IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

<>
  • 特許-車両の非常停止装置 図1
  • 特許-車両の非常停止装置 図2
  • 特許-車両の非常停止装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】車両の非常停止装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/02 20120101AFI20240611BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20240611BHJP
   B60R 16/04 20060101ALI20240611BHJP
   B60W 50/10 20120101ALI20240611BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20240611BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
B60W50/02
B60R16/02 650V
B60R16/04 S
B60W50/10
B60W60/00
H02J7/34 F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020218860
(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公開番号】P2022103937
(43)【公開日】2022-07-08
【審査請求日】2023-03-13
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センター「革新的技術開発・緊急展開事業(うち人工知能未来農業創造プロジェクト)」、産業技術力強化法第17条の適用を受けるもの
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】野々垣 保紀
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-096487(JP,A)
【文献】特開2020-083221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 50/02
B60R 16/02
B60R 16/04
B60W 50/10
B60W 60/00
H02J 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器に電力を供給する主バッテリと、前記主バッテリと前記電気機器との接続を開閉するコンタクタと、前記コンタクタと接続され、前記主バッテリを充電するための充電器と、自動運転を行うように制御する自動運転制御装置と、前記自動運転制御装置に電力を供給する補助バッテリと、前記自動運転と手動運転とを切り換えるための運転切換スイッチとを具備した車両の非常停止装置であって、
前記車両が非常停止される状態であるかどうかを検知する検知部と、
前記検知部により前記車両が非常停止される状態であることが検知されたときに、前記コンタクタを遮断する電源遮断部と、
前記コンタクタを遮断する動作を無効化するための無効化スイッチと
前記コンタクタを強制的に遮断するための電源遮断スイッチと、
前記無効化スイッチがON操作されたときに、前記運転切換スイッチが前記自動運転に設定されている状態でも、前記自動運転を許可しないように切り換える切換部とを備える車両の非常停止装置。
【請求項2】
前記切換部は、前記無効化スイッチと連動している請求項記載の車両の非常停止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の非常停止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の非常停止装置としては、例えば特許文献1に記載されている技術が知られている。特許文献1に記載の非常停止装置は、自動運転を行うフォークリフトに具備されている。フォークリフトの走行中に異常等が発生することで、非常停止ボタンまたは自動運転コントローラから非常停止回路に非常停止の指令が入力されると、コンタクタが遮断され、主バッテリから電磁切換弁への電力の供給が遮断される。すると、アキュムレータに蓄圧された作動油が電磁切換弁を通って油圧シリンダに供給され、ブレーキが作動する。これにより、フォークリフトが緊急停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-6862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術においては、コンタクタが遮断された後は、全ての非常停止ボタンがOFF状態であり、且つ自動運転コントローラから正常信号が出力されている状態において、非常停止解除スイッチをON操作しないと、コンタクタが導通状態とならない。コンタクタが導通状態になっていないと、車載充電器により主バッテリを充電することができない。従って、車載充電器により主バッテリを充電する際には、主バッテリとは別に自動運転コントローラ用に搭載された補助バッテリの電力を供給することで、コンタクタを導通状態とする必要がある。しかし、車載充電器による主バッテリの充電完了後は、コンタクタが遮断状態となり、主バッテリから補助バッテリに充電できなくなるが、自動運転コントローラに補助バッテリの電力を供給するための電源スイッチが入ったままとなるため、作業者等が電源スイッチを落とさない限り、補助バッテリの電力が消費され続ける。例えば翌日が休日である場合には、電源スイッチをそのまま放置しておくと、補助バッテリが上がってしまう。
