(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】ステータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/38 20060101AFI20240611BHJP
H02K 3/50 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
H02K3/38 Z
H02K3/50 Z
(21)【出願番号】P 2021004188
(22)【出願日】2021-01-14
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 玲二
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-150503(JP,A)
【文献】特開2005-057892(JP,A)
【文献】特開平05-022908(JP,A)
【文献】特開2020-114116(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0015349(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102014005147(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/38
H02K 3/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアと、
前記ステータコアに配置されるコイル部と、
前記コイル部と電気的に接続されるバスバーを含むバスバーモジュールと、
前記バスバーと前記コイル部とが接続される接続部を絶縁するとともに、前記バスバーモジュールに係合される絶縁カバーと、を備え、
前記絶縁カバーは、前記絶縁カバーと前記バスバーモジュールとが係合される部分である係合部にワニスを導入するための孔部と、前記孔部に前記ワニスを導くガイド部とを含む、ステータ。
【請求項2】
前記ガイド部は、前記孔部に接続されている溝部を含む、請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
前記溝部は、前記ステータコアの軸方向と交差するように延びる底面部と、前記底面部を流れる前記ワニスを前記孔部にガイドするように前記軸方向に沿って突出するように設けられる側面部と、を含む、請求項2に記載のステータ。
【請求項4】
前記側面部は、前記ステータコアの径方向において互いに対向するとともに前記ステータコアの周方向に沿って延びるように設けられる一対の周方向側面を含み、
前記一対の周方向側面の一方は、前記軸方向から見て、前記孔部に接続されるように設けられている、請求項3に記載のステータ。
【請求項5】
前記バスバーモジュールおよび前記絶縁カバーは、前記ステータコアの軸方向において、前記ステータコアの一方側に設けられており、
前記係合部は、前記孔部に対して前記軸方向の他方側に配置されており、
前記孔部は、前記軸方向から見て、前記係合部と重なる位置に配置されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のステータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バスバーモジュールに設けられる絶縁カバーを備えるステータが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に記載の回転電機用ステータは、複数のスロットが形成されたステータコアと、複数のスロットに挿入されるコイルと、を備える。また、上記回転電機用ステータは、コイルに電気的に接続されるバスバーと、バスバーを保持する保持部材とを含むバスバーユニット(バスバーモジュール)を備える。バスバーユニットの保持部材は、コイルのコイルエンド部上に載置されている。また、上記回転電機用ステータは、コイルとバスバーとの接続部を覆う内側カバー(絶縁カバー)および外側カバー(絶縁カバー)を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、内側(外側)カバーとバスバーユニットとの係合部にワニスを導入することによって、内側(外側)カバーをバスバーユニットに固定することが考えられる。しかしながら、上記特許文献1に記載されているような従来の回転電機用ステータでは、互いに係合されている状態の絶縁カバーおよびバスバーユニットにノズルなどによりワニスが噴射された場合に、粘性を有するワニスの流れ方が一定ではないため、絶縁カバーとバスバーユニットとの係合部にワニスが導入されない場合がある。