(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】地図データ作成方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G09B 29/00 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
G09B29/00 Z
(21)【出願番号】P 2021007879
(22)【出願日】2021-01-21
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】水野 正隆
(72)【発明者】
【氏名】大澤 尚晃
【審査官】宇佐田 健二
(56)【参考文献】
【文献】特許第5930346(JP,B2)
【文献】特開平09-212085(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0188043(US,A1)
【文献】特開2017-142613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 29/00,29/10
G08G 1/00- 1/16
G01C 21/26-21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の周囲にレーザを照射して前記移動体の周囲に存在する物体を検出
して点群データを取得するレーザ検出部を用いて、複数のエリアの部分地図を作成する部分地図作成工程と、
前記部分地図作成工程において
前記レーザ検出部を用いて作成された前記複数のエリアの部分地図の位置合わせを行う位置合わせ工程と、
前記位置合わせ工程が実施された後、前記複数のエリアの部分地図の使用領域を指定する使用領域指定工程と、
前記使用領域指定工程が実施された後、前記複数のエリアの部分地図を合成する部分地図合成工程とを含み、
前記位置合わせ工程では、
前記複数のエリアの部分地図の点群データによって、隣り合うエリアの部分地図の端部が互いに重複する
と共に前記隣り合うエリアの部分地図の座標系が一致するように前記複数のエリアの部分地図の位置合わせを行い、
前記使用領域指定工程では、前記隣り合うエリアの部分地図の重複部分
の中間位置が前記隣り合うエリアの部分地図の使用領域の境界位置となるように前記複数のエリアの部分地図の使用領域を指定し、
前記部分地図合成工程では、前記隣り合うエリアの部分地図の使用領域を接続することにより、前記複数のエリアの部分地図を合成する地図データ作成方法。
【請求項2】
移動体の周囲にレーザを照射して前記移動体の周囲に存在する物体を検出
して点群データを取得するレーザ検出部を用いて作成された複数のエリアの部分地図を取得する部分地図取得部と、
前記部分地図取得部により取得された前記複数のエリアの部分地図の位置合わせを行う位置合わせ処理部と、
前記位置合わせ処理部により前記複数のエリアの部分地図の位置合わせが行われた後、前記複数のエリアの部分地図を合成する部分地図合成部とを備え、
前記位置合わせ処理部は、
前記複数のエリアの部分地図の点群データによって、隣り合うエリアの部分地図の端部が互いに重複する
と共に前記隣り合うエリアの部分地図の座標系が一致するように前記複数のエリアの部分地図の位置合わせを行い、
前記部分地図合成部は、前記隣り合うエリアの部分地図
の中間位置が前記隣り合うエリアの部分地図の使用領域の境界位置となるように前記複数のエリアの部分地図の使用領域が指定された状態で、前記隣り合うエリアの部分地図の使用領域を接続することにより、前記複数のエリアの部分地図を合成する地図データ作成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図データ作成方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の地図データ作成装置としては、例えば特許文献1に記載されているような技術が知られている。特許文献1に記載の地図データ作成装置は、自律移動装置の走行軌跡を基に、環境情報に含まれる形状データを補完して複数の部分地図を生成する部分地図生成部と、この部分地図生成部で生成された複数の部分地図を接続して自己位置推定用の地図を生成する地図生成部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、SLAM(simultaneous localization andmapping)手法等の技術を用いて作成された地図には、誤差が生じる。このため、合成に使用される隣り合う部分地図に重複箇所があると、隣り合う部分地図の合成後に、地図内の線が太くなったり2重になる懸念がある。例えば、レーザセンサの検出データと自己位置推定用の地図データとをマッチングさせて移動体の自己位置を推定する場合、地図内の線が太くなったり2重になると、マッチングの幅が大きくなるため、自己位置の推定精度の低下につながる。
