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特許7501360カテーテルの製造方法及びその方法により製造されたカテーテル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】カテーテルの製造方法及びその方法により製造されたカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
A61B18/14
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020519462
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2020013954
(87)【国際公開番号】W WO2020203740
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-02-06
(31)【優先権主張番号】P 2019067552
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡 優美
(72)【発明者】
【氏名】藤井 紘平
(72)【発明者】
【氏名】塚本 康太
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0161774(US,A1)
【文献】特開2012-192005(JP,A)
【文献】特開2015-116309(JP,A)
【文献】特表平10-510731(JP,A)
【文献】特開2004-065529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14-18/16
A61N 1/00- 1/44
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性の外層チューブの長手方向に延在するように、リード線を前記外層チューブの内腔に配置する配置ステップ(1)と、
前記外層チューブの開口部からリード線の一端を露出する露出ステップと、
前記開口部から露出した前記リード線の一端とリング電極の内壁とを接合する接合ステップ(1)と、
前記リング電極により前記外層チューブの開口部を覆う被覆ステップと、
前記外層チューブの内腔に熱可塑性の内層チューブを挿入する挿入ステップと、
前記外層チューブ及び前記内層チューブを加熱し、前記外層チューブと前記内層チューブの層間に前記リード線が埋没して固定されるように前記外層チューブと前記内層チューブとを一体化して電極チップを形成する一体化ステップと、
を備え
前記一体化ステップは、前記外層チューブに対し熱収縮チューブを被せ、前記外層チューブ及び前記内層チューブの一端を固定ジグで固定し、もう一端に圧縮ばねを当接し、前記内層チューブの先端側と後端側の間で圧縮ばねにより長手方向に圧縮荷重を付与しながら加熱を行なうことで電極チップを形成する、カテーテルの製造方法。
【請求項2】
前記外層チューブの長手方向に延在し、かつ、1つ目のリード線に対し接触しないよう、2つ目のリード線を前記外層チューブの内腔に配置する配置ステップ(2)と、
開口部から露出した前記2つ目のリード線の一端と2つ目のリング電極の内壁とを接合する接合ステップ(2)と、
前記一体化ステップの前に行うことをさらに備える、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記接合ステップ(1)は、前記外層チューブの内腔に抵抗溶接用電極の一極を挿入し、前記リング電極の外壁に前記抵抗溶接用電極の他極を接触させ、前記抵抗溶接用電極の電極間を加圧することで前記リング電極と前記リード線を溶接する、請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項記載の製造方法により製造された、カテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端に電極チップを有するカテーテルの製造方法及びその方法により製造されたカテーテルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
カテーテルアブレーションは、心腔内にアブレーションカテーテルを挿入し、カテーテルの遠位端側に取り付けられた電極により心筋組織を焼灼して不整脈を治療する方法で、近年、カテーテルの遠位端側に取り付けられたバルーンを経皮的に下大静脈に導入し、心臓の右心房から心房中隔を経て左心房へと到達させ、そこで膨張させたバルーン内部の電極に印加する高周波電流によってバルーンを加熱して心筋組織を焼灼するバルーン付きアブレーションカテーテルが開発されている。
【0003】
バルーン付きアブレーションカテーテルを用いた治療で、焼灼部位の決定及び治療効果の確認のため、電気生理学的検査機能を併せ持つバルーン付きアブレーションカテーテルについても報告されている(特許文献1)。
【0004】
