規制する。
【0010】
この態様では、挿通部が外周基礎と外周土台梁との間隙に挿通されて外周基礎の上面に載置された状態において、第1基礎対向部及び第2基礎対向部が外周基礎を挟み込むように当該外周基礎の両側面に対向し、且つ、第1梁対向部及び第2梁対向部が外周土台梁の両側面に対向する。このような構成では、第1基礎対向部が外周基礎の側面に接するとともに第1梁対向部が外周土台梁の側面に接する状態に加えて、第2基礎対向部が外周基礎の側面に接するとともに第2梁対向部が外周土台梁の側面に接する状態においても、外周基礎に対する外周土台梁の水平方向の変位を規制することができる。これにより、免震建築物を解体する解体工事において、免震装置に接続される免震土台梁に支持された状態の建築物本体が想定外の横揺れを起こすことをより確実に抑制することができる。
【0011】
上記の解体用具において、前記第1基礎対向部と前記第2梁対向部とは、一体に形成されるものであって、前記挿通部の一端に接続固定されており、前記第2基礎対向部と前記第1梁対向部とは、一体に形成されるものであって、前記挿通部の他端に接続固定されている。
【0012】
この態様では、第1基礎対向部と第2梁対向部との一体物が挿通部の一端に接続固定され、第2基礎対向部と第1梁対向部との一体物が挿通部の他端に接続固定されるという簡単な構造によって、解体用具を実現することができる。
【0013】
上記の解体用具において、前記第1基礎対向部と前記第1梁対向部との間の前記挿通方向に沿った離間距離は、下記式(1)を満たすように設定される。
{(D-T1)+(D-T2)}<A ・・・(1)
【0014】
式(1)中、「D」は第1基礎対向部と第1梁対向部との間の挿通方向に沿った離間距離を示し、「T1」は外周基礎の厚みを示し、「T2」は外周土台梁の挿通方向に沿った厚みを示し、「A」は免震装置による建築物本体の水平方向における移動許容量を示す。
【0015】
この態様では、第1基礎対向部と第1梁対向部との間の挿通方向に沿った離間距離が、免震装置による建築物本体の水平方向における移動許容量に基づいて設定される。これにより、外周基礎に対して外周土台梁が免震装置の前記移動許容量を超えて変位しようとした場合には確実に、第1基礎対向部が外周基礎の側面に接するとともに第1梁対向部が外周土台梁の側面に接する。このため、外周基礎に対する外周土台梁の水平方向の変位量を、免震装置の前記移動許容量よりも小さくすることができる。
【0016】
上記の解体用具において、前記挿通部と、前記第1基礎対向部及び前記第1梁対向部のうち前記外周基礎の内側に配置される側の対向部とは、前記上下方向及び前記挿通方向と直交する方向において、前記外周基礎と前記外周土台梁との前記間隙の寸法よりも短い幅寸法を有する。
【0017】
この態様では、外周基礎の上面に挿通部が載置されるように解体用具を外周基礎と外周土台梁との間隙に配置するときに、挿通部と、第1基礎対向部及び第1梁対向部のうち外周基礎の内側に配置される側の対向部とを、外周基礎及び外周土台梁の外側から内側に向かって前記間隙を通過させることができる。そして、挿通部が前記間隙に位置し、且つ、第1基礎対向部及び第1梁対向部のうち外周基礎の内側に配置される側の対向部が外周基礎の内側に位置した状態で、解体用具を90度回転させることにより、第1基礎対向部が外周基礎の側面に対向し、且つ、第1梁対向部が外周土台梁の側面に対向するように、解体用具を前記間隙に配置することができる。
【0018】
上記の解体用具において、前記挿通部は、前記第1基礎対向部が前記外周基礎の側面に対向し、且つ前記第1梁対向部が前記外周土台梁の側面に対向した状態において、前記外周基礎の上面に対して平行に広がる面を有する載置部を有して構成されている。
【0019】
この態様では、挿通部は、外周基礎の上面に対して平行に広がる面を有する載置部を有して構成されることにより、外周基礎の上面における安定した載置状態の維持が可能となる。これにより、解体用具は、挿通部が外周基礎の上面に載置された状態において、第1基礎対向部が外周基礎の側面に対向し、且つ、第1梁対向部が外周土台梁の側面に対向する姿勢を、安定して維持することができる。
【0020】
本発明の他の局面に係る解体用具セットは、地盤上に形成された外周基礎で囲われた領域に配置される免震装置と、前記免震装置に接続される免震土台梁と、前記外周基礎に対して上下方向の上方側に対向して配置される外周土台梁と、前記免震土台梁及び前記外周土台梁により下方側から支持される建築物本体と、を有する免震建築物の解体時に用いられる用具セットである。この解体用具セットは、上記の解体用具と、複数の前記解体用具が前記外周基礎及び前記外周土台梁に沿った配列方向に間隔をあけて配列されるように、複数の前記解体用具を連結する連結部材と、を備える。
