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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】ロータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/32 20060101AFI20240611BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20240611BHJP
   H02K 1/22 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
H02K1/32 B
H02K9/19 B
H02K1/22 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021047467
(22)【出願日】2021-03-22
(65)【公開番号】P2022146481
(43)【公開日】2022-10-05
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】池本 正幸
(72)【発明者】
【氏名】塚本 貴浩
(72)【発明者】
【氏名】小田木 隆浩
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-097220(JP,A)
【文献】特開2017-017956(JP,A)
【文献】特開2016-146704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/32
H02K 9/19
H02K 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びるシャフト挿入孔と、内部に冷却用冷媒が流れる第1流路とを含むロータコアと、
前記シャフト挿入孔に挿入される中空のロータシャフトと、
前記ロータシャフトに挿入され、内部に前記冷却用冷媒が流れる第2流路を有するとともに前記冷却用冷媒が吐出される冷媒吐出孔を含む冷媒供給管と、を備え、
前記ロータシャフトは、前記ロータシャフトの外部に前記冷却用冷媒を排出することにより前記ロータコアの前記第1流路に前記冷却用冷媒を導入するシャフト孔と、前記ロータシャフトの内周面から突出するように設けられ、前記ロータシャフトの前記内周面と前記冷媒供給管の外周面との間における前記冷却用冷媒の前記軸方向の移動を堰き止める堰部と、を含み、
前記ロータシャフトにおいて前記ロータコアが設けられる前記軸方向の範囲内の位置に前記シャフト孔が配置されるとともに、前記軸方向の一方側から、前記堰部、前記シャフト孔、前記冷媒吐出孔の順に配置されており、
前記ロータシャフトに設けられる前記堰部は、前記軸方向において、前記軸方向の一方側の前記ロータコアの端面が設けられる位置の近傍の位置に配置されている、ロータ。
【請求項2】
前記堰部は、前記冷媒供給管の前記冷媒吐出孔に対して前記軸方向の他方側には設けられておらず、前記冷媒吐出孔および前記シャフト孔に対して前記軸方向の一方側において前記ロータシャフトと一体的に形成されている、請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記冷媒供給管は、回転しながら前記冷却用冷媒を吐出するように構成されており、
前記冷媒供給管の前記冷媒吐出孔に対して前記堰部が設けられていない前記軸方向の他方側において前記ロータシャフトの内部に設けられ、前記冷媒供給管の回転を支持するとともに前記軸方向の他方側への前記冷却用冷媒の移動を堰き止めるように設けられる軸受部をさらに備える、請求項に記載のロータ。
【請求項4】
前記ロータコアは、前記軸受部に対して前記軸方向の一方側に設けられており、
