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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】穀物の並行分散搬送システム
(51)【国際特許分類】
   B02B 7/02 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
B02B7/02 103
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021023430
(22)【出願日】2021-02-17
(65)【公開番号】P2022125695
(43)【公開日】2022-08-29
【審査請求日】2023-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】谷口 潤之介
(72)【発明者】
【氏名】宮野 崇
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-267999(JP,A)
【文献】特開2007-117858(JP,A)
【文献】特開昭62-186950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工前の穀物を貯蔵することが可能な原料タンクと、
前記加工前の穀物を加工することが可能な複数の穀物加工機と、
前記複数の穀物加工機のそれぞれに対応して設けられるとともに前記加工前の穀物を貯留することが可能な調整タンクと、
前記加工前の穀物の前記調整タンクへの搬送経路を切り替えることが可能な切替え手段と、
前記切替え手段を切替え制御して複数の前記調整タンクへ前記加工前の穀物を切替え搬送することが可能な制御手段と、を有し、
複数の前記調整タンクは、
前記調整タンクの最大貯留量に対する中間貯留領域の任意の位置にそれぞれ中間センサを備え、
前記制御手段は、
前記中間センサの検出結果に基づいて前記切替え手段の切替え制御を実行し、前記調整タンクへ前記加工前の穀物を搬送する
ことを特徴とする穀物の並行分散搬送システム。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記切替え手段の切替え制御によって複数の前記調整タンクへ順次初回の前記加工前の穀物の搬送を行い、2回目以降の前記加工前の穀物の搬送に際しては、先に検出した前記中間センサの検出結果に基づいて該中間センサを備える調整タンクへ優先して前記加工前の穀物を搬送する
請求項1に記載の穀物の並行分散搬送システム。
【請求項3】
複数の前記調整タンクは、
前記調整タンクの最大貯留量に対する下限貯留領域の任意の位置にそれぞれ下限センサを備え、
前記制御手段は、
前記中間センサの検出結果よりも前記下限センサの検出結果を優先して前記切替え手段の切替え制御を実行し、前記調整タンクへ前記加工前の穀物を搬送する
請求項1に記載の穀物の並行分散搬送システム。
【請求項4】
複数の前記原料タンクを有し、
前記切替え手段は、1ラインの搬送装置を介して複数の前記原料タンクから前記加工前の穀物が搬送される
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の穀物の並行分散搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀物加工機の稼働効率を向上させることが可能な、穀物の並行分散搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の玄米タンクと複数の精米機とを備えた精米設備(プラント)がある。複数の玄米タンクを備えることで、入荷した玄米を産地別、品種別又は等級別に貯蔵することができる。さらに、複数の精米機を備えることで、精米処理における処理量を増加させることができる。このような精米設備として、例えば特許文献1に記載の精米設備がある。
【0003】
特許文献1に記載の精米設備は、一つのエア搬送装置によって、複数ある内の任意の玄米タンクに貯留されている玄米を、複数ある内の任意の精米機に搬送するものである。さらに、複数の精米機はそれぞれ玄米を一時的に貯留する調整タンク(バッファ)を備えている。このような構成により、エア搬送装置が一方の精米機に玄米を搬送している間、他方の精米機では先に搬送されて貯留された調整タンク内の玄米を精米することができ、エア搬送装置のタイムスケジュールによって上記調整タンクの貯留量が調整されている。
【0004】