【0021】
この解体用具セットによれば、複数の解体用具が外周基礎及び外周土台梁に沿った配列方向に間隔をあけて配列された状態で連結部材によって連結される。すなわち、免震建築物の解体工事において解体用具セットを用いることにより、連結部材によって連結された状態の複数の解体用具を、外周基礎と外周土台梁との間隙に配置することができる。これにより、各解体用具は、挿通部が外周基礎の上面に載置された状態において、第1基礎対向部が外周基礎の側面に対向し、且つ、第1梁対向部が外周土台梁の側面に対向する姿勢を、より安定して維持することができる。
【0022】
上記の解体用具セットにおいて、前記連結部材は、複数の前記解体用具における前記外周基礎及び前記外周土台梁の外側に位置する部分同士を連結することが可能である。
【0023】
この態様では、外周基礎と外周土台梁との間隙に配置された複数の解体用具において、外周基礎及び外周土台梁の外側に位置する部分同士が、連結部材によって連結される。すなわち、複数の解体用具を連結部材によって連結するときに、外周基礎及び外周土台梁の外側から連結することができる。
【0024】
上記の解体用具セットにおいて、前記連結部材は、複数の前記解体用具の各々を、前記上下方向及び前記配列方向と直交する方向に延びる回転軸回りの回転による姿勢変更が可能に連結する。
【0025】
この態様では、複数の解体用具が連結部材によって連結された状態において、当該複数の解体用具の各々を回転させて姿勢変更させることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明によれば、免震建築物の解体時において、解体工事の安全性を確保することが可能な解体用具及び解体用具セットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1実施形態に係る解体用具セットを免震建築物の解体時に適用した状態を示す図である。
図2】第1実施形態に係る解体用具セットを免震建築物の解体時に適用した状態を上方から見た図である。
図3】第1実施形態に係る解体用具セットを構成する解体用具の斜視図である。
図4】第1実施形態に係る解体用具セットにおいて各解体用具が変位規制姿勢を取った状態を示す斜視図である。
図5】第1実施形態に係る解体用具セットにおいて各解体用具が挿通可能姿勢を取った状態を示す斜視図である。
図6】第2実施形態に係る解体用具セットを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態に係る解体用具及び解体用具セットについて、図面に基づいて説明する。
【0029】
(第1実施形態)
図1及び図2を参照して、第1実施形態に係る解体用具2を備えた解体用具セット1を免震建築物100の解体時に適用した状態について説明する。解体用具セット1及び解体用具2を説明するに先立って、免震建築物100について説明する。
【0030】
免震建築物100は、例えば免震住宅である。免震建築物100は、基礎101、土台梁102、免震装置103、及び建築物本体104を備えている。
【0031】
基礎101は、グランドレベルGLを上下方向H1(鉛直方向)に跨ぐように地盤Gに設置される。基礎101は、外周基礎1011と免震基礎1012とを含む。
【0032】
外周基礎1011は、例えばコンクリートから構成されている。外周基礎1011は、地盤G上に形成され、基礎101の外郭を構成する。すなわち、地盤G上において外周基礎1011で囲われた領域に免震建築物100が建設される。外周基礎1011の外側面101A及び内側面101Bは、地盤Gに対して垂直に広がる鉛直面となっている。外周基礎1011の上面101Cは、外側面101A及び内側面101Bの上端縁同士を接続する面であり、地盤Gと平行な水平に広がる水平面となっている。
【0033】
免震基礎1012は、例えばコンクリートから構成されている。免震基礎1012は、地盤G上において外周基礎1011で囲われた領域に設けられる。免震基礎1012は、外周基礎1011で囲われた領域において、免震装置103の設置箇所を規定する。外周基礎1011で囲われた領域における免震基礎1012の配置箇所は、建築物本体104の構造に応じて決められる。
【0034】
土台梁102は、建築物本体104の下端部に接続固定され、当該建築物本体104を下方側から支持する梁である。土台梁102は、外周土台梁1021と免震土台梁1022とを含む。外周土台梁1021と免震土台梁1022とは、建築物本体104を支持するためのそれぞれの上面が地盤Gに平行な同一水平面上に含まれるように、互いに結合されている。
