(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】運行データ作成方法及び運行制御装置
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20240611BHJP
B66F 9/24 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G05D1/43
B66F9/24 Z
(21)【出願番号】P 2021001948
(22)【出願日】2021-01-08
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】開田 宏介
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-202021(JP,A)
【文献】特開平05-011837(JP,A)
【文献】特開2000-003219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体を走行経路に沿って目的地まで運行させる運行制御装置であって、
前記走行経路
の全てをユニット単位で分割して生成された複数の走行ユニットの情報と、前記移動体に対する運行動作の指示内容を表す複数の運行データとを記憶する記憶部と、
前記目的地までの経路探索を行うことで、前記記憶部に記憶された前記複数の運行データから、前記目的地までの経路を形成する走行ユニットを決定する経路探索部と、
前記記憶部に記憶された前記複数の運行データから、前記経路探索部により決定された前記走行ユニットに応じた運行データを抽出する運行データ抽出部と、
前記運行データ抽出部により抽出された前記運行データに従って前記移動体を運行させるように制御する運行制御部とを備え
、
前記走行ユニットは、直線状の経路と、左側に曲がる曲部を有する経路と、右側に曲がる曲部を有する経路とを含み、
前記複数の走行ユニットのうち何れかの走行ユニットの一端は、他の走行ユニットに接続され、前記何れかの走行ユニットの他端は、前記他の走行ユニットとは異なる走行ユニットに接続されており、
前記運行データは、前記走行ユニットごとに設定されており、
前記運行動作は、速度変更と、一時停止と、左ウィンカー点灯と、右ウィンカー点灯とを含み、
前記経路探索部は、前記走行ユニットの端同士が接続されるように前記目的地までの経路探索を行う運行制御装置。
【請求項2】
前記目的地を設定する目的地設定部と、
前記移動体の現在位置を検出する位置検出部とを更に備え、
前記経路探索部は、前記目的地設定部により設定された前記目的地と前記位置検出部により検出された前記移動体の現在位置とに基づいて、前記目的地までの経路探索を行う請求項
1記載の運行制御装置。
【請求項3】
前記記憶部は、前記走行ユニットと紐づいた複数の運行データ番号を更に記憶し、
前記運行データ抽出部は、前記記憶部に記憶された前記複数の運行データ番号から、前記経路探索部により決定された前記走行ユニットに対応する運行データ番号を抽出し、当該運行データ番号に対応する運行データを抽出する請求項
1または
2記載の運行制御装置。
【請求項4】
前記記憶部は、前記移動体に対する運行動作の指示位置を表す複数のマークの情報を更に記憶し、
前記マークは、前記走行ユニットに少なくとも1つ設定されている請求項
1~
3の何れか一項記載の運行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運行データ作成方法及び運行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、移動ロボット制御システムが記載されている。特許文献1に記載の移動ロボット制御システムは、移動ロボットが所定の移動領域を移動する際の走行ルールを反映させた走行ルール情報を含む地図情報を記憶する地図情報記憶部と、この地図情報記憶部に記憶された地図情報に基づいて、移動始点から移動終点に至る経路を探索する経路探索部と、この経路探索部で探索した経路に基づいて、移動ロボットの移動装置の制御指令値を生成する移動制御部とを備えている。走行ルールは、移動ロボットの移動方向及び移動速度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、地図情報に基づいて走行経路を探索し、走行ルール(移動方向及び移動速度)に基づいて移動ロボットを走行させるだけである。自動運転フォークリフトや自動運転トーイング車等では、場所ごとに荷の移載、交差点進入申請、ウインカー点灯、ホーン鳴動及び障害物エリア切替等といったタスク(運行動作)を実施する必要がある。従って、移動体の現在位置から目的地に至るまで運行動作を実施するには、移動体に対する運行動作の指示内容を表す運行データをユーザが別途作成する必要がある。この場合には、移動体の現在位置から目的地までの組み合わせが増えるにつれて、ユーザが運行データを作成する量が膨大となる。
