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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】永久磁石電動機の制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 21/26 20160101AFI20240611BHJP
   H02P 6/182 20160101ALI20240611BHJP
   H02P 21/05 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
H02P21/26
H02P6/182
H02P21/05
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021014163
(22)【出願日】2021-02-01
(65)【公開番号】P2022117586
(43)【公開日】2022-08-12
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】井手 徹
(72)【発明者】
【氏名】朝比奈 和希
(72)【発明者】
【氏名】淺野 吉彦
(72)【発明者】
【氏名】松岡 大輔
(72)【発明者】
【氏名】名和 政道
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-011539(JP,A)
【文献】特開2020-139461(JP,A)
【文献】特開2019-068586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P6/00-6/34
21/00-25/03
25/04
25/10-27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送波の電圧値と電圧指令値との比較結果により永久磁石電動機の回転子を駆動させるインバータ回路と、
前記回転子の位置により前記永久磁石電動機に流れる電流をd軸電流及びq軸電流に変換する電流変換部と、
前記d軸電流及び前記q軸電流により前記回転子の位置及び前記回転子の回転数を推定する推定部と、
前記回転子の回転数と回転数指令値との差によりトルク指令値を算出するトルク指令値算出部と、
前記トルク指令値によりd軸電流指令値及びq軸電流指令値を出力する電流指令値出力部と、
前記d軸電流と前記d軸電流指令値との差が小さくなるようにd軸電圧指令値を算出するとともに前記q軸電流と前記q軸電流指令値との差が小さくなるようにq軸電圧指令値を算出する電圧指令値算出部と、
前記回転子の位置により前記d軸電圧指令値及び前記q軸電圧指令値を前記電圧指令値に変換する電圧指令値変換部と、
を備え、
前記電流指令値出力部は、前記永久磁石電動機の起動時、前記d軸電流指令値として第1の所定値を出力することにより前記回転子の回転数を増加させる強制同期を実行し、前記回転数が閾値以上になると、前記d軸電流指令値としてゼロを出力するとともに前記q軸電流指令値としてゼロより大きく、かつ、前記第1の所定値より小さい第2の所定値を出力することにより前記永久磁石電動機のトルクを増加させる切替制御を実行する
ことを特徴とする永久磁石電動機の制御装置。
【請求項2】
搬送波の電圧値と電圧指令値との比較結果により永久磁石電動機の回転子を駆動させるインバータ回路と、
前記回転子の位置により前記永久磁石電動機に流れる電流をd軸電流及びq軸電流に変換する電流変換部と、
前記d軸電流及び前記q軸電流により前記回転子の位置及び前記回転子の回転数を推定する推定部と、
前記回転子の回転数と回転数指令値との差によりトルク指令値を算出するトルク指令値算出部と、
前記トルク指令値によりd軸電流指令値及びq軸電流指令値を出力する電流指令値出力部と、
前記d軸電流と前記d軸電流指令値との差が小さくなるようにd軸電圧指令値を算出するとともに前記q軸電流と前記q軸電流指令値との差が小さくなるようにq軸電圧指令値を算出する電圧指令値算出部と、
前記回転子の位置により前記d軸電圧指令値及び前記q軸電圧指令値を前記電圧指令値に変換する電圧指令値変換部と、
を備え、
前記電流指令値出力部は、前記永久磁石電動機の起動時、前記d軸電流指令値として第1の所定値を出力することにより前記回転子の回転数を増加させる強制同期を実行し、前記回転数が閾値以上になると、前記d軸電流指令値としてゼロを出力した後、前記q軸電流指令値としてゼロより大きく、かつ、前記第1の所定値より小さい第2の所定値を出力することにより前記永久磁石電動機のトルクを増加させる切替制御を実行する
ことを特徴とする永久磁石電動機の制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の永久磁石電動機の制御装置であって、
前記電流指令値出力部は、前記強制同期を複数回実行するとともに、前記強制同期の実行回数が増加するほど前記回転子の回転数の加速度を増加させる