前記冷媒供給管の前記冷媒吐出孔は、前記軸方向において、前記ロータコアが設けられる前記軸方向の範囲内の位置に配置されている、請求項に記載のロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷却用冷媒を吐出させる冷媒吐出孔を含む冷媒供給管を備えるロータが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に記載のロータは、ロータコアと、ロータコアに篏合されるロータシャフトとを備える。また、ロータは、ロータシャフトの内部の中空部を通ってロータの軸方向に沿って延びる冷媒供給シャフト(冷媒供給管)を備える。冷媒供給シャフトは、冷媒供給シャフトの冷媒吐出口(冷媒吐出孔)からロータシャフトの内部に液体冷媒(冷却用冷媒)を吐出する。ロータシャフトの内部に吐出された液体冷媒は、ロータの回転時の遠心力によりロータシャフトの冷媒流入口に流入する。そして、ロータシャフトの冷媒流入口に流入した液体冷媒は、ロータコア内の冷却流路に導入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-146704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1に記載されているロータにおいて、冷媒吐出口(冷媒吐出孔)から吐出された液体冷媒(冷却用冷媒)の一部が、ロータシャフトの冷媒流入口に流入せずに、冷媒流入口に対して冷媒吐出口とは反対側に流れてしまう場合がある。この場合、ロータシャフトの冷媒流入口に流入されない液体冷媒はロータコアの内部に導入されないため、ロータコアの冷却効率が低くなることが考えられる。したがって、ロータコアの冷却効率を向上させるために、冷媒供給シャフト(冷媒供給管)からロータシャフトの内部に吐出された冷却用冷媒を、ロータシャフトの冷媒流入口(シャフト孔)に効率良く流入させることが可能なロータが望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、冷媒供給管からロータシャフトの内部に吐出された冷却用冷媒を、ロータシャフトのシャフト孔に効率良く流入させることが可能なロータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面におけるロータは、軸方向に延びるシャフト挿入孔と、内部に冷却用冷媒が流れる第1流路とを含むロータコアと、シャフト挿入孔に挿入される中空のロータシャフトと、ロータシャフトに挿入され、内部に冷却用冷媒が流れる第2流路を有するとともに冷却用冷媒が吐出される冷媒吐出孔を含む冷媒供給管と、を備え、ロータシャフトは、ロータシャフトの外部に冷却用冷媒を排出することによりロータコアの第1流路に冷却用冷媒を導入するシャフト孔と、ロータシャフトの内周面から突出するように設けられ、ロータシャフトの内周面と冷媒供給管の外周面との間における冷却用冷媒の軸方向の移動を堰き止める堰部と、を含み、ロータシャフトにおいてロータコアが設けられる軸方向の範囲内の位置にシャフト孔が配置されるとともに、軸方向の一方側から、堰部、シャフト孔、冷媒吐出孔の順に配置されており、ロータシャフトに設けられる堰部は、軸方向において、軸方向の一方側のロータコアの端面が設けられる位置の近傍の位置に配置されている
【0008】
この発明の一の局面によるロータでは、上記のように、軸方向の一方側から、堰部、シャフト孔、冷媒吐出孔の順に配置されている。これにより、冷媒吐出孔から吐出された冷却用冷媒のうちシャフト孔に流入されずに堰部側に流れた一部を、堰部により堰き止るとともにシャフト孔側に戻すことができる。その結果、堰部が設けられていない場合に比べて、冷媒供給管からロータシャフトの内部に吐出された冷却用冷媒を、ロータシャフトのシャフト孔に効率良く流入させることができる。
【0009】
また、ロータシャフトにおいてロータコアが設けられる軸方向の範囲内の位置にシャフト孔が配置されることによって、シャフト孔が上記範囲外に設けられる場合に比べて、シャフト孔とロータコアの内部に設けられる第1流路との間の距離を容易に小さくすることができる。これにより、冷却用冷媒をシャフト孔を介して第1流路に効率的に導入することができる。さらに、上記のように、堰部、シャフト孔、冷媒吐出孔の順に配置されることによりロータシャフトのシャフト孔に冷却用冷媒が効率良く流入されるので、より効率的に冷却用冷媒を第1流路に導入することができる。その結果、冷却用冷媒によりロータコアをより効率的に冷却することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、冷媒供給管からロータシャフトの内部に吐出された冷却用冷媒を、ロータシャフトのシャフト孔に効率良く流入させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態による回転電機の構成を示す平面図である。