【0005】
本発明の目的は、主バッテリの充電完了後における補助バッテリの上がりを防止することができる車両の非常停止装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、電気機器に電力を供給する主バッテリと、主バッテリと電気機器との接続を開閉するコンタクタと、コンタクタと接続され、主バッテリを充電するための充電器と、自動運転を行うように制御する自動運転制御装置と、自動運転制御装置に電力を供給する補助バッテリと、自動運転と手動運転とを切り換えるための運転切換スイッチとを具備した車両の非常停止装置であって、車両が非常停止される状態であるかどうかを検知する検知部と、検知部により車両が非常停止される状態であることが検知されたときに、コンタクタを遮断する電源遮断部と、コンタクタを遮断する動作を無効化するための無効化スイッチと、コンタクタを強制的に遮断するための電源遮断スイッチと、無効化スイッチがON操作されたときに、運転切換スイッチが自動運転に設定されている状態でも、自動運転を許可しないように切り換える切換部とを備える。
【0007】
このような非常停止装置においては、検知部により車両が非常停止される状態であることが検知されると、電源遮断部によりコンタクタが遮断される。このため、主バッテリと電気機器とが遮断された状態となる。その状態で、充電器により主バッテリの充電を行う際には、無効化スイッチによってコンタクタの遮断を無効化することにより、コンタクタが導通状態となる。このため、充電器によって、コンタクタを介して主バッテリの充電を行うことが可能となる。従って、コンタクタを導通状態とするために補助バッテリの電力を供給しなくて済む。これにより、主バッテリの充電完了後における補助バッテリの上がりが防止される。
【0008】
また、運転切換スイッチが自動運転に設定されている状態で、主バッテリの充電完了後に、無効化スイッチをOFF操作することを忘れ、電源遮断スイッチによってコンタクタを強制的に遮断することができない場合でも、自動運転が実施されることはない。
【0009】
切換部は、無効化スイッチと連動していてもよい。このような構成では、切換部の回路構成が簡素化される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、主バッテリの充電完了後における補助バッテリの上がりを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る非常停止装置が適用されるブレーキシステムを示す概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る非常停止装置を備えたフォークリフトを示す概略構成図である。
図3】比較例としての非常停止装置を備えたフォークリフトを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る非常停止装置が適用されるブレーキシステムを示す概略構成図である。図1において、ブレーキシステム1は、自動運転を行う車両である電動式のフォークリフト2に搭載されている。なお、フォークリフト2には、自動運転に関するシステムとして、ブレーキシステム1の他に操舵システム及び駆動システム等も搭載されている。
【0014】
ブレーキシステム1は、フォークリフト2の車輪を制動させるブレーキユニット3と、作動油により駆動され、ブレーキユニット3を作動させる油圧シリンダ4と、作動油を貯留するタンク5と、このタンク5内の作動油を吸い込んで吐出する油圧ポンプ6と、この油圧ポンプ6からの作動油を蓄圧するアキュムレータ7と、アキュムレータ7及びタンク5と油圧シリンダ4との間に配置され、作動油の流れを制御する電磁式のコントロールバルブユニット8とを具備している。
【0015】
図2は、本発明の一実施形態に係る非常停止装置を備えたフォークリフトを示す概略構成図である。図1及び図2において、フォークリフト2は、上記のブレーキシステム1に加え、主バッテリ10と、コンタクタ11と、充電器12と、主制御用コントローラ13と、自動運転コントローラ14(自動運転制御装置)と、補助バッテリ15と、電源スイッチ19と、運転切換スイッチ16と、本実施形態の非常停止装置17とを具備している。
【0016】
主バッテリ10は、フォークリフト2の電気機器18に電力を供給する。上記のコントロールバルブユニット8は、電気機器18の一つである。主バッテリ10は、例えば48Vの電圧を蓄電する。
【0017】
コンタクタ11は、主バッテリ10と電気機器18との間に配置されている。コンタクタ11は、主バッテリ10と電気機器18との接続を開閉する。コンタクタ11は、主制御用コントローラ13により制御される。
