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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】車両用加飾部材
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20240611BHJP
   B60R 13/04 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
B29C45/14
B60R13/04 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021013962
(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公開番号】P2022117338
(43)【公開日】2022-08-10
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 達也
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-51183(JP,A)
【文献】特開昭47-34650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/14
B60R 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用加飾部材のうち、厚さ方向に直交する面方向に分割された複数の領域の一部である第1領域を、第1の透明樹脂を材料として成形する第1成形工程と、
前記第1成形工程後に、前記複数の領域の他の一部である第2領域を、第2の透明樹脂を材料として成形する第2成形工程と、
前記第1領域および/または前記第2領域の裏面に、意匠部を形成する意匠部形成工程と、を具備し、
前記第1の透明樹脂および前記第2の透明樹脂として、屈折率、色および可視光透過率の少なくとも一種において同等なものを用い
前記第1領域の表面と、前記第2領域の表面とは、段差状に連続する、車両用加飾部材の製造方法。
【請求項2】
車両用加飾部材のうち、厚さ方向に直交する面方向に分割された複数の領域の一部である第1領域を、第1の透明樹脂を材料として成形する第1成形工程と、
前記第1成形工程後に、前記複数の領域の他の一部である第2領域を、第2の透明樹脂を材料として成形する第2成形工程と、
前記第1領域および/または前記第2領域の裏面に、意匠部を形成する意匠部形成工程と、を具備し、
前記第1の透明樹脂および前記第2の透明樹脂として、屈折率、色および可視光透過率の少なくとも一種において同等なものを用い
前記第1領域の裏面と、前記第2領域の裏面とは、段差状に連続する、車両用加飾部材の製造方法。
【請求項3】
前記第1領域の裏面と、前記第2領域の裏面とは、段差状に連続する、請求項に記載の車両用加飾部材の製造方法。
【請求項4】
前記意匠部は、前記第1領域と前記第2領域の裏面全体を覆い、立体形状をなしている、請求項2または請求項3に記載の車両用加飾部材の製造方法。
【請求項5】
前記第1領域の表面と、前記第2領域の表面とは、滑らかに連続する、請求項2または請求項2を引用する請求項4に記載の車両用加飾部材の製造方法。
【請求項6】
前記第1領域を前記厚さ方向に投影した前記第1領域の投影面積は、前記第2領域を前記厚さ方向に投影した前記第2領域の投影面積に対して、20~400面積%の範囲内である、請求項1~請求項の何れか一項に記載の車両用加飾部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用加飾部材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な車両には、各種の車両用加飾部材が取り付けられる。車両用加飾部材は、車両の外面に取り付けられる車両用外装部品や、車両室内に取り付けられる車両用内装部品の一部または全体を構成する。車両用外装部品としては、フロントグリルやバックドアパネル、フロントガーニッシュおよびリヤガーニッシュ等を例示できる。一方、車両用内装部品としては、センターコンソールボックスおよびインストルメントパネル等を例示できる。
【0003】