ところで、精米設備等では、精米処理する1ロットの玄米の量が、一つの上記調整タンクの貯留量を大きく超えることが珍しくない。このような場合、そのロットの玄米を短時間で精米するために、複数の精米機を稼働させ、同時並行して精米を行う。そうなると、各精米機への玄米の供給が途切れないように数回に分けて調整タンクに玄米を搬送・供給する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3972361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、必ずしも複数の精米機が同様の処理能力を発揮するとは限らない。例えば、一部の精米機に不具合が生じた場合や、各精米機の処理能力がもともと異なる場合ななどが想定されるが、特許文献1に記載された発明の他、従来の精米設備は、このような事態に対応して、各精米機への玄米の供給が途切れないように玄米を分散して搬送できるような構成となっていない。このため、玄米を的確なタイミングで精米機に供給することができず、効率的に精米機を稼働させることが困難であった。
【0007】
そこで、上記した問題に鑑み、本発明は、精米機を含む穀物加工機の稼働効率を向上させることが可能な、穀物の並行分散搬送システムを提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)加工前の穀物を貯蔵することが可能な原料タンクと、前記加工前の穀物を加工することが可能な複数の穀物加工機と、前記複数の穀物加工機のそれぞれに対応して設けられるとともに前記加工前の穀物を貯留することが可能な調整タンクと、前記加工前の穀物の前記調整タンクへの搬送経路を切り替えることが可能な切替え手段と、前記切替え手段を切替え制御して複数の前記調整タンクへ前記加工前の穀物を切替え搬送することが可能な制御手段と、を有し、複数の前記調整タンクは、前記調整タンクの最大貯留量に対する中間貯留領域の任意の位置にそれぞれ中間センサを備え、前記制御手段は、前記中間センサの検出結果に基づいて前記切替え手段の切替え制御を実行し、前記調整タンクへ前記加工前の穀物を搬送することを特徴とする穀物の並行分散搬送システムである。
【0009】
(2)前記制御手段は、前記切替え手段の切替え制御によって複数の前記調整タンクへ順次初回の前記加工前の穀物の搬送を行い、2回目以降の前記加工前の穀物の搬送に際しては、先に検出した前記中間センサの検出結果に基づいて該中間センサを備える調整タンクへ優先して前記加工前の穀物を搬送する上記(1)に記載の穀物の並行分散搬送システムである。
【0010】
(3)複数の前記調整タンクは、前記調整タンクの最大貯留量に対する下限貯留領域の任意の位置にそれぞれ下限センサを備え、前記制御手段は、前記中間センサの検出結果よりも前記下限センサの検出結果を優先して前記切替え手段の切替え制御を実行し、前記調整タンクへ前記加工前の穀物を搬送する上記(1)に記載の穀物の並行分散搬送システムである。
【0011】
(4)複数の前記原料タンクを有し、前記切替え手段は、1ラインの搬送装置を介して複数の前記原料タンクから前記加工前の穀物が搬送される上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の穀物の並行分散搬送システムである。
【発明の効果】
【0012】
上記(1)に係る発明によれば、中間センサの検出結果に基づいて、各調整タンクに適切に穀物を搬送することが可能となるため、各穀物加工機に穀物を切れ目なく搬送・供給することが可能となり、各穀物加工機における原料切れを防ぐことができる。また、穀物の加工処理中に、複数ある穀物加工機の内の一部にトラブルが発生して加工処理能力が低下した場合であっても、各穀物加工機の稼働を平準化して稼働効率を向上させて加工処理の遅延を抑制することが可能となる。
【0013】
上記(2)に係る発明によれば、上記(1)によって得られる効果に加えて、切替え手段の切替え制御によって複数の調整タンクへ順次初回の穀物の搬送を行い、2回目以降の穀物の搬送は、先に検出した中間センサの検出結果に基づいて該中間センサを備える調整タンクへ優先して行われるので、各穀物加工機における原料切れを確実に防ぐことができる。
【0014】
上記(3)に係る発明によれば、上記(1)によって得られる効果に加えて、制御手段は、中間センサの検出結果よりも調整タンクの下限センサの検出結果を優先して切替え手段の切替え制御を実行するので、各穀物加工機における原料切れをより確実に防ぐことができる。
【0015】
上記(4)に係る発明によれば、上記(1)乃至(3)によって得られる効果に加えて、切替え手段は、1ラインの搬送装置を介して複数の原料タンクから穀物が搬送されるように構成されているので、搬送装置を簡素化してシステムの単純化を図り設備コストを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態の精米設備における設備構成を示した系統図である。