【0035】
外周土台梁1021は、例えば複数の鋼材が連結されることにより構成される。外周土台梁1021は、外周基礎1011に対して上下方向H1の上方側に対向して配置される土台梁である。外周土台梁1021は、建築物本体104の下端部における外周縁部に接続固定される。免震土台梁1022は、例えば複数の鋼材が連結されることにより構成される。免震土台梁1022は、免震装置103の上方側において免震支承1031に接続される土台梁である。免震土台梁1022は、建築物本体104の下端部における外周縁部の内側の領域に接続固定される。
【0036】
建築物本体104は、外周土台梁1021及び免震土台梁1022が接続固定された状態において、当該外周土台梁1021及び免震土台梁1022によって下方側から支持される。
【0037】
免震装置103は、免震基礎1012上に設置される。免震装置103は、外周土台梁1021及び免震土台梁1022に接続固定された建築物本体104を地盤Gから絶縁するように支持する装置である。免震装置103は、地震等による地盤Gの揺れを建築物本体104に伝わり難くする。免震装置103は、地盤Gの震動エネルギーを吸収し、建築物本体104の揺れを緩やかな横揺れ(水平方向の揺れ)に変える。すなわち、免震装置103は、建築物本体104の水平方向の移動が所定の移動許容量の範囲に収まるように、外周土台梁1021及び免震土台梁1022に接続固定された建築物本体104を支持する。これにより、免震装置103は、建築物本体104の倒壊や損傷を抑制するとともに、建築物本体104の内部の家具等の転倒なども抑制する。
【0038】
免震装置103は、免震支承1031を含む。免震支承1031は、免震土台梁1022に接続固定され、当該免震土台梁1022を下方側から支持する。免震支承1031は、免震土台梁1022と結合された外周土台梁1021と外周基礎1011との間に間隙GPが生じるように、免震土台梁1022を下方側から支持する。これにより、免震支承1031は、外周土台梁1021及び免震土台梁1022に接続固定された建築物本体104を地盤Gから絶縁させる。
【0039】
免震支承1031の構造は特に限定されるものではなく、転がり支承や滑り支承などから選ばれる構造を採用することができる。転がり支承は、凹面状の受け皿の上を鋼玉が転がるように構成されたものであり、1つの鋼玉を使用する単球型と、大小2種の鋼玉を使用する複球型がある。滑り支承は、皿又は板の上を支承が滑るように構成されたものである。なお、図1には、複球型の転がり支承を採用した免震支承1031が示されている。
【0040】
上記のような免震装置103を備えた免震建築物100を解体する解体工事においては、重機によって建築物本体104に過大な荷重をかけて、建築物本体104の切断や引っ張り破壊、押し込み破壊などの作業が行われる。このような解体工事において建築物本体104に過大な荷重がかけられると、免震土台梁1022を介して免震装置103に支持された状態の建築物本体104が想定外の横揺れ(水平方向の揺れ)を起こす虞がある。この場合、建築物本体04の想定外の部分が倒壊する可能性もあり、解体工事の安全性の低下が生じ得る。
【0041】
免震建築物100の解体工事の安全性を確保するために用いられるのが、解体用具セット1及び解体用具2である。この解体用具セット1及び解体用具2について、図1及び図2に加えて、図3図5を参照して説明する。図1及び図2では、免震建築物100の解体工事において解体用具セット1を用いる例が示されているが、解体用具セット1に備えられる解体用具2のみを用いてもよい。
【0042】
解体用具2は、免震建築物100の解体工事において、免震装置103に接続される免震土台梁1022に支持された状態の建築物本体104が想定外の横揺れを起こすことを抑制するための用具である。解体用具2は、解体工事において建築物本体104に荷重がかけられたときに変形しないような強靭な鋼材から構成されている。解体用具2は、平面視でH型の形状に形成される。解体用具2は、図3に示されるように、挿通部21と、基礎対向部22と、梁対向部23とを備えている。
【0043】
挿通部21は、外周基礎1011と外周土台梁1021との間隙GPに、外周基礎1011の厚みに沿った水平な挿通方向H2に挿通される棒状部材である。挿通部21は、間隙GPに挿通された状態において外周基礎1011の上面101Cに載置される。
【0044】