【0005】
本発明の目的は、地図内の線を最適化することができる地図データ作成方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る地図データ作成方法は、移動体の周囲にレーザを照射して移動体の周囲に存在する物体を検出するレーザ検出部を用いて、複数のエリアの部分地図を作成する部分地図作成工程と、部分地図作成工程において作成された複数のエリアの部分地図の位置合わせを行う位置合わせ工程と、位置合わせ工程が実施された後、複数のエリアの部分地図の使用領域を指定する使用領域指定工程と、使用領域指定工程が実施された後、複数のエリアの部分地図を合成する部分地図合成工程とを含み、位置合わせ工程では、隣り合うエリアの部分地図の端部が互いに重複するように複数のエリアの部分地図の位置合わせを行い、使用領域指定工程では、隣り合うエリアの部分地図が互いに重複しないように複数のエリアの部分地図の使用領域を指定し、部分地図合成工程では、隣り合うエリアの部分地図の使用領域を接続することにより、複数のエリアの部分地図を合成する。
【0007】
このような地図データ作成方法においては、まず移動体の周囲にレーザを照射して移動体の周囲に存在する物体を検出するレーザ検出部を用いて、複数のエリアの部分地図が作成される。そして、複数のエリアの部分地図の位置合わせが行われた後、複数のエリアの部分地図の使用領域が指定され、複数のエリアの部分地図が合成される。その結果、複数のエリアの部分地図からなる地図データが形成される。ここで、隣り合うエリアの部分地図の端部が互いに重複するように複数のエリアの部分地図の位置合わせが行われ、隣り合うエリアの部分地図が互いに重複しないように複数のエリアの部分地図の使用領域が指定される。そして、隣り合うエリアの部分地図の使用領域を接続することにより、複数のエリアの部分地図が合成される。従って、複数のエリアの部分地図の合成後に、地図内の線が太くなったり2重になることが防止される。これにより、地図内の線が最適化される。
【0008】
使用領域指定工程では、隣り合うエリアの部分地図の重複部分における部分地図の端よりも内側の位置が隣り合うエリアの部分地図の使用領域の境界位置となるように使用領域を指定してもよい。
【0009】
レーザ検出部が搭載された移動体が走行しながら、レーザ検出部を用いて複数のエリアの部分地図を作成する際には、レーザ検出部により移動体の周囲に存在する物体が検出可能であれば、移動体が物体から離れていてもよい。ただし、レーザ検出部から物体までの距離が長くなるほど、レーザ検出部による物体の検出精度が低くなる。そこで、隣り合うエリアの部分地図の重複部分における部分地図の端よりも内側の位置が隣り合うエリアの部分地図の使用領域の境界位置となるように使用領域を指定することにより、レーザ検出部による物体の検出精度を上げるために移動体が物体における部分地図の端に相当する位置の近くまで走行しなくて済む。従って、移動体の走行距離を短くしつつ、レーザ検出部による物体の検出精度を高くすることができる。
【0010】
使用領域指定工程では、隣り合うエリアの部分地図の重複部分の中間位置が隣り合うエリアの部分地図の使用領域の境界位置となるように使用領域を指定してもよい。
【0011】
この場合には、隣り合うエリアの部分地図の端からそれぞれ隣り合うエリアの部分地図の使用領域の境界位置までの距離が等しくなる。このため、移動体の走行距離を更に短くしたり、或いはレーザ検出部による物体の検出精度を更に高くすることができる。従って、地図データを効率良く作成することができる。
【0012】
本発明の他の態様に係る地図データ作成装置は、移動体の周囲にレーザを照射して移動体の周囲に存在する物体を検出するレーザ検出部を用いて作成された複数のエリアの部分地図を取得する部分地図取得部と、部分地図取得部により取得された複数のエリアの部分地図の位置合わせを行う位置合わせ処理部と、位置合わせ処理部により複数のエリアの部分地図の位置合わせが行われた後、複数のエリアの部分地図を合成する部分地図合成部とを備え、位置合わせ処理部は、隣り合うエリアの部分地図の端部が互いに重複するように複数のエリアの部分地図の位置合わせを行い、部分地図合成部は、隣り合うエリアの部分地図が互いに重複しないように複数のエリアの部分地図の使用領域が指定された状態で、隣り合うエリアの部分地図の使用領域を接続することにより、複数のエリアの部分地図を合成する。
【0013】