図2】本実施形態の調整タンクにおけるセンサの設置態様を示した正面図である。
図3】本実施形態における並行分散システムの制御フローである。
図4】本実施形態における並行分散システムの図4に続く制御フローである。
図5】本実施形態における玄米の搬送工程であり、各精米機が同様の処理能力を有する場合のタイムチャートである。
図6】本実施形態における玄米の搬送工程であり、トラブルにより一部の精米機の処理能力が低下してしまった場合のタイムチャートである。
図7】本実施形態の比較対象となる従来型の玄米の搬送工程を示したタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の穀物の平行分散搬送システムを精米設備1に適用した実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の穀物の平行分散搬送システムは、玄米を含む、麦、豆類、コーンなどの穀物を対象として利用することができるシステムであるが、以下では玄米の平行分散搬送システムを例に説明する。
【0018】
(精米設備の設備構成)
図1には、本実施形態における精米設備1の設備構成が概略の系統図で示されている。精米設備1は、主として玄米タンク10と、分散機11、調整タンク12、精米機13、精米タンク14、搬送装置20とから少なくとも構成されている。なお、前述したように、本発明の穀物の平行分散搬送システムは、玄米を含む種々の穀物を加工する穀物加工設備において利用することができ、本実施形態の玄米タンク10は原料タンク、精米機13は穀物加工機、精米タンク14は穀物タンクとしてそれぞれの機能を有する。
【0019】
本実施形態の精米設備1には、玄米タンク10が複数設置されており、入荷した玄米を産地別、品種別、産年別に分けて、各玄米タンク10にそれぞれ貯蔵することができる。玄米タンク10の排出口は1ラインの搬送装置20に接続されており、不図示のブロアによる圧縮空気によって、分散機11まで玄米がエア搬送されるように構成されている。なお、必ずしも玄米タンク10を複数設置することに限定されるものではなく、また玄米タンク10の最大貯蔵量も任意の貯蔵量とすることが可能である。また、搬送装置20についても圧縮空気によって搬送するものに限られず、吸引搬送によるものを使用してもよい。
【0020】
本実施形態では、分散機11まで搬送された玄米が、図示されるように3系統に分散して搬送されるように構成されており、各系統にそれぞれ配置された第1精米機13A、第2精米機13B、第3精米機13Cの各精米機13で精米処理が行われるように構成されている。なお、分散機11が玄米を分散可能な系統数は、必ずしも3系統に限定されるものではなく、例えば、2系統や4系統以上に玄米を分散するように構成してもよい。
【0021】
各精米機13は、その前段に、分散機11から搬送された玄米を一時的に貯留することが可能な調整タンク12をそれぞれ備えており、本実施形態では、第1精米機13Aの前段に第1調整タンク12Aが、第2精米機13Bの前段に第2調整タンク12Bが、第3精米機13Cの前段に第3調整タンク12Cがそれぞれ備えられている。各精米機13は、各調整タンク12からそれぞれ玄米の供給を受けて玄米の精米処理を行う。
【0022】
より詳細に説明すると、分散機11は各調整タンク12へ玄米を振り分けるための分岐弁を備えており、当該分岐弁が切替え制御されることで、搬送装置20から搬送された玄米を、各調整タンク12のいずれかに搬送することが可能となっている。そして、調整タンク12に、ある程度の量の玄米が貯留されると、当該調整タンク12から玄米の供給を受けて、精米機13を稼働させることが可能となる。なお、上記分散機11については、必ずしも分岐弁を備えた分散機に限定されるものではなく、搬送された玄米を複数の搬送経路に切り替えて搬送すること可能な切替え手段であれば利用することができる。
【0023】
図2には、前述した調整タンク12を模式的に示した正面図が図示されている。図示されるように、本実施形態における調整タンク12の最大貯留量は1100kgとなっている。また、調整タンク12の内壁面には、調整タンク12の高さ方向に玄米の貯留量を検知することが可能なセンサが複数設けられている。
【0024】
より詳細に説明すると、1000kg以上の玄米が貯留されていることを検知可能な上限センサ121と、200kg以上の玄米が貯留されていることを検知可能な下限センサ123と、調整タンク12の最大貯留量(1100kg)の概ね半分以上の玄米が貯留されていることを検知可能な中間センサ122とを少なくとも備えている。