カテーテルの先端に温度測定用の電極を固定し、測定用電極に接合されたリード線を近位端まで配線する方法は、広く知られており、測定用電極に配線された多数のリード線の断線リスクを低減する方法として、各リード線を異なるルーメンに挿入して配線した電極付きカテーテルが知られている。この電極付きカテーテルでは、その固定の方法として、測定用電極の内周に接着剤を付与してカテーテル遠位端付近に固定する技術が開示されている(特許文献2)。
【0005】
また、リード線をらせん状に巻き付け、複層のチューブの間に配置する方法も開示されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO2011-155424号
【文献】特開2009-268696号
【文献】特表2013-533065号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2に記載されるような、カテーテル先端に測定用電極を設置する方法では、測定用電極とリード線の一端の接続部分における接続外れに関するリスク低減が十分ではなく、接着剤のはみ出しや不足等の問題が発生する可能性がある。
【0008】
また、チューブに対しらせん状にリード線を巻き付け、さらにその外側をリード線で覆うことで測定用電極のリード線を配置する方法の場合、製造方法が煩雑になったり、複数のリード線を相互に絶縁する点で問題があった。
【0009】
そこで本発明は、リード線の電極からの脱落や、リード線の断線リスクを低減することが可能なカテーテルの製造方法及びその方法により製造されたカテーテルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の(1)~(7)の発明を見出した。
(1) 熱可塑性の外層チューブの長手方向に延在するように、リード線を上記外層チューブの内腔に配置する配置ステップ(1)と、上記外層チューブの開口部からリード線の一端を露出する露出ステップと、上記開口部から露出した上記リード線の一端とリング電極の内壁とを電気的に接合する接合ステップ(1)と、上記リング電極により上記外層チューブの開口部を覆う被覆ステップと、上記外層チューブの内腔に熱可塑性の内層チューブを挿入する挿入ステップと、上記外層チューブ及び上記内層チューブを加熱し、上記外層チューブと上記内層チューブの層間に上記リード線が埋没して固定されるように上記外層チューブと上記内層チューブとを一体化して電極チップを形成する一体化ステップと、を備える、カテーテルの製造方法。
(2) 上記外層チューブの長手方向に延在し、かつ、1つ目のリード線に対し接触しないよう、2つ目のリード線を上記外層チューブの内腔に配置する配置ステップ(2)と、開口部から露出した上記2つ目のリード線の一端と2つ目のリング電極の内壁とを接合する接合ステップ(2)と、をさらに備える、(1)記載の製造方法。
(3) 上記一体化ステップは、上記外層チューブに対し熱収縮チューブを被せ、上記内層チューブの先端側と後端側の間で圧縮荷重を付与しながら加熱を行なうことで電極チップを形成する、(1)又は(2)記載の製造方法。
(4) 上記接合ステップは、上記外層チューブの内腔に抵抗溶接用電極の一極を挿入し、上記リング電極の外壁に上記抵抗溶接用電極の他極を接触させ、上記抵抗溶接用電極の電極間を加圧することで上記リング電極と上記リード線を溶接する、(1)~(3)のいずれか記載の製造方法。
(5) 開口部を有する管状部材を上記外層チューブの内側に配置し、かつ、上記リード線を上記外層チューブと上記管状部材との間に挟持する配置ステップ(3)と、上記外層チューブの開口部と上記管状部材の開口部とが重なるように位置決めする位置決めステップと、を備える、(1)~(4)のいずれか記載の製造方法。
(6) 上記接合ステップにおいて、上記位置決めステップにより重なった上記外層チューブの開口部と上記管状部材の開口部とが重なってできる開口部から露出した上記リード線の一端と、上記リング電極の内壁と、を接合する、(5)記載の製造方法。
(7) (1)~(6)のいずれか記載の製造方法により製造された、カテーテル。
【0011】
また、本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、以下の(8)~(12)の発明を見出すに至った。
(8) 熱可塑性の外層チューブの長手方向に延在するように、リード線を上記外層チューブの内腔に配置する配置ステップ(1)と、上記外層チューブの開口部からリード線の一端を露出する露出ステップと、上記開口部から露出した上記リード線の一端とリング電極の内壁とを電気的に接合する接合ステップ(1)と、上記リング電極により上記外層チューブの開口部を覆う被覆ステップと、上記外層チューブの内腔に熱可塑性の内層チューブを挿入する挿入ステップと、上記外層チューブ及び上記内層チューブを加熱し、上記外層チューブと上記内層チューブの層間に上記リード線が埋没して固定されるように上記外層チューブと上記内層チューブとを一体化して電極チップを形成する一体化ステップと、を備える、カテーテルの製造方法。
(9) 上記外層チューブの長手方向に延在し、かつ、1つ目のリード線に対し接触しないよう、2つ目のリード線を上記外層チューブの内腔に配置する配置ステップ(2)と、開口部から露出した上記2つ目のリード線の一端と2つ目のリング電極の内壁とを接合する接合ステップ(2)と、をさらに備える、(8)記載の製造方法。
