(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02K 5/22 20060101AFI20240611BHJP
H02K 11/33 20160101ALI20240611BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
H02K5/22
H02K11/33
B62D5/04
(21)【出願番号】P 2021045039
(22)【出願日】2021-03-18
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 康史
(72)【発明者】
【氏名】吉見 朋晃
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0134170(US,A1)
【文献】特開2019-187079(JP,A)
【文献】特開2016-140150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/22
H02K 11/33
B62D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒部(832)を有するモータケース(830、930)、前記モータケースに固定されるステータ(860)、前記ステータに巻回されるモータ巻線(180、280)、前記ステータに対して相対回転可能に設けられるロータ(865)、および、前記ロータと一体に回転するシャフト(870)を有するモータ(80)と、
前記筒部の軸方向の一方側に設けられるモータフレーム(840)と、
前記モータ巻線への通電制御に係る電子部品が実装される少なくとも1つの基板(31、32)、および、間口が前記モータの軸方向外側を向く少なくとも1つのコネクタ(152、153、252、253)がベース部(51)から立設しているコネクタユニット(50)を有し、前記モータの軸方向の一方側に配置される制御ユニット(10)と、
前記モータケースに固定されている拡張部材(70、935)と、
前記コネクタが挿通される孔部(61)を有し、前記拡張部材に固定されるカバー(60)と、
を備え、
前記拡張部材は、前記モータケースの前記筒部を軸方向に投影した投影領域の外側まで延びて形成されて
おり、
前記モータフレームは、前記筒部の径方向内側に配置されているフレーム部(841)、および、前記フレーム部から前記制御ユニット側に立設されるヒートシンク(845)を有し、
前記拡張部材は、環状に形成されて前記ヒートシンクの外側に配置されている駆動装置。
【請求項2】
車両の操舵装置(8)に適用され、
前記コネクタには、電源と接続されるパワーコネクタ(152、252)、車両通信網(99)と接続される通信コネクタ(152、252)、および、前記操舵装置の内部センサ(93)からの信号を取得する操舵系コネクタ(153、253)が含まれ、
前記モータ巻線は複数であって、前記モータ巻線に対応する構成を系統とすると、
前記パワーコネクタ、前記通信コネクタおよび前記操舵系コネクタは、それぞれ系統毎に設けられており、
前記操舵系コネクタは、前記パワーコネクタおよび前記通信コネクタとは独立して設けられている請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記基板には、前記モータフレームに固定されるメイン基板(31)、および、前記コネクタユニットに固定されるサブ基板(32)が含まれ、
前記メイン基板と前記サブ基板とは、電源端子およびグランド端子であるパワー端子(142、242)を有するパワー系接続部品(141、241)、および、複数の信号端子(147、247)を有する信号系接続部品(146、246)により、素子実装領域の外側で接続される請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記モータフレームには、前記拡張部材の内側にて前記制御ユニット側に立設されるコネクタ接続部(846)が設けられており、
前記コネクタユニットには、前記モータ側に延びる固定部(516)が設けられており、
前記メイン基板には、内側に前記コネクタ接続部が配置されるメイン逃がし凹部(316)が形成されており、
前記サブ基板には、内側に前記固定部が配置されるサブ逃がし凹部(326)が形成されており、
前記モータフレームと前記コネクタユニットとは、前記メイン基板と前記サブ基板との間の中間位置にて固定されている請求項3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記ヒートシンクには、前記メイン基板が固定され