【0005】
本発明の目的は、移動体の運行データの作成量を低減することができる運行データ作成方法及び運行制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、移動体が走行経路に沿って走行する際における移動体に対する運行動作の指示内容を表す運行データを作成する運行データ作成方法であって、走行経路を取得する走行経路取得工程と、走行経路取得工程において取得された走行経路をユニット単位で分割して複数の走行ユニットを生成するユニット化工程と、ユニット化工程において生成された走行ユニットに応じた運行データを作成する運行データ作成工程とを含む。
【0007】
このような運行データ作成方法においては、予め決められた走行経路をユニット単位で分割して複数の走行ユニットを生成し、これらの走行ユニットに応じた運行データをそれぞれ作成する。実際に移動体を走行経路に沿って目的地まで運行させるときは、目的地までの経路探索を行うことで、目的地までの経路を形成する走行ユニットが決定され、その走行ユニットに応じた運行データが抽出され、その運行データに従って移動体が運行する。このように目的地までの経路探索によって走行ユニットが決定されると、その走行ユニットに応じた運行データが抽出されることになる。このため、移動体の現在位置から目的地までの組み合わせが増えるたびに、移動体の運行データをユーザが逐一作成しなくて済む。これにより、移動体の運行データの作成量が低減される。
【0008】
運行データ作成方法は、ユニット化工程において生成された走行ユニットと紐づいた運行データ番号を作成する紐づけデータ作成工程を更に含み、運行データ作成工程では、運行データ番号に対応する運行データを作成してもよい。
【0009】
このような方法では、走行ユニットと紐づいた運行データ番号を抽出し、当該運行データ番号に対応する運行データを抽出することで、走行ユニットに応じた運行データが得られる。従って、走行ユニットは違うが、運行データの内容が同じである場合に、走行ユニットに応じた運行データを作成しなくて済む。従って、移動体の運行データの作成量が更に低減される。
【0010】
ユニット化工程では、移動体が左折または右折する場合には、移動体を左側または右側に曲げる曲部を有するような走行ユニットを生成し、運行データ作成工程では、曲部の手前において移動体の左折または右折に関する運行動作を実施するような運行データを作成してもよい。
【0011】
このような方法では、移動体の左折または右折に関する運行動作を実施するような運行データの内容(例えば左ウインカーまたは右ウインカーの点灯)を容易に設定することができる。
【0012】
本発明の他の態様は、移動体を走行経路に沿って目的地まで運行させる運行制御装置であって、走行経路をユニット単位で分割して生成された複数の走行ユニットの情報と、移動体に対する運行動作の指示内容を表す複数の運行データとを記憶する記憶部と、目的地までの経路探索を行うことで、記憶部に記憶された複数の運行データから、目的地までの経路を形成する走行ユニットを決定する経路探索部と、記憶部に記憶された複数の運行データから、経路探索部により決定された走行ユニットに応じた運行データを抽出する運行データ抽出部と、運行データ抽出部により抽出された運行データに従って移動体を運行させるように制御する運行制御部とを備える。
【0013】
このような運行制御装置においては、目的地までの経路探索を行うことで、目的地までの経路を形成する走行ユニットが決定され、その走行ユニットに応じた運行データが抽出され、その運行データに従って移動体が運行する。このように目的地までの経路探索によって走行ユニットが決定されると、その走行ユニットに応じた運行データが抽出されることになる。このため、移動体の現在位置から目的地までの組み合わせが増えるたびに、移動体の運行データをユーザが逐一作成しなくて済む。これにより、移動体の運行データの作成量が低減される。