ことを特徴とする永久磁石電動機の制御装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の永久磁石電動機の制御装置であって、
前記電流指令値出力部は、前記電動機の起動時、前記d軸電流指令値として前記第1の所定値より小さく、かつ、前記第2の所定値より大きい第3の所定値を出力するとともに前記q軸電流指令値としてゼロを出力することで前記回転子のd軸を前記回転子の回転磁界の基準相に追従させながら前記回転子を第1の加速度で回転させる第1強制同期を実行した後、前記d軸電流指令値として前記第1の所定値を出力するとともに前記q軸電流指令値としてゼロを出力することで前記d軸を前記基準相に追従させながら前記回転子を前記第1の加速度より大きい第2の加速度で回転させる第2強制同期を実行する
ことを特徴とする永久磁石電動機の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転子の位置を検出する機能を備えていない永久磁石電動機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石電動機の制御装置として、永久磁石電動機の起動時、d軸電流指令値をゼロから所定値に変化させることで回転子の回転数を増加させ、回転子の回転数が閾値以上になると、q軸電流指令値をゼロから所定値に変化させることで永久磁石電動機のトルクを増加させ、その後、通常制御に移行するものがある。関連する技術として、特許文献1がある。
【0003】
ところで、永久磁石電動機の起動時間の短縮化を図る場合、永久磁石電動機に流れるd軸電流及びq軸電流をd軸電流指令値及びq軸電流指令値に追従させるためのフィードバック制御のゲインを大きくして、q軸電流指令値をゼロから所定値に変化させたときにd軸電流及びq軸電流がd軸電流指令値及びq軸電流指令値に収束するためにかかる時間を短くすることが考えられる。
【0004】
しかしながら、上記制御装置において、フィードバック制御のゲインを大きくすると、q軸電流指令値をゼロから所定値に変化させたときのd軸電流の発振が大きくなるため、永久磁石電動機のトルクが必要以上に増加し、永久磁石電動機の制御性が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-054663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一側面に係る目的は、回転子の位置を検出する機能を備えていない永久磁石電動機の起動時間の短縮化を図りつつ永久磁石電動機の制御性の低下を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一つの形態である永久磁石電動機の制御装置は、搬送波の電圧値と電圧指令値との比較結果により永久磁石電動機の回転子を駆動させるインバータ回路と、前記回転子の位置により前記永久磁石電動機に流れる電流をd軸電流及びq軸電流に変換する電流変換部と、前記d軸電流及び前記q軸電流により前記回転子の位置及び前記回転子の回転数を推定する推定部と、前記回転子の回転数と回転数指令値との差によりトルク指令値を算出するトルク指令値算出部と、前記トルク指令値によりd軸電流指令値及びq軸電流指令値を出力する電流指令値出力部と、前記d軸電流と前記d軸電流指令値との差が小さくなるようにd軸電圧指令値を算出するとともに前記q軸電流と前記q軸電流指令値との差が小さくなるようにq軸電圧指令値を算出する電圧指令値算出部と、前記回転子の位置により前記d軸電圧指令値及び前記q軸電圧指令値を前記電圧指令値に変換する電圧指令値変換部とを備える。
【0008】
前記電流指令値出力部は、前記永久磁石電動機の起動時、前記d軸電流指令値として第1の所定値を出力することにより前記回転子の回転数を増加させる強制同期を実行し、前記回転数が閾値以上になると、前記q軸電流指令値としてゼロより大きく、かつ、前記第1の所定値より小さい第2の所定値を出力することにより前記永久磁石電動機のトルクを増加させる切替制御を実行する。
【0009】
これにより、永久磁石電動機の起動時、電流指令値出力部からq軸電流指令値として第1の所定値が出力される場合に比べて、q軸電流が大きくなることを抑えることができるため、永久磁石電動機のトルクが比較的大きくなることを抑制することができ、永久磁石電動機の制御性の低下を抑制することができる。また、電流指令値出力部からq軸電流指令値として第1の所定値が出力される場合に比べて、q軸電流の発振を抑えることができる。また、q軸電流の発振を抑えることができるため、q軸電流の変動の影響によるd軸電流の発振も抑えることができる。そのため、d軸電流及びq軸電流がd軸電流指令値及びq軸電流指令値に収束するためにかかる時間を短くすることができ、永久磁石電動機の起動時間の短縮化を図ることができる。
【0010】
また、前記電流指令値出力部は、前記回転数が前記閾値以上になると、前記d軸電流指令値としてゼロを出力した後、前記q軸電流指令値として前記第2の所定値を出力するように構成してもよい。
【0011】