(10) 上記一体化ステップは、上記外層チューブに対し熱収縮チューブを被せ、上記内層チューブの先端側と後端側の間で圧縮荷重を付与しながら加熱を行なうことで電極チップを形成する、(8)又は(9)記載の製造方法。
(11) 上記接合ステップは、上記外層チューブの内腔に抵抗溶接用電極の一極を挿入し、上記リング電極の外壁に上記抵抗溶接用電極の他極を接触させ、上記抵抗溶接用電極の電極間を加圧することで上記リング電極と上記リード線を溶接する、(8)~(10)のいずれか記載の製造方法。
(12) (8)~(11)のいずれか記載の製造方法により製造された、カテーテル。
【発明の効果】
【0012】
本発明のカテーテルの製造方法によれば、リング電極の内壁に接合されたリード線が、電極チップを形成するチューブ中に埋没するように熱可塑性のチューブを一体化させることで、リード線の電極からの脱落や、リード線の断線リスクを低減することが可能なカテーテルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の製造方法により製造されたカテーテルを示す概略図である。
図2】本発明の製造方法における電極チップの概略図である。
図3】本発明の製造方法の一連のプロセスを示す概略図である。
図4】本発明の製造方法における一体化ステップの一例を示す。
図5】本発明の製造方法における接合ステップの一例を示す。
図6】本発明の製造方法における管状部材を用いた配置ステップ及び位置決めステップの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。なお、同一の要素には同一符号を用いるものとして、重複する説明は省略する。また、図面の比率は説明のものとは必ずしも一致しない。
【0015】
本発明のカテーテルの製造方法は、熱可塑性の外層チューブの長手方向に延在するように、リード線を上記外層チューブの内腔に配置する配置ステップ(1)と、上記外層チューブの開口部からリード線の一端を露出する露出ステップと、上記開口部から露出した上記リード線の一端とリング電極の内壁とを電気的に接合する接合ステップ(1)と、上記リング電極により上記外層チューブの開口部を覆う被覆ステップと、上記外層チューブの内腔に熱可塑性の内層チューブを挿入する挿入ステップと、上記外層チューブ及び上記内層チューブを加熱し、上記外層チューブと上記内層チューブの層間に上記リード線が埋没して固定されるように上記外層チューブと上記内層チューブとを一体化して電極チップを形成する一体化ステップと、を備えることを特徴とする。
【0016】
後端側とは、カテーテルの長手方向における手元側を示し、先端側とは、カテーテルの長手方向における遠位側を示す。
【0017】
本発明の製造方法により製造された、先端に電極チップを有するカテーテルを示す概略図を図1に示す。
【0018】
図1において、カテーテル1は、カテーテルシャフト2と、カテーテルシャフトの遠位端側に配置されたバルーン3及び電極チップ4を備える。ここで、電極チップ4は、チューブ10と、リング電極11及びリング電極11に接続されたリード線12を備える。
【0019】
電極チップ4は、カテーテルシャフト2の先端側付近に配置され、リング電極に接続されたリード線は、カテーテルシャフトの近位側に向けて延在される。カテーテルシャフト2は、内側シャフト13と外側シャフト14で構成される。内側シャフト13及び外側シャフト14の材質としては、フッ素ポリマー、ポリアミド、ポリウレタン系ポリマー又はポリイミド等が挙げられるが、これに限定されるものではない。内側シャフト13は、バルーン3の内部を通過して、カテーテル1の遠位端まで延在する。
【0020】
バルーン3の内部には、高周波通電用電極15と、電極温度センサ16を備える。高周波通電用電極15は、内側シャフト13の外壁部に巻きつけて配置されている。リード線6は、バルーン3の内部において、高周波通電用電極15と内側シャフト13の間に進入し、カテーテル1の後端側に向けて配線される。
【0021】
リング電極11を心電位のマッピングに使用する場合等には、電極チップ4がリング電極11を複数備えることで、正確な電位波形を測定することが可能となる。
【0022】
カテーテルシャフト2の近位側には、ハンドル20、コネクタ21、外部電気生理検査機器22、コネクタ23及び高周波発生装置24を備え、リード線12の端部はコネクタ21を介して外部電気生理検査機器22と接続することが可能である。また、リング電極11をRF電極として使用する場合、高周波発生装置と接続することも可能である。
【0023】
本発明の製造方法における電極チップ4の概略図を図2に示す。
【0024】
(電極チップ)
電極チップ4は、チューブ10、リング電極11及びリング電極11に接続されたリード線12を備える。チューブ10の内壁には、カテーテルシャフトの内側シャフトが接着されている。電極チップの外壁にはリング電極が配置されている。
【0025】