【0018】
充電器12は、コンタクタ11及び主バッテリ10と接続されている。充電器12は、主バッテリ10を充電するための機器である。充電器12は、主バッテリ10の自動充電を行う。
【0019】
充電器12は、充電プラグ20が差し込まれるプラグ差込口21と、このプラグ差込口21と接続されたマグネット22と、このマグネット22とトランス23を介して接続され、充電プラグ20により供給された交流電力を直流電力に変換する整流器24と、プラグ差込口21及びマグネット22と接続され、主バッテリ10の充電に関する指示操作を行うためのスイッチボックス25と、このスイッチボックス25と接続され、主バッテリ10の充電に関する表示を行うディスプレー26とを有している。充電プラグ20は、例えば200Vの三相交流電圧を供給する。プラグ差込口21は、例えばフォークリフト2の左側に設けられている。
【0020】
主制御用コントローラ13は、フォークリフト2の全体の制御を行う。主制御用コントローラ13は、コンタクタ11、充電器12、自動運転コントローラ14、運転切換スイッチ16、非常停止装置17及びイグニッションキー28と接続されている。イグニッションキー28は、フォークリフト2の起動スイッチである。
【0021】
自動運転コントローラ14は、フォークリフト2の自動運転を行うように走行モータ及び操舵モータ等の駆動部(図示せず)を制御する。自動運転コントローラ14は、主制御用コントローラ13、運転切換スイッチ16及び非常停止装置17と接続されている。
【0022】
自動運転コントローラ14は、フォークリフト2の自動運転時に、各種センサによりフォークリフト2の状態を監視し、その監視情報を主制御用コントローラ13及び非常停止装置17に出力する。自動運転コントローラ14は、フォークリフト2の自動運転時に、フォークリフト2の異常等が発生したときに、非常停止指令信号を主制御用コントローラ13及び非常停止装置17に出力する。なお、自動運転コントローラ14は、通常は正常信号を出力する。
【0023】
補助バッテリ15は、自動運転コントローラ14に電力を供給する。補助バッテリ15は、DC/DCコンバータ29を介してコンタクタ11と接続されている。補助バッテリ15は、例えば24Vの電圧を蓄電する。補助バッテリ15は、コンタクタ11の導通時に、主バッテリ10からDC/DCコンバータ29を介して充電される。
【0024】
電源スイッチ19は、補助バッテリ15と自動運転コントローラ14との間に配置されている。電源スイッチ19は、補助バッテリ15と自動運転コントローラ14との接続を開閉するための操作スイッチである。電源スイッチ19のOFF状態では、補助バッテリ15から自動運転コントローラ14に電力が供給されない。電源スイッチ19のON状態では、補助バッテリ15から自動運転コントローラ14に電力が供給される。補助バッテリ15からの電力は、自動運転のためのセンサや冷却ファン等にも供給される。
【0025】
運転切換スイッチ16は、作業者がフォークリフト2の自動運転と手動運転とを切り換えるための操作スイッチである。運転切換スイッチ16は、電気線31,32を介して主制御用コントローラ13と接続されていると共に、電気線33~35及び切換部60(後述)を介して自動運転コントローラ14と接続されている。
【0026】
運転切換スイッチ16のOFF状態では、電気線31,32が遮断されると共に電気線33,34が遮断される。運転切換スイッチ16のON状態では、電気線31,32が導通されると共に電気線33,34が導通される。
【0027】
非常停止装置17は、フォークリフト2の走行中に異常等が発生すると、フォークリフト2が緊急停止するようにコンタクタ11を遮断する装置である。非常停止装置17は、複数(ここでは4つ)の非常停止ボタン40と、非常停止解除スイッチ41と、非常停止リレー42と、緊急電源遮断回路43と、緊急電源遮断ボタン44と、無効化スイッチ45とを備えている。
【0028】
非常停止ボタン40は、フォークリフト2が非常停止される状態であるときに、その旨を作業者が報知するための手動スイッチである。非常停止ボタン40は、例えばフォークリフト2の後部、右側部、左側部及び運転席に設けられている。非常停止ボタン40は、電気線46,47を介して非常停止リレー42と接続されている。非常停止ボタン40のOFF状態では、電気線46,47が導通される。非常停止ボタン40のON状態では、電気線46,47が遮断される。
【0029】
非常停止解除スイッチ41は、作業者がフォークリフト2の非常停止の解除を指示するための手動スイッチである。非常停止解除スイッチ41は、電気線48,49を介して非常停止リレー42と接続されている。
【0030】
非常停止リレー42は、通常時(正常時)は導通されている。非常停止リレー42は、複数の非常停止ボタン40の何れかがON操作されると遮断される。また、非常停止リレー42は、電気線50,51を介して自動運転コントローラ14と接続されている。非常停止リレー42は、自動運転コントローラ14からの正常信号がOFF状態になると遮断される。非常停止リレー42は、全ての非常停止ボタン40がOFF状態であり且つ自動運転コントローラ14からの正常信号がON状態になると導通される。