したがって、絶縁カバーとバスバーユニット(バスバーモジュール)との係合部にワニスを確実に導入することが可能なステータが望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、絶縁カバーとバスバーモジュールとの係合部にワニスを確実に導入することが可能なステータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面におけるステータは、ステータコアと、ステータコアに配置されるコイル部と、コイル部と電気的に接続されるバスバーを含むバスバーモジュールと、バスバーとコイル部とが接続される接続部を絶縁するとともに、バスバーモジュールに係合される絶縁カバーと、を備え、絶縁カバーは、絶縁カバーとバスバーモジュールとが係合される部分である係合部にワニスを導入するための孔部と、孔部にワニスを導くガイド部とを含む。
【0008】
この発明の一の局面によるステータでは、上記のように、絶縁カバーは、絶縁カバーとバスバーモジュールとが係合される部分である係合部にワニスを導入するための孔部と、孔部にワニスを導くガイド部とを含む。これにより、ガイド部によってワニスが孔部に導かれるので、孔部にワニスを容易に導入することができる。その結果、孔部を介して絶縁カバーとバスバーモジュールとの係合部にワニスを確実に導入することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、絶縁カバーとバスバーモジュールとの係合部にワニスを確実に導入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態による回転電機の構成を示す部分拡大平面図である。
【
図2】一実施形態によるステータの構成を示す径方向に沿った部分拡大断面図である。
【
図3】一実施形態によるバスバーモジュールの構成を示す斜視図である。
【
図4】一実施形態による絶縁カバーのA1側の溝部および孔部の構成を示す部分拡大斜視図である。
【
図5】一実施形態による絶縁カバーのA1側の溝部および孔部の構成を示す部分拡大平面図である。
【
図6】
図5の1000-1000線に沿った断面図である。
【
図7】一実施形態による絶縁カバーのフック部の斜視図である。
【
図8】
図5の2000-2000線に沿った断面図である。
【
図9】一実施形態による絶縁カバーのA2側の溝部および孔部の構成を示す部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
[ステータの構造]
図1~
図9を参照して、ステータ100の構造について説明する。
【0013】
本願明細書では、「軸方向」とは、
図1に示すように、ステータ100の中心軸線Cに沿った方向(Z方向)を意味する。また、「周方向」とは、ステータ100の周方向(A方向)を意味する。また、「径方向」とは、ステータ100の半径方向(R方向)を意味する。
【0014】
ステータ100は、ロータ101と共に、回転電機102の一部を構成する。回転電機102は、たとえば、モータ、ジェネレータ、または、モータ兼ジェネレータとして構成される。ステータ100は、
図1に示すように、永久磁石(図示せず)が設けられるロータ101の径方向外側に配置されている。すなわち、ステータ100は、インナーロータ型の回転電機102の一部を構成する。
【0015】
ステータ100は、ステータコア10と、ステータコア10に配置されるコイル部20(
図2参照)とを備える。
【0016】
(ステータコアの構造)
ステータコア10は、中心軸線C(
図1参照)を中心軸とした円筒形状を有する。また、ステータコア10は、複数枚の電磁鋼板(たとえば、珪素鋼板)が軸方向に積層されることにより、形成されている。ステータコア10には、軸方向に見て円環状を有するバックヨーク11(
図2参照)と、バックヨーク11の径方向内側に設けられ、軸方向に延びる複数のスロット12(
図2参照)とが設けられている。
【0017】
図2に示すように、スロット12には、径方向内側(R1側)に開口する開口部12aが設けられている。また、スロット12は、軸方向両側のそれぞれが開口している。
【0018】
(コイル部の構造)
コイル部20は、スロット12に収容(配置)されているスロット収容部21と、ステータコア10(スロット12)の軸方向の外側に配置されているコイルエンド部22と、を含む。
【0019】
コイル部20は、電源部(図示せず)から3相交流の電力が供給されることにより、磁束を発生させるように構成されている。具体的には、コイル部20は、3相のY結線により接続(結線)されている。
【0020】
また、コイル部20は、動力線20Pと、中性線20Nとを含む。
【0021】
(バスバーモジュールの構造)
また、ステータ100は、バスバーモジュール30を備える。バスバーモジュール30は、コイル部20と電気的に接続されるバスバー31(
図3参照)を含む。バスバーモジュール30は、バスバー31を保持するバスバー保持部32を含む。