【0014】
運行制御装置は、目的地を設定する目的地設定部と、移動体の現在位置を検出する位置検出部とを更に備え、経路探索部は、目的地設定部により設定された目的地と位置検出部により検出された移動体の現在位置とに基づいて、目的地までの経路探索を行ってもよい。
【0015】
このような構成では、目的地と移動体の現在位置とに基づいて、目的地までの経路探索が自動的に行われることで、目的地までの経路を形成する走行ユニットが決定される。従って、ユーザが目的地までの経路を選択しなくて済む。
【0016】
記憶部は、走行ユニットと紐づいた複数の運行データ番号を更に記憶し、運行データ抽出部は、記憶部に記憶された複数の運行データ番号から、経路探索部により決定された走行ユニットに対応する運行データ番号を抽出し、当該運行データ番号に対応する運行データを抽出してもよい。
【0017】
このような構成では、走行ユニットと紐づいた運行データ番号が抽出され、当該運行データ番号に対応する運行データが抽出されることで、走行ユニットに応じた運行データが得られる。従って、走行ユニットは違うが、運行データの内容が同じである場合に、走行ユニットに応じた運行データを作成しなくて済む。従って、移動体の運行データの作成量が更に低減される。
【0018】
記憶部は、移動体に対する運行動作の指示位置を表す複数のマークの情報を更に記憶し、マークは、走行ユニットに少なくとも1つ設定されていてもよい。
【0019】
このような構成では、運行データの内容が移動体に対して走行ユニットの適切な位置で指示されるため、運行データの内容を確実に実施することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、移動体の運行データの作成量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る運行制御装置を示す概略構成図である。
【
図2】走行経路の一例をマークと共に示す概略図である。
【
図3】
図2に示された走行経路が複数の走行ユニットにユニット化された状態を示す概略図である。
【
図4】走行ユニットと運行データ番号と運行データ及びマークとの関係を表すテーブルデータの一例を示す表である。
【
図5】
図1に示された運行データ抽出部により実行される運行データ抽出処理の手順を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の一実施形態に係る運行データ作成方法を実施するための運行データ作成システムを示す概略構成図である。
【
図7】ユーザがパソコンを使用して運行データを作成する工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る運行制御装置を示す概略構成図である。
図1において、本実施形態の運行制御装置1は、
図2に示されるように、移動体2を走行経路Aに沿って目的地Pまで自動的に運行させる装置である。移動体2は、例えば空港等で使用される自動運転用のトーイング車である。
【0024】
走行経路Aは、移動体2を走行させる仮想的な経路であり、3次元の点列データ(XYZ座標)で表されている。走行経路Aには、移動体2に対する運行動作(タスク)の指示に使用される複数のマークM(後述)が設定されている。
【0025】
運行制御装置1は、移動体2に搭載されている。運行制御装置1は、入力器3と、自己位置推定器4と、記憶部5と、運行制御用コントローラ6と、制御対象7とを備えている。
【0026】
入力器3は、ユーザが移動体2の目的地を設定したり、移動体2の運行経路等を選択するための機器であり、例えばタッチパネルで構成される。
【0027】
自己位置推定器4は、移動体2の現在の自己位置を推定する。自己位置推定器4は、例えばレーザセンサの検出データと地図情報とに基づいて、移動体2の自己位置を推定する。レーザセンサは、移動体2の周囲にレーザを照射し、レーザの反射光を受光することにより、移動体2の周囲に存在する物体との距離を計測する。
【0028】
自己位置推定器4は、レーザSLAM(simultaneous localization andmapping)手法を用いて、移動体2の自己位置の推定演算を行う。SLAMは、センサデータ及び地図データを使って自己位置推定を行う自己位置推定技術である。自己位置推定器4は、レーザセンサの検出データと地図情報とをマッチングさせて、移動体2の自己位置の推定演算を行う。