近年、車両に対する軽量化の要求が高まっており、車両用加飾部材にもまた軽量化が要求されている。このため、車両用加飾部材の材料としては、樹脂を選択するのが一般的になっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-112179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている車両用加飾部材は、車両に取り付けられるハウジングと、当該ハウジングを表側から覆う透明または半透明のレンズ部材と有する。ハウジングにはハウジング意匠面が設けられており、当該ハウジング意匠面に表示される意匠は、レンズ部材を通して、車両の表側から視認される。レンズ部材は、ハウジングに向けて突起する突部を有する。当該突部は、レンズに入射した光を屈折させる機能を有する。
【0006】
ところで、フロントグリルのような大型の車両用外装部品を樹脂成形するためには、キャビティの容積の大きな成形型が必要である。キャビティの容積の大きな成形型においては、受圧面積もまた大きく、当該成形型を用いて樹脂成形を行うための成形機に要求される出力もまた大きい。
【0007】
近年、電気自動車等、空冷の要求の少ない車両が台頭している。これに伴い、フロントグリル等の車両の前側に配置される車両用外装部品には、開口のないものが増えている。
同じ外形寸法の車両用加飾部材であれば、開口のないものの方が、開口のあるものよりも体積が大きい。このため、大型の車両用加飾部材であって開口のないものを製造する場合には、キャビティの容積がさらに増大し、成形機としても高出力の特殊なものが必要になる。
このため、製造コストを考慮すると、現状では、開口のない車両用加飾部材を大型化することは現実的でない。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、大型の車両用加飾部材であっても、汎用型の成形機で成形できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の車両用加飾部材の製造方法は、
車両用加飾部材のうち、厚さ方向に直交する面方向に分割された複数の領域の一部である第1領域を、第1の透明樹脂を材料として成形する第1成形工程と、
前記第1成形工程後に、前記複数の領域の他の一部である第2領域を、第2の透明樹脂を材料として成形する第2成形工程と、
前記第1領域および/または前記第2領域の裏面に、意匠部を形成する意匠部形成工程と、を具備し、
前記第1の透明樹脂および前記第2の透明樹脂として、屈折率、色および可視光透過率の少なくとも一種において同等なものを用いる、車両用加飾部材の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車両用加飾部材の製造方法によると、大型の車両用加飾部材であっても、汎用型の成形機で成形できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1の車両用加飾部材の製造方法で製造される車両用加飾部材を表側からみた様子を、模式的に表す説明図である。
図2】実施例1の車両用加飾部材の製造方法で製造される車両用加飾部材における第1領域を、表側からみた様子を模式的に表す説明図である。
図3】実施例1の車両用加飾部材の製造方法で製造される車両用加飾部材における第2領域を、表側からみた様子を模式的に表す説明図である。
図4】実施例1の車両用加飾部材の製造方法で製造される車両用加飾部材を、図1中のA-A位置で切断した様子を模式的に表す説明図である。
図5】実施例2の車両用加飾部材の製造方法で製造される車両用加飾部材を、図1中のA-A位置と同位置で切断した様子を模式的に表す説明図である。
図6】実施例3の車両用加飾部材の製造方法で製造される車両用加飾部材を、図1中のA-A位置と同位置で切断した様子を模式的に表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、必要に応じて、本発明の車両用加飾部材の製造方法を、単に本発明の製造方法と称する場合がある。また、本発明の製造方法で製造された車両用加飾部材を、本発明の車両用加飾部材と称する場合がある。
【0013】
本発明の製造方法は、
車両用加飾部材のうち、厚さ方向に直交する面方向に分割された複数の領域の一部である第1領域を、第1の透明樹脂を材料として成形する第1成形工程と、
前記第1成形工程後に、前記複数の領域の他の一部である第2領域を、第2の透明樹脂を材料として成形する第2成形工程と、