基礎対向部22は、解体用具2において外周基礎1011の側面に対向する部分である。基礎対向部22は、第1基礎対向部221と第2基礎対向部222とを有している。第1基礎対向部221は、基礎対向部22において、挿通部21の一端から垂直に延びて外周基礎1011の外側面101Aに対向する部位である。第1基礎対向部221の挿通部21からの突出長さL21は、外周基礎1011と外周土台梁1021との間隙GPの寸法よりも長い。なお、第1基礎対向部221は、外周基礎1011の外側面101Aに対向するように構成されていれば、挿通部21の一端から垂直に延びていなくても構わない。第2基礎対向部222は、基礎対向部22において、挿通部21の他端から垂直に延びて外周基礎1011の内側面101Bに対向する部位である。第2基礎対向部222の挿通部21からの突出長さL31は、外周基礎1011と外周土台梁1021との間隙GPの寸法よりも長く、第1基礎対向部221の突出長さL21と同じ値に設定されている。なお、第2基礎対向部222は、外周基礎1011の内側面101Bに対向するように構成されていれば、挿通部21の他端から垂直に延びていなくても構わない。基礎対向部22は、第1基礎対向部221が外周基礎1011の外側面101Aに対向し、且つ、第2基礎対向部222が外周基礎1011の内側面101Bに対向した状態において、外周基礎1011を挟み込む。
【0045】
梁対向部23は、解体用具2において外周土台梁1021の側面に対向する部分である。梁対向部23は、第1梁対向部231と第2梁対向部232とを有している。第1梁対向部231は、梁対向部23において、挿通部21の他端から垂直に第2基礎対向部222とは反対側に延びて外周土台梁1021の内側面102Bに対向する部位である。第1梁対向部231の挿通部21からの突出長さL41は、外周基礎1011と外周土台梁1021との間隙GPの寸法よりも長い。なお、第1梁対向部231は、外周土台梁1021の内側面102Bに対向するように構成されていれば、挿通部21の他端から垂直に延びていなくても構わない。第2梁対向部232は、梁対向部23において、挿通部21の一端から垂直に第1基礎対向部221とは反対側に延びて外周土台梁1021の外側面102Aに対向する部位である。第2梁対向部232の挿通部21からの突出長さL51は、外周基礎1011と外周土台梁1021との間隙GPの寸法よりも長く、第1梁対向部231の突出長さL41と同じ値に設定されている。なお、第2梁対向部232は、外周土台梁1021の外側面102Aに対向するように構成されていれば、挿通部21の一端から垂直に延びていなくても構わない。
【0046】
解体用具2では、挿通部21が外周基礎1011と外周土台梁1021との間隙GPに挿通されて外周基礎1011の上面101Cに載置された状態において、第1基礎対向部221及び第2基礎対向部222が外周基礎1011を挟み込むように当該外周基礎1011の両側面101A,101Bに対向し、且つ、第1梁対向部231及び第2梁対向部232が外周土台梁1021の両側面102A,102Bに対向する。このような構成では、第1基礎対向部221が外周基礎1011の外側面101Aに接するとともに第1梁対向部231が外周土台梁1021の内側面102Bに接する状態において、外周基礎1011に対する外周土台梁1021の挿通方向H2内側への水平方向の変位を規制する。更に、第2基礎対向部222が外周基礎1011の内側面101Bに接するとともに第2梁対向部232が外周土台梁1021の外側面102Aに接する状態において、外周基礎1011に対する外周土台梁1021の挿通方向H2外側への水平方向の変位を規制する。この外周土台梁1021の変位の規制によって、当該外周土台梁1021と免震土台梁1022とにより支持される建築物本体104の変位も規制される。これにより、免震建築物100の解体工事において、免震装置103に接続される免震土台梁1022に支持された状態の建築物本体104が想定外の横揺れを起こすことを抑制することができる。このため、解体工事において建築物本体104の想定外の部分の倒壊を防止できるので、解体工事の安全性を確保することが可能となる。
【0047】
また、解体用具2において、第1基礎対向部221と第1梁対向部231との間の挿通方向H2に沿った離間距離と、第2基礎対向部222と第2梁対向部232との間の挿通方向H2に沿った離間距離とは、同じ値であり、挿通部21の挿通方向H2に沿った長さに一致している。当該離間距離は、下記式(1)を満たすように設定される。
{(D-T1)+(D-T2)}<A ・・・(1)
【0048】
式(1)中、「D」は前記離間距離を示し、「T1」は外周基礎1011の厚みを示し、「T2」は外周土台梁1021の挿通方向H2に沿った厚みを示し、「A」は免震装置103による建築物本体104の水平方向における移動許容量を示す。
【0049】