このような地図データ作成装置においては、まず移動体の周囲にレーザを照射して移動体の周囲に存在する物体を検出するレーザ検出部を用いて、複数のエリアの部分地図が作成される。そして、複数のエリアの部分地図の位置合わせが行われた後、複数のエリアの部分地図が合成される。その結果、複数のエリアの部分地図からなる地図データが形成される。ここで、隣り合うエリアの部分地図の端部が互いに重複するように複数のエリアの部分地図の位置合わせが行われる。そして、隣り合うエリアの部分地図が互いに重複しないように複数のエリアの部分地図の使用領域が指定された状態で、隣り合うエリアの部分地図の使用領域を接続することにより、複数のエリアの部分地図が合成される。従って、複数のエリアの部分地図の合成後に、地図内の線が太くなったり2重になることが防止される。これにより、地図内の線が最適化される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、地図内の線を最適化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る地図データ作成方法及び装置が適用される走行制御装置を示す概略構成図である。
【
図2】移動体が走行する走行エリアの一例を示す平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る地図データ作成方法の工程を示すフローチャートである。
【
図4】複数のエリアの部分地図の位置合わせを行う一例を示す平面図である。
【
図5】複数のエリアの部分地図の使用領域を指定し、複数のエリアの部分地図を合成する一例を示す平面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る地図データ作成装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る地図データ作成方法及び装置が適用される走行制御装置を示す概略構成図である。
図1において、走行制御装置1は、フォークリフト等の移動体2(
図2参照)に搭載されている。
【0018】
走行制御装置1は、移動体2を自律走行させる装置である。ここでは、移動体2は、
図2に示されるように、倉庫等において複数列に設置された棚3に沿って走行する。走行制御装置1は、レーザセンサ4と、地図データ記憶部5と、コントローラ6と、駆動部7とを備えている。
【0019】
レーザセンサ4は、
図2に示されるように、移動体2の周囲にレーザLを照射し、レーザLの反射光を受光することにより、移動体2の周囲に存在する物体である棚3を検出して点群データを取得するレーザ検出部である。レーザセンサ4としては、例えばレーザレンジファインダが用いられる。
【0020】
地図データ記憶部5は、移動体2が走行する走行エリアの地図データ(
図5(b)参照)を記憶する。地図データは、移動体2の自己位置の推定に使用される。
【0021】
コントローラ6は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等により構成されている。コントローラ6は、自己位置推定部8と、走行制御部9とを有している。
【0022】
自己位置推定部8は、レーザセンサ4の検出データ(点群データ)と地図データ記憶部5に記憶された地図データとに基づいて、移動体2の自己位置を推定する。自己位置推定部8は、レーザSLAM(simultaneous localization andmapping)手法を用いて、移動体2の自己位置の推定演算を行う。SLAMは、センサデータ及び地図データを使って自己位置推定を行う自己位置推定技術である。自己位置推定部8は、レーザセンサ4の検出データと地図データとをマッチングさせて、移動体2の自己位置の推定演算を行う。
【0023】
走行制御部9は、自己位置推定部8により推定された移動体2の自己位置に基づいて、移動体2を目的地まで走行させるように駆動部7を制御する。駆動部7は、例えば走行モータ及び操舵モータを有している。
【0024】
図3は、本発明の一実施形態に係る地図データ作成方法の工程を示すフローチャートである。
【0025】
図3において、まず上記のレーザセンサ4を用いて、移動体2が走行する複数のエリアの部分地図を作成する部分地図作成工程が実施される(工程S101)。このとき、移動体2が走行しながら、複数のエリアの部分地図が作成される。例えば
図2に示される走行エリアでは、
図4(a)に示されるように、3つのエリアA~Cの部分地
図Ma~Mcが作成される。
【0026】
次いで、部分地図作成工程において作成された複数のエリアの部分地図の位置合わせを行う位置合わせ工程が実施される(工程S102)。各エリアの部分地図は独立した座標系を有しているが、位置合わせ工程を実施することにより、各エリアの部分地図の座標系を一致させることができる。位置合わせ工程では、隣り合うエリアの部分地図の端部が互いに重複するように各エリアの部分地図の位置合わせが行われる。
【0027】
図2に示される走行エリアでは、
図4(b)に示されるように、隣り合うエリアA,Bの部分地
図Ma,Mbの端部同士が互いに重複するように、部分地
図Ma,Mbの位置合わせが行われる。また、隣り合うエリアB,Cの部分地
図Mb,Mcの端部同士が互いに重複するように、部分地
図Mb,Mcの位置合わせが行われる。