前記第1領域および/または前記第2領域の裏面に、意匠部を形成する意匠部形成工程と、を具備する。そして、
前記第1の透明樹脂および前記第2の透明樹脂として、屈折率、色および可視光透過率の少なくとも一種において同等なものを用いる。
【0014】
本発明の製造方法においては、車両用加飾部材をその面方向において複数に分割し、第1領域および第2領域の少なくとも二つの領域に分けた。そして、車両用加飾部材を成形する工程を、第1領域を成形する第1成形工程と、第2領域を成形する第2成形工程と、の少なくとも2工程に分けた。このため、車両用加飾部材のうち一工程で成形する部分の体積は小さくなる。また、当該部分を成形するための成形型の受圧面積は、車両用加飾部材全体を成形するための成形型の受圧面積に比べて小さくなる。当該成形型を用いて樹脂成形を行うための成形機に要求される出力もまた低減する。これにより、本発明の製造方法によると、大型の車両用加飾部材であっても汎用型の成形機で成形可能であり、ひいては、フロントグリル等の大型の車両用加飾部材でありかつ開口のないまたは開口の少ないものについても、汎用型の成形機で成形可能である。
【0015】
また、本発明の車両用加飾部材における第1領域は、第1の透明樹脂を材料とするために透明であり、第2領域もまた第2の透明樹脂を材料とするために透明である。
本発明の製造方法においては、意匠部形成工程によって、このような第1領域および/または第2領域の裏面に、意匠部を形成する。このため、本発明の車両用加飾部材は、意匠部と、第1領域および第2領域を含み当該意匠部の表側を覆う透明な層と、を有する二層構造をなすといい得る。そして、本発明の車両用加飾部材の表面は、透明な層である第1領域および/または第2領域を通して、意匠部の意匠を表示するといい得る。
【0016】
ここで、本発明の製造方法においては、第1領域の材料である第1の透明樹脂、および、第2領域の材料である第2の透明樹脂として、屈折率、色、および可視光透過率の少なくとも一種において同等のものを用いている。このため、第1領域と第2領域との境界は視認され難く、ユーザーや通行人等が本発明の車両用加飾部材を表側から見た場合に、意匠部は歪み等なく鮮明に表示される。
このため、本発明の製造方法によると、透明層を第1領域および第2領域という2つの領域に分割しているにも拘わらず、当該透明層を通して意匠部の意匠を鮮明に美しいままで表示することが可能である。
【0017】
以下、本発明の製造方法をその構成要素毎に説明する。
【0018】
本発明の製造方法においては、車両用加飾部材を第1領域と第2領域とに分割し、これらを別々の工程で成形する。
【0019】
第1領域は、第1の透明樹脂を材料とする。本明細書でいう透明とは、可視光透過率が80%以上であることを意味する。第1の透明樹脂は、透明でありさえすればよく、その余については特に限定しないが、耐久性等を考慮すると、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA:所謂アクリル樹脂)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、スチレンアクリロニトリルコポリマー(SANまたはAS樹脂)、ポリシクロヘキシルメタアクリレート(PCHMA)等が好適である。
【0020】
第2領域は、第1領域を成形する第1成形工程とは別の第2成形工程によって成形される。第1領域と第2領域とは同じ大きさであっても良いし、一方が大きくても良い。成形型の受圧面積を低減することを念頭に置くと、特に車両用加飾部材が大型である場合には、第1領域と第2領域との大きさの差は小さい方が好ましい。具体的には、第1領域を車両用加飾部材の厚さ方向に投影した第1領域の投影面積は、第2領域を当該厚さ方向に投影した第2領域の投影面積に対して、20~400面積%の範囲内であるのが好ましく、30~300面積%の範囲内であるのがより好ましく、50~200面積%の範囲内であるのがさらに好ましい。
【0021】
第1領域および第2領域を成形する成形方法としては、予め成形した第1領域をインサートとして用いるインサート成形法や、先に成形した第1領域用の成形型の一部を兼用して第2領域を成形する二色成形法等、既知の方法を用いれば良い。
【0022】