上記式(1)の左辺における「(D-T1)」は、第1基礎対向部221及び第2基礎対向部222の各々と外周基礎1011との間の隙間寸法の合計値を表すことになる。上記式(1)の左辺における「(D-T2)」は、第1梁対向部231及び第2梁対向部232の各々と外周土台梁1021との間の隙間寸法の合計値を表すことになる。
【0050】
上記式(1)を満たすように設定される前記離間距離Dについて換言すると、第1基礎対向部221と外周基礎1011との間の隙間寸法と、第1梁対向部231と外周土台梁1021との間の隙間寸法との合計値が、免震装置103による建築物本体104の移動許容量Aの半分の値よりも小さくなるように、前記離間距離Dが設定される。
【0051】
上記のように、前記離間距離Dが、免震装置103による建築物本体104の水平方向における移動許容量Aに基づいて設定される。これにより、外周基礎1011に対して外周土台梁1021が免震装置103の前記移動許容量Aを超えて変位しようとした場合には確実に、第1基礎対向部221及び第2基礎対向部222が外周基礎1011の側面101A,101Bに接するとともに第1梁対向部231及び第2梁対向部232が外周土台梁1021の側面102A,102Bに接する。このため、外周基礎1011に対する外周土台梁1021の水平方向の変位量を、免震装置103の前記移動許容量Aよりも小さくすることができる。
【0052】
挿通部21は、第1基礎対向部221及び第2基礎対向部222が外周基礎1011の側面101A,101Bに対向し、且つ、第1梁対向部231及び第2梁対向部232が外周土台梁1021の側面102A,102Bに対向した状態において、外周基礎1011の上面101Cに対して平行に広がる面を有する載置部211を有して構成されていることが望ましい。この場合、挿通部21は、例えば、載置部211を有する角筒体又は角柱体からなる鋼材によって構成されている。図3に示す例では、挿通部21は、四角筒体からなる鋼材によって構成されている。これにより、挿通部21は、外周基礎1011の上面101Cにおける安定した載置状態の維持が可能となる。このため、解体用具2は、挿通部21が外周基礎1011の上面101Cに載置された状態において、第1基礎対向部221及び第2基礎対向部222が外周基礎1011の側面101A,101Bに対向し、且つ、第1梁対向部231及び第2梁対向部232が外周土台梁1021の側面102A,102Bに対向する姿勢(以下、「変位規制姿勢」という)を、安定して維持することができる。この結果、免震建築物100の解体工事において、建築物本体104が想定外の横揺れを起こすことを、安定して抑制することができる。
【0053】
また、図3に示されるように、第1基礎対向部221と第2梁対向部232とは、一体に形成されるものであって、挿通部21の一端に接続固定される棒状部材から構成されている。同様に、第2基礎対向部222と第1梁対向部231とは、一体に形成されるものであって、挿通部21の他端に接続固定される棒状部材から構成されている。このような構成では、平面視でH型の形状となるように、棒状の挿通部21の一端及び他端のそれぞれに棒状部材が接続固定されるという簡単な構造によって、解体用具2を実現することができる。この場合、第1基礎対向部221及び第2梁対向部232を構成する棒状部材と、第2基礎対向部222及び第1梁対向部231を構成する棒状部材との、各棒状部材の形状は、特に限定されるものではない。各棒状部材は、挿通部21と同様に、角筒体又は角柱体からなる鋼材によって構成されてもよい。図3に示す例では、各棒状部材は、四角筒体からなる鋼材によって構成されている。
【0054】
また、解体用具2が変位規制姿勢を取った状態において、上下方向H1及び挿通方向H2と直交する外周基礎1011に沿った方向H3(以下、「配列方向H3」という)に関して、挿通部21の幅寸法W11、第2基礎対向部222の幅寸法W31、及び第1梁対向部231の幅寸法W41は、外周基礎1011と外周土台梁1021との間隙GPの寸法よりも短い。なお、基礎対向部22を構成する第1基礎対向部221及び第2基礎対向部222において、第2基礎対向部222は、外周基礎1011の内側に配置される側の対向部である。また、梁対向部23を構成する第1梁対向部231及び第2梁対向部232において、第1梁対向部231は、外周基礎1011の内側に配置される側の対向部である。
【0055】