これにより、d軸電流をd軸電流指令値にある程度収束させた後に、q軸電流をq軸電流指令値に収束させることができるため、d軸電流の変動の影響によるq軸電流の発振を抑えることができるため、永久磁石電動機のトルクが比較的大きくなることをさらに抑えることができ、永久磁石電動機の制御性の低下をさらに抑制することができる。また、d軸電流及びq軸電流の発振をより抑えることができるため、d軸電流及びq軸電流がd軸電流指令値及びq軸電流指令値に収束するためにかかる時間をさらに短くすることができ、永久磁石電動機の起動時間をさらに短縮させることができる。
【0012】
また、前記電流指令値出力部は、前記回転数が前記閾値以上になるまで、前記強制同期を複数回実行するとともに、前記強制同期の実行回数が増加するほど前記回転子の回転数の加速度を増加させるように構成してもよい。
【0013】
これにより、永久磁石電動機の起動を開始させてから回転子の回転数が閾値以上になるまでの期間を短縮することができるため、永久磁石電動機の起動時間をさらに短縮させることができる。
【0014】
また、前記電流指令値出力部は、前記電動機の起動時、前記d軸電流指令値として前記第1の所定値より小さく、かつ、前記第2の所定値より大きい第3の所定値を出力するとともに前記q軸電流指令値としてゼロを出力することで前記回転子のd軸を前記回転子の回転磁界の基準相に追従させながら前記回転子を第1の加速度で回転させる第1強制同期を実行した後、前記d軸電流指令値として前記第1の所定値を出力するとともに前記q軸電流指令値としてゼロを出力することで前記d軸を前記基準相に追従させながら前記回転子を前記第1の加速度より大きい第2の加速度で回転させる第2強制同期を実行するように構成してもよい。
【0015】
これにより、永久磁石電動機の起動を開始させてから回転子の回転数が閾値以上になるまでの期間を短縮することができるため、永久磁石電動機の起動時間をさらに短縮させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、回転子の位置を検出する機能を備えていない永久磁石電動機の起動時間の短縮化を図りつつ永久磁石電動機の制御性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態の永久磁石電動機の制御装置を示す図である。
図2】電流指令値出力部の動作を示すフローチャートである。
図3】従来の永久磁石電動機の起動時におけるd軸電流指令値、d軸電流、q軸電流指令値、q軸電流、及び回転子の回転数の変化例を示す図である。
図4】実施形態の永久磁石電動機の起動時におけるd軸電流指令値、d軸電流、q軸電流指令値、q軸電流、及び回転子の回転数の変化例を示す図である。
図5】変形例1の永久磁石電動機の起動時におけるd軸電流指令値、d軸電流、q軸電流指令値、q軸電流、及び回転子の回転数の変化例を示す図である。
図6】電流指令値出力部の動作を示すフローチャートである。
図7】変形例2の永久磁石電動機の起動時におけるd軸電流指令値、d軸電流、q軸電流指令値、q軸電流、及び回転子の回転数の変化例を示す図である。
図8】電流指令値出力部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下図面に基づいて実施形態について詳細を説明する。
図1は、実施形態の永久磁石電動機の制御装置を示す図である。
【0019】
図1に示す制御装置1は、例えば、電動フォークリフトやプラグインハイブリッド車などの車両に搭載される永久磁石電動機Mの動作を制御するものであって、インバータ回路2と、制御回路3とを備える。なお、永久磁石電動機Mは、例えば、表面磁石型同期モータ(Surface Permanent Magnetic Synchronous Motor)などであって、以下、電動機Mとする。
【0020】
インバータ回路2は、直流電源Pから供給される電力により電動機Mを駆動させるものであって、コンデンサCと、スイッチング素子SW1~SW6(例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor))と、電流センサSe1、Se2とを備える。すなわち、コンデンサCの一方端子が直流電源Pの正極端子及びスイッチング素子SW1、SW3、SW5の各コレクタ端子に接続され、コンデンサCの他方端子が直流電源Pの負極端子及びスイッチング素子SW2、SW4、SW6の各エミッタ端子に接続されている。スイッチング素子SW1のエミッタ端子とスイッチング素子SW2のコレクタ端子との接続点は電流センサSe1を介して電動機MのU相の入力端子に接続されている。スイッチング素子SW3のエミッタ端子とスイッチング素子SW4のコレクタ端子との接続点は電流センサSe2を介して電動機MのV相の入力端子に接続されている。スイッチング素子SW5のエミッタ端子とスイッチング素子SW6のコレクタ端子との接続点は電動機MのW相の入力端子に接続されている。
【0021】
コンデンサCは、直流電源Pから出力されインバータ回路2へ入力される電圧を平滑する。