【0031】
非常停止リレー42は、非常停止ボタン40及び自動運転コントローラ14と協働して、フォークリフト2が非常停止される状態であるかを検知する検知部を構成する。
【0032】
緊急電源遮断回路43は、電気線52~54及び緊急電源遮断ボタン44を介して非常停止リレー42と接続されていると共に、電気線55,56を介して主制御用コントローラ13と接続されている。緊急電源遮断回路43は、非常停止リレー42が遮断されると、ON状態となる。緊急電源遮断回路43がON状態になると、主制御用コントローラ13によりコンタクタ11が遮断される。緊急電源遮断回路43は、非常停止リレー42によりフォークリフト2が非常停止される状態であることが検知されたときに、主制御用コントローラ13を介してコンタクタ11を遮断する電源遮断部である。
【0033】
緊急電源遮断ボタン44は、作業者がコンタクタ11を強制的に遮断するための手動スイッチ(電源遮断スイッチ)である。緊急電源遮断ボタン44のOFF状態では、電気線53,54が導通される。緊急電源遮断ボタン44のON状態では、電気線53,54が遮断される。従って、緊急電源遮断ボタン44がON操作されると、非常停止リレー42の遮断と同じ状態となるため、緊急電源遮断回路43によりコンタクタ11が遮断される。
【0034】
無効化スイッチ45は、電気線57,58を介して電気線52,53とそれぞれ接続されている。無効化スイッチ45は、作業者が非常停止リレー42によりコンタクタ11を遮断する動作を無効化するための手動スイッチである。
【0035】
無効化スイッチ45のOFF状態では、電気線57,58が遮断される。一方、無効化スイッチ45のON状態では、電気線57,58が導通される。その状態では、非常停止リレー42が遮断されていても、緊急電源遮断回路43がOFF状態となる。従って、非常停止リレー42によりコンタクタ11を遮断する動作が無効化される。
【0036】
無効化スイッチ45には、自動運転の許可/不許可を切り換える切換部60が連結されている。切換部60は、電気線61,62を介して電気線34,35とそれぞれ接続されている。切換部60は、運転切換スイッチ16が自動運転に設定されている状態でも、自動運転を許可しないように切り換える。
【0037】
切換部60は、無効化スイッチ45に連動して動作する。無効化スイッチ45のOFF状態では、電気線61,62が導通される。無効化スイッチ45のON状態には、電気線61,62が遮断される。
【0038】
運転切換スイッチ16がON操作されることで、自動運転が設定されている場合に、無効化スイッチ45がON操作されていない状態では、切換部60により電気線34,35が電気線61,62を介して導通されているため、フォークリフト2の自動運転が実施される。運転切換スイッチ16がON操作されることで、自動運転が設定されている場合でも、無効化スイッチ45がON操作されると、切換部60により電気線34,35が電気線61,62を介して遮断されるため、フォークリフト2の自動運転は実施されない。
【0039】
以上において、緊急電源遮断ボタン44がON操作されていない状態では、イグニッションキー28がON操作されると、コンタクタ11が導通されるため、主バッテリ10からフォークリフト2の電気機器18に電力が供給される。なお、緊急電源遮断ボタン44がON操作されると、イグニッションキー28の操作状態に関わらず、緊急電源遮断回路43によりコンタクタ11が遮断されるため、主バッテリ10からフォークリフト2の電気機器18に電力が供給されることはない。
【0040】
イグニッションキー28がON操作された後、運転切換スイッチ16がON操作されると、自動運転コントローラ14によってフォークリフト2が自動運転を実施するように制御される。自動運転によるフォークリフト2の走行が正常に行われているときは、自動運転コントローラ14から正常信号が出力される。そのような正常状態では、非常停止リレー42が導通されるため、緊急電源遮断回路43によりコンタクタ11が導通されたままである。
【0041】
フォークリフト2の走行中に異常等が発生すると、自動運転コントローラ14からの正常信号がOFF状態となる。すると、非常停止リレー42が遮断されるため、緊急電源遮断回路43によりコンタクタ11が遮断される。また、作業者によって複数の非常停止ボタン40の何れかがON操作されたときも、非常停止リレー42が遮断されるため、緊急電源遮断回路43によりコンタクタ11が遮断される。
【0042】
コンタクタ11が遮断されると、主バッテリ10からフォークリフト2の電気機器18に電力が供給されなくなる。その状態では、ブレーキシステム1において、コントロールバルブユニット8が通電されないため、アキュムレータ7に蓄圧された作動油がコントロールバルブユニット8を通って油圧シリンダ4に供給され、油圧シリンダ4によりブレーキユニット3が作動する。その結果、フォークリフト2は、ブレーキがかかった状態となり、緊急停止する。
【0043】
このようなフォークリフト2において、主バッテリ10の充電は、イグニッションキー28及び非常停止リレー42が切れている状態で実施される。ただし、イグニッションキー28及び非常停止リレー42が切れている状態では、コンタクタ11が遮断されている。