ている請求項3または4に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータと制御ユニット部とが一体となった駆動装置が知られている。例えば特許文献1では、コネクタと一体に形成されたハウジングは、フレームの軸方向の端面にネジ等により固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように、コネクタ一体型のハウジングを、モータケースの径方向内側に嵌め込まれているフレームに固定する場合、コネクタ間口や、フレームとハウジングとの間に形成される空間に配置される基板等をモータ径サイズ内に収める必要がある。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、設計自由度を向上可能な駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の駆動装置は、モータ(80)と、モータフレーム(840)と、制御ユニット(10)と、拡張部材(70)と、カバー(60)と、を備える。モータは、筒部(832)を有するモータケース(830)、モータケースに固定されるステータ(860)、ステータに巻回されるモータ巻線(180、280)、ステータに対して相対回転可能に設けられるロータ(865)、および、ロータと一体に回転するシャフト(875)を有する。モータフレームは、筒部の軸方向の一方側に設けられる。
【0007】
制御ユニットは、少なくとも1つの基板(31、32)、および、コネクタユニット(50)を有し、モータの軸方向の一方側に配置される。基板には、モータ巻線への通電制御に係る電子部品が実装される。コネクタユニットは、間口がモータの軸方向外側を向く少なくとも1つのコネクタ(152、153、252、253)がベース部(51)から立設している。拡張部材は、モータケースに固定される。カバーは、コネクタが挿通される孔部(61)を有し、拡張部材に固定される。拡張部材は、モータケースの筒部を軸方向に投影した投影領域の外側まで延びて形成されている。モータフレームは、筒部の径方向内側に配置されているフレーム部(841)、および、フレーム部から制御ユニット側に立設されるヒートシンク(845)を有する。拡張部材は、環状に形成されてヒートシンクの外側に配置されている。
【0008】
これにより、モータケースの筒部の投影領域の外側まで制御ユニットを拡張可能であるので、基板の実装面積やコネクタユニットの間口面積を大きく確保することができ、設計自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態によるステアリングシステムを示す概略構成図である。
【
図2】第1実施形態による駆動装置を示す側面図である。
【
図6】第1実施形態による駆動装置の分解斜視図である。
【
図7】第1実施形態による駆動装置の分解斜視図である。
【
図8】第1実施形態による拡張部材の斜視図である。
【
図9】第1実施形態による拡張部材の斜視図である。
【
図10】第1実施形態による拡張部材の平面図である。
【
図14】第1実施形態による拡張部材をモータケースに組み付けた状態を示す平面図である。
【
図15】第2実施形態によるモータおよびモータフレームを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、駆動装置を図面に基づいて説明する。以下、複数の実施形態において、実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。第1実施形態による駆動装置を
図1~
図14に示す。
【0011】
図1に示すように、駆動装置1は、モータ80と、ECU10と、を備え、車両のステアリング操作を補助するための操舵装置としての電動パワーステアリング装置8に適用される。
図1は、電動パワーステアリング装置8を備えるステアリングシステム90の全体構成を示すものである。ステアリングシステム90は、操舵部材であるステアリングホイール91、ステアリングシャフト92、ピニオンギア96、ラック軸97、車輪98、および、電動パワーステアリング装置8等を備える。
【0012】
ステアリングホイール91は、ステアリングシャフト92と接続される。ステアリングシャフト92には、操舵トルクを検出するトルクセンサ93が設けられる。トルクセンサ93は、内部にて2系統化されており、それぞれの検出値trq1、trq2は、対応するコネクタ153、253に入力される。ステアリングシャフト92の先端には、ピニオンギア96が設けられる。ピニオンギア96は、ラック軸97に噛み合っている。ラック軸97の両端には、タイロッド等を介して一対の車輪98が連結される。
【0013】
運転者がステアリングホイール91を回転させると、ステアリングホイール91に接続されたステアリングシャフト92が回転する。ステアリングシャフト92の回転運動は、ピニオンギア96によってラック軸97の直線運動に変換される。一対の車輪98は、ラック軸97の変位量に応じた角度に操舵される。
【0014】
電動パワーステアリング装置8は、駆動装置1、および、モータ80の回転を減速してラック軸97に伝える動力伝達部としての減速ギア89等を備える。本実施形態の電動パワーステアリング装置8は、所謂「ラックアシストタイプ」であるが、モータ80の回転をステアリングシャフト92に伝える所謂「コラムアシストタイプ」等としてもよい。
【0015】