【0022】
スイッチング素子SW1は、制御回路3から出力される駆動信号S1に基づいて、オンまたはオフする。スイッチング素子SW2は、制御回路3から出力される駆動信号S2に基づいて、オンまたはオフする。スイッチング素子SW3は、制御回路3から出力される駆動信号S3に基づいて、オンまたはオフする。スイッチング素子SW4は、制御回路3から出力される駆動信号S4に基づいて、オンまたはオフする。スイッチング素子SW5は、制御回路3から出力される駆動信号S5に基づいて、オンまたはオフする。スイッチング素子SW6は、制御回路3から出力される駆動信号S6に基づいて、オンまたはオフする。スイッチング素子SW1~SW6がそれぞれオンまたはオフすることで、直流電源Pから出力される直流電圧が、互いに位相が120度ずつ異なる3つの交流電圧に変換され、それら交流電圧が電動機MのU相、V相、及びW相の入力端子に印加され電動機Mの回転子が回転する。
【0023】
電流センサSe1は、ホール素子やシャント抵抗などにより構成され、電動機MのU相に流れるU相電流Iuを検出して制御回路3に出力する。また、電流センサSe2は、ホール素子やシャント抵抗などにより構成され、電動機MのV相に流れるV相電流Ivを検出して制御回路3に出力する。
制御回路3は、記憶部4と、ドライブ回路5と、演算部6とを備える。
【0024】
記憶部4は、RAM(Random Access Memory)またはROM(Read Only Memory)などにより構成される。また、記憶部4は、後述する、所定値Ic1、所定値Ic2、閾値ωthなどを記憶している。
【0025】
ドライブ回路5は、IC(Integrated Circuit)などにより構成され、演算部6から出力されるU相電圧指令値Vu*、V相電圧指令値Vv*、及びW相電圧指令値Vw*と搬送波(三角波、ノコギリ波、または逆ノコギリ波など)の電圧値とを比較し、その比較結果に応じた駆動信号S1~S6をスイッチング素子SW1~SW6のそれぞれのゲート端子に出力する。例えば、ドライブ回路5は、U相電圧指令値Vu*が搬送波以上である場合、ハイレベルの駆動信号S1を出力するとともに、ローレベルの駆動信号S2を出力し、U相電圧指令値Vu*が搬送波より小さい場合、ローレベルの駆動信号S1を出力するとともに、ハイレベルの駆動信号S2を出力する。また、ドライブ回路5は、V相電圧指令値Vv*が搬送波以上である場合、ハイレベルの駆動信号S3を出力するとともに、ローレベルの駆動信号S4を出力し、V相電圧指令値Vv*が搬送波より小さい場合、ローレベルの駆動信号S3を出力するとともに、ハイレベルの駆動信号S4を出力する。また、ドライブ回路5は、W相電圧指令値Vw*が搬送波以上である場合、ハイレベルの駆動信号S5を出力するとともに、ローレベルの駆動信号S6を出力し、W相電圧指令値Vw*が搬送波より小さい場合、ローレベルの駆動信号S5を出力するとともに、ハイレベルの駆動信号S6を出力する。
【0026】
演算部6は、マイクロコンピュータなどにより構成され、電流変換部7と、推定部8と、減算部9と、トルク指令値算出部10と、電流指令値出力部11と、減算部12と、減算部13と、電圧指令値算出部14と、電圧指令値変換部15とを備える。例えば、マイクロコンピュータが記憶部4に記憶されているプログラムを実行することにより、電流変換部7、推定部8、減算部9、トルク指令値算出部10、電流指令値出力部11、減算部12、減算部13、電圧指令値算出部14、及び電圧指令値変換部15が実現される。
【0027】
電流変換部7は、電流センサSe1により検出されるU相電流Iu及び電流センサSe2により検出されるV相電流Ivを用いて、電動機MのW相に流れるW相電流Iwを求める。
【0028】
また、電流変換部7は、推定部8により推定される電動機Mの回転子の位置θ^を用いて、U相電流Iu、V相電流Iv、及びW相電流Iwをd軸電流Id(弱め界磁を発生させるための電流成分)及びq軸電流Iq(トルクを発生させるための電流成分)に変換する。
【0029】
例えば、電流変換部7は、下記式1に示す変換行列C1を用いて、U相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwを、d軸電流Id及びq軸電流Iqに変換する。
【0030】
【数1】
【0031】
なお、電流センサSe1、Se2により検出される電流は、U相電流Iu及びV相電流Ivの組み合わせに限定されず、V相電流Iv及びW相電流Iwの組み合わせ、または、U相電流Iu及びW相電流Iwの組み合わせでもよい。電流センサSe1、Se2によりV相電流Iv及びW相電流Iwが検出される場合、電流変換部7は、V相電流Iv及びW相電流Iwを用いて、U相電流Iuを求める。また、電流センサSe1、Se2によりU相電流Iu及びW相電流Iwが検出される場合、電流変換部7は、U相電流Iu及びW相電流Iwを用いて、V相電流Ivを求める。
【0032】