心房内へのアクセスを良好にするため、チューブ10の外径は1mm~6mmが好ましい。チューブ10の材質は熱可塑性樹脂を用いるが、心房内での操作時の安全性を考慮した硬度の観点から、ポリウレタン等がより好ましい。
【0026】
(リング電極)
リング電極11の内壁には、リード線12の端部が接合され、リード線12はチューブ10に埋没して延在し、リード線12はリング電極11の近位端から飛び出して、カテーテルシャフト2のルーメン内に向けて配線される。
【0027】
電極チップ4は、リング電極11を2つ以上有していてもよい。電極チップ4上に配置されるリング電極11の数には特に制限はなく、各リング電極11及び各リング電極11にそれぞれ接続されたリード線12が相互に電気的に接触することなく配置されていればよい。
【0028】
電極チップ4上にリング電極11が複数配置される場合、リング電極11の相互の配置間隔が0.5mm~3.0mmで配置されていることが好ましい。
【0029】
製造時の接触を防ぐため、各リング電極11にそれぞれ接続されたリード線12は、チューブ10の形成時にそれぞれのリード線12が最も離れた位置に配置されることが好ましい。例えば、電極チップ4がリング電極11を2つ有する場合、それぞれに接合されたリード線12は、チューブ10の中心を軸として180°対向する位置でリング電極11と接合し、チューブ10内部に埋没している。
【0030】
断線のリスクを低減するため、リード線12とリング電極11の接合は、溶接及び半田付け等の方法で固定されることが好ましく、溶接の場合、抵抗溶接及びレーザー溶接が好ましい。
【0031】
この電極チップ4は、心房細動等の不整脈等の治療を行うために用いることが出来るため、カテーテルの先端に取付けることができる。用いられるカテーテルとしては、バルーンカテーテル、アブレーションカテーテル及びバルーン付きアブレーションカテーテル等が挙げられるが、バルーン付きアブレーションカテーテルに用いられることが好ましい。
【0032】
(リード線)
リード線12の直径は特に規定されないが、配線時の断線のリスクを低減し、電極チップ又はカテーテルシャフト部に配線するスペースを確保しやすくなることから、リード線12の直径は、0.05mm~0.30mmであることが好ましい。
【0033】
リード線の材質は、リン青銅又は銅等が好ましく用いられる。また、リング電極の材質は、生体への接触を考慮して、白金、白金、ステンレス、金、銀、銅又はそれらの合金等が好ましく用いられる。
【0034】
図3は、本発明の電極チップを有するカテーテルにおける電極チップの製造方法の一連のプロセスを示す概略図である。
【0035】
(熱可塑性の外層チューブの長手方向に延在するよう、リード線を外層チューブの内腔に配置する配置ステップ)
熱可塑性樹脂を含む外層チューブ30及びリード線12を用意する。熱可塑性の外層チューブ30の長手方向に平行に延在するように、リード線12を外層チューブ30の内腔に配置する。この時、外層チューブ30の内腔で、長手方向に平行に延在するリード線12は、外層チューブ30の長手方向に対して厳密な平行でなくてもよい。
【0036】
具体的には、リード線12を巻き付けたりすることなく、外層チューブ30の遠位端から近位端に向けて延在させることであって、リード線12のわずかな緩みやたるみによって、厳密な平行とならない場合も含まれる。
【0037】
(外層チューブが有する開口部からリード線の一端を露出する露出ステップ)
次に、外層チューブ30の外壁に、開口部32を形成して、絶縁被覆を除去したリード線12を露出させる。開口部32の大きさは任意であるが、リング電極11で覆うことが可能な大きさとする。
【0038】
電極チップ4上にリング電極11が複数配置される場合、対応するリード線12は複数配置されるため、それぞれのリード線12に対応する数の開口部32を外層チューブ30に形成する。また、それぞれの開口部32は、対応するリング電極11の位置にリード線12を露出させるため、外層チューブ30の長手方向に離間した位置に形成される。
【0039】
(開口部から露出したリード線の一端とリング電極の内壁とを電気的に接合する接合ステップ)
次に、リード線12の一端とリング電極の内壁とを、溶接又は半田付け等の方法で電気的に接合する。リード線12の一端がリング電極11の内壁と接触するようにして電気的接合を行う。
電気的接合とは、リード線とリング電極間に通電可能なように接合することである。
【0040】
図3に、接合ステップの一例を示す。
【0041】
外層チューブ30の内腔において、リード線12を外層チューブ30の長手方向に平行に延在させ、リング電極11を外層チューブ30に被冠させる。次に、外層チューブ30の内腔に電気抵抗溶接用電極の一極42を挿入して、リード線12と電気抵抗溶接用電極42を接触し、開口部32からリード線12を外層チューブ30の外に露出させる。露出したリード線12の一端をリング電極11の内壁に接触させる。
【0042】
リング電極11の外壁に抵抗溶接用電極の他極43を接触させ、電極間を加圧し、溶接によりリング電極11とリード線12を電気的に接合する。
【0043】