この場合、挿通方向H2に延びる回転軸回りに解体用具2を変位規制姿勢から90度回転させた姿勢(以下、「挿通可能姿勢」という)とした状態で、挿通部21、第2基礎対向部222及び第1梁対向部231を、外周基礎1011及び外周土台梁1021の外側から内側に向かって間隙GPを通過させることができる。そして、挿通部21が間隙GPに位置し、且つ、第2基礎対向部222及び第1梁対向部231が外周基礎1011及び外周土台梁1021の内側に位置した状態で、解体用具2を挿通可能姿勢から90度回転させて変位規制姿勢とする。これにより、挿通部21が外周基礎1011の上面101Cに載置されるとともに、第1基礎対向部221及び第2基礎対向部222が外周基礎1011の側面101A,101Bに対向し、且つ、第1梁対向部231及び第2梁対向部232が外周土台梁1021の側面102A,102Bに対向するような変位規制姿勢を取った状態で、解体用具2を間隙GPに配置することができる。
【0056】
図3に示す例では、挿通部21の幅寸法W11、第2基礎対向部222の幅寸法W31、及び第1梁対向部231の幅寸法W41は、間隙GPの寸法よりも短い同じ値に設定されている。
【0057】
解体用具2が変位規制姿勢を取った状態において、挿通部21における上下方向H1に沿った幅寸法W12は、外周基礎1011と外周土台梁1021との間隙GPの寸法よりも短い。挿通部21において幅寸法W11と幅寸法W12とは、例えば同じ値に設定されている。第2基礎対向部222の挿通方向H2に沿った幅寸法W32は、外周基礎1011と外周土台梁1021との間隙GPの寸法よりも短い値に設定する必要はない。第2基礎対向部222の幅寸法W32は、間隙GPの寸法以上の値に設定されてもよいが、間隙GPの寸法よりも短い幅寸法W31と同じ値に設定されている。同様に、第1梁対向部231の挿通方向H2に沿った幅寸法W42は、外周基礎1011と外周土台梁1021との間隙GPの寸法よりも短い値に設定する必要はない。第1梁対向部231の幅寸法W42は、間隙GPの寸法以上の値に設定されてもよいが、間隙GPの寸法よりも短い幅寸法W41と同じ値に設定されている。
【0058】
第1基礎対向部221において、配列方向H3に沿った幅寸法W21と、挿通方向H2に沿った幅寸法W22とは、外周基礎1011と外周土台梁1021との間隙GPの寸法よりも短い値に設定する必要はない。第1基礎対向部221の幅寸法W21及び幅寸法W22は、間隙GPの寸法以上の値に設定されてもよいが、間隙GPの寸法よりも短い第2基礎対向部222の幅寸法W31及び幅寸法W32と同じ値に設定されている。同様に、第2梁対向部232において、配列方向H3に沿った幅寸法W51と、挿通方向H2に沿った幅寸法W52とは、外周基礎1011と外周土台梁1021との間隙GPの寸法よりも短い値に設定する必要はない。第2梁対向部232の幅寸法W51及び幅寸法W52は、間隙GPの寸法以上の値に設定されてもよいが、間隙GPの寸法よりも短い第1梁対向部231の幅寸法W41及び幅寸法W42と同じ値に設定されている。
【0059】
本実施形態では、挿通部21の各幅寸法W11,W12と、第1基礎対向部221の各幅寸法W21,W22と、第2基礎対向部222の各幅寸法W31,W32と、第1梁対向部231の各幅寸法W41,W42と、第2梁対向部232の各幅寸法W51,W52との、全ての幅寸法が同じ値に設定されている。これにより、挿通部21を構成する棒状部材と、第1基礎対向部221及び第2梁対向部232を構成する棒状部材と、第2基礎対向部222及び第1梁対向部231を構成する棒状部材として、同一の角筒体又は角柱体からなる鋼材を用いることができる。すなわち、一種の鋼材を用いて、平面視でH型の解体用具2を作製することができる。
【0060】
次に、図1図2図4及び図5を参照して、解体用具セット1について説明する。解体用具セット1は、免震建築物100の解体工事において用いられる用具セットである。図2に示されるように、解体用具セット1は、外周基礎1011及び外周土台梁1021に沿った複数箇所に設置される。解体用具セット1は、上記の複数の解体用具2と、連結部材3とを備えている。解体用具セット1に備えられる解体用具2の数は、2以上であれば特に限定されるものではない。解体用具セット1は、例えば2つの解体用具2を備えている。
【0061】
連結部材3は、複数の解体用具2が外周基礎1011及び外周土台梁1021に沿った配列方向H3に間隔をあけて配列されるように、複数の解体用具2を連結する。免震建築物100の解体工事において解体用具セット1を用いることにより、連結部材3によって連結された状態の複数の解体用具2を、外周基礎1011と外周土台梁1021との間隙GPに配置することができる。これにより、各解体用具2は、挿通部21が外周基礎1011の上面101Cに載置された状態において、第1基礎対向部221及び第2基礎対向部222が外周基礎1011の側面101A,101Bに対向し、且つ、第1梁対向部231及び第2梁対向部232が外周土台梁1021の側面102A,102Bに対向する姿勢を、より安定して維持することができる。
【0062】