【0025】
(並行分散搬送システムの制御構成)
次に、本実施形態における玄米の並行分散搬送システムの制御構成について説明する。前述したように、精米設備1の第1精米機13A、第2精米機13B、第3精米機13Cの各精米機13において、同時並行して効率的に精米処理を行うには、各精米機13における精米処理の進捗状況に応じて分散機11の分岐弁を切り替え、原料切れによって精米機13の稼働が停止してしまうことがないよう、各調整タンク12に玄米を適切に搬送する必要がある。
【0026】
本実施形態の並行分散搬送システムは、前述した精米設備1の設備構成に加えて、制御プログラムに基づいて精米設備1の各装置を制御可能な不図示の制御部を備えており、図3及び図4には、特に各調整タンク12への搬送制御に関わる制御フローが示されている。
【0027】
図3に示されるように、精米設備1における運転開始にともない、平行分散搬送システムによる制御を開始する。まず、精米処理の対象となっている玄米タンク10の下部に設けられた供給弁が開放される(ステップS101)。続いて、ブロアを含む搬送装置20が稼働し、玄米タンク10の供給弁から排出された玄米が、搬送装置20の輸送管を介して分散機11へと搬送される(ステップS102)。
【0028】
分散機11では、制御プログラムに従って第1調整タンク12Aへ玄米を搬送すべく、分岐弁の切り替えが行われ(ステップS103)、第1調整タンク12Aへ初回の玄米の搬送が行われる(ステップS104)。なお、本実施形態における各調整タンク12の最大貯留量は1100kgとなっているので、初回の玄米の搬送量は1000kgとしている。第1調整タンク12Aへの玄米の供給が開始されると、第1精米機13Aが起動するとともに当該第1精米機13Aにおける玄米の初期循環が行われて精米処理が開始される(ステップS105)。
【0029】
第1調整タンク12Aへの玄米の初回の搬送が完了すると、分散機11の分岐弁が切り替えられ(ステップS106)、続いて、第2調整タンク12Bへ玄米の初回の搬送が行われる(ステップS107)。第2調整タンク12Aへの玄米の搬送が開始されると、第2精米機13Bが起動するとともに当該第2精米機13Bにおける玄米の初期循環が行われて精米処理が開始される(ステップS108)。
【0030】
さらに、第2調整タンク12Bへの玄米の初回の搬送が完了すると、分散機11の分岐弁が再び切り替えられ(ステップS109)、続いて、第3調整タンク12Cへ玄米の初回の搬送が行われる(ステップS110)。第3調整タンク12Cへの玄米の搬送が開始されると、第3精米機13Cが起動するとともに当該第3精米機13Cにおける玄米の初期循環が行われて精米処理が開始される(ステップS111)。
【0031】
以上のような制御フローにより、各調整タンク12への初回の玄米の搬送を行い、各精米機13が同時並行して精米処理を実行する。第1調整タンク12Aから第3調整タンク12Cへ順次、初回の玄米の供給が行われている間、各精米機13においては精米処理が継続して実行されているので、貯留量の減った調整タンク12に対しては、2回目の玄米の搬送を行う。2回目以降の玄米の搬送に際しては、図4に示される制御フローに従い、各調整タンク12に設置された中間センサ122の監視結果が参照されるように構成されている。
【0032】
すなわち、各調整タンク12内の中間センサ122の設置位置において、玄米が存在しないことを検出(OFF検出)したか否かが監視され(ステップS112)、2回目以降の玄米の搬送に際しては、先にOFF検出のあった調整タンク12が、玄米の追加搬送先として自動的に設定される(S113)。追加搬送先の調整タンク12が設定されると、分散機11の分岐弁が切り替えられ(ステップS114)、追加搬送先の調整タンク12へ2回目の玄米の追加搬送が行われる(ステップS115)。
【0033】
本実施形態では、前述したように、調整タンク12の最大貯留量(1100kg)に対して、概ね半分(600kg)の貯留量を検知可能な位置に中間センサ122を設置している。したがって、2回目以降の玄米の追加搬送量は500kg以下となるようにしている。なお、中間センサ122のOFF検出は常に監視され記憶されている。したがって、先にOFF検出のあった調整タンク12を優先して2回目以降の玄米の追加搬送が可能となり、原料切れによる精米処理の中断を未然に防ぐことが可能となる。
【0034】