【0028】
位置合わせ工程が実施された後、複数のエリアの部分地図の使用領域を指定する使用領域指定工程が実施される(工程S103)。使用領域指定工程では、隣り合うエリアの部分地図が互いに重複しないように使用領域が指定される。使用領域は、部分地図において地図データの一部として使用される領域である。
【0029】
このとき、隣り合うエリアの部分地図の重複部分における部分地図の端よりも内側の位置が隣り合うエリアの部分地図の使用領域の境界位置となるように、使用領域が指定される。具体的には、隣り合うエリアの部分地図の重複部分の中間位置が隣り合うエリアの部分地図の使用領域の境界位置となるように、使用領域が指定される。境界位置は、隣り合うエリアの部分地図の使用領域が接続される位置である。
【0030】
図2に示される走行エリアでは、
図4(b)及び
図5(a)に示されるように、隣り合うエリアA,Bの部分地
図Ma,Mbの重複部分Jabの中間位置が部分地
図Ma,Mbの使用領域Ua,Ubの境界位置Kabとなるように、使用領域Ua,Ubが指定される。従って、部分地
図Maの端Eaから境界位置Kabまでの距離と、部分地
図Mbの端Eb1から境界位置Kabまでの距離とが等しくなる。
【0031】
また、隣り合うエリアB,Cの部分地
図Mb,Mcの重複部分Jbcの中間位置が部分地
図Mb,Mcの使用領域Ub,Ucの境界位置Kbcとなるように、使用領域Ub,Ucが指定される。従って、部分地
図Mbの端Eb2から境界位置Kbcまでの距離と、部分地
図Mcの端Ecから境界位置Kbcまでの距離とが等しくなる。なお、部分地
図Mbの端Eb2は、部分地
図Mbにおける端Eb1の反対側の端である。
【0032】
使用領域指定工程が実施された後、複数のエリアの部分地図を合成する部分地図合成工程が実施される(工程S104)。部分地図合成工程では、隣り合うエリアの部分地図の使用領域を接続することにより、各エリアの部分地図が合成される。これにより、複数のエリアの部分地図からなる1つの地図データが形成される。
【0033】
図2に示される走行エリアでは、
図5(a)及び
図5(b)に示されるように、隣り合うエリアA,Bの部分地
図Ma,Mbの使用領域Ua,Ubを接続すると共に、隣り合うエリアB,Cの部分地
図Mb,Mcの使用領域Ub,Ucを接続することにより、エリアA~Cの部分地
図Ma~Mcが合成される。これにより、部分地
図Ma~Mcからなる地図データMが得られる。
【0034】
図6は、本発明の一実施形態に係る地図データ作成装置を示す概略構成図である。
図6において、本実施形態の地図データ作成装置10は、上述した地図データ作成方法を実施する装置である。
【0035】
地図データ作成装置10は、部分地図記憶部11と、ユーザが使用するパソコン12(PC)とを備えている。パソコン12には、上記の地図データ記憶部5が接続されている。
【0036】
部分地図記憶部11には、上記の部分地図作成工程において作成された複数のエリアの部分地図が記憶されている。
【0037】
パソコン12は、ユーザがデータ及び情報の入力操作を行うための入力部13と、データ及び情報の表示を行う表示部14と、入力部13により入力されたデータ及び情報に基づいて演算処理を実行し、表示部14にデータ及び情報を表示させるPC本体15とを有している。
【0038】
PC本体15は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等により構成されている。PC本体15は、部分地図取得部16と、位置合わせ処理部17と、部分地図合成部18と、地図データ保存部19とを有している。
【0039】
部分地図取得部16は、入力部13により部分地図の取得が指示入力されると、部分地図記憶部11に記憶された複数のエリアの部分地図を取得し、各エリアの部分地図を表示部14に表示させる。つまり、部分地図取得部16は、レーザセンサ4を用いて作成された複数のエリアの部分地図を取得する。
【0040】
位置合わせ処理部17は、部分地図取得部16により取得された複数のエリアの部分地図の位置合わせを行う。位置合わせ処理部17は、隣り合うエリアの部分地図の端部が互いに重複するように各エリアの部分地図の位置合わせを行う。位置合わせ処理部17は、部分地図取得部16と協働して、上記の位置合わせ工程を実施する。
【0041】
位置合わせ処理部17によって各エリアの部分地図の位置合わせが実施されると、ユーザは、表示部14を見ながら、入力部13により各エリアの部分地図の使用領域を指定入力する。つまり、上記の使用領域指定工程は、ユーザによって実施される。
【0042】
部分地図合成部18は、ユーザによって各エリアの部分地図の使用領域が指定された後、各エリアの部分地図を合成する。これにより、移動体2の自己位置の推定に使用される地図データが得られる。部分地図合成部18は、隣り合うエリアの部分地図が互いに重複しないように各エリアの部分地図の使用領域が指定された状態で、隣り合うエリアの部分地図の使用領域を接続する。部分地図合成部18は、上記の部分地図合成工程を実施する。