また、インバータ回路2において、電流センサSe1、Se2の他に、電動機MのW相に流れる電流を検出する電流センサSe3をさらに備える場合、電流変換部7は、推定部8により推定される位置θ^を用いて、電流センサSe1~Se3により検出されるU相電流Iu、V相電流Iv、及びW相電流Iwをd軸電流Id及びq軸電流Iqに変換するように構成してもよい。
【0033】
推定部8は、電流変換部7から出力されるd軸電流Id及びq軸電流Iqを用いて、電動機Mの回転子の位置θ^及び回転数ω^を推定する。例えば、推定部8は、下記式2及び式3により位置θ^及び回転数ω^を算出する。なお、回転子の実際の位置θと位置θ^との差Δθを入力としΔθ^を出力としαをオブザーバの極とする伝達関数をP(s)=α/(s+α)とし、Δθ^を入力とし位置θ^を出力とする伝達関数をK(s)=k+k/s+k/sとする。また、Δθ^は、下記式4により算出されるものとする。また、eγ及びeδは、下記式5により算出されるものとする。また、Ldは電動機Mのd軸インダクタンスとし、Lqは電動機Mのq軸インダクタンスとし、Idはd軸電流Idとし、Iq´はq軸電流Iqの微分項とし、Keは誘起電圧定数とする。
【0034】
θ^=kΔθ^+ω^/s ・・・式2
ω^=(k+k/s)Δθ^ ・・・式3
Δθ^=tan-1(-e^γ/e^δ) ・・・式4
【0035】
【数2】
【0036】
減算部9は、外部から入力される回転数指令値ω*と推定部8により推定される回転数ω^との差Δωを算出する。
【0037】
トルク指令値算出部10は、減算部9から出力される差Δωを用いて、トルク指令値T*を算出する。例えば、トルク指令値算出部10は、記憶部4に記憶されている、電動機Mの回転子の回転数と電動機Mのトルクとが互いに対応付けられている情報(不図示)を参照して、差Δωに相当する回転数に対応するトルクを、トルク指令値T*として求める。
【0038】
電流指令値算出部11は、電動機Mの通常制御時、トルク指令値算出部10から出力されるトルク指令値T*を用いて、d軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*を算出する。例えば、電流指令値算出部11は、通常制御時、記憶部4に記憶されている、電動機Mのトルクとd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*とが互いに対応付けられている情報(不図示)を参照して、トルク指令値T*に相当するトルクに対応するd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*を求める。
【0039】
減算部12は、電流指令値出力部11から出力されるd軸電流指令値Id*と、電流変換部7から出力されるd軸電流Idとの差ΔIdを算出する。
【0040】
減算部13は、電流指令値出力部11から出力されるq軸電流指令値Iq*と、電流変換部7から出力されるq軸電流Iqとの差ΔIqを算出する。
【0041】
電圧指令値算出部14は、減算部12から出力される差ΔId及び減算部13から出力される差ΔIqを用いたPI(Proportional Integral)制御により、d軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を算出する。例えば、電圧指令値算出部14は、下記式6を用いてd軸電圧指令値Vd*を算出するとともに、下記式7を用いてq軸電圧指令値Vq*を算出する。なお、KpはPI制御の比例項の定数とし、KiはPI制御の積分項の定数とし、Lqは電動機Mのq軸インダクタンスとし、Ldは電動機Mのd軸インダクタンスとし、ω^は推定部8により推定される回転数ω^とし、Keは誘起電圧定数とする。
【0042】
d軸電圧指令値Vd*=Kp×差ΔId+∫(Ki×差ΔId)-ω^LqIq・・・式6
q軸電圧指令値Vq*=Kp×差ΔIq+∫(Ki×差ΔIq)+ω^LdId+ω^Ke・・・式7
【0043】
電圧指令値変換部15は、推定部8により推定される位置θ^を用いて、d軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を、U相電圧指令値Vu*、V相電圧指令値Vu*、及びW相電圧指令値Vw*に変換する。例えば、電圧指令値変換部15は、下記式8示す変換行列C2を用いて、d軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を、U相電圧指令値Vu*、V相電圧指令値Vv*、W相電圧指令値Vw*に変換する。
【0044】
【数3】
【0045】
図2は、電動機Mの起動時における電流指令値出力部11の動作を示すフローチャートである。
【0046】
まず、電流指令値出力部11は、車両のイグニッションオンなどに伴う電動機Mの起動指示が制御回路11に入力されると(ステップS11:Yes)、d軸電流指令値Id*として所定値Ic1(第1の所定値)を出力するとともにq軸電流指令値Iq*としてゼロを出力する(ステップS12)。なお、所定値Ic1は、回転子のd軸(N極)が電動機Mの回転磁界の基準相(例えば、U相)まで移動した後に回転子のd軸が基準相に追従しながら回転子の回転数が増加するときのd軸電流Id、または、電動機Mのトルクが所定トルクになるときのq軸電流Iqとする。また、電動機Mの起動時において、回転子のd軸が回転子の基準相まで移動する期間を「位置合わせ期間」とする。また、電動機Mの起動時において、回転子のd軸が回転磁界の基準相に追従しながら回転子の回転数が増加する期間を「強制同期期間」とする。