抵抗溶接用電極の材質は特に規定しないが、銅、クロム銅及びタングステン等が用いられる。抵抗溶接用電極の一極42の先端形状は、開口部32よりも小さく、リード線12を外層チューブ30の外に露出させ、リング電極11の内壁に接触させることが可能となるよう、チューブの内径形状に合わせた形状であることが好ましく、例えば、外層チューブ30が円筒状であるのであれば、円弧状であることが好ましい。
【0044】
この方法により、リング電極11の内壁に、リード線12を確実、かつ、短時間で電気的に接合することが可能となる。また、リング電極11により外層チューブ30の開口部32を覆う状態からずれたりせず、リング電極11とリード線12を電気的に接合することが可能となる。このことは、リード線12を開口部32から大きく引き出して、リング電極11の内壁と電気的に接合した上で、リング電極11を外層チューブ30に被冠しながら、余分なリード線12を開口部から引き戻す、という従来の方法に比べ、リード線12の不要な引き出し、引き戻しを行わない点で、断線リスクが低減できるため好ましい。
【0045】
(リング電極により外層チューブの開口部を覆う被覆ステップ)
外層チューブ30の開口部32を覆うようにリング電極11を被せる。リング電極は前述したリード線との電気的接合を行う前に開口部を覆い、その位置において電気的接合を行ってもよいし、開口部とずらした位置において電気的接合を行い、その後開口部を覆うようにリング電極を被せてもよい。このように、リング電極11を外層チューブ30の開口部32を覆う位置に配置することで、リード線12の外部への露出を防ぐことができる。
【0046】
(外層チューブの内腔に内層チューブを挿入する挿入ステップ)
熱可塑性樹脂を含む内層チューブ31を準備し、外層チューブ30の内腔に内層チューブ31を挿入する。このとき、リード線12がチューブの長手方向に延在する配置が維持されたまま外層チューブ30と内層チューブ31の層間に入るよう、内層チューブ31を挿入する。ここで、外層チューブ30の内径は内層チューブ31の外径よりも大きいため、外層チューブ30の内腔に内層チューブ31を挿入することが可能である。なお、内層チューブ31を外層チューブ30の内腔に挿入するステップの後に、外層チューブ30の長手方向に延在するようにリード線12を外層チューブ30の内腔に配置するステップを行なってもよい。この場合、リード線12を外層チューブ30の内腔に配置する際、外層チューブ30と内層チューブ31の層間にリード線12が入るようにする。
【0047】
リード線12が外層チューブ30と内層チューブ31の層間で長手方向に平行に延在するように配置されることで、リード線12がリング電極11から離れる方向に負荷が掛かることを抑制し、リード線12及びリード線12とリング電極11の電気的に接合する部分の断線のリスクを低減できる。またリード線12が2本以上である場合には、リード線の相互の交差や接触のリスクを低減できる。
【0048】
(外層チューブ及び内層チューブを加熱し、外層チューブと内層チューブの層間にリード線が埋没して固定されるように外層チューブと内層チューブとを一体化する一体化ステップ)
外層チューブ30及び内層チューブ31を加熱するための芯線33を内層チューブ31の内腔に挿入する。
【0049】
外層チューブ30及び内層チューブ31は熱可塑性樹脂を含むことから、芯線33により加熱することで、外層チューブ30と内層チューブ31が一体化され、チューブ10を形成する。その際、リード線12は外層チューブ30と内層チューブ31の間に配置されているため、外層チューブ30と内層チューブ31の層間にリード線12が長手方向に平行に延在した状態で埋没して固定される。その結果、リード線12がチューブ10内部に平行に延在するように、埋没して固定されるとともに、リング電極11がチューブ10の外壁に固定される。
【0050】
上記の製造方法の場合、外層チューブ30と内層チューブ31の間にリード線12が平行に延在するように配置した状態で、外層チューブ30と内層チューブ31を一体化してチューブ10を形成するため、リード線12がチューブ10内部で平行に延在するよう固定される。
【0051】
これにより、カテーテル1を操作する際に、電極チップ4が湾曲したとしても、リング電極11とリード線12の電気的接合部分に負荷が掛かることを抑制できる。また、リード線12がよれたり、動いたりすることによる破断が生じづらくなるため、リード線の断線リスクを低減することができる。
【0052】
また、リング電極11とリード線12の接合部位の近傍では、リード線12の絶縁被覆が除去され、電気的接触が可能な状態となっている。電極チップ4が複数のリング電極11を備える場合、製造時に複数のリード線12が相互に接触する可能性があるが、外層チューブ30と内層チューブ31を一体化する際にそれぞれのリード線12を平行に延在するように配置することで、それぞれのリード線12の接触を防ぐとともに、チューブ10がリード線12間に配置されるため確実に絶縁することができる。
【0053】
上記の外層チューブ30、内層チューブ31及びチューブ10の肉厚は任意に設定することができる。また、外層チューブ30と内層チューブ31が同一の熱可塑性樹脂からなる場合、一体化して形成されたチューブ10が安定した強度を有することができるため好ましい。