【0044】
そこで、作業者は、主バッテリ10の充電を行うときは、充電器12のプラグ差込口21に充電プラグ20を差し込んだ状態で、無効化スイッチ45をON操作する。すると、非常停止リレー42が切れている状態が無効化される。そして、スイッチボックス25の充電開始ボタンを押すと、主制御用コントローラ13によりコンタクタ11が通電状態となる。このため、充電プラグ20からの電力がコンタクタ11を通って主バッテリ10に供給されることで、主バッテリ10が充電される。
【0045】
図3は、比較例としての非常停止装置を備えたフォークリフトを示す概略構成図である。図3において、本比較例の非常停止装置100は、上記の無効化スイッチ45を有していない。運転切換スイッチ16は、電気線31,32を介して主制御用コントローラ13と接続されていると共に、電気線33,35を介して自動運転コントローラ14と接続されている。また、非常停止装置100では、緊急電源遮断回路43は、電気線52,53を介して非常停止リレー42と接続されている。
【0046】
このような非常停止装置100でも、コンタクタ11が導通状態になっていないと、充電器12により主バッテリ10を充電することができない。このため、主バッテリ10の自動充電を行うときは、電源スイッチ19を入れて補助バッテリ15からの電力を供給することで、自動運転コントローラ14を立ち上げ、非常停止解除スイッチ41を操作して非常停止を解除し、非常停止リレー42を導通状態にし、コンタクタ11を導通状態にする。主バッテリ10の充電が完了した後は、主制御用コントローラ13によりコンタクタ11が遮断される。
【0047】
しかし、主バッテリ10の充電の完了後にコンタクタ11が遮断されても、電源スイッチ19が入ったままとなるため、作業者が電源スイッチ19を落とさない限り、自動運転のためのセンサや冷却ファン等により、補助バッテリ15の電力が消費され続ける。従って、例えば翌日が休日である場合には、電源スイッチ19をそのまま放置しておくと、補助バッテリ15が上がってしまう。
【0048】
そのような課題に対し、本実施形態では、非常停止リレー42によりフォークリフト2が非常停止される状態であることが検知されると、緊急電源遮断回路43によりコンタクタ11が遮断される。このため、主バッテリ10と電気機器18とが遮断された状態となる。その状態で、充電器12により主バッテリ10の充電を行う際には、無効化スイッチ45によってコンタクタ11の遮断を無効化することにより、コンタクタ11が導通状態となる。このため、充電器12によって、コンタクタ11を介して主バッテリ10の充電を行うことが可能となる。従って、コンタクタ11を導通状態とするために電源スイッチ19を入れて補助バッテリ15の電力を供給しなくて済む。これにより、主バッテリ10の充電完了後における補助バッテリ15の上がりが防止される。
【0049】
また、本実施形態では、運転切換スイッチ16が自動運転に設定されている状態でも、無効化スイッチ45がON状態において、自動運転を許可しないように切り換える切換部60が備えられている。このため、主バッテリ10の充電完了後に、無効化スイッチ45をOFF操作することを忘れた状態で、自動運転を開始しようとしても、自動運転が実施されることはない。
【0050】
また、本実施形態では、切換部60が無効化スイッチ45と連動しているので、切換部60の回路構成が簡素化される。
【0051】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、専用の緊急電源遮断ボタン44が備えられているが、特にその形態には限られず、複数の非常停止ボタン40の何れか1つを緊急電源遮断ボタンとして代用してもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、切換部60が無効化スイッチ45と連動しているが、切換部60としては、特にその形態には限られず、例えば無効化スイッチ45とは別のスイッチで構成されていてもよい。
【0053】
また、上記実施形態の非常停止装置17は、手動運転と自動運転とが切り替え可能なフォークリフト2に搭載されているが、本発明は、自動運転のみを行うフォークリフトにも適用可能である。
【0054】
また、上記実施形態の非常停止装置17は、電動モータにより駆動される電動式のフォークリフト2に搭載されているが、本発明は、主バッテリ及び補助バッテリを備えていれば、エンジンにより駆動されるフォークリフトにも適用可能である。
【0055】
また、本発明は、特にフォークリフト2には限られず、主バッテリ及び補助バッテリを備えると共に自動運転を行う車両であれば、適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
2…フォークリフト(車両)、10…主バッテリ、11…コンタクタ、12…充電器、14…自動運転コントローラ(自動運転制御装置)、15…補助バッテリ、16…運転切換スイッチ、17…非常停止装置、40…非常停止ボタン(検知部)、42…非常停止リレー(検知部)、43…緊急電源遮断回路(電源遮断部)、44…緊急電源遮断ボタン(電源遮断スイッチ)、45…無効化スイッチ、60…切換部。
図1
図2
図3