図2~
図7に示すように、モータ80は3相ブラシレスモータである。モータ80は、操舵に要するトルクの一部または全部を出力するものであって、図示しないバッテリから電力が供給されることで駆動され、減速ギア89を正逆回転させる。モータ80は、第1モータ巻線180および第2モータ巻線280を有する。
【0016】
以下、第1モータ巻線180の通電制御に係る構成の組み合わせを第1系統、第2モータ巻線280の通電制御に係る構成の組み合わせを第2系統とする。第1系統の構成を主に100番台で付番し、第2系統L2の構成を主に200番台で付番し、第1系統と第2系統とで実質的に同様の構成には下2桁が同じとなるように付番し、適宜説明を省略する。また適宜、第1系統L1に係る構成に添え字の「1」、第2系統L2に係る構成に添え字の「2」を付す。
【0017】
駆動装置1は、モータ80の軸方向の一方側にECU10が一体的に設けられており、いわゆる「機電一体型」である。ECU10は、モータ80の出力軸とは反対側において、シャフト870の軸Axに対して同軸に配置されている。ここで、「同軸」とは、例えば組み付けや設計に係る誤差やズレは許容されるものとする。
【0018】
なお、本実施形態の駆動装置1における「機電一体」とは、モータ80に対し、例えば概ね直方体形状のECUを単に近接させて設けたものとは異なっている。機電一体型とすることで、搭載スペースに制約のある車両において、ECU10とモータ80とを効率的に配置することができる。以下、モータ80の軸方向を駆動装置1の軸方向とみなし、単に「軸方向」とする。
【0019】
モータ80は、モータケース830、モータフレーム840、ステータ860、および、ロータ865等を有する。ステータ860は、モータケース830に固定されており、モータ巻線180、280が巻回される。ロータ865は、ステータ860の径方向内側に設けられ、ステータ860に対して相対回転可能に設けられる。
【0020】
シャフト870は、ロータ865に嵌入され、ロータ865と一体に回転する。シャフト870は、軸受871、872により、モータケース830およびモータフレーム840に回転可能に支持される。シャフト870のECU10側の端部は、モータフレーム840に形成される軸孔849に挿通され、ECU10側に露出する。シャフト870のECU10側の端部には、マグネット875が設けられる。
【0021】
モータケース830は、底部831および筒部832からなる略有底筒状に形成され、開口側にECU10が設けられる。底部831には、軸受871が設けられる。筒部832には、ステータ860が固定される。
【0022】
モータフレーム840は、フレーム部841、ヒートシンク845、および、コネクタ接続部846等を有し、例えばアルミ等の熱伝導性のよい材料で形成される。フレーム部841は、モータケース830の径方向内側に圧入されており、全体として、モータケース830の筒部832を軸方向に投影した投影領域(以下適宜、「モータシルエット」とする。)内に収まっている。フレーム部841の外周には、フランジ部842が形成され、筒部832の内壁に形成される段差部833と当接する。また、フレーム部841のヒートシンク845の外側には、拡張部材接続部843が形成される。
【0023】
ヒートシンク845は、フレーム部841のECU10側に立設される。ヒートシンク845は、モータシルエット内にて、平面視略矩形に形成されている。フレーム部841のヒートシンク845を挟んだ両側には、モータ線取出孔が形成されている。モータ線取出孔には絶縁部材が設けられ、モータ巻線180、280が取り出される箇所にてヒートシンク845の側面には凹部が形成されており、モータ巻線180、280の一端は、モータフレーム840と絶縁した状態にてECU10側に取り出される。モータ巻線180、280は、メイン基板31と接続される。
【0024】
コネクタ接続部846は、モータ巻線180、280が取り出されない側のヒートシンク845の側面の略中央に立設されている。コネクタ接続部846の高さは、ヒートシンク845よりも高い。
【0025】
ECU10は、メイン基板31、サブ基板32、パワー系接続部品141、241、信号系接続部品146、246、コネクタユニット50、および、カバー60等を有する。メイン基板31は、ヒートシンク845の基板固定部847(
図14参照)にねじ319にて固定される。サブ基板32は、コネクタユニット50に固定される。基板31、32は、軸方向に投影したとき、ヒートシンク845より大きく、ヒートシンク845の外側まで延びて形成されている。
【0026】
メイン基板31のヒートシンク845側の面には、インバータを構成するスイッチング素子やマイコン等が実装され、ヒートシンク845に放熱可能に設けられている。メイン基板31のモータ80と反対側の面には、コンデンサ等の部品が実装される。なお、基板31、32に実装されている素子の一部は記載を省略した。メイン基板31には、コネクタ接続部846との干渉を避けるための逃がし凹部316が形成されている。
【0027】