【0054】
図4に、外層チューブ30及び内層チューブ31を加熱し、外層チューブ30と内層チューブ31の層間にリード線12が埋没して固定されるように外層チューブ30と内層チューブ31とを一体化するステップの変形例を示す。
【0055】
外層チューブ30と内層チューブ31とを一体化するステップにおいて、内層チューブ31の先端側と後端側の間に圧縮荷重を付与する。外層チューブ30及び内層チューブ31の一端を固定ジグ37で固定し、もう一端に圧縮ばね34を当接し、固定ジグ37で圧縮ばね34を圧縮させた位置で固定する。圧縮荷重を加えながら加熱することが容易になる。
【0056】
次に、熱収縮チューブ35をリング電極11と外層チューブ30の外壁に被冠させる。熱収縮チューブ35は、最小収縮内径が、リング電極11の外径よりも小さいと、十分な収縮力を与えることが可能で好ましい。
【0057】
また、内層チューブ31の内腔には、芯線33を挿入する。芯線33は、ステンレス等の金属製であって、加熱により内層チューブ31の密着が生じるため、剥離性のよい表面処理等を施すことが好ましい。
【0058】
次に、加熱を行う。加熱源としては、レーザー光36が好ましい。レーザー光36は、炭酸ガスレーザー又は半導体レーザーが好ましい。芯線33を回転させながらレーザー光36を照射することで、一体化の際に、外層チューブ30と内層チューブ31の全周にわたり均一に加熱することが可能となる。また、同時にレーザー光36の照射位置を移動させることで、外層チューブ30と内層チューブ31の長手方向に連続的に加熱することが可能となる。
【0059】
外層チューブ30及び内層チューブ31に対し長手方向に連続的に加熱を行なうことで、外層チューブ30と内層チューブ31の一体化の際に、リード線12が長手方向に対し延在する配置からずれることを防止することができる。また、リング電極11のみの局所的な加熱に限らず、リング電極11により被覆されていない部分の外層チューブ30及び内層チューブ31の層間も加熱することで、リード線12に不要な負荷が生じるリスクを低減し、各リード線12間の短絡リスクも低減することができる。
【0060】
圧縮ばね34により圧縮荷重を加えることで、外層チューブ30及び内層チューブ31が径方向に拡大され、熱収縮チューブ35を被冠して加熱することで、リング電極11と外層チューブ30間の隙間が効果的に埋められ、リング電極11と外層チューブ30の外壁の段差が解消される。熱収縮チューブ35の材質は特に規定しないが、オレフィン樹脂系や、フッ素樹脂系が好ましく用いられる。熱収縮チューブ35は、一体化の加工後に取り外す。
【0061】
図5は、接合ステップの一例を示す。
【0062】
外層チューブの内腔において、リード線をード線を外層チューブ長手方向に略平行に延在させ、リング電極を外層チューブに被冠させる。次に、外層チューブの内腔に電気抵抗溶接用電極の一極42を挿入して、リード線に接触せしめ、開口部においてリード線を外層チューブの外周面より突出させ、リング状電極内周面にリード線を接触させる。
【0063】
リング状電極の外周において、電気抵抗溶接用電極の他極43を接触させ、電極間を加圧して電気抵抗溶接して、電気的に接合する。
【0064】
抵抗溶接用電極の材質は特に規定しないが、銅やクロム銅、タングステンなどが用いられる。抵抗溶接用電極の先端形状は、開口部よりも小さく、リード線を開口部から突出させて、リング電極内周面に接触させることが可能となるよう、円弧状の表面であると好ましい。
【0065】
図6は、管状部材を用いた配置ステップ及び位置決めステップの一例を示す。
【0066】
(開口部を有する管状部材を外層チューブの内側に配置し、かつ、リード線を外層チューブと管状部材との間に挟持する配置ステップ)
各配置ステップの長時間化を防ぐために、開口部51を有する管状部材50を用意し、前述した外層チューブ30の内腔の長手方向に平行に延在するように配置されたリード線12の内側に、管状部材50をさらに配置する。このように、開口部51を有する管状部材50を外層チューブ30の内側に配置し、かつ、リード線12を外層チューブ30と管状部材50との間に挟持することで、リード線12と外層チューブ30が管状部材50に支持される。ここで、支持とは、外力のない状態において、外層チューブ30とリード線12が、それぞれ配置された位置にて、その状態が維持されていることを意味する。さらに、配置ステップ(1)~(3)において、外層チューブ30及びリード線12に対し外力がかかった際でも、外層チューブ30の内側に管状部材50があることで外層チューブ30の形状が維持されるとともに、リード線12の位置がずれるのを防ぐことができる。
【0067】
(外層チューブの開口部と管状部材の開口部とが重なるように位置決めする位置決めステップ)