第2領域の材料である第2の透明樹脂としては、上記した第1の透明樹脂と屈折率、色および可視光透過率の少なくとも一種において同等なものを用いれば良い。第2の透明樹脂は、このうち特に、屈折率において第1の透明樹脂と同等であるのが好ましい。第1の透明樹脂と第2の透明樹脂との屈折率を同等とすることで、第1領域と第2領域との境界が視覚的に判別し難くなり、第1領域と第2領域とが一つの連続した透明層であるように見えるためである。
【0023】
ここで、本明細書において屈折率が同等とは、屈折率の差が0.1未満、好ましくは0.095以下、0.075以下、0.05以下または0.05未満であることを意味する。両者の屈折率の差がこの範囲内であれば、第1領域と第2領域との境界が十分に判別し難くなり、両者が一体であるように視認される。屈折率は、JIS K 7142:2014に準拠して測定すれば良い。
【0024】
また、本明細書において色が同等とは、マンセル・カラーチャートにおける色相の差が2以内であることを意味する。当該マンセル・カラーチャートにおいては、具体的には、色相をR(赤)、YR(黄赤)、Y(黄)、GY(黄緑)、G(緑)、BG(青緑)、B(青)、PB(紫青)、P(紫)、RP(赤紫)と互いに連続する10段階に分けている。なお、RとRPとは連続するものとする。この10段階に分けられた色相において、その差が2以内である場合に、色が同等と判断できる。より具体的には、例えば第1透明樹脂の色相がRであれば、第2透明樹脂の色相がYR、Y、RPまたはPである場合に、第2透明樹脂が第1透明樹脂と色において同等といい得る。
【0025】
また、本明細書において可視光透過率が同等とは、可視光透過率の差が10%以下、好ましくは5%以下であることを意味する。可視光透過率はJIS K 7375:2008の全光線透過率に準拠して測定すれば良い。
【0026】
第2の透明樹脂は、上記した項目の少なくとも一種を満たせば良く、第1の透明樹脂と異なるものであっても良いし、同じものであっても良い。
【0027】
例えば二色成形法やインサート成形法を用いて本発明の車両用加飾部材を成形する場合、第1領域と第2領域とを相溶させ両者を強固に一体化するためには、第1の透明樹脂と第2の透明樹脂とが同じものであるのが好ましい。
【0028】
また、成形時において、第1領域および第2領域のうちで先に成形されたもの、すなわち第1領域の形状変化を抑制するためには、第1の透明樹脂と第2の透明樹脂とを異なるものとするのが好ましい。この場合、さらに、第1の透明樹脂と第2の透明樹脂とが軟化温度において5℃以上異なるのが好ましく、10℃以上異なるのがより好ましい。軟化温度の低いものを、第1領域と第2領域とのうち後で成形する第2領域の材料とすれば良い。軟化温度は、JIS K 7206のビカット軟化温度(B50法)に準拠して測定すれば良い。
【0029】
第1領域および第2領域の厚さは、同じであっても良いし、異なっていても良い。また、第1領域および第2領域は段差なく滑らかに配置されても良いし、段差状に配置されても良い。第1領域および第2領域を段差なく滑らかに配置することにより、第1領域と第2領域との一体感が高まる。また、第1領域および第2領域を段差状に配置することにより、当該段差に起因する立体的な意匠が車両用加飾部材に付与される。
【0030】
当該段差は、車両用加飾部材の表面側に設けても良いし、裏面側に設けても良い。車両用加飾部材の裏面側に当該段差を設ける場合には、車両用加飾部材の表面側において第1領域および第2領域を段差なく滑らかに配置するのが良い。こうすることで、車両用加飾部材には、第1領域および第2領域が滑らかに連続する表面に起因する平滑な意匠と、第1領域および第2領域が段差状に連続する裏面に起因するリズミカルな意匠とがその奥行き方向に重なり合って表示される。なお、第1領域および/または第2領域の裏面には、さらに、意匠部が形成される。このため意匠部は、第1領域および第2領域の裏面に形成される段差に沿って配置される。これにより、第1領域および第2領域がその裏面において段差状に連続することが、車両用加飾部材の表面側からも鮮明に視認し得る。
【0031】
本発明の製造方法は、上記した第1領域成形工程および第2成形工程に加えて、意匠部形成工程を具備する。意匠部は、第2領域および/または第1領域を通じて、車両用加飾部材の表側に意匠を表示するための部分である。このような意匠部は、屈折率、色、可視光透過率において、第1領域および第2領域とは異なるものである。意匠部は、第1領域と第2領域との一方にのみ形成されても良いし、第1領域と第2領域との両方に形成されても良い。第1領域の裏面に形成される意匠部と、第2領域の裏面に形成される意匠部とは、同じものであっても良いし、異なっていても良い。