【0029】
記憶部5は、複数の走行ユニットの情報と、複数の運行データ番号と、複数の運行データと、複数のマークMの情報とを記憶する(
図4参照)。走行ユニットの情報としては、走行ユニットの番号及び点列データがある。
【0030】
走行ユニットは、例えば
図3に示されるように、予め決められた走行経路Aをユニット単位で分割して生成されている。つまり、走行経路Aは、複数の走行ユニットからなっている。
【0031】
図3において、走行ユニットA1は、直線状の経路である。走行ユニットA2は、左側に屈曲した屈曲部8Lを有する経路である。走行ユニットA3は、右側に屈曲した屈曲部8Rを有する経路である。走行ユニットA4は、左側に屈曲した屈曲部8Lを有する経路である。走行ユニットA5は、右側に屈曲した屈曲部8Rを有する経路である。走行ユニットA6は、右側に湾曲した湾曲部を有する経路である。走行ユニットA7は、直線状の経路である。走行ユニットA8は、左側に湾曲した湾曲部を有する経路である。走行ユニットA9は、直線状の経路である。走行ユニットA10は、直線状の経路である。ここでは、目的地Pは、走行ユニットA3に設定されている(
図2参照)。なお、
図3(b)では、走行ユニットA6,A7,A9は、省略されている。
【0032】
走行ユニットA2,A4の屈曲部8L及び走行ユニットA3,A5の屈曲部8Rは、移動体2を左側または右側に曲げる曲部を構成している。走行ユニットA2,A5における屈曲部8L,8Rの手前側の部分は、重複領域となっている。走行ユニットA3,A4における屈曲部8R,8Lの手前側の部分は、重複領域となっている。
【0033】
走行ユニットA2の一端は、走行ユニットA1に接続され、走行ユニットA2の他端は、走行ユニットA3,A4に接続されている。走行ユニットA3の一端は、走行ユニットA2に接続され、走行ユニットA3の他端は、走行ユニットA6に接続されている。走行ユニットA1,A4~A10については、省略する。
【0034】
運行データ番号は、
図4(a)に示されるように、走行ユニットと紐づいた紐づけデータである。走行ユニット及び運行データ番号は、紐づけ用テーブルデータとして記憶部5に記憶されている。
【0035】
運行データは、
図4(b)に示されるように、運行データ番号に対して設定されている。運行データは、移動体2に対する運行動作の指示内容を表すデータである。運行動作としては、速度変更、一時停止、ホーン鳴動、ウインカー点灯、交差点進入申請及び障害物エリア切替等が挙げられる。運行データ番号及び運行データは、マークMの番号と共に運行動作用テーブルデータとして記憶部5に記憶されている。
【0036】
マークMは、移動体2に対する運行動作の指示位置を表す仮想マークである。マークMは、1番から順番に設定されている。マークMは、3次元の点列データで表されている。マークMは、各走行ユニットに少なくとも1つずつ設定されている。
【0037】
図3において、マークM1は、走行ユニットA1に設定されている。マークM2は、走行ユニットA2に設定されている。マークM3は、走行ユニットA3に設定されている。マークM4a,M4bは、走行ユニットA4に設定されている。マークM5は、走行ユニットA5に設定されている。マークM6は、走行ユニットA6に設定されている。マークM8は、走行ユニットA8に設定されている。なお、走行ユニットA7,A9,A10に設定されたマークMについては、便宜上省略されている。
【0038】
マークM1において実施される運行動作は、速度変更である。マークM2において実施される運行動作は、交差点進入申請及び左ウインカー点灯である。マークM3において実施される運行動作は、右ウインカー点灯及び一時停止である。マークM4aにおいて実施される運行動作は、左ウインカー点灯である。マークM4bにおいて実施される運行動作は、ホーン鳴動である。マークM5において実施される運行動作は、右ウインカー点灯である。マークM6,M8において実施される運行動作は、速度変更である。なお、左ウインカー点灯及び右ウインカー点灯は、左ウインカー及び右ウインカーを所定時間だけ一時的に点灯させる動作である。
【0039】
屈曲部8L,8Rを有する走行ユニットでは、移動体2の左折または右折に関する運行動作を実施する位置を表すマークMは、屈曲部8L,8Rの手前に設定されている。移動体の左折または右折に関する運行動作としては、ウインカー点灯及び障害物エリア切替等がある。