図2】一実施形態による回転電機の軸方向に沿った断面図である。
図3】一実施形態によるロータの平面的な断面図である。
図4】一実施形態による油面内径と遠心油圧との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1図4を参照して、本実施形態によるロータ1について説明する。
【0014】
本願明細書では、「軸方向」とは、ロータ1の回転軸線Cに沿った方向を意味し、図中のZ方向を意味する。また、「径方向」とは、ロータ1の径方向(R1方向またはR2方向)を意味し、「周方向」は、ロータ1の周方向(E1方向またはE2方向)を意味する。
【0015】
図1に示すように、ロータ1は、ステータ2と共に回転電機100を構成する。また、ロータ1およびステータ2は、それぞれ、円環状に形成されている。そして、ロータ1は、ステータ2の径方向内側に対向して配置されている。すなわち、本実施形態では、回転電機100は、インナーロータ型の回転電機として構成されている。また、ロータ1は、ロータシャフト3を備える。ロータシャフト3は、ロータ1(後述するロータコア4)の径方向内側に配置されている。ロータシャフト3は、ギア等の回転力伝達部材を介して、エンジンや車軸等に接続されている。たとえば、回転電機100は、モータ、ジェネレータ、または、モータ兼ジェネレータとして構成されており、車両に搭載されるように構成されている。
【0016】
また、ロータ1は、ロータコア4を備える。ロータコア4は、複数の電磁鋼板4a(図3参照)が積層され、電磁鋼板4aの積層方向(Z方向)に延びる磁石挿入孔10aを含む。また、ロータ1(ロータコア4)は、永久磁石5を含む。永久磁石5は、ロータコア4の磁石挿入孔10aに挿入(配置)されている。
【0017】
磁石挿入孔10aは、ロータコア4に複数(本実施形態では20個)設けられている。すなわち、回転電機100は、埋込永久磁石型モータ(IPMモータ:Interior Permanent Magnet Motor)として構成されている。
【0018】
ロータコア4は、周方向に隣り合う一対の磁石挿入孔10aを含む磁極を形成する複数の磁極形成部10を含む。磁極形成部10は、ロータコア4において、回転軸線C方向から見て、周方向に沿って、等角度間隔に10個設けられている。また、磁極形成部10における一対の磁石挿入孔10aは、径方向内側(R1側)に凸のV字状に配置されている。
【0019】
図1に示すように、ロータコア4は、回転軸線C回りに回転される。また、ロータコア4は、軸方向に延びるシャフト挿入孔4cを含む。シャフト挿入孔4cは、ロータコア4の軸方向から見て(Z1方向側から見て)、ロータコア4の中央部に設けられている。また、ロータシャフト3は、シャフト挿入孔4cに挿入されている。ロータシャフト3が回転することにより、ロータコア4にロータシャフト3の回転力が伝達され、ロータコア4が回転するように構成されている。
【0020】
また、図2に示すように、ロータ1は、ロータシャフト3の回転を支持するシャフト軸受部7を含む。シャフト軸受部7は、ロータシャフト3の軸方向の両側の端部近傍に設けられている。
【0021】
また、ロータコア4は、内部に冷却用オイル90が流れる冷却流路40を含む。冷却流路40は、ロータコア4において複数(本実施形態では10個)設けられている。冷却流路40は、径方向に沿って延びる径方向流路41(図2参照)と、径方向流路41に接続され、方向に沿って延びる軸方向流路42と、を含む。冷却用オイル90は、後述するオイルシャフト6、ロータシャフト3、径方向流路41、軸方向流路42の順で流通し、ロータコア4の軸方向一方側(Z1側)の端面4dおよび軸方向他方側(Z2側)の端面4eの各々に設けられる軸方向流路42の開口部42aを介してロータコア4の外部に排出される。冷却流路40を流通する冷却用オイル90は、電磁鋼板4aを介した伝熱効果により永久磁石5(ロータコア4)を冷却する。冷却流路40は、周方向において、隣り合う磁極形成部10同士の間に設けられている。軸方向流路42は、磁極形成部10よりも径方向内側に配置されている。なお、冷却流路40は、特許請求の範囲の「第1流路」の一例である。
【0022】