サブ基板32には、フィルタ回路を構成するチョークコイルおよびコンデンサ等の部品が実装される。サブ基板32には、後述するコネクタユニット50の固定部516との干渉を避けるための逃がし凹部326が形成されている。本実施形態では、基板31、32をえぐり、逃がし凹部316、326を形成し、コネクタユニット50をモータフレーム840に直接締結している。
【0028】
メイン基板31とサブ基板32とは、パワー系接続部品141、241、および、信号系接続部品146、246で接続される。第1パワー系接続部品141は、パワー端子142、端子保持部143、および、ピン144を有する。パワー端子142は2つであって、一方が電源端子、他方がグランド端子である。パワー端子142は、端子保持部143に保持され、一端がメイン基板31と接続され、他端がサブ基板32と接続される。ピン144は、端子保持部143の両側において、メイン基板31側に突出して設けられ、メイン基板31に固定されることで第1パワー系接続部品141を位置決めする。第2パワー系接続部品241は、パワー端子242、端子保持部243、および、ピン244を有する。
【0029】
パワー系接続部品141、241は、スイッチング素子等の各種素子が実装される領域の外側である外側領域において、同一辺に沿い、逃がし凹部316、326を挟んで両側に配置されている。パワー系接続部品141、241は、基板中心線Cに対して線対称に配置されている。
【0030】
第1信号系接続部品146は、複数の信号端子147、端子保持部148、および、ピン149を有する。信号端子147は、端子保持部148に保持され、一端がメイン基板31と接続され、他端がサブ基板32と接続される。ピン149は、端子保持部148の両端において、メイン基板31側に突出して設けられ、メイン基板31に固定されることで第1信号系接続部品146を位置決めする。第2信号系接続部品246は、複数の信号端子247、端子保持部248、および、ピン249を有する。信号端子147、247は、トルクセンサ93および車両通信網99との信号伝達に用いられる。端子数は、信号数等に応じ、任意に設定可能である。
【0031】
信号系接続部品146、246は、各種素子が実装される領域の外側である外側領域において、パワー系接続部品141、241が設けられるのと反対側の辺に沿い、逃がし凹部316、326を挟んで両側に配置されている。信号系接続部品146、246は、基板中心線Cに対して線対称に配置されている。
【0032】
コネクタユニット50は、ベース部51、車両系コネクタ152、252、および、操舵系コネクタ153、253を有する。ベース部51は、平面視略矩形に形成される。ベース部51のモータ80と反対側の面には、外縁に沿って溝部511が形成されている。また、ベース部51には、固定部516が形成される。固定部516には、スルーボルト519が挿通され、モータフレーム840のコネクタ接続部846に螺着される。これにより、コネクタユニット50がモータフレーム840に固定される。モータフレーム840のコネクタ接続部846とコネクタユニット50の固定部516との軸方向における接続位置は、メイン基板31とサブ基板32との間である。
【0033】
コネクタ152、153、252、253は、間口が軸方向外側を向いて形成されている。車両系コネクタ152、252は、図示しない車両電源およびグランドと接続されるパワーコネクタと、CAN(Controller Area Network)等である車両通信網99(
図1参照)と接続される通信コネクタとが一体になった一体型のハイブリッドコネクタである。操舵系コネクタ153、253は、トルクセンサ93と接続される。
図1では、車両通信網99を「CAN」と記載した。
【0034】
カバー60は、略有底筒状に形成され、内部に基板31、32およびヒートシンク845等を収容する。カバー60の底部には、略矩形の孔部61が形成される。孔部61には、コネクタ152、153、252、253が挿通される。孔部61は端部611が内側に折り曲げられている。端部611は、接着材等である接着部材が塗布されたコネクタユニット50の溝部511に挿入される。これにより、コネクタユニット50とカバー60との間からの水滴や埃の侵入を防ぐことができる。
【0035】
本実施形態では、車両系コネクタ152、252および操舵系コネクタ153、253の4つの間口を設けており、間口面積が大きい。そこで本実施形態では、モータシルエットから四隅が張り出す形状の拡張部材70を設けることで、モータシルエットの外側の領域を利用可能にしている。
【0036】
図8~
図14に示すように、拡張部材70は、基部71、環状凸部72、カバー挿入溝73、および、固定部74等を有し、樹脂等にて一体に形成される。拡張部材70は、全体として環状に形成され、モータフレーム840のフレーム部841のECU10側であって、ヒートシンク845の径方向外側に配置される。換言すると、ヒートシンク845は、拡張部材70の内周側にて、ECU10側に突出して形成されている。拡張部材70の外縁の少なくとも一部は、モータシルエットよりも外側に位置している。