【0032】
さらに、意匠部は、平板状であっても良いし、第1領域や第2領域の裏面に沿った立体形状をなしても良い。意匠部が立体形状をなす場合には、本発明の車両用加飾部材は、立体的な奥行きのある意匠を表示することができる。
【0033】
意匠部は、例えば、金属や塗料等を有するシートを第1領域および/または第2領域の裏面に張り付けることで形成しても良い。または、印刷や塗装等の方法で第1領域および/または第2領域の裏面に直接形成しても良い。さらには、第1領域および/または第2領域を成形する際にその裏面側にシボ等の立体形状を成形し、当該シボ等が形成された第1領域および/または第2領域のうち、当該シボ等が設けられた部分を意匠部としても良い。例えば第1領域の裏面側にシボ状の意匠部を形成する場合、第1領域のうち意匠部との界面が第2領域の裏面となる。
【0034】
本発明の車両用加飾部材の製造方法は、既述した車両用外装部品を製造する方法として好ましく使用される。特に、開口のないまたは開口の少ない大型の車両用外装部品、具体的にはフロントグリルを製造する方法として、本発明の製造方法は好適である。
【0035】
以下、具体例を挙げて本発明の製造方法を説明する。
【0036】
(実施例1)
実施例1の製造方法は、車両のフロントグリルを製造する方法である。実施例1の製造方法で製造される実施例1の車両用加飾部材を表側からみた様子を、模式的に表す説明図を図1に示す。実施例1の車両用加飾部材における第1領域を表側からみた様子を模式的に表す説明図を図2に示す。実施例1の車両用加飾部材における第2領域を表側からみた様子を模式的に表す説明図を図3に示す。実施例1の車両用加飾部材を、図1中のA-A位置で切断した様子を模式的に表す説明図を図4に示す。以下、表、裏とは、図4に示す表、裏を指すものとする。さらに、上、下、左、右とは、図1図3に示す上、下、左、右を指すものとする。
なお、表-裏方向は、車両用加飾部材の厚さ方向と一致する。さらに、表-裏方向に直交する上下左右方向は、本発明の製造方法における面方向に相当する。参考までに、車両に取り付けた実施例1の車両用加飾部材において、表側は車両進行方向の先側、つまり、車両の外側に露出する側となり、裏側は車両進行方向の後側、つまり、車体によって隠される側となる。
【0037】
図1に示すように、実施例1の製造方法で製造される実施例1の車両用加飾部材1は、第1領域10、第2領域20および意匠部30(図3参照)を具備する。
第1領域10は透明樹脂の一種であるPMMA製であり、第2領域20もまたPMMA製である。実施例1の車両用加飾部材1におけるPMMAは、本発明の製造方法における第1の透明樹脂に相当し、かつ、第2の透明樹脂にも相当する。
【0038】
図1に示すように、車両用加飾部材1は、厚さ方向に直交する面方向、すなわち、上下左右方向において複数の領域に分割されている。実施例1の車両用加飾部材1においては、当該複数の領域の一つが第1領域10であり、その他が第2領域20である。
【0039】
図2に示すように、第1領域10は、車両用加飾部材1の厚さ方向に貫通する窓部15を複数有し、面方向に延びる略板状をなす。当該窓部15は、互いに間隔をおきつつ面方向に分散配置されている。窓部15は、第2領域20を配置するために設けられた空間といい得る。
【0040】
図3に示すように、第2領域20は小型の板状をなす複数の第2分割体25の集合体である。当該第2分割体25は窓部15と略同形であり、窓部15と同様に、互いに間隔をおきつつ面方向に分散配置されている。
【0041】
実施例1の車両用加飾部材において、厚さ方向における第1領域10の投影面積は、同じく厚さ方向における第2領域20の投影面積の120%程度であった。
【0042】
図4に示すように、第2領域20の裏面21、より具体的には第2分割体25の裏面には、意匠部30が塗装により形成されている。第1領域10の裏面11には意匠部30は形成されていない。したがって、実施例1の車両用加飾部材1を前側から見ると、第2領域20に対応する部分のみが着色され、その他の部分は透明であるように見える。
【0043】