径方向流路41は、階段状に形成されている。その結果、径方向流路41が階段状に形成されていない(径方向に直線的に延びている)場合に比べて、電磁鋼板4aごとにおいて肉抜きされる量を低減することができる。その結果、電磁鋼板4aにおいて、肉抜き部に対して径方向外側の部分と径方向内側の部分とを接続する部分が縮小されるので、ロータ1の回転時におけるロータ1自体の遠心力による応力が集中するのを防止することが可能である。また、径方向流路41は、径方向内側から径方向外側にかけて二股に分岐されている。また、径方向流路41は、ロータコア4において、軸方向の中央部に設けられている。
【0023】
また、図1に示すように、ステータ2は、ステータコア2aと、ステータコア2aに巻回(配置)されたコイル2bとを含む。ステータコア2aは、ロータコア4の径方向外側に配置されている。ステータコア2aは、たとえば、複数の電磁鋼板(珪素鋼板)が軸方向に積層されており、磁束を通過可能に構成されている。コイル2bは、外部の電源部に接続されており、電力(たとえば、3相交流の電力)が供給されるように構成されている。そして、コイル2bは、電力が供給されることにより、磁界を発生させるように構成されている。また、ロータ1およびロータシャフト3は、コイル2bに電力が供給されない場合でも、エンジン等の駆動に伴って、ステータ2に対して回転するように構成されている。なお、図1では、コイル2bの一部のみを図示しているが、コイル2bは、ステータコア2aの全周に亘って配置されている。
【0024】
永久磁石5は、軸方向に直交する断面が長方形形状を有している。たとえば、永久磁石5は、磁化方向(着磁方向)が短手方向となるように構成されている。また、磁石挿入孔10aには、磁石挿入孔10aに配置されている永久磁石5を固定する図示しない樹脂材が配置されている。
【0025】
また、図2に示すように、ロータシャフト3は、筒状に形成されている。すなわち、ロータシャフト3は、中空構造を有している。
【0026】
また、ロータ1は、ロータシャフト3に挿入されるオイルシャフト6を備える。オイルシャフト6は、ロータシャフト3の挿入孔3aを介してロータシャフト3の内部に挿入されている。オイルシャフト6は、内部に冷却用オイル90が流れるオイル流路6aを含む。また、オイルシャフト6は、冷却用オイル90が吐出される吐出孔6bを含む。すなわち、オイル流路6aを流通する冷却用オイル90が吐出孔6bから吐出される。吐出孔6bは、オイルシャフト6のうち軸方向における所定の位置に設けられている。なお、オイルシャフト6および冷却用オイル90は、それぞれ、特許請求の範囲の「冷媒供給管」および「冷却用冷媒」の一例である。また、オイル流路6aおよび吐出孔6bは、それぞれ、特許請求の範囲の「第2流路」および「冷媒吐出孔」の一例である。
【0027】
オイルシャフト6は、図示しないオイルポンプに取り付けられている。オイルポンプは、オイルシャフト6のオイル流路6aに冷却用オイル90を送るように構成されている。また、オイルシャフト6は、Z2側の端部が保持部6dにより保持されている。
【0028】
また、ロータシャフト3は、シャフト孔3bを含む。シャフト孔3bは、複数の冷却流路40ごとに1つずつ設けられている。シャフト孔3bは、ロータシャフト3の外部に冷却用オイル90を排出することによりロータコア4の冷却流路40(径方向流路41)に冷却用オイル90を導入する。具体的には、シャフト孔3bは、径方向流路41と径方向に対向するように設けられている。詳細には、シャフト孔3bは、ロータコア4の内周面であるコア内周面4bに設けられている径方向流路41の導入口41aと径方向に対向するように設けられている。ロータシャフト3の内周面であるシャフト内周面3cとオイルシャフト6の外周面6eとの間における冷却用オイル90は、ロータ1の回転時における遠心力により、シャフト孔3bに流入されるとともにシャフト孔3bからロータシャフト3の外部に排出される。なお、シャフト内周面3cは、特許請求の範囲の「内周面」の一例である。
【0029】
ここで、図3に示すように、ρを冷却用オイル90の密度、r1を冷却用オイル90の油面内径、r2をロータシャフト3の内径、ωをロータ1の角速度とすると、ロータ1の回転時における遠心力に起因する冷却用オイル90の圧力(遠心油圧P)は、下記の式(1)により表される。なお、図3では、簡略化のために、シャフト孔3b(径方向流路41)が1つのみ図示されているが、実際は、シャフト孔3b(径方向流路41)は磁極形成部10と同数(すなわち10個)設けられている。