【0040】
例えば、走行ユニットA2では、マークM2は屈曲部8Lの手前に設定されている。走行ユニットA3では、マークM3は屈曲部8Rの手前に設定されている。走行ユニットA4では、マークM4aは屈曲部8Lの手前に設定されている。走行ユニットA5では、マークM5は屈曲部8Rの手前に設定されている。
【0041】
図1に戻り、運行制御用コントローラ6は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等により構成されている。運行制御用コントローラ6は、目的地取得部11と、現在位置取得部12と、経路探索部13と、運行データ抽出部14と、運行制御部15とを有している。
【0042】
目的地取得部11は、入力器3により設定入力された移動体2の目的地Pを取得する。目的地取得部11は、入力器3と協働して、目的地Pを取得する目的地設定部を構成している。
【0043】
現在位置取得部12は、自己位置推定器4により推定された移動体2の現在の自己位置を取得する。現在位置取得部12は、自己位置推定器4と協働して、移動体2の現在位置を検出する位置検出部を構成している。
【0044】
経路探索部13は、目的地取得部11により取得された移動体2の目的地Pと現在位置取得部12により取得された移動体2の現在位置とに基づいて、移動体2の現在位置から目的地Pまでの経路探索を行うことで、記憶部5に記憶された複数の運行データから、目的地Pまでの経路を形成する走行ユニットを決定する。
【0045】
このとき、経路探索部13は、走行ユニットの端同士が接続されるように経路探索を行う。また、経路探索部13は、任意の経路探索方法を用いて経路探索を行う。例えば、最短経路を解く方法として、ダイクストラ法やA*探索アルゴリズム等が用いられる。
【0046】
運行データ抽出部14は、記憶部5に記憶された複数の運行データから、経路探索部13により決定された走行ユニットに応じた運行データを抽出する。
【0047】
具体的には、運行データ抽出部14は、
図5に示されるように、まず記憶部5に記憶された運行データ番号から、経路探索部13により決定された走行ユニットに対応する運行データ番号を抽出する(手順S101)。続いて、運行データ抽出部14は、当該運行データ番号に対応する運行データを抽出する(手順S102)。
【0048】
運行制御部15は、運行データ抽出部14により抽出された運行データに従って移動体2を運行させるように制御対象7を制御する。制御対象7は、移動体2を走行させる駆動部と、移動体2を制動させる制動部と、移動体2を転舵させる操舵部と、移動体2のウインカーを点灯させるウインカースイッチ部と、移動体2のホーンを鳴動させるホーンスイッチ部等とを含んでいる。
【0049】
以上のような運行制御装置1において、ユーザが入力器3により移動体2の目的地Pが設定入力されると共に、自己位置推定器4により移動体2の現在の自己位置が推定される。
【0050】
そして、運行制御用コントローラ6の経路探索部13によって移動体2の現在位置から目的地Pまでの経路探索が行われることで、目的地Pまでの経路を形成する走行ユニットが決定される。
図3に示される走行経路Aでは、移動体2の現在位置から目的地Pまでの運行経路として走行ユニットA1~A3が決定される。
【0051】
そして、運行制御用コントローラ6の運行データ抽出部14によって、経路探索部13により決定された走行ユニットに対応する運行データ番号が抽出され、その運行データ番号に対応する運行データが抽出される。
【0052】
図3に示される走行経路Aでは、まず走行ユニットA1に対応する運行データ番号10が抽出され、その運行データ番号10に対応する運行データが抽出される。運行データ番号10に対応する運行データは、速度変更である(
図4参照)。
【0053】
また、走行ユニットA2に対応する運行データ番号20が抽出され、その運行データ番号20に対応する運行データが抽出される。運行データ番号20に対応する運行データは、交差点進入申請及び左ウインカー点灯である(
図4参照)。
【0054】
また、走行ユニットA3に対応する運行データ番号30が抽出され、その運行データ番号30に対応する運行データが抽出される。運行データ番号30に対応する運行データは、右ウインカー点灯及び一時停止である(
図4参照)。
【0055】