連結部材3は、複数の解体用具2における外周基礎1011及び外周土台梁1021の外側に位置する部分同士を連結することが可能である。具体的には、図4に示されるように、複数の解体用具2が変位規制姿勢を取った状態において、連結部材3は、各解体用具2における第1基礎対向部221及び第2梁対向部232を構成する各棒状部材の上下方向H1の中央付近を互いに連結する。この場合、複数の解体用具2を連結部材3によって連結するときに、外周基礎1011及び外周土台梁1021の外側から連結することができる。
【0063】
図4に示されるように、連結部材3は、連結板31と、連結ボルト32と、連結片33とを含む。連結板31は、配列方向H3に延びる板状部材であり、連結対象の解体用具2と同数のボルト挿通孔311を有している。ボルト挿通孔311は、連結ボルト32の軸部が挿通される孔であり、配列方向H3に沿った長孔状に形成されている。連結板31は、解体用具2と同種の鋼材から構成されている。連結片33は、解体用具2における第1基礎対向部221及び第2梁対向部232を構成する棒状部材に固設されている。連結片33は、連結ボルト32の軸部が挿通される挿通孔を有している。このような構成の連結部材3では、連結ボルト32が連結板31のボルト挿通孔311及び連結片33の挿通孔に挿通された状態における当該連結ボルト32とナット321との螺合によって連結板31と連結片33とを締結することにより、複数の解体用具2を連結することができる。なお、連結片33を省略して、複数の解体用具2を連結してもよい。
【0064】
また、連結部材3は、複数の解体用具2の各々を、上下方向H1及び配列方向H3と直交する挿通方向H2に延びる回転軸J1回りの回転による姿勢変更が可能に連結する。すなわち、複数の解体用具2が連結部材3によって連結された状態において、当該複数の解体用具2の各々を回転軸J1回りに回転させて姿勢変更させることができる。具体的には、連結ボルト32による連結板31と連結片33との締め付けを緩めた状態で、連結ボルト32を回転軸J1として各解体用具2を回転させることにより、各解体用具2の姿勢変更が可能である。
【0065】
免震建築物100の解体工事に際しては、外周基礎1011と外周土台梁1021との間隙GPに解体用具セット1を配置するときに、連結ボルト32による連結板31と連結片33との締め付けを緩めて、各解体用具2を挿通可能姿勢とする(図5参照)。既述の通り、各解体用具2が図4に示される変位規制姿勢を取った状態から、各解体用具2を回転軸J1回りに90度回転させた姿勢が、挿通可能姿勢である。
【0066】
各解体用具2を挿通可能姿勢とした状態で、各解体用具2における挿通部21、第2基礎対向部222及び第1梁対向部231を、外周基礎1011及び外周土台梁1021の外側から内側に向かって間隙GPを通過させる。そして、挿通部21が間隙GPに位置し、且つ、第2基礎対向部222及び第1梁対向部231が外周基礎1011及び外周土台梁1021の内側に位置した状態で、各解体用具2を挿通可能姿勢から90度回転させて変位規制姿勢とする。このように各解体用具2が変位規制姿勢を取った状態で、連結板31と連結片33とを連結ボルト32によって締め付け固定する。これにより、各解体用具2が連結部材3によって連結されて変位規制姿勢を取った状態で、各解体用具2を外周基礎1011と外周土台梁1021との間隙GPに配置することができる。
【0067】
解体用具セット1において各解体用具2が変位規制姿勢を取った状態では、各解体用具2において、挿通部21が外周基礎1011の上面101Cに載置されるとともに、第1基礎対向部221及び第2基礎対向部222が外周基礎1011の側面101A,101Bに対向し、且つ、第1梁対向部231及び第2梁対向部232が外周土台梁1021の側面102A,102Bに対向する。これにより、第1基礎対向部221及び第2基礎対向部222が外周基礎1011の側面101A,101Bに接するとともに第1梁対向部231及び第2梁対向部232が外周土台梁1021の側面102A,102Bに接する状態において、外周基礎1011に対する外周土台梁10の水平方向の変位を規制することができる。この外周土台梁1021の変位の規制によって、当該外周土台梁1021と免震土台梁1022とにより支持される建築物本体104の変位も規制される。これにより、免震建築物100の解体工事において、免震装置103に接続される免震土台梁1022に支持された状態の建築物本体104が想定外の横揺れを起こすことを抑制することができる。このため、解体工事において建築物本体104の想定外の部分の倒壊を防止できるので、解体工事の安全性を確保することが可能となる。
【0068】
(第2実施形態)