【0037】
環状凸部72は、基部71のモータ80側の面に内周面に沿うように突出して設けられ、モータケース830の筒部832に挿入される。モータケース830の段差部833に接着材等である接着部材を塗布した状態にて環状凸部72を筒部832に挿入することで、モータケース830と拡張部材70との間からの水滴や埃等の侵入を防ぐことができる。
【0038】
拡張部材70のモータ80と反対側の面には、カバー挿入溝73が外縁に沿って形成される。カバー60の筒部65には、フランジ部66が形成されており、フランジ部66よりも先端側が、接着材等である接着部材が塗布されたカバー挿入溝73に挿入される。これにより、拡張部材70とカバー60との間からの水滴や埃等の侵入を防ぐことができる。固定部74は、拡張部材70の内周壁から径方向内側に突出して形成される。固定部74には、カラー78が挿入され、ねじ79にてフレーム部841に固定される。
【0039】
駆動装置1の組み付けを説明する。まず、モータケース830にモータフレーム840が組み付けられた状態のモータAssyに、拡張部材70を組み付け、ねじ79にてモータフレーム840に固定する。
【0040】
次に、接続部品141、146、241、246が組み付けられたメイン基板31を、ねじ319にてモータフレーム840に固定する。このとき、ヒートシンク845に放熱させる箇所には、適宜放熱ゲルを塗布しておく。次に、サブ基板32が組み付けられたコネクタユニット50をスルーボルト519にてモータフレーム840に固定し、最後にカバー60をかぶせる。
【0041】
以上説明したように、駆動装置1は、モータ80と、モータフレーム840と、ECU10と、拡張部材70と、カバー60と、を備える。モータ80は、筒部832を有するモータケース830、モータケース830に固定されるステータ860、ステータ860に巻回されるモータ巻線180、280、ステータ860に対して相対回転可能に設けられるロータ865、および、ロータ865と一体に回転するシャフト870を有する。モータフレーム840は、筒部832の軸方向の一方側に設けられる。
【0042】
ECU10は、モータ巻線180、280の通電制御に係る電子部品が実装される少なくとも1つの基板31、32、および、コネクタユニット50を有し、モータ80の軸方向の一方側に配置される。コネクタユニット50は、間口がモータ80の軸方向外側を向く少なくとも1つのコネクタ152、153、252、253がベース部51から立設している。
【0043】
拡張部材70は、モータケース830に固定されている。カバー60は、コネクタ152、153、252、253が挿通される孔部61を有し、拡張部材70に固定される。基板31、32および拡張部材70は、モータケース830の筒部832を軸方向に投影した投影領域の外側まで延びて形成される。
【0044】
本実施形態では、拡張部材70を設けることで、拡張部材70を設けない場合と比較し、ECU10をモータシルエットの外側まで拡張可能であるので、基板31、32の実装面積やコネクタ152、153、252、253の間口面積を大きく確保することができる。これにより、基板やコネクタの設計自由度を高めることができる。
【0045】
駆動装置1は、電動パワーステアリング装置8に適用される。コネクタには、電源と接続されるパワーコネクタ、車両通信網99と接続される通信コネクタ、および、電動パワーステアリング装置8の内部センサであるトルクセンサ93からの信号を取得する操舵系コネクタ153、253が含まれている。本実施形態では、パワーコネクタと通信コネクタとは一体化された車両系コネクタ152、252となっているが、パワーコネクタと通信コネクタとを分けてもよい。
【0046】
モータ巻線180、280は、複数(本実施形態は2組)であって、モータ巻線180、280に対応する構成を系統とすると、車両系コネクタ152、252および操舵系コネクタ153、253は、それぞれ系統毎に設けられている。また、操舵系コネクタ153、253は、車両系コネクタ152、252とは独立して設けられている。
【0047】
本実施形態では、拡張部材70を設けることで、間口面積を確保可能であるので、電動パワーステアリング装置8の内部での接続に用いられる操舵系コネクタ153、253と、電動パワーステアリング装置8の外部との接続に用いられる車両系コネクタ152、252とを系統毎に分けて設けることができる。
【0048】
基板には、モータフレーム840に固定されるメイン基板31、および、コネクタユニット50に固定されるサブ基板32が含まれる。メイン基板31とサブ基板32とは、電源端子およびグランド端子であるパワー端子142、242を有するパワー系接続部品141、241、および、複数の信号端子147、247を有する信号系接続部品146、246により、素子実装領域の外側で接続される。本実施形態では、2枚の基板31、32を設けることで、実装面積を大きく確保することができる。また、パワー系接続部品141、241および信号系接続部品146、246を用い、各種電子部品が実装されている領域である素子実装領域の外側で基板31、32を接続することで、基板31、32の素子実装領域を大きく確保することができる。