【0047】
次に、電流指令値出力部11は、推定部8により推定される回転数ω^が閾値ωth以上になると(ステップS13:Yes)、d軸電流指令値Id*としてゼロを出力するとともにq軸電流指令値Iq*として所定値Ic2(第2の所定値)を出力する(ステップS14)。なお、閾値ωthは、回転数指令値ω*と同じ値、または、回転数指令値ω*より一定値小さい値、または、回転数指令値ω*より一定値大きい値、または、回転数指令値ω*に比例する値とする。また、所定値Ic2は、ゼロより大きく、かつ、所定値Ic1より小さい任意の値とする。例えば、所定値Ic2は、所定値Ic1の10[%]の値とする。
【0048】
そして、電流指令値出力部11は、d軸電流指令値Id*としてゼロを出力するとともにq軸電流指令値Iq*として所定値Ic2を出力した後、トルク指令値T*に対応するd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*を出力することにより、起動制御から通常制御に移行する(ステップS15)。なお、電動機Mの起動時において、回転数ω^が閾値ωth以上になってからd軸電流Id及びq軸電流Iqがd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*に収束するまでの期間を「切替制御期間」とする。
【0049】
図3は、従来の電動機Mの起動時におけるd軸電流指令値Id*、d軸電流Id、q軸電流指令値Iq*、q軸電流Iq、回転子の回転数ωの変化例を示す図である。なお、図3では、「切替制御期間」において電流指令値出力部11からd軸電流指令値Id*としてゼロが出力されるとともにq軸電流指令値Iq*として所定値Ic1が出力される場合を想定する。また、図3(a)~図3(d)に示す2次元座標の横軸は時間を示し縦軸は電流を示している。また、図3(a)に示す実線はd軸電流指令値Id*を示し、図3(b)に示す実線はd軸電流Idを示し、図3(c)に示す実線はq軸電流指令値Iq*を示し、図3(d)に示す実線はq軸電流Iqを示している。また、図3(e)に示す2次元座標の横軸は時間を示し縦軸は回転数を示している。また、図3(e)に示す実線は推定部8により推定される回転数ω^を示している。
【0050】
まず、電流指令値出力部11は、「位置合わせ期間」において、図3(a)に示すようにd軸電流指令値Id*として所定値Ic1を出力するとともに、図3(c)に示すようにq軸電流指令値Iq*としてゼロを出力する。すると、回転子のd軸が回転磁界の基準相に近づいていく。そして、回転子のd軸が回転磁界の基準相に一致すると、図3(e)に示すように、「強制同期期間」において、回転数ω^が徐々に上昇していく。
【0051】
次に、電流指令値出力部11は、回転数ω^が閾値ωth以上になると、「切替制御期間」において、図3(a)に示すようにd軸電流指令値Id*としてゼロを出力するとともに、図3(c)に示すようにq軸電流指令値Iq*として所定値Ic1を出力する。すると、図3(b)に示すように、ゼロを基準にしてd軸電流Idが発振した後、d軸電流Idがゼロに収束していく。また、図3(d)に示すように、所定値Ic1を基準にしてq軸電流Iqが発振した後、q軸電流Iqが所定値Ic1に収束していく。
【0052】
そして、電流指令値出力部11は、d軸電流指令値Id*としてゼロを出力するとともにq軸電流指令値Iq*として所定値Ic1を出力した後、トルク指令値T*に対応するd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*を出力することにより、起動制御から通常制御に移行する。
【0053】
このように、電動機Mの起動制御が開始されてから通常制御に移行するまでに所定時間を要する。そして、この起動にかかる時間を短縮する場合、d軸電流Id及びq軸電流Iqをd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*に追従させるためのフィードバック制御のゲイン(例えば、式6及び式7のKpやKi)を比較的大きくすることが考えられる。すなわち、フィードバック制御のゲインを比較的大きくすると、d軸電流指令値Id*が所定値Ic1からゼロに変化するとともにq軸電流指令値Iq*がゼロから所定値Ic1に変化してからd軸電流Id及びq軸電流Iqがd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*に収束するまでにかかる時間(「切替制御期間」)を短くすることができる。
【0054】