図6を参照して、第2実施形態に係る解体用具2Aを備えた解体用具セット1Aを説明する。
【0069】
解体用具2Aは、上記の第1実施形態に係る解体用具2と同様に、解体工事において建築物本体104に荷重がかけられたときに変形しないような強靭な鋼材から構成されている。解体用具2Aは、挿通部21と、基礎対向部22と、梁対向部23とを備えている。
【0070】
解体用具2Aと解体用具2との相違点は、次の通りである。すなわち、解体用具2では、基礎対向部22が第1基礎対向部221と第2基礎対向部222とを有しているのに対し、解体用具2Aでは、基礎対向部22は第1基礎対向部221のみを有している。また、解体用具2では、梁対向部23が第1梁対向部231と第2梁対向部232とを有しているのに対し、解体用具2Aでは、梁対向部23は第1梁対向部231のみを有している。これらのこと以外は、解体用具2Aは解体用具2と同様に構成されている。
【0071】
つまり、解体用具2Aは、挿通部21と、第1基礎対向部221と、第1梁対向部231とを備えている。挿通部21は、外周基礎1011と外周土台梁1021との間隙GPに挿通された状態で外周基礎1011の上面101Cに載置される。第1基礎対向部221は、挿通部21の一端から垂直に延びて外周基礎1011の側面に対向する。第1梁対向部231は、挿通部21の他端から垂直に第1基礎対向部221とは反対側に延びて外周土台梁1021の側面に対向する。
【0072】
解体用具2Aでは、挿通部21が外周基礎1011と外周土台梁1021との間隙GPに挿通されて外周基礎1011の上面101Cに載置された状態において、第1基礎対向部221が外周基礎1011の外側面101Aに対向する場合には、第1梁対向部231は外周土台梁1021の内側面102Bに対向する。一方、第1基礎対向部221が外周基礎1011の内側面101Bに対向する場合には、第1梁対向部231は外周土台梁1021の外側面102Aに対向する。このような構成では、第1基礎対向部221が外周基礎1011の側面に接するとともに第1梁対向部231が外周土台梁1021の側面に接する状態において、外周基礎1011に対する外周土台梁1021の水平方向の変位を規制する。この外周土台梁1021の変位の規制によって、当該外周土台梁1021と免震土台梁1022とにより支持される建築物本体104の変位も規制される。これにより、免震建築物100の解体工事において、免震装置103に接続される免震土台梁1022に支持された状態の建築物本体104が想定外の横揺れを起こすことを抑制することができる。
【0073】
また、解体用具2Aにおいて、第1基礎対向部221と第1梁対向部231との間の挿通方向H2に沿った離間距離Dは、上記式(1)を満たすように設定される。これにより、外周基礎1011に対して外周土台梁1021が免震装置103の移動許容量Aを超えて変位しようとした場合に、第1基礎対向部221が外周基礎1011の側面に接するとともに第1梁対向部231が外周土台梁1021の側面に接する。このため、外周基礎1011に対する外周土台梁1021の水平方向の変位量を、免震装置103の移動許容量Aよりも小さくすることができる。
【0074】
解体用具セット1Aは、外周基礎1011及び外周土台梁1021に沿った複数箇所に設置される。解体用具セット1Aは、上記の複数の解体用具2Aと、連結部材3とを備えている。解体用具セット1Aは、例えば2つの解体用具2Aを備えている。
【0075】
連結部材3は、2つの解体用具2Aが外周基礎1011及び外周土台梁1021に沿った配列方向H3に間隔をあけて配列されるように、各解体用具2Aを連結する。図6に示される例では、連結部材3は、一方の解体用具2Aの第1基礎対向部221と、他方の解体用具2Aの第1梁対向部231とを連結する。このような連結状態の解体用具セット1Aでは、2つの解体用具2Aの各第1基礎対向部221が外周基礎1011を挟み込むように当該外周基礎1011の両側面101A,101Bに対向し、且つ、2つの解体用具2Aの各第1梁対向部231が外周土台梁1021の両側面102A,102Bに対向する。これにより、外周基礎1011に対する外周土台梁1021の挿通方向H2両側への水平方向の変位を規制することができる。
【符号の説明】
【0076】
1,1A 解体用具セット
2,2A 解体用具
21 挿通部
22 基礎対向部
221 第1基礎対向部
222 第2基礎対向部
23 梁対向部
231 第1梁対向部
232 第2梁対向部
3 連結部材
100 免震建築物
1011 外周基礎
1012 免震基礎
1021 外周土台梁
1022 免震土台梁
103 免震装置
104 建築物本体
GP 間隙
図1
図2
図3
図4
図5
図6