【0049】
モータフレーム840には、拡張部材70の内側にてECU10側に立設されるコネクタ接続部846が設けられている。コネクタユニット50には、モータ80側に延びる固定部516が設けられている。メイン基板31には、内側にコネクタ接続部846が配置される逃がし凹部316が形成されている。サブ基板32には、内側に固定部516が配置される逃がし凹部326が形成されている。モータフレーム840とコネクタユニット50とは、軸方向におけるメイン基板31とサブ基板32との中間位置にて固定される。これにより、基板31、32の実装面積を大きく確保しつつ、コネクタユニット50をモータフレーム840に適切に固定することができる。
【0050】
モータフレーム840は、筒部832の径方向内側に配置されているフレーム部841、および、フレーム部841からECU10側に立設され、メイン基板31が固定されるヒートシンク845を有する。拡張部材70は、環状に形成されヒートシンク845の外側に配置され、フレーム部841に固定されている。これにより、拡張部材70が適切にモータフレーム840に固定される。また、メイン基板31に実装された電子部品の少なくとも一部の熱をヒートシンク845側に放熱させることができる。
【0051】
実施形態では、電動パワーステアリング装置8が「操舵装置」、ECU10が「制御ユニット」、メイン基板31およびサブ基板32が「基板」、車両系コネクタ152、252が「パワーコネクタ」および「通信コネクタ」、操舵系コネクタ153、253が「コネクタ」、トルクセンサ93が「内部センサ」、逃がし凹部316が「メイン逃がし凹部」、逃がし凹部326が「サブ逃がし凹部」に対応する。ここで、2枚の基板を区別すべく、便宜上「メイン」、「サブ」としているが、必ずしも、機能的にメイン、サブの関係でなくてもよい。
【0052】
(第2実施形態)
第2実施形態を
図15に示す。本実施形態では、主にモータケース930が上記実施形態と異なるので、この点を中心に説明する。モータケース930は、底部931および筒部932からなる略有底筒状に形成され、開口側にECU10(
図15中では不図示)が設けられる。底部931には、軸受871が設けられる。筒部932には、ステータ860が固定される。本実施形態では、拡張部材としての拡張部935が、筒部932の開口側に一体に設けられている。このように構成しても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0053】
(他の実施形態)
上記実施形態では、車両電源およびグランドと接続されるパワーコネクタと、車両通信網と接続される通信コネクタとが一体となっている。他の実施形態では、パワーコネクタと通信コネクタとを別体としてもよい。また、コネクタの種類や数は任意に設定可能であって、間口をそれぞれ別々に設けてもよいし、任意の組み合わせで設けてもよい。また、上記実施形態では、コネクタ間口を系統毎に分けて設けている。他の実施形態では、コネクタ間口を系統で分けず、複数系統にて1つの間口を共用するようにしてもよい。
【0054】
上記実施形態では、トルクセンサが内部センサに対応している。他の実施形態では、ECUの外部であって、操舵装置内部のセンサであれば、トルクセンサに限らず、例えばステアリングセンサ等であってもよい。
【0055】
上記実施形態では、2組のモータ巻線が設けられ、系統数が2である。他の実施形態では、系統数は1または3以上であってもよい。上記実施形態では、コネクタが系統毎に設けられている。他の実施形態では、系統とコネクタとが対応していなくてもよい。
【0056】
上記実施形態では、メイン基板およびサブ基板の2枚の基板が設けられている。他の実施形態では、基板は1枚または3枚以上であってもよく、少なくとも1枚が、モータシルエットの外側まで延びて形成されていればよい。
【0057】
上記実施形態では、操舵装置は電動パワーステアリング装置である。他の実施形態では、操舵装置は、ステアバイワイヤ装置であってもよく、駆動装置は、車輪を転舵させる転舵装置として用いてもよいし、ハンドルに反力を付与する反力装置として用いてもよい。また、駆動装置を操舵装置以外の装置に適用してもよい。以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0058】
1・・・駆動装置 8・・・電動パワーステアリング装置(操舵装置)
10・・・ECU(制御ユニット)
31・・・メイン基板(基板) 32・・・サブ基板(基板)
50・・・コネクタユニット
151、251・・・車両系コネクタ(コネクタ、パワーコネクタ、通信コネクタ)
152、252・・・操舵系コネクタ(コネクタ)
60・・・カバー 70・・・拡張部材
80・・・モータ 180、280・・・モータ巻線
830、930・・・モータケース 832・・・筒部
840・・・モータフレーム 935・・・拡張部(拡張部材)