続いて、図5には前述の制御フローに基づいて、4800kgの玄米を精米処理する実施例において、各精米機13が同様の処理能力を有する場合のタイムチャートが図示されている。タイムチャートには、分散機11への制御に基づく各調整タンク12への玄米の搬送態様(図示「ON」は搬送時間)と、各調整タンク12における中間センサ122のOFF検出フラグの検出態様と、各精米機13の精米処理態様(図示「ON」は精米時間)が示されている。
【0035】
また、実施例における調整タンク12への搬送装置20の搬送能力は毎分250kgであり、第1精米機13A、第2精米機13B及び第3精米機13Cの精米処理能力は各精米機13共に毎分45kgとなっている。図中の「1」は初期ロスタイム(概ね1分)であり、主に搬送する玄米を計量する時間である。「2」は分散機11における分岐弁の切り替えに要する時間(概ね1分)、「3」は精米機13における玄米の初期循環時間(概ね1分)、「4」は精米機13における残留玄米の処理時間(概ね3分)である。
【0036】
図5のタイムチャートに示されるように、初回の調整タンク12への玄米の搬送は、各調整タンク12へ順次1000kgの玄米が搬送される。2回目以降の玄米の追加搬送は500kgであり、先に中間センサ122のOFF検出のあった調整タンク12へ優先的に行われる。本実施例では、中間センサ122のOFF検出に基づいて、2回目の玄米の追加搬送が行われ、第1調整タンク12Aから第3調整タンク12Cまで順次玄米の追加搬送が行われている。
【0037】
3回目の玄米の追加搬送のタイミングでは、図中の矢印Aで示されるように、先に第1調整タンク12Aの中間センサ122がOFF検出しているので、この検出結果に基づいて第1調整タンク12Aへ優先して3回目の玄米の追加搬送が行われる。なお、本実施例では残りの300kgの玄米が第1調整タンク12Aへ搬送される。このような制御によって、最終的に約50分で4800kgの玄米の精米処理が完了する。また、最も早く精米処理が終了した第2精米機13Bと、最後に精米処理が終了した第3精米機13Cとの終了時間の時間差は約6分程度しかない。
【0038】
このように、中間センサ122のOFF検出を監視して、その検出結果に基づいて玄米を各調整タンク12に搬送することにより、精米機13の精米処理能力に応じて原料である玄米を切れ目なく搬送・供給することが可能となり、各精米機13における原料切れを防ぐとともに、各精米機13の稼働を平準化して稼働効率を向上させることが可能となる。
【0039】
続いて、図6には、図5に示された実施例と同様の条件下及び制御の下に、第1精米機13Aに何らかのトラブルが生じ、精米処理能力が毎分50kgから毎分30kgに低下してしまった場合のタイムチャートが図示されている。図示されるように、初回の調整タンク12への玄米の搬送は、各調整タンク12へ順次1000kgの玄米が搬送される。2回目以降の玄米の追加搬送は500kgであり、先に中間センサ122のOFF検出のあった調整タンク12へ優先的に行われる。本実施例では、中間センサ122のOFF検出に基づいて、2回目の玄米の追加搬送が行われ、第1調整タンク12Aから第3調整タンク12Cまで順次玄米の追加搬送が行われている。
【0040】
3回目の玄米の追加搬送のタイミングでは、図中の矢印Bで示されるように、先に第2調整タンク12Bの中間センサ122がOFF検出しているので、この検出結果に基づいて第2調整タンク12Bへ優先して3回目の玄米の追加搬送(300kg)が行われる。このような制御によって、最終的に約55分で4800kgの玄米の精米処理が完了する。また、最も早く精米処理が終了した第3精米機13Cと、最後に精米処理が終了した第1精米機13Aとの終了時間の時間差は約5分程度しかない。
【0041】
このように、中間センサ122の検出結果に基づいて、トラブルの発生した第1精米機13Aにおける精米処理量を減じ、各精米機13の処理状況に応じて玄米を分散搬送することで、最終的な精米処理の遅延時間を最小限に抑えることが可能となる。
【0042】
一方、図7には、図6に示された実施例と同様の条件下において、中間センサ122を備えていない従来型の精米設備1によるタイムチャートが図示されている。すなわち、初回の調整タンク12への玄米の搬送は、第1調整タンク12Aから第3調整タンク12Cへ順次1000kgの玄米が搬送され、2回目の玄米の追加搬送も、第1調整タンク12Aから第3調整タンク12Cへ順次500kgの玄米を搬送している。残りの300kgの玄米についても、第1精米機13Aでトラブルが生じて精米処理能力が毎分30kgに低下しているにもかかわらず、中間センサ122を備えていないので、搬送順序に従って、第1調整タンク12Aへと玄米を搬送することとなる。結果的に、4800kgの玄米を精米処理するのに最終的に約65分もの時間を要している。また、第1精米機13Aの精米処理の完了時間と第3精米機13Cの精米処理の完了時間の差は約15分程度、第1精米機13Aの精米処理の完了時間と第2精米機13Bの精米処理の完了時間の差にあっては約20分程度となっている。