しかしながら、フィードバック制御のゲインを比較的大きくすると、「切替制御期間」において、q軸電流Iqが比較的大きく発振し、電動機Mのトルクが必要以上に大きくなり、電動機Mの制御性が低下するおそれがある。
【0055】
図4は、実施形態の電動機Mの起動時におけるd軸電流指令値Id*、d軸電流Id、q軸電流指令値Iq*、q軸電流Iq、回転子の回転数ωの変化例を示す図である。なお、図4では、「切替制御期間」において電流指令値出力部11からd軸電流指令値Id*としてゼロが出力されるとともにq軸電流指令値Iq*として所定値Ic1より小さい所定値Ic2が出力される場合を想定する。また、図4(a)~図4(d)に示す2次元座標の横軸は時間を示し縦軸は電流を示している。また、図4(a)に示す実線はd軸電流指令値Id*を示し、図4(b)に示す実線はd軸電流Idを示し、図4(c)に示す実線はq軸電流指令値Iq*を示し、図4(d)に示す実線はq軸電流Iqを示している。また、図4(e)に示す2次元座標の横軸は時間を示し縦軸は回転数を示している。また、図4(e)に示す実線は推定部8により推定される回転数ω^を示している。また、図4に示す「位置合わせ期間」及び「強制同期期間」は、図3に示す「位置合わせ期間」及び「強制同期期間」と同様である。
【0056】
実施形態の制御装置1では、図4(c)に示すように、「切替制御期間」において、q軸電流指令値Iq*として所定値Ic2を電流指令値算出部10から出力させる。
【0057】
これにより、図3(d)に示す「切替制御期間」におけるq軸電流Iqに比べて、図4(d)に示すように、「切替制御期間」において、q軸電流Iqが比較的大きくなることを抑えることができるため、電動機Mのトルクが必要以上に大きくなることを抑制することができ、電動機Mの制御性の低下を抑制することができる。また、図3(d)に示す「切替制御期間」におけるq軸電流Iqに比べて、図4(d)に示すように、「切替制御期間」において、q軸電流Iqの発振を抑えることができる。また、「切替制御期間」において、q軸電流Iqの発振を抑えることができるため、図3(b)に示す「切替制御期間」におけるd軸電流Idに比べて、図4(b)に示すように、「切替制御期間」において、q軸電流Iqの変動の影響によるd軸電流Idの発振も抑えることができる。そのため、図3に示す「切替制御期間」に比べて、図4に示す「切替制御期間」を短くすることができ、電動機Mの起動時間の短縮化を図ることができる。
【0058】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【0059】
<変形例1>
変形例1の電流指令値出力部11では、電動機Mの起動時の「切替制御期間」において、図5(a)及び図5(c)に示すように、d軸電流指令値Id*を所定値Ic1からゼロに変化させた後、q軸電流指令値Iq*をゼロから所定値Ic2に変化させる。
【0060】
このように、「切替制御期間」において、d軸電流指令値Id*をゼロに変化させた後、q軸電流指令値Iq*を所定値Ic2に変化させることにより、d軸電流Idをd軸電流指令値Id*にある程度収束させた後に、q軸電流Iqをq軸電流指令値Iq*に収束させることができる。これにより、「切替制御期間」において、d軸電流指令値Id*を所定値Ic1からゼロに変化させるタイミングと、q軸電流指令値Iq*をゼロから所定値Ic2に変化させるタイミングとが互いに同じである場合に比べて、図5(d)に示すように、d軸電流Idの変動の影響によるq軸電流Iqの発振を抑えることができるため、電動機Mのトルクが必要以上に大きくなることをさらに抑制することができ、電動機Mの制御性の低下をさらに抑制することができる。
【0061】
図6は、電動機Mの起動時における変形例1の電流指令値出力部11の動作を示すフローチャートである。なお、図6に示すステップS11~S13、S15は、図2に示すステップS11~S13、S15と同じである。
【0062】
まず、電流指令値出力部11は、電動機Mの起動指示が入力されると(ステップS11:Yes)、d軸電流指令値Id*として所定値Ic1(第1の所定値)を出力するとともにq軸電流指令値Iq*としてゼロを出力する(ステップS12)。
【0063】
次に、電流指令値出力部11は、回転数ω^が閾値ωth以上になると(ステップS13:Yes)、d軸電流指令値Id*としてゼロを出力した後(ステップS141)、q軸電流指令値Iq*として所定値Ic2(第2の所定値)を出力する(ステップS142)。
【0064】
そして、電流指令値出力部11は、d軸電流指令値Id*としてゼロを出力するとともにq軸電流指令値Iq*として所定値Ic2を出力した後、トルク指令値T*に対応するd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*を出力することにより、起動制御から通常制御に移行する(ステップS15)。
【0065】
<変形例2>