【0043】
地図データ保存部19は、部分地図合成部18により得られた地図データを地図データ記憶部5に保存する。
【0044】
以上のように本実施形態にあっては、まず移動体2の周囲にレーザLを照射して移動体2の周囲に存在する棚3を検出するレーザセンサ4を用いて、複数のエリアの部分地図が作成される。そして、複数のエリアの部分地図の位置合わせが行われた後、複数のエリアの部分地図の使用領域が指定され、複数のエリアの部分地図が合成される。その結果、複数のエリアの部分地図からなる地図データが形成される。ここで、隣り合うエリアの部分地図の端部が互いに重複するように複数のエリアの部分地図の位置合わせが行われ、隣り合うエリアの部分地図の端部が重複しないように複数のエリアの部分地図の使用領域が指定される。そして、隣り合うエリアの部分地図の使用領域を接続することにより、複数のエリアの部分地図が合成される。従って、複数のエリアの部分地図の合成後に、地図内の線が太くなったり2重になることが防止される。これにより、地図内の線が最適化される。その結果、レーザセンサ4の検出データと地図データとのマッチングの幅の増大が抑えられるため、移動体2の自己位置の推定精度が向上する。
【0045】
ところで、移動体2が走行しながら、レーザセンサ4を用いて複数のエリアの部分地図を作成する際には、レーザセンサ4により移動体2の周囲に存在する棚3が検出可能であれば、移動体2が棚3から離れていてもよい。この場合には、移動体2が敢えて棚3の近くまで走行しなくて済むため、移動体2の走行距離が短くなる。ただし、レーザセンサ4から棚3までの距離が長くなるほど、レーザセンサ4による棚3の検出精度が低くなる。
【0046】
一方、本実施形態では、隣り合うエリアの部分地図の重複部分における部分地図の端よりも内側の位置が隣り合うエリアの部分地図の使用領域の境界位置となるように、使用領域が指定される。このため、レーザセンサ4による棚3の検出精度を上げるために移動体2が棚3における部分地図の端に相当する位置の近くまで走行しなくて済む。従って、移動体2の走行距離を短くしつつ、レーザセンサ4による棚3の検出精度を高くすることができる。
【0047】
また、本実施形態では、隣り合うエリアの部分地図の重複部分の中間位置が隣り合うエリアの部分地図の使用領域の境界位置となるように使用領域が指定されるので、隣り合うエリアの部分地図の端からそれぞれ隣り合うエリアの部分地図の使用領域の境界位置までの距離が等しくなる。このため、移動体2の走行距離を更に短くしたり、或いはレーザセンサ4による棚3の検出精度を更に高くすることができる。従って、地図データを効率良く作成することができる。
【0048】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、複数のエリアの部分地図の使用領域がユーザによって指定されているが、特にそのような形態には限られない。例えば、棚や建屋等の物体のCADデータをパソコンに与えることで、複数のエリアの部分地図の使用領域の指定をシステムにより自動的に行ってもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、使用領域指定工程はユーザによって実施され、位置合わせ工程及び部分地図合成工程はシステムによって自動的に実施されているが、特にその形態には限られず、位置合わせ工程及び部分地図合成工程もユーザによって実施してもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、隣り合うエリアの部分地図の重複部分の中間位置が隣り合うエリアの部分地図の使用領域の境界位置となるように使用領域が指定されているが、隣り合うエリアの部分地図の使用領域の境界位置としては、特にそれには限られず、隣り合うエリアの部分地図の重複部分であればよい。
【0051】
また、レーザセンサ4の点群データが少ない箇所(例えば走行路等に相当する箇所)を、隣り合うエリアの部分地図の使用領域の境界位置としてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、移動体2の自己位置が推定された後、移動体2が自律走行を行うように制御されているが、本発明は、移動体2の自己位置推定及び自律走行以外にも適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
2…移動体、3…棚(物体)、4…レーザセンサ(レーザ検出部)、10…地図データ作成装置、16…部分地図取得部、17…位置合わせ処理部、18…部分地図合成部、A~C…エリア、Ma~Mc…部分地図、M…地図データ、Jab,Jbc…重複部分、Kab,Kbc…境界位置、Ea,Eb1,Eb2,Ec…端。