次に、外層チューブ30の開口部32と、管状部材50の開口部51とが重なるように位置決めを行う。これによって、開口部から露出したリード線の一端とリング電極の内壁とを電気的に接合する接合ステップにおいて、管状部材50及び外層チューブ30の内腔に電気抵抗溶接用電極の一極42を挿入して、リード線12と電気抵抗溶接用電極42を接触させる際に、外層チューブ30の開口部と管状部材50の開口部51とが重なってできた開口部からリード線12を外層チューブ30の外に露出させることができ、電気抵抗溶接用電極の一極42の先端は開口部51を通過することで管状部材50に接触することなく、リード線12に接触させることができる。その後、開口部32においてリード線12を外層チューブ30の外周面より突出させ、リング状電極の内周面にリード線を接触させることが可能になる。
【0068】
すなわち、本発明のカテーテルの製造方法の一態様として、開口部を有する管状部材を外層チューブの内側に配置し、かつ、上記リード線を上記外層チューブと上記管状部材との間に挟持する配置ステップ(3)と、上記外層チューブの開口部と上記管状部材の開口部とが重なるように位置決めする位置決めステップと、を備えるカテーテルの製造方法が例示される。この配置ステップ(3)及び位置決めステップは、熱可塑性の外層チューブの長手方向に延在するように、リード線を外層チューブの内腔に配置する配置ステップの後から外層チューブの開口部からリード線の一端を露出する露出ステップの間に行えばよい。
【0069】
管状部材50の開口部51の形状は特に規定されないが、外層チューブ30の内側に管状部材50を配置した際に、外層チューブ30が有する開口部と管状部材50の開口部51が重なりやすくなるように形成されていればよく、外層チューブ30の開口部32と同じ形状であることが好ましい。
【0070】
管状部材50の外径は、リード線12を外層チューブ30と管状部材50の間に挟持し、さらにそれらを支持することが可能な範囲であればよく、上記外層チューブの内径をD1、リード線12の直径をD2として、D1-(D2×2)=rとしたとき、管状部材50の外径Rは、0.9×r≦R≦1.1×rの範囲であることが好ましい。
【0071】
また、管状部材50の内径は特に規定されないが、接合ステップにおいて管状部材50の内腔に電気抵抗溶接用電極の一極42を挿入する際に、電気抵抗溶接用電極の一極42が管状部材50に接触することがなければよい。
【0072】
管状部材50の材質は特に規定されないが、製作のし易さ、取扱いのし易さの観点から、金属又は樹脂が好ましい。また、接合ステップにおいて、電気抵抗溶接時に管状部材50に電気が流れ、溶接不良が発生する可能性を防ぐためには、絶縁材料であることがより好ましい。さらに、非絶縁材料の場合であっても電気的に独立していればよい。
【0073】
この方法を用いることで、リング電極の内周面に、リード線を確実かつ短時間で電気的に接合することが可能であって、リング電極を、外層チューブに被冠したままの状態で、リード線と電気的に接合することが可能となる。このことは、リード線を開口部から大きく引き出して、リング電極の内周面と電気的に接合した上で、リング電極を外層チューブに被冠しながら、余分なリード線を開口部から引き戻す、という従来の方法に比べ、リード線の不要な引き出し、引き戻しを行わない点で、断線リスクが低減でき好ましい。また、接着剤による電気的な接合は、リング電極の内周面と開口部でできた空隙を接着剤で効果的に充填することが困難であり、接着剤の漏れや不足の管理の点で、煩雑であるため、前述した方法が好ましい。
【実施例
【0074】
[実施例1]
医療用チュービング装置により、外径3.6mm、内径3.4mm、長さ10mmのポリウレタン製の外層チューブを製作した。この外層チューブにチューブの長手方向の長さ0.9mm、幅1.2mmの開口部を2箇所作成した。1つ目の開口部は、外層チューブの端部から長さ3.5mmの位置に形成し、2つ目の開口部は、1つ目の開口部と外層チューブの外壁において180°対向し、外層チューブの端部から長さ6.5mmの位置に形成した。
【0075】
一方、ポリウレタンで絶縁被覆された、直径0.1mmのリン青銅線の一端において絶縁被覆を除去し、外層チューブの内腔に挿入した。
【0076】
外層チューブの開口部において、絶縁被覆を除去したリン青銅線が露出し、リン青銅線を外層チューブの長手方向に平行となるよう延在させた。
【0077】
次に、外径3.8mm、内径3.6mm、幅1.5mmの白金イリジウム製リング電極を外層チューブに被冠させ、開口部を覆う位置に配置した。
【0078】
次に外層チューブの内腔に、先端が0.5mm角のクロム銅製電気抵抗溶接用電極を挿入して、リード線に接触させ、リング電極の外壁に、先端がリング電極の円弧形状に沿う半円弧形状で、幅1.5mmのクロム銅製抵抗溶接用電極を接触させ、電極間15Nで加圧して通電し、抵抗溶接によって接合した。
【0079】
次に、外層チューブの内腔に、外層チューブと同一材質であって、外径3.4mm、内径1.7mm、長さ15mmの内層チューブを挿入し、外層チューブと内層チューブの層間にリン青銅線を進入させ、長手方向に延在させた。このとき2つのリン青銅線はそれぞれ層間において、180°対向した位置に配置した。
【0080】
このようにして作成した複層のチューブに、収縮前内径4.5mm、収縮後肉厚0.2mm、長さ10mmのフッ素樹脂製熱収縮チューブを被冠した。