【0022】
図3に示すように、バスバー31は、第1バスバー31aと、第2バスバー31bと、第3バスバー31cと、中性線バスバー31dと、を含む。第1バスバー31a、第2バスバー31b、および第3バスバー31cはそれぞれ、3相のコイル部20の互いに異なる相のコイル部20に接続される。中性線バスバー31dは、3相のコイル部20の各々に接続される。第1バスバー31a、第2バスバー31b、第3バスバー31c、および中性線バスバー31dは、バスバー保持部32に一体的に保持されている。
【0023】
第1バスバー31a、第2バスバー31b、および第3バスバー31cの各々は、コイル部20の動力線20Pに接続される複数の動力線接続端子30Pを有する。また、中性線バスバー31dは、コイル部20の中性線20Nに接続される複数の中性線接続端子30Nを有する。
【0024】
動力線接続端子30Pおよび中性線接続端子30Nはそれぞれ、バスバー保持部32から径方向外側(R2側)および径方向内側(R1側)に突出するように設けられている。また、動力線接続端子30Pと動力線20Pとが接続されることにより接続部40P(
図2参照)が形成される。また、中性線接続端子30Nと中性線20Nとが接続されることにより接続部40N(
図2参照)が形成される。
【0025】
図3に示すように、バスバーモジュール30(バスバー31)は、径方向内側(R1側)および径方向外側(R2側)の各々において、周方向(A方向)の一方側から他方側に向かって、一対の動力線接続端子30Pと一対の中性線接続端子30Nとが交互に配置されるように構成されている。
【0026】
また、第1バスバー31a、第2バスバー31b、および第3バスバー31cの各々は、外部接続端子33を有する。外部接続端子33は、バスバー保持部32からZ1側に突出するように設けられている。なお、外部接続端子33は、図示しない外部回路に電気的に接続されている。
【0027】
また、
図1に示すように、ステータ100は、絶縁カバー50を備える。絶縁カバー50は、バスバーモジュール30に係合されている。また、絶縁カバー50は、接続部(40P、40N)を絶縁するように構成されている。具体的には、絶縁カバー50は、周方向に並ぶ一対の接続部40Pと一対の接続部40Nとの間に設けられる複数の遮蔽板51を含む。これにより、一対の接続部40Pと一対の接続部40Nとが絶縁される。なお、絶縁カバー50は、樹脂製(たとえばナイロン系)である。また、
図1では、簡略化のため、接続部(40P、40N)の図示は省略されている。
【0028】
ここで、
図4および
図5に示すように、絶縁カバー50は、絶縁カバー50とバスバーモジュール30とが係合される部分である係合部52にワニスを導入するための孔部53を含む。また、絶縁カバー50は、孔部53にワニスを導く溝部54を含む。なお、溝部54は、特許請求の範囲の「ガイド部」の一例である。
【0029】
これにより、溝部54によってワニスが孔部53に導かれるので、孔部53にワニスを容易に導入することができる。その結果、孔部53を介して絶縁カバー50とバスバーモジュール30との係合部52にワニスを確実に導入することができる。
【0030】
具体的には、溝部54は、絶縁カバー50に形成されている凹部54aの一部を構成する。凹部54aは、ステータコア10の周方向に沿って延びるように設けられている。
【0031】
また、溝部54は、孔部53に接続されている。
【0032】
これにより、溝部54から孔部53にワニスが直接的に導かれるので、孔部53にワニスをより確実に導入することができる。
【0033】
具体的には、溝部54は、軸方向から見て、孔部53のR2側(径方向外側)を囲むように設けられている。
【0034】
また、
図1に示すように、バスバーモジュール30および絶縁カバー50は、ステータコア10の軸方向において、ステータコア10の一方側(Z1側)に設けられている。また、絶縁カバー50とバスバーモジュール30との係合部52は、孔部53に対して軸方向の他方側(Z2側)に配置(
図6参照)されている。また、
図5に示すように、孔部53は、軸方向から見て、係合部52と重なる位置に配置されている。
【0035】
これにより、軸方向から見て孔部53が係合部52と重なる位置に設けられていることによって、絶縁カバー50に対して軸方向の一方側から射出されたワニスを、孔部53を介してより確実に係合部52に導入することができる。
【0036】
また、
図5に示すように、孔部53の周方向の幅W1は、係合部52(後述する突出部34)の周方向の幅W2よりも大きい。また、係合部52は、軸方向から見て、孔部53の周方向の中央部に配置されている。なお、孔部53は、軸方向から見て、周方向(A方向)を長辺とする略矩形形状(長方形形状)を有している。
【0037】