実施例1の車両用加飾部材1において、第1領域10の裏面11および第2領域20の裏面21は、滑らかに連続している。また、第1領域10の表面12および第2領域20の表面22もまた、滑らかに連続している。このため、実施例1の車両用加飾部材1の表面には、第1領域10の裏面11、第2領域20の裏面21、第1領域10の表面12および第2領域20の表面22に由来する、滑らかに整った意匠が表示される。
【0044】
第1領域10の材料である第1の透明樹脂と、第2領域20の材料である第2の透明樹脂とは、屈折率、色、および可視光透過率において同等である。このため、第1領域10と第2領域20との境界は視認され難く、車両用加飾部材の表側から見ると、第1領域10および第2領域20は連続した一つの透明層であるように見える。これにより、実施例1の車両用加飾部材1の表面には、意匠部30が歪み等なく鮮明に表示され、実施例1の車両用加飾部材1は優れた意匠性を発揮する。
【0045】
実施例1の製造方法では、射出成型法の一種である二色成形法を用いて車両用加飾部材1を製造する。実施例1の製造方法を以下に説明する。
【0046】
(第1成形工程)
第1成形工程は、第1の透明樹脂を材料として第1領域10を成形する工程である。より具体的には、第1成形工程では、第1領域10を成形するための成形型のキャビティ(図略)に、流動状態の第1の透明樹脂(図略)を注入することで、第1領域10を成形する。既述したように実施例1の車両用加飾部材1は車両用のフロントグリルであり、全体としては開口を有さない。
【0047】
図2に示すように、第1領域10は面方向に分散配置された複数の窓部15を有する。このため、第1領域10を成形するための成形型には、窓部15に相当する部分に、第1領域10の厚さ方向に延びる型面(図略)が設けられている。このため、第1領域10を成形するための成形型のキャビティの容積は、成形する対象たる第1領域10の外形寸法に比して小さい。換言すると、第1成形工程で使用する成形型のキャビティの容積は、車両用加飾部材1の外形寸法に比して小さい。そして、当該成形型の受圧面積は、車両用加飾部材1全体を成形するための成形型の受圧面積に比べて小さい。これにより、実施例1の成形方法における第1成形工程では、高出力の特殊な成形機ではなく、汎用型の成形機を用いて第1領域10を成形することが可能である。
【0048】
(第2成形工程)
第2成形工程は、第1成形工程後に、第2の透明樹脂を材料として第2領域20を成形する工程である。より具体的には、第2成形工程では、第2領域20を成形するための成形型のキャビティ(図略)に、流動状態の第2の透明樹脂(図略)を注入することで、第2領域20を成形する。
【0049】
図3に示すように、第2領域20は窓部15に対応する位置に分散配置された複数の第2分割体25の集合体である。このため、第2領域20を成形するための成形型には、第2分割体25同士の隙間に相当する位置に、第2領域20の厚さ方向に延びる型面(図略)が設けられている。このため、第2領域20を成形するための成形型のキャビティの容積は、成形する対象たる第2領域20の外形寸法に比して小さい。換言すると、第2成形工程で使用する成形型のキャビティの容積もまた、車両用加飾部材1の外形寸法に比して小さい。そして、当該成形型の受圧面積もまた、車両用加飾部材2全体を成形するための成形型の受圧面積に比べて小さい。これにより、実施例1の成形方法における第2成形工程においても、高出力の特殊な成形機ではなく、汎用型の成形機を用いて第2領域20を成形することが可能である。
【0050】
(意匠部形成工程)
実施例1の製造方法における意匠部形成工程では、第2領域20の裏面21に、意匠部30を塗装形成する。
以上の第1成形工程、第2成形工程および意匠部形成工程により、実施例1の車両用加飾部材1が製造される。
【0051】
実施例1の製造方法によると、車両用加飾部材1を第1領域10と第2領域20とに分割し二工程で製造することで、開口を有さず外形の大きな車両用加飾部材1を樹脂成形するにも拘らず、高出力の特殊な成形機ではなく、汎用型の成形機を用いることが可能である。
【0052】
(実施例2)
実施例2の製造方法は、第1領域の裏面と第2領域の裏面との位置関係、および、意匠部の位置以外は、実施例1の製造方法と概略同じである。実施例2の車両用加飾部材を、図1中のA-A位置と同位置で切断した様子を模式的に表す説明図を図5に示す。以下、実施例1の製造方法との相違点を中心に、実施例2の製造方法を説明する。
【0053】