【数1】
【0030】
上記式(1)に基づき、図4に示すように、油面内径r1が小さい程、遠心油圧Pが大きくなる。すなわち、遠心油圧Pは、冷却用オイル90の油面高さ((r2-r1)/2)が大きい程、大きくなる。また、下記の式(2)に基づき、遠心油圧Pの変化量(ΔP)が大きい程、シャフト孔3bから流出する冷却用オイル90の流量(Q)が大きくなる。なお、式(2)のαおよびAは、それぞれ、流量係数(解析結果により決定)およびシャフト孔3bの断面積である。
【数2】
【0031】
また、図2に示すように、ロータシャフト3は、ロータシャフト3のシャフト内周面3cから突出するように設けられる堰部3dを含む。堰部3dは、シャフト内周面3cとオイルシャフト6の外周面6eとの間における冷却用オイル90の軸方向の移動を堰き止めるように設けられている。具体的には、堰部3dは、冷却用オイル90が堰部3dの反対側(Z1側)に移動するのを規制する。堰部3dは、ロータシャフト3のシャフト内周面3cに沿って周状(円環状)に設けられている。
【0032】
堰部3dは、鍛造加工により形成されている。具体的には、堰部3dは、ロータシャフト3の径方向内側の肉が軸方向の両側から寄せられることにより形成されている。
【0033】
ここで、ロータ1では、ロータシャフト3においてロータコア4が設けられる軸方向の範囲内の位置にシャフト孔3bが配置されるとともに、軸方向の一方側(Z1側)から、堰部3d、シャフト孔3b、吐出孔6bの順に配置されている。言い換えると、軸方向において、シャフト孔3bは、堰部3dが配置される位置と、吐出孔6bが配置される位置との間の位置に配置されている。
【0034】
これにより、吐出孔6bから吐出された冷却用オイル90のうちシャフト孔3bに流入されずに堰部3d側に流れた一部を、堰部3dにより堰き止るとともにシャフト孔3b側に戻すことができる。その結果、堰部3dが設けられていない場合に比べて、オイルシャフト6からロータシャフト3の内部に吐出された冷却用オイル90を、ロータシャフト3のシャフト孔3bに効率良く流入させることができる。
【0035】
また、ロータシャフト3においてロータコア4が設けられる軸方向の範囲内の位置にシャフト孔3bが配置されることによって、シャフト孔3bが上記範囲外に設けられる場合に比べて、シャフト孔3bとロータコア4の内部に設けられる冷却流路40との間の距離を容易に小さくすることができる。これにより、冷却用オイル90をシャフト孔3bを介して冷却流路40に効率的に導入することができる。さらに、上記のように、堰部3d、シャフト孔3b、吐出孔6bの順に配置されることによりロータシャフト3のシャフト孔3bに冷却用オイル90が効率良く流入されるので、より効率的に冷却用オイル90を冷却流路40に導入することができる。その結果、冷却用オイル90により永久磁石5(ロータコア4)をより効率的に冷却することができる。
【0036】
また、軸方向において、シャフト孔3bが堰部3dと吐出孔6bとの間に配置されているので、シャフト孔3bが堰部3dと吐出孔6bとの間に配置されていない場合に比べて、堰部3dに到達する冷却用オイル90の量を低減することが可能である。その結果、冷却用オイル90が堰部3dを乗り越えて流通するのを防止することができるので、より多くの冷却用オイル90をシャフト孔3bに流入させることが可能である。
【0037】
また、堰部3dは、軸方向において、軸方向の一方側(Z1側)のロータコア4の端面4dが設けられる位置の近傍の位置に配置されている。なお、端面4dが設けられる位置の近傍とは、軸方向において、端面4dが設けられる位置と重なる位置と、端面4dが設けられる位置の付近の位置との両方を含む意味である。
【0038】
これにより、堰部3dが、ロータコア4の端面4dの軸方向の位置の近傍から軸方向の他方側(Z2側)に離間して設けられる場合に比べて、冷却用オイル90がロータシャフト3内において貯められる軸方向の範囲(吐出孔6bと堰部3dとの間の軸方向範囲)と、ロータコア4が設けられる軸方向範囲との重なり量を大きくすることができる。その結果、冷却用オイル90により、ロータシャフト3を介して永久磁石5(ロータコア4)をより効率的に冷却することができる。
【0039】