図6に示すように、絶縁カバー50は、フック部55を含む。フック部55は、Z方向に延びる板状の第1部分55aと、第1部分55aのZ2側の端部から径方向外側(R2側)に折り返されるように形成されている第2部分55bと有する。すなわち、フック部55は、径方向に沿った断面視においてL字状に形成されている。また、第2部分55bは、径方向内側(R1側)に突出しているバスバーモジュール30の突出部34と係合部52において係合している。具体的には、第2部分55bは、Z2側から突出部34を支持するように設けられている。
【0038】
バスバーモジュール30の突出部34は、径方向内側(フック部55側)の先端面34aを有する。先端面34aは、軸方向に沿って延びるように設けられている。先端面34aは、フック部55と離間して設けられている。
【0039】
また、フック部55は、先端面34aに接続される傾斜面34bを含む。傾斜面34bは、軸方向と交差するように傾斜している。具体的には、傾斜面34bは、径方向内側(R1側)に向かってZ2側に延びるように傾斜している。これにより、絶縁カバー50をZ1側からバスバーモジュール30に装着する際に、傾斜面34bから第2部分55bへの反力により、フック部55を径方向内側(R1側)に撓ませながらバスバーモジュール30を装着することが可能である。
【0040】
また、フック部55(第2部分55b)には、径方向外側(R2側)の端部で、かつ、Z2側の端部に面取り部55cが設けられている。
【0041】
また、
図7に示すように、フック部55は、第2部分55bの周方向(A方向)の両側の端部に設けられる第3部分55dを含む。第3部分55dは、第2部分55bの周方向(A方向)両側の端部からZ1側に突出するように設けられている。これにより、フック部55(第2部分55b)の機械的強度を向上させることが可能である。また、係合部52に導入されたワニスが周方向に漏れるのを防止することが可能である。なお、第3部分55dは、バスバーモジュール30の突出部34と離間する(
図5参照)ように設けられている。また、
図7では、簡略化のために、突出部34の図示は省略されている。
【0042】
また、
図8に示すように、溝部54は、ステータコア10の軸方向と交差(直交)するように延びる底面部54bを含む。また、溝部54は、底面部54bを流れるワニスを孔部53(
図5参照)にガイドするように軸方向に沿って突出するように設けられる側面部54cを含む。
【0043】
これにより、溝部54の側面部54cが軸方向に突出するように設けられているので、側面部54cにより溝部54の底面部54bを流れるワニスが溝部54から漏れる(溢れる)のを防止することができる。
【0044】
溝部54の深さDは、絶縁カバー50の厚みtよりも大きい。これにより、深さDが厚みt以下である場合に比べて、ワニスが溝部54から漏れる(溢れる)のをより確実に防止することが可能である。
【0045】
また、底面部54bと側面部54cとが接続されている角部54dは、R形状を有している。これにより、角部54dにワニスが残留するのを防止することが可能である。
【0046】
また、側面部54cは、ステータコア10の径方向において互いに対向するとともにステータコア10の周方向に沿って延びるように設けられる一対の周方向側面54eを含む。また、一対の周方向側面54eの一方は、軸方向から見て、孔部53に接続されるように設けられている。
【0047】
これにより、一対の周方向側面54eの一方の近傍を流れるワニスを容易に孔部53に導入することができる。
【0048】
具体的には、
図5に示すように、一対の周方向側面54eの他方は、孔部53に対して径方向外側(R2側)に設けられている。すなわち、一対の周方向側面54eのうち径方向内側(R1側)の周方向側面54eが、軸方向から見て、孔部53に接続されるように設けられている。また、一対の周方向側面54eの上記一方(孔部53に接続されている周方向側面54e)は、孔部53の周方向両側に設けられている。
【0049】
また、軸方向から見て孔部53に接続されている周方向側面54eは、孔部53の径方向における中央部53a近傍に接続されるように設けられている。
【0050】
また、孔部53は、溝部54の底面部54bにも接続されている。
【0051】
また、溝部54のA2側の端部近傍には、軸方向から見て、径方向内側に折れ曲がる折れ曲がり部54fが設けられている。すなわち、孔部53のA2側の溝部54は、軸方向から見て、L字状に折れ曲がっている。これにより、溝部54が直線状に形成されている場合に比べて、溝部54の体積(容積)が大きくなるので、孔部53に導入されるワニスの量をより多くすることが可能である。
【0052】
また、
図4に示すように、絶縁カバー50は、溝部54と連続するように設けられ、溝部54に滞留するワニスをコイルエンド部22側(Z2側)に排出するための排出部56を含む。排出部56は、溝部54のA1側に設けられる凹部54aの領域である。具体的には、溝部54と排出部56とは、凹部54aにおいて連続的に設けられている。