【0043】
以上のように、本発明の並行分散搬送システムによる図6のタイムチャートと、従来型の搬送方法による図7のタイムチャートとの比較結果から、中間センサ122の検出結果に基づく制御により、精米処理の遅延時間を10分程度短縮でき、各精米機13における稼働時間の差も10分程度短縮することが可能であることがわかる。このような制御により、例えば、精米処理中に、精米機13の一部にトラブルが発生して処理能力が低下した場合でも、各精米機13の稼働を平準化して稼働効率を向上させ、精米処理の遅延を抑制することが可能となる。
【0044】
(別実施形態)
以上、本発明の穀物の平行分散搬送システムを、精米設備1に適用した実施形態について説明した。しかし、必ずしも前述の実施形態に限定されるものでなく、以下に示す種々の変更が可能である。
【0045】
例えば、前述の実施形態では、図4のステップS112において中間センサ122のOFF検出を監視するように構成したが、これに加えて、下限センサ123のOFF検出も同時に監視し、下限センサ123でOFF検出があった調整タンク12に対して、中間センサ122でOFF検出があった調整タンク12よりも優先して玄米の追加搬送をすることが好ましい。このように構成することにより、原料である玄米を切れ目なく搬送・供給することが可能となり、精米機13における原料切れを確実に防ぐことが可能となる。
【0046】
なお、上記下限センサ123の設置位置については、最大貯留量に対する下限貯留領域の任意の位置に設置することが可能である。具体的には、下限貯留領域として最大貯留量の15~25%の貯留量が検出可能な位置に、下限センサ123を設置することが好ましい。
【0047】
また、前述の実施形態では、図2に示されるように、最大貯留量が1100kgの調整タンク12を使用し、調整タンク12の最大貯留量(1100kg)の概ね半分(600kg)の玄米の貯留を検知可能な位置に中間センサ122を設けた。しかし、必ずしもこのような構成に限定されるものではなく、任意の最大貯留量を有する調整タンク12を使用することが可能である。また、中間センサ122の設置位置についても、最大貯留量に対する中間貯留領域の任意の位置に設置することが可能である。具体的には、中間貯留領域として最大貯留量の45~55%の貯留量が検出可能な位置に、中間センサ122を設置することが好ましい。
【0048】
また、前述の実施形態では、中間センサ122がOFF検出したことを監視する制御構成としたが、必ずしもこのような形態に限定されるものではない。すなわち、中間センサ122の設置位置における玄米の有無を検出できるものであれば、センサの種類やその検出方法は何ら限定されない。
【0049】
また、前述の実施形態では、調整タンク12への初回の玄米の搬送量を1000kg、2回目を500kg、3回目を300kgとしたが、必ずしもこのような搬送量に限定されるものではない。精米処理を行う玄米の全体量や調整タンク12の容量、搬送装置20の搬送能力、精米機13の精米処理能力などを考慮して、適宜、任意の搬送量を設定することができる。
【0050】
前述の実施形態では、本発明の穀物の平行分散搬送システムを、精米設備1に適用した実施形態について説明した。しかし、必ずしも精米設備1に限定されるものではなく、玄米を含む、麦、豆類、コーンなどの穀物を加工する穀物加工設備に適用することができる。例えば、図1に示された玄米タンク10は、穀物原料を貯蔵する原料タンクに相当し、各精米機13は、穀物を加工処理する穀物加工機に相当する。また精米タンク14は、加工処理後の穀物を貯蔵する穀物タンクとしてそれぞれ機能させることができる。
【0051】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の組み合わせ、又は、省略が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 精米設備
10 玄米タンク(原料タンク)
11 分散機(切替え手段)
12 調整タンク
12A 第1調整タンク
12B 第2調整タンク
12C 第3調整タンク
13 精米機(穀物加工機)
13A 第1精米機
13B 第2精米機
13C 第3精米機
14 精米タンク(穀物タンク)
20 搬送装置
121 上限センサ
122 中間センサ
123 下限センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7