実施例2の製造方法で製造される実施例2の車両用加飾部材1においては、第1領域10の表面12と第2領域20の表面22とは滑らかに連続するものの、第1領域10の裏面11と第2領域20の裏面21とは、段差状に連続している。このため、実施例2の車両用加飾部材1には、第1領域10の表面12および第2領域20の表面22に由来する滑らかに整った意匠と、第1領域10の裏面11および第2領域20の裏面21に由来するリズミカルな意匠とが、車両用加飾部材1の厚さ方向に奥行きをもって表示される。これにより、実施例2の車両用加飾部材1は優れた意匠性を発揮する。
【0054】
また、実施例2の車両用加飾部材1においても、第1領域10の材料である第1の透明樹脂と、第2領域20の材料である第2の透明樹脂とは、屈折率、色、および可視光透過率において同等である。このため、車両用加飾部材1の面方向において、第1領域10と第2領域20との境界は視認され難い。このことによっても、実施例2の車両用加飾部材1は優れた意匠性を発揮する。
【0055】
なお、実施例2の製造方法では、実施例1の製造方法と同様に、車両用加飾部材1を第1領域10と第2領域20とに分割し二工程で製造する。これにより、実施例2の製造法においても、開口を有さず外形の大きな車両用加飾部材1を樹脂成形するにも拘らず、高出力の特殊な成形機ではなく、汎用型の成形機を用いることが可能である。
【0056】
(実施例3)
実施例3の製造方法は、第1領域の表面と第2領域の表面との位置関係以外は、実施例2の製造方法と概略同じである。実施例3の車両用加飾部材を、図1中のA-A位置と同位置で切断した様子を模式的に表す説明図を図6に示す。以下、実施例2の製造方法との相違点を中心に、実施例3の製造方法を説明する。
【0057】
実施例3の製造方法で製造される実施例3の車両用加飾部材1においては、第1領域10の裏面11と第2領域20の裏面21とが段差状に連続し、かつ、第1領域10の表面12と第2領域20の表面22ともまた段差状に連続している。このため、実施例3の車両用加飾部材1には、第1領域10の表面12および第2領域20の表面22に由来するリズミカルな意匠と、第1領域10の裏面11および第2領域20の裏面21に由来するリズミカルな意匠とが、車両用加飾部材1の厚さ方向に奥行きをもって表示される。これにより、実施例2の車両用加飾部材1は優れた意匠性を発揮する。
【0058】
また、実施例3の車両用加飾部材1においても、第1領域10の材料である第1の透明樹脂と、第2領域20の材料である第2の透明樹脂とは、屈折率、色、および可視光透過率において同等である。このため、車両用加飾部材1の面方向において、第1領域10と第2領域20との境界は視認され難い。このことによっても、実施例3の車両用加飾部材1は優れた意匠性を発揮する。
【0059】
さらに、実施例3の車両用加飾部材1においては、ユーザーや歩行者等の目につく部分である第1領域10の表面12と第2領域20の表面22とが、段差状に連続している。換言すると、実施例3の車両用加飾部材1における表面は、凹凸形状をなしている。このため、成形時の収縮によるヒケ等、第1領域10の表面12および第2領域20の表面22に多少の形状不良が生じても、当該形状不良は車両用加飾部材1の表面の凹凸形状によりマスキングされて、ユーザー等に知覚され難い。
したがって、実施例3の製造方法によると、成形時に生じた形状のバラツキを吸収でき、意匠性に優れていると認識される車両用加飾部材1を容易かつ安価に製造できる利点がある。
【0060】
勿論、実施例3の製造方法においても、実施例1の製造方法及び実施例2の製造方法と同様に、車両用加飾部材1を第1領域10と第2領域20とに分割し二工程で製造する。これにより、実施例3の製造法においても、開口を有さず外形の大きな車両用加飾部材1を樹脂成形するにも拘らず、高出力の特殊な成形機ではなく、汎用型の成形機を用いることが可能である。
【0061】
本発明は、上記し且つ図面に示した実施形態にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。また、実施形態を含む本明細書に示した各構成要素は、それぞれ任意に抽出し組み合わせて実施できる。
【符号の説明】
【0062】
1:車両用加飾部材
10:第1領域
11:第1領域の裏面
12:第1領域の表面
15:窓部
20:第2領域
21:第2領域の裏面
22:第2領域の表面
25:第2分割体
30:意匠部
図1
図2
図3
図4
図5
図6