【0081】
さらに、内層チューブの内腔に、ステンレス製芯材を挿入し、内層チューブの一端を固定して、もう一端には、ばね定数1N/mmの圧縮コイルばねを取り付けて、内層チューブの先端側と後端側の間に10Nの圧縮荷重を与えた。
【0082】
圧縮荷重を与えた状態で、波長940nmのレーザー溶着機を用いて、チューブを回転させながらレーザー光をチューブ長手方向に遷移させながら照射した。
【0083】
このようにして作成した電極チップの内腔に、ポリアミド製内側シャフトの遠位側を挿入して接着し、リング電極に接続されたリン青銅線をこの内側シャフトの近位側に向けて配線した。
【0084】
次に、高周波通電用電極として、絶縁被覆を一部剥いだ銅線と、電極温度センサとして使用するコンスタンタン製のセンサ線を準備し、センサ線挟みながら銅線を内側シャフトにコイル状に巻きつけて、長さ13mmのコイル状の高周波通電用電極、及び高周波通電用電極の後端部に配置された電極温度センサを形成した。銅線及びセンサ線は、内側シャフトに沿って遠位側に向けて配線した。
【0085】
このようにして形成した高周波通電用電極及び電極温度センサを内包するように、ポリウレタン製のバルーンを配置し、バルーンの遠位側端部を電極チップに熱溶着で固定し、バルーンの近位側端部をポリウレタン製外側シャフトに熱溶着で固定した。
【0086】
カテーテルシャフトの近位側には、ハンドルを備え、高周波通電用電極の銅線と電極温度センサ線は、ハンドル内を通って、高周波発生装置用コネクタに接続した。
【0087】
また、リング電極に接続されたリン青銅線も、ハンドル内を通って、電位測定用コネクタに接続し、実施例の電極チップを有するバルーンカテーテルを作製した。
【0088】
[実施例2]
外径3.3mm、内径2.6mm、長さ12mmのステンレス管に長手方向の長さ0.9mm、幅1.2mmの開口部を2箇所形成し、それぞれの開口部が外層チューブ30の有する開口部と重なるように形成された管状部材を、外層チューブの内腔の長手方向に平行に延在するように配置されたリード線の内側に配置した。これら以外の条件は、実施例1と同様の条件で、実施例2の電極チップを有するバルーンカテーテルを作製した。
【0089】
(比較例)
実施例に記載のリング電極とリン青銅線を用い、リング電極の内壁に絶縁被覆を除去したリン青銅線を接触させ、抵抗溶接によって両者を接合した。実施例に記載の外層チューブ及び内層チューブを使用せず、リード線をチューブに埋没させることを行わなかった以外は同様にして、比較例の電極チップを有するバルーンカテーテルを作製した。
【0090】
(2つのリン青銅線の埋没状態及び短絡状態の確認)
実施例の電極チップについて、長手方向に対して直角に輪切り状に切断すると、一体化した複層チューブにリン青銅線が埋没して固定され、2つのリン青銅線が相互に接触することなく延在していることを確認できた。また、抵抗測定器を用いて、両者が短絡していないことを確認した。
【0091】
(リン青銅線の接続部強度試験)
実施例1の電極チップについて、リン青銅線とポリウレタン製の複層チューブを、引張試験機によって試験速度10mm/minで相互に引張り、破断強度を測定したところ、7.2Nでリン青銅線が溶接部以外の配線箇所から断線した。
【0092】
実施例2の電極チップについて、リン青銅線とポリウレタン製の複層チューブを、引張試験機によって試験速度10mm/minで相互に引張り、破断強度を測定したところ、7.5Nでリン青銅線が溶接部以外の配線箇所から断線した。
【0093】
一方、比較例の電極チップについて、リング電極とリン青銅線を引張試験機によって試験速度10mm/minで相互に引張り、破断強度を測定したところ、4.0Nでリン青銅線が溶接部分から断線した。
【0094】
上記の結果から、リング電極の内壁に接合されたリン青銅線が電極チップ中のチューブに埋没して延在することで、リン青銅線の固定を強化し、断線リスクを低減したカテーテルが得られることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は医療分野において、心房細動等の不整脈等の治療を行うための電極チップを先端に有するカテーテルとして用いることができる。
【符号の説明】
【0096】
1・・・カテーテル、2・・・カテーテルシャフト、3・・・バルーン、4・・・電極チップ、10・・・チューブ、11・・・リング電極、12・・・リード線、13・・・内側シャフト、14・・・外側シャフト、15・・・高周波通電用電極、16・・・電極温度センサ、20・・・ハンドル、21・・・コネクタ、22・・・外部電気生理検査機器、23・・・コネクタ、24・・・高周波発生装置、30・・・外層チューブ、31・・・内層チューブ、32・・・開口部、33・・・芯線、34・・・圧縮ばね、35・・・熱収縮チューブ、36・・・レーザー光、37・・・固定ジグ、42・・・電気抵抗溶接用電極の一極、43・・・電気抵抗溶接用電極の他極、50・・・管状部材、51、管状部材の開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6