【0053】
排出部56は、溝部54の底面部54bと連続する底面部56aと、径方向外側の側面部53c(周方向側面54e)と連続する側面部56bとを含む。また、排出部56には、径方向外側に側面部56bが設けられている一方、径方向内側には側面部が設けられていない。すなわち、排出部56の径方向内側の端部には、開放されている開放部56cが設けられている。なお、開放部56cは、周方向(A方向)に沿って延びるように設けられている。また、開放部56cは、軸方向から見て、コイルエンド部22とオーバラップする位置に設けられている。これにより、排出部56の開放部56cから排出されたワニスは、コイルエンド部22に滴下される。
【0054】
また、
図1に示すように、溝部54および孔部53は、絶縁カバー50の周方向の一方側および他方側の各々に設けられている。
図4に図示されている溝部54および孔部53は、絶縁カバー50のA1側の端部近傍に設けられている。
図9に示す溝部54および孔部53は、絶縁カバー50のA2側の端部近傍に設けられている。A2側の溝部54および孔部53の構成のうち、A1側の溝部54および孔部53と同様の部分については、詳細な説明を省略する。
【0055】
図9に示すように、絶縁カバー50は、溝部54と連続するように設けられ、溝部54に滞留するワニスをコイルエンド部22側(Z2側)に排出するための排出部156を含む。排出部156は、溝部54のA1側に設けられる開放部156aと、溝部54のA2側に設けられる開放部156bと、を含む。開放部156aおよび開放部156bの機能は、開放部56c(
図4参照)と同様に、ワニスをZ2側に排出することである。開放部156aは、軸方向から見て、コイルエンド部22とオーバラップする位置に設けられている。開放部156bは、軸方向から見て、コイルエンド部22およびバスバーモジュール30とオーバラップする位置に設けられている。
【0056】
なお、絶縁カバー50は、上記の溝部54に接続されている2つの孔部53の各々の径方向外側に設けられる孔部153(
図1参照)を含む。すなわち、絶縁カバー50には、2つの孔部153が設けられている。なお、孔部153は、溝部とは接続されていない。また、孔部53の構成と孔部153の構成とは、互いに同一である。すなわち、孔部153のZ2側には、絶縁カバー50とバスバーモジュール30との係合部52が設けられている。なお、孔部153に接続される溝部が設けられていてもよい。
【0057】
また、
図4に示すように、絶縁カバー50には、位置決め用の挿入孔57が設けられている。挿入孔57は、2つの孔部53の各々の近傍に設けられている。
【0058】
挿入孔57には、バスバーモジュール30に設けられる位置決め用のピン35が挿入されている。ピン35が挿入孔57に挿入されることにより、絶縁カバー50がバスバーモジュール30に対して位置決めされる。なお、絶縁カバー50がバスバーモジュール30に対して位置決めされた状態で、ワニスの塗布工程が行われる。
【0059】
図1に示すように、ワニスの塗布工程において、ワニスを射出するノズル103は、ワニスを射出しながらステータコア10の周方向に沿って移動(
図1の一点鎖線矢印参照)する。すなわち、ノズル103は、軸方向から見て円環状のコイルエンド部22に沿って周状に移動しながらワニスを射出する。また、ノズル103は、溝部54の上方(Z1側)を通過するように移動する。また、ノズル103は、絶縁カバー50の上方から下方に向けてワニスを射出する。すなわち、ワニスの塗布工程において、ステータコア10は、ステータコア10の軸方向(Z方向)が鉛直方向に沿って延びるように設けられている。なお、ノズル103は、軸方向から見て、反時計回りに移動する。
【0060】
溝部54は、ステータコア10の周方向に沿って延びるように設けられている。これにより、周方向に沿って移動するノズル103から射出されたワニスが溝部54に流入されやすくなる。
【0061】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0062】