また、堰部3dが、ロータコア4の端面4dの軸方向の位置の近傍から軸方向の一方側(Z1側)に離間して設けられる場合に比べて、冷却用オイル90がロータシャフト3内において貯められる軸方向の範囲(吐出孔6bと堰部3dとの間の軸方向範囲)を小さくすることができる。その結果、ロータシャフト3内において冷却用オイル90の油面高さ((r2-r1)/2)を大きくすることができる。ここで、シャフト孔3bに導入される冷却用オイル90の油圧(遠心油圧P)は、油面高さが大きい程大きくなるので、上記油圧を大きくすることができる。その結果、より効率的にシャフト孔3bに冷却用オイル90を導入することができるので、ロータコア4の冷却流路40に冷却用オイル90をより一層効率的に導入することができる。また、ロータシャフト3内に溜められる冷却用オイル90の量を比較的少なくすることができるので、ロータ1の回転時におけるイナーシャ(慣性モーメント)が増大するのを防止することができる。
【0040】
また、堰部3dは、軸方向に所定の厚みtを有している。そして、ロータコア4の端面4dは、軸方向において、堰部3dが設けられる軸方向の範囲内の位置に配置されている。詳細には、ロータコア4の端面4dは、軸方向において、堰部3dの軸方向他方側(Z2側)の端部3eと、堰部3dの中央との間の位置に配置されている。言い換えると、ロータコア4の端面4dは、軸方向において、堰部3dの軸方向他方側(Z2側)の端部3e寄りに配置されている。
【0041】
また、堰部3dは、軸方向において、ロータシャフト3の中央部近傍の位置に配置されている。なお、中央部近傍とは、中央部と、中央部の付近との両方を含む意味である。これにより、堰部3dの軸方向一方側および軸方向他方側の各々に設けられるロータシャフト3の部分の長さを比較的小さくすることができる。その結果、鍛造加工に用いられる治具の軸方向両側におけるストローク量(治具を軸方向に移動させることが可能な距離)を均一に近づけることができる。
【0042】
また、堰部3dは、オイルシャフト6の吐出孔6bに対して軸方向の他方側(Z2側)には設けられておらず、吐出孔6bおよびシャフト孔3bに対して軸方向の一方側(Z1側)においてロータシャフト3と一体的に形成されている。具体的には、堰部3dは、鍛造加工によりロータシャフト3の一部が変形して形成された部分である。
【0043】
これにより、堰部3dがオイルシャフト6の吐出孔6bに対して軸方向の他方側(Z2側)にも設けられている場合に比べて、ロータシャフト3の構造を簡素化することができる。また、鍛造加工等によりロータシャフト3を成形する場合において、ロータシャフト3の製造プロセスを簡略化することができる。
【0044】
また、堰部3dがロータシャフト3と一体的に形成されていることによって、堰部3dがロータシャフト3と別個に設けられている(ロータシャフト3に取り付けられている)場合に比べて、堰部3dの機械的強度を向上させることができるとともに、取り付け用の締結部材等が不要であるので部品点数を低減することができる。
【0045】
また、オイルシャフト6は、回転しながら冷却用オイル90を吐出するように構成されている。
【0046】
ロータ1は、オイルシャフト6の吐出孔6bに対して堰部3dが設けられていない軸方向の他方側(Z2側)においてロータシャフト3の内部に設けられるオイルシャフト軸受部8を備える。オイルシャフト軸受部8は、オイルシャフト6の回転を支持するとともに軸方向の他方側(Z2側)への冷却用オイル90の移動を堰き止めるように設けられている。具体的には、オイルシャフト軸受部8は、ロータシャフト3のシャフト内周面3cとオイルシャフト6の保持部6dとの間に挟まれるように設けられている。なお、オイルシャフト軸受部8は、特許請求の範囲の「軸受部」の一例である。
【0047】
これにより、オイルシャフト6の吐出孔6bに対して軸方向の他方側に堰部3dを設けなくても、オイルシャフト軸受部8によって冷却用オイル90の軸方向の他方側(Z2側)への移動を堰き止めることができる。その結果、ロータシャフト3の構造を簡素化しながら、冷却用オイル90の軸方向の他方側への移動を堰き止めることができる。
【0048】
また、ロータコア4は、オイルシャフト軸受部8に対して軸方向の一方側に設けられている。
【0049】
ここで、オイルシャフト6の吐出孔6bは、軸方向において、ロータコア4が設けられる軸方向の範囲内の位置に配置されている。
【0050】