上記実施形態の電流指令値出力部11では、図4図5に示すように、電動機Mの起動時、回転子のd軸と回転磁界の基準相との位置合わせを実行した後、d軸を基準相に追従させながら回転子を回転させる強制同期を実行している。図4図5に示す「位置合わせ期間」では、d軸電流指令値Id*として所定電流Ic1が出力されてからd軸が基準相と一致するまでに比較的長い時間がかかる。また、図4図5に示す「強制同期期間」においても、回転数ω^が上昇し始めてから回転数ω^が閾値ωth以上になるまでに比較的長い時間がかかる。
【0066】
そこで、変形例2の電流指令値出力部11では、電動機Mの起動時、図7(a)に示すようにd軸電流指令値Id*として所定値Ic1より小さく、かつ、所定値Ic2より大きい所定値Ic3(第3の所定値)を出力するとともに図7(c)に示すようにq軸電流指令値Id*としてゼロを出力することでd軸を回転磁界の基準相に追従させながら回転子を加速度a1(第1の加速度)で回転させる第1強制同期を実行する。次に、変形例2の電流指令値出力部11は、図7(a)に示すようにd軸電流指令値Id*として所定値Ic1を出力するとともに図7(c)に示すようにq軸電流指令値Id*としてゼロを出力することでd軸を基準相に追従させながら回転子を加速度a1より大きい加速度a2(第2の加速度)で回転させる第2強制同期を実行する。これにより、図7(e)に示すように、回転数ω^が閾値ωthに近い状態で第1強制同期から第2強制同期に移行されるため、「第2強制同期期間」においてすぐに回転数ω^が閾値ωth以上になり、「第2強制同期期間」を「強制同期期間」より短くすることができる。
【0067】
このように、変形例2の電流指令値出力部11は、電動機Mの起動時において、第1強制同期を実行した後、第2強制同期を実行する構成であるため、位置合わせを実行した後、強制同期を実行する場合に比べて、電動機Mの起動が開始されてから回転数ω^が閾値ωth以上になるまでにかかる時間に対しても短縮化を図ることができ、電動機Mの起動時間をさらに短縮させることができる。
【0068】
図8は、電動機Mの起動時における変形例2の電流指令値出力部11の動作を示すフローチャートである。なお、図8に示すステップS11~S15は、図2に示すステップS11~S15と同じである。
【0069】
まず、電流指令値出力部11は、電動機Mの起動指示が入力されると(ステップS11:Yes)、d軸電流指令値Id*として所定値Ic3を出力するとともにq軸電流指令値Iq*としてゼロを出力する(ステップS121)。なお、所定値Ic3は、回転子のd軸が回転磁界の基準相に追従しつつ回転子が加速度a1で回転しているときのd軸電流Idとする。
【0070】
次に、電流指令値出力部11は、推定部8により推定される回転数ω^が閾値ωth´以上になると(ステップS122:Yes)、d軸電流指令値Id*として所定値Ic1を出力するとともにq軸電流指令値Iq*としてゼロを出力する(ステップS12)。なお、変形例2における所定値Ic1は、回転子のd軸が回転磁界の基準相に追従しつつ回転子が加速度a2で回転しているときのd軸電流Idとする。また、閾値ωth´は、閾値ωthより小さい任意の値とする。また、制御回路3は、第1強制同期を開始してから所定時間が経過すると、第2強制同期を実行するように構成してもよい。例えば、所定時間は、第1強制同期が開始されてから回転速度ωが閾値ωth´以上になるまでの時間とする。
【0071】
次に、電流指令値出力部11は、推定部8により推定される回転数ω^が閾値ωth以上になると(ステップS13:Yes)、d軸電流指令値Id*としてゼロを出力するとともに、q軸電流指令値Iq*として所定値Ic2(第2の所定値)を出力する(ステップS14)。
【0072】
そして、電流指令値出力部11は、d軸電流指令値Id*としてゼロを出力するとともにq軸電流指令値Iq*として所定値Ic2を出力した後、トルク指令値T*に対応するd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*を出力することにより、起動制御から通常制御に移行する(ステップS15)。
【0073】
なお、変形例2の電流指令値出力部11は、変形例1の電流指令値出力部11のように、回転数ω^が閾値ωth以上になった場合、d軸電流指令値Id*としてゼロを出力した後、q軸電流指令値Iq*として所定値Ic2を出力するように構成してもよい。これにより、電動機Mの制御性の低下をさらに抑制することができるとともに、電動機Mの起動時間をさらに短縮させることができる。
【0074】
また、変形例2の電流指令値出力部11は、回転数ω^が閾値ωth以上になるまで、強制同期を複数回実行するとともに、強制同期の実行回数が増加するほど回転数ωの加速度を増加させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 制御装置
2 インバータ回路
3 制御回路
4 記憶部
5 ドライブ回路
6 演算部
7 電流変換部
8 推定部
9、12、13 減算部
10 トルク指令値算出部
11 電流指令値出力部
14 電圧指令値算出部
15 電圧指令値変換部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8