そして、移動体2が目的地Pに向かって走行を開始する。移動体2が走行ユニットA1に設定されたマークM1を通過すると、運行データ番号10に対応する運行データの内容が実施される。つまり、移動体2の速度が変更されるように制御対象7が制御される。
【0056】
その後、移動体2が走行ユニットA2に設定されたマークM2を通過すると、運行データ番号20に対応する運行データの内容が実施される。つまり、交差点進入申請が上位システムに対して行われると共に、左ウインカーが所定時間だけ点灯するように制御対象7が制御される。そして、移動体2は、走行ユニットA2の屈曲部8Lを左折して走行する。
【0057】
その後、移動体2が走行ユニットA3に設定されたマークM3を通過すると、運行データ番号30に対応する運行データの内容が実施される。つまり、右ウインカーが所定時間だけ点灯するように制御対象7が制御されると共に、移動体2が一時停止を行うように制御対象7が制御される。そして、移動体2は、走行ユニットA3の屈曲部8Rを右折して走行する。そして、移動体2は、目的地Pに到達すると停止する。
【0058】
次に、上記の運行データを作成する運行データ作成方法について説明する。なお、運行データは、上述した運行制御装置1が運用される前に、予め作成されて記憶部5に保存されている。
【0059】
図6は、本発明の一実施形態に係る運行データ作成方法を実施するための運行データ作成システムを示す概略構成図である。本実施形態の運行データ作成方法は、ユーザによって実施される。
【0060】
図6において、運行データ作成システム20は、ユーザが操作するパソコン21と、このパソコン21に走行経路Aを入力する走行経路入力部22とを備えている。パソコン21には、上記の記憶部5が接続されている。
【0061】
図7は、ユーザがパソコン21を使用して運行データを作成する工程を示すフローチャートである。
図7において、ユーザは、まず走行経路入力部22により入力された走行経路Aを取得してパソコン21の画面に表示させる(工程S111)。本工程は、走行経路入力部22による走行経路Aの入力作業と協働して、走行経路Aを取得する走行経路取得工程に相当する。
【0062】
続いて、ユーザは、
図3に示されるように、走行経路Aをユニット単位で分割して複数の走行ユニットを生成する(工程S112)。本工程は、走行経路取得工程において取得された走行経路Aをユニット単位で分割して複数の走行ユニットを生成するユニット化工程に相当する。
【0063】
続いて、ユーザは、
図4(a)に示されるように、複数の走行ユニットと紐づいた運行データ番号をそれぞれ紐づけデータとして作成する(工程S113)。本工程は、ユニット化工程において生成された走行ユニットと紐づいた運行データ番号を作成する紐づけデータ作成工程に相当する。
【0064】
続いて、ユーザは、
図4(b)に示されるように、各運行データ番号に対応する運行データをそれぞれ作成する(工程S114)。本工程は、ユニット化工程において生成された走行ユニットに応じた運行データを作成する運行データ作成工程に相当する。
【0065】
続いて、ユーザは、走行ユニットの情報と、運行データ番号と、運行データと、運行データの内容が実施される位置を表すマークMの情報とを記憶部5に保存する(工程S115)。
【0066】
以上のように本実施形態にあっては、予め決められた走行経路Aをユニット単位で分割して複数の走行ユニットを生成し、これらの走行ユニットに応じた運行データをそれぞれ作成する。実際に移動体2を走行経路Aに沿って目的地Pまで運行させるときは、目的地Pまでの経路探索を行うことで、目的地Pまでの経路を形成する走行ユニットが決定され、その走行ユニットに応じた運行データが抽出され、その運行データに従って移動体2が運行する。このように目的地Pまでの経路探索によって走行ユニットが決定されると、その走行ユニットに応じた運行データが抽出されることになる。このため、移動体2の現在位置から目的地Pまでの組み合わせが増えるたびに、移動体2の運行データをユーザが逐一作成しなくて済む。これにより、移動体2の運行データの作成量が低減される。
【0067】
また、本実施形態では、走行ユニットと紐づいた運行データ番号を抽出し、当該運行データ番号に対応する運行データを抽出することで、走行ユニットに応じた運行データが得られる。従って、走行ユニットは違うが、運行データの内容が同じである場合に、走行ユニットに応じた運行データを作成しなくて済む。例えば