これにより、オイルシャフト6の吐出孔6bが、軸方向において、ロータコア4が設けられる軸方向の範囲外で、かつ、軸方向の他方側(Z2側)の位置に設けられる場合に比べて、吐出孔6bとオイルシャフト軸受部8との間の距離を大きくすることができる。その結果、オイルシャフト軸受部8に流れる冷却用オイル90の量を低減させることができるので、オイルシャフト軸受部8において引き摺り(摩擦によって発熱して損失が生じること)が発生するのを防止することができる。
【0051】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0052】
たとえば、上記実施形態では、ロータコア4の端面4dは、軸方向において、堰部3dが設けられる軸方向の範囲内の位置に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。ロータコア4の端面4dが、軸方向において、堰部3dが設けられる軸方向の範囲外の位置に配置されていてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、堰部3dは、軸方向において、ロータコア4の端面4dが設けられる位置の近傍の位置に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。堰部3dは、軸方向において、ロータコア4の端面4dが設けられる位置の近傍以外の位置に配置されていてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、堰部3dは、オイルシャフト6(冷媒供給管)の吐出孔6b(冷媒吐出孔)に対して軸方向の他方側には設けられていない例を示したが、本発明はこれに限られない。堰部3dが、オイルシャフト6の吐出孔6bに対して軸方向の他方側にも設けられていてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、堰部3dは、ロータシャフト3と一体的に形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。堰部3dが、ロータシャフト3とは別個に設けられていてもよい。すなわち、堰部3dがロータシャフト3に(締結部材または接着等により)取り付けられていてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、オイルシャフト6(冷媒供給管)の吐出孔6b(冷媒吐出孔)は、軸方向において、ロータコア4が設けられる軸方向の範囲内の位置に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。オイルシャフト6の吐出孔6bは、軸方向において、ロータコア4が設けられる軸方向の範囲外(軸方向の他方側、Z2側)の位置に配置されていてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、堰部3dが鍛造加工により形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。堰部3dが鍛造加工以外の方法(たとえば材料に金型を密着させて成形するプラグ成形)により形成されていてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、冷却用オイル90(冷却用冷媒)によりロータ1を冷却する例を示したが、本発明はこれに限られない。冷却用オイル90以外の液状の冷媒(たとえば冷却水)によりロータ1を冷却してもよい。
【0059】
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0060】
堰部(3d)は、軸方向に所定の厚み(t)を有している。ロータコア(4)の端面(4d)は、軸方向において、堰部(3d)が設けられる軸方向の範囲内(堰部3dの厚みtの範囲内)の位置に配置されている。
【符号の説明】
【0061】
1…ロータ、3…ロータシャフト、3b…シャフト孔、3c…シャフト内周面(内周面)、3d…堰部、4…ロータコア、4c…シャフト挿入孔、4d…端面、6…オイルシャフト(冷媒供給管)、6a…オイル流路(第1流路)、6b…吐出孔(冷媒吐出孔)、6e…外周面、8…オイルシャフト軸受部(軸受部)、40…冷却流路(第1流路)、90…冷却用オイル(冷却用冷媒)
図1
図2
図3
図4