たとえば、上記実施形態では、特許請求の範囲のガイド部の一例としての溝部54により孔部53にワニスが導かれる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ガイド部としての壁部により孔部53にワニスを導くようにしてもよいし、ワニスを流通させるための管状の流路が絶縁カバーに形成されていてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、溝部54(ガイド部)が孔部53に接続されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、溝部54が孔部53の近傍まで形成されており、溝部54と孔部53との間に別のガイド部(たとえば壁部または管状の流路)が形成されていてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、溝部54の底面部54bが軸方向と直交するように延びる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、溝部54の底面部54bが軸方向と直交せずに交差するように延びていてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、軸方向から見て一対の周方向側面54eの一方が孔部53と接続されるように設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。軸方向から見て一対の周方向側面54eの両方が孔部53と離間して設けられていてもよい。すなわち、一対の周方向側面54eは、軸方向から見て、孔部53を径方向に挟むように設けられていてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、周方向側面54eが孔部53の周方向の両側に設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。周方向側面54eが孔部53の周方向の一方にのみ設けられていてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、孔部53に接続されていない周方向側面54eが孔部53に対して径方向外側に設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。孔部53に接続されていない周方向側面54eが孔部53に対して径方向内側に設けられていてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、側面が設けられていない開放部(56c、156c)を含む排出部(56、156)が設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ワニスを排出するための孔部が排出部に設けられていてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、溝部54が周方向に沿って延びるように設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。溝部54が周方向以外の方向(たとえば径方向)に沿って延びるように設けられていてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、溝部54および孔部53が絶縁カバー50の周方向の一方側および他方側の各々に設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。溝部54および孔部53が絶縁カバー50の周方向の一方側にのみ設けられていてもよい。また、溝部54および孔部53が、絶縁カバー50に3つ以上設けられていてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、軸方向から見て孔部53が係合部52と重なる位置に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。孔部53に導入されたワニスが係合部52に導入されれば、軸方向から見て孔部53が係合部52と重なる位置に配置されていなくてもよい。
【0072】
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0073】
コイル部(20)は、軸方向において、ステータコア(10)の一方側に設けられるコイルエンド部(22)を含み、絶縁カバー(50)は、溝部(54)と連続するように設けられ、溝部(54)に滞留するワニスをコイルエンド部(22)側に排出するための排出部(56、156)を含む。
【0074】
一対の周方向側面(54e)の一方は、孔部(53)の周方向の両側に設けられている。
【0075】
一対の周方向側面(54e)の他方は、孔部(53)に対して径方向外側に設けられている。
【0076】
溝部(54)は、ワニスを射出するノズル(103)がワニスを射出しながら移動する方向であるステータコア(10)の周方向に沿って延びるように設けられている。
【0077】
ガイド部(54)および孔部(53)は、絶縁カバー(50)の周方向の一方側および他方側の各々に設けられている。
【符号の説明】
【0078】
10…ステータコア、20…コイル部、30…バスバーモジュール、31…バスバー、40P、40N…接続部、50…絶縁カバー、52…係合部、53…孔部、54…溝部(ガイド部)、54b…底面部、54c…側面部、54e…周方向側面、100…ステータ