図4に示されるように、走行ユニットA1,A6,A8の運行データは同じであるため、走行ユニットA1,A6,A8の運行データ番号を同じにすることで、走行ユニットA1,A6,A8に応じた運行データをそれぞれ作成する必要がない。従って、運行データの作成量が更に低減される。
【0068】
また、本実施形態では、移動体2が左折または右折する場合には、移動体2を左側に曲げる屈曲部8Lまたは移動体2を右側に曲げる屈曲部8Rを有するような走行ユニットを生成し、屈曲部8L,8Rの手前において移動体2の左折または右折に関する運行動作を実施するような運行データを作成する。このため、移動体2の左折または右折に関する運行動作を実施するような運行データの内容(例えば左ウインカーまたは右ウインカーの点灯)を容易に設定することができる。
【0069】
また、本実施形態では、移動体2の目的地Pと移動体2の現在位置とに基づいて、目的地Pまでの経路探索が自動的に行われることで、目的地Pまでの経路を形成する走行ユニットが決定される。従って、ユーザが目的地Pまでの経路を選択しなくて済む。
【0070】
また、本実施形態では、記憶部5は、移動体2に対する運行動作の指示位置を表す複数のマークMの情報を記憶し、マークMは、走行ユニットに少なくとも1つ設定されている。このため、運行データの内容が移動体2に対して走行ユニットの適切な位置で指示されるため、運行データの内容を確実に実施することができる。
【0071】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、走行ユニット番号と運行データ番号との対応関係を示す紐づけ用テーブルデータが記憶されているが、そのような紐づけ用テーブルデータとしては、走行ユニット番号と運行データ番号との対応関係に加えて、走行ユニットに設定されたマークMの番号と走行ユニットの点列データ(XYZ座標)とを含んでいてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、走行ユニットと紐づいた運行データ番号が抽出され、当該運行データ番号に対応する運行データが抽出されているが、特にその形態には限られず、走行ユニット=運行データ番号とルール化し、走行ユニットと紐づいた運行データ番号を無くしてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、入力器3により設定入力された目的地Pと自己位置推定器4により推定された移動体2の現在位置とに基づいて、目的地Pまでの経路探索が自動的に行われることで、目的地Pまでの経路を形成する走行ユニットが決定されているが、特にその形態には限られず、ユーザが入力器3により経路探索を行って走行ユニットを選択してもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、ユーザがパソコン21を使用して運行データを作成しているが、特にその形態には限られず、コントローラが走行経路Aに基づいて走行ユニットの生成及び運行データの作成を自動的に行ってもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、自己位置推定器4は、レーザSLAM手法を用いて、移動体2の自己位置を推定しているが、特にそのような形態には限られない。自己位置推定器4は、例えばRTK-GNSS(realtimekinematic-global navigation satellite system)測位法等を用いて、移動体2の自己位置を推定してもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、走行経路AがXYZ座標の点列データで表されているが、特にその形態には限られず、例えばSLAMで扱われる地図(グリッドマップ)のピクセルデータで走行経路Aを表してもよい。
【0077】
また、上記実施形態は、自動運転用のトーイング車に適用されているが、本発明は、自動運転用のフォークリフトや牽引車等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0078】
1…運行制御装置、2…移動体、3…入力器(目的地設定部)、4…自己位置推定器(位置検出部)、5…記憶部、8L,8R…屈曲部(曲部)、11…目的地取得部(目的地設定部)、12…現在位置取得部(位置検出部)、13…経路探索部、14…運行データ抽出部、15…運行制御部、A…走行経路、A1~A10…走行ユニット、M…マーク、P…目的地。